ミャンマー現地調査の成果実る 植物から治療薬の候補

ミャンマー産の植物から新たな仕組みを持つ治療薬の候補を見つけたと、名古屋市立大と高知県立牧野植物園(高知市)などの研究チームが発表した。 もとの植物は、園が 2000 年からミャンマーで調査し、集めてきた試料。 園と大学が今年 3 月に結んだ協定による初の成果だ。 ミャンマーで調査をするきっかけや、その意義について、高知県立牧野植物園にも聞きました。

たんぱく質を盛んに合成している細胞内に異常なたんぱく質がたまると、その状態を解消する「小胞体ストレス応答 (UPR)」という反応がある。 だが、UPR が慢性的に働いていると、がんや糖尿病、神経の疾患などの病気につながると考えられている。 その一方で異常なたんぱく質がたまり過ぎるとその細胞が死ぬことから、チームは、UPR を抑えることで蓄積させて治療につなげる新たな手法を探ったという。

チームは、園が持つミャンマー産植物の 700 の試料を調査。 キョウチクトウ科の植物から抽出された物質に UPR を抑える効果があることを突き止めた。 この物質の構造を調べると「ペリプロシン」と呼ばれる化合物だった。 心不全の治療薬として使われる物質に似た構造を持つという。 植物がつくり出す物質は、薬の素材になる可能性があるとして世界中で調べられてきた。 ただ、ミャンマー産植物はほとんど調査されていないという。 名古屋市立大の林秀敏教授(生化学)は「ミャンマー産の植物から、さらに有用な物質、いろいろな疾患の治療薬候補が見つかる可能性は十分ある」と話している。

この成果は、電子版の科学誌サイエンティフィック・リポーツに 論文 が掲載された。

記録し分類 「秘められたもの」探す

高知県立牧野植物園は、日本の植物分類学の基礎を築いた研究者として知られる牧野富太郎氏 = 高知県佐川町出身 = の功績を広く伝えるため、牧野氏が 94 歳で亡くなった翌年の 1958 (昭和 33)年に開園した。

園によると、1999 年にリニューアルした際、収集や保全だけでなく植物の研究もしていこうと、調査地としてミャンマーを選んだという。 ミャンマーの政府と協定を結び、2000 年から現地調査を始めた。 植物の目録やガイドブックを出版。 国内の大学や製薬企業などと連携し、植物資源の開発研究も進めてきた。 現地調査によって、園にはミャンマー産植物の試料が約 3 千ある。 研究成果につながったキョウチクトウ科の植物は、02 年の現地調査で採取したという。

今年 2 月に軍によるクーデターがあったミャンマー。 政変の影響以前に、新型コロナウイルスで、今は現地調査ができていない。 藤川和美研究員(植物分類学)は「ミャンマー産植物には、まだ未知なものが多い。 植物一つひとつに秘められたものがあるので、詳しく調査をし、守っていかないといけない」と話している。 (木村俊介、asahi = 8-24-21)


難治のスキルス胃がん、治療に手がかり ゲノム解析で

治療が難しいがんの代表例とされる「スキルス胃がん」について、がん細胞のすべての遺伝情報(ゲノム)を解析することを通して、治療につながる手がかりを見つけたと、国立がん研究センター研究所などのチームが発表した。 スキルス胃がんは胃がん全体の 5 - 10% を占める。 普通のがんにみられる「腫瘤」と呼ばれるかたまりをつくらず、胃の粘膜の下で広がるといった特徴があり、早く見つけて手術で取り除くといった対処ができないことが多い。 一般的な胃がん全般の 5 年生存率が 60% を超えているのに対し、スキルス胃がんでは 10% 程度とされている。

これまで、スキルス胃がんの細胞だけを組織から取り出して調べることは難しかった。 チームは今回、スキルス胃がんでよくみられる「腹膜播種(はしゅ)」という、がん細胞がおなかの中に散らばる現象によって患者のおなかにたまった水の中から、がん細胞を集め、ゲノムを分析した。 すると、分析した 98 例のうちほぼ半数で、細胞の増殖にかかわる複数の遺伝子の異常が見つかった。

これらの遺伝子異常はほかのがんでもみられ、がん細胞を狙い撃ちする「分子標的薬」が開発されている例もある。 今回見つかったうち、3 種類の遺伝子異常をもつがん細胞をそれぞれマウスのおなかに接種したあと、対応する分子標的薬を使ったところ、がん細胞は消失したという。 どんな遺伝子異常があるかは、個々のがんによって異なる。 このため、使える薬を見極めるためには、がんのゲノムを患者ごとに調べる必要がある。

チームの間野博行・同センター研究所長は「スキルス胃がん全体のうち、一定程度は、すでにある薬で治療ができる可能性がある。 患者のがんの遺伝子異常を正しく判別する手法を開発し、臨床試験につなげていきたい。」と話している。 研究結果は専門誌に 論文 発表された。 (編集委員・田村建二、asahi = 8-17-21)


脳に薬を届ける新技術、開発 治療薬開発に期待 東京医科歯科大など

薬を届かせにくい脳に、「核酸医薬」という新しいタイプの薬を効率的に届ける技術を東京医科歯科大などのチームが開発した。 これまでは、脳が持つ「血液脳関門」という仕組みで薬が遮断される問題があった。 アルツハイマー病などの新しい治療薬の開発が可能になると期待される。 13 日、米専門誌に発表する。 アルツハイマー病やパーキンソン病などは、特定のたんぱく質が脳に蓄積するのが原因とされ、遺伝子に働きかけてたんぱく質の合成や蓄積を阻害する「核酸医薬」という新タイプの治療薬が期待されている。

しかし、こうした薬を脳に届かせたいと思っても、人体が脳を毒から守るために持つ血液脳関門を通過するのが難しかった。 そのため、腰椎の隙間から針で薬を入れるなどしてきたが、患者の負担が大きかったり、副作用の危険があったりした。 チームは、核酸医薬の一種「ヘテロ核酸」を開発、それにさまざまな分子をくっつけることで血液脳関門を通過できないか調べた。 動物実験の結果、コレステロールを結合させると関門を突破でき、ヘテロ核酸が神経細胞でたんぱく質の合成を抑えることを確認した。 横田隆徳教授は「患者の負担が少ない治療薬開発の可能性が出てきた」と話した。 (瀬川茂子、asahi = 8-13-21)


着床前診断、対象拡大へ 成人後に発症する病気も

受精卵の段階で遺伝情報を調べ、重い遺伝病にならない受精卵を子宮に戻す「着床前診断」について、日本産科婦人科学会(日産婦)は、対象を広げる方針を決めた。 成人になるまでに命を落としかねない病気などに限ってきたが、条件をつけて成人後に発症する病気も認める。 審査の手続きも一部変更する。 26 日の定時総会後の会見で明らかにした。 学会内で今後、規則の改定や詳細な運用方法について議論を進める。

着床前診断は、体外受精させた受精卵から細胞の一部を採って、遺伝病の有無を判別する。 妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる出生前検査(新型出生前診断)とは異なり、受精卵の段階で調べる形になる。 病気や障害のある人の排除につながらないかとの懸念がある。 日本では 1998 年に日産婦がルールを示し、「重篤な遺伝病」に限って導入。 成人になるまでに人工呼吸器が必要となるなどの重い病気が対象とされ、2015 年度までに 120 件が認められた。 神経の難病デュシェンヌ型筋ジストロフィーなどが多い。 19 年に遺伝性の目のがん「網膜芽細胞腫」の患者が申請。 失明のおそれはあるが、命にかかわることはまれで、今回の議論のきっかけになった。

日産婦の方針では、「成人になるまでに」の前に「原則」をつけ、成人後に発症する病気も対象とする。 そのうえで、「現時点で有効な治療法がない」、「高度で体への負担が大きい治療が必要になる」という条件をつけた。 具体的な病名は示されていないが、遺伝子の変異による病気は 8 千種類以上あると考えられ、英国では遺伝性の乳がん・卵巣がんなど、600 種類以上が対象となっている。

着床前診断は、審査の質をどう担保するのかも課題だ。 これまでは日産婦が、実施施設からの申請を受け付けて 1 件ごとに審査してきた。 それを日産婦は意見書は出すが、最終判断は実施施設がする形に変える。 ただし、審査経験のない新たな遺伝病の申請については、専門学会の意見書をふまえて日産婦が意見を出す。 判断が一致しなかった場合は、関連学会や人文・社会科学の専門家らでつくる個別審査会に判断を仰ぐ。 今回のような議論は、国などの公的な場で本来されるべきだという意見も根強い。 報告書では、国に「倫理的・社会的課題を包括的、継続的に審議する場を設けることの検討が必要」と指摘している。 (神宮司実玲、asahi = 6-26-21)


次のアルツハイマー薬候補、米当局が画期的治療薬に指定

米バイオジェンは 23 日、日本のエーザイと共同開発しているアルツハイマー病の治療薬候補「レカネマブ」が米食品医薬品局 (FDA) から「画期的治療薬(ブレークスルーセラピー)」に選ばれたと発表した。 重い病気に対する治療薬を早く開発するための制度で、迅速に審査されるなどの利点がある。

アルツハイマー病は、脳のなかに「アミロイドβ (Aβ)」というたんぱく質がたまり、神経細胞を壊すことなどが原因と考えられている。 レカネマブは、FDA が今月 7 日に条件付きで承認したアルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」と同様に Aβ を標的とした薬。 脳内の Aβ を減少させ、認知機能の低下を抑えることをねらっている。 発表によると、早期のアルツハイマー病の患者などを対象とした治験で「症状の悪化抑制」が示されたことを受け、画期的治療薬に指定されたという。 現在、日米などで最終的な治験をしており、来年 9 月末までに結果が出る見込みだ。

認知症患者は世界で約 5 千万人、日本国内で約 600 万人いて、その 7 割がアルツハイマー型とされる。 だが製薬各社の治療薬開発は難航。 FDA は今月に入ってようやく、追加の治験で有効性を確かめることを条件にアデュカヌマブを承認した。 だが、FDA の独立委員会のメンバー 3 人が承認に抗議して辞任するなど、有効性をめぐっては波紋も広がっている。 (ニューヨーク = 真海喬生、asahi = 6-24-21)

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米当局委員 2 人、抗議の辞任 アルツハイマー病新薬承認

エーザイと米バイオジェンが開発したアルツハイマー病の新型治療薬「アデュカヌマブ」をめぐり、審査を担う米食品医薬品局 (FDA) の独立委員会のメンバー 2 人が 9 日までに辞任した。 委員会の反対にもかかわらず FDA が、条件付きで承認したことへの抗議だという。 ロイター通信が報じた。

アデュカヌマブをめぐっては有効性をめぐる議論が続いている。委員会は外部の専門家で組織され、薬の有効性や安全性などを FDA に提言する。 昨年 11 月にはアデュカヌマブについて、臨床試験(治験)によって有効性が証明されているかどうかを議論していた。 委員のほぼ全員が承認に反対していたという。 提言は FDA の審査の際に考慮されるが、拘束力はない。

ロイター通信によると、辞任したのはこの時に承認に反対票を投じた大学の神経学者と、当日の採決に加わらなかった医療機関に勤める人物の 2 人。 「FDA の委員会の意見の扱い方に失望した」などと話しているという。 FDA は承認の理由に、病気の原因とされる脳内のたんぱく質が減少することを挙げた。 効果を見極めるため、追加の治験を実施する条件をつけている。

エーザイの内藤晴夫・最高経営責任者 (CEO) は 8 日、取材に「(昨年 11 月の委員会が)リモートで行われたので、質問に対して回答がかみ合わず、独立委員会では非常にネガティブな結果が出てしまった」と話していた。 ある証券アナリストは「治験でしっかり効果が出ているなら良いが、まだら模様だった。 それをもとに議論がされているので、承認、不承認のどちらに転んでも異論が出る。」と話す。

アデュカヌマブをめぐっては、2019 年に有効性の証明が難しいと判断され、治験が中止された。 投与量を多くするなどした追加データを再解析したところ効果が認められたとして、20 年 7 月に FDA に承認を申請。 今月 7 日に条件付きで承認された。 日本では昨年 12 月に厚生労働省に申請され審査中だ。 (江口英佑、ニューヨーク = 真海喬生、asahi = 6-11-21)

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アルツハイマー病新薬、承認 米当局、条件付き 認知機能低下、長期抑制

エーザイと米製薬大手バイオジェンが開発したアルツハイマー病治療薬候補の「アデュカヌマブ」について、米食品医薬品局 (FDA) は 7 日、製造販売を条件付きで承認したと発表した。 アルツハイマー病で、認知機能の低下を長期間抑える世界初の薬となる。 FDA は、効果などを見極めるため今後も試験を行うことを求めている。 効果がないと判断すれば、承認を取り消す可能性もある。

アルツハイマー病は、脳内に「アミロイドβ(ベータ)」というたんぱく質がたまることで神経細胞が徐々に働きを失い、認知機能が低下するとみられている。 アデュカヌマブは、軽度認知障害という「早期」に投与を始められ、認知機能低下を長期的に抑えることが期待されている。 これまでの治療薬は症状を一時的に軽くするものだった。 今回の承認で、米国では治療薬として使用することができる。 日本では昨年 12 月に申請があり審査中だ。

世界の認知症患者は約 5 千万人。日本国内の患者は約 600 万人で、その 7 割がアルツハイマー型とされている。 高齢化にともなって患者は今後も増えるとみられる。 アデュカヌマブへの期待は高まるが、アルツハイマー型以外の認知症には使えない。 点滴で投与され治療には定期的な通院など時間がかかる。 失われた神経細胞を回復させることは難しい。 薬の値段は高くなりそうで、患者の負担や医療保険の財政悪化なども課題となる。 製薬業界に詳しいクレディ・スイス証券の酒井文義氏は「認知症の初期段階から投与したらどのくらいのコストがかかるのか、まだわからない。 社会的な負担が増える可能性もある。」と指摘する。

認知症の人と家族の会の鈴木森夫氏は「治療薬開発は 20 年近く失敗してきた。 今回承認された意義は大きい。」としつつ、手放しでは喜べないと語る。 「アミロイドβが脳内にたまっている量の検査は保険適用外で数十万円かかる。 (日本で承認された場合)検査も含めて保険適用にならないと、普通の患者は使用できない」という。 エーザイは 1980 年代から認知症分野で創薬に取り組んできた。 バイオジェンと別の新薬候補「レカネマブ」も開発中で、日米などで治験を始めている。

認知症をめぐっては世界の製薬会社が新薬を研究してきた。 症状を動物実験で再現することが難しいことなどから開発は難航している。 認知症領域で FDA が承認した新薬は 2003 年以降、一つもなかった。 アデュカヌマブは 19 年 3 月には有効性の証明が難しいと判断され、臨床試験(治験)が中止された。 投与量を多くするなどした追加データを再解析したところ、効果が認められたとして 20 年 7 月に FDA に承認を申請した。 通常より短期間で審査する「優先審査」の対象になり、審査終了の目標は今年 3 月 7 日だった。 FDA は追加データを審査するとして、終了日を 3 カ月延長していた。(江口英佑、ニューヨーク = 真海喬生、asahi = 6-8-21)

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日本発のアルツハイマー予防薬、来月にも治験 … 発症前の人対象に欧米と共同で

認知症で最も多いアルツハイマー病の発症を防ぐ予防薬の開発を目指し、認知機能が正常な人を対象にした国際共同治験が、来月にも日本でスタートする。 日本の製薬大手エーザイが開発した薬剤「BAN2401」を、世界の 1,400 人に 4 年間投与し、効果を検証する。 日本発の新薬候補が、高齢化が進む世界の共通課題となっているアルツハイマー病克服の突破口となるか、国際的に注目されている。

国際共同治験は、米国立衛生研究所 (NIH) の資金で発足したアルツハイマー臨床研究機構 (ACTC) が主導し、米国、日本、カナダ、オーストラリア、シンガポール、欧州で実施する。 アルツハイマー病は、症状が出る 10 - 20 年前から脳内に「アミロイドβ (Aβ)」と呼ばれるたんぱく質が徐々に蓄積し、脳細胞が損傷されて発症する。 「BAN2401」は、脳内の Aβ を取り除く作用があるとされている。 治験には、Aβ の蓄積が見られるが無症状の 55 - 80 歳の男女が参加する。 4 年間にわたり、2 - 4 週に 1 度、この薬剤を点滴するグループと、成分の入っていない偽薬を点滴するグループに分け、Aβ の蓄積や認知機能の変化などを比較する。 米国では 2020 年 9 月に先行して薬剤投与が始まっている。 日本は、数十人の参加が見込まれる。

ほかにも Aβ の除去を狙う薬剤の治験は、既に発症している人を対象に各国で行われてきたが、相次いで失敗に終わっている。 「脳細胞が損傷し、発症した後に薬剤で除去しても、効果が見られない」との分析から、発症する前の人を対象とした。 (yomiuri = 1-24-21)

初 報 (9-1-16) & 前 報 (8-22-20)


原因はハトのフン? 滋賀でオウム病集団感染か

滋賀県は 4 日、同県東近江市の事業所で 4 月上旬 - 中旬に発熱や肺炎の症状を訴えた 60 代と 40 代の女性 2 人が、国立感染症研究所の検査でオウム病だったと判明したと発表した。 ほかに男女 13 人に発熱の症状があったといい、職場で集団感染が起きた疑いがある。 感染症対策課によると、この事業所では 2 人のほか、13 人が 3 月中旬 - 4 月上旬に発熱し、うち 7 人に肺炎の症状もあった。 すでに全員が回復している。 3 月下旬ごろまで、事業所の入り口がハトのフンで汚れており、菌を吸い込んだ可能性があるという。

オウム病はペットの鳥などから人に感染し、肺炎などを引き起こす。 潜伏期間は 1 - 2 週間。 4 月 16 日以降に新規感染が疑われる人が出ておらず、県は感染拡大の恐れはないと説明している。 (asahi = 6-4-21)


ウイルスでがん破壊、治療薬承認へ 脳腫瘍の一種に効果

ウイルスを使ってがん細胞を破壊する治療薬が、承認される見通しになった。 厚生労働省の専門部会が 24 日、製造販売の承認を了承した。 臨床試験(治験)では標準治療と比べて 1 年後の生存率が 6 倍になるなどの延命効果が示された。 がんに対するウイルス治療薬が承認されるのは国内で初めて。 今後 7 年をかけ、薬を実際に患者に使いながらデータを集め、有効性と安全性を改めて確認するなどの条件付きで承認される。

この薬は、第一三共などが開発したがん治療薬「デリタクト注」。 対象となる病気は脳腫瘍(しゅよう)の一種「悪性神経膠腫(こうしゅ)」で、脳内の細胞ががん化することで起きる。 中でも代表的な「膠芽腫(こうがしゅ)」は国内に推計 2,500 人程度の患者がいる。 手足のけいれんなど神経障害が生じ、脳腫瘍の中でも進行が早い。 脳の腫瘍内に、特殊なウイルスを一定間隔で最大 6 回注入する。 東京大医科学研究所の藤堂具紀(ともき)教授がヘルペスウイルスの三つの遺伝子を改変し、体内に注入したときにウイルスががん細胞内のみで増殖し、がん細胞を攻撃するように設計した。 正常な細胞ではウイルスは増えない。

治験では手術や抗がん剤などの標準治療後に効果が十分でなかったり、再発したりした膠芽腫の患者が対象になった。 13 人の中間解析結果では 1 年後の生存率が 92.3% で、単純比較はできないが、一般的な標準治療後の生存率 15% よりも大幅に高かった。 19 人でみた生存期間の中央値は約 20 カ月だった。 審査では、生存率は 1 施設だけで得られた結果で評価が難しかったため、腫瘍の縮小効果の分析など含め一定の有効性があると判断された。 有望な薬について審査期間を短くする国の「先駆け審査指定制度」の対象になっていた。(市野塊)

悪性度の高い脳腫瘍(しゅよう)に対する国産初のがんウイルス治療薬が承認される方向になった。 新型コロナウイルスの影響でこの 1 年ですっかり悪役になった「ウイルス」だが、ウイルスの遺伝子を改変して「味方」にすれば、がん治療に利用できる。 次世代のがん治療法として世界が注目している。 がん治療にウイルスを使う研究は、20 世紀初めに始まったとされる。 1971 年には、米の有名医学誌ランセットに、「悪性リンパ腫になった男子が、麻疹ウイルスにかかった後にがんが消えた」という論文が掲載された。 ウイルスをどう改良すれば、この報告を再現できるのか、本格的な研究が始まった。

がん細胞とウイルスは、「体内の免疫をかいくぐって、どんどん増えたい」という思惑が一致している。 ウイルスにとって、がん細胞の中は「何もしなくても勝手に増やしてくれる」という最高の環境だ。 お互いの特徴をいかした治療ががんウイルス療法と言える。 ウイルスをがん細胞の中で増やしてがん細胞を壊し、次のがん細胞に感染して同じことを繰り返させる。 さらに、ウイルスが壊したがん細胞のかけらを自分の免疫が認識すれば、がん細胞に対する全身の免疫が高まる。 転移する割合も減る可能性がある。

ウイルスは正常な細胞にも感染するため、がん細胞のみで増えさせるようにすることが課題だった。 この点で治療に大きな進歩をもたらしたのが、遺伝子組み換え技術の発展だ。 承認が了承された「デリタクト注」は、東京大医科学研究所の藤堂具紀教授らが開発した。 口唇ヘルペスの原因を起こす「単純ヘルペス I 型」というありふれたウイルスを改変している。 さまざまなウイルスでがん治療研究が進められているが、このヘルペスウイルスは、どの細胞にも感染し、細胞を攻撃する力が比較的強い。 このウイルスを改変した薬は米国で 2015 年、悪性黒色腫(メラノーマ)で承認された。

今回のウイルスは、さらに遺伝子を改変し、三つの遺伝子に変異を加えている。 デリタクト注は 1 回 10 億個のウイルスを注入する。 ウイルスの増殖が体内で制御できなくなるおそれもあるが、藤堂さんは「遺伝子の改変を重ねるごとに、正常な細胞で増殖させることなく、がん細胞への攻撃力を高め、安全性は 1 千倍ずつ高まっている」と話す。 がんウイルス治療に詳しい鳥取大の中村貴史准教授(遺伝子治療学)は「世界的にこの治療でかなりの数の治験が進んでいるが、いずれも遺伝子組み換え技術によって正常な細胞でのウイルスの増殖を制御できている」と話す。

今回は脳腫瘍で了承されたが、理論上はさまざまな固形がんに応用可能だ。 藤堂さんらは、前立腺がんなど、ほかのがんへの応用もめざして研究を進めている。 将来的に、手術や抗がん剤、放射線治療の前に、ウイルス療法でがんを小さくしたり、免疫を高めて治療効果を上げたりすることも考えられる。 中村さんは「欧米では非常に激しく競争されている分野で、確立すれば治療の選択肢が増える。 今回の了承は起爆剤となり、大きな革新となるだろう。」と話す。 (後藤一也、瀬川茂子、asahi = 5-24-21)


昨年ほぼゼロなのに … RS ウイルス拡大なぜ 肺炎の原因

「RS ウイルス」の感染が増えている。 乳幼児の感染が多く、時に重い肺炎を引き起こし、命にかかわることもあるウイルスだ。 例年は秋ごろ流行するが、今年は大阪や九州などで春先から報告が多くなっている。 実は、昨年は全くといっていいほど流行がなかった。 なぜ今年は流行しているのだろうか。 国立感染症研究所(感染研)によると、RS ウイルスに感染すると、発熱や鼻水、せきなどの症状が出る。 1 歳までに 50% 以上、2 歳までにほぼ全員が感染する。 それ以降も何度も感染するが、大人や健康な子どもは軽い風邪のような症状ですむことが多い。

ただ、初めてかかった乳幼児は症状が重くなりやすく、肺炎や気管支炎で入院が必要になることもある。 乳幼児の肺炎の約半分は RS ウイルス感染症によるものとされている。 高齢者でも症状が重くなることがある。 感染研がまとめた全国の定点医療機関約 3 千カ所からの報告によると、4 月 26 日 - 5 月 2 日の 1 週間で、定点あたりの報告数は 1.2。 2019 年は同時期に 0.56 だった。 今の報告数は、19 年でいえば 7 月末あたりに相当する。 地域によって差があり、富山 (5.45)、石川 (3.21)、大阪 (2.98)、奈良 (3.29)、福岡 (4.53)、佐賀 (5.74)、熊本 (2,94)、宮崎 (4.89) などが多い。

実は、20 年には RS ウイルス感染症の流行は、1 年を通じてほぼ確認されなかった。 定点あたりの報告数は最大で 0.35 だ。 インフルエンザや手足口病など、他の飛沫や接触でうつるウイルス性の感染症も、ほとんど感染が広がらなかった。 新潟大学の菖蒲川(しょうぶがわ)由郷特任教授(公衆衛生学)は昨年の状況について、「新型コロナウイルスと同じ呼吸器感染症で、コロナ対策のマスク着用や 3 密回避といった行動が流行を抑えたと考えている」と話す。 保育園が休園になるなど感染が広がる場が少なかったことや、海外からの渡航客が少なく、国外からの持ち込みがなかったことも要因とみられるという。

今年の流行については、昨年は流行がなく 0 - 1 歳の子の多くがまだ免疫を持っていないこと、乳幼児はマスクをつけられないことが多く、保育園などで感染が広がりやすいことに加え、気候についても要因として指摘する。 「冬季以外では気温、湿度が高いと流行が大きくなることがわかっている。 今年、九州などは梅雨入りが早く、条件が整ったところで流行が起きているのではないか。 今後はわからないが、気候から考えるとさらに増える可能性はある。」

RS ウイルス感染症の流行は本来秋 - 冬にかけて起きるといわれてきたが、ここ 10年ほどは徐々に早まり、近年では夏ごろから始まるようになってきた。 新型コロナウイルスの流行と相まって、昨年、今年は特に変わった特徴を示しているという。 早産の赤ちゃんや、心臓に病気がある子などは特に重症になりやすく、流行に合わせて予防のための薬を注射する。 流行期が分かりづらくなっていることから、投与のタイミングも難しくなっている。 菖蒲川さんは「命を落とすこともある病気。 コロナ禍ではあるが、関係なくきちんと受診してほしい。」としている。 (杉浦奈実、asahi = 5-23-21)


がん「第 5 の治療法」世界初の研究所 関西医大、22 年に

関西医科大学(大阪府枚方市)は 2022 年 4 月に、「第 5 のがん治療法」として期待を集める「光免疫療法」で世界初の研究所を設立する。 開発者で所長に就任する米国立衛生研究所 (NIH) の小林久隆主任研究員は 12 日、現在対象の顔や首のがんに加え「乳がんなどへの適用も検討する」と話した。 様々ながんの患者に新たな選択肢を提供する。 光免疫療法はまず、がん細胞と結びつく薬剤を患者へ投与する。 薬剤ががんの近くに集まった後に、近赤外線のレーザー光を当ててピンポイントで破壊する。

NIH の小林主任研究員が発明し、楽天グループの楽天メディカル(米カリフォルニア州)の前身企業が特許のライセンスを取得して開発を進めた。 12 年には当時のオバマ米大統領が一般教書演説で取り上げて注目を集め、手術、放射線、抗がん剤、免疫薬に続く「第 5 のがん治療法」と呼ばれる。 楽天メディカルが実施した米国での臨床試験(治験)では、従来の治療で効果がなかった頭頸部がんの患者30人のうち、43% にあたる 13 人でがんが消えたり縮んだりした。

20 年 9 月に楽天メディカル子会社が、世界に先駆けて日本で製造販売の承認を取得。 現在は日本だけで治療に使え、3 月中旬時点で国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)や愛知県がんセンター病院(名古屋市)など、全国の約 20 の病院が導入している。 関西医大が新設する光免疫医学研究所は「光免疫療法」や「免疫」などの 3 部門に分かれ、約 30 人が在籍する予定だ。 現在は外からレーザーを当てやすい頭頸部がんに限られている。 対象を患者数が多い大腸がんや皮膚がんに広げたり、副作用を抑えたりするための研究を進める。

内視鏡で体の深部にレーザーを当てたり、全身の免疫をうまく調整して副作用を抑えたりする技術開発が求められる。 所長に就任する小林氏は「まず乳がんや食道がん、子宮頸がんが対象として有望。 将来的にはがん患者の 8 割に役に立てるようにしたい。」と話す。 18 年にノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑・京都大学特別教授が開発した免疫薬との併用や、免疫細胞の働きを抑える細胞をたたく治療法の開発も選択肢に挙がる。

研究所では治験も進める。 小林氏は「特に臨床では高いレベルで、楽天メディカルと連携したい」と話す。 楽天メディカルジャパンの担当者は「治療法開発へ可能な限りサポートしていきたい」と話す。 関西医大の臨床部門と連携し、患者のがん組織を調べるなどして治療効果を高める。 光免疫療法の治療薬の価格は患者の体の大きさにより異なるが、平均すると 1 回投与当たり約 400 万円で、最大 4 回まで使える。 国の医療保険などで患者負担は 1 回最大で約 30 万円だ。 楽天メディカルは光免疫療法と免疫薬を併用する治験を、米国で頭頸部がんと皮膚がんを対象に進めている。 国立がん研究センター東病院も食道がんで光免疫療法の医師主導の治験を進めているほか、胃がんでも計画中だ。 (nikkei = 4-12-21)


コロナ肺炎患者に世界初の生体肺移植 家族から提供

京都大病院は 8 日、新型コロナウイルスによる肺炎が重症化し、約 3 カ月治療を続けていた患者に、家族から提供された肺を移植した、と発表した。 新型コロナ感染後の患者への生体肺移植は世界で初めてだとしている。 京大病院によると、肺移植を受けたのは関西在住の女性患者。 昨年末に新型コロナに感染し、呼吸状態が悪化して、関西の別の病院に入院。 体外式膜型人工肺 (ECMO) が必要な状態になった。 ウイルス検査が陰性になった後も、後遺症で肺が二つとも縮んで硬くなり、元に戻る見込みがなくなった。

患者は肺以外の臓器に障害はなく、意識ははっきりしていた。 家族から臓器提供の申し出があり、今月 5 日に京大病院に転院し、7 日、夫と息子の肺の一部を患者に移植した。 現在、集中治療室に入っている。 2 カ月で退院でき、3 カ月で社会復帰できる見込みだという。 夫と息子の経過は良好だとしている。 新型コロナ患者に対する肺移植は、脳死移植が中国や欧米で数十例、報告されている。 国内の脳死移植は臓器提供者(ドナー)が極めて少ない中、京大病院は生体肺移植について「希望のある治療法となりうる」と説明している。

一方、生体肺移植は肺以外の臓器に障害がない 65 歳未満の患者が対象となるため、基礎疾患を抱えているケースが多い ECMO を使う患者では、治療できるのは限定的なケースだとみられるとも指摘している。 (野中良祐、asahi = 4-8-21)


「潰瘍性大腸炎」 患者 9 割に特定の「抗体」 京大発見

京都大の研究グループが、原因不明の下痢や血便を繰り返す難病「潰瘍性大腸炎」の患者の 9 割に、特定の「抗体」があることを見つけたと発表した。 抗体を測る検査キットを企業と開発し、新たな診断法にしたいとしている。 潰瘍性大腸炎には自己免疫がかかわると考えられている。 自己免疫とは、免疫反応でできる抗体が、誤って自分の体内にもともとある物質を攻撃する現象だ。 抗体は本来、病原体を攻撃する。

そこでグループは患者 112 人の血液で、自分の体内にある物質に反応する「自己抗体」を調べた。 その結果、患者の 9 割に「インテグリンαVβ6」というたんぱく質に対する抗体があった。 他の病気の患者には、この抗体は少ないこともわかった。 この抗体は、症状が悪化すると増え、改善すると減る傾向があり、病気の診断や病状の判断に役立つと考えられた。 現在の診断は、症状や内視鏡検査で総合的になされ、簡便な検査法はない。 グループは医学生物学研究所と共同でこの抗体を測る検査キットの開発を始めた。 抗体を抑える治療法も考えられるという。 グループの桑田威(たけし)医員は「病気の原因解明や治療法開発につながる可能性もある」と話している。 (瀬川茂子、asahi = 3-10-21)


被災地派遣の自衛隊員 6.75% で PTSD の疑い

東日本大震災で被災地支援に派遣された自衛隊員を調べたところ、派遣期間が 3 カ月以上だったり、派遣終了後の超過勤務が 3 カ月以上続いたりすると、PTSD (心的外傷後ストレス障害)のリスクが 6 - 7 割高まるという研究成果を、防衛医大の長峯正典教授(産業精神保健)らのチームがまとめた。 長峯さんは「日本は今後も大規模災害が想定される。 災害支援はほかの職業でも増えており、派遣中だけでなく終了後も含めた労務管理がメンタルヘルス上、重要だ。」と指摘する。

研究チームは震災直後に岩手、宮城、福島などに派遣された約 5 万 6 千人の陸上自衛隊員を 6 年間追跡した。 その結果、6.75% で PTSD の疑いがあった。 PTSD と労働条件との関係を調べたところ、派遣期間が 3 カ月以上だと、1 カ月未満より PTSD のリスクが 75% 増えたほか、派遣期間が終わった後に休日出勤や残業が 3 カ月以上続いた人は、ほとんどなかった人に比べ 61% 高かった。 津波で亡くなった遺体を回収したり、原発事故の避難地域での活動で被曝リスクにさらされたりした隊員は、そうではない隊員に比べて 18 - 19% ほど PTSD のリスクが高かった。 (桜井林太郎、asahi = 3-9-21)


脂肪を燃やす新たな仕組み解明、肥満治療に期待 京大

京都大などのチームは、体内の脂肪細胞が熱を生み出す新たな仕組みを明らかにしたと発表した。 「マイクロ RNA」という分子が、脂肪細胞の代謝を高めるスイッチのように働き、積極的に脂肪を「燃やす」ことを突き止めた。 肥満治療に役立つ可能性がある。 研究成果は 16 日、科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載された。 脂肪を多く含む細胞には、主に白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の 2 種類がある。 白色脂肪細胞は脂肪をため込むのに対し、褐色脂肪細胞は脂肪を分解し、熱を生み出す働きがある。 褐色脂肪細胞が少なかったり、機能が低下したりすることがメタボリックシンドロームなどの一因となるとされている。

チームは、細胞膜の材料になるコレステロールの合成に必要な遺伝子を制御するマイクロ RNA という分子に着目。 この分子が働かないマウスは肥満になるため、体質を詳しく調べた。 すると、このマウスは気温が下がったときに体温を維持できず、酸素の消費量も少ないことがわかった。 マイクロ RNA の機能を解析したところ、脳内で交感神経を活性化させ、褐色脂肪細胞の代謝を高めることもわかった。 チームの尾野亘(こう)・京大准教授(循環器内科)は「マイクロ RNA をコントロールすることで、肥満の予防や治療につながることが期待できる」と話している。 (野中良祐、asahi = 2-16-21)


AI でがん発見、熟練医並み 見逃し防止へ医療機器承認

国立がん研究センターは、人工知能 (AI) を使って大腸の内視鏡画像から早期の大腸がんやがんの手前の段階のポリープを見つけることに成功し、医療機器として承認されたと発表した。 25 万枚の画像を使った学習で、熟練医なみの実力を備えたという。 国がんによると、大腸がんになりうるポリープの発見率が 1% 上がれば、命にかかわる大腸がんが5%減るとされる。 医師の技術のばらつきによる見逃しを減らそうと、国がんと NEC は共同で AI を使って診断を補助するソフトウェアの開発を進めてきた。 国がんの山田真善医師らは、約 1 万 2 千種類の早期がんやがんになる前のポリープの画像 25 万枚分を AI に学習させた。

有効性を検証したところ、判断しやすいタイプの病変は 95% を正しく検出し、熟練医と同等レベルに達していた。 判断しにくいタイプの病変でも 78% を検出した。 山田医師は「人間が認識しにくいタイプの画像をさらに学習させて精度を高めたい」と話す。 大腸の内視鏡画像を AI が診断補助する医療機器は、内視鏡メーカーのオリンパスや富士フイルムに次いで三つ目の承認という。 大腸検査に限らず、AI を使って画像から病気を診断する技術開発が世界で盛んになっている。 米国では少なくとも 60 種類が承認されているという。

国がんでも他に胃がんなどで AI を使った診断補助の開発を進めている。 会見した国がんの中釜斉理事長は「開発には精度の高いデータと診療情報をいかに統合させるかが重要だ」と話した。 (後藤一也、asahi = 1-12-21)


ヒアリ、名古屋港で女王数十匹 「フェーズが変わった」

強毒アリの来襲

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アストラゼネカ、アレクシオン約 4 兆円で買収へ - 希少疾患医薬品強化

→ アレクシオンの株主は統合後の新会社の株式 15% を引き続き保有
→ アレクシオンの買収により血液疾患治療などの分野を強化する

英医薬品メーカー、アストラゼネカは 12 日、希少疾患用医薬品の開発を手掛ける米バイオ製薬会社アレクシオン・ファーマシューティカルズを買収することで、同社と合意したと発表した。 現金と株式交換による買収額は 390 億ドル(約 4 兆 600 億円)相当となる。 買収価格は 1 株 175 ドルと、11 日の終値に 45% 上乗せした水準。 英国とスウェーデンの 2 社の合併で 1999 年にアストラゼネカが誕生して以降、同社が実行する買収案件としては最も大きく、世界の製薬会社トップ 10 の地位確立につながる。

オックスフォード大学と新型コロナウイルスワクチンを共同開発するアストラゼネカは、パスカル・ソリオ最高経営責任者 (CEO) の就任以降、利益が大きいがん治療などに一段と力を入れており、アレクシオンの買収により血液疾患治療などの分野を強化する。 買収手続きは 2021 年 7 - 9 月(第 3 四半期)の完了を予定し、アレクシオン株主は統合後の新会社株式の 15% を引き続き保有する。 (John Lauerman、Stephanie Baker、Tim Loh、Bloomberg = 12-13-20)


インドで原因不明の疾患、300 人超入院

インド南東部アンドラプラデシュ州で、原因不明の疾患のため 300 人以上が入院し、1 人が死亡した。 調査に当たっている地元当局者が明らかにした。 同州エルール市の当局者によると、先の週末にかけて、市内で発作や意識喪失、嘔吐などの症状に見舞われる患者が相次いだ。 インドでも新型コロナウイルスの流行は続いており、感染者数は世界で 2 番目に多い。 特にアンドラプラデシュ州は感染者が多く、80 万を超す症例が確認されていた。

しかし今回入院した患者は全員が新型コロナ検査で陰性だった。 入院した 300 人あまりのうち約 180 人は退院し、残る患者も容体は安定しているという。 死亡した 1 人も同様の症状を訴えていたが、無関係の心不全のために死亡した。 アンドラプラデシュ州衛生局によると、これまでの血液検査では、蚊が媒介するデング熱やチクングンヤ熱のようなウイルス感染の痕跡は見つかっていない。 患者は全員が同じ所から給水を受けていたことが判明、当局は 5 万 7,863 世帯からサンプルを収集して水質検査を行っている。

「原因はまだ不明だが、食品や牛乳も含めてあらゆる検査を実施している」と当局者は説明した。 全インド医科大学の研究者や州外の神経科医もエルールに到着し、神経毒検査を行っている。 アンドラプラデシュ州首相は 7 日に患者を見舞った。 (CNN = 12-8-20)


がんだけを狙い撃ち 急速に進化する放射線治療とは

最新の放射線治療

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