新型ノロウイルス、川崎市の研究所が発見 … 国際的に注目

川崎市健康安全研究所の職員らが、激しい嘔吐おうとや下痢を引き起こす新型ノロウイルスを発見し、26 日に市から表彰を受けた。 毒性は従来のウイルスと変わらないが、ほとんどの人に免疫がないため流行する恐れもある。 同研究所の論文は今夏、英専門誌に掲載され、国際的にも注目されているという。 同研究所によると、ノロウイルスは、冬季に引き起こされる感染性胃腸炎の主な原因で、経口感染や飛沫ひまつ感染で広がる。 感染性胃腸炎で死亡した世界の乳幼児の約 10% が、ノロウイルスに感染していたという調査結果もある。

同研究所は昨年 3 月、感染性胃腸炎の疑いがある患者から採取された検体を調べたところ、一部にこれまで検出されたことのない遺伝子配列を発見。 解析の結果、「G2.17」という従来のタイプが変異した新型だとわかった。 今年に入って徐々に検出数が増え、同市では 1 - 6 月に 36 人から検出。 これまで主流だった「G2.4」は 17 人で、その 2 倍強に上った。 昨年夏以降、長野、埼玉、栃木、大阪などで検出され、全国的な広がりを見せているほか、中国、台湾、イタリア、アメリカなど世界各地で確認されている。

この発見は昨年 8 月、ノロウイルスを研究する国際機関が協議し、「G2.P17-G2.17」という新型として認められた。 英国の医科学専門誌「ユーロサーベイランス」も 7 月号に論文を掲載し、関心が高まっているという。 川崎市は 26 日、発見にかかわった同研究所の職員 5 人を市役所で表彰。 表彰状を受け取った松島勇紀さん (31) は「国内だけでなく世界に向けて注意喚起できた」と胸を張り、福田紀彦市長は「日常業務の中で小さな疑問を見逃さず、すばらしい発見をしてくれた」とたたえた。

同研究所は「新型だからこれまでより症状が重いということではない。 従来通り、貝の生食などは感染の恐れがあるので気をつけてほしい。 手洗いの徹底も予防につながる。」と呼びかけている。 (yomiuri = 10-27-15)

前 報 (5-12-14)


エゴマ成分、脂肪肝予防に有効 名古屋市大が発表

飲酒しないのに発症するタイプの脂肪肝の予防に、エゴマの成分が有効であることを、名古屋市立大の研究チームがラットでの実験で明らかにした。 23 日付の英科学誌「カルチノジェネシス」に掲載された。 名市大医学研究科の内木綾助教らのグループは、エゴマなどシソ科の実に含まれるポリフェノールの一種「ルテオリン」に着目。 エサに含ませてラットに与えた。 12 週間後、ルテオリン入りのエサを食べたラットは、摂取していないラットと比べて肝細胞内の脂肪が 10% 少なく、炎症を起こしている肝細胞も約 45% 少なかった。

さらに、非アルコール性脂肪肝炎 (NASH) の状態にしたラットでも実験。 ルテオリンを摂取したラットは、炎症している肝細胞の数、変形して機能が落ちた細胞の数ともに約 30% 少なく、進行が抑えられていた。 NASH の患者は食生活の変化に伴って増えており、肝硬変や肝がんに進行するおそれもある。 内木さんは「ルテオリンの抗酸化作用が肝細胞の炎症などを抑えたと考えられる。 積極的に食事に取り入れることで、脂肪肝の予防や進行の抑制につながる可能性がある。」と話す。 (月舘彩子、asahi = 10-24-15)


万能インフルワクチン、マウスで効果確認 埼玉医大

インフルエンザウイルス A 型の変異に対応できるとする「万能インフルエンザワクチン」の開発を進め、効果をマウスで確認した、と埼玉医大の内田哲也特任教授らのグループが 14 日発表した。 さらに別の動物で効果や安全性を確かめたうえで、人での臨床研究につなげたいという。

現在のインフルエンザワクチンは、A 型と B 型のウイルスの表面にあるたんぱくに対する抗体をつくらせる。 しかし、表面のたんぱくはウイルスのタイプによって異なるため、それぞれに対応するワクチンをつくる必要がある。 さらに同じタイプでも変異が起こるとワクチンが効かなくなる。 内田特任教授らは、変異しやすく患者数が多い A 型の中で、多くのタイプが共通に持ち、変わりにくいウイルス内部のたんぱくを合成してワクチンをつくった。 (福宮智代、asahi = 10-15-15)


臓器移植 : 千葉で脳死の 6 歳未満男児から 4 例目

日本臓器移植ネットワークは 12 日、千葉県内の病院に入院していた 6 歳未満の男児が臓器移植法に基づき脳死と判定されたと発表した。 男児は臓器提供の意思表示をしていなかったが、両親ら家族が脳死判定と臓器提供を承諾した。 15 歳未満の臓器提供を可能にする改正臓器移植法が 2010 年に施行されて以降、脳死判定基準がより厳しい 6 歳未満の脳死臓器提供は 4 例目、15 歳未満は 8 例目となる。

移植ネットによると、男児は病気のため入院中、脳のむくみが急激に進行する「急性脳症」になり、9 日昼ごろに病院で「脳死とされうる状態」と判断された。 家族が同日夕、脳死臓器提供について説明を受けることを希望し、翌 10 日午後 6 時 20 分、両親を含む家族 6 人の総意として心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、小腸の提供を承諾した。 肺と膵臓、小腸は医学的理由により提供が断念された。 心臓は東京大病院で 10 歳未満の男児に、肝臓は国立成育医療研究センターで 10 歳未満の女児に、腎臓は千葉東病院で 30 歳代の女性に移植される予定。

両親は移植ネットを通じ「私たち夫婦は日頃からお互いや子どもに万が一のことがあれば臓器提供しようと話し合っていました。 不幸にもこのような状況になってしまった今も、その判断に迷いはありません。 私たちの選択が誰かの希望になり、そして誰かの幸せの妨げにならないよう、また私たちの決断を静かに受け入れていただけるよう、願う次第です。」などとする談話を発表した。 (須田桃子、mainichi = 10-12-15)


ノーベル医学生理学賞に大村智氏 寄生虫薬開発に貢献

スウェーデンのカロリンスカ医科大は 5 日、今年のノーベル医学生理学賞を大村智・北里大特別栄誉教授 (80)、アイルランド出身で米ドリュー大名誉研究フェローのウィリアム・キャンベル氏、中国出身で中国中医科学院の屠(トゥー)ユーユー氏 (84) に贈ると発表した。 業績は「寄生虫による感染症とマラリアの治療法の発見」。 授賞式は 12 月 10 日にストックホルムであり、賞金の 800 万スウェーデンクローナ(約 1 億 1,200 万円)は受賞者 3 人で分ける。

大村さんとキャンベルさんは、寄生虫病の治療薬「イベルメクチン」の開発が評価された。 「河川盲目症(オンコセルカ症)」はアフリカや南米などの熱帯地方で流行し、患者の 2 割が失明する恐れがあるとされる。 イベルメクチンはこの河川盲目症などの治療に使われ、多くの患者を失明から救った。 日本のノーベル賞受賞は昨年、青色発光ダイオードの発明で受賞した物理学賞の 3 氏に続き 23 人目。 医学生理学賞は利根川進・マサチューセッツ工科大教授、山中伸弥・京都大教授に続いて 3 人目となる。

大村さんは北里研究所抗生物質室長時代の 1974 年、静岡県伊東市のゴルフ場の近くの土から、有望な物質をつくるカビに似た細菌を見つけた。 他の菌とともに共同研究をしていた米製薬大手メルクに送ると、「寄生虫が激減した」と返事がきた。 メルクに所属していたキャンベルさんは、大村さんが見つけた物質の化学構造を変えてイベルメクチンを開発した。 当初はウシやブタなど動物の治療薬として販売されたが、その後、人でも効果があり、失明を防げることが判明。 世界保健機関 (WHO) が河川盲目症の制圧計画を進めた。

屠さんは 60 - 70 年代、マラリアの治療薬を探すため、伝統的な薬用植物を研究。 キク科の薬草から取りだした物質「アルテミシニン」がマラリアの治療に有効であることを示した。 二つの薬は、主にアフリカ地域で年間数億人がかかるこれらの病気の治療に使われ、命を救ったり、失明を防いだりして、健康に貢献している。 大村さんは 5 日夜に開いた会見で「私は難しいことをやったわけではない。 微生物の力を借りながら、できた仕事。 科学者は人のためにやることが大事だ、という思いでやってきた。 それが今回の受賞につながった。」などと喜びを語った。 (asahi = 10-5-15)

おおむら・さとし 35 年山梨県生まれ、58 年山梨大学学芸学部自然科学科卒、63 年東京理科大学大学院理学研究科修士課程修了、山梨大助手。 68 年薬学博士(東京大)、70 年理学博士(東京理科大)。 75 年北里大学薬学部教授。 90 年北里研究所長、07 年北里大名誉教授。 12 年文化功労者、15 年朝日賞。


果糖が腸内細胞で吸収される仕組み解明 京大など

果物や菓子などに多く含まれる果糖が、腸内の細胞で吸収される仕組みを、京都大などの国際グループが解明した。 肥満やがんの治療につながる成果だ。 英科学誌ネイチャー電子版に 1 日発表した。 果糖は、「GLUT5」と呼ばれる細胞の表面にある膜を貫通するたんぱく質を通って細胞の内部に取り込まれる。

従来、細胞膜を貫通するたんぱく質の構造を調べることは難しかったが、京大の岩田想教授(構造生物学)らは、特殊な分子を GLUT5 にくっつける手法で解明に成功。 中央部の空洞には細胞の内側と外側に開く二つの「扉」があり、一度取り込んだ果糖を逃さずに、細胞内に送ることを突き止めた。 GLUT5 は乳がんや膵臓(すいぞう)がんの細胞膜にも多数あり、研究グループの野村紀通助教は「働きを制御できる分子が見つかれば、肥満予防やがんを『兵糧攻め』にできる可能性がある」と話している。 (阿部彰芳、asahi = 10-2-15)


インフルもう流行? 秋は集団感染の季節、学級閉鎖続々

インフルエンザの集団感染で、学級や学年を閉鎖する学校が出始めた。 例年 11 月下旬ごろに流行し始め、翌年 2 月ごろにピークを迎えるが、実は学校での集団感染は秋から起きており、専門家は注意を呼びかける。

「私の経験でここまで早い学級閉鎖はない。」 東京都調布市の柏野小学校の加藤正孝校長は驚く。 14 日に 2 年生の 1 学級の 9 人が発熱やせきなどの症状を訴えて欠席。 このうち 7 人がインフルエンザ B 型と診断された。 他の 5 人にも同様の症状が現れたため、16 日から 2 日間、学級閉鎖した。 松山市の私立の中高一貫校も 4 - 13 日、4 学年で学級閉鎖し、1 学年は学年閉鎖した。 長野県でも先月 31 日に小学校が学級閉鎖した。 (川口敦子、青木美希、asahi = 9-26-15)


STAP 細胞「再現できず」 米中などチームが論文発表

昨年科学界を騒がせた STAP 細胞論文をめぐり、米国や中国などの研究チームが「STAP 細胞は再現できなかった」とする論文をまとめた。 七つのグループがそれぞれ再現に臨んだがいずれも成功せず、STAP 細胞の存在を改めて否定する結果となった。 24 日付の英科学誌ネイチャー(電子版)に発表する。

米ハーバード大のグループは、STAP 細胞論文の共著者チャールズ・バカンティ教授の研究室で再現実験をした。 公表された作製法に従いマウスの細胞を酸などで刺激したが、STAP 細胞の特徴を示すデータは得られなかったという。 他のグループも様々な条件で試み、計 133 回の実験をしたが失敗に終わった。 ネット上に公表された STAP 細胞の遺伝子データについても別の細胞が混じったものと分析。 STAP 細胞の作製法は「再現可能ではない」と結論づけた。 (合田禄、asahi = 9-24-15)


キスの魔法、アレルギーに効果? 大阪の医師ら、イグ・ノーベル賞

世の中を笑わせ、考えさせた研究や業績に贈られる今年の「イグ・ノーベル賞」の発表が 17 日、米ハーバード大であった。 キスをするとアトピー性皮膚炎患者のアレルギー反応が弱まることを示した大阪府寝屋川市の開業医、木俣肇院長 (62) が医学賞をスロバキアの研究者らと共同受賞した。 日本人の受賞は 9 年連続となった。 木俣さんは授賞式には出席せず、19 日にマサチューセッツ工科大である講演会に参加する。 「栄誉あるイグ・ノーベル賞を受賞いたしまして、誠に光栄です」などと声明で述べた。

受賞理由は「情熱的なキスの生物医学的な利益あるいは影響を研究するための実験」。 木俣さんは、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎の患者と健常者 30 人ずつ計 90 人に対し、それぞれの恋人やパートナーと静かな音楽の流れる個室で 30 分間、自由にキスをしてもらった。 キスの前後でアレルギー反応の強度を調べる皮膚テストや血中成分を測定したところ、改善傾向がみられた。 2 週間後、今度は同じカップルにキスをせずに部屋で 30 分抱き合ってもらったが、効果は確認されなかった。

事務局によると、25 周年となる今年のテーマは「ライフ(生命)」。 関連する 10 分野から受賞者が選ばれた。 主な内容は、▽ 哺乳類の排尿時間は体の大きさにかかわらず平均 21 秒前後と判明(物理学、米・台湾)、▽ 「はぁ?」に相当する感嘆詞がすべての言語にあることを発見(文学、オランダなど)、▽ 17 - 18 世紀のモロッコの君主が 888 人の子どもを産ませた史実を数理解析で検証(数学、オーストリア・ドイツ)、▽ ハチに全身 25 カ所を刺させて痛みの強弱を調査(生理学・昆虫学、米・カナダ)。 (ケンブリッジ = 米マサチューセッツ州 = 小林哲、asahi = 9-18-15)


5 大がん、5 年生存率は 64.3% 全国網羅の初データ

国立がん研究センターは 14 日、5 大がん(胃、大腸、肝臓、肺、乳房)の全国規模での 5 年生存率を発表した。 宮崎県を除く全国 46 都道府県の 177 のがん診療拠点病院で 2007 年にがんと診断された患者延べ約 17 万人を 5 年間追跡した。 全国を網羅したデータは初めて。 全がんの 5 年生存率は 64.3% で、部位別では胃 71.2%、大腸 72.1%、肝臓 35.9%、肺 39.4%、乳房(女性のみ) 92.2%。 (asahi = 9-14-15)


脂肪肝、血液検査で簡単に診断? カギの物質発見

飲酒しないのに発症する肝炎・非アルコール性脂肪肝炎 (NASH) かどうか、血液検査だけで簡単に診断できるかもしれない。 大阪大の三善英知教授(機能診断科学)らは、NASH の度合いを測る血液中の物質を見つけた。 NASH は進行すると肝硬変になるおそれがある。 国内には約 100 万 - 200 万人の患者がいると推定されているが、症状が出にくく、診断には肝臓の一部を切り取って調べる必要があることが課題になっている。

三善さんらは体内で作られるたんぱく質と鎖状の糖「フコース」が結合した物質に注目。 様々な脂肪肝の患者 506 人の血液を調べたところ、NASH の患者の血液中で、この物質の量が増えていることがわかったという。 病状によって量が異なることもわかった。 三善さんは「血液検査で NASH が診断ができるようになるだけでなく、治療効果を測ることもできるのではないか」と話している。 (今直也、asahi = 9-12-15)


米で今秋「女性版バイアグラ」発売へ

米政府の食品医薬品局 (FDA) は 8 月 18 日、女性の性欲を増進する初めての処方薬を承認した。 政策決定の背景には、女性の性的ニーズを無視するのはジェンダー・バイアス(性的偏見)だとして FDA を批判してきた圧力団体のキャンペーンがあった。

この薬は製薬大手スプラウト・ファーマシューティカルズの商品名「Addyi (アディ)」で、性的な欲求の衰えや欠落を治療する薬剤としては米国で初めて承認された。 男性用の性機能改善薬バイアグラなどは勃起力や、ある種の男性ホルモンの欠陥を治療する薬だが、性欲を増進するものではない。 アディの承認を求めてきた人たちの多くは、「Even the Score (イーブン・ザ・スコア = 対等に)」と名乗るキャンペーンの連合体に加わっている。 性生活を改善する薬剤は、男性用には何種類も承認されているのに対し、女性用は要望にもかかわらず手つかずだったと言っている。 (The New York Times = 9-11-15)


卵巣がんに新治療法が効果 京大、免疫細胞をアシスト

京都大は 9 日、ほかの治療法が効かなくなった卵巣がん患者に、免疫力を高める新しい治療法を試し、20 人中 3 人で効果があったと米科学誌に発表した。 卵巣がんは 6 割以上が進行した状態で見つかり、抗がん剤などで治療しても 6 割以上で再発する。 がん細胞には、免疫細胞からの攻撃を逃れる仕組みがあるため、この仕組みを妨げて免疫細胞に攻撃を促す治療法が研究されてきた。

小西郁生教授(産科婦人科)らは、患者 20 人を対象に、がん細胞が免疫を止めるのを妨げる薬剤「ニボルマブ」を 2 週間ごとに最長 1 年間使った。 その結果、2 人でがんが完全に消え、半年経っても再発していないという。 別の 1 人はがんが 3 割以上小さくなった。 (阿部彰芳、asahi = 9-9-15)


食べて骨を健康に ミカンともやし、生鮮初の機能性食品

浜松市の JA みっかびが出荷する温州ミカン「三ケ日みかん」と、岐阜県中津川市の野菜メーカー、サラダコスモの「大豆イソフラボン子大豆もやし」が、健康への効果を表示する機能性表示食品として販売される。 消費者庁が 8 日、届け出を受理したと発表した。 果物や野菜などの生鮮食品が受理されたのは初めて。 いずれも「骨の健康に役立つ」と包装に表示する。

JA みっかびは浜名湖北部の農協で温州ミカンの生産が盛ん。 地元の大学などが温州ミカンの健康効果を研究しており、色素成分のβ-クリプトキサンチンが骨の代謝の働きを助けるというデータを届け出た。 11 月から出荷する。 サラダコスモのモヤシは大豆イソフラボンが多く含まれており、特に更年期以降の女性が食べると骨の成分を維持する働きがあるというデータを届け出た。 10 月 7 日から販売する。

4 月に始まった機能性表示食品制度は、事業者が科学的な根拠を国に届け出れば、国の審査なく健康への効果をパッケージなどに表示できる。 8 日時点で 81 品が受理されている。 特定保健用食品(トクホ)では認められていない生鮮品も届け出が可能だ。 (毛利光輝、asahi = 9-8-15)


オキシトシン投与、自閉スペクトラム症に改善効果

発達障害の一種で、相手の意図をくみ取ることが苦手な自閉スペクトラム症患者のコミュニケーション障害が、ホルモンの一種「オキシトシン」で改善することが行動や反応で確認されたと、東京大の山末英典准教授(精神医学)らが英科学誌に発表した。 効果が実際の対人場面で確かめられたのは初めてという。

オキシトシンは脳で分泌され、陣痛や母乳分泌を促す薬として使われている。 研究チームは、自閉症の男性患者 20 人に、オキシトシンと偽薬を 1 日 2 回 6 週間、鼻に噴霧して効果を比べた。 患者へのインタビューや、パズルやゲームを共同で行った際の表情や視線、会話などをチェックして点数化し、判定した。 その結果、オキシトシンを噴霧した方が、重症度を示す数値が偽薬より約 2 割低かった。 (yomiuri = 9-6-15)


補助人工心臓の治験、子供 9 人全員生存 東大公表

東京大は 29 日、ドイツの医療機器メーカー、ベルリンハートが開発した小児用補助人工心臓「EXCOR (エクスコア)」の国内での臨床試験(治験)で、装着した子供 9 人全員が現在まで生存し、健康状態の改善にも効果があったとする結果を公表した。 治験の一部の成績を基に厚生労働省は 6 月に国内販売を承認、8 月からは保険適用されている。

東大と大阪大、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)で治験を実施。 平成 24 年 8 月から今年 4 月にかけて、おおむね 1 カ月で死亡するとみられる重症の心不全を患う 0 - 13 歳の 9 人に装着する手術を行った。 装着期間は平均 250 日以上で、全ての子供が生存。 重い合併症が出た子供もいたが、生活に支障がない程度にまで回復した。 9 人のうち 5 人はすでに心臓移植を受けたとしている。 補助人工心臓は、心臓のポンプ機能を支援する形で体外に装着し、移植を待つ間のつなぎとして使われる。

東大の小野稔教授(心臓外科)は「日本のあらゆる地域で、心不全の子供の命を救う治療を進めたい」と話し、新たな治療施設の認定に向けた作業を進めていることを明らかにした。 小児用の補助人工心臓をめぐっては今年 1 月、未承認のため EXCOR を使えなかった 6 歳未満の女児が脳死となり、両親が早期承認を求めるコメントを発表。 厚労省は「医療上の必要性が極めて高い」として優先的に審査を実施した。 (sankei = 8-30-15)


「人食いバクテリア」感染が過去最多 劇症化なら死亡も

致死率が約 3 割とされ、「人食いバクテリア」とも呼ばれる劇症型溶血性レンサ球菌感染症に感染した患者の今年の報告数が、調査を始めた 1999 年以降、最多となった。 国立感染症研究所(感染研)が 25 日に発表した速報値では、16 日時点で 284 人。 東京都(45 人)や大阪府(28 人)、神奈川県(20 人)の順で多くなっている。 感染研によると、これまで最多だったのは昨年 1 年間の 273 人。 今年は 8 月 9 日時点でこれを超えた。

原因となるのは主に A 群溶連菌で、子どもを中心に咽頭(いんとう)炎やとびひを起こすことで知られる。 この菌が傷口から入って感染すると、38 度以上の発熱や、手足が赤く腫れて壊死(えし)することがある。 多臓器不全などで数日で死亡することもある。 劇症型の患者は 30 代以上が大半を占める。 劇症化する仕組みはよくわかっていない。 感染研によると、12 - 14 年に報告された患者の 29% が死亡したという。 東京女子医科大の菊池賢教授(感染症科)は「通常は抗菌薬が効く。 ただ、急に悪化する場合があるので、腫れが広がるようならすぐに医療機関を受診してほしい。」と話す。 (南宏美、asahi = 8-25-15)


ジャガイモやトマト枯らす病害虫を国内初確認 北海道網走

農林水産省は 19 日、ジャガイモやトマトなどの農作物を枯らす病害虫「ジャガイモシロシストセンチュウ」を北海道網走市内の数カ所の農場で確認したと発表した。 農作物に大きな被害を与える恐れのある「重要病害虫」に指定されており、国内での確認は初めて。 同害虫はインドや欧州、米国などに広く分布する線虫の一種で、国内への侵入経路は不明。 農水省は「土壌の消毒を徹底するなどでまん延を防ぎ、価格への影響が出ないようにしたい」としている。 (nikkei = 8-19-15)


手足口病、過去 10 年間で 2 番目に多い報告数 - 国立感染症研究所が発表

国立感染症研究所はこのほど、最近の感染症の発生状況をまとめた「感染症発生動向調査」を公表し、手足口病の感染者が増加していることを明らかにした。 手足口病はエンテロウイルスやコクサッキーウイルスを原因とする病気で、手や足、口内などを中心に水疱(すいほう)を伴った発疹が出ることが特徴。 37 - 38 度の発熱や喉の痛み、食欲の低下などの症状が出る。 乳幼児に発症例が多く、潜伏期間は 3 - 6 日間、症状は 2 - 4 日間ほど続くとされている。

国立感染症研究所によると、全国約 3,000 カ所の小児科定点医療機関から報告される患者数は、2014 年第 44 週以降は過去 5 年間の平均と比較して多い状態が続いていた。 2015 年に入ると第 23 週(6 月 1 - 7 日)頃から急増。 第 29 週(7 月 13 - 19 日)には、定点当たり報告数が 10.16 となり、全国での患者数が 3 万 1,920 人となった。 この数値は、過去 10 年間で最も報告数が多かった 2011 年第 28 週の定点当たり報告数 11.0 (報告数 3 万 4,216)に次いで多いという。

地域別にみると、最近は東日本での患者数が増えているという。 定点当たり報告数の上位 10 位に入る東日本の都道県数は、第 26 週((6 月 22 - 28 日)が 3 県、第 28 週(7 月 6 - 12 日)が 4 県、第 29 週(7 月 13 - 19 日)が 7 都県と増加している。 第 31 週(7 月 27 - 8 月 2 日)の手足口病の定点当たり報告数は 10.26 で、前週 (9.38) より 1 近く増加。 都道府県別では、宮崎 (19.61)、新潟 (19.59)、宮城 (18.73)、山形 (18・67) が同期間中の上位となっている。 なお、東京都は 14.09、大阪府は 11.26 と比較的高い数値となっている。 (MyNavi = 8-12-15)


難治の胆道がん、進行遺伝子特定 国立がんセンター

国立がん研究センターのグループは、胆管がんと胆のうがんの遺伝子解析を大規模に実施し、がんの原因となる遺伝子異常を 32 個見つけた。 2008 年に始まった国際がんゲノムコンソーシアムの一環として、日本が解析を担当した。 有効な治療法が確立していない難治がんの治療法開発につながると期待される。 11 日、米専門誌ネイチャージェネティクス電子版に発表する。

肝臓でできた胆汁を十二指腸に運ぶ胆管や胆のうなどのがんをまとめて胆道がんとよぶ。 グループは、260 人の患者の組織を解析した結果、胆道がんの進行に重要な役割を果たす遺伝子異常の 32 個を特定した。 そのうち 14 個については、肺がんや乳がんなど他のがん用に、その遺伝子の働きの異常を抑える薬(分子標的薬)が開発されている。 今回調べた胆道がん患者の約 4 割は、14 個のうちの 1 個以上の遺伝子異常をもち、分子標的薬が効く可能性があることがわかった。 18 個についても、将来は、治療薬開発が進む可能性もある。

今後、新たな分子標的薬の開発が進む可能性がある。 また免疫の働きを上げる薬の開発が進んでおり、胆道がんに効く可能性も示された。 (瀬川茂子、asahi = 8-11-15)


カラコン色素露出 10 製品、健康被害調査へ 厚労省研究班

瞳を大きく見せたり色を変えたりするカラーコンタクトレンズ(カラコン)を厚生労働省研究班が調査した結果、国内で承認を受け市販されている 17 製品のうち 10 製品で、酸化鉄などの色素成分が表面に露出していたことが分かった。 うち 4 製品は角膜側への露出が確認され、残りの 6 製品はまぶた側だった。 また、一部製品は「着色はレンズ内部」と、調査結果とは異なる表示をしていたという。 今回の調査では色素露出と健康被害との関係は調べていないが、カラコン使用者には目の不調を訴える人も多いとされ、研究班は今後、目にどのような影響を与えているのかを調べる方針。

研究班によると、精密機器の汚染測定などに使われる特殊な質量分析計を初めて使用。 従来の光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡による解析では、解像度や感度の不足などでレンズ表面への色素露出を科学的に判定できなかったという。 昨年秋時点で市販されていた製品のうち 17 製品を調査した結果、10 製品のレンズ表面から酸化鉄や酸化チタンなどの色素成分を検出した。 度が入っていないおしゃれ用カラコンは 2009 年まで雑貨品扱いで品質や販売に規制はなかったが、目の健康被害の報告が多発。 酸素を透過しにくい素材でできたレンズや、着色剤が影響しているとの見方があった。

このため厚労省は、視力補正用のコンタクトレンズと同様に医薬品医療機器法(旧薬事法)で規制される「高度管理医療機器」に指定。 製造・販売に国の承認などが必要となったが、国民生活センターが昨年 5 月に公表した調査で品質が疑われる事例が報告されたため、研究班が調べていた。 研究代表者で国立医薬品食品衛生研究所医療機器部の〓(は草かんむりに配)島由二(はいしまゆうじ)室長は「研究で科学的根拠に基づいた試験法を示せたのは非常に有益。 メーカーはこの成果を活用し、安全なレンズ作りに取り組んでほしい」としている。 (東京新聞 = 8-8-15)

前 報 (5-23-14)


睡眠時無呼吸症候群で血圧急上昇 3 割が 160 以上に

睡眠時無呼吸症候群で呼吸が止まったときに血圧が 160 以上まで上昇する人が 3 割に上ることが自治医科大(栃木県)とオムロンヘルスケア(本社・京都府)の共同研究でわかった。 同大循環器内科の苅尾七臣(かずおみ)・主任教授は「脳卒中や心筋梗塞(こうそく)、突然死を引き起こす可能性がある」と指摘する。

睡眠中に呼吸が止まって血液中の酸素量が低下したときにそれを検知して自動で血圧を測る血圧計を開発。 全国 25 の医療機関で、睡眠時無呼吸症候群の男女約 1 千人(30 - 80 代)の睡眠中の血圧を測った。 その結果、約 3 割の人で血圧が 160 以上になり、呼吸は 1 回につき約 2 分止まっていた。 呼吸が長く止まる人や高齢者ほど血圧が上昇しやすく、中には 216 まで上がった人もいた。 昼間や夜間の平均血圧でみれば正常でも、無呼吸時に血圧が急上昇している人もいたという。 (富田洸平、asahi = 8-5-15)


子どもの両手移植に成功 米フィラデルフィア子ども病院

米ペンシルベニア州のフィラデルフィア子ども病院は、病気で両手を失った男児 (8) に、別の子どもの両手を移植する手術に成功したと発表した。 手の移植は、大人では成功例があるが、難易度が高い子どもでは初めてという。 病院によると、この男児はメリーランド州ボルティモアに住むザイオン・ハービーくん。 両手の提供者については公表していない。 ザイオンくんは 2 歳のとき重い敗血症にかかり、両手と両足のひざから下を切断する手術を受けた。 足には義足をはめて自力で歩けるようになったが、両手は手首から先がないまま生活していた。 (ワシントン = 小林哲、asahi = 8-3-15)


身長 3 センチ低くなったら … 骨粗しょう症要注意

整形外科医で NPO 法人高齢者運動器疾患研究所の石橋英明代表理事が 24 日、BS 日テレの「深層 NEWS」に出演し、骨粗しょう症について解説した。 石橋氏は、寝たきりにつながる骨粗しょう症について、「気づかないうちに背骨が折れている人が多い」と指摘。 発症を知るためのチェック項目として、〈1〉 若い頃より身長が 3 センチ以上低くなった、〈2〉 日光にあたる時間が 1 日 10 分未満 - - などを挙げた。 予防のために「肉や魚、牛乳などで必要な栄養をとり、スクワットや片方の足で立つ運動をすることが大切」と訴えた。 (yomiuri = 7-24-15)


英グラクソ開発の世界初マラリアワクチン、EU 当局が利用推奨

[ロンドン] 欧州連合 (EU) の医薬品規制当局である欧州医薬品庁 (EMA) は 24 日、英製薬大手グラクソ・スミスクライン (GSK) が非営利団体と共同開発した世界初となるマラリアワクチンについて、アフリカの乳幼児向けの利用が承認されるべきとの見解を示した。 EMA の推奨を受け、世界保健機関 (WHO) が評価を行う。 WHO は同ワクチンがいつどの地域で利用されるべきかのガイダンスを年末までに示すとしている。

「RTS, S」または「モスキリックス」と呼ばれるこのワクチンは、グラクソと非営利団体である PATH・マラリア・ワクチン・イニシアティブが共同で開発。 ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ基金も一部出資している。 グラクソは同ワクチンで利益は得ないと表明しており、製造コストに 5% の利ざやを上乗せして価格を設定する予定。 利ざやはマラリアなど熱帯地方でまん延している疾病の研究に再投資する。 (Reuters = 7-24-15)


喫煙による糖尿病リスク、禁煙 10 年で解消 5 万人調査

たばこを吸っていると、糖尿病にかかるリスクが高まる一方、禁煙を 10 年以上続ければリスクは吸わない人と変わらなくなる - -。 国立国際医療研究センターなどのグループが、そんな報告をまとめ、22 日付の米科学誌で報告した。 禁煙による糖尿病の予防効果を大規模調査で確認したのは珍しいという。

関東などに本社のある八つの企業に勤める男女約 5 万 4 千人について、喫煙状況を含む健診データを提供してもらい、その後を 4 年間ほど追跡した。 この間に約 2,400 人が、生活習慣も原因とされる 2 型糖尿病を発症していた。 肥満の度合いといった、糖尿病の発症にかかわるほかの要因が影響しないようにして解析したところ、たばこを吸う人では吸わない人に比べ、1 日に 11 - 20 本の人で 36%、21 本以上の人では 50%、2 型糖尿病にかかるリスクが高かった。 (田村建二、asahi = 7-23-15)


アトピーの慢性化、原因は神経系細胞 治療薬開発めざす

アトピー性皮膚炎のかゆみが慢性化、重症化するメカニズムを九州大などのチームがマウスの実験で解明した。 原因となる神経系の細胞を突き止め、この細胞の働きを抑えるとかゆみがおさまることを確認。 九大はかゆみを鎮める治療薬の開発をめざすという。 21 日付米科学誌(電子版)で発表する。

アトピー性皮膚炎では、かゆみを感じてひっかくことを繰り返し、皮膚炎が悪化する。 ステロイド剤を塗ったり皮膚を保湿したりして炎症を抑えるのが現在の標準的な治療法。 最近、かゆみを伝達する神経などが相次いで発見されているが、慢性化するメカニズムは分かっていない。 そこでチームは、神経系の細胞や物質に着目。 アトピー性皮膚炎を起こしているマウスで実験したところ、神経系の「グリア細胞」の働きが活発化していた。 また、過度にひっかいて皮膚炎が悪化し、さらに強いかゆみを生じるといった「悪循環」に陥ったマウスほど、グリア細胞が活性化していた。 (小林舞子、asahi = 7-21-15)


食物アレルギー、悪化防ぐ物質発見 根本的な治療に期待

食物アレルギーの原因となる細胞が増えるのを抑える物質を、東京大の村田幸久(たかひさ)准教授らの研究チームがマウスの実験で見つけ、英科学誌ネイチャーコミュニケーションズ(電子版)に発表した。 人の体内にもある物質で、村田さんは「この物質を利用すれば、対症療法ではなく、食物アレルギーの根本的な治療方法の開発につながる可能性がある」と話している。

食物アレルギーは消化管などで増える「マスト細胞」が原因。 この細胞は、体内に食べ物が入ると、ヒスタミンなど炎症を起こす物質を出す。 研究チームは、こうした物質と一緒に放出されるが、すぐに消える「プロスタグランジン D2 (PGD2)」という生理活性物質に着目。 遺伝子操作で、この物質を作れるマウスと作れないマウスをつくり、比べた。

実験の結果、PGD2 を作れないマウスは、作れるマウスに比べ、マスト細胞の数が約 3 倍に増え、皮膚の腫れや下痢といった症状が悪化した。 研究チームは、PGD2 がマスト細胞の増加を抑え、症状の悪化を防ぐ働きがあると結論づけた。 どのような仕組みでマスト細胞の増加を防ぐか研究を進める。 厚生労働省などによると、食物アレルギー患者は国内では全人口の 1 - 2%。 子どもに多く、成長ととも治る場合も多いが、大人になっても続く場合もあり、発症が遅いと治りにくいとされる。 有効な治療法は確立されておらず、命にかかわることもある。 (富田洸平、asahi = 7-18-15)


C 型肝炎の新薬承認 患者の 7 割占める 1 型対象

厚生労働省は 3 日、製薬会社ギリアド・サイエンシズの C 型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠(一般名 : レジパスビル・ソホスブビル配合剤)」を承認した。 日本の C 型肝炎患者全体の約 7 割を占める遺伝子タイプ 1 型が対象。 飲み薬で高い効果が期待され、注射薬インターフェロンが不要になるという。 この新薬は、患者の約 3 割を占める 2 型を対象にした同社のソバルディ(一般名 : ソホスブビル)に、別の成分を組み合わせたもの。 1 型の新薬として承認申請していた。 1 日 1 錠を 12 週間飲む。

同社によると、臨床試験(治験)では患者 157 人に使われ、全員でウイルスが確認されなくなったという。 今後、保険適用や価格決定の手続きを経て、秋までには販売される見通し。 1 錠 6 万 1,799 円のソバルディより高額になる可能性がある。 患者団体「東京肝臓友の会」の米沢敦子事務局長は「一日も早くと待ち望んでいた。 患者にとっては朗報。」と話す。(武田耕太、asahi = 7-4-15)


認知症予備軍、血液から判定へ 特定たんぱく質を測る

血液中の特定のたんぱく質を測ることで、アルツハイマー型認知症の予備軍とされる軽度認知障害 (MCI) がわかる可能性が出てきた、と筑波大学などの研究チームが 26 日発表した。 アルツハイマー病は、脳にアミロイドβというたんぱく質が蓄積することが原因とされる。 しかし、たまり始めるのは、認知機能の低下によって生活に支障が出る約 20 年前からという。

内田和彦准教授によると、2001 年から茨城県利根町で始まった高齢者約 1,900 人を対象にした調査で、長期的に追跡できた約 900 人を分析。 3 年ごとに実施された血液検査のデータを調べると、認知症や MCI の人は認知症でない人と比べ、アミロイドβを脳内から排出したり、その毒性を弱めたりする働きがある 3 種類のたんぱく質の量が少なくなっていた。 (寺崎省子、asahi = 6-27-15)


新型出生前検査 1 万 7,886 人 … 開始から 2 年で

妊婦の血液を採取して胎児の病気の可能性を調べる新型出生前検査を受けた人は、検査開始から今年 3 月までの 2 年間で、1 万 7,886 人に上ったことが分かった。 陽性と判定された 297 人のうち、人工妊娠中絶をしたのは 223 人。 残りは胎児が死亡するなどし、妊娠継続を希望したのは 4 人だった。 検査を行う大学病院などの共同研究組織が発表した。 新型検査は、胎児の染色体の数の異常をもとに、ダウン症(21 トリソミー)、18 トリソミー、13 トリソミーの三つの病気を調べる。 妊娠・出産を望む女性の年齢が上がっており、検査を受ける人は増加傾向にある。 (yomiuri = 6-27-15)

前 報 (6-28-14)


大腸がん防ぐ仕組み発見 京大、炎症起こす分子特定

京都大は 22 日、大腸がんを引き起こす炎症のカギとなる分子を特定したと発表した。 発がん物質を与えたマウスでこの分子の働きを抑えると、がんをほとんど発症しなかった。 新たながん予防薬の開発につながる可能性がある。

大腸がんは、がんによる死亡率では女性で 1 位、男性で 3 位。 がんは体内で炎症が起きると、がん細胞の増殖を促す分子などが放出され、発症につながると考えられている。 解熱鎮痛剤のアスピリンが大腸がんを予防する効果があることが確認されているが、炎症を抑える仕組みは不明で、飲み続けると胃腸で出血するなどの副作用も課題だ。

京大医学研究科の成宮周特任教授らは、マウスで「EP2」という情報伝達役の分子が大腸で炎症を増幅させることを確認。 大腸がんを起こす化学物質を飲ませたマウスに、EP2 の働きを抑える化合物を 80 日間与えると、ほとんどがんが生じなかった。 EP2 は、アスピリンが体内で働く複数の経路のうちの一つで情報伝達を担っており、成宮さんは「EP2 だけを抑えてやれば、より安全で高い予防効果が期待できる」と話す。 成果は米科学誌キャンサーリサーチ電子版に掲載された。 (阿部彰芳、asahi = 6-23-15)


麻薬オキシコドン、米では鎮痛剤で普及 乱用が社会問題

逮捕されたトヨタ自動車の米国人女性役員が輸入したとされる麻薬成分「オキシコドン」を含む錠剤は、米国では一般に「オキシコンチン」などの薬品名で、鎮痛剤として広く使用されている。 錠剤は 1990 年代に製品化され、手軽で効き目が長続きすることから、けがや歯痛など慢性的な痛みを和らげる痛み止めとして利用されている。 医師の処方箋(せん)があれば、街頭の薬局で手に入り、似た成分を含む廉価版の代替品などもでまわっている。

一方、乱用が社会問題にもなっている。 米メディアによると、錠剤を砕いて鼻から吸うなどすると、麻薬のヘロインと似た陶酔感がある。 入手しやすく、地方での乱用が問題になったことから「田舎のヘロイン」などとも呼ばれる。 著名人の乱用も話題になることが多く、2009 年に亡くなった人気歌手マイケル・ジャクソンさんが常用していたと報道された。 (ワシントン = 小林哲、asahi = 6-20-15)