武田、ドイツにデング熱ワクチンの製造設備 投資は 120 億円以上

[東京] 武田薬品工業は 30 日、ドイツにデング熱ワクチンを製造する設備を建設すると発表した。 2019 年には設備が完成する予定。 投資額は 1 億ユーロ(120 億円)以上になるという。 武田のデング熱ワクチン (TAK-003) は、グローバル臨床第 3 相試験に入っている。 デング熱は、蚊を媒介とするウイルス疾患。 毎年約 3 億 9,000 万人が感染し、2 万人以上が死に至っている。 (Reuters = 11-30-16)


インフル、全国的に流行期に 過去 5 年間で最も早く

インフルエンザが全国的な流行期に入った。 厚生労働省は 25 日、直近の 1 週間(11 月 14 - 20 日)に全国約 5 千カ所の定点医療機関から報告された患者数が 1 カ所あたり 1.38 人に上り、全国的な流行開始を示す指標の「1 人」を超えたと発表した。 今季の流行開始は昨季より 1 カ月半ほど早く、過去 5 年間で最も早い。

発表によると、報告された患者数は 6,843 人。 都道府県別では、1 カ所当たりの患者数は沖縄が 8.12 人と最も多く、栃木 5.50、福井 3.50 人、北海道 2.92 人と続き、全都道府県で前週の報告数より増加した。 「注意報」レベルの 10 人、「警報」レベルの 30 人を超えた都道府県はまだない。 入院患者数は 95 人。 休校や学年・学級閉鎖をした保育所や幼稚園、小中高校は 187 施設に上った。

検出されたウイルスは、直近の 5 週間では 2014 - 15 年シーズンに流行した A 香港型が最も多かった。  A 香港型は高齢者が重症化しやすいとの報告もある。 厚労省や国立感染症研究所(感染研)は、ワクチンは肺炎などの重症化を防ぐ効果があるとして、接種を呼びかけている。 感染研によると、昨季の全国の推計患者数は約 1,613 万人。 流行のピークは、2 月 8 - 14 日の週だった。 (小川裕介、竹野内崇宏、asahi = 11-25-16)


オプジーボ、17 年 2 月に「半額」 中医協了承

厚生労働省は 16 日の中央社会保険医療協議会(中医協)で、超高額の抗がん剤オプジーボの公定価格(薬価)を 2017 年 2 月に 50% 引き下げる方針を提案し、中医協の了承を得た。 定例の薬価改定は 18 年度だが、オプジーボに限り特例で値下げする。 大幅な値下げで、社会保障費の伸びに一定の歯止めをかける。 オプジーボは小野薬品工業が販売する、皮膚がんや肺がんの治療薬。 患者 1 人に 1 年間使うと約 3,500 万円かかる。 5 万人の肺がん患者が使えば費用は 1 兆 7,500 億円に達するとの試算もある。

米国や英国では薬価が日本の半分以下となっており、厚労省は医療費の膨張を防ぐためにも大幅な引き下げが必要と判断した。 値下げには「市場拡大再算定」というルールを使う。 年間の売上高が企業の予測を大幅に超え、1,500 億円以上に達した場合には最大 50% 値下げできる。 小野薬品はオプジーボの 17 年 3 月期の売上高を出荷ベースで 1,260 億円と見込む。 厚労省はこれに諸経費などを足すと 1,516 億円に膨らむと試算しており、50% 値下げのルールを適用できる見通しが立った。 (nikkei = 11-16-16)

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日本発のがん新薬、オプジーボ 24 年前発見の分子から

免疫の働きのブレーキをはずすという新たな方法のがん治療薬・オプジーボ(一般名ニボルマブ)。 外科手術、放射線、抗がん剤が中心の治療を大きく変えつつある。 京都大の研究者らが 24 年前、カギとなる分子を見つけ、役割のナゾに迫った基礎研究の成果は、ついに患者の元に届いた。

京都大医学部の本庶佑(ほんじょたすく)教授(当時、現名誉教授)の研究室。 1991 年、助手だった石田靖雅さん(現奈良先端科学技術大学院大学准教授)は、細胞が自ら死を選ぶ「アポトーシス」という現象に関わる遺伝子を探していた。 免疫細胞が攻撃するべき相手か、そうでない自分かを見分ける仕組みに迫れると考えていた。

石田さんは当時最先端だった方法を導入。 マウスの免疫細胞を自ら死ぬように操作し、死ぬ前後で働いている遺伝子を比べ、後だけで働く遺伝子を捕まえる。 それだけでは候補となる遺伝子が多くなり過ぎ、どれが重要かしぼり切れないので、もう 1 種類の細胞でも同じ実験をし、共通して働く遺伝子を探した。 すると、一つの遺伝子が見つかった。 予定(プログラム)された細胞死(デス)の頭文字から「PD-1」と名付け、92 年に論文発表した。

当初はこの遺伝子がつくる PD-1 分子がアポトーシスを起こすと思われた。 だが、何度実験しても起きない。 「なぜ起きないんだろう。」 石田さんは困惑した。 本庶さんは考えていた。 「(狙った分子と)違うからやめるか、違うけど面白そうだから続けるか。 別にアポトーシスでなくてもいいわけや。 免疫で面白そうなものが取れてきた。 決着するまでやろうやないか。」 石田さんが留学で離れた後も、本庶さんらはこの分子の働きを見つけるため、PD-1 を作れないようにしたマウスを作った。

免疫のブレーキ役と確認

本来体にある分子がないマウスは何らかの症状が出るはずだが、現れなかった。 そこで同じ京大医学部で免疫を研究する湊長博教授(現副学長)に助言を求めると、湊さんはまず、PD-1 を作れないマウスを症状が安定して出る遺伝子型にする必要性を指摘した。

約 1 年半かけ、やっとそのマウスができた。 このマウスの細胞の実験で免疫を抑える役割をする可能性が分かった。 「粘って待とう」とさらにマウスの観察を続けると、生後約 1 年でマウスの腎臓で炎症が起き、湊さんは免疫が過剰に働く「ループス腎炎」に似ていると直感した。 逆に言えば、PD-1 は免疫が過剰に働くのを抑えていることになり、免疫のブレーキ役であることが確認できた。

実験を重ね、PD-1 の仕組みが次第に分かってきた。 活性化した免疫細胞の表面にある PD-1 は、別の細胞の表面にある結合相手の分子である PD-L1 などとくっつくと攻撃をやめるよう指示する。 病原体などと闘う免疫細胞が自分の細胞を間違って攻撃するのを防ぐ仕組みだった。

本庶さんは「これを壊したら、免疫ががんと上がるやないか。 がんが治るかもしれん。」と考えた。 がん細胞は PD-1 の結合相手を示し、免疫細胞の識別の仕組みを乗っ取り、攻撃にブレーキをかけているのだろう。 結合を邪魔すれば、免疫細胞が攻撃して、がんを退治できるかもしれない - -。 PD-1 を作れないマウスにがん細胞を移植しても、増殖が抑えられることが確認できた。 「マウスできれいなデータが出ている。 人に効かないはずがない。」 普通のマウスに PD-L1 とくっつく抗体を注射すると、がん細胞は増えず、マウスは生き延びた。 論文発表は 2002 年だった。

世界に驚き、54 カ国で承認

本庶さんは PD-1 にくっつく抗体を人の薬に応用しようと動き出し、小野薬品工業と共同で特許出願した。 当時、抗体医薬の開発の経験が乏しかった小野薬品は別の製薬会社と共同開発を模索したが、国内外の 10 数社全てに断られた。 当時は「免疫でがんを治す」という考えに懐疑的な見方が多かった。

そんな中、共同開発を提案したのが米ベンチャー企業「メダレックス」だ。 同社は後に米製薬大手「ブリストル・マイヤーズスクイブ」が買収。 その後、この薬の開発と販売は、小野薬品が日本と韓国、台湾で、ブリストルがその他の地域で担うことになった。 治験は米国で 06 年、日本で 08 年に始まり、12 年に米国での結果が英医学誌で発表されると、世界中に驚きを与えた。 末期がん患者 296 人に約半年間投与すると、肺がんや皮膚がんの一種メラノーマ、腎臓がんの患者の各 2 - 3 割でがんが小さくなったという。

抗体医薬「オプジーボ」は 14 年に世界に先駆けて日本でメラノーマの治療薬として承認。 米国や欧州でも承認された。 国内では 15 年に肺がんの一部、今年に腎臓がんの一部も加わり、高額な薬価も話題になった。 先月現在、54 カ国で承認されている。 「本庶先生は『絶対に薬にすべきだ』という意思が強かった」と湊さん。 今も最前線で研究を続ける本庶さんは語る 「新しいことをやるときは、人が注目しないところで、自分に確信があることをやらないといけない。 それがイノベーション。」 (合田禄、asahi = 9-25-16)

前 報 (7-23-16)

免疫チェックポイント分子

PD-1 は免疫細胞が自己の細胞か、攻撃するべき非自己かを点検して攻撃にブレーキをかける検問所のような役割を果たしているため、「免疫チェックポイント分子」と呼ばれる。 こうした分子はほかにも CTLA-4 などがある。 これらの分子の働きを阻害する薬は、免疫の働きのブレーキを外す仕組みで機能するため、がんなどを直接攻撃する抗がん剤とは大きく異なる。 PD-1 にくっつくオプジーボのほか、複数の製薬会社が PD-L1 や CTLA-4 にくっつく抗体を薬として開発している。


14 日は世界糖尿病デー 国内 2 千万人超の患者・予備軍

運動や食事などの生活習慣が大きく影響する糖尿病。 働き盛りの患者が多く、診断や治療の遅れが深刻な合併症につながることもある。 国内の患者やその予備軍の人は、15 年前に比べ 1.5 倍にも増えており、世界的にも発展途上国を中心に増加している。 自覚症状のない軽症の人たちの発症を防ぎ、患者の重症化や合併症を予防するためにはどうしたらいいのか。 11 月 14 日は国連が定める世界糖尿病デー。 ライトアップや健康相談会などのイベントが国内各地で開かれる。

国内に 2,050 万人の患者・予備軍

糖尿病は、血液中のブドウ糖の量が増え、血糖値が慢性的に上がる病気だ。 体内で血糖値を下げるホルモン「インスリン」がうまく働かないことから起きる。 厚生労働省の国民健康・栄養調査(2012 年)によると、「糖尿病が強く疑われる」患者は約 950 万人、「可能性が否定できない」予備軍は約 1,100 万人で、計約 2,050 万人にのぼる。

1997 年の計 1,370 万人(患者 680 万人、予備軍 690 万人)に比べると、1.5 倍に増えている。 高齢化が進む中、今後も増加が見込まれている。 糖尿病患者の増加は、医療費がさらに膨らむことにつながる。 このため、国も 1 千万人に増加を抑えることを目標に掲げている。 世界保健機関 (WHO) の 14 年の推計では、世界の糖尿病患者数は 4 億 2,200 万人で、世界的にも増えている。 発展途上国など所得が低い国々での増加が目立っており、国際的な課題になっている。

生活習慣で防げる 2 型

糖尿病には、大きく分けて 2 種類ある。 膵臓(すいぞう)にある膵島(すいとう)細胞が壊れインスリンを分泌できなくなる 1 型糖尿病と、インスリンの分泌が少なかったり、うまく働かなかったりする 2 型糖尿病だ。 (北林晃治、asahi = 11-13-16)


マイコプラズマ肺炎が大流行 「五輪肺炎」復活?

子どもに多く、せきが長引きやすいマイコプラズマ肺炎が大流行している。 国立感染症研究所によると、10 月 17 - 23 日の 1 週間に全国約 500 の医療機関から報告された平均患者数は統計開始以来、過去最多を記録した。 専門家は、従来の抗菌薬が効かない耐性菌の影響を指摘、マスク着用やこまめな手洗いを呼びかけている。

マイコプラズマ肺炎は乾いたせきと発熱が特徴で、解熱後も数週間にわたってせきが続く。 マイコプラズマという細菌が原因で、くしゃみやせきのしぶきを介して感染する。 14 歳未満が患者の約 8 割を占め、中耳炎や無菌性髄膜炎、脳炎などを併発し重症化することもある。

8 日に速報された 10 月 24 - 30 日の 1 週間の患者報告数は 691 人で、1 医療機関あたり 1.46 人。 過去最多だった前週の 1.61 人に続き、高い水準だった。 都道府県別では、群馬が最多で、岐阜、青森、埼玉、大阪、愛知、静岡、山口などが続いた。 今年に入ってからの報告総数は 1 万 4,9853 人に上り、昨年 1 年間の 1 万 323 人を大幅に上回った。

世界的には 3 - 8 年程度の周期で流行を繰り返すと報告され、日本では 1984、88 年に大流行し、「オリンピック肺炎」と呼ばれた。 90 - 2000 年代は落ち着いていたが、11、12 年に大流行し、リオ五輪があった今年は 4 年ぶりの大流行となった。 (川裕介、asahi = 11-8-16)


細胞の "オートファジー" の様子を可視化 東大

ことしのノーベル医学・生理学賞の受賞者に選ばれた大隅良典さんが仕組みを解明した、細胞のリサイクル機能「オートファジー」が、細胞の内部でどのくらい活発に働いているか、簡単に測定できる方法を東京大学のグループが開発しました。 オートファジーは細胞内の不要になった、たんぱく質などを分解し、新たなたんぱく質の材料としてリサイクルする機能で、東京工業大学栄誉教授の大隅良典さんが世界に先駆けて、その仕組みを解明し、ことしのノーベル医学・生理学賞の受賞者に選ばれました。

東京大学の水島昇教授のグループは、このオートファジーの過程で役目を終えると分解されるたんぱく質に注目し、オートファジーの活動の様子を簡単に画像で示す方法を開発しました。 モニターを見ますと、オートファジーが活発だと赤く、活発でないものは青く示され、一目でその様子がわかります。 オートファジーはパーキンソン病やがんなど、さまざまな病気と関係があることがわかっていて、水島教授は「今回の方法を使えば、オートファジーの働きを強めたり、弱めたりする薬剤の効果を検証できるので、さまざまな病気の新薬を開発する臨床研究も加速するのではないか」と話しています。 (NHK = 11-5-16)

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ノーベル受賞業績の「オートファジー」、どんな仕組み?

スウェーデンのカロリンスカ医科大は 3 日、今年のノーベル医学生理学賞を、東京工業大の大隅良典栄誉教授 (71) に贈ると発表した。 業績は「オートファジー(自食作用)の仕組みの発見」。 オートファジーとは、細胞内の一部を分解してリサイクルする仕組みで、主に外部から十分な栄養をとれないときに起こる。 細胞内をきれいにする浄化作用や、病原菌を分解する免疫などの役割も担っていることが分かってきた。 酵母のような単細胞生物から哺乳類まですべての真核生物がオートファジーの機能を持っている。

オートファジーはまず細胞内に膜が現れることで始まる。 その膜がたんぱく質やミトコンドリアなどの小器官を取り囲み、分解酵素を含んでいる別の小器官「リソソーム」と融合する。 すると、取り囲まれたたんぱく質は分解されてアミノ酸となり、栄養素として再利用される。

いちからわかる「オートファジー」

Q 今年のノーベル医学生理学賞の業績であるオートファジーって何かな?
A 細胞が、自分自身のたんぱく質を分解し、新しいたんぱく質の材料として再利用する仕組みよ。 たんぱく質は、呼吸や栄養の消化、生殖など生命のあらゆる営みに欠かせない。 食事で補給できるけど、それでは足りず、不要になったり壊れたりしたたんぱく質をリサイクルしているんだ。

Q 重要みたいだね。
A 細胞内で成分の一部が分解されているらしいとは 1950 年代から考えられ、60 年代初めにギリシャ語の「オート(自分)」と「ファジー(食べる)」という言葉から命名された。 でも、多くの研究者は無関心で、長い間、詳細がわからなかったんだ。

Q それを解明したのが大隅良典さんだね。 具体的な仕組みはどうなの?
A 細胞内にまず膜が現れて、分解するたんぱく質などを包み込む。 それが、分解酵素がある液胞と呼ばれる器官に運ばれて分解されるんだ。 哺乳類など液胞がない動物は、たんぱく質を包んだ膜と、分解酵素の入ったリソソームという器官が融合する。 分解されたものはたんぱく質のリサイクル器官に運ばれる。 大隅さんが 88 年にまず酵母で確認したんだ。

Q 今から約 30 年前、命名からは 50 年以上だね。
A 今では、人やマウスなどの哺乳類、昆虫、植物などあらゆる生物に共通の生命現象とわかった。 有害なたんぱく質を除去し細胞内をきれいに掃除したり、病原体をやっつけたりするのにも役立っているよ。

Q 病気の治療には役立つの?
A 例えば、パーキンソン病やアルツハイマー病などは神経細胞に異常なたんぱく質がたまるのが一因だが、オートファジーが関係しているという報告がある。 研究がさらに進み、様々な病気の仕組みの解明や治療法の開発に貢献すると期待されているよ。 (南宏美、asahi = 10-3-16)


喫煙、がんにつながる遺伝子変異誘発 患者 5 千人を調査

肺がんになった喫煙者でみると、毎日 1 箱のたばこを 1 年間吸うことで、肺の細胞の遺伝子に突然変異が平均で 150 カ所できているとする推計を、日本など 4 カ国の国際共同研究グループがまとめた。 4 日付の米科学誌サイエンスに論文が掲載された。 遺伝子の突然変異が修復されずに蓄積していると、がんになりやすい。 研究グループは、がん患者 5,243 人分の全遺伝情報を解析。 喫煙との関連が報告されている 17 種類のがんについて、喫煙者と非喫煙者で遺伝子変異の数などを比較した。 (熊井洋美、asahi = 11-4-16)


眠気が生じる仕組みは? カギ握る遺伝子を特定 筑波大

睡眠の量と質のコントロールに関わる二つの遺伝子を筑波大などのチームが特定した。 眠気が生じる仕組みの解明につながる成果だという。 英科学誌ネイチャー電子版に 3 日、発表する。

哺乳類は種ごとにほぼ一定の睡眠量を保ち、浅い眠り(レム睡眠)と深い眠り(ノンレム睡眠)を繰り返す。 レム睡眠には、ノンレム睡眠時に起きる脳内の記憶定着を促す役割があることが分かっていて、両者がバランス良く保たれる必要がある。 チームは、無作為に遺伝子変異を起こす化学物質を与える方法で得られたマウス約 8 千匹の脳波や筋電図を詳しく調べ、睡眠時間が極端に長くなったり、レム睡眠が大幅に少なくなったりする睡眠異常が起きる 2 種類の血統を見つけた。 (吉田晋、asahi = 11-4-16)


「HAL」、脳卒中リハビリにも 7 病院で治験開始

装着型ロボット「HAL (ハル)」を脳卒中後の歩行障害のリハビリ治療に活用しようと、全国の 7 病院で臨床試験(治験)が始まった。 HAL を使った治療は今春、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) など神経や筋肉の難病を対象に公的医療保険の適用となったが、患者数が格段に多い脳卒中での承認をめざしている。

今回の治験に参加するのは筑波大病院、茨城県立医療大病院、筑波記念病院、志村大宮病院(いずれも茨城県)、国立病院機構新潟病院、福岡大病院、福岡リハビリテーション病院。 脳卒中発症後 5 カ月以内で、片側に運動まひがある人が対象で、片脚に装着するタイプの HAL をつけて 5 週間治療し、効果を確認する。 センサーとモーターで歩行を助け、「歩けた」という感覚を脳にフィードバックすることで機能回復が期待できるという。

鶴嶋英夫・筑波大准教授(脳神経外科)によると、これまでの臨床研究で、通常のリハビリでは十分な効果が得られず屋内でようやく歩ける状態の患者が、屋外の社会活動に復帰できる程度まで回復した場合もあったといい、「2 年程度で承認申請までもっていきたい」と話している。 HAL を開発・製造するサイバーダイン社(茨城県つくば市)によると、脳卒中のほか、脊髄(せきずい)損傷患者を対象とした治験も計画されている。 (吉田晋、asahi = 10-26-16)


白血病患者への造血幹細胞移植、負担減るかも?

体内でアミノ酸のバリンが不足すると血液の細胞を作り出す幹細胞が減ることを、東京大医科学研究所など日米のグループがマウス実験で発見した。 白血病患者への造血幹細胞移植では、重い副作用を伴う放射線治療や化学療法を事前に受ける必要があるが、その必要がなくなるかもしれないという。 20 日付の米科学誌サイエンス電子版に発表する。

白血病など血液の病気の患者が造血幹細胞の移植手術を受ける際には、免疫によって拒絶反応が起きないように事前に放射線や抗がん剤で自らの造血幹細胞をなくす処置が必要だ。 その際、倦怠感や不妊などの副作用が起きることがある。

研究グループは、体内で自ら作ることができず、食物からとる必須アミノ酸のバリンがない状態でマウスの造血幹細胞を培養すると多くの幹細胞が死滅することを見つけた。 バリン抜きのえさをマウスに与えたところ、体内の造血幹細胞が減った。 このマウスに放射線治療なしで造血幹細胞を移植し、その後バリンを与えたところ、移植した造血幹細胞を体内で長期間維持することができた。

ヒトの造血幹細胞もバリンなしでは培養できなかった。 ヒトの造血幹細胞をもつマウスをバリン抜きのえさで飼うと造血幹細胞が減少することも確認した。 グループの山崎聡・東京大特任准教授は「血液の病気の患者にとって体への負担が少ない治療法の開発につながる。 普通の食事でバリンを抜くことは難しいが、点滴などにすれば可能だと思う。」と話す。 (瀬川茂子、asahi = 10-21-16)


乳がん発症を抑える遺伝子発見 東工大などマウス実験

女性のがんで最も多い乳がんの発症を抑える遺伝子をマウス実験で突き止めたと、東京工業大などの研究チームが発表した。 この遺伝子が働かないマウスは妊娠・出産後に高い割合でがんを発症した。 同じ機能を持つ遺伝子は人にもあり、乳がんを発症する仕組みの解明や治療などにつながる可能性があるという。

同大の駒田雅之教授(細胞生物学)らは、性別にかかわる X 染色体にある遺伝子「Nrk」を欠損させた妊娠後のマウスの乳腺に時々こぶができることに注目。乳腺は妊娠すると母乳をつくるために急速に発達し、通常はある程度の段階で成長が止まるが、過剰に発達するとがん化につながる。 Nrk 遺伝子からつくられる酵素との関連を調べた。

酵素をつくれない変異マウスと通常のマウスをそれぞれ繰り返し妊娠・出産させ、15 カ月間飼育した。 変異マウスは 10 匹中 9 匹で乳腺にがんができたが、通常のマウスは 10 匹中 1 匹だった。 変異マウスでも妊娠させなかった場合はがんができず、この酵素が妊娠したマウスで乳腺のがん化を抑制する働きがあるとわかった。 駒田さんは「今後、酵素が乳腺の過剰な発達を防ぐ仕組みも解明したい」と話している。 (川村剛志、asahi = 10-13-16)


RS ウイルス、流行期入り 患者報告数、関東で目立つ

乳幼児が感染すると、重い肺炎になることもある RS ウイルス感染症が本格的な流行期に入った。 国立感染症研究所の 11 日の速報では、最新の 1 週間(9 月 26 日 - 10 月 2 日)に全国約 3 千の医療機関から報告された患者数は 5,463 人で、同じ時期では過去 10 年間で最多だった。 感染研は、手洗いやマスクなどの予防対策を呼びかけている。

RS ウイルスは例年、秋から流行が始まり、年末をピークに春まで続く。 感染研は全国からの患者数の報告を週ごとに集計。 それによると、今年は 8 月中旬から患者が増え始め、9 月に急増している。 都道府県別で最新の 1 週間の報告数が最も多かったのは東京で、神奈川、大阪、埼玉、千葉と続き、上位に関東の都県が目立つ。 感染研は今月 7 日に発表したリポートで「例年同様、南・西日本から東日本へ流行が推移している」とし、「発生動向を注視する必要がある」と促した。

RS ウイルスには、2 歳までにほぼ全員が感染。 それ以降も感染を繰り返すが、大人や健康な子どもは軽い風邪のような症状ですむ。 ただ初めて感染する乳幼児は症状が重くなるリスクが高く、気管支炎や肺炎などで入院が必要になることもある。 感染研感染症疫学センター第六室の木村博一室長は「乳児や肺疾患のある高齢者ら重症化しやすい人がいる家庭は特に注意が必要」と話す。 (川村剛志、asahi = 10-12-16)


「仕事遅い分子」がインスリン分泌抑制 阪大など発見

体内で血糖値を下げるインスリンの分泌を抑えてしまう分子の働きを、大阪大の原田彰宏教授らのグループがマウスで見つけた。 新たな治療薬につながる可能性があるという。 米科学誌に 3 日発表した。 インスリンは膵臓(すいぞう)にある「ベータ細胞」が分泌するホルモンで、血中の糖を肝臓や筋肉に取り込ませる。 この働きが悪くなると糖尿病につながる。

原田さんらは、ベータ細胞の膜にあり、インスリンを細胞外に出す働きがある「SNAP23」というたんぱく質に注目。 マウスのベータ細胞で「23」をなくすと、インスリンの分泌がむしろ 2 倍以上増え、「23」の働きを抑える化合物を正常なマウスに与えても、血中のインスリンが約 1.5 倍になった。

ベータ細胞には、よく似た「SNAP25」というたんぱく質もある。 仕事の効率は「23」の方が悪く、細胞内のインスリンが「25」を経由して外に出やすくなったとみられる。 「23」は人間でも、ベータ細胞を含めた様々な種類の細胞にあり、グループの國井政孝助教は「ほかの働きも調べて、薬として有効か検討したい」と話している。 (阿部彰芳、asahi = 10-4-16)


おたふくかぜ感染の「鍵」解明 立体構造を分子レベルで

おたふくかぜの原因となる「ムンプスウイルス」がヒトに感染する詳しい仕組みを解明したと九州大などの研究チームが発表した。 今後、ワクチンの改良や抗ウイルス薬開発につながることが期待される。 近く米科学アカデミー紀要(電子版)に論文が掲載される。

ウイルスは、表面にあるたんぱく質がヒトの細胞膜にあるたんぱく質と「鍵」と「鍵穴」のように結びついて感染する。 研究チームは、精製したたんぱく質を結晶にして X 線で解析したり、実際に細胞に感染した時の測定データをもとにコンピューターでシミュレーションしたりする手法を駆使。 「鍵」と「鍵穴」にあたるたんぱく質の立体構造をそれぞれ分子レベルで解明した。 両者が結合した状態の構造も明らかにした。

おたふくかぜは日本で年数十万人以上感染する。 ワクチン接種は現在任意で、まれに髄膜炎や聴力の回復が難しい「ムンプス難聴」などの重い合併症を起こす。 九大の橋口隆生准教授(ウイルス学)は「『鍵』の形が分かったことで、より予防効果が高いワクチンの開発や、結合部を標的にした抗ウイルス薬の開発に生かせる。 引き続き研究を重ねたい。」と話している。 (小林舞子、asahi = 9-27-16)


糖尿病治療薬が作用するたんぱく質、名大などが発見

名古屋大学などの国際研究チームは、糖尿病の治療薬「メトホルミン」が作用するたんぱく質を見つけたと発表した。 薬の改良につながるという。 薬の作用を細胞レベルで明らかにしたのは初めてで、研究成果が米科学誌に掲載された。 メトホルミンは主に肝臓や筋肉で働く。 血糖値を下げる効果があることは分かっていたが、細胞のどのたんぱく質に作用しているのかは明らかになっていなかった。

名大のユ・ヨンジェ特任准教授らのチームによると、このたんぱく質は「NHE」。 細胞の中に物質を取り込んだり、外に出したりする運び役にくっついている。 pH をコントロールして物質を運ぶ速度などを微調整しているという。 ユ特任准教授は「メトホルミンは、NHE を介して糖尿病で弱った細胞内の物質の輸送を強化しているのではないか」と話す。

ユ特任准教授らは、一世代が短く遺伝子の役割を確かめやすい線虫を使って実験。 線虫の遺伝子変異を起こして調べたところ、NHE を作れなくなった線虫にはメトホルミンが効かないことを発見。 遺伝子を組み換えて NHE を作れなくしたショウジョウバエも、同じように効かないことを調べ、メトホルミンが NHE に作用していると結論づけた。 (月舘彩子、asahi = 9-20-16)


人工知能ワトソン、がん診断支援 8 割で有用な情報提供

米 IBM の人工知能「ワトソン」をがん患者の診断支援に使った東大医科学研究所の研究で、8 割近くの症例で診断や治療に役立つ情報を提示したとの研究成果がまとまった。 がんの原因となっている遺伝子変異を 10 分程度で特定し、適切な抗がん剤の処方につながったケースもあった。 より早い正確な診断・治療につながると期待される。 ワトソンは文章の意味や文脈を理解し、膨大なデータの中から特徴を見つけ出して学習し、回答する能力がある。

同研究所の研究では、患者から採取したがん組織の、がんに関係する遺伝子の塩基配列を解析してオンラインで入力する。 ワトソンは過去に発表された 2 千万本以上の医学論文や薬の特許情報などを参照し、がん発症や進行に関係している可能性のある遺伝子変異の候補を見つけ、根拠となるデータや抗がん剤の候補と一緒に提示する。

同研究所分子療法分野の東條有伸教授(血液腫瘍内科)によると、昨年 7 月以降、血液がん患者ら 71 人の延べ約 100 例で遺伝子情報を入力し、診断支援に活用。 今年 3 月までの 54 人で分析すると、30 人で診断や病態の解釈に役立つ情報を提示し、ほかの 11 人でも治療方針の参考になり、8 割近くで有用な情報が得られた。 (川村剛志、asahi = 9-18-16)


ぜんそくなど重症アレルギー発症の仕組みを解明 千葉大

ぜんそくなど難治性アレルギー疾患の発症の鍵となるたんぱく質を見つけ、発症の仕組みを解明したと千葉大の研究グループが発表した。 発症を抑える治療薬の開発につなげたいとしている。 論文が 16 日付米学術誌サイエンス・イムノロジー(電子版)に掲載される。

アレルギー疾患は、病原性の免疫細胞が血管から外に出て、肺などの組織に到達することで発症する。 研究グループは、病原性の免疫細胞が血管から外に出るのを手伝うたんぱく質を発見。 このたんぱく質は炎症に伴って血小板から放出され、血管の内側に集まって付着し、そこを足場に病原性の免疫細胞が血管から外に出ていることがわかったという。

さらに、このたんぱく質と病原性の免疫細胞がくっつくことを防ぐ抗体をつくり、ぜんそくのマウスに投与したところ、ぜんそくを起こさなくなったという。 企業との共同研究で、人に使える抗体を作製。 実用化を目指して研究を進めている。 研究代表者の中山俊憲・千葉大教授(免疫発生学)は「難治性の呼吸器疾患の完治につながる可能性もある」と話す。 (戸田政考、asahi = 9-17-16)


関空はしか感染、34 人に 救急隊員、医師らも感染

関西空港で働く従業員の麻疹(はしか)集団感染に絡み、大阪府は 4 日、新たに救急隊員と医師、従業員の計 3 人の感染を確認し、34 人になったと発表した。 また関空との因果関係は不明だが、府内の 30 代男性が 8 月 27 日に発症し、その後に同府泉佐野市の大型商業施設へ出かけていたことが判明。 他の利用者にも症状があれば、医療機関を受診するよう呼びかけている。

府によると、8 月 9 日に発症した関空従業員と接触した 40 代男性救急隊員と 40 代男性医師はそれぞれ同 28 日と 29 日に発症。 20 代女性従業員は同 28 日に発症した。 いずれも今月 1 - 3 日に検査結果が判明した。 また、8 月 27 日に発症した府内の 30 代男性が翌 28 日に泉佐野市の「りんくうプレミアム・アウトレット」と周辺施設を利用していたことも新たにわかった。 府は今月 7 日に保健所を設ける近畿地方の関係自治体による緊急対策連絡会を開き、対応を周知する方針。 (asahi = 9-5-16)

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はしか感染者、幕張のコンサートに 国が注意呼びかけ

麻疹(はしか)に感染していた男性が千葉市の幕張メッセで開かれた大規模コンサートに参加していたなどとして、厚生労働省は 24 日、新たな感染者を見逃さないよう医療機関に注意を呼びかけることを都道府県などに要請した。 厚労省などによると、男性は兵庫県西宮市在住の 19 歳。 海外で感染したとみられ、家族 3 人も感染が確認された。 男性は 9 日に 39 度を超す熱が出て、その後、全身に発疹も表れた。 13 - 15 日に神奈川、千葉、東京を訪ね、14 日には幕張メッセであった人気アーティストのジャスティン・ビーバーのコンサートに出かけていたという。 19 日に西宮市内の医療機関で麻疹と診断された。

麻疹は感染力が強く、空気感染や飛沫(しぶき)感染、接触感染などさまざまな経路で感染する。 免疫を持っていない人が感染すると、ほぼ 100% 発症する。 感染して約 10 日後に、かぜのような症状が出た後、高熱や発疹が出る。 妊娠中にかかると流産や早産を起こす可能性もある。 厚労省は医療機関に対し、受診した患者に高熱や発疹といった症状があれば、麻疹を疑うことや、院内感染を防ぐ対策をとることを求めている。 (asahi = 8-25-16)


アミロイドβの減少を確認 アルツハイマー病の新薬治験

初期のアルツハイマー病患者を対象にした新薬の臨床試験(治験)で、患者の脳に蓄積するたんぱく質「アミロイドβ」を減らすことができたと米バイオジェン社などのグループが、1 日付英科学誌ネイチャーに発表する。 認知機能の低下を防ぐ効果については、さらに大規模な治験で確認する必要があるという。

治験の対象は、初期のアルツハイマー病または軽い認知障害のある人で、脳にアミロイドβの蓄積が確認された 165 人。 2 グループに分け、新薬「アデュカヌマブ」と偽薬(プラセボ)による治療を 1 年続けた。 その結果、薬の量が多いほど、脳のアミロイドβを減らす効果が高いことを陽電子放射断層撮影 (PET) による画像で確認した。 薬の量が多いほど、認知機能の衰えを抑えることも示されたが、効果については、現在進行中の大規模な治験で確認していく。

治験では、定期的な脳の画像検査などで、安全性に配慮しており、20 人は脳浮腫や頭痛などの副作用のために治療を中止した。 アミロイドβを標的にしたアルツハイマー病薬の開発はこれまで失敗続きだった。 病気が進み、神経細胞が減った患者を対象にしたことが主な原因と考えられており、早い段階を対象にした複数の治験が行われている。 (瀬川茂子、asahi = 9-1-16)


薬の誤用、6 年間で 24 件 見た目が類似、医師ら混同

見た目が似た薬を医師や薬剤師らが誤って使ったケースが 2010 年 1 月から今年 3 月までに計 24 件あったとする報告書を、日本医療機能評価機構がまとめた。 機構は「名称をきちんと確認することが必要だ」と注意を呼びかけている。 全国約 1 千の医療機関を対象にした医療事故情報の収集事業で報告された事例を分析した。 患者自身が誤ったケースは除外した。

報告書によると、24 件の内訳は注射薬 10 件、内服薬 6 件、外用薬 5 件、その他 3 件だった。 注射薬では薬剤を入れたガラスの容器(アンプル)の形が似ていたのが 7 件、内服薬では包装の外観が似ていたのが 5 件と目立った。 取り違えが起きた場面は注射薬では 9 件が薬剤の準備中で、主にかかわっていたのは助産師・看護師が 6 件、医師が 3 件。 内服薬は 6 件すべてが調剤中で、いずれも薬剤師がかかわっていた。

24 件のうち 23 件は患者に使われた。 死亡例はなかったが、障害が残った可能性がある事例が 3 件あった。 新たな治療が必要になった事例は 11 件だった。 製薬業界はアンプルや内服薬の包装、外用薬の容器などにバーコードを表示する取り組みをしており、機構は、バーコードを薬剤の照合に使うことも医療機関に求めている。 (竹野内崇宏、asahi = 8-29-16)


近赤外線で免疫活性化、がん縮小 米 NIH、マウス実験

体に無害な近赤外線を当ててがんを攻撃する免疫を活性化させ、がんを縮小させることに米国立保健研究所 (NIH) の小林久隆・主任研究員らがマウス実験で成功した。 転移したがんにも効果が期待できるといい、数年後の臨床試験(治験)を目指す。 米医学誌サイエンス・トランスレーショナル・メディシン(電子版)に 18 日、発表する。 がん細胞は、免疫を抑える働きのある「制御性 T 細胞」を利用して、がん細胞を攻撃する免疫細胞から巧みに逃れている。

研究チームは、光を受けると発熱する特殊な化学物質を、制御性T細胞にくっつく性質を持った抗体と結合させた薬をつくり、肺がんや大腸がんを皮膚に移植したマウスに注射した。 その後、患部に近赤外線を当て、化学物質による発熱でがんの周囲にある制御性 T 細胞を死滅させた。 その結果、がん細胞は、免疫細胞の攻撃から逃れられなくなり、がんを一時的に大幅に縮小させることができた。

さらに光を当てていない部位のがんが縮小することも確認した。 がんを攻撃する免疫細胞が体内で移動しているためとみられるといい、転移したがんにも効果が期待できることを示している。 小林さんは「3 年以内に新たな治験を始めたい」と話している。 研究チームは、すでにこの化学物質を利用して、光を当てて熱でがん細胞を死滅させる治療法を開発。 首などにできる頭頸部(とうけいぶ)がんの末期患者を対象に米国内で治験を進めている。 がんを狙い撃ちする免疫細胞を利用した今回の方法が実用化できれば、より高い治療効果が期待できるという。 (ワシントン = 小林哲、asahi = 8-18-16)


ダニ媒介脳炎で死亡、国内で初 北海道の 40 代男性

北海道は 15 日、野外でマダニにかまれた道内の 40 代男性が「ダニ媒介脳炎」を発症し、死亡したと明らかにした。 この病気の国内での確認は 1993 年に北海道で見つかって以来 2 例目で、死亡は初めてという。

厚生労働省によると、ダニ媒介脳炎はフラビウイルスが原因で、このウイルスを持ったマダニがいない地域では感染は起きない。 北海道の一部地域でウイルスが見つかっている。 人から人に直接感染することはないとされる。 潜伏期間は 7 - 14 日で、発熱や筋肉痛などのインフルエンザに似た症状の後、髄膜炎や脳炎を起こす。海外では多数の死亡例が報告されている。 道によると、男性は 7 月中旬に道内の草やぶでマダニにかまれ、8 月 13 日に死亡したという。 道は、草が茂った場所では長袖、長ズボンを着用するよう注意を呼びかけている。 (asahi = 8-15-16)


結核の新規患者数が減少 厚労省「低蔓延国目指したい」

厚生労働省は 12 日、2015 年の結核の患者数調査の結果を発表した。 人口 10 万人あたりの新規患者数(罹患率)は 14.4 人で、15 年までに 15 人以下とする政府目標に到達したとしている。 世界保健機関 (WHO) は 10 人以下を「低蔓延国」に分類しており、厚労省は 20 年までにこの実現を目指すという。

15 年の 1 年間に結核と新たに診断された患者は 1 万 8,280 人、死亡したのは 1,955 人だった。 罹患率が高いのは大阪府が 23.5 人、兵庫県、東京都、大分県がいずれも 17.1 人。 全国では 05 年 22.2 人、10 年 18.2 人などと減少している。 12 日に厚労省で会見した NPO 法人「ストップ結核パートナーシップ日本」の石川信克理事は、患者の 6 割以上を占める高齢者の対策が重要と指摘。 「医師が結核を疑って早めに診断し、感染が広がらないようにすることが大切だ」と話した。 (asahi = 8-13-16)