日鉄の US スチール完全子会社化をトランプ氏承認 米政府には黄金株

日本製鉄による米鉄鋼大手 US スチールの買収計画で、日鉄は 14 日、トランプ米大統領が両社の「パートナーシップ(提携)」を承認したと発表した。 日鉄によると、US スチールの普通株を日鉄が 100% 取得する完全子会社化を認める内容。 一方で、経営の重要事項に拒否権を持つ「黄金株」を米政府に発行し、米側が US スチールに一定の影響力を持つ枠組みとなる。 買収費だけで 141 億ドル(約 2 兆円)を投じる日米の大型合併・買収 (M & A) は、計画の発表から 1 年半を経て、週明けにも成立する見通しとなった。

これに先立ち、トランプ米大統領は 13 日、バイデン前大統領が出した「買収禁止命令」を修正。 「国家安全保障上の脅威は条件を満たせば十分に軽減される」とし、日鉄と US スチールが米政府との間で国家安全保障協定を結ぶことを条件に買収容認へ道を開いた。 安保協定の詳細は公表されていないが、すでに締結されており、US スチールの取締役の構成や米国の生産能力などについて取り決めているもよう。 買収後の US スチールの生産設備などへの投資額は 2028 年までに 110 億ドル(約 1.6 兆円)としており、その後の追加分も含めると 140 億ドルに達する見通し。

トランプ氏は US スチールについて「米国が支配する」と言い続けてきた。 協定に基づき、重要事項に拒否権を持つ黄金株を米政府に付与することで、「米国支配」の形を整える。 日鉄はこの点でトランプ氏に配慮する一方、普通株の 100% 取得を勝ち取った。 完全子会社化により、日鉄は採算性と経営権を確保し、先端技術の提供と生産設備などへの投資を円滑に進められるとしている。 日鉄と US スチールは「トランプ大統領の果断なリーダーシップと歴史的なパートナーシップへの力強い支援に感謝する」とのコメントを発表した。

日鉄は買収に対するバイデン前大統領の禁止命令を不服として米政府を訴えていた訴訟を近く取り下げる予定。 日鉄は 23 年 12 月、US スチールの買収を発表した。 だが昨年の大統領選を争ったトランプ、バイデン両氏はそろって買収反対を表明し、計画は暗礁に乗り上げた。 トランプ氏が大統領就任後の今年 4 月、買収の再審査を政府機関に指示したことで、買収成立に向け事態が動き出していた。 (山本精作、ワシントン・榊原謙、ニューヨーク・杉山歩、asahi = 6-14-25)

日本製鉄 : 本社は東京都千代田区。 1901 年に操業を始めた官営八幡製鉄所の流れをくむ新日本製鉄が住友金属工業と 2012 年に合併。 19 年に社名を日本製鉄とした。 粗鋼生産量は 2024 年時点で世界 4 位、日本 1 位。従業員は約 11 万人。

USスチール : 本社は米ペンシルベニア州ピッツバーグ。 1901 年に「鉄鋼王」アンドリュー・カーネギー氏らが設立し、米国の近代産業の発展を支えた。 1960 年代まで粗鋼生産量で世界首位。 2024 年時点は世界 29 位、米国 3 位。 従業員数は 2 万人余り。


トランプ氏「51% の所有権は米国人、私が支配」 US スチール巡り

日本製鉄による米鉄鋼大手 US スチールの買収計画をめぐって、トランプ米大統領は 12 日、「51% の所有権は米国人にある」と記者団に語った。 「私が支配する」とも言った。 日鉄は US スチール株を全て取得し、完全子会社にすることを目指している。 トランプ氏は詳細は語っておらず、真意は不明だ。 トランプ氏は 2 月にも、「誰も US スチール株の過半数を保有することはできない」と発言したことがある。

 

トランプ氏はまた、「我々は黄金株を所有する。 これにより私が支配する。」とも記者団に語った。 経営の重要事項に拒否権を発動できる「黄金株」の取得を通じ、US スチールの経営に米政府が関与することを示唆したようだ。 (asahi = 6-13-25)


トランプ氏、一転の容認 決め手? になった「140 億ドル」の内容

日本製鉄による米同業 US スチール買収計画で、トランプ米大統領が 23 日、両社の「提携 (partnership)」を認めると表明した。 一時は買収計画への反対を明言していたトランプ氏。 この日も「買収」という表現は一切使わなかったものの、実質的な取引の容認に傾いたとみられるのはなぜなのか。

米側引き出した「10 倍」の投資額

23 日午後 3 時半ごろ。 トランプ氏が突如、自らの SNS 上で、両社の「計画されてきた提携」について公表。 これにより「少なくとも 7 万人の雇用と、米国経済に 140 億ドル(約 2 兆円)がもたらされる」と打ち出した。 この 140 億ドルという数字は、日鉄による「買収承認獲得に向けた最後の一手」としてロイター通信などが報じていた金額と一致する。 当初からめざしてきた US スチールの完全子会社化が認められれば、日鉄は US スチールの工場などへの投資額を積み増す計画だと伝えていた。

日鉄・US スチール問題を追ってきた米ハドソン研究所のウィリアム・チュー氏は、日鉄が切ったこのカードが「大統領の今回の判断に大きな役割を果たしただろう」とみる。 買収計画が発表された当初、日鉄による投資額は 14 億ドルだった。 だが、昨年の大統領選でバイデン前大統領とトランプ氏がともに買収反対を訴えると、計画は 1 年半にわたって宙に浮いた。 これにしびれを切らした日鉄から、米側は当初の 10 倍の投資額を引き出したことになる。

トランプ氏は、国防でも産業でも基礎となる鉄鋼産業の復興を掲げる。 日鉄が積み増した投資額が「鉄鋼界の強化と労働者支援へのコミットメント(約束、チュー氏)」として、ようやくトランプ氏のメガネにかなう水準となった可能性がある。 一方の日鉄は日本時間 24 日早朝、「トランプ大統領の英断に心より敬意を表する」と歓迎する声明をさっそく出した。

読み取れないトランプ氏の本心

とはいえ、日鉄側には戸惑いが残る。 最大の関心事である出資比率について、過半出資に難色を示し続けてきたトランプ氏が、本当に日鉄が望む 100% 出資を認めるのかどうか、SNS 投稿からは読み取れないからだ。 日鉄関係者によると、米側から事前の連絡はなかったもようで、事実関係の確認を進めている。 日鉄はこれまで「十分なリターンが見込め、最新の技術も供与できる完全子会社化が欠かせない」と繰り返し主張してきた。 トランプ氏が買収を認めたと報じる一部米メディアもある。 ただ、100% 出資に対して「心証が良くない」などと不満を言い続けてきた手前、トランプ氏自身はあえてはっきりとは言わない可能性もある。

チュー氏は「この『提携』の構造が、日鉄による 49% 出資なのか 51% なのか 100% なのかは判然としない」と慎重な解釈だ。 仮に 5 割を切る比率しか出資が認められなければ「日鉄はこの取引から撤退する可能性がある」と踏む。 米ホワイトハウスは近く、政権としての判断の内容を詳しく発表するとみられる。 鉄鋼メーカーの規模を示す粗鋼生産量(2023 年)で、日鉄は 4 位、US スチールは 24 位。単純に合算すると世界 3 位となる。 かつてそれぞれ世界一を誇った日米の両社による合併・買収 (M & A) は、大詰めを迎えつつある。 (榊原謙・ワシントン、山本精作、asahi = 5-24-25)


USスチール買収によるリスク再審査、「軽減可」多数 大統領判断へ

日本製鉄の米USスチール買収計画をめぐり異例の再審査を担った米政府機関で、メンバーの意見は一致しなかったとロイター通信が 22 日報じた。 一方で、安全保障上のリスクは軽減措置で対処できるとの意見が多数派だったとも伝えた。 トランプ米大統領は 6 月 5 日までに買収計画の可否を最終判断する。 再審査は、財務長官ら主要閣僚をメンバーとする対米外国投資委員会 (CFIUS) が担った。 米国企業を外資企業が買収する際に、国家安全保障上のリスクを生まないかを調べる機関だ。

ロイターは米政府関係者の話として、買収計画の安保リスクについては CFIUS 内で意見が分かれたままトランプ氏に報告が行ったと伝えた。 リスクは軽減できるとの認識が多かったという。 この報道に対し、日本製鉄の今井正社長は 23 日、都内で記者団の取材に直接的なコメントは避けた。 ただ、買収計画について「当社の投資と最新技術の供与を通じて、US スチールが中長期的に競争力を確保できる案件」と表現し、「承認頂けることを期待している」と述べた。

日鉄はこれまで、買収後も US スチールの本社を米ペンシルベニア州ピッツバーグに構え、取締役の過半数を米国人で構成することなどを掲げ、米政府の理解を求めてきた。 こうした提案が、一定の理解につながった可能性がある。 ただし、トランプ氏が自身の判断を CFIUS メンバーの多数意見と一致させるとは限らない。 日鉄社内や日本政府内にも「再審査の報告内容はトランプ氏の判断に直結はしない」との見方はある。

日鉄は、完全子会社化が承認されれば、買収後の設備投資額を大きく積み増す方針をすでに米政府側に伝えている。 積み増し後の投資額について、ロイターは従来の 5 倍強にあたる 140 億ドル(約 2 兆円)と伝えた。 買収後の設備投資額は本来、安保上の懸念とは関係ない。 関係者によると日鉄の提案は、21 日が期限だった CFIUS の再審査よりも、6 月 5 日が期限とされるトランプ氏の判断を強く意識したものだという。 (山本精作、榊原謙、asahi = 5-23-25)


日鉄の US スチール買収、CFIUS がトランプ氏に勧告書 米報道

日本製鉄による米鉄鋼大手 US スチールの買収を巡り、国家安全保障の観点から調べていた対米外国投資委員会 (CFIUS) の審査が 21 日に期限を迎えた。 ロイター通信は同日、CFIUS はトランプ米大統領に勧告書を提出したと報じた。 勧告を受けてトランプ氏は 6 月 5 日までに買収の可否を判断する予定だ。 CFIUS は勧告内容を明らかにしていない。 日鉄側は、US スチールの雇用維持に加え、設備の更新などへの投資を表明し、買収の承認に向けてアピールを重ねてきた。 ロイター通信によると、買収が認められれば工場の新設を含む 140 億ドル(約 2 兆円)の投資を実行する計画を立てたとされる。 (asahi = 5-22-25)


中国傘下鉄鋼大手に英政府介入へ 高炉閉鎖回避の緊急法案可決

【ロンドン】 英議会は 12 日、中国企業傘下にあり、経営難に陥っている鉄鋼大手ブリティッシュ・スチールの工場閉鎖を回避するため、緊急法案を可決した。 英メディアが報じた。 政府は操業に介入し今後、国有化も検討する。 同社は東部スカンソープで国内最後の高炉 2 基を運転する。 親会社の中国鉄鋼大手、敬業集団は、毎日約 70 万ポンド(約 1 億 3 千万円)の損失が発生し、工場維持は困難だと主張していた。 トランプ米政権が鉄鋼に 25% の関税を発動したことも追い打ちをかけた可能性がある。 ブリティッシュ・スチールは 2019 年に事実上経営破綻し、翌 20 年に敬業集団に買収された。 (kyodo = 4-13-25)


トランプ大統領、US スチールは「日本へ渡ってほしくない特別な会社」

日本製鉄によるアメリカの鉄鋼大手 US スチール買収計画をめぐり、トランプ大統領は 9 日、US スチールについて、「日本へ渡ってほしくない特別な会社だ」と述べました。 (日テレ = 4-10-25)


US スチール巡る条件協議 日鉄社長「現契約が出発点」との認識示す

日本製鉄の今井正社長は 25 日、米 US スチールへの出資を米政府に認めてもらう条件について、完全子会社にする現契約を「出発点」に話し合っていく考えを示した。 買収に反対してきたトランプ米大統領は今月 7 日の日米首脳会談後の会見で、買収ではなく多額の投資で決着する、と述べた。 少数の出資なら「あまり気にしない」とも後日述べた。

今井氏はこの日、首脳会談で取り上げられたことに謝意を示し「前進した」と述べた。 今後の米当局との話し合いについて「基本的なスターティングポイントは今の(完全子会社にする)契約になると思う」と述べた。 「その上でトランプ大統領に本件を了承してもらうために、どういったことができるのか、まさに米政府と話に入ろうとしている」と話した。 トランプ氏が首脳会談直後に「翌週」とした日鉄幹部との面会については「(米国)行政当局との協議を踏まえた上での話だと思う」とした。 (山本精作、asahi = 2-25-25)


「日本製鉄は買収ではなく投資で合意」 US スチール巡りトランプ氏

石破茂首相は現地時間 7 日(日本時間 8 日)、ホワイトハウスでトランプ米大統領と会談した。 トランプ氏は終了後の共同記者会見で、日本製鉄による米鉄鋼大手 US スチールの買収について「買収ではなく多額の投資」で決着するとの見方を示した。 会談に先立ち、対日貿易赤字の是正に向けて自動車などに関税をかける可能性も示唆した。

トランプ氏は「US スチールは我々にとって非常に重要な企業だ。 この地を去るわけではないが(日鉄による買収という)構想は心理的に良くない。 だから彼らは US スチールを所有するのではなく、多額の投資をすることに合意した」と語った。 「来週、日産(日鉄)のトップと会う予定だ。 素晴らしい会社だ」とも述べた。 日産と日鉄を混同した発言とみられる。 「彼らが詳細を詰めるだろう。 私も手伝うつもりだ。 仲介と仲裁をするつもりだ。」と語った。 石破氏も「買収ではなく投資」というトランプ氏の説明について「強く認識を共有した」と述べた。

 

トランプ氏は、日本に対して約 10 億ドルにのぼる防衛装備品を販売する「有償軍事援助 (FMS)」を承認したことも明らかにした。 日本が、トランプ氏の 1 期目と比べて 2027 年までに防衛費を倍増させることを約束したと評価。 「平和と安全を維持するために緊密に協力していく。 力による平和やインド太平洋全域の平和を訴えていく」と述べた。

経済関係については、「慢性的な貿易赤字は、わが国の経済を弱体化させる。 日本との 1 千億ドルを超える貿易赤字を解消するつもりだ」と述べた。 その上で、トヨタ自動車が米国内に新たな工場の建設を計画していることに歓迎の意を示した。 「日本がまもなく、記録的な量のクリーンな米国産液化天然ガス (LNG) の輸入を始める」とも語り、アラスカ産の石油や天然ガスに関する日米の共同事業を検討していることも明らかにした。

関税については、「あまり議論しなかった」と述べた。 ただ、日本を含めた相手国が米国製品にかけている関税と同水準の関税を、その国からの輸入品にかける方針を来週発表するとした。 会談の冒頭では、特に日本の自動車への関税について「いつも選択肢としてある」と語っていた。 1 月 20 日に発足した第 2 次トランプ政権で、ホワイトハウスでの首脳会談はイスラエルのネタニヤフ首相に続いて 2 人目となる。 (ワシントン・下司佳代子、asahi = 2-8-25)


買収計画の放棄期限、米側が 6 月まで延長 日鉄と US スチールが発表

日本製鉄は 12 日、バイデン米大統領から命じられた米同業 US スチール買収計画の放棄について、その期限が 2 月 2 日から 6 月 18 日に延長されたと発表した。 期限切れによる早期の破談は避けられることになり、両社は共同声明で「買収の成立を引き続きめざす」と述べた。

 

バイデン氏は今月 3 日、「安全保障上の懸念」を理由に買収を禁じる命令を出した。 両社に対して「買収計画を完全かつ永久に放棄するために必要なすべての措置」を原則として 30 日以内に取るよう求め、期限が 2 月 2 日に迫っていた。 期限の延長は、大統領の命令に先立って審査にあたった米政府の省庁横断組織、CFIUS (対米外国投資委員会)に対し日鉄側が求めていた。 新たな期限とされた 6 月 18 日は、US スチールとの契約の期限と同じ日だ。

延長の背景には、日鉄側の提訴があったとみられる。 日鉄側はバイデン氏らを相手取り、買収禁止命令の無効と CFIUS の審査のやり直しを求める訴訟を 6 日付で起こした。 訴訟のあいだは命令の効力を発生させないよう差し止め請求する方針も示していた。 両社は 12 日に出した共同声明で「延長が認められたことをうれしく思う。 米国の鉄鋼業界と全ての利害関係者にとって最良の未来を確保する商取引の完了を楽しみにしている」とコメントした。

日鉄側は、買収を違法に妨害しているとして、米同業クリーブランド・クリフス社とその最高経営責任者 (CEO)、全米鉄鋼労働組合 (USW) の会長を相手取った民事訴訟も別途起こしている。 (山本精作、asahi = 1-12-25)


US スチール CEO 「早期に完了と確信」、日鉄の買収巡り = 報道

米鉄鋼大手 US スチールのデイビッド・ブリット最高経営責任者 (CEO) は 7 日、米 CNBC とのインタビューで、日本製鉄による同社買収について「取引を早期に完了できると確信している」と語った。 買収計画を「新たな視点から検討する新大統領がいる」とも述べ、買収実現に期待を示した。 (Reuters = 1-8-25)


日本製鉄、米政府を提訴へ US スチール買収禁止「明らかに政治的」

日本製鉄は、米鉄鋼大手 US スチールを買収する計画をめぐってバイデン米大統領から禁止命令を受けたことを踏まえ、米政府を相手取って提訴する方針を固めた。 4 日、複数の関係者が明らかにした。 日鉄と US スチールは米国時間 3 日、「法的権利を守るためのあらゆる措置を追求する」との声明を共同で発表。 関係者の一人は「『あらゆる措置』には提訴も含まれ、時期や内容は今後詰める」と取材に話した。

両社の声明は、日鉄の投資が国家安全保障上の脅威になるとしたバイデン氏の禁止命令について「国家安全保障問題に関する確かな証拠を示しておらず、明らかに政治的な判断」と指摘。 「米国憲法上の適正手続きおよび(安保への影響を審査した)対米外国投資委員会を規律する法令に明らかに違反している」と批判した。 声明はまた「同盟国である日本国をこのように扱うことは衝撃的」であり「米国の同盟国を拠点とする全ての企業に対して、投資を控えさせる強いメッセージを送るもの」とも指摘している。

日本政府の反応は、本拠地で失望の声も

日本政府も反応した。 武藤容治経済産業相は「国家安全保障上の懸念を理由として、このような判断がなされたことは理解し難く、残念だ」とのコメントを出した。 失望の声は、日鉄からの投資に期待していた US スチールの本拠地ペンシルベニア州からも上がった。 同州製造業者協会のデビッド・テイラー会長は、「バイデン政権の誰ひとりとして、日鉄の投資を支持する地元の意見に耳を傾けてこなかった」と批判。 日鉄の投資が国家安全保障上の脅威になるならば「米国にある全てのトヨタや日産や BMW の工場だってそうだ」と皮肉った。

US スチールは買収が破談になれば同州の工場の閉鎖や人員整理に踏み切ることも示唆している。 テイラー氏は「この決定はバイデン政権の政治的な打算の反映で、それがもたらす恐ろしい結果を無視している」とも訴えた。

「日本とは強固な同盟関係にある」

3 日のホワイトハウスの定例会見では、記者から「日本の投資を拒むことがなぜ安保を守ることになるのか」といった質問が相次いだ。 ジャンピエール報道官は「これ(買収禁止の決定)は日本に関することではない。 日本とは強固な同盟関係にある。」と述べた。 日本の企業の買収だから阻止した、との見方を否定した。 一方、買収に一貫して反対してきた全米鉄鋼労働組合 (USW) のマッコール会長は 3 日の記者会見で、「大統領の決定が USW の組合員と米国の安保にとって正しい判断であったことは疑いない」と述べ、バイデン氏に謝意を示した。

USW は、今回の買収が US スチールの労働者の雇用や年金を危うくすると主張し続けてきた。 「この取引は US スチールの投資家や経営陣には大きな利益をもたらしても、組合員の長期的な安定を脅かすものだった」と述べ、改めて買収を批判した。 (山本精作、真海喬生、asahi = 1-4-24)


日鉄の US スチール買収「認めず」 バイデン氏が 3 日発表か、米報道

米紙ワシントン・ポストは 2 日、バイデン米大統領が、日本製鉄による米鉄鋼大手 US スチールの買収計画を不承認とすると正式に決めたと報じた。 早ければ 3 日にも発表するという。 外資による買収が米国の鉄鋼生産を減らしかねないなどとして、国家安全保障上の懸念があると判断したもようだ。

同盟国間の民間企業どうしが合意した買収を、米大統領が認めないのは極めて異例だ。 石破茂首相は 2024 年 11 月、バイデン氏に書簡を送り、買収を認めるよう要請していた。 同紙によると、側近らがバイデン氏に対して、買収の阻止は今後の日米関係に悪影響を与えるとして翻意を求めたが、バイデン氏の考えは変わらなかったという。

日鉄は 23 年 12 月、US スチールを約 141 億ドル(約 2 兆円)で買収すると発表。 米政府の対米外国投資委員会 (CFIUS) が国家安全保障に与える影響を審査した。 しかし、CFIUS 内では意見がまとまらず、24 年 12 月にバイデン氏に最終判断を委ねていた。 報道によると、CFIUS 内では、日鉄がいずれ米国での鉄鋼の生産を減らす可能性について懸念の声が出た。 また、日鉄が世界各地で鉄鋼生産をしていることから、安価な鉄鋼の流入を防ぐ米政府の通商措置を支持しないおそれも指摘されたという。

同紙は政府関係者の話として、「大統領の心変わりがなければ」、3 日にもホワイトハウスから大統領の結論が発表される見通しだとしている。 今回の買収計画が難航した背景には、全米鉄鋼労働組合 (USW) の強い反対がある。 大統領選の激戦州で集票力があるとされる USW に歩調をあわせるように、民主党のバイデン氏、共和党のトランプ次期大統領とも、選挙戦中に反対を表明してきた。 バイデン氏は今月 20 日での退任が決まっているものの、あくまで買収阻止にこだわった。 日鉄は今後、買収計画の審査手続きに問題があったとして、米政府を提訴するか検討するとみられる。

もし買収が不成立となれば、米国市場への本格参入を狙った日鉄は世界戦略の抜本的な見直しを迫られる。 経営再建中の US スチールも、日鉄からの投資が受けられなくなれば死活問題となる。 今回のバイデン氏の判断は、今後米国への投資を検討する企業に二の足を踏ませる前例ともなりかねない。 (ワシントン・榊原謙、asahi = 1-3-25)


US スチールの生産能力削減、米政府に拒否権 日鉄が提案と米紙報道

日本製鉄の米 US スチール買収について、米紙ワシントン・ポストは 12 月 31 日、US スチールの生産能力削減に対して、米政府に 10 年間の「拒否権」を持たせることを日鉄が提案したと報じた。 米政府側が抱く鉄鋼生産量の減少や雇用減といった買収に伴う懸念を拭うねらいとみられる。

報道によると、日鉄は 12 月 30 日付で米政府に書簡を送った。 その中で、US スチールのペンシルベニア州やインディアナ州、アラバマ州などにある工場の生産能力を今後 10 年間、米政府の承認なしに減らさないことを保証すると提案したという。 日鉄は買収後に設備改修などに 27 億ドルを追加投資すると表明しているが、今回の提案を実現するためには、さらに「何十億ドル」もの投資が必要になる可能性があるという。

買収案を国家安全保障の観点から審査してきた米政府の対米外国投資委員会 (CFIUS) は 12 月 23 日の期限までに結論を出せず、買収の是非についてバイデン大統領に判断を委ねた。 米メディアによると、CFIUS は買収に伴う鉄鋼生産量の減少が安保上のリスクになると指摘した。 バイデン氏は 1 月 7 日までに買収を認めるかどうかを判断する見込みだ。 全米鉄鋼労働組合 (USW) は買収に反対しており、バイデン氏はこれまで「米国内で所有・運営され続けるべきだ」と繰り返し訴えてきた。 ただ、工場のある地元自治体トップや現場の労働者には買収に賛成する声もある。

ワシントン・ポストは 12 月 31 日の同じ報道で、政府高官の話をもとに、雇用維持など追加の要件に日鉄が従えばバイデン氏が買収を認めたり、最終決定を 1 月 20 日に発足するトランプ次期政権に委ねたりする可能性があるとも報じた。 報道を受け、31 日のニューヨーク株式市場で US スチールの株価は 9.5% 上昇して取引を終えた。 (ニューヨーク・真海喬生、asahi = 1-1-25)


日鉄社長「本質的な価値を理解頂きたい」 米 US スチール買収計画

日本製鉄の今井正社長は 25 日、東京都内で報道陣の取材に応じ、米バイデン大統領の判断を待つことになった US スチール買収計画について「審査の経緯と米国経済に対する本質的な価値をご理解頂ければ、承認されるのではないか」と述べた。 バイデン氏は承認するかどうかを米国時間の 2025 年 1 月 7 日までに判断する見込みだ。 買収計画の安全保障への影響を調べていた対米外国投資委員会 (CFIUS) は審査期限だった 23 日までに全会一致に至らず、判断をバイデン氏に委ねた。

今井氏は「これまでの CFIUS の審査に対応する形で、国家の安全保障上の懸念に対しては様々な対応策を約束してきている。 相当部分のご理解が進んだと思う」と話した。 US スチールの製鉄所がある地元の世論については「買収に対する賛同の意見が相当広がっている手ごたえもある」と語った。 買収計画の価値に関しては「US スチールを強くする、それによって従業員の雇用も守られ、米国の鉄鋼業、製造業、ひいては米国の安全保障そのものを強化する貢献にもつながる」と強調した。 バイデン氏は US スチールについて「米国内で所有・運営され続けるべきだ」と述べてきた。 (山本精作、asahi = 12-25-24)


大統領が買収審査に「不当な影響」 日鉄が米政府側に抗議 米報道

日本製鉄による米鉄鋼大手 US スチールの買収計画をめぐり、バイデン米大統領が米政府機関の審査に「許されない不当な影響」を与えたと日鉄が抗議していることがわかった。 バイデン氏が買収を職権で阻止すれば、法的措置をとることも日鉄は検討している。 ロイター通信が 20 日報じた。 日鉄と US スチールが、買収の国家安全保障上の懸念を調べている対米外国投資委員会 (CFIUS) に、17 日付の書簡で伝えたという。 審査期限は 23 日とされるが、バイデン氏に判断を委ねる可能性がある。

買収には全米鉄鋼労働組合 (USW) が反対している。 バイデン氏が買収反対を表明したのは、大統領選で USW の支持を得たい考えがあったとの見方が多い。 ロイターによると、書簡はこの点を踏まえて、バイデン氏が USW 会長を喜ばせるために、買収審査に影響を与えた可能性などを指摘した。 USW 会長は、大統領選に出馬したバイデン氏を支持した。

CFIUS 内でのこの買収をめぐる意見は割れているとされ、意見をまとめられない可能性がある。 CFIUS がバイデン氏に結論を委ねた場合、バイデン氏は 15 日以内に、承認か不承認かを決める必要がある。 ロイターによると、バイデン氏が買収の阻止を決めた場合、日鉄側は、適正な手続きの侵害と大統領による職権の違反があったとして、首都ワシントンの米連邦控訴裁判所に決定への異議申し立てを行うことも検討している。 日鉄は朝日新聞の取材に対し「CFIUS とのやりとりについてはコメントできない」としている。 (ワシントン・榊原謙、asahi = 12-21-24)


日鉄の US スチール買収、バイデン米大統領が「阻止」へ 米報道

米ブルームバーグ通信は 10 日、日本製鉄による米鉄鋼大手 US スチールの買収を、バイデン大統領が阻止する方針だと報じた。 米政府内の手続きを経て、今月末にも正式に決定するという。 同通信は、買収が認められない場合、日鉄と US スチールは、手続きに問題があるとして訴訟を提起する構えだとも報じた。 報道を受け、日鉄は声明を発表し、「米国の正義と公正さ、及び法制度を信じており、公正な結論を得るために、今後、US スチールとも協働し、あらゆる手段を検討し、講じていく」などと述べた。 米ホワイトハウスのジャンピエール報道官は報道陣に、「新しい情報はない」と述べるにとどめた。

今回の買収をめぐっては、企業取引が国家安全保障に与える影響を調べる政府機関、対米外国投資委員会 (CFIUS) の審査が続いている。 同通信によると、今月下旬にも CFIUS が買収を認めるかどうかの判断をバイデン氏に委ねる。 それを受け、バイデン氏が阻止を正式に決めるという。 一方、両社は今回の買収が米国の安全保障や米国経済にとってプラスであると強調し続けてきた。 同通信によれば、バイデン氏が買収阻止を決めれば、両社は法廷闘争も辞さない構えという。

日鉄は昨年 12 月、約 140 億ドル(約 2 兆円)で US スチールを買収すると発表。 バイデン氏はその後、国家安全保障上の懸念を理由に、買収への事実上の反対を表明していた。 トランプ次期大統領も「阻止」の強い意思を示しており、日米間の大型買収計画の行方は不透明感を増している。 10 日午後の米ニューヨーク株式市場では、US スチール株が急落し、終値は前日より約 1 割安となった。 買収の成立に悲観的になった投資家が一斉に売りに走ったとみられる。 US スチールの経営再建には、日鉄による買収が不可欠だとの見方が市場では強い。 (ワシントン・榊原謙、asahi = 12-11-24)


日鉄「買収が US スチールの工場閉鎖防ぐ」 米政府審査の期限前に強調

日本製鉄は 9 日、米 US スチールの工場閉鎖を防ぐ唯一の方法は日鉄による買収だ、と主張する手紙を同社の従業員向けに公開した。 買収をめぐる米政府の審査期限が今月下旬に迫るなか、買収は工場の閉鎖につながりかねないとする全米鉄鋼労働組合 (USW) に対して改めて反論した。 US スチールの鉄鋼労働者ら約 85 万人を組織する USW の執行部は、日鉄が US スチールを傘下に収めれば既存の高炉を閉鎖して生産を最新鋭の電炉に集約しかねず、雇用を脅かす、といった主張を繰り返し従業員向けに発信している。

日鉄はこれに対し、高炉の改修などに少なくとも 27 億ドルを投じる計画を改めて強調。 「生産移管を防ぐ唯一の方法は買収を完了させること」、「US スチールは買収がなくなれば高炉などへの投資は継続しない、と表明しており、時がたてば工場が閉鎖される可能性が高くなる」と訴えた。 買収をめぐっては、米政府で安全保障への影響を調べている対米外国投資委員会 (CFIUS) の審査期限が今月下旬に迫っている。 買収の年内完了をめざす日鉄は、従業員や組合執行部に理解を求める活動を強めている。 (山本精作、asahi = 12-9-24)


日本製鉄の US スチール買収、バイデン政権は「阻止」の決定棚上げか

バイデン米大統領が近く「阻止」を決めるとみられていた日本製鉄による米鉄鋼大手 US スチールの買収計画について、決定が棚上げされる可能性が出てきた。 米ホワイトハウス高官が「そのような決定は短期的にはなさそうで、大統領選後まで行われない可能性もある」と示唆したと、米紙ワシントン・ポストが 13 日報じた。 ホワイトハウスのジャンピエール報道官は同日の記者会見で、買収案の審査をしている対米外国投資委員会 (CFIUS) が「プロセスを進めている」と説明。 「彼らの最終報告書が大統領に提出されれば、大統領が決断を下すだろう」と述べるにとどめた。

日鉄による US スチールの買収については、ワシントン・ポストが 4 日、バイデン氏が近く差し止めを正式に発表すると報道。 米欧メディアが一斉に同様の見方を伝えていた。 だが、その後も、バイデン氏や米政府はこの件について具体的な発言を避けていた。 同紙は 13 日、3 人の関係者の話として、バイデン氏が直ちに差し止めに動くことはないとの見方を伝えた。 報じられたバイデン氏の方針に対し、反対の声が多く出たことを考慮したという。 ただ、バイデン氏は今もこの買収案に反対している、とも同紙は伝えている。

日鉄は US スチールの老朽化した生産設備の更新などに多額の投資をする方針で、雇用の維持も約束している。 一連の報道をうけ、米国内でも「買収反対という恥ずべき対応について慎重に考える価値がある(米紙ウォールストリート・ジャーナル)」などと批判が噴出。 日鉄幹部も急きょ渡米し、米政府側と会談して改めて買収案に理解を求めるなど、波紋が広がっていた。 US スチールは創業 120 年を超える老舗企業で、外資企業による買収に反発を覚える人も少なくない。 そのため、11 月の大統領選に立候補している民主党のハリス副大統領、共和党のトランプ前大統領ともに、この買収案に反対している経緯がある。 (ワシントン・榊原謙、asahi = 9-14-24)


日鉄会長、US スチール買収で大統領に異例の要請書 「適正判断を」

日本製鉄の橋本英二会長が、米 US スチールの買収計画について適正に判断してほしい、との要請書を米バイデン大統領に 8 日付で送付したことが日鉄関係者の話で分かった。 日本企業のトップが米大統領に直接、要請書を送るのは異例だ。

要請文は US スチールのデビッド・ブリット CEO らとの連名。 バイデン政権は国家安全保障上の懸念を理由に、日鉄による US スチール買収計画を阻止する方針を近く表明する、と 4 日に報じられていた。 日鉄と US スチールはかねて、買収の狙いは米国生産を強化することで、米国の国家安全保障にはむしろプラスになると主張してきた。 日鉄関係者は今回の文書の詳細を明かしていないが、これまでの主張も踏まえて適正に判断してほしいと要請する内容とみられる。 (山本精作、asahi = 9-13-24)


米政権、安保上の懸念理由に「待った」か 日鉄の US スチール買収案

日本製鉄による米鉄鋼大手 US スチールの買収計画に対し、バイデン米大統領が正式に「阻止」を表明する見通しになった。 米政府の審査機関が近く示す「国家安全保障上の懸念」が理由になるとみられる。 買収計画は 11 月の大統領選でも焦点となっており、民間企業同士の合意に現職大統領が「待った」をかける異例の展開になりそうだ。

b>米「内向き志向」反映、日米関係にも影 バイデン氏「買収阻止」方針

米欧の主要メディアが 4 日、相次いで報じた。 ロイター通信はバイデン氏が週内にも「阻止」を表明すると伝えた。 日鉄は昨年 12 月、約 140 億ドル(約 2 兆円)で US スチールを買収することで同社と合意したと発表。 外資企業による米企業の買収案を調べる対米外国投資委員会 (CFIUS) が審査に入っていた。 ロイターによると、CFIUS は日鉄にあてた 8 月 31 日付の書簡で、買収は「米国の鉄鋼生産に打撃を与える」などと指摘し、安保上のリスクになると伝えたという。 一方、ホワイトハウス高官は 4 日、朝日新聞の取材に「CFIUS はまだ大統領に勧告を出していない」とした。

米国の法律は、CFIUS が買収を認めない勧告をした場合、大統領は買収を「停止または禁止できる」と定める。 企業側は、買収案をそのまま実行に移すことが難しくなる。 4 日の米株式市場では、買収成立が遠のいたとの見方などから、US スチールの株価が一時 20% 超急落した。 バイデン氏が強硬姿勢に傾く背景には、接戦の大統領選がある。 US スチールが本社を置く東部ペンシルベニア州は、民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領がほぼ互角の戦い。 同州を失えば勝利は厳しくなる。 地元に組織票を持つ有力労働組合が買収に反対しており、トランプ氏は「就任すれば阻止」と早々に宣言した。 バイデン政権としては、大統領権限を活用して買収を実際に阻止してみせ、労働者票をハリス氏に誘引する狙いもあるとみられる。

日鉄は 5 日、「CFIUS からの審査結果は受領していない。 米国政府により、法にのっとり、適正に審査されるものと強く信じている」とのコメントを発表し、年内の買収完了をめざす構え。 幹部は取材に「大統領選と結びつけられているとしか思えない」と話した。  (日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画に対し、バイデン米大統領が正式に「阻止」を表明する見通しになった。 米政府の審査機関が近く示す「国家安全保障上の懸念」が理由になるとみられる。 買収計画は 11 月の大統領選でも焦点となっており、民間企業同士の合意に現職大統領が「待った」をかける異例の展開になりそうだ。

米「内向き志向」反映、日米関係にも影 バイデン氏「買収阻止」方針

米欧の主要メディアが 4 日、相次いで報じた。 ロイター通信はバイデン氏が週内にも「阻止」を表明すると伝えた。 日鉄は昨年 12 月、約 140 億ドル(約 2 兆円)で US スチールを買収することで同社と合意したと発表。 外資企業による米企業の買収案を調べる対米外国投資委員会 (CFIUS) が審査に入っていた。 ロイターによると、CFIUS は日鉄にあてた 8 月 31 日付の書簡で、買収は「米国の鉄鋼生産に打撃を与える」などと指摘し、安保上のリスクになると伝えたという。 一方、ホワイトハウス高官は 4 日、朝日新聞の取材に「CFIUS はまだ大統領に勧告を出していない」とした。

日鉄は 5 日、「CFIUS からの審査結果は受領していない。 米国政府により、法にのっとり、適正に審査されるものと強く信じている」とのコメントを発表し、年内の買収完了をめざす構え。幹部は取材に「大統領選と結びつけられているとしか思えない」と話した。 (日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画に対し、バイデン米大統領が正式に「阻止」を表明する見通しになった。米政府の審査機関が近く示す「国家安全保障上の懸念」が理由になるとみられる。買収計画は11月の大統領選でも焦点となっており、民間企業同士の合意に現職大統領が「待った」をかける異例の展開になりそうだ。  米欧の主要メディアが4日、相次いで報じた。 ロイター通信はバイデン氏が週内にも「阻止」を表明すると伝えた。 (ワシントン・榊原謙、山本精作、asahi = 9-5-24)

日本製鉄、US スチールの 2 製鉄所への 1,900 億円の追加投資を発表

日本製鉄は 29 日、買収を計画している米鉄鋼大手 US スチールの製鉄所に対し、13 億ドル(約 1,900 億円)を追加で投資する計画を発表した。 全米鉄鋼労働組合 (USW) などから買収計画への理解を取り付ける狙いがありそうだ。 計画では、ペンシルベニア州のモンバレー製鉄所では少なくとも 10 億ドルを投じて熱延設備の新設か更新を進めて、高級鋼材の供給力を増強する。 インディアナ州のゲイリー製鉄所では高炉の改修に 3 億ドルを充て、稼働できる期間を約 20 年延ばす。

日鉄は今年 3 月、US スチールに 2026 年までに 14 億ドルを投資すると発表していた。 今回公表した 13 億ドルの投資は大部分が新たな追加で、投資は 27 年以降も続く見通しという。 日本製鉄の森高弘副会長は「両製鉄所の強い鉄鋼業の伝統を今後、何世代にもわたって成長・発展させることに貢献できる」とのコメントを出した。 投資対象のモンバレー製鉄所があるペンシルベニア州は、11 月の米大統領選で激戦が予想されている州の一つとされる。 (山本精作、asahi = 8-29-24)

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日本製鉄、ポンペオ氏をアドバイザーに起用 - US スチール買収に向け

→米国は同盟国との提携を通じて製造業の基盤拡大を - ポンペオ氏
→ポンペオ氏、トランプ氏返り咲きなら第 2 次政権入りの可能性

日本製鉄は US スチール買収案の完了に向け、ポンペオ元米国務長官を起用した。 この買収を巡っては、トランプ前大統領とバイデン現大統領の両方が反対している。 匿名を条件に語った複数の関係者によると、トランプ政権で国務長官を務めたポンペオ氏は、この買収案を巡り日本製鉄のアドバイザーを務める。 買収案は国家安全保障の観点から審査が進められているほか、全米鉄鋼労働組合 (USW) の反対に直面しており、その行方は不透明だ。

日鉄は文書でこの起用を確認し、ポンペオ氏のこれまでの実績を称賛した。 同社の発表文の中でポンペオ氏は、米国は同盟国と提携することで製造業の基盤を拡大すべきだと主張。 「米国の象徴的な企業を再生させるだけでなく、米国のサプライチェーンを強化し、米国の雇用を守るために最善の道を提供する取引のために働けることを誇りに思う」と述べた。 ポンペオ氏起用のニュースを受けて、US スチール株価はそれまでの下げから切り返し、一時 1.5% 上昇。 その後は上げ幅を削っている。

日鉄はこの買収を中国への対抗策と位置づけており、US スチール買収で、市場を支配しようとする中国企業に対抗できるだけの規模を持つことになると主張している。 今週の共和党全国大会で演説したポンペオ氏は、11 月にトランプ氏が勝利した場合、第 2 次トランプ政権への復帰が有力視されている。 ポンペオ氏は買収には触れなかったが、中国には言及。 「中国共産党は今日に至るまで米国にとって国外からの最大の脅威となっているが、トランプ大統領の下で、われわれはかつてないほど立ち向かった」と語った。 (Josh Wingrove、Jennifer Jacobs、Bloomberg = 7-20-24)


日鉄、米 US スチール買収完了を延期  「米当局から追加資料請求」

日本製鉄は3日、米鉄鋼大手 US スチールの買収完了時期を、当初計画の「9 月まで」から「12 月まで」に延期すると発表した。 米司法省から独占禁止法をめぐる審査に関して資料の追加請求を受けたため、という。 日鉄は発表で「引き続き関係当局の審査に全面的に協力し、強い決意で本買収を完了させる」とコメントを出した。 日鉄は昨年 12 月に US スチールの買収計画を公表。 今年 4 月にあった US スチールの臨時株主総会での承認を踏まえ、9 月までの完了を目指していた。

ただ、買収計画には全米鉄鋼労働組合 (USW) が反発。 米大統領選を 11 月に控えるバイデン大統領とトランプ前大統領が労組票の取り込みを競い、USW に寄り添う姿勢を示すなど政治問題になっている。 日鉄は今回の延期によって、結果的に 11 月の米大統領選後の買収完了をにらむことになる。 買収計画をめぐっては独禁法をめぐる米司法省の審査とは別に、米政府の対米外国投資委員会による安全保障の観点からの審査も行われている。 (山本精作、asahi = 5-3-24)


日本製鉄、米大手鉄鋼メーカー「US スチール」買収で合意

日本製鉄は、アメリカの大手鉄鋼メーカー「US スチール」を買収することで両社の間で合意したと発表しました。 買収額はおよそ 2 兆円にのぼる見通しで日米の鉄鋼業界の大型再編となります。 発表によりますと日本製鉄は、アメリカの大手鉄鋼メーカー「US スチール」を買収することで両社の間で合意し、US スチールの株主総会や関係当局の承認が得られることなどを前提に、来年中に日本製鉄が US スチールを子会社化するとしています。 買収額はおよそ 2 兆円にのぼる見通しで、実現すれば、日本とアメリカの鉄鋼大手どうしの大型再編となります。

アメリカの鉄鋼市場は、輸出に依存しない国内需要を中心とする安定的な市場で、さらに経済安全保障の観点から国内での安定供給を目指すいわゆる「国内回帰」が進むことで今後、さらに市場の成長が見込まれるとしています。 日本製鉄は買収を通じてアメリカでの事業の強化につなげるほか、脱炭素に向けた環境技術など両社が持つ技術を組み合わせることで世界の鉄鋼メーカーの間での競争力の強化につなげる狙いがあるとしています。 (NHK = 12-18-23)