不当残業の常態化、給料は 2 カ月に一度 … SNS で助け求めた外国人技能実習生

外国人技能実習生に対して雇用主が適正な賃金を支払わなかったり、無理な残業を強いたりするケースが長崎県内でも一部で横行し、失踪の原因になっている。 不当な扱いを受けた外国人労働者を保護する佐賀県内の「シェルター」で実態を取材した。 6 月のある日。長崎県内の縫製工場で働いていた 20 代と 30 代のカンボジア人女性 2 人が職場から逃げ出した。 度重なる不当な残業や賃金未払いなどが理由。 2 人が向かったのは佐賀県内のシェルターだった。

支援者の越田舞子さんが手探りで設けた外国人の一時保護施設。 いわば「駆け込み寺」だ。 女性 2 人は、先に入所していたベトナム人 2 人と共同生活を始め、落ち着きを取り戻した。 越田さんは「言葉もよく理解できない子たちをだますのは許せない」と憤る。 カンボジア人 2 人は 2017 年 3 月、技能実習生として来日。 長崎県内の縫製工場で働き始めたが、残業が常態化。 彼女たちが毎日書き留めた日記によると、朝から午前 2 時まで勤務したこともあった。 給与は寮費などが引かれ、2 カ月に 1 度、3 万 - 10 万円。 2 年間の支給総額は 197 万円。

2 人は実習生のネットワークで越田さんの存在を知り、フェイスブックを通じて助けを求めた。 越田さんはすぐに監督機関「外国人技能実習機構(東京)」に通報。 同機構と労働基準監督署の立ち入り調査が入り、会社側は 8 月、2 人に未払い賃金約 150 万円を支払った。 越田さんによると、2 人は受け入れ窓口となる監理団体にも相談したが、同団体がまともに取り合わなかった節がある。 取材に対し同団体は「言葉の問題でうまく通じていなかったかもしれない」と説明したが、越田さんは「実習生を受け入れる会社や監理団体へのチェック機能が十分ではない」と指摘する。

同機構がホテルや旅館の一室をシェルターとして活用し、実習生を一時保護する仕組みもある。 同機構によると、食事提供のほか、必要に応じて交通費や医療費を支給し、機構が新たな実習先も探す。 機構が設置された 17 年 1 月から今年 6 月までに約 30 人を保護した。 国として一応の保護態勢は整えているが、「失業手当の申請など生活支援までは行き届いていないのが実情。 言葉の分からない子たちにはそこが大事なんです。」と越田さん。

入所直後、カンボジア人の女性 2 人は取材に「オーダーメードの服を作る店を母国で開きたい」などと夢を語った。 しかし、4 カ月後の 10 月。 2 人のうちの 1 人が失踪した。 彼女は失業手当の受給期間(90 日間)が切れ、お金に窮していた。 ただ無断で働けば不法就労になる。 それでも、金を工面しなければならない事情があったのか。彼女の行方は今も分かっていない。 (長崎新聞 = 11-18-19)


日本のみなさん平等に接して、話して 私たちは同じ人間

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外国人技能実習生の失踪防止へ新対策 出入国在留管理庁

年々増える外国人技能実習生の失踪防止に向けた新たな対策を出入国在留管理庁がまとめ、大量に失踪者を出した実習先は新規の受け入れを停止するなどとしています。 出入国在留管理庁によりますと、外国人技能実習生の失踪は年々増えていて、去年 1 年間では 9,052 人と、5 年前の 2 倍近くになっています。 これを受けて出入国在留管理庁は、失踪防止に向けた新たな対策をまとめました。

それによりますと、大量に失踪者を出した実習先や監理団体は、適正な実習ができていないと見なして、新規の受け入れを停止するほか、賃金の不払いがあるなど違法性が確認できれば、受け入れをできなくするとしています。 また、失踪した実習生を雇用した企業名の公表なども検討するということです。 森法務大臣は、閣議のあとの記者会見で「施策を着実に実行し、技能実習生の失踪者数の減少に全力で取り組みたい」と述べました。 (NHK = 11-12-19)


技能実習生が技術を生かせる場つくりたい フィリピンで奮闘する日本人

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民間送出機関による技能実習生の派遣始まる

タシケント : 中央アジアの親日国・ウズベキスタンから、日本向けの技能実習生の派遣が開始された。 10 月 25 日にタシケントの民間人材派遣会社(送出機関)「ユーロアジア・イノベーション」がジェトロに対し、日本の法務省(入国管理局)に申請していた技能実習生(団体監理型)候補者 6 人全員に許可(在留資格認定)が下りたことを明らかにした。 同社によると、ウズベキスタンの民間の送出機関による日本向け技能実習生の派遣は初めて。 ユーロアジア・イノベーションの国際部長のニゾモフ・ウルグベク氏 (*1) に話を聞いた(10 月 14 日)。

(問) ウズベキスタンと日本の間の技能実習生制度をめぐる経緯について。

(答) 2012 年にウズベキスタン対外労働移民庁と日本の国際研修協力機構 (JITCO) との間で、技能実習生受け入れプログラム合意書が締結されたが、運用が実質的にスタートしたのは 2015 年。 対外労働移民庁(公的機関)が送出業務を担っていたこともあり、2016 - 2017 年の実際の派遣人数は 20 人弱程度にとどまっていた。 2018 年 10 月に共和国法第 501 号「私的雇用代理業について」が署名・施行され、民間企業が送出業務を担えるようになった。 当社の創業者と自分は、同庁で同法案の作成に関わっており、今後この分野でのビジネスが伸びると感じ、スピンアウトして企業を立ち上げた(*2)。

(問) 送り出しの開始に当たり重視している点は。

(答) 技能実習生の送出は開始されたばかりで、日本でのウズベキスタン全般のイメージを悪化させないよう、非常に心を砕いている。 先行するウズベキスタン人技能実習生の評価が、後に続く実習生の評価に関わる。 以前、ウズベキスタンから実習生を受け入れた日本企業を訪問して話を聞いたが、ウズベキスタン人は社交性もあり勤勉で、次回も採用したいとの声をいただいている。 高い評価が、次の受け入れにもつながる。

一方、民間送出機関は技能実習生に対しても責任を負っている。 当社では受け入れ先を事前に視察し、労働環境、賃金など、事前の合意内容と相違がないかを確認している。 当地で送出機関の登録には約 5 万ドルのデポジットが求められるが、技能実習生の日本での受け入れ環境に問題があった場合、同デポジットから帰国費用などが直接、支弁されるため、会社にとって大きな損失となる。 本人の苦情が政府に届けば、登録の取り消し処分もある。

(問) 今後の見通しについて。実習生たちに期待したいことは。

(答) 制度が動き始め、一気に実績を拡大させたい気持ちはあるが、まずは実績ある(日本側)監理団体や日本企業と協力し、派遣数を順次増やしたい。 今回の 6 人の後に 9 人が控えており、合計 15 人になる。 今後 2 年間で 100 人程度に広げていきたい。 ウズベキスタンでは日本への関心が非常に高く、日本語を勉強する若者も多い。 日本で技術を身につけ、ウズベキスタンに戻り、国の発展に役立ってほしい。 ウズベキスタンには農業、加工業などの産業があり、日本で得た技術を吸収できる素地がある。 (高橋淳、JETRO = 11-1-19)

(*1) ユーロアジア・イノベーションのニゾモフ・ウルグベク国際部長。 日本語通訳も務めるほどの語学力がある。
(*2) ユーロアジア・イノベーションによると、日本に限定しない(ロシア、韓国、欧州向けなど)送出機関(民間人材派遣会社)は 56 社で、半数は現在、免許の取得手続き中としている。


在留外国人過去最多 282 万人 人手不足で技能実習大幅増 6 月末、九州は 14 万人超

出入国在留管理庁は 25 日、2019 年 6 月末の在留外国人が速報値で 282 万 9,416 人(前年末比 3.6% 増)となり、過去最高を更新したと発表した。 人手不足を背景に、ベトナムなどからの技能実習生が増えた。 九州 7 県では 14 万 4,936 人だった。 在留資格別では、永住者が最も多く 78 万 3,513 人(同 1.5% 増)。 技能実習は 36 万 7,709 人(同 12% 増)、留学はネパールからの留学が減り 33 万 6,847 人(同 0.05% 減)だった。 4 月に就労拡大に向けて新設された在留資格「特定技能」は 20 人だった。

国籍・地域別では、▽ 中国 78 万 6,241 人(同 2.8% 増)、▽ 韓国 45 万 1,543 人(同 0.4% 増)、▽ ベトナム 37 万 1,755 人(同 12.4% 増)−と続いた。 国・地域は 195 に上った。 全ての都道府県で前年末より増えた。 九州の多い順では、▽ 福岡 7 万 9,129 人(同 2.7% 増)、▽ 熊本 1 万 6,592 人(同 6.5% 増)、▽ 大分 1 万 3,379 人(同 3.3% 増)、▽ 鹿児島 1 万 1,453 人(同 8.6% 増)、▽ 長崎 1 万 489 人(同 1.2% 増)、▽ 宮崎 7,162 人(同 8.2% 増)、▽ 佐賀 6,732 人(同 4.3% 増) - だった。 福岡は全国で 9 番目に多かった。

一方、7 月 1 日時点の不法残留者数は 1 月 1 日から 4,846 人増えて 7 万 9,013 人。 19 年上半期の入管難民法違反で退去強制手続きを取った外国人は 9,012 人(前年同期比 14.2% 増)で、全体の 65% で不法就労が確認された。 不法就労の稼働場所は関東が 67.8% を占め、九州 7 県は 118 人。 建設や農業での稼働が目立った。 (古川幸太郎、西日本新聞 = 10-26-19)


日本語指導が必要な子ども 5 万人 学びの場、どう確保

日本で働く外国人の子供たちは?

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技能実習生、失踪したら賠償金 日本の監理団体が裏契約

外国人の技能実習制度をめぐり、受け入れを担う日本側の監理団体がベトナムの送り出し機関との間で、実習生が失踪したら賠償金を支払わせるなどの裏契約を交わしていたことが法務省関係者への取材でわかった。 出入国在留管理庁と厚生労働省は、不適切な報酬の受け取りを禁じる技能実習適正化法に違反したとして、千葉、埼玉両県の二つの監理団体の運営許可を近く取り消す。

入管庁は、賠償金などの原資は実習生が応募する際に送り出し機関に支払う費用に上乗せされる仕組みだったとみている。 監理団体は 9 月末時点で全国に 2,700 ある。 今回の不正は実習生の入国前に発覚したが、同庁はこうした不正が横行している可能性があるとみて調査する。 関係者によると、千葉県の監理団体は昨年 7 月、ベトナムの送り出し機関と契約を締結。 同時に「覚書」とした裏契約を交わし、実習生が 1 年目に失踪したら 30 万円、2 年目以降は 20 万円の賠償金を受け取れるとした。 正規の契約では、実習生 1 人あたり 1 万 5 千円を送り出し機関に支払うことになっていた講習委託の手数料も、無料とする取り決めもしていた。

埼玉県の監理団体も昨年 5 月、正規の契約と同時に交わした「覚書」で、送り出し機関に払う事前講習の委託料を後から全額キックバック(還流)させたり、本来支払う管理費を値引きさせたりしていた。 裏契約は、日本とベトナム両政府の情報交換で発覚。 ベトナム政府も二つの送り出し機関の認定を取り消す予定だ。 日本側との交渉窓口となる送り出し機関は、実習生が支払う応募手数料が収入源。 送り込んだ人数が多ければ収入が増える。 日本側への賠償金やキックバックは「契約獲得を狙ったアピール(同省幹部)」とみられるが、実習生の負担を増やすことになりかねない。

多額の応募手数料を支払うために借金する実習生もおり、入管庁は、借金返済のために高い賃金を求めて実習先からいなくなることが、急増する実習生失踪の要因の一つとみている。  同庁によると、2018 年に失踪した実習生は 9,052 人で、12 年と比べ約 4.5 倍増えた。 国別ではベトナム人が全体の半数以上を占めて最も多く、中国、カンボジアと続く。 (板橋洋佳、asahi = 10-8-19)

外国人技能実習制度 : 日本で学んだ技術や知識を母国へ持ち帰ってもらうことを目的に、1993 年に始まった。 漁業や農業、食品製造など 80 職種が対象。 日本では非営利の監理団体が実習先の紹介や実習状況の監督・支援を行うほか、企業が単独で受け入れるケースもある。 昨年末時点で約 33 万人の実習生がおり、低賃金や劣悪な労働環境が問題視されることも多い。


外国人技能実習生受け入れ国際貢献 一人前の戦力になって母国で活躍してもらいたい 深谷組

とび・土工事業の深谷組(さいたま市、深谷和宏社長)が、外国人技能実習生の受け入れに積極的に取り組んでいる。 7 月には同社として初めて、ミャンマーからの実習生を 6 人受け入れた。 来日から約 3 カ月、実習生たちは東京都内や埼玉県内の建設現場で日々奮闘中だ。 本社管理部門も全面的にバックアップし、日常生活も含め、きめ細かいケアを行っている。

同社の外国人材活用の歴史は長く、最初は 16 年前に日系ブラジル人を採用した。 現地で野球のナショナルチームに所属していた人材で、同社が現在、高校や大学の野球部員を対象に実施している「アスリート採用」の原形とも言える試みだった。 技能実習生という形では、9 年前に初めて、インドネシア人を受け入れた。 そのうちの 1 人は帰国していまも、日本の大手ゼネコンの現場で責任者として活躍中だ。 その後ベトナム、そして今回ミャンマーから実習生を採用した。

ミャンマーの 6 人は、会社近くに用意した 1 戸建ての寮で共同生活。 初めはとまどいもあったが、社員の声がけで連れ立って観た花火大会をきっかけに距離が縮まった。 建設作業に関して本社サイドは、漢字にひらがなを振ったり、イラストを付けるなどの工夫をしながら、なるべく前倒しで分かりやすく、内容を伝える努力をしている。

深谷社長によると、来年はインドネシア、再来年はフィリピンから実習生を受け入れる予定という。 あえて複数の国から採用することで、固定化で生じうる不祥事などを回避するとともに、競争意識の醸成を狙う。 実習生の受け入れには当然、国内の技能労働者不足を少しでも補いたいという思いもあるが、「3 年経って一人前の戦力になるころに帰国してしまうが、それでいい。 日本で少しでも多く稼ぎ、技能を身につけ、母国で活躍してもらいたい。(深谷社長)」と、技能実習制度の本来目的である国際貢献への思いが強い。

一方で「われわれはまず何よりも、日本人の技能者を育成しなければならない。 将来的に外国人労働者が増えるのであれば、指示を的確に伝える力を含め、現場でのマネジメント能力も一層求められてくる。」と、日本人技能者の確保・育成を最重要視する。 常に海外進出も模索しているという深谷社長は「いつか海外に出たときには、実習生たちと現地でコラボレーションしたい」との夢を抱く。 (建設通信新聞 = 10-5-19)


ベトナム実習生 2 年延長 リオン・ドール、制度上最長 5 年へ

リオン・ドールコーポレーション(会津若松市)は、2016 (平成 28)年に採用したベトナムからの技能実習生の実習期間を 2 年延長する。 女性 21 人のうち帰国する 4 人を除く 17 人が 12 月から新たな実習期間に入り、制度上最長となる計 5 年の実習を行う。

1 期生は、同市の流通センターで総菜の製造などを担当。 同社はこれまで、ベトナムから計 129 人の実習生を受け入れており、12 月には 5 期生 36 人を採用する予定。 同社は 1 日、同市で 1 期生に修了証を手渡し、3 年間の労をねぎらった。 石添潤一副社長は「リオン・ドールにとって、大きな戦力になってくれた」と感謝した。 期間延長する実習生 (23) は「ベトナムとの違いはあるが、日本では勉強になることが多かった。 身に付けた日本語を生かした仕事をしたい、」と話した。 (福島民友新聞 = 10-2-19)


外国人技能実習生が会見 長時間労働や賃金未払い 愛媛

愛媛県八幡浜市の縫製会社などで働いていた中国人の技能実習生 2 人が 24 日、県庁で記者会見し、残業代の未払いや長時間労働があったと訴えた。 会見を開いたのは、縫製会社やその関連会社で 4 月まで働いていた王興梅さん (50) と王海艶さん (34)。 外国人技能実習生として、中国の山東省から 2016 年に来日した。 支援している広島県福山市内の労働組合や 2 人によると、毎月のように残業時間が 100 時間を超え、多い月では 170 時間ほど残業があったという。 休日も月に数日しかなく、そもそも、時間外労働に関する労使協定(36 協定)を結んでいなかったという。

未払い賃金の支払いを求めて 3 回交渉を重ねたが、会社側は「勤務時間や残業代の明細が書かれた書類を捨てた」などと説明。 交渉は不調に終わったという。 組合は会見で、「社会的な問題として世間に訴えかけたい」とし、話し合いでの解決を目指す考えを示した。 海艶さんは日本語に翻訳された文書で「一生懸命残業して体を消耗した。 会社のやり方を受け入れられない。」と訴えた。 取材に対し、会社側は「労働基準監督署から行政指導を受け、約 7 万円ずつ支払った。休日残業の計算方法に誤りがあった。 これ以上やることはないと考えている。」と話した。 (藤井宏太、asahi = 9-25-19)


外国人技能実習生 来日後に絶望する人が少なくないのが現実

事実上の移民が解禁されたいま、来日外国人は今後も増える見込みだ。 外国人による犯罪の増加を不安視する人もいるが、統計をみると、検挙人数そのものはこの数年、減少傾向にある。 ただし、彼らの中から粗暴犯で検挙される人数は増えている。 その原因のひとつと言われる外国人技能実習生は、技能実習とは名ばかりで、何も習得できず、低賃金労働だけを求められる現実に絶望している。 ライターの森鷹久氏が、激増する来日ベトナム人を代表とする技能実習生をめぐる矛盾と過酷な現実についてレポートする。

* * *

「彼はいい人でした。 仕送りもきちんとしてた。 でも不満はあったと思います。 もっといい仕事ができると思ってた。 私もそう思う。 ファーマーのお手伝いをしに来た訳ではない。」 茨城県八千代町で高齢夫婦が死傷し、ベトナム人実習生が逮捕された事件から間も無く 1 ヶ月を迎える。 未だ、動機についてはっきりとはしないものの、逮捕された男と同じ八千代町内在住のベトナム人研修生・M さんが、苦しい胸の内を訴える。

「まずは被害者の方に申し訳ないです。 同じベトナム人の研修生がやったこと。 彼ら(被害者)に罪はない。 でも、彼(容疑者)の気持ちもわかります。 私たちはベトナムの田舎の出身。 ホーチミン、ハノイなどの都会に出て、学校で日本語を勉強しました。 その後、日本で研修生として働く。 お金もたくさんかかるから、一家で借金をして、日本で技術を学んで帰るつもりだった。 日本人はみんな優しかった。 でも、これ(農業の手伝い)をするとは思ってなかった。(M さん)」

M さんは、ベトナムでは高等学校にあたる教育課程を経て、その後の数ヶ月間「送り出し機関」と呼ばれる現地施設に入所した。 日本で研修生として働くために入る機関で、ここで寮に入り日本語や、日本で生活していく為の知識を学んだという。 単なる留学と違い、日本で働きながら様々な技術を学び、さらに金も稼ぐ。 だからこそ、M さんに向けられた家族の期待は大きかったに違いない。 地方の農村で暮らす M さん一家は、M さんのために日本円で 200 万円もの借金を背負ったのだから、ベトナムの経済事情を鑑みれば、それは一大決心だったはずだ。

「学校(送り出し機関)は綺麗で、食事も美味しい。 かっこいい制服もあって、日本に行ってエリートになって帰ってくるんだと頑張りました。 私は日本に行きたくて一生懸命に勉強しました。 本当は車の整備士になりたかったけど、私はなれなかった。 農業しかダメと言われた。(M さん)」 外国人実習生と一口で言っても、様々な業種に振り分けられる。 農業や介護、漁業に建設、食品製造など多岐にわたる分野が設定されているが、実習生に一番不人気なのが「農業」だ。 同じくベトナム出身だが、国費留学生として日本の国立大学に通うベトナム人女性・A さんがいう。

「今、ベトナムで問題になっているのが、日本に行って実習生になれると言って若者を集めている、よくない送り出し機関の存在です。 若い人たちはお金を払って日本語を勉強すれば、日本の高い技術を学んで帰国し、儲かる仕事ができると思っています。(A さん)」 こうして希望を持って、借金まで背負って "学校" へいく。 しかし、そこで待っているのは M さんが体験したような厳しい現実だ。

「学校(送り出し機関)も色々あります。 しっかりしたところは、技能のあるベトナム人に日本語を教え、ちゃんとした日本(の受け入れ機関)に紹介する。 そこから、一流の技能を学ばせてくれる会社に行ける。 でも今はそうじゃなくなっています。 お金欲しさに、農業や漁業など不人気な研修ばかりさせる学校が多い。 そういう学校に入ると、賄賂を渡せば好きな仕事に就けるが、払わなければ頑張っても意味がないのです。(A さん)」

M さんも、日本語や日本の慣習をよく学んだものの、結局希望は受け入れられず、日本で農業実習生として従事することになった。 彼らは、日本人の最低時給ほどで働くことを余儀なくされ、残業代の出ない残業を強いられることも珍しくはない。 借金して高い金を支払い、やっとくることができた日本である。 家族のためにも逃げられず、泣きながらでも仕事をするしかない。 そんな中でも、M さんには新たな希望が持てた。 それは、日本の農家で働きながら、日本語や日本の慣習をさらに学んで、帰国した後に現地の日系企業で働く、という夢だ。

「ここ(茨城)にいても、毎日ベトナムの友達と過ごすしかない、休みの日もそう。 みんなで家に集まって、お酒を買ってきてパーティーをするくらい。 これだと日本に来た意味がない、日本語も勉強できない。 だから、日本人の友達作って遊んだり、日本語を教えてもらっている。 でも、私のようにポジティブになれない人もいる。 せっかく高いお金払ったのにって怒って、携帯電話の嘘の契約をしてお金儲けしたり、泥棒したり。女の子はバー(キャバクラなど)で秘密で働きます。 逃げる人もいる。 みんなネットやってるから、怪しい学校(送り出し機関)の情報は知ってますけど、それでも騙される人がいる。(M さん)」

かねてより、外国人実習生による「奴隷労働」を問題視する指摘がなされてきた。 その中で日本政府は、特定とか高度だとか様々な用語を駆使し、低賃金で働く途上国の外国人労働者をなんとか受け入れようと、今も躍起になっている。

そのゆがんだ労働実態に巻き込まれた当事者たちが、道を踏み外しやすくなるのは当然では無いのか。 全国津々浦々、都会のコンビニから僻地農家の庭先にまで、外国人実習生の姿が見られる。 彼らは本当に日本で「高度な技術」を学び、帰国して母国の発展に寄与するような仕事につけているのか。 その答えこそが、今日本国内で目に見えて増えているように感じられる、これらの "事件" ではないのかと強く思う。 それとともに、彼ら外国人と我々日本人の間に壁が作られつつある現実にも不安を覚えるのである。 (ポストセブン = 9-22-19)

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茨城の夫婦殺傷、ベトナム国籍の農業実習生逮捕

茨城県八千代町平塚の住宅で、住人の大里功さん (76) が刺殺され妻の裕子さん (73) が腹などを刺されて重傷を負った事件で、茨城県警は 2 日、裕子さんに対する殺人未遂の疑いで、近くに住むベトナム国籍の農業実習生、グエン・ディン・ハイ容疑者 (21) を逮捕した。 県警は、ハイ容疑者が大里さん殺害にも関与した可能性が高いとみて追及する。 逮捕容疑は、24 日午前 3 時 10 分ごろ、大里さん方で、就寝中の裕子さんの腹部などを包丁で複数回刺したとしている。

現場には血の付いた包丁が残されていたことから、県警は近隣の店舗などの購入履歴を捜査。 事件の数日前に八千代町内のホームセンターで包丁 1 本を購入していたハイ容疑者が浮上した。 県警は認否について明らかにしていない。大里さん夫妻は 24 日午前 3 時 15 分ごろ、自宅で血を流して倒れているのを、別棟に住む次男 (42) に発見された。 大里さんは胸など十数カ所、裕子さんは腹など数カ所を刺され、寝室と縁側付近でそれぞれあおむけに倒れていた。 大里さんの刺し傷の一部は心臓に達しており、司法解剖の結果、死因は心臓損傷による出血性ショックと判明した。 自宅の一部は無施錠でだった。 県警は、無施錠の場所から侵入し、外部から持ち込んだ包丁で夫妻を襲った可能性が高いとみて、近隣の防犯カメラの映像などを調べていた。 (sankei = 9-2-19)


オートバックスで働くフィリピン人技能実習生、新在留資格「特定技能 1 号」を取得

オートバックスセブンは、加盟店契約を結ぶユーエイにて受け入れているフィリピン人技能実習生の 1 名が、新在留資格「特定技能 1 号」の自動車整備分野で国内第 1 号の許可を受けたと発表した。 特定技能 1 号は、国内の労働者不足解消を目的に、2019 年 4 月より創設された新たな就労ビザ。 受入れ業種で適切に働くために必要な知識や技能、日本語能力が必要となる。 特定技能 1 号の許可を受けると、通算で 5 年までの日本滞在が認められる。

今回、特定技能 1 号の許可を受けたフィリピン人技能実習生は、2016 年 9 月より来日し、ユーエイの運営する「スーパーオートバックス KUKI (埼玉県久喜市)」にて、金属塗装職種の技能実習生として受け入れており、ユーエイの支援・指導を受けて、三級自動車ガソリン・エンジン整備士の資格を取得。 また、日本語能力試験では、日常的な場面に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解できる「レベル N2」を取得するなど、技能実習生として積極的に活動をしていた。

フィリピン人技能実習生は、特定技能 1 号における自動車整備分野での技術の水準ならびに日本語能力の要件を満たしており、今回、本人の希望により新在留資格の変更申請を行い、許可を受けた。 本人は特定技能 1 号に移行後も、ユーエイにて引き続き就労する。

オートバックスグループでは、協同組合オートサービス・インターナショナルを通じて、2006 年よりフィリピンのパーペチュアル大学と提携し、技能実習生をオートバックス店舗で積極的に受け入れている。 2019 年 9 月現在では自動車整備職種で約 200 名の実習生が活躍。 今後は本人の希望なども踏まえて、特定技能 1 号への移行者が増加する予定で、同社子会社であるチェングロウスを通じてサポートしていく。 (纐纈敏也、Response = 9-17-19)


日本で中国人実習生が受けたひどい待遇 - 中国メディア

9 月 11 日、環球時報は日本で中国人実習生が受けたひどい待遇について説明する記事を掲載した。 記事は、「多くの中国人が技術を習得し経験を増やすことを夢見て日本へ行くが、日本で悪夢のような搾取に遭っている」と指摘。 英国 BBC の報道を引用して「『外国人技能実習制度』は中国などから日本に労働力をもたらした」と説明し、「多くの報告が同制度が労働者搾取の温床となっていることを示している」と述べた。

記事は、BBC が 3 人の中国人実習生に対して行ったインタビューを紹介。 張(ジャン)さんという女性は、毎日朝 6 時半から夜 12 時まで働き、休日は半年間なかったが、得た収入は現地で認められる最低の収入だけで、しかも 5 万ドル(約 538 万円)が未払いになっていると話したという。 黄(ホアン)さんという男性は、きちんとした指導がなく、機械に手を巻き込まれて指を大けがしたが、このため工場から帰国を要求され、しかも治療も受けることができず、合意書に署名するよう迫られたという。 黄さんは会社に賠償を求めたが、その時会社が破産申請をしていることを知ったという。

また、史(シー)さんという女性は、涙を浮かべながら記者に対し、「深刻なパワハラを受けた。 社長からは『お前は中国人だ。 日本で仕事をするなら、私たちが何を言おうとののしろうと、ただ言うことを聞けばいい。』と言われた。」と語った。 史さんは、飛び降り自殺を図ったこともあり、今でも薬を服用しているという。 その上で記事は、現在日本には 26 万人の外国人実習生がいて、「その多くがきつくて汚くて危険な仕事に従事している」と指摘。 「ある悪徳企業は月に 1 日の休みしか与えず、給与は契約で定めた半分だった」とも伝えた。

BBC は、多くの実習生は日本語が分からず、自身の権利を知ることができないと指摘したという。 記事は、「その多くが、労働力が過度に不足している地域で働かされ、悪夢のような仕事の日々が始まる」と伝えた。 (RecordChina = 9-13-19)

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BBC 「日本の技能実習生は虐待を受けている」 外国人技能実習制度の実態を報道、海外から「日本への尊敬を失った」の声も

BBC が日本の外国人技能実習制度を紹介し、話題になっている。 「『搾取される』日本の移住労働者」というタイトルで 8 月 25 日にサイトで公開された記事は、8 分に渡る動画と共に「日本の技能実習生たちは虐待を受け、危険な環境で働いている」と紹介していた。 レポーターはベトナム人や中国人の技能実習生が集まるシェルターを取材した。 縫製工場で勤務した女性は、「私が初めて工場に来たとき、朝 6 時 30 分から深夜まで働きました。 最初の半年間は 1 日の休みもありませんでした。」と語る。

職場でいじめられ自殺未遂「日本に来なければこんなことにならなかった」

女性は、息子に良い結婚式を挙げさせるため、お金を稼ごうと日本にやってきた。 彼女がこの 1 年、自身が働いた時間を記録し続けてきたノートに則れば、本当なら 500 万円近い金額を稼いでいたはずだとレポーターに明かす。 しかし、残業代は支払われていない。 「給与明細は偽物です」とも話していた。 「脚は腫れ背中は痛み、とても疲れました。 頭痛がし、夜には泣きました。 でも、私の体調が良くないことを知ったら、私は解雇されるだろうと思って、上司に言うのを恐れていたんです。」

他の工場で働くある中国人女性は、職場でのいじめに遭った。 「これ以上生きていきたくなくなった」と自殺を図り、3 か月間入院した。 「日本に来なければこんなことにはならなかった。 彼らが私をあんなにいじめたりしなければ、自殺しようとなんてしなかった。」と涙ながらに語っていた。 「21 世紀に、日本のような豊かな国でこんなことが起きているなんてとても悲しい。」 BBC の公式フェイスブックには、この記事に多数のコメントが付いていた。 「日本でこんなことが起きているなんて信じられない」という声は多い。

「真実を伝えてくれてありがとう。 日本への尊敬を失ったよ。」
「21 世紀に、日本のような豊かな国でこんなことが起きているなんてとても悲しい。」
「日本は特に移民労働者のことになると、ダークな面がたくさんあるよね。」

一方で、こうした搾取は世界中で起きている指摘も多かった。 移民が弱い立場に立たされ、劣悪な環境で働かされているのは資本主義の結果だ、という意見もある。 また、日本の労働環境はそもそも、外国人にとっても日本人にとっても悪い、と主張する人もいた。 「移民だけの話じゃない。 日本では働きすぎて死ぬ『過労死』が問題になっている。 アニメでも、お父さんや旦那さんは家にいないことが多いでしょう? あれは、彼らは働いているからだよ。 厳しいけど、本当のことだ。」

政府は今年 4 月から、単純労働をする技能実習生の受け入れを始めている。 BBC は動画内でこの制度について、「次の 5 年で 34 万 5,000 人が日本に来る」という試算を紹介した上で、「すでにここにいる人たちをどのように扱うか、考え直す必要がある」と指摘している。 (キャリコネ = 8-26-19)

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「コム デ ギャルソン」の下請け会社が外国人実習生に対して違法労働の疑い 英「BBC world」が報道

イギリスの国外向け放送局「BBC world」が、「コム デ ギャルソン」の下請け会社が外国人実習生に対して違法労働を課している疑いがあると報じ、SNS 上で話題になっている。 「バーニーズ・ニューヨーク」も同じ下請け会社を使っている。

「コム デ ギャルソン」は「BBC world」の取材に対して、「従業員の健康や安全に関する法律は守っている」とし、さらに「この下請け業者については関知していない」と答え、外国人実習生の違法労働への関与を全面否定している。 子会社でもなく、取引先のひとつが嫌疑をかけられているだけだが、SNS 上で論争が起きており、元ファッションデザイナーで現在はテーラーの信國太志は、「下請けの雇用実態まで調べるのは無理ですしギャルソンが搾取したわけではありませんよ。 と、100% 擁護します。(* 原文ママ)」と自身の公式ツイッターに投稿している。 (高村学、SeventieTwo = 8-22-19)


技能実習、日立に改善命令 入管庁など 必須業務、2 割だけ

外国人の技能実習生制度をめぐり、法務省出入国在留管理庁と厚生労働省は 6 日、技能実習適正化法に違反したとして、国内電機最大手の日立製作所(東京都)に改善命令を出したと発表した。 関係者によると、フィリピン人 43 人の実習に違反があり、平均すると、国の基準で必須とされた業務時間の 2 割ほどしかさせていなかった。 改善命令は、実習計画の認定取り消しに次いで重い行政処分。 ただ、状況が改善されれば新たな実習生の受け入れは可能で、進行中の計画も継続される。

入管庁は日立の違反内容について、「実習計画で必須業務とされた配電盤や制御盤の組み立てではなく、別の作業をさせていた」と概要だけ発表し、「詳しい内容は差し控える」と具体的な事業所や対象時期を明らかにしなかった。 法務省関係者によると、対象となったのは日立製作所笠戸事業所(山口県下松市)が 2018 年 4 - 7 月、電気機器組み立てを 3 年かけて学んでもらう目的で受け入れたフィリピン人男性 43 人の技能実習。 本来は今年 1 月までの 10 カ月間で、制御盤の組み立てなどの必須業務を計約 900 時間やらせる必要があったのに、多い人で 5 割弱、少ない人で約 1 割しかやらせていなかった。 43 人を平均すると、約 200 時間従事したことになる計算だ。

代わりにやらせていたのが、同社が製造する新幹線の車両に洗面台や椅子、窓、配管などを取り付ける作業だったという。 同庁は違反行為について日立本社側の指示はなかったとみている。 悪質性の程度や改善見通しなどを考慮し、最も重い取り消し処分ではなく、改善命令になったとみられる。 別の法務省関係者によると、実習生らは聞き取り調査に「習得したい技能と違うことをずっとやらされた」と証言。 日立に実習生を紹介した監理団体「協同組合フレンドニッポン(広島市)」に伝えても、何もしてくれなかったと訴えた。 同庁は監理団体が違反を把握していた可能性があるとみて調査している。 この問題は昨年 8 月、朝日新聞の調査報道で発覚し、同庁などが昨年夏から調べていた。(板橋洋佳)

意図的不正ない 日立

日立は改善命令について「すでに改善しておりますが、改めて今回の行政処分を真摯に受け止め、法令順守を徹底して参ります(広報・IR 部)」とのコメントを出した。 必須業務についての認識と確認が不足していたが、意図的な不正はなかったとしている。 (asahi = 9-7-19)

前 報 (10-20-18)


特定技能外国人支援、代行業者が続々 質保てるか懸念も

外国人労働者受入れ側の体制

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1 か月の給料は「マイナス 2 万円」 ある技能実習生の給与明細の衝撃

外国人労働者の実態

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技能実習、違法謝礼横行か 監理団体に及び腰の派遣機関

外国人技能実習制度をめぐり、日本で受け入れを担う「監理団体」が、途上国で実習生を集める「送り出し機関」から違法な謝礼を受け取るケースがあり、問題になっている。 そうした現状の一端が取材で分かった。

「これを見てください。」 技能実習制度の取材で、ミャンマーの人材派遣会社の幹部が見せたのは「裏帳簿」の一部だった。 同社は、実習生を日本へ派遣する「送り出し機関」としてミャンマー政府に認定されている。 裏帳簿は送り出し機関としての記録だ。 書かれていたのは、▽ 派遣手続きの手数料として実習生 4 人から計 1,512 万チャット(約 110 万円)を受け取ったこと、▽ 推薦状作りやビザ申請などの実費を引き、約 1,298 万チャット(約 94 万円)が残ったこと、▽ その半分の約 649 万チャット(約 47 万円)を、実習生を受け入れた西日本の監理団体に払ったこと - - など。

幹部は、この約 47 万円について「監理団体へのキックバック(謝礼)だ。 払いたくないが仕方ない。」と明かした。 これを含めて、昨年は約 20 人分、計 200 万円超を払ったという。 技能実習法は、監理団体は非営利として、手数料や報酬を受け取ることを禁じている。 謝礼は違法だ。 受け取ったとされる監理団体は 7 月下旬、朝日新聞の質問状に「キックバックの授受はありません」と書面で回答したが、それ以上の取材には応じなかった。 一方、ミャンマーやベトナムの複数の送り出し機関も、同様の謝礼の授受があると取材に証言した。

違法な謝礼がやりとりされる主な原因は、送り出し機関同士の競争。 送り出し機関は、実習生を多く送り込めば手数料収入が増えるため、監理団体に少しでも受け入れてもらおうと「袖の下」を使うのだ。 その「財源」は、送り出し機関が実習生からの徴収を認められている手数料。 ミャンマーは 2,800 ドル(約 30 万円)、ベトナムは 3,600 ドル(約 38 万円)と、各国は 1 人あたりの手数料の上限を決めているが、実習生が制度をきちんと理解していないこともあり、しわ寄せで実習生の渡航費用が増える事例もある。 中には、謝礼や接待費を払った上で自分たちの利益もしっかり確保しようと、1 人から 1 万ドル(約 106 万円)超を徴収する送り出し機関もあるという。

実習生の大半は多額の借金をして、送り出し機関への手数料や渡航費を払っている。 返済のため、日本で賃金未払いや長時間労働があっても我慢している。 中には失踪したり、自殺したりするケースもある。 日本は送り出し国と悪質仲介業者を排除する約束をしているが、違法な謝礼は締め出せていない。 実習生を支援している自由人権協会の旗手明理事は「不正資金を最終的に負担するのは実習生だ」と強調。 「監理団体が犯罪行為を犯していることになる。 監督権限がある出入国在留管理庁と税務当局が連携して調査しないと、キックバックはなくならないだろう。」と指摘する。

「罰則対象」でも表沙汰にならないキックバック

技能実習制度の中核をなす外国人技能実習機構によると、同機構に活動を認められた監理団体は約 2,700。 違法なカネをもらっている団体の数は不明だ。 裏帳簿をつけているミャンマーの送り出し機関は「監理団体に契約をもちかけると、半分がキックバックの話を持ち出してくる」と明かす。 同機構は 6 月、「送り出し機関との不適切な関係」について昨年 12 月に出した注意喚起を公式サイトに再掲し、キックバックは罰則の対象だと警告した。 だが、表沙汰になった事例はほとんどない。

取材によると、送り出し機関の多くは謝礼の支払いに不満を持っている。 だが「実態を明かしたら事業免許を取り上げられる」、「日本でのけ者にされる」などと告発に及び腰だ。 一方、違法なカネや接待を拒む監理団体もある。 九州の団体は、これまでに約 40 人のベトナム人実習生を受け入れており、送り出し機関から頻繁に謝礼を提示されてきたが断ってきたという。 団体の幹部は謝礼の問題について、「放置していると、実習生がいつまで日本に来てくれるか分からない。 『日本人はカネの亡者』と思われる。」と話した。 (機動特派員・織田一、岩田誠司、asahi = 8-19-19)