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相次ぐ闇バイトの事件 大学生や労働局も、あの手この手で防止対策

「闇バイト」が関わる事件が各地で相次いでいる。 自宅で襲われたり、特殊詐欺で多額の現金を詐取されたりするケースもある。 被害防止や闇バイトに応募して犯罪に加担しないために、警察だけでなく、大学生らも注意喚起や啓発に力を注いでいる。

愛知県警は 11 月 12 日、金山駅(名古屋市中区)で高齢者を中心に不審な訪問者への注意を呼びかけるチラシを配布した。 チラシを受け取った東海市の 60 代女性は 20 代の息子と暮らす。 「ピンポンが鳴っても知らない人なら出ない。 息子にも(闇バイトの)誘いには乗らないでと話している。」という。 県警によると、「不審な訪問があった」などの 110 番通報は 11 月 - 12 月 18 日の期間で 481 件あり、多い日で 1 日 50 件ほどの通報があったという。

主な内容は「『屋根の点検に来ました』と知らない業者が来た」、「不審な訪問販売員が来訪し、家族構成や在宅時間を聞かれた」など。 通報を受けて警察官が駆けつけると、正当な訪問営業だったケースもあり、これらの通報が事件につながったケースはなかった。 ただ、首都圏の強盗事件では事前にリフォーム業者が被害者宅を訪問していたケースもあり、営業を装った強盗の下見が紛れ込んでいる可能性もあるという。 県警の捜査幹部は、同様の悪質な業者が収集した個人情報が事件を主導する「匿名・流動型犯罪グループ」に流出している可能性を指摘。 営業名目での個人情報の抜き取りに注意を呼びかける。

教員のたまごが高校生に「防止」授業

来春から教員になる中京大学の 4 年生が 10 月、教職課程の一環として、愛知総合工科高校(名古屋市千種区)で生徒向けの「SNS 非行・被害防止教室」を実施した。 大学生は事前に闇バイトの実態について県警から学び、国際学部 4 年の杉浦瑛美さんと山口真緒さんは「高額な報酬」、「連絡方法としてダイレクトメッセージを使う」など、クイズ形式で募集の見分け方も教えた。 受講した同校 3 年の高宮城友貴さんは「『叩き』や『逃げ』など闇バイトをいろいろ知ることができた。 お金に目をくらますことなく、(危ない情報を)無視する力を付けたい。」と話した。

県警、労働局とタッグも

三重県警は、犯罪に加担させないための中高生対象の非行防止教室を開催。 SNS 上で不適切な書き込みを警告するサイバーパトロールといった対策に取り組む。 今後は、SNS 上に広告を出すなどして若者に届きやすい注意喚起をするという。 岐阜県警も対策を強化。 11 月に岐阜労働局と「犯罪実行者を募集する手口による強盗・特殊詐欺等対策に関する相互協力協定」を締結した。 連携して、違法な求人募集の情報があれば事業者に確認したり、中高生に闇バイトに加担しないように呼びかけたりするという。

収入を得るために安易に闇バイトに応募せず、ハローワークの活用を促す狙いもあり、協定に基づき啓発動画も制作し、県警のユーチューブで配信している。 (川西めいこ、asahi = 12-31-24)

「闇バイト」の募集と思われる SNS 投稿などの特徴
・ 「ホワイト案件」、「誰でもできる」など、違法でなく、簡単にできることを強調する
・ 「高額バイト」、「日給 5 万 -」などと高額の報酬であることを強調する
・ 「即金」、「お金配ります」と、すぐに報酬が支払われることを示す
・ ダイレクトメッセージから連絡を取り、「シグナル」、「テレグラム」といった匿名性の高いアプリに誘導する


闇バイト対策、SNS 運営 5 社に要請 本人確認の厳格化など 総務省

闇バイトによる強盗事件が相次いでいることを受けて、総務省は 18 日、X (旧ツイッター)などの大規模な SNS を運営する 5 社に対し、アカウント開設時の本人確認の厳格化など対策を取るよう要請した。 SNS 事業者への対策要請は、なりすまし詐欺広告が問題化した 6 月以来、今年 2 回目。 対象は X のほか、メタ、LINE ヤフー、グーグル、ティックトックの 5 社。

闇バイトの募集投稿の削除や、利用者への注意喚起のほか、捜査機関からの照会に円滑に回答できる体制整備も求めた。 業界団体を通じて文書で要請した。 政府の犯罪対策閣僚会議が 17 日にまとめた緊急対策を受けての措置。 法的な強制力はない。 (村井七緒子、asahi = 12-18-24)


DDoS 攻撃は「犯罪のゲートウェイ」 代行サービス利用の少年摘発

サーバーに大量のデータを送りつけてウェブサイトを閲覧できなくする DDoS (ディードス)攻撃について、日本の警察庁などが参加する国際共同捜査で、攻撃の代行サービスサイトの利用者 300 人以上が特定され、そのうち日本人 3 人が含まれていたことがわかった。 同庁が 11 日発表した。 警察庁によると、攻撃サービスを利用していた日本人 3 人のうち 2 人は 10 代の少年で、2021 年に企業や政府機関などに攻撃していたという。 当時 2 人とも中学生で、今年 10 月以降に各地の警察がそれぞれを、電子計算機損壊等業務妨害未遂の疑いで書類送検したり、児童相談所に通告したりした。

1 人は動画配信サイトで DDoS 攻撃を知り、自身の学校のサイトにも攻撃していた。 もう 1 人は、オンラインゲームの仲間からゲーム上で相手の動作を遅らせる手段として、DDoS 攻撃について教わったという。 このほか、攻撃の代行サービスを使って出版社のサーバーに大量にデータを送り負荷をかけたなどとして、警察庁が 20 代の男を電子計算機損壊等業務妨害の疑いで逮捕している。

警察庁は「攻撃についての知見がなくても安価な利用料で攻撃ができてしまい、DDoS 攻撃がサイバー犯罪のゲートウェイになる可能性がある」と危機感を募らせる。 対策として、11 日からネット上で DDoS 攻撃について検索した際に、「犯罪です」と注意喚起をする広告を出す取り組みを始めた。 この捜査は欧州警察機構(ユーロポール)が主導し、これまでに海外のサイト管理者 3 人を逮捕したという。 (板倉大地、asahi = 12-11-24)


闇バイト事件の指示役か 山口県警、関東の 20 代逮捕 強盗予備容疑

山口県光市の住宅街で SNS の「闇バイト」に応募した関東地方の少年 3 人が強盗予備容疑で逮捕された事件で、県警が関東地方に住む 20 代の男を同容疑で逮捕したことが 20 日、捜査関係者への取材でわかった。 県警は男が指示役の一人とみて、首都圏で相次ぐ強盗事件との関連についても調べている。

捜査関係者によると、強盗予備容疑で逮捕され、山口家庭裁判所に同罪で送致された少年 3 人らと共謀し、男は 10 月 20 日午後 8 時ごろ、光市内の建設業の 30 代男性宅周辺で、侵入用の工具を所持し、強盗へ入ろうとした疑いがある。 県警は、男が少年 3 人と面識はなく、事件に関する指示を SNS で送った「リクルーター役」を務めていたとみている。 男は事件当時、少年 3 人と行動を共にしておらず現場にはいなかったという。 (池田良、asahi = 11-20-24)


SNS で「闇バイト」勧誘容疑、道仁会本部捜索 組織的に関与か

詐欺の被害者から現金を受け取る「受け子」などを SNS で募集したとして、指定暴力団・道仁会系組幹部らが職業安定法違反容疑(有害業務募集)で逮捕された事件があり、熊本県警は 12 日、勧誘に組織的にかかわった疑いがあるとして道仁会本部(福岡県久留米市)を同容疑で捜索した。 県警は、受け子といった「闇バイト」が暴力団の資金源になっている可能性があるとみている。

12 日午前 11 時、組織犯罪対策課などの捜査員 35 人が、久留米市京町にある道仁会本部で捜索を始め、段ボール 2 箱分の証拠品を押収した。 県警は「闇バイトについては、今後もあらゆる法令を適用して摘発する」としている。 事件をめぐっては、これまでに道仁会系組幹部、西村達哉容疑者 (27) のほか、熊本市内の姉弟で飲食店従業員の少女 (18) と高校生の少年 (16) の計 3 人が逮捕された。

県警によると、3 人の容疑は、共謀して10 月 10 - 20 日ごろ、SNS に「短期間で高収入、やりたい人いたら連絡ください」と投稿。 応募してきた県内の男子高校生に、詐欺の被害者から現金などを受け取る「受け子」などについての仕事内容を説明したうえで「警察に捕まったりはしません」、「捕まっても黙秘すれば大丈夫です」などと勧誘したというもの。 県警はいずれも認否は明らかにしていない。 職業安定法は「公衆道徳上有害な業務に就かせる目的」で労働者を募集したり、募集情報を提供したりすることを禁じている。 県警によると、この規定を適用した逮捕は初めてだという。 (asahi = 11-12-24)


埼玉・所沢強盗事件のリクルーター役か 男逮捕 SNS で実行役募集

埼玉県所沢市で 10 月に起きた強盗致傷事件で、県警などの合同捜査本部は 2 日、新たに愛知県知多市日長、会社員名倉優也容疑者 (31) を住居侵入と強盗致傷容疑で逮捕し、発表した。 SNS 上で闇バイトを募集し、応募者を現場近くまで派遣する「リクルーター」役とみられるという。 首都圏で相次ぐ強盗事件で、リクルーター役の逮捕は初めて。 捜査関係者によると、名倉容疑者は「金に困ってやった」、所沢の事件の実行犯たちを「(上位の者に)紹介した」などと供述しているという。

県警捜査 1 課によると、逮捕容疑は、他の人物らと共謀して実行役の男 3 人をメッセージアプリを通じてそそのかし、強盗をする決意をさせ、10 月  1 日未明に 3 人を所沢市の住宅に侵入させて 80 代の夫婦を縛るなどし、現金約 16 万円などを奪ったというもの。 スマートフォンで使っていたアプリの解析結果などから、名倉容疑者を特定したという。

捜査関係者によると、名倉容疑者は匿名性の高いアプリ「シグナル」と「テレグラム」を使用して、実行役に「ホワイト案件」、「物品の運び」、「リスクはない」などと伝え、現場近くまで向かわせたとみられるという。 県警は、強盗をする際の具体的な指示は別の人物がしたとみている。 所沢の事件を巡っては、これまでに実行役とみられる 20 − 40 代の男 4 人が住居侵入と強盗致傷の罪で逮捕・起訴されたほか、奪われたクレジットカードを使ってショルダーバッグ(販売価格 34 万 8 千円)を買おうとしたとして 20 代の男が詐欺未遂容疑で逮捕されている。 (浅田朋範、asahi = 11-2-24)


横浜市青葉区で強盗殺人容疑 千葉の 22 歳の男を逮捕 数人と共謀か

横浜市青葉区の住宅で 16 日朝、手足を縛られた住人の男性の遺体が見つかった強盗殺人事件で、神奈川県警は 19 日、千葉県印西市木下、自称個人事業主の宝田真月容疑者 (22) を強盗殺人容疑で逮捕し、発表した。 容疑を認めているという。 逮捕容疑は、ほかの複数人と共謀し、今月 15 日ごろ、横浜市青葉区の住宅に押し入り、住人の無職後藤寛治さん (75) に暴行を加えて殺害し、現金約 20 万円を奪ったというもの。

捜査関係者によると、後藤さんは顔や上半身を硬いもので殴られた痕が複数あり、死因は全身打撲による出血死だった。 手と足を縛られて口を塞がれた状態で横向きに倒れていたという。 15 日未明に後藤さん宅近くの防犯カメラの映像で、黒っぽいワンボックスカーが幹線道路に向けて走り去る様子が確認されており、県警は実行犯が乗った車とみて調べている。 車は千葉方面に逃走した可能性が高いという。

室内から検出された指紋の中には、千葉県市川市の住宅に男らが押し入り住人女性を連れ去った事件で、千葉県警に監禁容疑で現行犯逮捕された住所・職業不詳の藤井柊容疑者 (26) のものもあったという。

後藤さん宅からは 2 種類以上の靴の足跡が見つかっているほか、防犯カメラの映像などから、3 人以上の男が事件に関与した疑いが浮上。 8 月以降相次ぐ店舗や住宅を狙った強盗事件を捜査する 1 都 3 県の合同捜査本部は、後藤さん宅の事件にほかに関与した人物がいるとみて調べている。 (稲葉有紗、中嶋周平、asahi = 10-19-24)


応募しないで! 「深夜に人を」、「高収入」 闇バイト募集内容を発表

首都圏を中心に闇バイトが絡む強盗事件が相次いでいることを受け、警察庁は、逮捕された実行役らが参加した「闇バイト」の募集内容を発表し、こういった求人に応募しないように呼びかけた。 一方、闇バイトに応募した少なくとも 3 人が、警察に相談して保護されたことも判明した。 警察庁によると、一連の事件で逮捕された実行役らが応募した SNS 上の投稿には、「短期間で高収入」、「お金配りますよ」、「深夜に人を運んでください」、「高額収入の引越しバイトの募集」といった文言があった。

高収入を示す文言とともに、「即日払い」など報酬をすぐに得られるといった内容が多く見られる。 また、「ホワイト案件」などと違法ではないことを強調したり、「ドライバー」や「荷物を運ぶ仕事」といった表現で犯罪とはわからなかったり、楽な仕事と強調したりする特徴もあった。 こうした募集では「本日稼働可能」と即座に参加できることや、「要普通免許」と運搬に対応できることを条件にしていることも多いという。

一連の事件では、実行役らがダイレクトメッセージを送って応募をすると、匿名性の高いアプリ「シグナル」に誘導されていた。 その後、免許証の画像などを送信させられ、個人情報をもとに脅されて強盗などを指示されるといった流れだ。 警察庁では18日以降、X (旧ツイッター)を通じて闇バイトで犯罪に加担しないよう呼びかけてきた。 その後、闇バイトに応募した少なくとも 3 人が、警察に相談して保護されたという。

うち 1 人は SNS で応募した後に匿名性の高いアプリで個人情報を指示役に送らされ、犯罪行為に加担するように指示されたが拒否したという。 警察庁の呼びかけを知り、23 日に相談専用電話 (#9110) に電話し、その日のうちに保護された。 警察庁は 4 月から、X 上で闇バイトの募集とみられる投稿を AI (人工知能)が検索し、職員が「犯罪実行者を募集しているおそれがあります」などと返信する取り組みを始めている。 半年間で約 2,700 件に返信したという。 (板倉大地、asahi = 10-26-24)


「勇気を持って引き返して」闇バイト絡む強盗、警察庁幹部が X で発信

犯罪に加担しようとしている方へ、伝えたいことがあります - -。 首都圏で相次ぐ「闇バイト」が絡む強盗事件を受けて、警察庁は、犯罪に加担しないよう呼びかける動画を X の公式アカウントに投稿している。 動画は 1 分弱。 生活安全企画課の阿波拓洋課長が「強盗は凶悪な犯罪です」と視聴者に向かって語りかける。 闇バイトでは、犯罪グループが SNS で高額の報酬を示し、犯罪の実行役を募集する。 19 日までに 1 都 3 県の 11 事件で逮捕された約 30 人のうち、8 割が 10 - 20 代。 「借金の返済がきつく、闇バイトに応募した」と供述する 20 代の容疑者もいた。

一方で、仕事が「ドライバー」などと思って応募したとする容疑者もいた。 指示役に身分証を送ってしまい、逃げられなくなってから強盗を指示されたという。 「逃げたら殺す」と指示役から脅されたケースもある。 阿波課長は動画で、脅迫を受けている場合でも警察に相談してほしいとして、「あなたや、あなたのご家族を確実に保護します」と訴える。 動画の最後には、「安心して、そして勇気を持って今すぐ引き返してください」と呼びかけた。 警察庁は 18 日、全国の警察に対しても、動画の内容と同様に、警察への通報の呼びかけや相談者の保護を強化するよう指示した。 (板倉大地、asahi = 10-20-24)


カンボジアの拠点から特殊詐欺の電話か 日本人 12 人逮捕

カンボジアの拠点から特殊詐欺の電話をかけて、富山県に住む 40 代女性から現金をだまし取ったとして、茨城県警察本部などが詐欺の疑いで逮捕状を取った 10 代から 40 代の日本人 12 人が現地から日本に 7 日朝移送され、移送中の航空機内で逮捕されました。 逮捕された 10 代から 40 代の日本人12 人は 2 つのグループに分かれてカンボジアから移送され、7 日朝、羽田空港と成田空港に相次いで到着しました。 茨城県警察本部などによりますと、12 人はことし 8 月、富山県に住む 40 代の女性に警察官などをかたる手口でうその電話をかけ、現金をだまし取った詐欺の疑いが持たれています。

12 人はことし 8 月、カンボジア南東部の都市バベットにあるビルの一室で現地当局に保護され、捜査関係者によりますと、部屋からは複数の携帯電話やリストが見つかったことなどから捜査を進めた結果、特殊詐欺に関わった疑いがあることがわかったということです。 いずれも現地から日本に電話をかける「かけ子」だったとみられ、12 人の中には現地当局に対し「高収入で簡単な仕事があると誘われた」などと説明している人物もいるということです。 警察は「闇バイト」の求人に応募してカンボジアに渡航していたとみて、茨城県内の警察署に身柄を移して取り調べ、グループの実態解明を進めることにしています。

容疑者たちは茨城県内の警察署へ

容疑者たちを乗せた飛行機は午前 6 時 50 分ごろ、成田空港に到着しました。 捜査員に囲まれながら飛行機から降りたあと、旅客ターミナルのロビーを進み、中には車いすに乗った容疑者もいました。 容疑者たちはマスクをつけていたほか、フードや帽子をかぶったり、うつむいたりしていて、表情をうかがうことはできませんでした。 そして地下の駐車場で警察車両に乗り込み、成田空港から茨城県内の警察署に向かいました。 (NHK = 10-7-24)


台風で「多摩川氾濫」のデマ X 社、行政、利用者が今後すべきことは

災害時、X 上のデマに惑わされないために

災害時、X 上で偽・誤情報があふれかえり、問題になっている。 7 - 8 月に相次いだ台風や大雨の際も、偽の画像などで注目を集める投稿が相次いだ。 背景には、表示回数稼ぎの「インプレゾンビ」の影響が指摘される。 自治体や専門家は、公式情報を見るよう呼びかけている。

氾濫していないのに

台風 10 号の影響で関東地方でも激しい雨が降った 8 月下旬。 X 上では、数年前の増水時や他国の洪水の映像を添付して「近所の多摩川氾濫しそう」などと書いた投稿が相次いで拡散された。 8 月 30 日朝、X 上では「多摩川氾濫」のキーワードがトレンド入りし、こうした投稿がさらに多くの人の目に触れた。 しかし、多摩川を管轄する国土交通省京浜河川事務所によると、多摩川が氾濫したという事実はない。 多摩川には 30 日午後 1 時 20 分から多摩川氾濫注意情報、午後 1 時 50 分から多摩川氾濫警戒情報が発令されたが、午後 2 時に解除されたという。

副知事が注意喚起

東京都の宮坂学副知事は、X の個人アカウントで、「X のトレンドに多摩川氾濫が入っており、一部昔の写真が使われてるとのこと。 データや映像は公式のサイトから一次情報をご確認ください。」と注意喚起をした。

都は災害時の情報収集のために X の投稿を監視し、分析するツールを導入している。 デマや誤情報とみられる災害情報が拡散しているのが見つかり、都民が惑わされて生活や安全への影響が大きいと判断した場合には、事実確認をした上で注意喚起することも想定しているという。 今回は、「大規模災害ではなかったので(発信のための)人的体制を組んでいなかった(担当者)」ことや、安全を脅かす大きな影響があるとは判断しなかったことから、都として偽・誤情報への注意喚起はしなかったという。 今後は活用を検討するとしている。

自動的にコピペし投稿

災害時の SNS の動向に詳しい米重克洋・JX 通信社代表は、「平時の多摩川は河川敷に水がないために増水した様子を『氾濫』と誤解して投稿するケースや、過去の災害時の写真を使い回してあおるケースは以前にもあった」と指摘する。 ただ、投稿の表示回数に応じて収益が得られる仕組みが昨年導入され、「(表示回数を稼ごうとする)『インプレゾンビ』の影響も大きくなった」という。 何らかの自動的な仕組みを使って拡散された投稿の文言を「コピペ」し、大量に投稿したとみている。

7 月に山形、秋田両県で記録的な大雨が降った際には、大雨関連の投稿中のリンク先がアダルトサイトになっていたケースが相次いだ。 X に投稿された、道路が冠水している写真や雨雲レーダーの画像をクリックすると、外部の出会い系サイトに誘導されるものだ。 X (旧ツイッター)は、日本では東日本大震災の時に利用者が増え、数千万人が使う「インフラ」として根付いてきた。 地震などが発生した瞬間の投稿も多く、国や自治体も防災の情報発信に使っている。

今後するべきことは

今後、どうすればよいのか。 IT ジャーナリストの西田宗千佳さんは、「X 上でこれだけ正しい情報が見えづらくなっていることを考えると、自治体や国の機関は、他の複数の SNS にも一度に投稿し、正しい情報を住民にしっかり発信する必要がある」と話す。 また、X 社に求める対策として、しっかりとコンテンツ・モデレーション(投稿の削除・監視)をすること、写真に撮影日時や投稿者の情報を表示させたり、生成 AI を使って作られた画像の場合はそう表示させたりすることを挙げた。 「国や自治体も X 社に対策を求めていくべきです。」

また、X の利用者に対しては、内容の真偽を問わず注目を集めただけで自動的に表示されやすくなる「おすすめ」や「トレンド」のタブではなく、フォロワーの投稿のみが表示される「フォロー中」のタブを見ることをすすめる。 「非常時こそ、自動的におすすめされてくる情報には注意が必要。 ふだんから、自分が住む自治体や気象庁、報道機関などのアカウントをフォローしておき、信頼できるタイムラインを作っておくことが大切です。」 (田渕紫織、asahi = 9-8-24)


テレグラムの創業者、パリで逮捕 犯罪での利用、管理しなかった疑い

フランスの警察は 24 日夜、通信アプリ「テレグラム」の創業者で最高経営責任者 (CEO) のパベル・ドゥロフ氏をパリ郊外の空港で逮捕した。 仏テレビ TF1 が報じた。 正式な捜査に入る前の予備捜査の一環で、テレグラムが犯罪の連絡手段に使われているにもかかわらず、運営者として監視や管理を怠ったなどの疑いが持たれているという。 ドゥロフ氏は逮捕時、プライベートジェットでアゼルバイジャンからの移動中だったという。

ドゥロフ氏はロシア人。 2013 年に兄とテレグラムを立ち上げ、アラブ首長国連邦 (UAE) のドバイに拠点を置いている。 高度な暗号化技術による高い匿名性から、犯罪グループの連絡手段として使われ、日本でも「ルフィ」などと名乗る広域強盗事件のグループが使っていた。 ドゥロフ氏は今年 3 月、英フィナンシャル・タイムズ紙のインタビューに対し、テレグラムの利用者が世界で 9 億人に達したと明らかにしている。 (ブリュッセル・牛尾梓、asahi = 8-25-24)


74 歳が 1.4 億円の特殊詐欺被害 「逮捕状出ている」と電話 埼玉

埼玉県警朝霞署は 16 日、埼玉県志木市内に住む無職女性 (74) が特殊詐欺の被害に遭い、現金約 1 億 4 千万円をだまし取られたと発表した。 県内の特殊詐欺の被害額としては、2014 年にあった事件と並んで過去最高という。 署によると、3 月 26 日に女性宅の固定電話に警察官をかたる男から電話があった。 電話や SNS のメッセージで「あなたの口座が犯罪に悪用されている」、「あなたに逮捕状が出ている」と伝えられたほか、検察官を名乗る男からも「資金調査でお金を振り込んでもらえれば逮捕状を取り下げることができる」と提案されたという。

女性は 3 月 26 日 - 4 月 30 日、指示通りにオンラインバンキングで複数回、指定の口座に送金。 1 回あたり 300 万 - 2 千万円で、被害総額は約 1 億 4 千万円にのぼるという。 女性は一部の送金について記憶があいまいだといい、被害額は今後増える可能性がある。 15 日に金融機関から署に連絡があり、被害が発覚した。 (恒川隼、asahi = 5-16-24)


「いずも」ドローン動画はフェイクか 「情報戦」をしかけられた日本

本物か、捏造されたフェイクなのか - -。 海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」をドローンから撮影したとみられる動画が SNS で拡散し、真偽をめぐって「論争」となっている。 自衛隊・米軍施設の警備のあり方や、ドローン技術を活用した兵器への対応にも関わってくるこの問題。 昨年、インド太平洋を長期航海したいずもに同乗取材した内容を踏まえ、今回拡散した動画が日本の防衛態勢に突きつけた課題を検証する。



問題の動画は約 20 秒間。 海自横須賀基地(神奈川県横須賀市)に停泊中のいずもに、ドローンが飛行甲板の後方から近づき、甲板上を低空で艦首に向けて飛行しながら撮影したとみられる様子が収められている。 左上には中国の大手動画共有サイト「bilibili (ビリビリ)」のロゴマークが記されている。 3 月下旬から SNS 上で確認されるようになった。 国内では、小型無人機等飛行禁止法に基づき、対象防衛関係施設の上空で管理者の同意を得ずにドローンを飛ばすことが禁止されており、自衛隊や米軍の横須賀基地も対象となっている。

木原稔防衛相は 4 月 2 日午前の記者会見で「悪意をもって加工、捏造されたものである可能性を含めて現在分析中だ」と発言。 生成 AI (人工知能)によって捏造された「フェイク動画」の可能性を示唆した。 一方、海自トップの酒井良海上幕僚長は同日午後の記者会見で「判断しようがない。 不自然な点もあると思うが、完全にフェイクだというほどのエビデンスを持ち合わせていないので、私としては判断しかねる」と述べた。 「大臣の会見より、若干、トーンを落とした言いぶり(防衛省幹部)」となった。

「いずも」動画に反応すれば「思うツボ」 専門家は「冷静な議論を」

実際に動画を見ると、いずもの後方、艦尾側から低空で近づき、飛行甲板上を飛行しながら、艦首方面に進んでいく様子が収められている。 いずもが停泊している岸壁の右側には、海自横須賀地方総監部の庁舎が見える。 艦首の前方には米海軍横須賀基地の施設も並び、停泊している潜水艦やイージス艦なども確認できる。 さらに、その後方には、京浜急行・汐入駅近くのホテルやヴェルニー公園も見え、この一帯の建物や施設の配置と一致している。

番号「83」がよく見えないから本物なのか?

動画の真偽をめぐって「論争」になっているのは、艦番号だ。 動画では、飛行甲板の艦尾に掲げられた自衛艦旗の横に数字を確認できる。 本来なら、いずもの艦番号である「83」と記されているはずだが、「8」のみが薄く見えて、「3」は識別できない状態だ。 SNS 上では、この「83」の「3」が見えていないことを根拠に、「動画の信頼性は高い」という主張がみられる。

どういうことなのか。 「空母化」される護衛艦いずもは、飛行甲板上で空自が導入する F35B 戦闘機を発着艦させられるように、20 年 5 月 - 21 年 6 月、ジャパンマリンユナイテッド (JMU) 横浜事業所磯子工場(横浜市)で第 1 次の改修工事を受けた。 F35B は、排気口の向きを操作して垂直に着艦する。その際、数百度の排気熱が甲板にもろに吹き付けられる。この熱から甲板を保護するため、艦首から艦尾にかけて 5 カ所ある発着艦スポットのうち、艦尾側の第 4、第 5 スポットの周辺の甲板の耐熱が強化された。

曇天時や、雨天でぬれている際の護衛艦いずもの飛行甲板。 艦尾の艦番号「83」は見にくい状況だ。 「実写説」によれば、この改修工事の結果、甲板上で耐熱が強化された側の「8」と、改修されていない側の「3」の二つの数字の見え方に差が生じたという説明になっている。 動画では、その数字の見え方の違いまで一致していることから、「実写された可能性が高い」という趣旨の主張が展開されている。

そもそも、いずもの艦番号は「183」。 「海上自衛隊の使用する艦船等の塗粧及び着標に関する訓令」や関連する通達に基づき、艦載機から確認しやすいよう、「艦番号の末尾2数字を標記することができる」と定められているため、「83」と記されることになっているのだ。 中国などが宇宙空間で運用する偵察衛星から艦番号を識別されないようにするため、2019 年 12月、「飛行甲板上に艦番号は記載しないことを標準とする」と部内の規則が変更された。 これ以前に進水・就役している艦艇の中には、視認されにくい塗装に塗り直された状態で艦番号が残っている艦も多い。

ただ、記者が昨年 8 月、いずもの長期航海に同乗した際に甲板上や艦載ヘリコプターから撮影した写真や動画を改めて確認したところ、「8」と「3」の塗装の色や濃さに明確な違いはなかった。 その一方で、天候や、上空から撮影する際の角度によって、数字の見え方に違いがあることが分かった。 今回のような晴天時、艦尾側の真後ろの上空から撮影した場合には、「8」と「3」の見え方に違いはなかったが、曇天や、雨天で甲板上がぬれている場合、上空から「3」を視認できないケースがあった。

SNS 上で公開されているいずもの動画は、晴天時、後方から近づきながら撮像された構図だ。 こうした状況で、数字の見え方に差が生じる動画の内容と、昨夏の取材時の状況とは整合していないと言える。 さらに、甲板上で耐熱が強化された部分と、数字が塗装されている部分とは重なっていないことも分かった。 改修工事の結果として「8」と「3」の見え方に差が生じた、という主張の根拠自体を確認できなかった。

ほかにもこの動画から読み取れることがある。 空母化の改修を経て、いずもの飛行甲板には、艦首から艦尾まで 1 本の黄色い線が引かれた。 「トラム・ライン(滑走路標示線)」と呼ばれ、艦載された戦闘機のパイロットが発艦へ向けて滑走する際、機体の中心をあわせる目安となる線だ。 トラム・ラインの艦首側の先端には、滑走路の終端を示し、発艦を完了させる目印となる黄色い横線(バウ・ライン)も引かれた。 公開されている動画には、改修によって引かれたこうした標示も確認できる。 実写だとすれば、改修が完了した 21 年 6 月以降のいずもの現況と細部も一致していることになる。

一方、フェイク動画だとすれば、「改修内容を精巧に反映して信頼性を高めようとした狙いが読み取れる(海自幹部)」という。 一連の改修では、甲板上で滑走路部分とエプロン地区とを分ける目印として艦首から艦尾にかけて紅白の線も引かれた。 動画を見ると、実物よりも赤い部分の色が薄く、色彩もぼやけている印象を受けた。

「艦載レーダーによる探知は無理」

公開された動画について、海上自衛隊幹部は「現時点では、捏造されたフェイクの可能性があるとみているが、真偽のいずれも決定的な根拠と言えるものがない」と話す。 防衛省関係者によると、「フェイク」とする最大の根拠は、横須賀地方総監部の敷地内に設置されているドローンの探知機が今回の動画の内容に該当する飛行を探知していないからだという。 「敷地内のどこに設置されているのかは明らかにできないが、いずもを含めて停泊している艦艇に近づいてくるドローンがあれば、探知できる位置に設置している」と関係者は話す。

ただ、この探知機は防衛省が独自に開発した装備品ではなく、市販の機器だとされる。 酒井海幕長は会見で「平素より厳重に監視しているエリア。 基地警備に必要な装備を備えている」と話すが、防衛省幹部は「軍事施設の監視専用に開発されたものではなく、民生品だ。 この探知機が見落とすことは絶対にないのか、と問われると、100% の自信を持って『ない』とは答えられない」と話す。

海自最大の護衛艦いずもは、周辺の航空機や飛来するミサイルへの警戒のため対空レーダー「OPS-50」を艦載しているが、海自幹部は「高性能レーダーでも、ドローンは小さすぎて映らない。 機器による監視には技術的な限界がある。」と打ち明ける。 防衛省関係者によると、フェイク説のもう一つの根拠は、「目撃者がいない」ということだ。 護衛艦内には停泊中でも 24 時間態勢で一定の乗員が詰めており、無人の状態になることはない。

国内では、小型無人機等飛行禁止法に基づき、対象防衛関係施設の上空で同意なくドローンを飛ばすことは禁止されており、いずもが停泊する総監部一帯や隣接する米軍の横須賀基地も対象となっている。 ただ、これらの区域に近いヴェルニー公園は、停泊中のいずもを前方の正面から撮影できるポイントとして有名で、周辺には商業施設もあり、普段から人の往来も多い一帯だ。

「飛行甲板上にドローンを飛ばして撮影していたのであれば、艦内の誰かが気づくはずだ。 公開されている動画の通り、日中であれば平日でも土日でもこの一帯には一定の数の人がいる。 にもかかわらず、甲板上を飛行しているドローンを見たという通報もない。 そんな状態で撮影したとはなかなか考えにくい。(防衛省関係者)」

防衛省内では、「海面の動きが不自然」、「基地内の人や車が少なすぎる」と動画の不自然さを指摘する声がある一方、艦橋のガラスの反射や後方の高速道路の車の動きも確認できることから「実写の可能性が高い。 逆に、ここまで細部を実物に似せて再現する手間とコストをかけた動画を公開する狙いが理解できない。」と、真偽双方の受け止めがある。 「動画の中で、決定的に『ここは捏造された部分だ』と確信を持って言える要素があるわけではない」と明かす幹部もいる。

ウクライナ戦争をはじめ、最近の戦争・紛争で、ドローンは重要な役割を担ってきた。 人的な損失を最小限に抑えつつ、相手の司令部など重要施設や拠点を攻撃できるうえ、防空システムも妨害できる。 搭載できる爆薬の量が少なく完全に破壊できなくても、相手の高価な兵器の「弱点」をピンポイントで狙える。 危険な地域の情報収集にも有益だ。 「守る側にとってはやっかいな存在(防衛省幹部)」で、ウクライナもロシアに対してドローンを効果的に使って対抗している。

今回の事案を受け、海自は艦艇部隊に対し、動画の真偽には直接触れずに、艦の周囲へのドローンの飛来に注意するよう改めて呼びかけた。 とはいえ、費用対効果を考えれば、ドローンの監視に充てる人員や装備には限りがある。 軍事の世界で、目的を達成するために相手により多くの人を動員させて労力を使わせたり、より多くの予算を使わせたりするよう仕向け、人的、経済的なコストを押しつける手法は「コスト強要(コスト・インポーズ)戦略」と呼ばれる。

反応すれば「隊員が疲弊する」

政府関係者は「基地警備が重要なのはいうまでもないが、ドローン対策に特化したカメラを新たに艦につけ、24 時間態勢でモニター監視に人を張り付ける余裕はない。 数万 - 数十万円程度のドローンを見つけて、数億円の迎撃ミサイルでいちいち撃ち落とすのか。 24 時間監視のようなことをやり出したら、隊員が疲弊するだけ。 これこそ、コスト・インポーズを狙っている相手の思うツボだ。」と指摘する。

動画が実写であれば、基地警備に「穴」があると露呈させたことになる。 「自衛隊は自分たちの基地や装備さえまともに守れない」という印象が拡散され、自衛隊への国民の認識に影響を与える可能性もある。 他国の世論を混乱させたり評判をおとしめたりすることなどを目的に偽情報を拡散させ、認知領域を含む情報戦を仕掛ける手法は、ウクライナ戦争でもたびたびみられる。

一方、フェイク動画だったとしても、分析やこれまでのドローン対策への検証を迫られ、結果的に確認に要する人手と時間をさかれる。 政府関係者は「真偽のいずれにしても、防衛省・自衛隊には様々な負荷がかかる。 動画の投稿者の目的がこちらに負荷を強いることなら、その目的は達せられることになる。」と話した。 無人兵器の最新の動向やサイバー戦に詳しい大澤淳・中曽根平和研究所主任研究員は「実写だったという前提で、今回のドローンについて、積載量や探知できる距離、現有の装備による対処の可否など、軍事的にどのような脅威があるのかをきちっと検証、確認すべきだ。

足らない部分は対応する必要があるが、軍事的な脅威がそれほどない愉快犯的なドローンに対して、24 時間監視のように過剰に反応すれば、隊員が疲弊するだけだ。 有事に至っていない状況では、自衛隊によるドローンへの対処も電波法など国内法の制約がかかる。 国内法が新しい戦い方に追いついていない実態があり、そうした状況について検討を進める教訓とすべき事案だ。」と指摘する。 (編集委員・土居貴輝、asahi = 5-6-24)

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