日立、解雇した実習生に賃金補償へ 残り期間 2 年分

日立製作所が笠戸事業所(山口県下松市)で働くフィリピン人技能実習生 40 人に実習途中の解雇を通告した問題で、実習生が加入した労働組合と日立との団体交渉が 19 日、下松市であり、賃金補償で大枠合意した。 実習生は損害賠償請求訴訟を見送る方針だ。

笠戸事業所については法務省や国の監督機関「外国人技能実習機構」が、実習生に目的の技能が学べない作業をさせてきた技能実習適正化法違反の疑いがあるとみて検査している。 このため日立は同機構に新たな実習計画が認められず、実習生 40 人に 9 - 10 月、解雇を通告していた。 日立はこの日、国側から実習中止の処分を受けた場合、残りの実習期間約 2 年分の基本賃金を補償する考えを示し、実習生側が受け入れた。 日立は帰国までの月額数万円程度の生活費も補償する考えを示し、実習生によると、一部を実習生の口座に入金した。

実習生が加入した労組「スクラムユニオン・ひろしま(広島市)」は、日立がこれまでの「実習は適正」との姿勢から譲歩したと評価。 「実習生の基本的な利益を守れた(土屋信三委員長)」と判断した。 「実習生には借金もあり、生活の不安もある」ため、国側の処分が出るまでの生活費の補償水準については交渉を続ける。 9 月に解雇を通告された 20 人は、入国管理局の決定で今月 20 日までの滞在期限が 30 日間延びた。

日立広報・IR 部は「合意に向けて前進したものと認識している。 実習生が、従前と同様に実習が実施できるよう、最大限努力していく」とコメントした。 (橋本拓樹、藤牧幸一、asahi = 10-20-18)

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日立の技能実習生、団体交渉不調なら提訴へ 解雇通知で

日立製作所がフィリピン人技能実習生 20 人に実習途中の解雇を通知した問題で、実習生が加入した労働組合と弁護士らが 8 日、実習生を集めて対応を協議した。 労組が 11 日に日立と団体交渉し、十分な賃金補償などの回答が得られなければ、実習生が日立を相手取って損害賠償請求訴訟を起こす方針を決めた。 この問題は、日立が鉄道車両製造拠点の笠戸事業所(山口県下松市)で働く実習生 20 人に 9 月 20 日付で解雇を通知したもの。

20 人は昨年 7 月に 3 年間の実習のため入国。 しかし、国の監督機関「外国人技能実習機構」が 20 人の 2 年目以降の実習計画を認めていない。 笠戸事業所では実習生に目的の技能を学べない作業をさせている疑いがあり、法務省関係者によると、国や機構は日立について適正な実習ができるか検査中で、新たな計画は認定できないと判断しているという。 20 人は在留資格が技能実習から短期滞在に切り替えられ、現状では今月 20 日までしか日本にいられない。

この日、実習生が入った個人加盟労組「スクラムユニオン・ひろしま」が山口県周南市で集会を開催。 参加した実習生らに日立との交渉経過などを報告した。 弁護士は実習生から実習内容などを聞き取り、解雇を通知された 20 人のうち 15 人から委任状を受け取り、訴訟への準備に入った。 (前川浩之、橋本拓樹、嶋田圭一郎、asahi = 10-8-18)

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日立、技能実習生 20 人に解雇通告 国から認定得られず

日立製作所が、鉄道車両製造拠点の笠戸事業所(山口県下松市)で働くフィリピン人技能実習生 20 人に実習途中の解雇を通告したことが同社などへの取材で分かった。 国の監督機関から実習計画の認定が得られず、技能実習生としての在留資格が更新されなかったため。 実習生は今月 20 日までしか在留できず、帰国を迫られるが、個人加盟の労組に加入し、日立に解雇の撤回などを求めている。

実習生は監理団体「協同組合フレンドニッポン(本部・広島市)」が紹介し、日立が雇用した。 労組や実習生によると、20 人は全員 20 代で、昨年 7 月に 3 年間の実習のため入国した。 今年 9 月 20 日付で在留資格が技能実習から 30 日間の短期滞在に変更され、日立から同日、解雇を通告された。 「解雇予告手当」として月給相当の十数万円が実習生に支払われたという。

笠戸事業所では実習生に目的の技能が学べない作業をさせている疑いがあり、法務省や監督機関「外国人技能実習機構」が 7 月、技能実習適正化法違反の疑いで実地検査した。 技能実習制度では実習生ごとの実習計画に機構の認定を受ける必要があるが、法務省関係者によると、日立については、適正な実習を行えるのか検査中のため、新たな計画を認定できないと判断。 20 人の 2 年目以降の計画も認定できず、在留資格を短期滞在に変更した。 実習生が帰国しても、日立が適正な実習計画を出せば、国は再入国を認めるという。

解雇通告を受けた複数の実習生は朝日新聞の取材に、新幹線の排水パイプ付けなど「本来の『電気機器組み立て』技能が学べない単純作業ばかりだ」と主張。 「突然解雇を言い渡された。 私たちに非はなく、不当だ。」と訴えている。 通告を受けた実習生らは広島市の個人加盟労組「スクラムユニオン・ひろしま」に加入し、救済を求めている。

実習生によると、今回の 20 人を含め年末までに在留資格の更新が来る実習生 99 人に解雇の恐れがあるといい、うち 65 人が同労組に入った。 「日立がいい加減な技能実習をしていなければ、実習生が帰国する事態にならなかったはずだ」として、身分保障や十分な賃金補償がなければ、日立を相手取り訴訟を起こすことも検討している。(前川浩之、橋本拓樹、嶋田圭一郎、asahi = 10-5-18)

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日立も技能実習不正か 目的外の職場に配置の疑い

日立製作所笠戸事業所(山口県下松市)で、一部のフィリピン人技能実習生が、目的の技能が学べない職場で働かされている疑いがあることが分かった。 技能実習制度を所管する法務省は 7 月、技能実習適正化法に違反している可能性があるとみて、国認可の監督機関「外国人技能実習機構」と合同で笠戸事業所を検査した。 法務省は日立と実習生を紹介した団体に対して、同法に基づき改善を求める処分や指導を検討している模様だ。

「安い働き手」技能実習生を企業に紹介 監査する団体

複数の実習生が朝日新聞に実習状況を証言した。 笠戸事業所は鉄道車両の製造拠点で、新幹線や、官民一体で受注した英国高速鉄道の車両製造などを手がけてきた。 実習生によると、フィリピン人実習生が数百人働いているという。 実習生の証言によると、配電盤や制御盤を作る「電気機器組み立て」の習得のために昨春から日立で働いている複数の実習生が、英国向けの高速鉄道や日本の新幹線の車両に、窓や排水パイプ、カーペットやトイレを取り付ける作業しかしていないという。 複数の実習生は法務省と実習機構による聴取にも同じ内容を訴えたという。

国の基準は、電気機器組み立ての技能習得に配電盤や制御盤の加工などを「必須業務」と定めており、窓などの取り付けは該当しない。 法務省は、1 年目に必須業務を一切させない場合は不正行為にあたるとみている。

技能実習を巡っては、三菱自動車と日産自動車で実習生に実習計画外の作業をさせていたことが発覚している。 日立の実習生は、三菱自や日産と同じ「協同組合フレンドニッポン(本部・広島市、FN)」が紹介していた。 FN は国の許可を得て実習状況を監査する「監理団体」で、法務省と外国人技能実習機構は、FN が適正に監査をしていたかどうかも調べている。 (前川浩之、嶋田圭一郎)

日立の広報・IR 部は、朝日新聞の取材に「一部会社(事業所)で監査を受けているが、その内容等については、お答えできない」とコメントした。 FN は「現在、職種不適合になっているといった事実はございません」と文書でコメントした。

実習生の権利保障、議論を

外国人技能実習生を実習計画と違う仕事につかせている疑いはこれまでも指摘されてきた。 日本を代表する大手製造業で相次いで発覚したことで、制度の「建前」と「本音」が大きくかけ離れているとされる矛盾が改めて浮かび上がった。

日本の優れた技術を海外に移転し、国際貢献するというのが 1993 年に始まった制度の建前だ。 だが、実習生を受け入れる現場の多くでは、労働力として活用されている。 建前と本音がずれたままで制度がスタートしたのは、80 年代後半に経済界の要望を受けて外国人の受け入れ政策を検討した際、労働力としてとらえる考え方を政府内で合意できなかったからだ。

実習生は、職場を自由に変えることも家族を呼び寄せることもできない。 一定期間を過ぎれば確実に帰国する。 都合のいい労働力として活用され、対象職種が広がって人数も増えている。 建前と本音のずれが抱える矛盾のしわ寄せを受けているのは、実習生だ。 政府は「移民政策とは異なる」としつつも、来年度にも新たな在留資格を設ける方針。 最長 5 年間の実習を終えた実習生がさらに 5 年間滞在できるようにもする。 労働者としての権利や人権を保障し、待遇を改善する視点で議論する時期に来ている。 (編集委員・沢路毅彦、asahi = 8-23-18)


「いびつな政策の犠牲者」ベトナム人実習生らの相次ぐ死

日本で暮らす外国人留学生や技能実習生が増える中、仕事や生活で追い詰められ、命を落とす若者もいる。 ベトナム人の尼僧がいる東京都内の寺には、そんなベトナムの若者の位牌(いはい)が増え続けている。 外国人が働きやすい環境の整備や暮らしへのサポートが必要だと、専門家は訴える。

東京都港区にある寺院「日新窟」。 棚の上に、ベトナム語で書かれた真新しい位牌がぎっしりと並ぶ。 2012 年から今年 7 月末分までのもので 81 柱。 この寺の尼僧ティック・タム・チーさん (40) によると、その多くが、20、30 代の技能実習生や留学生のものだ。 今年 7 月には 4 人の若者が死亡。 3 人が実習生、1 人は留学生で、突然死や自殺などだった。

7 月 15 日に自殺した 25 歳の技能実習生の男性は、会社や日本に住む弟、ベトナムの家族に遺書を残していた。 塗装関係の仕事をしていたが、「暴力やいじめがあってつらい」とつづられていた。 「寂しい。 1 人でビールを飲んでいる。」と弟に電話があった翌日、川辺で首をつっているのが見つかった。 (平山亜理、asahi = 10-14-18)


JA が外国人実習生など「農業人材仲介」 企業、教育機関と連携

JA グループ福島は、深刻な農業の担い手不足を解消するため、農業分野に特化した人材派遣会社や県内教育機関と連携し、新規就農者を確保する新たな取り組みを始める。 新規就農者に加え、外国人技能実習生の受け入れも支援し、経営の規模拡大を目指して労働力を求める農業法人などとのマッチングを図る。 次期 3 カ年計画(2019 - 21 年度)の地域農業振興戦略に盛り込み、11 月の JA 福島大会で正式決定する。

同グループは 6 日、福島市で有識者らを招いたアドバイザー会議を開き、大会に提出予定の次期 3 カ年計画などの議案を説明した。 従来は生産者が個別に求人するケースが多かったが、同グループが県内全域のネットワークを生かして人材募集の窓口を形成。 就農希望者や外国人技能実習生を県内の農業法人などに紹介する。 受け入れ農家は、将来的に独立を見据える新規就農者に生産技術や経営ノウハウなどを指導し、本県農業を支える人材を育成する。

人材派遣会社との提携では、全国の潜在的な農業人材を掘り起こし、県内での新規就農に誘導する。 農業系高校や県農業総合センター農業短期大学校(アグリカレッジ福島)、来年 4 月に食農学類が開設される福島大の卒業生の就職先として、同グループが農業法人などとの仲介も担う計画だ。 外国人技能実習生については、中国や東南アジアなどからの呼び込みを検討する。

農業は、生産者が採用計画を立てにくい上に、繁忙期だけ働く「季節雇用」など複雑な雇用形態が人材確保の壁となっている。 採用時期の固定化も難しく、意欲のある人材を逃すケースが多い。 このため生産者などから、一元的に情報を発信する枠組みづくりを同グループに求める声が高まっていた。

県内の新規就農者数は、経営規模の拡大などを背景に震災前より増加傾向にあり、県が昨年 5 月から 1 年間を対象に実施した調査では 4 年連続で 200 人を超える見通し。 ただ農業就業人口(15 歳以上)は昨年度、5 万 8,400 人(前年比 5,200 人減)で、新規就農者数を大幅に上回るペースで減少が進んでいる。 JA グループ福島は、次期 3 カ年計画に各 JA の生産部会を加工や外食など販売先に応じて細分化することや、農産物直売所を交流拠点に准組合員の活動を活発化させる方策を盛り込む方向で調整している。 (福島民友 = 10-7-18)


在留取り消し、最多 385 人 … 「留学」が 4 割超

法務省は 28 日、資格外活動などで 2017 年に在留資格が取り消された外国人が前年比 91 人増の 385 人に上り、統計の残る 05 年以降、過去最多だったと発表した。 資格別では「留学」が最多の 172 人(全体の 44.7%)だった。 同省は、留学を名目に就労目的で来日する外国人が増加しているとみている。

同省によると、在留資格別では、留学に続き、「日本人の配偶者等」が 67 人 (17.4%)、通訳などの「技術・人文知識・国際業務」が 66 人 (17.1%) の順だった。 国籍別では、ベトナムの 179 人 (46.5%) が最多で、中国 84 人 (21.8%)、フィリピン 30 人 (7.8%) が続いた。 留学の資格を取り消された外国人の中には、日本語学校などの留学生として来日しながら、アルバイトに明け暮れ、学校に行かないまま除籍になったケースが多い。 17 年に留学の資格で新たに入国した外国人は 16 年比 14% 増の 12 万 3,232 人に上り、留学生自体の増加も影響したとみられる。 (yomiuri = 9-28-18)

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定員超過の専門学校、ベトナム人ら留学生 165 人退学

大阪市の観光系専門学校「日中文化芸術専門学校」で 4 月以降、ベトナム人留学生ら 160 人余りが退学したことが大阪府への取材でわかった。 このうち約 60 人は帰国した。 府などが定員を超えて受け入れているとして改善を求めていた。 府などによると、学校は 2 年制で、「観光・通訳ガイド専攻学科」や「日本語・日本文化学科」がある。 「主に日本人が対象」、「留学生は一部」として、府の認可を受けて 2015 年 4 月に開校した。 17 年の定員は 418 人だったが、同年 5 月で約 560 人が在籍。 多くはベトナム人や中国人の留学生だった。

府は是正を指導したが、今年 5 月時点で前年より多い約 580 人が在籍し、9 割以上が外国人だった。 大阪入国管理局も学校側に定員の超過を改めるよう求めたという。 すると、今年 4 - 8 月に留学生 165 人が退学。 別の専門学校に移った人や就職した人のほか、約 60 人は帰国したという。 定員を超えた受け入れについて、学校側は「新校舎を建てる予定だった」と府に説明。 ただ、府が調べると、外国人に日本語を教える授業などが行われていたという。 学校側は取材に「担当者が不在で答えられない」としている。

退学したベトナム人 7 人は近く学校を相手取り、慰謝料などを求める訴訟を大阪地裁に起こす。 代理人の弁護士は「彼らは通訳や観光業界で働くことを目指していた。 受け入れられない可能性があったのに、学生に知らせずに入学させたことは許されない」と指摘した。 (asahi = 9-25-18)

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在留外国人最多 263 万人 6 月末、技能実習や介護多く

法務省は 19 日、6 月末時点の在留外国人数が 263 万 7,251 人だったと発表した。 2017 年末と比べ 7万 5,403 人増え、過去最多だった。 日本の総人口の約 2% にあたる。 技能実習生や 17 年 9 月に新設した在留資格「介護」による在留者が増えた。 政府は 19 年 4 月に外国人労働者の受け入れ拡大で新たな在留資格を設ける予定で、外国人はさらに増えそうだ。

在留資格別の内訳をみると永住者が 75 万 9,139 人で最も多く、特別永住者(32 万 6,190 人)、留学(32 万 4,245 人)、技能実習(28 万 5,776 人)の順だった。 技能実習は 17 年 11 月に対象職種に「介護」が追加され、受け入れが広がったため、4% 増えた。 国籍別では、中国が 74 万 1,656 人と最も多く、全体の 28% を占めた。 韓国の 45 万 2,701 人、ベトナムの 29 万 1,494 人が続く。 ベトナムやネパールで伸びが目立った。 都道府県別で在留外国人数が最も多いのは東京都の 55 万 5,053 人で、愛知県、大阪府など大都市圏が続いた。

合わせて発表した 1 - 6 月の外国人入国者数は 1,538 万 8,630 人だった。 前年同期から 15% 増えた。 再入国を除く新規入国者数は 16% 増の 1,407 万 3,997 人で、過去最高だった。 「経営・管理」や「技術・人文知識・国際業務」、より専門性の高い高度専門職などの在留資格を取り、就労目的で入国する人が多かった。 観光などの短期滞在も増えた。

これとは別に、観光などを目的に一時的に上陸を認められた外国人は 115 万 4,554 人で、12% 増えた。 中国や台湾、フィリピンなどからクルーズ船で寄港する観光客が増えたためだ。 1 - 6 月の日本人出国者数は 4% 増の 878 万 3,483 人だった。 日本国内の不法残留者数の統計もまとめた。 7 月 1 日時点の不法残留者数は 6 万 9,346 人で、1 月 1 日時点と比べ 4% 増えた。 国籍別では、韓国からの不法残留者が最も多く、次いで中国、ベトナムが多かった。 インドネシアが 31%、ベトナムが 23% と大きく増えた。 (nikkei = 9-19-18)


実習生が覚醒剤密輸疑い 香川、タイから小包送る

香川県警は 26 日までに、覚醒剤の錠剤 192 錠などを密輸したとして、覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)の疑いで、いずれも同県坂出市の農業の技能実習生でラオス国籍のヌーンサウォン・ブンヘン容疑者 (21) と、タイ国籍のシーウドム・ジャックリット容疑者 (33) を再逮捕した。 逮捕容疑は 8 月 8 日、タイから覚醒剤の錠剤や粉末が入った小包を国際郵便で輸入したとしている。

県警によると、ヌーンサウォン容疑者は「自分で使い、仲間にも売るつもりだった」と容疑を認めている。 神戸税関坂出税関支署からの情報提供を受け 8 月に麻薬特例法違反容疑で逮捕していた。 また県警は 26 日までに、同県内かその周辺で覚醒剤を使用したとして覚せい剤取締法違反(使用)の疑いで、ヌーンサウォン容疑者と同居していたラオス国籍の男 (24) と、近くに住むタイ国籍の男 (32) も逮捕した。 いずれも同容疑者らと同様に、農業に携わる技能実習生。 (sankei = 9-26-18)


コンビニ、より外国人労働者を 業界が政府への要望検討

コンビニエンスストア各社などが加盟する日本フランチャイズチェーン協会(会長 = 中山勇・ファミリーマート会長)が、外国人労働者の受け入れ拡大に向けて安倍政権が創設をめざしている新たな在留資格の対象業種にコンビニを盛り込むよう要望することを検討している。 東京都内で 19 日に記者会見した中山氏は「協会のなかで検討中」と述べた。 日本のコンビニで働く外国人労働者は、大手 3 社だけで 5 万人を超える。 大手 3 社の従業員全体の 6% 強にあたり、全国のチェーン店の運営に不可欠な存在になっているが、「大半が留学生(大手コンビニ関係者)」で、原則として週 28 時間までしか働けない。

同協会は、外国人技能実習制度の対象職種にコンビニの運営業務を加えるよう厚生労働省に申請することを検討してきた。 同協会の関係者によると、協会内に新たな在留資格への期待感があることから、コンビニを対象業種に加えるよう要望する方向で調整しているという。 外食企業でつくる日本フードサービス協会も、新たな在留資格の対象に加えるよう要請する方針を明らかにしている。 (末崎毅、筒井竜平、asahi = 9-20-18)


夢に向かって日本の技術吸収 久慈にインドネシア人実習生

久慈市長内町の一沢コンクリート工業(一沢健治社長)で、日本・インドネシア経済協力事業協会(本部・東京)から派遣された 4 人のインドネシア人技能実習生が奮闘している。 「日本に来るのが夢だった」、「日本の技術と日本語を学びたい」と意欲的な 4 人は鉄筋の組み立て技術を学び、日本文化に触れ、夢に向かってひた走っている。

実習生はディカ・スルヤ・アルディアントさん (19)、エム・アナン・サルマン・アル・エフさん (20)、モー・ファリズ・ザムザミさん (19)、モハマッド・イクバル・ラマダンさん (19)。 4 人は日本の高校に当たる専門高等学校を卒業して昨年 11 月に来日した。 日本語習得に向けた研修を経て同年 12 月から同社で実習を開始。 コンクリートを流し込む型枠の組み立てなども学んでいる。 実習は 2020 年 10 月までを予定する。 エムさんは「日本の進んだ技術を勉強したい」と技能実習を希望した理由を語り、モハマッドさんは「帰国後は大学でさらに勉強してビルを建てる仕事に就きたい」と汗を流す。 (岩手日報 = 9-18-18)


残業代は時給 300 円 工場逃げ出した外国人実習生

平成の初め、国際貢献の名目で受け入れた外国人たちはその後、好不況に合わせた雇用の調整弁として都合よく使われてきた。 いま技能実習生と呼ばれる外国人たちが置かれる実態は「共生」にはほど遠い。

人手不足の日本を支える隣人たちと、どう向き合うべきなのか。 スマートフォンの画面にアイロン台が映し出される。 壁の時計の針は午前 0 時 35 分を指していた。 こっそり撮った動画を見せながら、中部地方の縫製工場から逃げ出してきたカンボジア人の女性実習生 4 人が口々に訴えた。 「月曜から日曜までほとんど休みなく、朝 8 時半から深夜まで、ミシンやアイロンをかけさせられていた。 長時間残業しても、残業代は満足に出ない。」

4 人は 8 月中旬、NPO が運営する「外国人労働者救済支援センター(岐阜県羽島市)」に保護を求めてきた。 縫製の技術を学ぼうと来日し、小さな工場で働いていた。 彼女たちの話によると、給料明細書はもらえず、基本給は月 6 万円。残業代は時給で 1 年目 300 円、2 年目 400 円、3 年目 500 円だった。 この地域の最低賃金を下回る。 会社側は否定するが、「それ以上は話せない。」

4 人のうちの 1 人、32 歳の女性は 7 歳になる一人息子を母親の元に残し、2 年前に来日した。 夫と離婚し、彼女の稼ぎが頼りだ。 月 12 万円ほどの手取りは家への仕送りと、来日をあっせんした業者に払った 2 千ドル(約 22 万円)の借金返済でほとんど残らない。 (編集委員・堀篭俊材、asahi = 9-15-18)


介護実習生事業を強化 OS セルナジャヤ 研修センター新設

技能実習生の送り出し事業などを行う OS セルナジャヤ・インドネシアは 10 日、介護実習生の訪日前講習のための研修センターの開校式を東ジャカルタ区チパユンで開いた。 介護実習制度は始まったばかりで、人材が不足する日本の介護現場からの期待も高い。 インドネシア人の派遣は増えていく見通しで、将来的にどう技術移転につなげるかが注目される。

日系企業への人材サービスや経営サポートも手掛ける同社は 2014 年から実習生事業を開始。 4 年間で製造業を中心に計約千人を送り出した。 17 年 11 月に外国人技能実習制度の対象に介護職が追加されたのを受け、看護系学校の卒業生らの募集や選抜、訪日前研修を行ってきた。 訪日前研修はこれまで西ジャワ州レンバンなどの施設を使っていたが、手狭になったことや、介護実習生に対する日本側の関心の高さを受け、研修センターを新設した。 全寮制で約 300 人を収容でき、将来的には年間約千人の送り出しを目指す。

介護実習生は訪日前に日本語能力試験の「N4 (基本的な日本語を理解できる)」相当の取得を求められ、研修センターでは 10 カ月 - 1 年程度かけて日本語と介護の知識を学ぶ。 徳島県などの施設で計 6 年勤めた日本人介護福祉士や、経済連携協定 (EPA) に基づく訪日経験のあるインドネシア人介護福祉士候補生が介護の講師を務める。

EPA 人材がリーダーに

インドネシアからの介護実習生は、第 1 陣となる 19 人が 8 月末に日本に到着したばかり。 OS セルナジャヤでは現在約 100 人の候補生が研修中で、まず 7 人が 9 月末 - 10 月初めごろに日本へ出発する。 受け入れ先は東京都など 3 都県で病院や特別養護老人ホームを展開する新富士病院グループ(本部・横浜市)。 10 日の開校式には中島一彦会長も日本から駆け付け、インドネシアからの実習生を積極的に受け入れていく姿勢を示した。

同グループでは現在も EPA に基づいて介護福祉士の資格取得者や看護師候補生らインドネシア人計 9 人を受け入れており、中島秀彦・経営戦略室長は「狭き門で、滞在期間も限られる EPA と異なり、技能実習は最長 5 年間面倒を見られるというのが利点」と話す。 今後は年間 10 人程度のペースで介護実習生を受け入れていきたい方針だ。

EPA 人材とのすみ分けについては「EPA の国家資格保持者がリーダーとなり、技能実習生の子たちの面倒を見るような形にしたい」と考えている。 また、ムスリムの受け入れにあたり、施設内ではジルバブ(スカーフ)の着用を認め、「外国の方が働いているのでご理解ください」という趣旨の張り紙を設置。 「お祈りスペースを設けるなど(ムスリムの)受け入れ姿勢を整えていきたい」と話す。

「技術移転」を目的にした技能実習制度だが、現状インドネシアには介護施設が少なく、介護実習生の間にも「インドネシアには介護の仕事が少ない」という共通認識がある。 3 年制看護学校出身の実習生タンティ・ソピヤさん (22) は「日本の介護技術を勉強して、帰国後は自分で介護のクリニックを開きたい」と意気込む。 中島室長は「実習生事業を通じて、インドネシアで介護という職業や地位を確立できたらと思っている。 将来的にインドネシアに何らかの(介護)施設を出せれば、」と展望を語った。 (木村綾、じゃかるた新聞 = 9-12-18)

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介護実習生 19 人が小諸到着 インドネシアから受け入れ

昨年 11 月に介護職が追加された外国人技能実習制度を使い、インドネシア人の介護実習生 19 人が 30 日、東信地方で介護事業などを展開する「のぞみグループ(小諸市)」を中心とする「介護施設協同組合(同)」の研修施設に到着した。 国の許可を得た県内の受け入れ団体で、介護実習生を受け入れる初のケースとなった。

実習生は現地の看護学校などを卒業した 18 - 27 歳で、男性 2 人、女性 17 人。 小諸市内で 2 カ月間の初任者研修を受けた後、のぞみグループや大町市、群馬、千葉、神奈川 3 県の計 6 社会福祉法人の施設に分かれて実習する。 実習生の来日には日本語能力試験「N4」級相当の合格が必要。 2 年目に進むには難易度が一つ上の「N3」級相当が求められ、今回の 19 人のうち 13 人は既に合格している。

実習生はこの日午後に小諸市に到着。 バスから降り立つと「とてもうれしい」と笑顔を見せ、関係者に「よろしくお願いします」とあいさつした。 のぞみグループで実習するウスワトゥン・カサナーさん (24) は「日本で介護を学び、母国で介護の学校を建てたい。」 同グループの甘利庸子代表は介護業界で深刻化する人手不足を踏まえ、「海外の人の力を借りながら、実習生が(母国で)リーダーとなれるようにしたい」と話した。 (信濃毎日 = 8-31-18)


外国人の定住施策に抗議殺到 市長「生き残りに必要だ」

人手不足を補う外国人労働者

記事コピー (9-4-18)


インドからの「大波」 技能実習生の派遣本格化、文化の隔たりが課題

人口約 13 億で世界 2 位のインドから、日本への本格的な技能実習生の派遣がこの夏に始まった。 インドは 30 歳未満の若年層が過半数を占め、数字に強くて器用といわれる。 派遣先は製造業が中心でインド政府からは「30 万人派遣」との声もあり、労働力不足の日本の製造業を変える「大波」となる可能性もある。 ただ、両国の文化の隔たりが懸念もはらむ。

第 1 陣は、20 歳前後の元工場労働者ら 15 人。 インド南部チェンナイの IT 企業で約 1 年がかりで日本語などを研修した。 8 月中旬から兵庫県と京都府の電池工場で勤務を開始。 派遣期間は最長で 5 年だ。 実習生のペチ・ムトゥさんは「日本の技術を学んで将来に生かしたい」と話す。

インドでは、同意の際、うなずくのではなく首を横に振る。 多数派ヒンズー教徒は牛を神聖視して牛肉を避け、肉や魚介類を一切食べない菜食主義者も少なくない。 日本の実習生約 27 万人(昨年末)は約 4 割のベトナムを筆頭に中国、フィリピンなど日本文化になじみがある国々の出身だが、欧米志向のインドから日本は遠く、日本人を見たこともない人が大半だ。

インドが派遣を行うのは、人口急増で「毎年 1,200 万人の求職者が新たに増える(現地紙エコノミック・タイムズ)」なか、失業問題が社会不安につながるのを懸念するからだ。 モディ首相は「メーク・イン・インディア(インドで作ろう)」政策を掲げ、製造業の人材育成を促進する。 故郷のインドと比べ、実習生は 5 倍以上の収入を日本で得られるとも言われる。 実習制度では、インド側は自国の若者が日本で働きながら技能を学べ、日本側は少子高齢化で減った労働力確保につながる。

インド政府は、実習生の数を増やしたい考えだが、日本語教師が少ないインドで事前の語学研修を十分に行えるかや、両国のインフラ格差から、帰国後に技術を生かせる職場を確保できるかといった課題は多い。 日本政府当局者は「インド側が、就職困難な若者の安易な受け入れ先として実習制度をとらえるのなら、決して長続きはしない」と指摘する。

また実習制度をめぐっては、日本での違法な低賃金や給与の不払い、長時間労働などが社会問題化している。 日本総合研究所の熊谷章太郎副主任研究員(アジアマクロ経済)は、インドは文化の隔たりだけでなく、労働者の権利意識の高さといった日本との仕事観の違いなどがあると指摘。 「インド人実習生に適した環境を十分に整えなければ、失踪などの問題が多発する恐れがある」と話している。 (チェンナイ = kyodo = 9-2-18)


日本語学校の設置基準を厳格化へ 就労目的の来日防ぐ

海外からの留学生が増えるなか、法務省は 10 月から、「日本語学校」の設置基準を厳しくする。 留学を名目とした就労目的の来日を防ぐのが狙いで、留学生が学業に専念できるよう、1 年間を通じて授業を開講することを義務づける規定などを新設する。

日本語学校は大学や専門学校と異なり、法務省が定めた授業時間などの基準を満たせば学校法人だけでなく、企業や個人でも開校できる。 法務省などによると、今年 8 月時点で全国に 711 校あり、10 年前の約 1.8 倍に増えた。 また、日本学生支援機構によると、昨年 5 月の学生数は約 7 万 8 千人。 5 年前の約 3 倍で、留学生全体の 3 割近くを占めた。

現行の基準は授業時間について、▽ 1 単位 45 分以上としたうえで、▽ 1 週間で 20 単位以上、▽ 1 年間で 760 単位以上 - - などと定めている。 ところが、最近になって 1 週間の授業時間を増やすことで半年程度で年間の授業時間の基準を満たし、残りの期間を長期休業とする開設計画が寄せられた。 留学生は原則、1 週間に 28 時間以内しか働けないが、長期休業期間中は就労が 1 日 8 時間まで認められており、法務省の担当者は「長時間のアルバイトができることを売りにしようとしていたのでは」と話す。

法務省はこうした点を問題視し、新たな基準では、年間の授業が 35 週にわたるよう規定。 また、学校の運営チェック体制強化を促すため、1 人で複数の日本語学校の校長を兼務している場合は、原則として副校長を置くことも求める。 2016 年に新たに不法残留となった留学生約 1,700 人を、所属していた教育機関別にみると、日本語学校が 51% を占めていた。 基準改正の狙いについて、法務省の担当者は「日本語学校は日本語を学ぶための教育の場である、という本来の姿に戻すための環境を整える」と説明する。 (浦野直樹、asahi = 8-31-18)


空き家が大変身 外国人実習生 宿舎 @砺波

6 人入居 企業と地元、利害一致

砺波市柳瀬の空き家が、地元の協力で外国人技能実習生の宿舎に生まれ変わった。 22 日、近くにある受け入れ企業の電子部品製造会社「パナソニック・タワージャズ・セミコンダクター」と家主の間で建物の引き渡しがあった。 23 日から 6 人が入居する。 同社初の実習生で、会社近くで物件を探したがほとんどなく、柳瀬地区に相談した。 地区では 3 年前に空き家を考える会を設置。 市委嘱の空き家コーディネーターもいて、家主との間を取り持ったほか、町会、近隣住民と 2 度の説明会を経て、最終的には不動産業者を間に入れて、家主と同社が賃貸契約を結んだ。

住宅は広さ千平方メートルの敷地に立つ、築約 40 年の木造二階建て。 10 年近く空き家だった。 考える会の住民たちがトラック 5 台分の不用品を搬出し、家主が空き家改修の市の補助金(上限 20 万円)を受け、畳の入れ替えや水回りなどを整備。 会社側が布団やテーブル、冷蔵庫、ロッカーなどの備品を用意した。 会社は定住促進空き家活用補助金として月 1 万円の家賃補助を受けることができる。

地区自治振興会の武波勇二会長は「有効活用のモデルになれば。 地域行事にも参加してほしい。」と期待。 家主の女性は「草刈りが大変で手に余っていた。 地元の優良企業に貸せて良かった。」と笑顔を見せた。 同社の領家一宏砺波人事課長は「地域貢献につながればうれしい。 地域と良好な関係を築いていきたい。」と話した。

同社は魚津市の生産拠点でも実習生を受け入れ、今後、増員する可能性もあるという。 市担当者によると、3 月末で市内には 467 軒の空き家がある。 増加傾向にある半面、売買や賃貸など徐々に有効活用への理解も広がり始めている。 (山森保、中日新聞 = 8-23-18)


ベトナムの実習生も盆踊り 神埼市で岩田盆踊り

第 25 回岩田盆踊り大会が 5 日夜、神埼市神埼町尾崎の岩田地区公民館であった。 今年は初めて、トヨタ紡織九州などで働くベトナム人技能実習生約 50 人が参加。 地元住民と一緒になって盆踊りやスイカ割りを楽しんだ。 村おこしによる地域の活性化を目指して地区住民がソフトボールやバレーボール大会を始めたことがきっかけ。 40 数年前から春に運動会、夏に盆踊りを行うようになり、その後は交互に実施してきた。

今年から、同地区に寮があるトヨタ紡織九州のベトナム人技能実習生などにも参加を呼び掛けた。 子どもから大人まで幅広い世代がラムネ早飲み競争や盆踊り、技能実習生による舞踊などで盛り上がった。 トヨタ紡織九州で働くレディ・ハインさん (20) は「ベトナム衣装を着て踊った。 参加していた人は親切に教えてくれ、踊りやすくて楽しかった。」と笑顔を見せ、「お祭りに参加させてもらえてうれしかった。 また参加したい。」と声を弾ませた。 (佐賀新聞 = 8-16-18)


香川の外国人技能実習生 12 人が結核感染

20 - 30 代の外国人技能実習生の男女 12 人が結核に集団感染し、うち 3 人が発病したと香川県が 9 日、発表した。 重症者はおらず、感染拡大の恐れもないという。 県によると、ラオスから 2 月に来日した実習生の女性が 4 月に健康診断を受けたところ、肺に異常が見つかり、肺結核と診断された。 女性は 1 カ月間、同県善通寺市で研修を受けており、検査したところ、ほかの 11 人の感染も確認された。 12 人は、同県さぬき市や徳島県内の農場など 10 カ所で働いていた。 (sankei = 8-9-18)


技能実習生の失踪 7,000 人 駆け込み寺、元難民が奔走

外国人技能実習生の失踪が後を絶たない。受け入れ先企業とトラブルになり、姿を消すケースが目立つ。人手不足を背景に増加が予想される外国人の就労機会。失踪した実習生の姿からは今後、解決しなければならない課題が見えてくる。福島県郡山市にある実習生の「駆け込み寺」を訪ねた。 JR 郡山駅から車で 30 分ほどの住宅地。 古びた 2 階建ての木造住宅に十数人のベトナム人が暮らしている。 6 月下旬のある日、1 階の和室では数人の若者が教科書を広げ、漢字などの勉強に取り組んでいた。

3 月上旬に入居したというベトナム人女性 (36) に話が聞けた。 2016 年 4 月に来日。 実習先の山形県内の縫製工場での勤務実態は過酷だった。 1 日 14 - 15 時間働いて休日は年に7日だけ。「仕事が遅い」などと責められ、帰国するよう強く迫られたという。 来日費用を払うため銀行から 100 万円ほど借金しており、ベトナムの賃金水準では返済できない。 祖国に残した 10 歳と 8 歳の子供のためにも、日本に残らなければと会社の寮を逃げ出した。

長時間労働、強制帰国の恐怖、上司や同僚からの暴力 - -。 この施設で生活するのは、様々な事情で実習先から避難した 10 - 30 代のベトナム人の男女だ。 岡部文吾さん (36) が経営していた市内の飲食店をたたみ、1 月に受け入れを始めた。 長年空き家だった民家を協力者が提供。 約 100 万円をクラウドファンディングで集め、改修した。 収入がない実習生から食費や宿泊費を徴収するのは難しい。 支援者からの寄付を除けば費用の大半は持ち出しだ。

岡部さんの本名はファム・ニャット・ブンという。 5 歳のとき家族とベトナムを脱出、マレーシアの難民キャンプを経て 8 歳で来日した。 「異国で居場所がない実習生を放っておけなかった。」 だが、一時的な保護は根本的な解決にならない。 多くの実習生は「日本で働き続けたい」と希望するが、技能実習制度では自らの意思で職場を変えることができず、留学生と違いアルバイトも認められていない。

岡部さんらは保護した実習生について入管に通知したうえ、別の職場に移れるよう日本やベトナムの関係機関と交渉している。 これまでに実習先の変更が認められたのは 2 人。10 人以上は新たな実習先が見つからない。 働けない間の生活費を確保しようとハローワークにも掛け合い、4 人は失業手当を受けられるようになった。 ただ、以前の勤務先が申請に必要な書類を出さないなど、手続きが難航することの方が多いという。

実習生側が就労条件などを十分理解しないまま来日したことが原因の失踪もある。 法務省が 17 年に元実習生らに失踪した理由を聞いたところ賃金面の不満が目立ったという。 失踪後に不法就労などで摘発されるケースも少なくない。 施設は既に満員状態だが、岡部さんのもとには SNS などで施設を知った実習生から月 30 - 40 件の相談が寄せられる。 労働力不足解消の一翼として期待される技能実習生。 だが、トラブルを抱えたとき、その立場はあまりにも弱い。 外国人を受け入れる体制の脆弱さが垣間見えた。

失踪者 40% 増 企業の法令違反背景に

法務省の在留外国人統計によると、2017 年末時点で日本にいる実習生は 27 万 4 千人で前年より 20% 増えた。 一方、職場から失踪する実習生も増加傾向。 法務省によると、17 年の失踪者は 7,089 人で前年比 40% 増だった。 厚生労働省は 17 年に調査に入った 5,966 事業場のうち 4,226 事業場で違法残業や賃金未払いなどを確認。 失踪者が増える背景には実習先の法令違反がある。

外国人技能実習機構(本部・東京)は、実習先で不当な扱いを受けた人のために旅館などを一時宿泊先として提供しているが、利用は 7 月 19 日時点で 10 件にとどまる。 外国人労働者問題に詳しい鈴木江理子・国士舘大教授は「機構が宿泊先を提供することが実習生にほとんど知られていないのではないか。 実績のある民間の保護施設と連携することも必要だ。」と指摘した。 (覧具雄人、nikkei = 8-5-18)