国内での子宮移植、議論大詰め 海外では術後出産事例

子宮が生まれつきなかったり、がんなどで失ったりした女性が出産できるようにする子宮移植を国内で実施するかどうかの議論が大詰めを迎えている。 日本医学会の検討委員会が 28 日開かれ、近く報告書をまとめることになった。 子宮移植は妊娠、出産の目的のために健康な第三者から子宮を移植することになるため、倫理面などで課題を指摘する声もある。

国内では慶応大の木須伊織・特任助教らのグループが子宮移植の計画を立てている。 卵子をつくる卵巣はあるが、生まれつき子宮や膣(ちつ)がない「ロキタンスキー症候群」の女性 5 人に実施し、安全性や有効性を評価する。 子宮の提供者は、母親や姉妹を想定。 2018 年に計画案を日本産科婦人科学会と日本移植学会に提出した後、国内最大の医学組織、日本医学会が引き取って、19 年から検討委員会が当事者へのヒアリングなどを重ねてきた。

ロキタンスキー症候群の女性は、4,500 人に 1 人ほどの割合で生まれてくる。 将来的には、子宮筋腫やがんで子宮を摘出した人なども対象となる可能性もある。 国内で子宮がない女性は 20 - 40 代だけで推計で約 6 - 7 万人いる。 子宮がない女性が自身の卵子で子どもを持ちたいと思った場合、海外では代理出産という方法もある。 しかし、国内では日本産科婦人科学会が認めていない。

国内で子宮移植の実施例はないが、海外では 2000 年以降、母親や姉妹、亡くなった人から提供された子宮の移植が試みられ、スウェーデンのグループが 14 年に初めて出産に成功。 米国やチェコ、中国など 10 カ国以上で 40 人近い赤ちゃんの出生が報告されている。 移植を受けた人のほとんどはロキタンスキー症候群だが、子宮がんなどの人もいる。 子宮移植では、移植後 1 年ほど様子をみて、子宮に受精卵を入れる。 受精卵は事前に採った卵子を体外受精させ、出産は帝王切開になる。 移植した子宮への拒絶反応を抑える免疫抑制剤が必要になるが、長期間使うとがんなどのリスクがあり、出産が終われば子宮を摘出する。

親族などの健康な人から子宮を摘出するには高度な技術が求められる。 手術は10時間を超えることもあり、命を失うリスクも伴う。 海外では亡くなった人の子宮を用いた例もあるが、国内では臓器移植法で認められていない。 移植を受ける人も手術のリスクがあり、妊娠、出産できる保証はない。 また、免疫抑制剤の胎児への影響など、安全面でも不明な点はまだ多い。 (市野塊、後藤一也、asahi = 10-28-20)


脳、目、肝臓 … 本物に近づく「ミニ臓器」 体内に移植も

前進する再生医療

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体内で分解されるシートで神経障害の治療 阪大など治験

大阪大などのグループが、手指にしびれや痛みが出る末梢神経障害に、神経再生を促す薬をしみこませたシートを使う臨床試験(治験)を始めると発表した。 体内で分解される素材でシートをつくり、手術時に神経にかぶせ、薬を放出させる。 神経の保護と再生促進作用がある新たな治療法になる可能性がある。 末梢神経が傷ついて手指にしびれや痛みがあり、固定や薬で改善がみられない場合、手術で治療する。 しかし、免疫細胞などが神経のまわりに集まることで、神経再生が妨げられたり、知覚異常や筋力低下が残ったりするケースがある。

そこで大阪大、物質・材料研究機構、日本臓器製薬のグループは、生分解性の材料で、直径数百ナノメートル(ナノは 10 億分の 1)の超極細繊維をつくり、神経再生を促す薬をしみこませた「ナノファイバーシート」を開発した。 シートを神経にかぶせると、薬をゆっくり放出する。 免疫細胞を通さず、神経を保護する作用があり、繊維は 1 年以上かけて体内で分解される。 動物実験では、6 週間で神経が再生したことを確認した。

治験は 11 月 - 2022 年 6 月まで患者 33 人にする予定だ。 術後のトラブルや再手術のリスクを減らし、回復までの期間を短くできるとグループは期待する。 大阪大の田中啓之特任教授は「今回は手だが、ほかの部位にも応用できる可能性がある」と話す。 (瀬川茂子、asahi = 10-25-20)


パルメザンとカテージは 20 倍差 なぜ違うチーズの栄養

日本人はいま、これまでで最もたくさんチーズを食べています。 この 5 年、日本のチーズ消費量は過去最高を更新し続け、昨年度は約 36 万トンに達しました。 うち 6 割をナチュラルチーズが占めています。 カマンベールやモッツァレラ、エメンタールなど種類は多彩。 こうした食生活の変化を反映し、食品成分表も 15 種類のチーズを取りあげています。 先日たまたまそれを見た時、チーズの種類によってかなり栄養成分の量にばらつきがあることに気付きました。 例えばカルシウム。 最も高いパルメザンとカテージチーズでは、20 倍以上の差があります。 どうしてこんなに? 乳科学の専門家でチーズプロフェッショナル協会顧問の堂迫俊一さんに聞きました。

「チーズの栄養成分は製法との関係が大きいのです」と堂迫さんは言います。 原料でみると、クリームチーズやマスカルポーネは生乳の脂肪分を調整し増やしてから作るために高脂質。 逆に脱脂乳を使うカテージは、100 グラムあたり脂質が 4.5 グラムと断トツに低い。 最も違いが目立つカルシウムについて。チーズを作る際、加熱殺菌した乳に、乳酸菌や酵素を加えてしばらく放置していると茶わん蒸しのように固まります。 この軟らかい固まりを凝乳といいます。

次は、この凝乳をカッティングして型に詰めていきながら、ホエイと呼ばれる水分を取り除く工程。 カテージやクリームチーズは、乳酸菌が十分に働いて凝乳の pH が低くなってから(つまり酸性に傾いてから)、この工程を行う。 酸性だと、乳のカルシウム分が水に溶けやすくなっており、ホエイと一緒にカルシウムが流れ出て、チーズに残る分が少なくなる、というメカニズムだそう。 100 グラムのクリームチーズに含まれるカルシウムは 70 ミリグラム、カテージは 55 ミリグラムで、牛乳の 110 ミリグラムをも下回っています。

一方、エメンタールやパルメザンなどは pH が高いうちに酵素も加えて凝固を進め、カッティングします。 こうしたチーズは、ホエイにカルシウムが溶け込むことが少なく、チーズ自体に多く含まれることになります。 圧搾には、温度が 40 度以下でプレスする方法と、40 度以上に加熱して行う方法があり、加熱圧搾すると、より水分が少なくなって、硬いチーズに仕上がります。 エメンタールやパルメザン、チェダー、エダムなどがこの種類。 いわゆるハードタイプのチーズです。 「水分含有量が少ない分、栄養成分が豊富。 少量で効率的に栄養補給ができるので、高齢者に適したチーズだと思います。」と堂迫さんは言います。

青カビを生やしたブルーチーズは、食塩相当量が高め。 「これも作り方と関連しています。 カビの生育には酸素が必要で、圧搾も軽めに内部まで空気が通るように形作ります。 しかし雑菌の繁殖は抑えたいので、塩分を高くし、青カビだけが繁殖するように仕向けているんです。」 最近は日本産のブルーチーズも増えてきましたが、衛生環境を厳しく保って塩分を下げた製品も登場し、欧州のコンテストで高評価を得ているそうです。

表面に白カビを付けて熟成させたカマンベール。 クリーミーでコクのある味わいですが、チーズの部位によってカルシウム含有量に違いがあるそう。 「白カビは生育に乳酸とカルシウムを必要とするので、皮の周りにカルシウムが移動します。 逆に芯の部分はトロリとしてアンモニアが生成され、カルシウム、乳酸は低下するんです。」 それで、熟成が進んだカマンベールは少しツンとしたにおいがするのですね。 「皮を残す人もいますが、栄養面からすると、皮もぜひ一緒に食べることをお薦めします。」

チーズを作るにはその 10 倍量の牛乳が必要と言われ、牛乳の栄養を凝縮しています。 発酵や熟成でたんぱく質が体に吸収されやすい状態に分解されているのも特長です。 こうした全般的なチーズの特性に加えて、種類ごとの栄養面の違いも知っていると、チーズ選びに役に立ちそうです。 (大村美香、asahi = 10-20-20)


1 キロ減で科学的根拠をうたえる 機能性表示食品の内実

機能性表示食品

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認知症の原因物質 歯周病によって蓄積する仕組みを解明

歯周病菌が体内に侵入し、認知症の原因物質が脳に蓄積して記憶障害が起きる仕組みを九州大などの研究チームが解明した。 歯周病と認知症の関連は近年注目を集めており、認知症対策につながる発見という。 認知症の 7 割を占めるアルツハイマー病は、「アミロイドベータ (Aβ)」などの異常なたんぱく質が長年、少しずつ脳に蓄積し、発症や症状の進行につながるとされる。 近年、歯周病の原因菌やその毒素が血管を通じて体内に侵入することで、Aβ が体内でつくられ、脳に蓄積することが解明されてきたが、蓄積の仕組みは詳しく分かっていなかった。

九大や北京理工大(中国)などの研究チームは、マウスの腹の内部に 3 週間、歯周病菌を直接投与して感染させ、正常なマウスと比較した。 その結果、歯周病菌に感染したマウスの脳血管の表面では、Aβ を脳内に運ぶ「受容体」と呼ばれるたんぱく質の数が約 2 倍に増えていた。 脳細胞への Aβ の蓄積量も 10 倍に増えた。 暗い部屋に入れば電気ショックを受けることを学ばせた記憶実験では、正常なマウスは 5 分間、明るい部屋にとどまり続けたが、感染マウスは約 3 分で暗い部屋に入ってしまい、記憶力低下が裏付けられた。

一方、Aβ を運ぶ受容体の働きを阻害する薬剤を使えば、感染した細胞内を通る Aβ の量を 4 割減らせることも確認できたという。 チームの武洲(たけひろ)・九大准教授(脳神経科学)は「歯周病菌が、異常なたんぱく質が脳に蓄積することを加速させてしまうことが明らかになった。 歯周病の治療や予防で、認知症の発症や進行を遅らせることができる可能性がある。」と話す。 (竹野内崇宏、asahi = 10-5-20)


ピロリ菌が胃炎を起こす仕組み解明 大阪大の研究チーム

胃に感染する細菌「ピロリ菌」が胃炎を起こす仕組みを、大阪大微生物病研究所の山崎晶教授らのグループがつきとめ、米実験医学誌に発表した。 ピロリ菌は胃炎や胃潰瘍(かいよう)などを起こし、一部は胃がんにつながるとされる。 今回の研究が新たな治療法開発につながる可能性がある。 世界の人口のおよそ半分が感染しているとされるピロリ菌は、病原体を攻撃する免疫細胞の働きを高める。 ふつう、この働きが高まると、免疫細胞は病原体を攻撃するが、ピロリ菌は攻撃をかわし、胃炎が起きてしまう。 これまで詳しい仕組みは謎だった。

グループは、ピロリ菌が免疫細胞を刺激して働きを高める物質を探し、2 種類の物質「αコレステリルグルコシド」、「αコレステリルホスファチジルグルコシド」を見つけた。 ピロリ菌が、感染した相手の細胞のコレステロールを取り込んで、作り出した化合物だった。 マウスの実験で、この化合物ができないようにすると、ピロリ菌を感染させても胃炎は軽くなり、この化合物が胃炎につながることがわかった。 免疫細胞が、この化合物を認識する仕組みも突き止めた。

ピロリ菌感染には抗生剤による除菌が勧められるが、抗生剤に強い耐性菌の出現や、抗生剤の副作用が問題になっていた。 今回わかった仕組みを応用すると、抗生剤を使わずに、ピロリ菌による胃潰瘍を防ぐ新たな治療法の開発につながるとグループはみている。 山崎教授は「ピロリ菌がコレステロールを改変する仕組みを抑えると、新しい胃炎の薬ができる可能性がある」と話している。 (瀬川茂子、asahi = 9-30-20)


独、アフリカ豚熱を初確認 豚肉産業に打撃の恐れ

ドイツで 10 日、国内で初となるアフリカ豚熱 (AFS) の感染が確認された。 同国の主要な豚肉産業への深刻な打撃が懸念されている。 農業省の発表によると、東部ブランデンブルク州の対ポーランド国境付近で見つかった野生のイノシシの死骸を検査したところ、ASF への感染が確認されたという。 ドイツは欧州最大の豚肉生産国で、年間約 500 万トンを生産している。

ユリア・クレックナー農業相は、ブランデンブルク州からの輸出は制限するものの、欧州連合 (EU) との豚肉取引に関しては、影響のない他の地域から輸出を継続すると発表した。 ASF は、野生のイノシシと家畜の豚にとっては致死性が高いが、人間に害はない。 とはいえ、ASF のない国からしか輸入しないと定めている国が複数あり、その中には中国も含まれる。 中国では、ASF の流行で豚数百万匹が殺処分を余儀なくされており、このところドイツ産豚肉への需要が急増していた。 (AFP/時事 = 9-11-20)

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中国でアフリカ豚熱ウイルス検出、3 月以降 13 例目

[北京] 中国農業農村省は 21 日、四川省で輸送中の豚からアフリカ豚熱 (AFS) ウイルスが検出されたと発表した。 それによると、同省南江県で豚の運送トラックを検査したところ、ウイルスを検出。 トラックには 100 匹を超える豚が積み込まれており、このうち 2 匹が死亡していたという。 アフリカ豚熱ウイルスの検出例は 3 月以降で 13 例目。 1例を除き全て国内で輸送中の豚から検出されている。 アフリカ豚熱の流行は豚肉の生産量低下や価格の高騰を招いている。 農業省は 20 日、海外からの新型コロナウイルスの流入とアフリカ豚熱を背景に、今年の国内の農業生産の見通しは厳しいとの認識を示した。 (Reuters = 4-22-20)

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アフリカ豚熱のワクチン開発に成功 中国、研究チームが発表

中国で感染が広がった豚の伝染病の ASF = アフリカ豚熱について、中国の研究チームがワクチンの開発に成功したと発表し、実用化に向けて期待が高まっています。 世界最大の豚の生産国の中国ではおととしの 8 月以降、ASF の感染が各地で相次ぎ、去年末の豚の飼育数は前の年の同じ時期より 1 億頭以上減少しています。 政府系の研究機関の中国農業科学院ハルビン獣医研究所の研究チームは 1 日付けで発表した論文で、ASF のワクチンの開発に成功したことを明らかにしました。

この研究機関は去年、ASF のウイルスの分離に成功し、ウイルスの遺伝子を操作したものをワクチンとして使用したところ、豚に免疫力が備わったということです。 研究チームはワクチンとして有効性と安全性の両方が確認されたと強調しているほか、中国メディアはこのワクチンは大量に生産することができると伝えています。 中国ではいま ASF の影響で豚肉価格が去年の同じ時期に比べ 2 倍に跳ね上がり、物価全体の上昇も招くなど社会問題となっていて、ワクチンの実用化に向けて期待が高まっています。 (NHK = 3-1-20)

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アフリカ豚熱の阻止策強化 改正案第 2 弾を閣議決定

政府は 25 日、アフリカ豚熱 (ASF) の国内侵入阻止へ、水際対策の強化を柱とする家畜伝染病予防法改正案を閣議決定した。 観光客が増える東京五輪の開幕までに施行したい考えで、4 月ごろまでの成立を目指す。 海外からの違法な肉製品の持ち込みに対する罰金の大幅引き上げや、旅行客らの荷物を検査する「家畜防疫官」の権限強化を盛り込んだ。

アフリカ豚熱は豚やイノシシに感染する家畜伝染病で、アジアで感染が拡大。 国内で流行する豚熱 (CSF) とは別の病気で、致死率がより高い。 有効なワクチンがなく、まん延すれば養豚業に大きな被害が懸念される。 発生時に周囲の農場の健康な豚も対象とする「予防的殺処分」を可能にした改正家畜伝染病予防法が今国会で成立、施行されており、今回は対策の第 2 弾となる。 (sankei = 2-25-20)


マウスの ES 細胞でミニ心臓、治療薬探しへの応用に期待

マウスの ES 細胞から直径 1 ミリ程度の「ミニ心臓」をつくることができたと、東京医科歯科大などのチームが発表した。 心室や心房があり、拍動もする。 心臓病などの治療薬探しに生かせる可能性があるという。 英科学誌「ネイチャーコミュニケーションズ」に 3 日、掲載された。 ES 細胞は受精卵からつくられ、様々な組織や臓器になれる。 この細胞を培養して小さな臓器をつくる研究が国内外で進められているが、複雑な構造の心臓はとくに難しかった。

チームは ES 細胞に、細胞を成長させるたんぱく質と、立体構造をつくるために細胞同士を接着させるたんぱく質を加えて 10 - 15 日間培養する方法で、ミニ心臓をつくった。 再生医療によって作製した臓器を大きくするには、臓器の内部まで栄養を送って培養する必要があるが、現時点では技術的に難しい。 このためヒトの臓器の代わりに、再生医療でつくったミニ臓器で新たに開発した治療薬の反応を確かめたり、病態解明に使ったりするのが現実的とされる。

チームは今回の方法を使い、ヒトの iPS 細胞でもミニ心臓をつくる研究を進めているという。 チームの石野史敏・東京医科歯科大教授(発生生物学)は「創薬事業において、(薬の)心臓への毒性がより早期に確実にわかるようになる可能性がある」と話している。 (市野塊、asahi = 9-3-20)


難病 ALS 原因のたんぱく質 本来の働き解明 大阪大

全身の筋肉が次第に衰えていく難病、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の原因となるたんぱく質の新たな働きを、大阪大などのグループが見つけた。 もともとは、細胞内の「たんぱく質合成工場」のメンテナンスに重要な働きをしていることがわかった。 ALS 発病の仕組みや治療法の開発につなげたいとしている。 ALS の患者の脳では、「TDP43」というたんぱく質が、異常にたまることが知られている。 このたんぱく質は正常時にどう働いているのか、詳しくわかっていなかった。 そこでグループは、TDP43 とくっつく物質を調べたところ、細胞内の「たんぱく質合成工場」と呼ばれる「リボソーム」を作る材料であることがわかった。

次に、マウスの神経細胞で実験したところ、TDP43 を減らすと、神経細胞が持つ長い突起が伸びなくなるが、リボソームを作る材料を補給すると、神経突起の伸びが改善することがわかった。この結果から、TDP43 の役割は、リボソームの材料とくっついて、神経細胞の突起に運ぶことだとつきとめた。 何らかの原因で TDP43 の働きが弱まると、神経細胞の突起を伸ばすために必要なたんぱく質が作れなくなると推定された。 突起が伸びない状態が続くと、神経細胞全体が衰えてしまい、ALS 発病につながるとみられる。 グループの長野清一准教授は、「工場のメンテナンスという役割に注目した新しい治療法の開発につなげたい」と話している。 (瀬川茂子、asahi = 9-2-20)


新型出生前診断、本格検討へ 大学病院以外での扱い焦点

妊婦の血液からおなかの赤ちゃんのダウン症などを調べる新型出生前診断 (NIPT) のあり方について、厚生労働省が近く、新たな検討部会を立ち上げて議論を始める。 大学病院だけでなく、地域のクリニックでも検査を受けられるようにする日本産科婦人科学会(日産婦)の新たな指針の扱いが焦点になる。 「命の選別」にかかわる検査でもあり、慎重に進める必要がある。

発端は昨年 3 月。 日産婦が検査を受けられる施設の要件を緩和する方針を明らかにしたことだった。 検査できる施設を増やし、美容外科などの無認可施設へ妊婦が流れる実態に歯止めをかけるねらいがあった。 だが、この検査は結果によっては中絶につながる可能性がある。 実際、認可施設でつくる「NIPT コンソーシアム」の調査では、検査後に、羊水検査などで陽性が確定した妊婦の約 9 割は中絶を選んでいる。 唐突な拡大の方針に日本小児科学会や日本人類遺伝学会が異論を唱え、厚労省が議論を引き取った。

だが新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、議論は進まなかった。 一方、水面下では学会間で調整が重ねられた。 各学会の役員が交代したことも議論のまとまりを後押しした。 その結果、検査の前後に小児科医に相談できる窓口をつくるなどの要件を追加。 日産婦は今年 3 月には新たな指針を固め、各学会から正式に合意を得た後、6 月に新指針を明らかにした。 日本小児科学会の奥山虎之・倫理委員長は「新指針では小児科医の役割を明確にしてもらった。 無認可施設が増える中、小児科医も何らかの協力をする必要がある。 (新指針の合意は)現状においてはベストな対応だと思う。」と話す。

ただ、こうした進め方には疑問の声もある。 「(議論が進まず)しびれをきらしたんだろうと同情はしている。」 NIPT について医師や研究者らでつくる有志の会の呼びかけ人で、明治学院大学の柘植(つげ)あづみ教授(医療人類学)は今年 6 月下旬、厚労省で会見した際、こう述べた。 そのうえで「学会だけで集まって話しました、ではなく、もう少しアクションの仕方があったのではないか」と指摘した。

厚労省が議論を引き取った際には、専門家による学会の論理だけでなく、当事者や国民を巻き込んだ幅広い議論がされることも期待されていた。 だが、日本人類遺伝学会の関係者は「本来は国民全体の総意で決めなくてはいけない。 だが、人によって意見が割れるテーマでもあり、国や政治家も動きがにぶい。」と話す。 技術の進歩によって、おなかの赤ちゃんの情報が詳しく分かる時代になった。 こうした技術をどこまで受け入れるのか。 生まれる前の赤ちゃんの病気を親はどこまで知るべきなのか。 妊娠や出産の選択をめぐる女性の生殖の権利、おなかの赤ちゃんの権利をどう考えるか - -。 こうした議論は結局、深まらないままだ。

ダウン症の娘の父親で、日本ダウン症協会の理事でもある大阪医科大の玉井浩・小児高次脳機能研究所長(小児科)は「検査を受ける家族に、合併症など不安な情報が多く伝わっている」と現在の NIPT にも疑問を投げかける。 親の主体的な選択を支援するためにも、検査前後のカウンセリング体制はとりわけ重要とされる。 だが、認可施設だから適切なカウンセリングがされているとは言い切れない。 厚労省の調査では、認可施設でもカウンセリングに費やす時間にばらつきがあるなど、施設間に格差がある実態も示された。

「ダウン症の子も悲しいことは悲しい、うれしいことはうれしいと感じるのは健常な子と同じ。 運動機能や知的な発達は遅いかもしれないが、心は決して遅れない。 希望する妊婦がいる以上、NIPT がダメとは言わないが、いまのまま認可施設を広げるのは不安だ。」 横浜市立大病院では 2019 年度に、約 650 人が検査の相談に訪れた。 だが実際に検査を受けるのは 7 割ほどという。 相談後に検査を思いとどまったり、ほかの検査を受けたりする人もいるためだ。

同病院は 13 年に認可施設になった。 当初は年間 1 千人が相談に来ていたが、減少傾向にある。 無認可施設に妊婦が流れている可能性があるという。 「事前に情報を得たい」とカウンセリングを受けるためだけに訪れる妊婦もいる。 最初の説明だけを聞き、その後、無認可施設で検査を受けている例も多いとみられる。

病院ではこれまで約 100 人が NIPT を受けた後に陽性が確定したが、多くは中絶を選んでいるという。 遺伝子診療科の浜之上はるか講師(産婦人科)は「『高齢だから』、『周りもやっているから』などと単純化せず、なぜ受けたいのかを夫婦でしっかり考えてほしい。 本当に世の中が心から必要としている技術なのか、本来はもっと考えなくてはいけない。」と話す。 (市野塊、後藤一也、asahi = 8-22-20)

検査ができる施設の主な要件

  • 産婦人科医と小児科医が常勤。 どちらかが遺伝についての専門的な資格を持っている。
  • 遺伝に関する専門外来を設置している。

新たな案では、以下の要件を満たせばNIPTの認定施設になることができる

  • 日本産科婦人科遺伝診療学会が主導する認定制度で認められた産婦人科の常勤医がいる。
  • 日本小児科学会、日本人類遺伝学会、日本産科婦人科学会、日本産科婦人科遺伝診療学会の 4 学会で共同作成した説明書をカウンセリングで使う。
  • 日本小児科学会が規定する制度で認められた小児科医と連携する。
  • 妊婦の希望があれば、NIPT の実施前後のいずれの段階でも、小児科医に相談できる窓口がある。
  • NIPT の結果が陽性の場合に、近くの施設の臨床遺伝専門医に来てもらうなどしてカウンセリングができる。

◇ ◇ ◇

新型出生前診断、認定外は全国 135 カ所 地方にも進出

妊婦の血液からおなかの赤ちゃんのダウン症などを調べる新型出生前診断 (NIPT) について、日本医学会の認定を受けずに検査をしている認定外施設が 135 カ所あったことが、認定施設でつくる「NIPT コンソーシアム」の調査でわかった。 認定外施設では不十分なカウンセリング体制によるトラブルも報告されており、関連学会などが注意を呼びかけている。 NIPT は染色体の異常がわかった妊婦の約 8 割が中絶を選んだとの報告もあり、一定の条件を満たした大学病院などの全国 109 カ所の認定施設に限って実施が認められている。

一方、高齢出産の増加などに伴い、認定外の美容外科などのクリニックが参入。 厚生労働省は昨年 11 月時点で少なくとも全国に認定外施設が 54 カ所あるとする調査結果を 7 月に公表している。 今回の調査は、インターネットを使って 7 月 2 日時点で集計。 認定外施設は東京や大阪などの都市部が多かったが、沖縄や佐賀など認定施設がない地方にも進出していた。 東京都内の基幹施設が地方のクリニックと連携し、採血を担う関連施設を増やしている例がみられるという。

調査を担当した昭和大の関沢明彦教授(産婦人科)は「実態として NIPT が様々な場所でできるようになっているが、カウンセリングまで責任を持ってやっているとは思えず、実際にトラブル相談も増えている」と指摘する。 また、認定外施設の多くでは、認定施設では認められていない範囲の染色体異常を調べる検査も実施されているとし、「情報がなく、妊婦がどこに相談していいか分からないまま中絶につながる可能性もある」と危惧する。 (市野塊、asahi = 8-4-20)

前 報 (3-2-19)


アルツハイマー新薬に期待 来春までに承認判断 課題も

認知症のなかでも患者が多いアルツハイマー病の新しい治療薬への期待が高まっている。 製薬会社が承認申請したものを米当局が「優先審査」していて、来年 3 月までに結論が出る。 認められれば、アルツハイマー病の進行を長期間抑える世界初の薬として実用化される。 だが、効果がはっきりしないとの指摘があり、治療費が高額になる懸念もあるなど課題は多い。

治療薬の候補は、米製薬大手バイオジェンと日本のエーザイが共同開発する「アデュカヌマブ」。 今年 7 月に米バイオジェンが米食品医薬品局 (FDA) に承認を申請した。 米当局は今月、通常より短期間で結論を出す優先審査の対象にすることを決めた。 審査終了の目標日は来年 3 月 7 日となっている。 会社側は今後、欧州や日本でも承認申請を検討している。

アルツハイマー病は、脳内に「アミロイドβ」というたんぱく質がたまることで神経細胞が徐々に働きを失い、認知機能が低下するとみられている。 認知症の患者は世界に 5 千万人、日本に 600 万人いて、その 7 割ほどがアルツハイマー型と推計されている。 アデュカヌマブは、アミロイドβを除去できる初めての新薬として期待されている。 既存の治療薬との違いは、認知症の前段階である軽度認知障害という「早期」に投与を始められることと、長期間にわたり症状の進行を抑えるとされることだ。 既存の治療薬は症状を一時的に軽くするもので、時間とともに認知機能は再び低下していた。

大手製薬会社は新薬の開発に挑んでいるが難航している。 認知症はヒトに特有のもので、動物を使った病気の再現が難しいことが大きな理由だ。 日本でこれまでに承認されたのは 4 種だけ。 認知症領域で FDA が承認した新薬は 2003 年以降一つもない。 アデュカヌマブは優先審査の対象になったが、効果の検証を受けて最終的に承認される可能性は「五分五分(外資系証券のアナリスト)」とも指摘される。 新薬の開発には長い期間と多額の費用がかかる。 承認されなければ販売することはできず、会社側には大きな負担となる。

それでも各社が開発を続けるのは巨額の利益が見込めるためだ。 アルツハイマー病は根本的な治療法がなく、新薬ができれば多数の患者が投与を希望するとみられる。 世界での年間売上高が 1 千億円を超す大型新薬「ブロックバスター」になる可能性もある。 一方で、課題もある。 アデュカヌマブは昨年 3 月、有効性の証明は難しいと判断され、臨床試験(治験)が中止された。 米バイオジェンは患者のデータを見直し、投与量が多ければ有効性があるとして、承認申請にこぎつけた。

医薬品業界に詳しい大和証券のアナリスト、橋口和明氏はこうした経緯から、どこまで患者が効果を実感できるのかわからないと指摘。 投与対象となる早期段階の患者を見つけるのも簡単ではなく、「期待しすぎるのは禁物だ」と話す。 製造コストが一般的な薬よりもかかるとされ、薬価が高くなる可能性もある。 多数の患者に投与するなら、公的医療保険の財政悪化につながりかねない。 効果と治療費とのバランスが社会的なテーマになる。 (真海喬生、asahi = 8-22-20)

アルツハイマー病新薬への期待と課題

【期待】

  • 高齢化で患者は急増 : 日本における認知症の人は 2025 年に約 700 万人、65 歳以上の 5 人に 1 人にのぼるとの推計がある。 最も多いアルツハイマー型の治療薬への期待は高い。
  • 経済効果が大きい : アルツハイマー病の発症を 5 年遅らせる新薬などがあれば、日本では 25 年度の医療・介護費が単年で約 1.9 兆円減る試算がある。
  • 既存薬の効果は限定的 : 神経の働きを助けるものなど治療薬はあるが効果は限定的。 「アデュカヌマブ」は軽度認知障害の段階から投与することで、症状の進行を遅らせると期待される。

【課題】

  • 開発が難しい : 認知症は動物を使った病気の再現が難しく、治療薬の開発が困難。 17 年までの 20 年間で 146 の薬剤候補が開発中止となった。
  • 治療費が高額に : 新薬開発には数百億円以上ともされる巨費がかかる。 製造コストもあり治療にかかる費用は高くなりがちだ。
  • 日本での承認に時間 : 仮に米国で承認を受けても、日本での販売には改めて日本当局の承認が必要となる。

アルツハイマー病 : 病名は約 100 年前にこの病気を研究したドイツの精神科医のアルツハイマー博士に由来する。 脳内に「アミロイドβ (Aβ)」というたんぱく質がたまることで神経細胞が徐々に働きを失い、認知機能が低下するとみられている。 厚生労働省の資料などによると認知症の患者は世界に 5 千万人、日本に 600 万人いて、その 7 割ほどがアルツハイマー型と推計されている。


台風で浸水した家、肺に穴が カビの健康被害に警鐘

昨秋 9 月の台風 15 号で家屋の損壊が集中した千葉県の房総半島南部では、今もブルーシートで覆われた建物が目立つ。 補助を受けても高額な修理費を払えない被災住民や、業者の不足で修理の順番待ちが長びく住民が、カビに覆われた屋内で暮らす。 頼みの綱は地元ボランティアの応急修繕だが、コロナ禍で活動が制約されて苦戦が続く。

「天井も畳もカビでいっぱい。 体がどうにかならないか、ずっと怖かった。 来てくれて感謝、感謝です。」 鋸南(きょなん)町の網代弥寿雄(あじろやすお)さん (78) は 6 月半ば、防護服にヘルメット、マスク姿で自宅の修繕と消毒に汗を流した地元ボランティアらに何度も頭を下げた。 台風 15 号と昨年 10 月の台風 19 号、その後に襲った豪雨で壊れた屋根はシートで覆われたまま。 雨漏りがひどく、木造 2 階建ての部屋の多くで黒や白、緑色のカビが無数に広がっていた。 腐った天井板をはがし、屋根裏のカビを消毒したのは、大工や板金業に携わるメンバーだ。

町社会福祉協議会によると、昨年 10 月までの約 40 日間で、片付けやごみ出しを担う一般ボランティアなど延べ 4,559 人を受け入れた。 その後は家屋の復旧を専門に担う技術系ボランティアのみ受け入れを続け、3 月末までに全国から延べ 1,600 人超が訪れた。 「ブルーシートがはがれた」、「カビだらけの部屋をなんとかしたい」 …。 築年数が古く、国や県の補助を受けても修理費全額を払えない住民や修理の順番待ちが長引く住民は数多く、協議会への要請は絶えない。

だが、新型コロナウイルスの感染拡大で技術系の受け入れも大幅に縮小を余儀なくされた。 4 月以降は県内在住者を中心に毎月延べ約 170 人が町内の被災家屋の復旧を支える。 協議会と連係する地元団体「鋸南 RCV」を率いる堀田了誓(りょうせい)さん (41) は「雨漏りを止めても天井や壁の断熱材が水を含んだままのこともある。 シートに覆われた屋内は湿気がこもってカビが再び生えやすい。」と懸念する。 「復旧から取り残されるのは声を上げられない高齢者や障害のある人たち。 コロナ禍で消毒液や防護服の価格も高騰して入手しにくいが、台風シーズンの再来を前に今やらないともっとひどい状況になる。」

医療関係者もカビによる健康被害に警鐘を鳴らす。 千葉大学真菌医学研究センターの亀井克彦教授は 2 月、せきや発熱症状を訴える県中部の 50 代の男性を診察した。 床上浸水した自宅でカビの生えた状態が続いた男性の診断結果は、カビが引き起こす肺炎「肺アスペルギルス症」。 数週間で退院した後も、カビの感染で穴のあいた肺は完全には元に戻らず、薬で進行をくい止めているという。 カビを吸い込むと夏型過敏性肺炎や気管支ぜんそくなどのアレルギー症状を起こす危険もあり、亀井教授は「水分を含む壁紙や木材はカビのえさとなり、床下も温床になる。 風通しをよくし、消毒液で拭いた後にカラ拭きして水分を残さないで。」と呼びかける。

県によると、昨秋の 3 度の暴風雨で約 7 千棟が全半壊し、約 8 万 3 千棟が一部損壊。 壊れたままの住宅の数は把握できていない。 修理を待つ間に傷みが進む住宅は罹災(りさい)証明の再調査を受け付ける方針で、すでに締め切った市などにも周知していくという。 県復旧復興推進室の新村理(おさむ)室長は「屋根の復旧が長期化して屋内の損傷が拡大することは想定外で、カビ被害の把握も難しい。 市町村と連携して情報を集め、何ができるか検討する。」と話す。 (川村直子、asahi = 8-13-20)


腸内ウイルスで細菌撃退の治療法めざす 大阪市大など

大阪市立大学などの研究チームは、腸内細菌と、その細菌にとりつくウイルスを調べ、データベースをつくった。 腸内細菌には病気の原因になるものがあり、ウイルスを元にした新薬の開発につながると期待される。 米科学誌「セル・ホスト & マイクローブ」電子版に 10 日、発表した。 ヒトの腸の中には多種多様な細菌がおり、「腸内細菌叢(腸内フローラ)」と呼ばれる。 近年、病気との関係が明らかになってきている。 一方、腸の中には細菌にとりつく「バクテリオファージ」と呼ばれるウイルスも多いが、詳細はよくわかっていなかった。

チームが健康な日本人 101 人の便サンプルを使って、細菌とウイルスの遺伝情報を調べたところ、細菌約 600 種、ウイルスは分類可能なものだけで約 450 種を見つけた。 それぞれの人の腸内にどんなウイルスが多いのかもわかった。 人によってその割合は大きく違い、中には 2014 年になって初めて見つかったウイルスが一番多い種という人もいた。 この割合は、8 週間追跡してもあまり変わらず、通常は安定していることもわかった。 細菌に取り込まれたウイルスの遺伝情報を解析することで、どのウイルスが、どの細菌にとりついているのかといった関係も明らかになった。

そこで、チームは、腸の粘膜に炎症が起きる「偽膜性腸炎」の原因になる細菌「クロストリジオイデス・ディフィシル」にとりつくウイルスに注目。 このウイルスが持つ、細菌の膜を壊す酵素を合成し、細菌に感染したマウスに与えると、1 週間後も 90 - 100% が生き残ったが、与えなかったマウスの生存率は 2 日で 30% 以下になった。 こうした方法で抗菌薬を作れば、特定の細菌のみに効果がある可能性が高く、他の健康に有用な細菌を殺してしまうことを防げるとみられる。 大阪市立大の植松智教授(ゲノム免疫学)は「今後、ウイルスを使って色々な細菌を制御する治療法を創造できる」と話した。 (杉浦奈実、asahi = 7-11-20)


人の細胞に感染する豚のインフルエンザウイルス見つかる 中国

中国の複数の地域で、人の細胞に感染する能力のある豚のインフルエンザウイルスが見つかったとする研究結果を中国の研究グループがまとめました。 研究グループは、人から人への感染を起こすおそれがあるとして、監視していく必要があるとしています。 アメリカの科学雑誌、「アメリカ科学アカデミー紀要」に掲載された論文によりますと、研究グループは、2011 年から 18 年にかけて、河北省や山東省など 10 の地域で豚のインフルエンザウイルスを調べた結果、複数の養豚場から人の細胞に感染する能力のある同じタイプのウイルスが見つかったということです。

確認されたウイルスは「H1N1」と呼ばれるタイプのもので、遺伝子には、ヨーロッパと北アメリカの鳥のウイルスと、2009 年に新型のインフルエンザウイルスとして世界的に流行し、その後定着したヒトのウイルスの特徴があり、動物のフェレットを使った実験でも高い感染力を示したということです。 また、養豚場で働いている 338 人を調べたところ、10.4% に当たる 35 人から過去に感染したことを示す抗体が検出されたほか、養豚場以外の人の一部からも抗体が検出されたということです。 研究グループは、人から人への感染を起こすおそれがあるとして、感染が広がらないよう監視していく必要があるとしています。 (NHK = 6-30-20)


エボラ出血熱、コンゴ民主共和国で流行 コロナも拡大中

エボラ出血熱

記事コピー (asahi = 3-25-14 〜 6-2-20)


狂犬病発症、国内で 14 年ぶり確認 海外で感染か 愛知

愛知県豊橋市は 22 日、市内の医療機関に入院している患者が狂犬病を発症したと発表した。 フィリピンで犬にかまれて感染したとみられ、重症。 厚生労働省によると、国内で狂犬病が確認されたのは、2006 年にフィリピンから帰国した 2 人が発症して以来 14 年ぶり。 市によると、この患者は今年 2 月にフィリピンから就労目的で入国し、静岡市に住んでいる。 今月 11 日から 14 日にかけて足首の痛みや食欲不振、腹痛などを訴えるようになった。 18 日に知人に付き添われ、豊橋市内の医療機関を受診した。 現在も集中治療室 (ICU) で治療中。 国立感染症研究所(東京)による PCR 検査で 22 日までに陽性と確認された。

家族の話では、患者は昨年 9 月ごろ、フィリピンで左足首を犬にかまれたと話しており、その際に治療を受けなかったという。 市は患者の国籍や性別、年齢などの属性について「患者側の同意が得られていない」として明らかにしていない。 狂犬病はアジアやアフリカなどで流行しているが、厚労省によると、日本国内で狂犬病に感染した事例は 1957 年を最後にない。 (床並浩一、asah = 5-22-20)