リチウム超えるアルミ 2 次電池 格安材料で高性能

大阪大学大学院応用化学専攻准教授の津田哲哉氏は、産業技術総合研究所と共同で、「アルミニウムアニオン電池 (AAB)」と呼ぶ 2 次電池を開発した。 既存のリチウムイオン 2 次電池 (LIB) を超える重量エネルギー密度(単位重量当たりの容量)と出力密度を備え、しかも充放電を 600 サイクルまで繰り返すことができることを確認したとする。 材料のほとんどは汎用元素を使うため、量産時は格安で製造できる。 LIB に代わる高性能で低コストの新電池の有力候補として名乗りを上げた格好だ。 「2 年以内に実用化を想定した電池パックの試作まで進めたい(津田氏)」という。

アニオンで負極の課題を解決

AAB は、負極にアルミニウム (Al) 金属板、正極に硫黄 (S) とポリエチレングリコール (PEG)、電解液に塩化アルミニウム (AlCl3) 系の有機材料または無機の溶融塩を用いる 2 次電池である。 活物質だけ見れば、Al-S 2 次電池ともいえる。 ただし、電池内の電荷キャリアは、カチオン(陽イオン)の Al3+ ではなく、アニオン(陰イオン)の Al2Cl7- と AlCl4- である。 Al3+ でない理由は、「Al3+ では、充電時に Al 負極表面に不定形の Al が析出して性能が劣化する(津田氏)」ため。 こうした析出物は Li 金属では「デンドライト(樹状突起)」と呼ばれるが、Al イオン電池ではパウダー状になるという。

Al3+ を利用する Al イオン電池は、トヨタ自動車などが開発しているが、充電できない 1 次電池である。 一方、アニオンを用いるとこうした負極表面のトラブルがほとんど起こらず、2 次電池として有望だという。

エネルギー密度や出力密度は LIB 超え

AAB の強みは大きく 2 つある。 (1) 多電子反応であることで、出力密度とエネルギー密度の両方を高めやすいこと、(2) 正極集電体のモリブデン (Mo) を除けば、汎用元素ばかりで極めて低コストに製造できること - - の 2 点だ。 (1) については試作したセルで既存の LIB をほぼ超える重量エネルギー密度と出力密度を実証済み。 次世代電池としてのライバルともいえる Li-S 2 次電池に対しても、出力密度ではその上限に近い値を既に得ている。 それでも津田氏は、「現状ではまだ本来のポテンシャルを引き出したとはいえない」として、今後も大幅に性能を高められる伸びシロがあると強調する。

(2) の低コスト性は、正極と負極の材料はもちろん、電解液に使う無機イオン液体が、AlCl3 と食塩 (NaCl)、および塩化カリウム (KCl) の混合物であることからも分かる。 Mo は現時点ではやや高い材料だが、「代替材料にメドが立ちつつある(津田氏)」ということから、将来的にはすべて格安材料を使える見通しだ。

溶融塩の知見を電池に応用

今回、津田氏が LIB 超えの新電池をいきなり開発したようにみえるが、実際には「正極を別にした、Al や AlCl3 系材料の研究には長い歴史があり、既に確立した技術(津田氏)」だという。 同氏は以前、Al 系の溶融塩やイオン液体の研究者だった。 その知見から、これまでも黒鉛(グラファイト)を正極に用いた AAB は試作したことがあったが、グラファイトの容量が低いために注目されてこなかった。

産業技術総合研究所が Li-S 2 次電池向けに開発していた硫黄入り PEG (SPEG) を正極材料として津田氏が採用したところ、高い性能を得たことで、将来性の高さを証明できた。 LIB の開発で 2019 年のノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏ら 3 人はいずれも開発当初は電池が専門ではなく、磁性体や導電性有機材料の研究者だった。 電池の開発では、こうした異分野の研究から、ブレークスルーが出てくることが多いようだ。

量産時には水が大敵

ただし、AAB にも課題はいくつかある。 (a) SPEG の導電性が低く、温度を高めるか、導電助剤を大量に加えないと性能が出にくい、(b) 電解液中の AlCl3 に腐食性があり、使える集電体材料が Al や Mo などに限られ、しかも水と反応すると塩酸 (HCl) ガスなどを発生すること、(c) 無機イオン液体の溶融塩はそのままでは融点が 93 度と高く、融点を下げる工夫が必要なこと - - などだ。 津田氏は、これらの課題について「解決の糸口は見えている。 水の問題はドライルームで製造すれば解決できるはず」とする。 (野澤哲生、nikkei = 2-5-20)


スティック型掃除機 もはや主流 軽くてスイスイ

持ち運びしやすく、部屋のごみやほこりを小回りよく吸い取る「スティック型掃除機」。 本体が縦に長いため、置き場所にも困らない。 昔ながらの、車輪がついた本体からホースが伸びる「キャニスター型」と呼ばれる掃除機を押しのけ、支持を広げている。

スティック型といえば、英ダイソンが日本で約 10 年前、従来のキャニスター型と変わらない吸引力をうたって話題を呼んだ。 海外メーカーがこの市場を引っ張り、国内メーカーも相次いで参入した。 充電バッテリーを内蔵した「コードレス」タイプが大半を占め、弱点とされてきたバッテリーの駆動時間の短さや吸引力不足も克服しつつある。 メーカー各社はモーターやバッテリー性能を改良し、本体を細く軽くして扱いやすいものが増えた。

市場調査会社 GfK ジャパンの推計によると、国内の 2018 年の掃除機販売台数は 810 万台で前年より 3% 減にとどまった。 キャニスター型が 10% 減ったものの、スティック型が 8% 増となり、自動で掃除してくれるロボット型は 4% 増えた。 この年、スティック型の販売台数も初めてキャニスター型を「逆転」したという。 19 年上半期に国内で売れた掃除機 390 万台のうち、最も大きな伸びを示したのはスティック型で 14% 増となるなど、スティック型が新定番となってきた。

実際、パナソニックがコードレスのスティック型の購入者を調査したところ、約 7 割がキャニスター型からの買い替え組で、「吸引力や本体重量を重視し、日常使いで購入する人が増えている。(広報)」 シャープも本体素材を軽量化した 1.3kg の最新機種を昨年 12 月に発売。 電源が入っている状態でも、ハンドル部分から手を離せば運転が止まるセンサーを搭載するなど、使い勝手のよさをアピールする。 (辻森尚仁、asahi = 1-30-20)

メモ : パナソニックが昨年秋に発売した「MC-SB30J」は、新しい小型モーターを採用し、本体重量がコードレスタイプで同社最軽量の 1.6kg。 最大 25 分の連続運転が可能で、ダストボックスを丸ごと水洗いできる。 市場想定価格は税抜きで 4 万 5 千円前後。


量子技術、実用化遅れ「極めて深刻」 産官学で戦略

量子コンピューターを始めとする「量子技術」開発競争

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BOSE、日米欧などの 119 店閉店へ 数カ月以内に

米音響機器大手の BOSE (ボーズ)は 15 日、日米欧とオーストラリアに計 119 ある直営小売店を、数カ月以内に全て閉じると米メディアに明らかにした。 ヘッドホンやスピーカーなど主力製品の販路がオンラインに移ったため、としている。 ボーズは日本国内では百貨店やアウトレットモール内に計約 20 店を運営している。 ボーズは声明で「スマートフォンが業界を変えた」と指摘した。 同社は 1993 年に米国に初めて店舗を開いた。 本格的なオーディオシステムやホームシアターを実際に体験してもらい、購買につなげる狙いだった。

しかし、CD や DVD が廃れ、ネット経由の音楽がスマホ上などで聴かれるようになったことで、ボーズの売れ筋は変わった。 ヘッドホンや持ち運びできるスピーカーなど、無線通信でつながる小型の商品が主力となり、実店舗の役割も低下していた。 店舗で働く従業員の雇用にも影響が及ぶとみられるが、具体的な人数などは明らかにしていない。 米メディアによると、アジアや中東の計 130 店舗は残す方針だという。 (サンディエゴ = 江渕崇、asahi = 1-16-20)


産業用ドローン、未開の市場を飛ぶ 災害現場で地形解析

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中国支配の資源レアアース、日本が「産出国」に?

電気自動車のモーターなど精密機器の製造に欠かせない資源のレアアース(希土類)。 現在は生産の大部分を中国が占めているが、日本近海の海底下にも大量に眠っていることが近年わかってきた。 掘り出すことができれば、「産出国」になることも夢ではない。 実現の見込みは本当にあるのか?

レアアースは、ネオジムやジスプロシウムなどの総称。 蓄電池や磁石などの性能向上に欠かせない資源で、スマートフォンや自動車、航空機などハイテク製品に幅広く使われている。 これまで生産の 70% 以上は中国で、国際情勢によって供給が不安定になるリスクをはらんでいる。 東京大の研究グループは 2012 年、南鳥島周辺の水深 6 千メートルの海底下で、レアアースを豊富に含む「レアアース泥」を発見した。 その後の調査で、国内需要の 200 年分以上に相当する埋蔵量がある可能性が指摘され、期待が高まった。

資源として活用できるか調べるため、国は 18 年から、戦略的イノベーション創造プログラム (SIP) の一つとして「革新的深海資源調査技術」を開始。海洋研究開発機構 (JAMSTEC) などが参加し、南鳥島周辺の海域を中心に、埋蔵量の調査や、掘り出す技術の開発などに取り組み始めた。

深海 6,000 メートルの調査、中国を警戒

調査は日本の排他的経済水域 (EEZ) で進められてきた。 「ピストンコアラー」と呼ばれる装置を使って、約 6 千メートルの深海の地層から試料の泥をとる。 特殊な船から装置を分速 30 メートルで海底まで沈めるのは片道 200 分かかり、1 本取るだけで 1 日がかりの作業だ。 1 年 4 カ月かけて、61 本の試料を採取した。 SIP は 11 月 25 日、そのうち 46 本の分析結果を報告した。 泥中のレアアース濃度は、最も高い部分で 6,220ppm (0.62%)、1 本の最高平均では 3,110ppm (0.31%) だった。 ネオジウムやジスプロシウムなど重要な金属を豊富に含んでいた。

今後、水深 6 千メートルまで潜れる無人探査機を使って音響調査を進め、ピストンコアのデータと組み合わせて、レアアースが含まれる泥の立体的な分布を明らかにするという。 テーマリーダーの荒井晃作・産業技術総合研究所副研究部門長は「有望な開発地点を絞り込みつつある」と話す。 一方、肝心なレアアースの埋蔵地点や埋蔵量の詳細は明らかにしていない。 その理由は中国の存在だ。 中国はこれまで、沖縄県・尖閣諸島沖の EEZ 内に何度も調査船を出し、日本政府が中国政府に抗議することが繰り返されてきた。 南鳥島沖でもレアアースが眠る海域が明らかになれば、同様の摩擦が生じる恐れがある。 JAMSTEC の東垣(あずまわたる)理事は「情報はかなりコントロールされている」と言う。

世界に例がない技術必要、さらに …

もっとも、レアアースの場所や量が分かったとしても、効率よく取り出すことができなければ資源としては使えない。 水深 6 千メートルの深海底から泥の回収を続けるのは世界でも例がない。 現在検討しているのは、地球深部探査船「ちきゅう」と水深 6 千メートルの海底をパイプでつなぎ、その中にドリルパイプを通す方法だ。 ドリルパイプで船から海底に向けて泥水を送り込みながら先端のドリルで海底の地層を掘削。 外側のパイプとドリルパイプの間に押し上げられたレアアースを含んだ泥水を、循環流にのせて回収する。

ただ、この方法では循環流の圧力で地層が崩れ、掘り出したレアアースとともに海底に泥水が噴き出してしまう懸念がある。 さらに、現在の技術では深海まで届くパイプの直径は 30 センチが限度。 産業として採算ベースに乗せるには、1 日当たり 3,500 トンの回収が必要とされているが、この太さでは、1 日 10 時間稼働させても 350 トンしか取り出せないという。 層状に分布するレアアースをどのように移動しながら掘るのかについても決まっていない。 SIP のプログラムは 22 年度までの予定で、「産業化への道筋」として、1 日当たり 350 トンを回収する技術の開発が目標だ。

うまくいけば、さらに生産コストを下げて産業として成立させた後、国による税制優遇などの支援がなくても採算が合うようになった段階で、日本はやっと「産出国」として確立できる。 それでもなお、市場価格は国際競争に左右されるほか、技術革新によって精密機器がレアアースを使わなくなる可能性もある。 実現には、技術的なブレークスルー以外にも課題がありそうだ。 (合田禄、asahi = 12-26-19)

前 報 (4-14-18)


小 6 が異例の特許 手伝い中に考案「洗濯バサミ収納具」

神奈川県平塚市立吉沢小学校 6 年の守田貫一郎さん (12) が、洗濯ばさみを入れると同じ向きで積み重なる「洗濯バサミ収納具」を考案し、特許を取得した。 市によると、小学生の取得はとても珍しいという。 「洗濯バサミ収納具」は、厚紙などで細長い筒状の容器を作り、その中に軸となる竹ひごを取り付けた構造。 竹ひごに洗濯ばさみを通すと、変化を付けた内壁に沿って同じ向きで落ちる仕組みだ。 洗濯ばさみは下から取り出せる。

自宅で洗濯物の取り込みを手伝っていて、洗濯ばさみを取り出しやすい収納道具があればいいと考えて昨年の夏休みに作った。 昨年度の市児童生徒創意くふう展で小学生の部 1 位の市長賞を受賞。 審査員長を務めた弁理士の福村直樹さんの提案で今年 3 月に特許を出願、11 月 15 日付で特許権が登録された。 守田さんは 20 日に市役所を訪れ、落合克宏市長に報告。 「特許出願の話があったときは驚いた。 取れたと聞いたときはうれしかった。 特許証が待ち遠しくて、届いた日はずっと見ていました。」と喜びを表現した。 (遠藤雄二、asahi = 12-23-19)


ディズニーから風船消えた ヘリウムガス、世界的な異変

風船や病院の MRI (磁気共鳴画像装置)などに欠かせない「ヘリウムガス」が世界的な供給不足に陥っている。 大半を産出する米国が自国での消費を優先したこともあり、価格が高騰して日本への輸入が激減。 ヘリウムを使う極低温などの研究にも影響が出始めた。 日本物理学会などは 20 日、ヘリウムのリサイクルや備蓄で産官学が協力するよう求める緊急声明を発表した。

東京ディズニーランド(千葉県浦安市)の売り場で 10 月末、キャラクターをかたどった風船が消えた。 風船を浮かすためのヘリウムの在庫がなくなったからだ。 運営するオリエンタルランドの広報担当者は「毎月入手できた分だけ販売しており、(底をつくと)月に数日間、風船の販売を中止している」と語った。 ヘリウムの卸業者「夢ふうせん(東京都江東区)」によると、入荷量は今年になって減り始め、特にここ数カ月は以前の 3 - 4 割に減った。 今は入荷すればすぐ売れる「取り合い状態」で、常連客にも断らざるを得なくなっているという。

ショッピングモールや住宅展示場などに風船を販売している「風船タウン(東京都墨田区)」も、大口の注文を断らざるを得ないことが増えた。 経営者の渡辺直記さんは「仕入れが止まってしまうのではないか」と不安そうに話す。

冷戦時代に大量備蓄 でも …

風船を浮かす、声を高くするといった娯楽向けだけでなく、ヘリウムは病院の MRI を動かしたり、半導体や光ファイバーを製造したりするのに必須だ。 液体になると零下 269 度まで冷え、液体窒素よりはるかに低温を保てる。 日本は 100% を輸入していて、その 6 割強を米国に頼ってきた。 ところが、その米国からの輸入が昨年、大きく減った。 ヘリウムはもともと地下にたまっていたものが天然ガスと一緒に採掘されてきたが、近年、シェールガスが増えたことで産出が減った。 シェールガスのガス田は岩盤が浅く、ヘリウムが大気中に抜けてしまっているとみられる。

そこに、米ガス会社の買い占めが拍車をかけた。 生産が減っても供給が続いてきたのは、冷戦時代に米国が大量に備蓄した分が 1990 年代から払い下げられてきたからだ。 世界の供給量の約 3 割を占めてきたが、その貯蔵の底が見え始めた昨年、オークションで残りの全量が買われてしまったという。 さらに、世界第 2 の産出国であるカタールのヘリウムも価格が上がっている。 輸入している産業ガス大手の岩谷(いわたに)産業(大阪市)によると、サウジアラビアなどがカタールと国交を断絶したことで輸出コストが増えた。 現在、カタールやロシアで新しいプラントの建設が進んでいるが、これらが運用を始めるまでは供給不足が続きそうだという。

米国から日本への輸入量はここ 10 年で半減、価格は 2.3 倍になった。 供給不足は 2012 - 13 年にも米プラントのトラブルで発生したが、岩谷産業の宮垣尚民・執行役員は「原因が構造的な問題で危機的だ。 供給不足は少なくとも 2、3 年続くだろう。」とみる。 中国やインドなどで工業向けの需要が増えていることも背景にあるという。

研究分野にも影響 嘆く JAXA

国内では、病院などに優先的に供給されているが、一部の研究分野では実験ができなくなり始めている。 大型の気球で高層大気を観測している宇宙航空研究開発機構 (JAXA) のグループは今年度、計画した 6 回の実験のうち 1 回しかできなかった。 吉田哲也・大気球実験グループ長は「実験できないとデータの連続性が失われ、論文が書けなくなる」と嘆く。 ヘリウムの代わりに水素を使う案もあるが、燃えやすいため安全面の検討をしている段階だという。

国内で販売されるヘリウムの 4 分の 3 は回収されずに大気放出されているとされる。 そこで東京大物性研究所は 10 月から、使用済みヘリウムの受け入れを始めた。 ヘリウムの 9 割をリサイクルして液体に戻せるという。 日本物理学会と日本化学会などは 20 日、緊急声明を発表。 リサイクルを加速するため高圧ガス運搬時の規制を緩和したり、国としてヘリウムを戦略備蓄したりするよう求めた。 声明には、6 学会と 39 大学・研究機関などが賛同。 物理学会副会長の勝本信吾・東京大教授は「危機的な状況になる前に対策を取らないと、研究者だけでなく産業界も困ることになる」と話した。 (石倉徹也、asahi = 12-21-19)

ヘリウム〉 水素に次いで 2 番目に軽い元素。 不燃性で爆発の心配もないため、風船や気球に広く使われてきた。 零下 269 度以下に冷やすと液体になり、極めて低温が必要な超伝導や製造現場でも多用されている。 大気中にはわずかしかなく、地下深くで重い原子核がアルファ崩壊することで発生し、岩盤の中にたまっていたものが産出される。 世界生産量の 6 割を米国が、3 割をカタールが占める。


三菱重工、長崎の主力造船所を売却 業界再編が加速

三菱重工業は創業の地である長崎市内に持つ 2 つの造船所のうち、主力の香焼(こうやぎ)工場を売却する。 造船で国内 3 位の大島造船所(長崎県西海市)に売却する方向で、売却額を含めて調整中だ。 三菱重工は液化天然ガス (LNG) など大型資源運搬船の建造から実質的に撤退する。 造船業界では中国・韓国勢が統合に動いており、国内でも業界再編が加速する。

三菱重工が来週にも発表する。 世界の造船業界では 11 月、中国で建造量首位と 2 位が経営統合し、韓国でも同国首位と同 2 位の統合作業が進む。 新たに誕生する中韓 2 社だけで約 4 割の世界シェアだ。 一方、日本勢はシェアの 2 割強を占めるものの 10 社以上が乱立し、中韓勢の安値攻勢で赤字に苦しむ。 国内各社の足元の受注残(手持ち工事量)は過去 10 年で最低だ。 業界では 2020 年から燃料に含まれる硫黄分などに対する環境規制が厳しくなり、省エネ型の船舶設計などが競争力を左右する。 11 月末には国内首位の今治造船(愛媛県今治市)と 2 位のジャパンマリンユナイテッド (JMU) が資本・業務提携の合意を発表するなど、再編機運がかつてなく高まっている。

三菱重工は 18 年の建造量で 80 万総トンと国内 4 位(単体ベース)。 商船部門の事業売上高は約 1,000 億円だ。 売却する香焼工場は 1972 年に本工場(長崎市)の近隣に開設した。 1,200 トンの超大型クレーンを 1 本、600 トンのクレーンを 2 本持ち、ドックの長さは 1 キロメートルと国内最大級の規模を誇る。 近年は付加価値の高い LNG など大型資源船に特化してきたが、LNG 船は 9 月を最後に生産が途絶えている。

長崎は三菱重工が明治時代に政府から造船所を譲り受けて事業を始めた歴史ある場所だ。 香焼工場を含め聖域視されてきたが、事業の赤字が続くなか、リストラに踏み切る。 約 600 人の従業員は転籍や配置転換で対応する。 生産には関係ない一部の土地や設備を保有し続ける可能性はある。 香焼工場の売却後は防衛省向けの護衛艦が中心の本工場と、フェリー建造の下関造船所(山口県下関市)の 2 工場に注力する。 競争力のある船種に絞り込み事業を大幅に縮小する。

買い手の大島造船所は長崎に本社工場を持つオーナー系企業。 鉄鉱石や石炭を運ぶばら積み船の建造に特化している。 17 年には三菱重工と提携した。 香焼工場を含めた 2 拠点で生産を効率化し、中韓勢に対抗するとみられる。 環境規制に対応し、三菱重工の持つ技能者や環境関連技術を取り込み、建造船の高機能化を図る狙いもあるようだ。

三菱重工グループは 18 年に造船事業を分社化したほか、今治造船と LNG 事業で提携するなど提携戦略を進めてきたが、主力工場を手放す。 中国では 11 月に建造量首位の中国船舶工業集団 (CSSC) と 2 位の中国船舶重工集団 (CSIC) が経営統合した。 韓国では同国首位の現代重工業と同 2 位の大宇造船海洋との統合作業が進む。 国内では今治造船と JMU の提携のほか、経営再建中の三井 E & S ホールディングスが 11 月に千葉工場(千葉県市原市)の商船建造から実質的に撤退する方針も発表した。 今後も再編ドミノが広がる可能性がある。 (nikkei = 12-12-19)


元三洋電機社員 55 歳の "逆転人生" 中国・独身の日に話題を呼んだ日本メーカー「シリウス」とは?

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パナ、半導体事業から撤退を発表 国内工場の雇用は維持

パナソニックは 28 日、半導体事業から撤退すると発表した。 台湾の半導体メーカー「新唐科技(ヌヴォトン・テクノロジー)」に、2 億 5 千万ドル(約 270 億円)で売る。 半導体事業は 60 年を超す歴史をもつが、韓国や台湾勢との競争が激しく、赤字が続いていた。 来年 6 月をめどに、製造子会社「パナソニックセミコンダクターソリューションズ(PSCS、京都府長岡京市)」の株式と、中国やシンガポールにある設備や在庫を譲渡する。

PSCS は京都府に開発拠点があり、イスラエル企業との合弁会社が富山県と新潟県で 3 工場を運営している。新唐科技が事業を引き継いだ後も、工場や雇用(国内約 2,300 人、海外約 100 人)は維持する。 パナソニックは 1957 年に半導体の生産に乗りだし、主にテレビやエアコンに組み込む集積回路 (IC) などを作ってきた。 ただ家電が世界で売れなくなるにつれて業績も低迷。 最近は自動車部品向けの半導体にシフトしてきたが、米中貿易摩擦の影響などで販売が振るわず、PSCS の 2019 年 3 月期の売上高は 922 億円、純損益が 180 億円の赤字だった。

パナソニックで半導体事業を担うインダストリアルソリューションズ社の北折良常務は「あまりにも市況の変化が激しく、黒字化が難航していた」と話した。 新唐科技は電子機器を制御するマイコンが主力の新興メーカー。 2018 年 12 月期の売上高は前年比 9% 増の 100 億台湾ドル(約 360 億円)、純利益は同 3% 増の 7 億 1,100 万台湾ドル(約 25 億円)だった。 (久保田侑暉、大川洋輔、asahi = 11-28-19)


日立製作所が日立化成を売却か 昭和電工軸に 1 兆円規模

日立製作所が 51% 出資する主要子会社の化学大手・日立化成(東証 1 部)の売却先をめぐり、化学大手・昭和電工を軸に交渉を進めていることが 26 日、わかった。 日立化成は電池材料などで世界有数のシェアを持ち、売却額は 1 兆円近くに達する可能性がある。 日立製作所は今春、ほかの上場子会社も含めたグループ事業見直しの一環として、日立化成の買い手を入札で募る手続きを始めた。 売却益は IT 事業投資に充てるとみられる。 入札には化学や電子部品メーカー、投資ファンドなど国内外から参加者があり、昭和電工が高値を示している模様だ。

日立化成は日立製作所の化学部門がルーツ。 日立金属、日立電線(2013 年に日立金属と合併)とともに日立グループの「御三家」とされた。 だが、近年は業績が低迷。 2018 年に国内全 7 事業所で品質データ不正が発覚し、米中貿易摩擦も追い打ちをかけた。 20 年 3 月期の純利益予想は 220 億円で、過去最高だった 17 年 3 月期の約 400 億円から半減する見通しだ。

また、日立製作所と日立化成は親会社と子会社がともに上場する「親子上場」の状態にあり、株主の利益を損なう恐れがあるとの指摘があった。 市場では、親子上場の解消に向けた日立化成の売却や完全子会社化の見方が出ていた。 昭和電工は化学製品に加えてハードディスクなど幅広い事業を持つ。 日立化成の事業も入れることができれば、電気自動車 (EV) の普及により成長が見込まれる分野でシェアが高まる利点がある。 金額が膨らんでいる研究開発費や新規事業の投資を強化することにもつながる。

日立製作所は 26 日、「企業価値向上に向けて検討はしている」、日立化成は「昭和電工との提携等を含め、さまざまな検討をしている」、昭和電工は「日立化成の株式取得を含め、常にさまざまな検討をしている」としつつ、いずれも「現時点で決定した事実はない」とのコメントを出した。 日立製作所は家電からインフラまで幅広い事業を手がけてきた。 だが近年、次世代通信規格「5G」や、ものがインターネットにつながる「IoT」の時代を見すえた事業転換をめざしている。 IT 事業などへは、21 年度までの 3 年間で、18 年度までの 3 年間の 5 倍にあたる 2.5 兆円の投資をする予定だ。 (asahi = 11-26-19)

前 報 (4-25-19)


ホンダのオーディオ機器用低ノイズ蓄電機、「オーディオアクセサリー銘機賞」でグランプリ

ホンダのオーディオ機器用蓄電機「LiB-AID E500 for Music」が、「オーディオアクセサリー銘機賞 2020」にてグランプリを受賞した。 なお、ホンダの製品としては初の受賞となる。

LiB-AID E500 for Music は、ホンダ独自の正弦波インバーターとリチウムイオンバッテリーを組み合わせたハンディータイプ蓄電機をベースに、ノイズ低減と制振性を追求したオーディオ機器用モデル。 ハイエンドグレードオーディオコンセントや電気伝導率に優れたオーディオ機器用配線材などを採用することで、音質に影響を与えるノイズを排除し、きれいな波形の電気を供給することで、家庭用オーディオ機器の持つ本来の性能を引き出してくれる。

「オーディオアクセサリー銘機賞」は、ピュアオーディオにおいて世界的に評価が高いアワード。 国内外からエントリーされた約 300 ブランド、約 1,000 モデルのオーディオ関連商品から卓越した性能、革新の内容を持つ商品を表彰する。 今回、オーディオ機器に対する音質効果はもちろんのこと、オーディオ用バッテリーという新たなジャンルの開拓や話題性から高い評価を得て、LiB-AID E500 for Music が審査委員全員一致で 2020 年度アワードの「グランプリ」に選出された。

LiB-AID E500 for Music は 200 台限定の販売で、価格は 29 万 7,000 円。 12 月 18 日までホンダ公式ウェブサイト上で購入申し込みを受付中。 デリバリーは 2020 年 2 月中旬より開始する。 また、12 月 18 日までオンキヨー & パイオニアのショップ兼ショールーム「ONKYO BASE (東京・秋葉原)」にて試聴コーナーを設置。 LiB-AID E500 for Music を接続した USB-DAC とパイオニアのフラッグシップヘッドホン「SE-MASTER1」を使い、電源による繊細な音の変化が感じられるハイレゾ音源を試聴できる。 (纐纈敏也、Response = 11-21-19)