東芝突き放しに自信、重電 2 位浮上の三菱電機

三菱電機は 21 日、東京都内で経営戦略説明会を開き、「20 年度までに売上高 5 兆円以上、売上高営業利益率 8% 以上」を目指す方針を改めて表明した。 同社は日本の重電メーカーで日立製作所、東芝に次ぐ 3 位が指定席とみられていたが、東芝を抜いて 2 位に浮上した。 堅実経営が特色だが、4 月に就任した杉山武史社長は同日、記者団に「東芝とはしっかり戦っていける」と突き放しに自信を見せた。

東芝はメモリー事業の売却後、エレベーターや上下水道、交通システムなどの社会インフラ事業を軸に据える方針を打ち出している。 三菱電機の杉山社長は「企業向け事業の比率の高さも含め、ビジネスモデルが似通ってくる」と指摘した。 17 年 3 月期の決算を発表した時点では東芝のメモリー事業の売却が固まっていなかったため、三菱電機は売上高で下回っていた。 18 年 3 月期は三菱電機の 4 兆 4,311 億円に対し、東芝はメモリー事業を除いて 3 兆 9,476 億円と逆転。 株式の時価総額を見ると 21 日は三菱電機が 3 兆 4,849 億円だったのに対し、東芝は 1 兆 9,692 億円とその差は歴然だ。

三菱電機は 00 年代初頭の IT (情報技術)バブル崩壊後に守りの経営にかじを切り、汎用化が進む洗濯機や携帯電話端末から撤退し、ファクトリーオートメーション (FA) やエレベーターなど企業向けの安定した事業にヒトやカネを集中してきた。 この日も全般的に手堅さが目立ったが、「自動車機器や人工衛星の要素技術、両者を掛け合わせた自動運転といった分野はうちの方が強い」と、構造改革で東芝の一足先を行った自負もうかがえた。

国内 2 位の地位が盤石になれば同社を見る視線も変わる。 「AI (人工知能)やあらゆるモノがネットにつながる IoT など、スピード感が必要な分野では M & A (合併・買収)も積極化する」との方針を表明した。 2 位になり、攻めの三菱電機に変わるのだろうか。 (増田有莉、nikkei = 5-21-18)


JDI、過去最悪 2,472 億円の赤字 スマホ向け不振

経営再建中の液晶パネル大手、ジャパンディスプレイ (JDI) が 15 日に発表した 2018 年 3 月期決算は、純損益が 2,472 億円の赤字だった。 赤字は 4 年連続で、過去最悪の水準になった。 主力とする高級スマートフォン向けパネルが不振で、従業員を 3 割弱減らすなどのリストラ費用 1,422 億円も響いた。 売上高は前年比 18.9% 減の 7,175 億円。 主取引先の米アップルが、スマホの高級機種のパネルを韓国サムスン製の有機 EL に切り替えた影響が大きい。 競争激化による価格低下や販売数の減少で、材料費や工場の経費をまかないきれない「原価割れ」の状態だった。 営業損益は 617 億円の赤字(前年は 185 億円の黒字)に転落した。

リストラ費用は、稼働率低下で茂原工場(千葉県茂原市)などの評価を見直す減損処理を行って約 1 千億円、中国の工場閉鎖にともなう従業員への補償などで約 150 億円を計上した。 財務の健全性を示す自己資本比率は 1 年前より 20 ポイント超悪化して 13.1% に。 海外ファンドなどに新株を買ってもらう増資を 4 月に実施して 350 億円を確保したが、それでも 18% 程度にとどまる。

さらに筆頭株主である政府系ファンドの産業革新機構に能美工場(石川県能美市)を約 200 億円で 6 月までに売却する予定だ。 JDI はもともと、日立製作所、ソニー、東芝のパネル事業を、政府主導で統合して 12 年に発足。 これまで同機構から計 2,750 億円が投入されたが、追加の支援を受ける。

19 年 3 月期の業績予想は、売上高が 10 - 20% 増え、営業損益が黒字になると見込んでいる。 有機 EL パネルへの切り替えが想定ほど進まずに、スマホ向け新型液晶パネル出荷が大幅に伸びるとみる。 このため、有機 EL を 19 年から量産化する計画は先送りする。 東入来信博会長兼最高経営責任者 (CEO) は「風向きが変わった。 液晶はまだまだ生き残る。」と話し、量産化の時期は明かさなかった。 JDI が 15% を出資する有機 EL 開発会社、JOLED (ジェイオーレッド)を子会社化する計画は、既に撤回済みだ。

また、6 月 19 日の株主総会終了後に有賀修二社長兼最高執行責任者 (COO) が退き、後任に月崎義幸副社長が昇格する人事も正式に発表した。 (北川慧一、asahi = 5-16-18)

前 報 (10-4-17)


パナソニック、「脱家電」が奏功 自動車関連大きな伸び

パナソニックは 10 日、2019 年 3 月期の業績予想で、営業利益に占める自動車関連部門の比率が 3 割超となり、家電部門を上回る見込みだと発表した。 世界的な電気自動車 (EV) 化の流れを受け、電池事業などが大きく伸びるため。 売上高も 8 年ぶりに 8 兆円を超す見通しだ。 19 年 3 月期は、売上高が前年比 4.0% 増の 8 兆 3 千億円で、11 年 3 月期の 8 兆 6,926 億円に次ぐ水準となる見込み。 営業利益は 11.7% 増の 4,250 億円とみる。 うち自動車関連部門の売上高は 7% 増の 3 兆円、営業利益は 1.5 倍の 1,360 億円。 家電部門は好調だが売上高は 2 兆 8,300 億円、営業利益は 1,210 億円にとどまる。

自動車関連部門の大きな伸びは、「脱家電」路線で積極的な投資を続けてきた効果だ。 昨年、米 EV メーカーのテスラと共同で米国に大規模な電池工場を立ち上げ、今春には中国・大連でも EV 用の電池工場を稼働させた。 今年 3 月末までの投資額約 7 千億円の多くを自動車関連に費やした。 18 年 3 月期の売上高も前年比 8.7% 増の 7 兆 9,821 億円と、4 年ぶりに前年水準を上回った。 営業利益は 37.5% 増の 3,805 億円。 津賀一宏社長は「増収基調に戻すのには時間がかかったが、今後も絶えず新しい事業に対応する会社をめざす」と話した。 (神山純一、asahi = 5-10-18)


カシオ、コンパクトデジカメ撤退 23 年の歴史に幕

カシオ計算機は 9 日、コンパクトデジタルカメラ事業から撤退すると発表した。 高性能カメラつきのスマートフォンに押され、年間の出荷台数はピークの 1 割以下の 55 万台に落ち込んでいた。 今後は監視用カメラなど企業向けにシフトし、消費者向けは 23 年の歴史に幕をおろす。 「続けていても増収が見込めない。」 樫尾和宏社長はこの日の決算会見で、そう説明した。 2018 年 3 月期のデジカメ事業の売上高は 123 億円で、ピークの 08 年 3 月期より 9 割以上減った。 営業損益は 49 億円の赤字で、前年(5 億円の赤字)より悪化。 すでに生産を終えており、「CASIO」ブランドのカメラは近く店頭からなくなる見通しだ。 修理には当面、対応する。

液晶画面つきのデジカメ「QV-10」で参入したのは、市場がまだ創生期だった 1995 年。相場の 10 万円超より安い 6 万円台で売り出したのも支持され、ブームの火付け役となった。 02 年に発売した「EXILIM (エクシリム)」は薄さを極め、画素数やズーム倍率を競う流れに一石を投じた。 11 年に出した「自分撮り」に向く「TR シリーズ」は中国で人気が広がった。 樫尾社長はカメラ事業について「違うモデルに変革する」とも述べ、コンパクトへの再参入にも含みを持たせた。 山形県の工場は閉鎖せず、医療やスポーツ記録向けのカメラなどをつくって技術力を保つ方針だ。

ただ、とりまく環境は厳しい。 日本のメーカーによる 17 年のコンパクトデジカメの出荷台数は計 1,330 万台で、5 年前の 2 割以下だ。 オリンパスは今月、中国での生産を終了。 ニコンも昨秋に中国・江蘇省の工場閉鎖を発表している。 (内藤尚志、asahi = 5-9-18)


米火星探査機インサイト打ち上げ 11 月着陸、内部構造に迫る

【ワシントン】 米航空宇宙局 (NASA) は 5 日、火星の内部構造に迫る無人探査機「インサイト」を西部カリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地からアトラス 5 ロケットで打ち上げた。 11 月に火星に着陸し、約 2 年かけて探査する。 巨大な山々など、火星に特徴的な地形が形成された過程を内部構造を知ることで明らかにするのが狙い。 地球など岩石でできた惑星の成り立ちに迫ることも期待される。 火星の赤道付近にパラシュートやエンジンの逆噴射を利用して着陸。 表面に地震計を設置して振動を分析したり、自転のふらつきや地下の熱の流れを観測したりして、総合的に内部構造を探る。 (kyodo = 5-5-18)


民間ロケット "MOMO" 打ち上げ、夏以降に延期

ロケット開発スタートアップのインターステラテクノロジズ(北海道大樹町)は 30 日午後、打ち上げを見送っていた観測ロケット「MOMO (モモ)」 2 号機の打ち上げを今年の夏以降に延期すると発表した。 29 日に発覚したロケットの不具合などから、機体を万全の状態にするには時間がかかると判断した。 民間単独開発ロケット初の宇宙空間到達は再びお預けとなった。 同社が開発するモモは全長約 10 メートルの小型ロケット。 大気圏と宇宙空間の境目と定義する高度 100 キロメートル到達を目標に開発を続けてきた。 2017 年 7 月に初号機を打ち上げたが機体トラブルで宇宙に到達できず、再チャレンジとして 2 号機の開発に時間をかけてきた。

当初は 28 日午前の打ち上げを計画していた。 確認作業に時間がかかるなどで 29 日午前に延期を発表。 29 日未明から打ち上げ作業をしてきたが、同日早朝に窒素ガスが漏れるトラブルが発覚した。 機体を改修し 30 日の打ち上げを目指したものの「万全を期すため(稲川貴大社長)」に 30 日 - 5 月 2 日にはロケットを発射しないと発表していた。 同社の創業に携わった実業家の堀江貴文氏は 4 月 30 日早朝の記者会見で「汎用品で大幅にコストを下げる中で出てきたトラブルの可能性もある」と明かした。 ロケットの打ち上げを万全にするために時間を要するうえ、関係各所との調整が必要になるため打ち上げを大幅に先延ばしした。

開発段階のロケットは不具合がつきものだ。 宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の前身の宇宙開発事業団 (NASDA) や宇宙科学研究所 (ISAS) も数十年の技術開発を経て、信頼性が高いロケット「H2A」や小型ロケット「イプシロン」を生み出してきた。 その過程では多くの困難や打ち上げ失敗があった。 実業家のイーロン・マスク氏の米スペース X も多くの失敗を経験している。 29 日に開いた記者会見で稲川社長は「技術屋としては早めに不具合が見つかってよかった」と話した。 不具合が発見できていなければ、打ち上げ失敗という初号機の二の舞いになりかねなかった。 トラブルの芽を摘んで宇宙へ再挑戦したい考えだ。 (nikkei = 4-30-18)

前 報 (7-30-17)


レアアース、南鳥島沖に数百年分 濃縮する技術開発中

精密機器の製造に欠かせないレアアースの世界需要の数百年分が、東京・小笠原諸島の南鳥島周辺の海底にあることが、早稲田大や東京大などのチームの調査でわかった。 効率よく回収する技術の開発も進めており、将来的に安く調達できると期待されている。 レアアースがあるのは、本州の南東約 2 千キロにある南鳥島のさらに南約 250 キロの深さ約 5,700 メートルの海底。 一帯は日本の排他的経済水域内にあたる。

チームは 2013 年にこの一帯にある海底の泥から高濃度のレアアースを見つけている。 今回どのくらいの量があるか、海洋研究開発機構の調査船で周辺の約 2,500 平方キロの範囲で計 25 本の穴を掘って調べた。 その結果、ハイブリッド自動車のモーターなどに使われているジスプロシウムで世界需要の約 730 年分、テルビウムが 420 年分など、レアアースが計 1,600 万トン超あると推計した。

また、泥の中でリン酸カルシウムの粒にレアアースが濃縮しやすいことを見つけた。 遠心分離の技術を使い 2.6 倍濃縮して回収する方法を開発し、地上の実験で効果を確認した。 海上にくみ上げる泥の量を減らし、採掘の費用を大幅に減らせるという。 今後、海中での効果を確認するなど実用化をめざす。 東京大の加藤泰浩教授(地球資源学)は「レアアースが豊富に存在することが裏付けられた。 費用を減らす可能性も示せたことで資源開発に近づけたのではないか。」と話す。 研究成果は英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。 (竹野内崇宏、asahi = 4-14-18)

前 報 (3-21-13)


日本発、全固体電池に期待 電解液タイプの 3 倍出力・高速充電も

スマートフォンや電気自動車 (EV) などで使われている今のリチウムイオン電池より高速で充電でき、より安全で長時間使える電池の開発が進んでいる。 その候補のひとつが「全固体電池」だ。 リチウムイオン電池と同じく、日本発の研究成果が注目されている。

EV や小型 … 新技術のパワーに

全固体電池は、リチウムイオン電池などで使われる電解液の代わりに、固体の電解質を使う電池だ。 固体電解質は、ラシド・ヤザミ氏がリチウムイオン電池の元になる原理を 1980 年代に発見した際に使われたが、その後は電解液に代えられた。 当時の固体電解質は電解液に比べてイオンを通しにくく、性能が低かったからだ。 ただ、電解液は可燃性物質を含み、発火や液漏れなどの可能性がわずかにある。 EV などに使う場合、電解液の電池は性能的に限界がある。

2011 年、転機があった。 東京工業大学の菅野了次教授やトヨタ自動車の研究者らが硫黄やリン、ゲルマニウムなどを組み合わせ、電解液に匹敵する性能を持つ新型の固体電解質を開発。 16 年には塩素も加え、電解液をしのぐ性能の固体電解質を作った。 この固体電解質を使って試作した全固体電池は、既存のリチウムイオン電池の約 3 倍の出力を記録。 100 度 - マイナス 30 度の環境でも充放電ができた。 高速充電も可能という。

菅野さんは「実用化されれば全固体電池の特徴を生かして、これまで想定してきた EV と違う新たな使い方も生まれるだろう」と話す。 全固体電池の研究は、日本が世界をリードしている。 13 年度の特許庁の調査では、米欧中などへの特許出願件数の約 6 割を日本が占めた。

TDK は 6 月までに、大きさ約 5 ミリの全固体リチウムイオン電池の量産を始める。 固体電解質に酸化物の材料を使い、並べた材料をセラミックスとして焼き締める方法だ。 家電や車などをネットにつなぐ「IoT」が進む中、消費電力が少ない小型の電子機器に使うことが想定されるという。 同社の大石昌弘さんは「EV 用だけでなく、小型電池にも大きなニーズがある」と話す。 固体電解質についての解析も進む。 リチウムイオン電池の開発に貢献した功績で日本国際賞の受賞が決まった吉野彰・旭化成名誉フェローは「(固体電解質の内部では)今までの教科書に書いているリチウムイオンの動き方とどうも違う。 新しい技術につながっていく期待感がある。」

実験せず材料探し、AIに可能性

固体電解質の材料を探す研究も加速している。 菅野教授らは昨年、スズやケイ素といった安価な材料を組み合わせて焼き固めたセラミックスで、電解液並みの性能の材料を開発した。 希少なゲルマニウムを使わず、低コスト化を目指す。 東工大では、材料を探すため、様々な物質を組み合わせ、研究者が実験を繰り返してきた。 さらに、人工知能 (AI) 技術をうまく使えば、考えなかったような新材料を探し出せる可能性がある。 実験なしで効率的な材料探しを目指す「マテリアルズ・インフォマティクス」と言われる分野だ。

文部科学省や経済産業省の会議で紹介された有名な話がある。 米マサチューセッツ工科大とサムスンが 2012 年に発表した固体電解質は、コンピューターの計算だけで開発された。 長年、研究者が実験を繰り返して研究してきた日本は、追い上げられている - -。 ところが、この話は間違いだった。米韓チームの 13 年の論文には、日本の発見を元に計算したと書かれている。 「ただ、この話が間違いであることが、マテリアルズ・インフォマティクスの重要性を損なうわけではない」と、京都大の田中功教授は話す。

「将棋も囲碁も AI が人間に勝つようになってきた。 一部では近い将来、コンピューターに新しい材料を考えさせ、ロボットの実験で材料を開発する時代が来るかもしれません。」と指摘している。 (小堀龍之、asahi = 4-12-18)


電機大手、IT 人材の争奪激化 19 年度新卒採用 ソニー 33% 増、東芝 2 倍以上

電機大手の 2019 年度に入社する新卒の採用計画が出そろった。 ソニーは 18 年度入社の計画比 33% 増、東芝は 2 倍以上と採用増を計画。 好業績を追い風に、成長戦略の柱となるモノのインターネット (IoT) や人工知能 (AI) などの開発を担う IT 人材の囲い込みを図る。 だが、争奪戦は業種を超えて激しさを増しており、人材確保のハードルは高まっている。

採用人数が最も多い三菱電機は 50 人増の 1,190 人(18 年 10 月入社も含む)で採用の 6 割が理系。 ソニーは 100 人増の 400 人で 8 割が理系の採用だ。 日立製作所の新卒採用は横ばいだが、即戦力の経験者採用を理系を中心に増やす。 今年度中に 3,000 人の人員削減を計画する NEC は新卒採用を減らすが、「IT 人材の採用は落とさない」考えだ。

各社が理系の採用に意欲的なのは、IoT や AI を用いた付加価値の高い製品やサービスが今後の成長を大きく左右するため、担い手の IT 人材が必要だからだ。 経済産業省は国内の IT 人材が 15 年時点では約 92 万人で約 17 万人不足しており、30 年には不足人数が約 59 万人に拡大すると試算する。 限られたパイを業種を超えて奪い合う構図は鮮明になりつつある。 就職情報サイト「リクナビ」によると、中国の通信機器大手、華為技術の日本法人は月給 40 万円超の初任給で新卒技術者を募集。 ヤフーは優れた技術論文を執筆した経験などがあれば、30 歳以下の入社希望者に初年度から年収 650 万円以上を提示する。

これに対し、電機大手も優秀な人材の獲得に工夫を凝らす。 三菱電機は 2 月に 1 日単位で仕事を体験できるインターンシップ制度を導入。 学生の選択肢を増やし、囲い込みにつなげたい考えだ。 だが、電機業界の競争力低下を背景に、学生は以前ほど大手に魅力を感じなくなっているとの指摘もあり、大手といえど IT 人材を確保するのは容易ではなさそうだ。 (sankei = 4-6-18)


富士「黒白フィルム」販売終了へ 80 年超の歴史に幕

富士フイルムイメージングシステムズは 6 日、白黒写真用の「黒白フィルム」の販売を終えると発表した。 需要がプロ写真家や愛好家に限られ、生産コストをまかなう販売量の確保が厳しいと判断した。 生産はすでに終了。 国内での販売は今年 10 月の出荷分までとし、海外でも順次とりやめる。

同社によると、黒白フィルムの生産・販売は 1936 年に始めた。 高度経済成長とともに写真文化が広まって主力商品に成長。 だが、カラー写真の普及やデジタルカメラの台頭で販売量が急減。 国内の市場規模はピークだった 65 年ごろの 1% 以下に縮んでいるとされる。 商品数も減り、富士フイルムでは「135 サイズ 36 枚撮り」、「120 サイズ 12 枚撮り」だけになっていた。 34 年から生産を始めた黒白印画紙も同様に生産を終了し、販売は 20 年 3 月の出荷分までとする。 カラーフィルムの生産・販売は続ける。 (内藤尚志、asahi = 4-6-18)


太陽まで 600 万キロに接近 NASA が探査機を公開

太陽に肉薄して観測する無人探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」の機体が 28 日、米東部メリーランド州の米航空宇宙局 (NASA) ゴダード宇宙飛行センターで報道陣に公開された。 太陽の大気「コロナ」や、太陽風のメカニズムを解き明かすことで、人工衛星や宇宙飛行士の活動に影響する危険な宇宙天気の理解にもつながる。

パーカー・ソーラー・プローブは、7 月末に打ち上げ予定で、金星の重力を使って軌道を変え、周回しながら太陽に近づき、太陽表面の約 600 万キロまで迫る。 これまで太陽に最も接近したのは探査機ヘリオス 2 号の約 4,300 万キロ。 探査機の前面は 1,400 度の高温にさらされるが、厚さ 11.43 センチの炭素素材の耐熱シールドで内部は室温程度に保たれるという。

太陽の表面温度は 6 千度程度なのに、コロナが 100 万度以上になる理由は不明だ。 また、噴き出したプラズマによる太陽風がなぜ秒速数百キロに加速されるのかも謎だ。 プロジェクト科学者のニッキー・フォックスさんは「NASA 設立時に提案されたが、技術が追いつくのに 60 年待たされた。 パズルの最後のピースを埋めるきわめて重要なミッションだ。」 チームに参加するジョンズ・ホプキンス大の高橋主衛(かずえ)研究員は「太陽に最も接近できる探査機。 かなり挑戦的だが、成功すればノーベル賞級だ。」と話す。

NASA は希望者の名前を探査機に積むチップに刻んで太陽に送る。 4 月 27 日まで サイト で募集している。 (グリーンベルト、メリーランド州 = 香取啓介、asahi = 3-29-18)


リコー、6 年ぶり赤字転落へ 過去最大の 1,700 億円

複写機大手リコーは 23 日、2018 年 3 月期(国際会計基準)の純損益が 1,700 億円の赤字(前年は 34 億円の黒字)に転落する見通しになったと発表した。 低迷する北米事業などで約 1,800 億円の損失を計上するため。 赤字は 6 年ぶりで、赤字額は過去最大となる。

08 年に約 1,600 億円で買収した米販売会社「アイコンオフィスソリューションズ(現リコー USA)」や、その後に買収した米 IT サービス会社などで想定した収益を見込めなくなり、減損処理する。 山下良則社長は緊急会見で「ペーパーレス化が予想以上に進んだ。 (販売)単価下落が顕著だった。」などと説明。 ただ、「高値づかみではない」とも述べ、買収の判断そのものは正しかったと強調した。 (川田俊男、asahi = 3-23-18)


薬局、全商品に電子タグ 人手不足受け 2025 年までに

薬局チェーンなどでつくる日本チェーンドラッグストア協会と経済産業省は 16 日、2025 年までにドラッグストアで取り扱う全商品に電子タグを装着することをめざすと発表した。 急成長するドラッグストアが直面している人手不足の解決につながると期待する。 来月から、ドラッグストア約 10 社や日用品メーカーなどが参加して、在庫や販売の状況を瞬時に把握できる情報共有システムの実証実験の検討をはじめる。 電子タグの価格は 1 枚 5 円ほど。コスト面の課題なども探る。

ドラッグストアは 17 年までの 10 年間で、市場規模が 1.5 倍に拡大。 現在 1 万 9 千超の店舗数は 25 年までに 3 万店、売上高も約 1.5 倍の 10 兆円が見込まれている。 一方で薬剤師などの専門的な人材が必要だ。 同協会の宗像守事務総長は「人手不足とはいえ専門性を確保しつつ、単純作業は徹底的に簡略化させて成長につなげたい」という。 コンビニエンスストア業界も昨年 4 月から、電子タグの実証実験などに取り組み、25 年までに扱う全商品年約 1 千億個への装着をめざしている。 (牛尾梓、asahi = 3-16-18)


SpaceX、2019 年前半にも巨大ロケット「BFR」初の打上げ試験を計画中 イーロン・マスクが SXSW で語る

テキサス州オースティンで開催中のイベント SXSW にイーロン・マスク SpaceX CEO が登場し、火星を目指すことも想定した巨大ロケット「BFR」によるごく短い時間の "上昇/下降" テストを2019 年にも実施すると発言しました。 ただ、イーロン・マスクの語る計画にはたいてい遅れが生じるため、今回もかなり楽観的にみたタイムスケジュールと言えるかも知れません。 ただ、2022 年に BFR を使った火星への物資輸送ミッションを計画するイーロン・マスクにとって、このテスト飛行はあまり遅れてもよいスケジュールではありません。

BFR は今年はじめにテスト打ち上げを成功させたばかりの Falcon Heavy の後を継ぐロケットと考えられており、現在の設計情報では 37 基の Raptor エンジンを備える予定(ブースター用 31 基、宇宙機用 6 基)。 その合計推進力は、米国最大のロケットだったサターン V 型の 2 倍に達します。

Falcon 9、Falcon Heavy と同様に、BFR もまたこのロケットブースターの再利用を見据えた設計を採用しています。 火星への有人ミッションは究極の目標ではあるものの、BFR はそれだけでなく月への往還、そして国際宇宙ステーション (ISS) への補給ミッションも想定して開発が進められています。 ロケットとしては Falcon Heavy の 5 倍、150 トンのペイロードを ISS のいる地球低軌道へ送り届けられるようになっています(Falcon Heavy は低軌道へ 54 トン)。

たしかに「あと 1 年ほどで初の打ち上げ試験を実施する」というイーロン・マスクの計画はかなり楽観的かも知れません。 月や火星を目指すというのは NASA にとってもかなりの準備が必要なことであり、人工衛星の打ち上げとは比較にならないほどの予算と技術力、サポート体制が必要になるはずです。 Falcon Heavy の打ち上げも、当初は 2013 年の予定でしたが様々な要因によって 2018 年にまでずれ込みました。

BFR の全長は約 107m もあり、これはサターン V 型の約 110m に匹敵する大きさ。 すでに Falon Heavy を経験した SpaceX にとってもまったく未知の領域です。 数年前に比べれば、ロケットブースターの回収や Falcon Heavy の打ち上げなどからたくさんの経験を吸収しまた積み上げてきた SpaceX ですが、彼らにとっても BFR 打ち上げまでには、まだまだ学ばなければならないことがたくさんあるはずです。 とはいえ、あまりワクワクすることがないこの時代、我々としてはイーロン・マスクの計画が予定どおり進むことを願いつつ、すこしでも早い時期に閃光とともに雲間に突っ込んでいく巨大ロケットを見てみたいものです。 (Munenori Taniguchi、Engadget = 3-12-18)

◇ ◇ ◇

米スペース X、積載能力最大ロケット打ち上げ = 63 トン運搬可能

【ワシントン】 米民間宇宙企業スペース X が新たに開発した大型ロケット「ファルコンヘビー」の打ち上げ実験が 6 日午後(日本時間 7 日早朝)、南部フロリダ州ケープカナベラルのケネディ宇宙センターで行われた。 米各メディアは「成功した」と伝えている。 世界で現在使われているロケットでは最も強力で、地球低周回軌道に 63.8 トンを運ぶことが可能。 宇宙開発の大きな「推進力」となりそうだ。

ファルコンヘビーは全長 70 メートルで 2 段式。 既に運用されているロケット「ファルコン 9」を 3 基、一列に並べた構造で、計 27 基のエンジンを搭載している。 ロケットは再利用できる。 発射後に切り離された 1 段目 3 基のうち、2 基は宇宙センターに隣接するケープカナベラル空軍基地上空まで自力で戻り、逆噴射で姿勢を制御しながら垂直に軟着陸。 残る 1 基は海上に設けられた着陸用パッドに帰還後、回収される。 (jiji = 2-7-18)

◇ ◇ ◇

「世界最強」ロケット、来月打ち上げ 積み荷はテスラ車

米宇宙企業スペース X は、月や火星探査用に開発中の「世界最強」の大型ロケット・ファルコンヘビーを 2 月 6 日、米フロリダ州の米航空宇宙局 (NASA) のケネディ宇宙センターから初めて打ち上げる。 最高経営責任者 (CEO) イーロン・マスク氏が 27 日、自身のツイッターで明らかにした。 ファルコンヘビーの打ち上げは、米国が初めて月に人類を送ったアポロ宇宙船の打ち上げと同じ射場を使う。 24 日には、地上でエンジンテストを行っていた。

ファルコンヘビーは、全長約 70 メートルで 2 段式のロケット。 1 段目は 27 基のエンジンを持つ。 40 回以上の打ち上げ実績のある同社の中型ロケット・ファルコン 9 を 3 機束ねたような外観で、低軌道に 63.8 トン、火星までだと 16.8 トンの荷物を運ぶことができる。 同社は、アポロ計画で有人宇宙船の打ち上げに使われたサターン V ロケットに次いで、現役では最もパワフルなロケットだとしている。

今回の打ち上げは試験飛行で、火星と太陽の間の周回軌道を目指し、ロケットには、マスク氏が CEO を務める電気自動車メーカー「テスラ」の最新型のスポーツカーを載せるという。 同社は年内にも同ロケットで、2 人が乗った宇宙船を月軌道に送る計画を発表している。 (ワシントン = 香取啓介、asahi = 1-28-18)


日本版 GPS 「みちびき」、運用開始を 11 月に延期

日本版 GPS (全地球測位システム)の準天頂衛星みちびきについて、内閣府は 2 日、当初 4 月に予定していた位置情報のサービスの開始を、11 月に延期すると発表した。 みちびきは、専用の受信機を使えば、走行中でも誤差 12 センチ程度の高精度な測位ができるとされており、自動運転などへの活用が見込まれている。 これまでに打ち上げられた 4 機で 24 時間運用する予定だった。 内閣府の準天頂衛星システム戦略室によると、沖縄県や鹿児島県などで精度が十分に高まらないほか、場所によってはすぐに位置を特定できない状態で、解決に時間がかかるという。 (asahi = 3-2-18)

◇ ◇ ◇

誤差 6 センチ、畑も自動で耕せる? 「みちびき」が成功

「日本版 GPS (全地球測位システム)」と呼ばれる準天頂衛星「みちびき」の 4 号機が 10 日、打ち上げられた。 今回の成功によって、来年度から高い精度の位置測定サービスが始まる。 どんな仕組みなのか。 みちびきは、位置情報サービスの精度を高めるため 4 機の衛星で構成されたシステムだ。 来年度からサービスが始まると、スマホやカーナビの精度向上につながる。

衛星での測位は、電波を 4 機以上から地上で受信できれば可能だが、高い精度の測位には 8 機以上が必要とされている。 米国が運用している GPS は、地球全体に 30 機以上の衛星が配置されているが、それぞれの地点では 6 機の電波しか受信できなかった。 みちびきは、GPS と互換性を持ち、3 機が日本とオーストラリアの上空をつなぐ 8 の字に見える特殊な軌道で飛ぶ。 この地域では、GPS と合わせて 9 機からの電波を受信できるようになり、測位の精度が高まる。 現在はビルの谷間や山間部などで生じる数十メートルの誤差が、日本の真上から電波を受信できるようになることで、10 メートルほどに縮まると国は見込んでいる。

東京大空間情報科学研究センター長の小口高教授は「日本でカーナビが世界に先駆けて普及したのは、狭い道路が複雑に入り組む都市での移動に役立ったからだ。 測位の高精度化は、日本では特に恩恵が大きいのでは。」と話す。 もう一つの特徴は、専用の受信機を使うことで、誤差 6 センチという、きわめて高い精度の測位ができることだ。 衛星からの電波は、大気上層の「電離層」が乱れると影響を受けるが、国土地理院が全国に持つ電子基準点のうち、約 300 カ所と通信し、データセンターで誤差を補正する。

低速で畑を耕すトラクターの自動運転などの活用を国は想定している。 高速で移動する自動車だと誤差は 12 センチになり、ほかのセンサーと組み合わせれば自動運転への応用も考えられるという。 (田中誠士、小宮山亮磨、asahi = 10-10-17)

前 報 (8-19-17)


H2A ロケット打ち上げ 情報収集衛星を搭載

三菱重工業と宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は 27 日午後 1 時 34 分、政府の情報収集衛星「光学 6 号機」を載せた H2A ロケット 38 号機を、種子島宇宙センター(鹿児島県)から打ち上げた。

情報収集衛星は、他国の軍事関連施設などを監視する事実上の偵察衛星。 超望遠デジタルカメラを備えた光学衛星、夜間や悪天候でも撮影できるレーダー衛星の 2 種類があり、政府の内閣衛星情報センターが運用する。 現在、予備機を含め 6 基(光学 3 基、レーダー 3 基)を運用しており、政府は 10 基態勢への増強を目指す。 今年度の H2A ロケットの打ち上げは 5 機で、2014 年度と並び最も多くなった。 種子島宇宙センターにおける H2A ロケットの年間打ち上げ数は、1 機当たりの準備に 2 カ月弱必要なことから、最大 6 機とされる。 (酒造唯、mainichi = 2-27-18)


三菱電機、野菜室を真ん中に、省エネ冷蔵庫

三菱電機は 26 日、野菜室を真ん中に配置した冷蔵庫の新製品を開発したと発表した。 省エネ性能向上のため、冷凍庫を真ん中に配置する商品が多いが、三菱電機は独自の断熱構造を採用して野菜室を真ん中に配置しても従来機種と同等の省エネ性能を維持した。 野菜室の利用頻度が高い消費者に売り込む。 「MX シリーズ」を 3 月 30 日に発売する。 腰や膝をかがめずに出し入れできる高さに設置した野菜室は、野菜の大きさに合わせた 4 つのエリアに整理できるデザインで取り出しやすい。 価格はオープンだが、市場想定では 572 リットルが税別 40 万円前後、503 リットルの商品が同 36 万円前後。

冷凍室や製氷室など同じ温度帯を1カ所に集めて冷却効率を向上するため、冷凍室が真ん中にあるタイプの商品が多い。 三菱電機は断熱性能の高い真空断熱材を効率的に配置した機構を採用し、冷凍庫が真ん中にある「WX シリーズ」と同等の省エネ性能を維持した。 容量も変わらない。 三菱電機は冷凍食品の活用など冷凍室を頻繁に使う消費者には WX シリーズ、健康志向の高まりを受けて野菜室を重視する人には MX シリーズを展開して需要を取り込む。 (nikkei = 2-26-18)


リコー、北米で巨額損失の可能性 買収の現地会社が不振

複写機大手リコーが、北米事業で数百億円規模の損失を計上する検討に入った。 2008 年に約 1,600 億円で買収した米販売会社「アイコンオフィスソリューションズ」の業績が悪化し、想定した収益を稼げないためだ。 早ければ 18 年 3 月期中に減損処理する可能性がある。 リコーは現在、3 月期決算の発表に向けて北米事業の収益見通しを精査中だ。

2 月 22 日には「減損実施の要否や金額は現時点で不明」とのコメントを公表。 リコーは北米事業のてこ入れ策として販売網の縮小を進めるが、山下良則社長は「最適化には時間がかかる」と話しており、早期の収益改善は難しい状況だ。 リコーはほかにも、インドの販売子会社の経営破綻で最大 300 億円の損失が出る見通しを公表済み。 保有株の売却などで、財務基盤の強化を急いでいる。 先進国では複写機の需要が伸び悩んでおり、米大手ゼロックスも 1 月、富士フイルムホールディングス傘下の富士ゼロックスとの経営統合を発表している。 (asahi = 2-22-18)


金井飛行士、宇宙服を着て船外へ ロボットアームを交換

国際宇宙ステーション (ISS) に滞在中の金井宣茂宇宙飛行士は 16 日夜(日本時間)、ロボットアームの部品を交換するため、宇宙服を着て船外に出た。 金井さんは宇宙空間に出るため、ISS の船内で数時間かけて低い気圧に体を慣らし、白い宇宙服を着用。 船外では米国のマーク・バンデハイ飛行士と約 6 時間半かけて、地球からの補給船などをつかむロボットアームの先端部品を交換する。 日本人飛行士の船外活動は、2012 年の星出彰彦さん以来約 5 年 4 カ月ぶりで、通算 4 人目。 (田中誠士、asahi = 2-16-18)


JAXA、最小級ロケット成功 人工衛星打ち上げ 再挑戦で

宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は 3 日、超小型衛星を載せた電柱サイズのロケット「SS520」 5 号機を内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県肝付町)から打ち上げた。 7 分半後に衛星を予定の軌道に投入し、打ち上げは成功した。 5 号機は長さ 9.5 メートル、直径 52 センチ、重さ 2.6 トンで、衛星を軌道投入できる世界最小クラスのロケット。 民生品を活用して低コスト化を図った。 機体製造と打ち上げの費用は計約 5 億円。 衛星は東京大が開発し、重さ 3 キロで、地球の撮影やデータ通信を行う。 今回の成功で「たすき」と名付けた。

世界で需要が高まっている小型衛星を宇宙に運ぶための低コストなロケット技術を実証する目的で、JAXA は昨年 1 月、3 段式に改造し初めて衛星を載せた 4 号機を打ち上げたが、電気系統の故障で失敗。 4 号機の不具合を改良した 5 号機で再挑戦した。 昨年 12 月に打ち上げる予定だったが、機器の故障で延期していた。

SS520 ロケットは実験機で、衛星打ち上げは今回で終わる。 開発に関わったキヤノン電子など 4 社は、後継の小型ロケットを開発する新会社を昨年 8 月に設立しており、今後は民間が担う。 小型ロケットの開発を巡っては、米ベンチャーのロケットラボ社が 1 月にニュージーランドで打ち上げた小型ロケットで衛星の軌道投入に成功。 日本でも投資家の堀江貴文さんが出資する宇宙ベンチャー「インターステラテクノロジズ」が今春にも日本初の民間小型ロケットによる宇宙到達を目指す。

■ 解説 : 民間受注獲得がカギ

打ち上げに成功した SS520 ロケット 5 号機は、超小型衛星を安くて都合のいいタイミングで宇宙に運ぶため開発された。 宇宙ビジネスの新たな需要を開拓するとして、小型ロケットに対する期待が高まっている。 今後は民間企業が実験ロケットの技術を生かし、衛星の打ち上げ能力を高めていくとみられる。

近年は大学やベンチャーが 100 キロ以下の小型衛星を開発するケースが増えている。 特に、数十 - 数百もの超小型衛星を軌道上に配置して全地球を観測する「コンステレーション」と呼ばれる技術を目指すベンチャーもあり、実現には小型衛星の打ち上げ力の増強が不可欠。 だが超小型衛星に特化した打ち上げ手段はまだなく、H2A などの主力ロケットによる大型衛星の打ち上げに相乗りしているが、打ち上げ時期や回数を自由に選びにくい難点があった。

今年 11 月には民間の宇宙参画を促す宇宙活動法が本格施行され、民間企業も国の審査をパスすれば衛星の打ち上げができるようになる。 世界でも小型ロケット開発の競争は激化しており、成功を積み重ねて民間の受注を獲得できるかがカギになる。 (酒造唯、mainichi = 2-4-18)


まるでホタル 浮遊する発光装置、東大などが開発

東京大や慶応大などの研究グループが、空中を飛び回るホタルのような発光装置を開発した。 空中ディスプレーなどへの応用を目指している。 東京大の川原圭博准教授と高宮真准教授、慶応大の筧康明准教授らが開発した装置は、発光ダイオード (LED) を内蔵した直径 4 ミリの半球状で、重さ 16 ミリグラム。 ビーム状の超音波を当てることで宙に浮かぶ。 移動もできる。 集積回路 (IC) を専用に作ったほか、離れた場所から電磁波で送電する「無線給電」によって電池をなくすことで軽量化した。

研究グループは「世界初の空中移動する小型電子回路内蔵発光体」としており、ゲンジボタルの学名にちなんで「ルシオラ」と名付けた。 すでに、光りながら本の上を移動する「マイクロ読書灯」も試作。 今後は、多数を組み合わせて空中で画像を表示する研究などに取り組むという。 (伊藤隆太郎、asahi = 2-3-18)