中国の鉄鋼大手が束になっても日本製鉄にかなわない理由 - 中国メディア

2025 年 8 月 28 日、中国メディアの澎湃新聞は、日本製鉄が中国の製鉄会社が束になってもかなわないほどの利益を出している理由について考察する記事を掲載した。 記事は、日本製鉄の 24 年 4 - 12 月期の純利益(約 3,620 億円)が中国の鉄鋼上位 4 社(宝鋼、中信特鋼、南鋼、華菱鋼鉄)の 24 年の年間純利益の合計の約 167 億元(約 3,400 億円)を合計しても及ばなかったことを紹介。 生産量では中国企業が世界の鉄鋼生産量トップ 10 の六つを占めるという圧倒的優位に立っていることを併せて伝えた上で、日中の製鉄会社間には「製品構造とコスト管理」という大きな差が存在すると考察した。

まず、日本製鉄の利益大幅向上は、19 年度に過去最大の赤字を計上して以降に着手した、従業員の意識や企業風土の改革、そしてコスト管理と製品イノベーションを柱とする一連の改革措置の成果によるものだと指摘。 その一例として、買収した US スチールの改革を挙げ、稼働率が低くコスト高だった同社に技術者を派遣して時間をかけて生産プロセスを改善し、生産効率と品質の向上に成功したと解説した。

また、製品イノベーションでは先進的な加工技術でアルミ製に匹敵するほどの軽量化を実現した電気自動車 (EV) 向けの鉄製バッテリーケースや、人工知能 (AI) の演算装置向けに開発したエネルギー変換効率を高めて電力損失を低減する電磁鋼板、高性能化する家電・電子機器向けに軽量と高い強度を両立させた特殊合金鋼、高層ビルの耐震、防火性能ニーズに適応した高性能な建築用鋼材など創意あふれる製品を次々と繰り出していることを挙げた。

一方で、中国の鉄鋼業は付加価値の低い伝統的な製品への依存度がなおも高いほか、不動産市場の不振で建築用鋼材の需要が大幅に減少するという向かい風にも直面していると指摘。 さらにコスト管理能力にも課題があり、原材料の安定供給や調達コスト削減のための長期的な調達契約や海外投資が不十分であるほか、生産現場でも技術面と管理面の両方でコスト削減が進んでいないと論じた。

記事は、薄利多売状態にある中国の鉄鋼業界が利益水準を高めて持続可能な発展を実現するには長い道のりが必要であり、日本製鉄のような世界をリードする企業に学び、先進的な経験を参考にしていくことが不可欠だと結論付けた。 (川尻、Record China = 8-31-25)


日鉄、米国の新製鉄所は電炉 US スチール拠点 29 年以降に稼働

日本製鉄は子会社にした米 US スチールで計画している新しい製鉄所について、鉄スクラップを電気でとかして再生する電炉方式にする方針だ。 生産能力は年 300 万トン程度。 2028 年までに投資を始め、29 年以降の稼働をめざす。 投資額は少なくとも数千億円に上るもようだ。 複数の関係者が明らかにした。 日鉄が製鉄所を新設するのは、1971 年の大分製鉄所(現在の九州製鉄所大分地区)以来となる。

米国のどこに建てるかなど詳細は今後詰める。 自動車向けを含めた高級鋼材を手がける方針で、雇用は数千人規模に上るとみられる。 生産能力は年 300 万トン程度で稼働させたあと、将来的には 700 万 - 800 万トン程度への拡大も視野に入れる。 鉄をつくる方法は、日本では鉄鉱石と石炭を化学反応させる高炉が主流だが、米国では鉄スクラップが豊富にあり電気料金が安いことから電炉が優勢だ。 電炉には、使う電気の発電方法しだいでは二酸化炭素 (CO2) の排出量を高炉の 4 分の 1 ほどに抑えられる利点もある。 弱点だった品質は技術の向上によって改善している。

「電炉シフト」は日本でも補助金をてこに進みつつある。 日鉄は九州製鉄所八幡地区(北九州市)で地区唯一の高炉を 30 年をめどに止め、電炉に置き換える方針。 JFE スチールは西日本製鉄所倉敷地区(岡山県倉敷市)で高炉 3 基のうち 1 基を電炉に転換し、28 年度に稼働させる予定だ。 神戸製鋼所は加古川製鉄所(兵庫県加古川市)の高炉 2 基のうち 1 基を電炉にすることを選択肢として検討している。 (山本精作、asahi = 8-29-25)


日鉄、通期の純損益 400 億円赤字見通し 売上高は過去最高 10 兆円

日本製鉄は 1 日、2026 年 3 月期の純損益が 400 億円の赤字になりそうだと発表した。 6 月に成立した US スチール買収が米国の独占禁止法に触れないよう、欧州アルセロール・ミッタルとの米国での既存の合弁を解消したことに伴い、約 2,300 億円の特別損失を計上したことが響く。 売上高は前年比 15.0% 増の 10 兆円と過去最高を見込む。 US スチールが連結対象になり、売上高を約 1.5 兆円押し上げる。 実力ベースでの利益への貢献は 800 億円を見込む。 米国の自動車関税や鉄鋼関税など「トランプ関税」による悪影響は 500 億円を見込んだ。

同日発表した 25 年 4 - 6 月期の売上高は前年比 8.3% 減の 2 兆 0,087 億円、純損益は 1,958 億円の赤字(前年は 1,575 億円の黒字)だった。 US スチールの会長を兼ねる日鉄の森高弘副会長はこの日の会見で、不動産不況が続く中国から世界各地への輸出攻勢に伴う市況悪化に言及。 「厳しい状況のなか、活路は US スチールになると確信している」と述べた。 (山本精作、asahi = 8-1-25)


米国シフト際立つ日鉄、製鉄所新設へ 橋本会長「中国追随許さぬ」

日本製鉄は、買収に成功した米 US スチールを通じ、米国に新しい製鉄所を設ける。 朝日新聞のインタビューに応じた日鉄の橋本英二会長は、日米連携のもとで US スチールを米国のトップメーカーに復帰させる意欲を示し、「先端技術で中国の追随を許さない」と話した。 2028 年までに新製鉄所への投資を米国で始める。 日鉄による製鉄所の新設は、1971 年の大分製鉄所(現在の九州製鉄所大分地区)以来。 既存の US スチールの製鉄所も稼働率を引き上げる。

昨年は米国勢で 3 位の約 1,400 万トンだった US スチールの粗鋼生産量を、10 年後をめどに 3,400 万トン以上まで高める計画だ。 橋本氏は「先端技術で中国に追いつかれてはいけない。 そのためにも生産量の拡大が必要だ。」と語った。 前回の製鉄所新設を経験した世代は残っておらず、現地に技術者らを送り込んで人材育成を進める考えも示した。

70 - 90 年代に世界一だった日鉄の粗鋼生産量は、2024 年時点で世界 4 位の約 4,400 万トン。 傘下に収めた US スチールや、インドでの合弁事業、タイの拠点をいずれも強化するなどし、10 年以内に 1 億トンの大台まで引き上げる計画。 世界 2 位の欧州アルセロール・ミッタル(約 6,500 万トン)に迫り、首位の中国宝武鋼鉄集団(約 1 億 3 千万トン)を追い上げる。

一方、日鉄は世界最大の中国市場では事業を縮小させており、宝武鋼鉄集団傘下の宝山鋼鉄と組んでいた自動車鋼板の合弁解消を昨夏に発表した。 米中の分断が経済と安全保障の両面で進むなか、橋本氏は「米国シフト」を加速させている。 橋本氏は「ビジネスは国際的なルールの作り手に寄り添わないと負ける。 米中の二者択一をしなければいけない時に、日本が米国につくのは当たり前だ。」と話した。 (山本精作、asahi = 7-11-25)


日鉄会長「自由度と採算性は確保」 2 兆円かけ US スチール買収完了

日本製鉄は米鉄鋼大手 US スチールの買収手続きを完了し、橋本英二会長が 19 日に都内で記者会見した。 US スチールの取締役の選任などで米政府の影響を受ける形だが、「経営の自由度と採算性については確保されており、十分に満足のいく内容だ」と話した。 日鉄は 18 日に US スチールの全株式を 142 億ドル(約 2 兆円)で取得し、完全子会社化した。 米国の独占禁止法に触れるリスクを避けるため、米国にある欧州鉄鋼大手との合弁会社の保有株式を 1 ドルで売却することを決め、約 2,300 億円の特別損失の計上見通しを 19 日に発表した。

日鉄側は、US スチール買収に反対してきたトランプ米大統領から 13 日に承認を取り付けていた。 条件として米政府と国家安全保障協定を結び、協定に基づいて黄金株(拒否権付き種類株式)を発行することも決めた。 米政府には US スチールの経営の重要事項への拒否権などを持たれる。 橋本氏は会見で、「投資の実行を監督したいという米政府の意向を受け入れることとし、これを黄金株という形で分かりやすく表すことを提案し、合意に至った」と説明した。

協定は、最大 9 人の取締役のうち 3 人について米政府の選任、承認の権限を認めた。 日鉄は US スチールの米国の生産設備に 2028 年までに 110 億ドル(約 1.6 兆円)を投じて生産・供給能力を維持することを約束した。 需要動向を踏まえて投資判断を変えたい場合には米政府との調整が必要になりそうだが、橋本氏は米国市場には成長性があると強調した。

トランプ氏が承認に転じた背景について橋本氏は「米国が対中国で負けているのは製造業。 米国の鉄鋼業の再生に日鉄の力を活用する判断をしたのだろう」との見方も示した。 一方、対米交渉にあたった森高弘副会長は「トランプ氏の背中を押したのは(US スチールの)地元の声だと思う」と話した。 (山本精作、asahi = 6-19-25)


日鉄の US スチール完全子会社化をトランプ氏承認 米政府には黄金株

日本製鉄による米鉄鋼大手 US スチールの買収計画で、日鉄は 14 日、トランプ米大統領が両社の「パートナーシップ(提携)」を承認したと発表した。 日鉄によると、US スチールの普通株を日鉄が 100% 取得する完全子会社化を認める内容。 一方で、経営の重要事項に拒否権を持つ「黄金株」を米政府に発行し、米側が US スチールに一定の影響力を持つ枠組みとなる。 買収費だけで 141 億ドル(約 2 兆円)を投じる日米の大型合併・買収 (M & A) は、計画の発表から 1 年半を経て、週明けにも成立する見通しとなった。

これに先立ち、トランプ米大統領は 13 日、バイデン前大統領が出した「買収禁止命令」を修正。 「国家安全保障上の脅威は条件を満たせば十分に軽減される」とし、日鉄と US スチールが米政府との間で国家安全保障協定を結ぶことを条件に買収容認へ道を開いた。 安保協定の詳細は公表されていないが、すでに締結されており、US スチールの取締役の構成や米国の生産能力などについて取り決めているもよう。 買収後の US スチールの生産設備などへの投資額は 2028 年までに 110 億ドル(約 1.6 兆円)としており、その後の追加分も含めると 140 億ドルに達する見通し。

トランプ氏は US スチールについて「米国が支配する」と言い続けてきた。 協定に基づき、重要事項に拒否権を持つ黄金株を米政府に付与することで、「米国支配」の形を整える。 日鉄はこの点でトランプ氏に配慮する一方、普通株の 100% 取得を勝ち取った。 完全子会社化により、日鉄は採算性と経営権を確保し、先端技術の提供と生産設備などへの投資を円滑に進められるとしている。 日鉄と US スチールは「トランプ大統領の果断なリーダーシップと歴史的なパートナーシップへの力強い支援に感謝する」とのコメントを発表した。

日鉄は買収に対するバイデン前大統領の禁止命令を不服として米政府を訴えていた訴訟を近く取り下げる予定。 日鉄は 23 年 12 月、US スチールの買収を発表した。 だが昨年の大統領選を争ったトランプ、バイデン両氏はそろって買収反対を表明し、計画は暗礁に乗り上げた。 トランプ氏が大統領就任後の今年 4 月、買収の再審査を政府機関に指示したことで、買収成立に向け事態が動き出していた。 (山本精作、ワシントン・榊原謙、ニューヨーク・杉山歩、asahi = 6-14-25)

日本製鉄 : 本社は東京都千代田区。 1901 年に操業を始めた官営八幡製鉄所の流れをくむ新日本製鉄が住友金属工業と 2012 年に合併。 19 年に社名を日本製鉄とした。 粗鋼生産量は 2024 年時点で世界 4 位、日本 1 位。従業員は約 11 万人。

USスチール : 本社は米ペンシルベニア州ピッツバーグ。 1901 年に「鉄鋼王」アンドリュー・カーネギー氏らが設立し、米国の近代産業の発展を支えた。 1960 年代まで粗鋼生産量で世界首位。 2024 年時点は世界 29 位、米国 3 位。 従業員数は 2 万人余り。

トランプ氏「51% の所有権は米国人、私が支配」 US スチール巡り

日本製鉄による米鉄鋼大手 US スチールの買収計画をめぐって、トランプ米大統領は 12 日、「51% の所有権は米国人にある」と記者団に語った。 「私が支配する」とも言った。 日鉄は US スチール株を全て取得し、完全子会社にすることを目指している。 トランプ氏は詳細は語っておらず、真意は不明だ。 トランプ氏は 2 月にも、「誰も US スチール株の過半数を保有することはできない」と発言したことがある。

 

トランプ氏はまた、「我々は黄金株を所有する。 これにより私が支配する。」とも記者団に語った。 経営の重要事項に拒否権を発動できる「黄金株」の取得を通じ、US スチールの経営に米政府が関与することを示唆したようだ。 (asahi = 6-13-25)