中国軍、23 年に台湾侵攻想定した演習 米インド太平洋軍幹部が指摘

[シドニー/キャンベラ] 米インド太平洋軍のスティーブン・スクレンカ副司令官(海兵隊中将)は 23 日、中国人民解放軍が 2023 年に台湾海峡で実施した軍事演習で台湾侵攻を想定した演習が行われたと指摘した。 海上・上空の封鎖、上陸作戦、他国軍の介入への対応などを想定した訓練を実施したと述べた。 ただ中国軍の侵攻が差し迫っているわけでなく、不可避でもないとの見解も示した。 オーストラリア・キャンベラの記者クラブで述べた。

20 日に台湾で頼清徳氏が新総統に就任し、中国は 23 日から台湾周辺で軍事演習を開始した。 スクレンカ副司令官は、中国の軍事演習は、22 年から続けている台湾への圧力の一環だとし、かつてはめったになかった台湾の防空識別圏侵入が今や常態化していると指摘した。

習近平国家主席が 27 年までに台湾侵攻の準備を整えるよう軍に指示したことは真剣に受け止める必要があるとしたものの、攻撃は避けられないものでなく、差し迫ったものでもないとした。 「インド太平洋地域での紛争がどれほど壊滅的なものか、いくら強調しても足りない」とし「過去 80 年間、比較的平和で安定した国際秩序を維持してきた。 だからこそ、我々は紛争を防ぐために協力する必要がある。」と述べた。

アジア太平洋で海洋進出を活発化させる中国は、南シナ海でフィリピンと対立している。 スクレンカ氏は、中国は「過剰で、違法で、修正主義的な」海洋権益を追求するため、自国船を使って周辺国に嫌がらせや強要を繰り返していると述べた。 今月初め、黄海でオーストラリア軍ヘリコプターの周辺に中国軍機が照明弾を投下した。 スクレンカ氏は、同様な妨害行為を 21 年以降、およそ 300 件検知していると述べた。 (Reuters = 5-23-24)


中国軍の最新空母「福建」が初の試験航行 「4 隻目」は建造の情報も

中国軍の 3 隻目となる最新型の空母「福建」が 1 日、初の試験航行を始め。 中国国営中央テレビ (CCTV) などが伝えた。 2022 年 6 月の進水以来、空母が常に 1 隻は任務に当たる 3 隻態勢に向けた準備が着々と進んでいる。 CCTV の報道によると、福建はこの日朝に上海郊外の長江河口付近にある埠頭を離れ、東シナ海の海域に向かった。 この海域では、軍事活動を理由として、9 日まで無関係の船舶の進入を禁止する通告が中国の海洋当局から出ており、試験航行は数日間にわたるもようだ。/p>

国営新華社通信は、試験航行では主に艦の動力や電力、その他のシステムの信頼性と安定性をテストするとしている。 香港紙サウスチャイナ・モーニングポストによると、中国軍の空母は就役までに約 10 回の試験航行を重ねており、同紙は専門家の見方として、福建は試験航行に少なくとも 1 年間かかるとみられると伝えた。

すでに就役の 2 隻の動きは

福建は、旧ソ連製をウクライナから購入し改修した「遼寧(12 年就役)」、初の国産空母「山東(19 年就役)」に続く 3 隻目。 就役すれば、3 隻が「任務、訓練、整備」のローテーションを組む態勢が整う。 福建は最大の特徴として、平らな甲板に電磁カタパルト(射出装置)を備える。 これにより、早期警戒や対潜水艦などの任務に当たる様々なタイプの艦載機の発着が可能になるとされ、駆逐艦など他の艦艇と編成する空母打撃群としての作戦遂行能力の向上にもつながるとみられている。

今回の試験航行を伝える映像では甲板上に艦載機は確認されておらず、発艦や着艦のテストにはなお時間を要する可能性がある。 福建の投入は台湾有事も念頭に置いたものとされ、台湾当局も強く警戒する。 海南島に拠点をおく山東も活動を活発化させており、台湾海峡やバシー海峡、南シナ海などへも航行し、演習などを展開している。 遼寧は 3 月、1 年間の整備・改修を終えて試験航行に入ったと環球時報が報じた。

習近平(シーチンピン)指導部は「今世紀半ばまでに世界一流の軍隊を築き上げるよう努める」としており、中国軍が 35 年までに空母 6 隻態勢を目指すとの観測もある。 今年 3 月には、海軍幹部が空母 4 隻目の建造を認める発言をしたとして「近く発表される」との見方が出ている。 (北京・畑宗太郎、asahi = 5-1-24)


中国海警局、台湾が設定の「禁止水域」を航行 漁船事故で圧力強める

台湾が実効支配する金門島沖で台湾海洋当局の取り締まりから逃れようとした中国漁船が転覆し、2 人が死亡した事故を機に、中国海警局が周辺海域で圧力を強めている。  公船の進入などを繰り返し、台湾当局が島の周りに設定した「禁止・制限水域」の無効化を図る狙いとみられる。

乗組員「台湾船に衝突された」 中国漁船転覆めぐる応酬、収束見えず

中国海警局は 15 日、金門島の南沖でパトロールを実施したと発表。 同局の航路図によると、海警局の船は島まで最短 3 カイリ(約 5.5 キロ)まで接近した。 一方、台湾の海洋当局は同日、海警局の船 4 隻が「禁止・制限水域」に南西側から入ったと説明。 さらに、16 日午前にも 4 隻の進入を確認し、退去するよう呼びかけを続けたという。 台湾の中央通信社が伝えた。

中国国営中央テレビ傘下の SNS ニュースアカウントは 15 日、海警のパトロールの様子として、乗組員が「出港した港と目的港を告げよ」などと無線で呼びかける様子を収録した短い動画を公表した。

事故の補償めぐる交渉は決裂

この海域では、2 月 14 日に中国漁船が転覆し、乗組員 2 人が死亡。 これ以降中国側は「いわゆる『禁止・制限水域』など存在しない(国務院台湾事務弁公室)」と主張し、公船によるパトロールや演習を相次いで展開。 台湾メディアによると、海警船は 2 月末にも「禁止・制限水域」に入った他、台湾の観光船への臨検も実施した。 中国側はこうした事実を積み重ねることで、「禁止・制限水域」の無効化を図るとともに、民進党政権への圧力を強める狙いがあるとみられる。

一方、発端となった事故をめぐる中台の間での解決は見通せていない。 双方は、亡くなった乗組員の遺族への台湾側による謝罪や見舞金の支払いなどをめぐって交渉を十数回にわたり続けたが、3 月 5 日に決裂し、遺族は中国に戻った。 周辺海域では今月 14 日にも中国漁船が座礁、転覆し、2 人が死亡、2 人が行方不明となった。 この際は中台双方の当局船が共同で捜索・救助活動を進めたため、中台関係のさらなる緊張を招くような事態にはなっていない。 (北京 = 畑宗太郎、asahi = 3-16-24)


プーチン大統領、台湾めぐり「危険な挑発に反対」 習氏と電話会談

中国の習近平(シーチンピン)国家主席は 8 日、ロシアのプーチン大統領と電話会談した。 中国外務省は、プーチン氏は台湾をめぐって「中国に対するいかなる危険な挑発行為にも反対する」と述べたと発表した。 同省によると、プーチン氏は「中国の平和的統一を妨げるいかなる試みも成功しないと信じている」とも述べた。 プーチン氏の台湾を巡る発言としては従来より一歩踏み込んだもので、 発表には 1 月の台湾総統選で勝利した民進党政権への外交的圧力を強め、同政権を支持する米国を牽制する狙いがあるとみられる。

一方、ロシア大統領府の発表では、プーチン氏の台湾を巡る発言としては、「台湾問題について『一つの中国』政策を支持するという原則的立場を確認した」とするにとどまった。 中国外務省の発表によると、プーチン氏は昨年 10 月の習氏との首脳会談では台湾について「世界に中国は一つしかなく、台湾は中国の不可分の領土だ。 中国が国家主権や領土の一体性を守ることを支持する」としていた。 (北京・畑宗太郎、asahi = 2-9-24)


中国軍艦 4 隻、台湾の四方にも常時展開 … 台湾有事で米軍接近を阻止する狙いか

中国が、台湾周辺の四方に軍艦 4 隻を常時展開させていることがわかった。 平時から台湾に軍事的な圧力をかけ、台湾有事の際には、中国が東シナ海上空に一方的に設定した「防空識別圏 (ADIZ)」の境界線付近に常時展開する軍艦とも連動し、米軍などの接近を阻止する狙いがあるとみられる。 複数の日本政府関係者が明らかにした。 中国は 2022 年 8 月、ナンシー・ペロシ米下院議長(当時)の台湾訪問に激しく反発し、台湾周辺で大規模な軍事演習を行った。 この頃から、主にフリゲート艦 4 隻が常時展開するようになったという。

4 隻は、日本最西端の沖縄県・与那国島周辺に 1 隻、与那国島とフィリピンの間に 1 隻、台湾の南西と北の海域にそれぞれ 1 隻ずつ配置されている。 このほか、同県の尖閣諸島北西にも 1 隻が常時展開しているという。 尖閣諸島北東の海域を巡っては、中国 ADIZ の境界線付近に、複数の中国軍艦が常時展開していることが明らかになっている。 尖閣周辺では、三方が中国軍艦によって包囲されている状態だ。 中国は、尖閣は台湾の一部だと主張している。 中国が台湾侵攻に踏み切った場合、尖閣有事も同時に起きる可能性が指摘されている。

中国は、自国周辺での他国の軍事活動を制約する「接近阻止・領域拒否 (A2AD)」能力の強化を進めている。南西諸島とフィリピンを結ぶ「第 1 列島線」の内側に米軍を進入させないことを目指す戦略だ。 第 1 列島線は、中国 ADIZ の境界線付近や台湾周辺の東側で常時展開する中国軍艦の位置とほぼ重なるという。 中国は 22 年 8 月の演習で、台湾の四方に弾道ミサイルを発射し、尖閣周辺にも着弾させたほか、与那国島南方の日本の排他的経済水域 (EEZ) 内にも落下させた。 香田洋二・元自衛艦隊司令官は「日本に隙が生じれば、中国が今後、力を使って尖閣諸島に手を出してくる可能性は十分ある。 日本は、万全の態勢で備えておく必要がある。」と強調する。 (yomiuri = 1-29-24)

台湾有事 = 中国と台湾が武力衝突する非常事態。 中国は台湾統一に向けて、武力行使も辞さない考えを示している。 中国が偽情報を流布するなどの「認知戦」を展開し、ミサイルやサイバー攻撃などで重要施設を攻撃したうえで、台湾に上陸するなどのシナリオが想定されている。


台湾市民の 67% が「自分は中国人ではなく台湾人」と認識
 若い世代や女性が高い傾向、「正真正銘の中国人」の回答は 3%

米国の独立調査機関「ピュー・リサーチセンター」は 1 月 16 日、台湾の世論調査を発表した。 それによると、台湾の市民のうち「中国大陸の中国人と同じく、自分は正真正銘の中国人」と思っている人は全体の 3% しかいないことが明らかになった。 全体の 67% は「自分は台湾人」と答えており、「台湾人であり、中国人でもある」との回答は 28%、無回答が 2% だった。 調査は台湾総統選挙前の昨年 6 月 - 9 月に電話で実施されており、回答者数は 2,277 人。 ロイター通信が伝えた。

この調査では、35 歳未満の成人の 83% は「台湾人」と答えており、若い世代はほとんどが、自分は台湾人と認識していることが分かった。 一方、性別では女性の 72% が「台湾人」と答えており、男性の 63% に対し、女性の方が「自分は台湾人である」と思っている傾向が強い。

1 月に行われた総統選挙では、独立志向が強い民主進歩党(民進党)の頼清徳候補が、親中色の強い国民党の侯友宜候補を破った。 頼氏は約 558 万票に対して、侯氏は約 467 万票で、頼氏が侯氏に約 90 万票の差をつけて当選した。 これを調査結果と比べてみると、台湾ではアイデンティティと政治が密接に結びついており、自分を台湾人だと考えている人々は民進党に同調する傾向が強く、逆に自らを「中国人でもあり、台湾人」、あるいは「中国人」と思っていると答えた人は国民党寄りといえそうだ。

このほか、「中国という国にどれくらい愛着を感じるか」という質問では、全体の 11% が「とても思い入れがある」と答えているが、32% は「まったく愛着がない」と回答した。 その一方で、全体の約 80% が「中国の軍事力と影響力が台湾にとって大きな脅威」とみなしており、これは年齢層や政治的立場を問わず全体的に共通していた。 (News Post/Seven = 1-28-24)


中国外務省、ブリンケン氏の祝意「強烈に不満」 台湾への干渉に反発

13 日に投開票された台湾総統選で民進党の頼清徳(ライチントー)氏が当選したことに米国のブリンケン国務長官が祝意を表したことをめぐり、中国外務省は14 日、「強烈に不満で、断固として反対する」とする報道官談話を発表した。 米国に厳正な申し入れをしたとしている。 談話は米国の行動が「『一つの中国』の原則や中米の合意への重大な違反だ」として、米側が台湾とは非公式な関係しか結ばないとする政治的な承諾にそむいている、と批判した。 その上で、「台湾問題は中国の核心利益の中の核心」であり、米国にとっても越えてはならない「レッドライン」だ、とする主張を繰り返し、米国に台湾への干渉をやめるよう求めた。

ブリンケン氏は 13 日の声明で、「頼氏と共通の利益と価値を促進し、非公式の(米台)関係を前進させるために協力することを楽しみにしている」と述べていた。 日本など各国が出している選挙結果への祝意に対して、中国は現地の大使館が反発のメッセージを出しているが、外務省本省が非難したのは米国だけとなっている。 (北京 = 斎藤徳彦、asahi = 1-14-24)


頼清徳氏が当選会見 「台湾海峡の平和と安定は重要な使命」

13 日投開票の台湾総統選で、当選を決めた民進党の頼清徳(ライチントー)副総統が記者会見し、「台湾海峡の平和と安定は、総統の重要な使命だと思っている」と語った。 また、「台湾は今後も民主主義陣営の仲間とともに歩いていく」と述べた。 頼氏は中国との対話について「将来、健全で秩序ある交流が復活できることを祈っている。 中国も両岸(中台)の安定には責任を負っている。」と述べた。 一方で、立法院(国会に相当)では、民進党が過半数を維持できない見通しだと明らかにした。 「(議会で他党と)話し合い、連携すべきだと考えている」と語った。 (asahi = 1-13-24)


中国との関係は民意で決定すべき、台湾総統が年頭会見

[台北] 台湾の蔡英文総統は 1 日、総統府で年頭の会見を行い、台湾と中国との関係は民意によって決定されるべきで、平和は「尊厳」に基づくものでなければならないと述べた。 中国の習近平国家主席は新年の演説で台湾との「統一」は必然と述べていた。 蔡総統は、習主席の演説について問われ、中国との関係をどのような方向に導くかについて、最も重要な原則は民主主義だとし、「これは台湾人民の共同意思によって決定される。 つまりわれわれは民主的な国だ。」と述べた。 そのうえで、中国は台湾での選挙結果を尊重すべきで、海峡の平和と安定を維持することは双方の責任だと指摘した。

中国は 1 月 13 日の総統・立法委員(国会議員)選挙を戦争か平和かの選択と位置付けている。 蔡総統を分離主義者とみなし、対話を拒否している。 防衛力強化を優先課題とする蔡総統は「どこの家にも鍵がついている。それは隣人を刺激するためでなく、自らの安全のためだ。 国の扉も同じだ。 台湾の人々は平和を望んでいるが、尊厳ある平和を求めている」と述べた。 (Reuters = 1-2-24)


豪フリゲート艦に中国艦艇が接近、探知用の音波原因か豪の隊員が耳を負傷 … 日本 EEZ 内

オーストラリア国防省は 18 日、日本の排他的経済水域 (EEZ) で 14 日に活動していた豪フリゲート艦に中国艦艇が接近する危険な行為があったと発表した。 中国艦艇が用いた探知用の音波が原因とみられる軽傷を豪フリゲート艦の隊員が負ったとして、中国政府に深刻な懸念を表明した。 発表によると、豪隊員が潜水し、絡まった漁網を取り除く作業中に中国艦艇が接近した。 豪側は潜水活動中で近づかないよう伝えたが、艦艇は止まらず音波を使ったという。 豪公共放送 ABC によると、隊員は耳を負傷したという。 (ジャカルタ支局・川上大介、yomiuri = 11-18-23)


中国艦船が比巡視船妨害 1 メートルの距離まで接近

【シンガポール = 森浩】 フィリピン沿岸警備隊は 6 日、南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島のアユンギン(同・仁愛)礁で、比巡視船の航行が、中国海警局の船に妨害されたと発表した。 中国船は巡視船から約 1 メートルという至近距離まで接近したといい、沿岸警備隊は国際法に違反する危険な行為だと非難した。 妨害行為があったのは 4 日。 沿岸警備隊によると、補給船の警護に当たっていた比巡視船が、中国海警局の 4 隻の船と、中国の海上民兵が搭乗していたとみられる 5 隻の船に航行を遮られたという。

中国海警局の船は巡視船の正面を横切っており、巡視船は衝突を回避するため、動力を逆回転させて急停止した。 アユンギン礁は、フィリピンが 1999 年、領有権主張のために軍艦を意図的に座礁させて軍事拠点化した。 南シナ海のほぼ全域の領有権を主張する中国は軍艦の撤去を求めているが、比側は拒否。 中国は今年 8 月にも同礁付近で比補給船に放水するなど、妨害行為を繰り返している。 (森浩、sankei = 10-7-23)


台湾、中国軍機 103 機確認 「破壊的」活動停止を要求

[台北] 台湾国防部(国防省)は 18 日、前日から台湾周辺に非常に多くの中国軍機が飛来していると明らかにした。 中国軍の動きは緊張を急激に高めかねないとし、「破壊的で一方的な行動」をやめるよう求めた。 国防部によると、17 日以降、「最近では最も多い」 103 機の中国軍機を洋上で確認。 この 24 時間に中国軍機は台湾海峡の中間線を越えたり、台湾とフィリピンを隔てるバシー海峡を通過したりしたと説明した。

国防部は声明で、前日からの中国の行動は、台湾海峡と地域の安全保障に対する「深刻な挑戦」と表明し、海峡の平和と安定は、この地域の全ての当事者の共通の責任であるとした。 「共産党軍による継続的な軍事的嫌がらせは、緊張の急激な高まりと地域の安全保障の悪化につながりやすい。 中国に対し、責任を取り、このような破壊的な一方的行動を直ちにやめるよう求める」と述べた。 先週、国防部は、例年 7 月から 9 月は、中国軍の沿岸部での軍事演習が最も活発になると指摘。 中国がこの地域で空軍力を強化しているとの見解を国防報告書で示した。 (Reuters = 9-17-23)


中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗組員全員死亡説も

<米台接近を牽制するための軍事演習を繰り返すなか、中国最強の攻撃型原子力潜水艦が台湾海峡で乗組員全員死亡の重大事故に遭ったという未確認情報が浮上した。>

中国政府が台湾やアメリカに対する「重大な警告」として、台湾周辺で軍事演習を始めてから数日。 中国の原子力潜水艦が、中国本土と台湾を隔てる台湾海峡で重大事故に見舞われたという未確認情報が入った。 インターネット上に出回っている情報によれば、中国が保有する 093 型(商級)攻撃型原子力潜水艦が過去数日のどこかで、詳細不明の重大事故に見舞われたという。 乗組員は全員死亡、とする報道もある。

中国政府は台湾を自国の一部と見なしており、いずれは再統一すべきだと考えている。 しかし民主主義体制を樹立している台湾は長年、中国からは既に独立していると主張し、西側諸国との連携を試みてきた。 中国当局からは、台湾海峡で中国の潜水艦が困難な状況に陥っていることを認める正式な発表はない。 中国国防省が 8 月 22 日に行った記者会見でも、この問題についての言及はなく、中国国営通信も一切この問題を報じていない。 台湾当局も、一連の報道を確認していない。 台湾国防部の報道官は、22 日に台湾の報道機関が放送した定例会見の中で、台湾の軍と政府は潜水艦の事故があったという証拠を入手しておらず、一連の報道の裏を取ることはできなかったと述べた。 本誌はこの件について中国国防省にコメントを求めたが、返答はなかった。

確実な証拠はまだない

潜水艦に詳しいアナリストの H・I・サットンは 22 日、X (旧ツイッター)への投稿の中で、一連の報道を裏づける「説得力のある証拠はまだ一つもない」と述べた。 英シンクタンクの国際戦略研究所 (IISS) によれば、中国は商級の攻撃型原子力潜水艦を 6 隻保有している。 サットンは 2020 年に「(攻撃型原子力潜水艦は)中国海軍が保有する中で最も一般的な潜水艦ではないが、現在のところ最も強力な潜水艦だ」と書いている。 潜水艦事故をめぐる一連の報道に先立ち、中国は台湾周辺で大規模な軍事演習を実施していた。 中国と台湾、アメリカの間では、何カ月も前から緊張が高まっていた。 アメリカは「一つの中国」政策の下、台湾と正式な関係は結んでいないものの、台湾との間で「非公式の強固な関係」を維持している。

中国はこのところ、台湾周辺で軍事演習を繰り返しており、2022 年 8 月にナンシー・ペロシ米下院議長(当時)の台湾訪問を受けて行った軍事演習もその一つだ。 4 月には台湾の蔡英文総統とケビン・マッカーシー現米下院議長の会談が行われた後、台湾周辺で数日間にわたって軍事演習を行った。 中国国営の新華社通信の報道によると、台湾方面を管轄する中国軍の東部戦区は 19 日、台湾周辺でのパトロールのほか、海軍と空軍合同の軍事演習を実施。 東部戦区の報道官は、「空域と海域の掌握」のために合同で訓練を行ったと説明。 一連の訓練は、台湾当局と「外部勢力およびその挑発」に対する「重大な警告」だと述べた。

台湾国防部は 23 日に X への投稿の中で、同日の午前 6 時(現地時間)頃に、台湾周辺の空海域で中国軍の航空機 6 機と艦船 8 隻の活動を検知したと公表。 この前日には、中国軍の航空機 15 機と艦船 10 隻を確認したと公表していた。 (NewsWeek = 8-24-23)


中国軍、台湾海峡と南シナ海で「攻撃性増大」 米がリスク警告

[ワシントン] 米ホワイトハウスは 5 日、中国の台湾海峡と南シナ海における行動は、中国軍による「攻撃性の増大」を反映しているとし、誰かが傷つくようなエラーのリスクが高まっていると警告した。 米国は増大する攻撃性に対処するための準備を整えており、国際空域と海域で活動を継続するとした。 米海軍は駆逐艦チャンフーンが台湾海峡で中国艦に接近された際の映像を公開。 米軍の発表によると、台湾海峡で 3 日、中国軍の艦艇がカナダ(豪?)海軍との共同訓練を実施していたチャンフーンに約 140 メートルまで接近した。

ホワイトハウスのカービー報道官は中国の行動に言及し、判断ミスが起こり誰かが傷つくまでにそれほど時間はかからないだろうと記者団に述べた。 空と海の航行の自由を守るため、米国は引き続き立ち向かうとした。 「中国が行動を正当化するのを聞いてみたいものだ」と述べ「空と海での妨害は常に起きている。 われわれもそれを行うが、違いは必要と判断した際にプロフェッショナルに行っていることだ」と指摘した。 (Reuters = 6-6-23)


台湾海峡で米軍艦に接近 中国軍艦、140m の距離

【シンガポール】 米インド太平洋軍は 4 日までに、中国軍艦が台湾海峡を通過していた米海軍のミサイル駆逐艦チャンフーンに約 140 メートルの距離まで接近したと発表した。 インド太平洋軍は声明で、中国軍艦の行為は危険で「国際水域で安全に航行するという海上のルールに違反する。」と批判した。 声明によると、チャンフーンは現地時間 3 日、カナダ海軍のフリゲート艦モントリオールと共に台湾海峡を南から北に通過していた。 中国軍艦は、チャンフーンの船首から約 140 メートルの距離を横切るなどし、チャンフーンはコースを維持しながら衝突を避けるために減速した。 (kyodo = 6-4-23)


「台湾海峡で紛争なら壊滅的」 米国防長官、会談応じない中国に懸念

「アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ、英国際戦略研究所主催、朝日新聞社など後援)」で 3 日、オースティン米国防長官が演説した。 「台湾海峡で紛争があれば壊滅的だ」と地域の安定の必要性を訴えた上で「中国が(米中)両軍の危機管理に向けたよりよい仕組みについて、真剣に取り組んでこなかったことを深く懸念する」と述べた。 シンガポールでの今回の会議にあわせて米側が提案した米中国防相会談に応じなかった中国側を改めて批判するものだ。 ただ、中国の姿勢が「近く変わることを望む」と期待感もにじませ、対話への意欲を強調した。

英紙フィナンシャル・タイムズは 2 日、複数の米当局者から提供された情報をもとに、米中央情報局 (CIA) のバーンズ長官が 5 月、秘密裏に中国を訪問していたと報じた。 米政権が偶発的な衝突を避けるため、中国側との意思疎通に前向きであることを改めて示す狙いがうかがえる。

オースティン氏は、経済・軍事手段を組み合わせながら周辺国への圧力を増す中国に対し、「自由で開かれたインド太平洋」を掲げ、同盟・友好国と連携していく意思も強調した。 ロシアのウクライナ侵攻にも触れ、「大国が平和な隣国を平然と侵略すれば、この世界がどれほど危険なものになるかを人々に知らしめた。 無秩序の危険性と混乱の代償を、私たちに見せつけた」と指摘。 強引な海洋進出を続ける中国を暗に牽制した。

中国側は演説に反発「いつでも戦える準備」

オースティン氏と李尚福国務委員兼国防相は会談は見送ったが、前夜の夕食会では握手し、短く言葉を交わした。 完全な交渉の途絶を印象づけるのは避けたものの、オースティン氏は「握手は実のあるやりとりの代わりにはならない」と語った。 李氏はロシア製戦闘機などの調達に関わったとして 2018 年に米国の経済制裁の対象になり、中国は会談に応じる条件として解除を求めたとされる。 オースティン氏は「対話は何かに対する報酬ではなく、必須のものだ。 話せば話すほど危機や紛争につながりかねない誤解や誤算を避けることができる。」と述べた。

日韓両国についても「より緊密に連携するための大胆な措置を重ねていることに敬意を表する」と言及した。 「日韓の強い結びつきは、両国にとってもこの地域にとってもよいことだ」と歓迎の意を示し、日米韓での定期的な軍事演習や情報共有の強化などを通じて、連携が「大きな進歩を遂げた」と述べた。

一方、中国側は景建峰・連合参謀部副参謀部長が現地で記者会見し、オースティン氏の演説での中国批判に「断固たる反対」を表明。 台湾問題をめぐっては「緊張を高めているのは米国だ」と批判し、「中国軍はいつでも戦える準備をし、国家の主権を断固守る」とした。 国防相会談の見送りについては、米国が李氏への制裁解除に応じなかったことを踏まえ、「環境をつくらなかった米国に責任がある」と主張した。 (シンガポール = 下司佳代子、畑宗太郎、asahi = 6-3-23)


後方乱気流で偵察機が揺れる 中国軍機が米軍機に異常接近

コロンビア特別区 - 米国防総省は、南シナ海上空で米空軍偵察機の鼻先をかすめて飛ぶ中国軍機の映像を公開して、「不必要に攻撃的な」飛行だったとして、中国を非難した。 インド太平洋軍司令部は声明で、中国軍の J-16 戦闘機が 5 月 26 日、南シナ海上空を飛行中の米軍 RC-135 偵察機の機首をかすめるように飛行。 後方乱気流で偵察機が揺れるほど接近したと、中国機の無謀な行動を非難した。 声明で米軍は、「国際法の範囲内で、米国は安全かつ責任ある飛行、航行、作戦を継続する」と発表した。 (AP = 5-31-23)


台湾武力統一に関する中国人への調査が意外な結果に - 仏メディア

仏国際放送局ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)中国語版は22日、中国本土人を対象に行われた台湾統一に関する調査が意外な結果になったと伝えた。

記事はまず、「中国当局の口ぶりでは中国人のほぼ 100% が台湾武力統一を支持しているかのようだが、先日発表された調査研究によると、中国人の態度は千差万別であるようだ」とした。 その上で、シンガポール国立大学の劉遥 (Adam Y.Liu) 教授とニューヨーク大学上海校の李 (Li Xiaojun) 准教授が共同で行い今月 15 日に雑誌 "Journal of Contemporary China" で発表されたアンケート調査(2020 年末と 21 年初めにオンラインで 1,824 人に実施)の結果を紹介した。

それによると、台湾武力統一に賛成と答えた人は 55% にとどまり、反対の人も 33% いた。 また、最も極端な「(統一とは別に)開戦すべき」との回答を選んだ人はわずか 1% だったという。 なお、台湾に統一を受け入れさせるためのその他(武力統一以外)の選択肢では、「台湾周囲での限定的な軍事行動」が 58%、「経済制裁を科す」が 57%、「現状維持(国力の増強)」が 57% となった。

さらに、記事は「意外だったこと」として、「両岸はそれぞれの政府を持ち、必ずしも統一することはない」との項目に 22% の人が「受け入れる」と回答したことを挙げた。 「受け入れられない」は 71%、「何とも言えない」は 7% だったという。 台湾メディアの中央社もこの結果について、「中国の政治的タブーとされる『必ずしも統一することはない』への支持が予想よりも高かった」と評した。

また、論文の著者である劉氏らは「この調査結果は、台湾奪還がほぼすべての中国人の総意であるという(中国国内の)主流の論述に挑戦するものだ」と指摘。 「中国当局は『台湾に対してより強硬な立場をとらなければならない』と感じるべきではなく、実際に中国の民衆はより穏健な台湾政策を受け入れることもできるのだ」と述べたという。 (北田、Record China = 5-23-23)


米が南シナ海で「航行の自由作戦」 台湾周辺で演習の中国を牽制

米海軍は、南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島付近で、ミサイル駆逐艦「ミリウス」が 10 日に「航行の自由作戦」を行った、と発表した。 南沙諸島の実効支配を強めるほか、台湾周辺で軍事演習を行った中国側を牽制する狙いがあるとみられる。 米海軍第 7 艦隊によるとミサイル駆逐艦は、中国が埋め立てを進めてきた南沙諸島のミスチーフ礁の 12 カイリ(約 22 キロ)以内を航行した。 声明で、中国を念頭に「南シナ海における不法で広範囲に及ぶ海上権益の主張が、海上の自由に深刻な脅威をもたらしている」と指摘。 今回の航行が「通常の作戦」であるとも説明した。 米国は中国に対抗するため、南シナ海で定期的に航行の自由作戦を行ってきた。

中国軍は 8 - 10 日に、台湾周辺で軍事演習を行った。 中国は、台湾の蔡英文(ツァイインウェン)総統が訪米し、マッカーシー米下院議長と会談したことに反発していた。 これに対し、米国家安全保障会議 (NSC) のカービー戦略広報担当調整官は 10 日の会見で、台湾総統の訪米は「珍しいことではない」と改めて指摘。 中国の軍事演習について「過剰反応する理由はない」と批判した。 カービー氏は、米国やフィリピンが 11 日からフィリピン沖で合同軍事演習を行うことを挙げ、「我々の国家安全保障上の関与を続けるため、国際海域や空域での飛行や航行、作戦を続けていく」と述べた。 (ワシントン = 清宮涼、asahi = 4-11-23)


中国軍、台湾周辺で 8 - 10 日に演習実施へ … 蔡英文氏と米下院議長の会談への対抗措置か

【北京 = 大木聖馬、台北 = 鈴木隆弘】 中国軍で台湾を担当する「東部戦区」の報道官は 8 日、台湾海峡と台湾本島の北部、南部、東部の海空域で 8 - 10 日に演習を実施すると発表した。 台湾の蔡英文(ツァイインウェン)総統と米国のケビン・マッカーシー下院議長が米国で会談したことへの対抗措置とみられる。 中国側が台湾周辺で軍事的圧力を一方的に高めることで、緊張が高まるのは必至だ。

報道官は演習について、「計画に基づき、台湾本島を取り囲んで戦争準備の警戒巡視を行う」と主張している。 東部戦区の発表に先立ち、台湾対岸の中国福建省の海事当局は 7 日、台湾の離島・馬祖列島に近い同省沖合の 2 か所の海域で 8 - 20 日に実弾射撃訓練を実施するとし、船舶の航行を禁止する通達を出した。

5 日には、中国軍の空母「山東」が太平洋上を航行するのを日本の自衛隊が初めて確認している。 中国軍の内情に詳しい関係筋は「台湾を威嚇する目的で空母打撃群の演習を行う」としており、台湾周辺海域で複数の艦艇を用いた防空、対潜訓練や、戦闘機などの軍用機を事実上の中台境界線となってきた台湾海峡の中間線に送り込むなどの挑発行為を行うとみられる。

台湾国防部(国防省)は 8 日、台湾軍が綿密に監視し、高い警戒態勢を敷いて適切に対応し、安全を守ると発表した。 蔡氏訪米を口実に中国軍が演習を実施すると批判し、「地域の平和と安定を著しく損なっている」と反発した。 同部によると、台湾周辺空域で 7 - 8 日に中国軍の軍用機計 13 機が確認された。 (yomiuri = 4-8-23)


米下院議長 台湾支持を鮮明に 蔡総統と会談

アメリカのマッカーシー下院議長は 5 日、台湾の蔡英文総統とカリフォルニア州のロサンゼルス郊外で会談し、アメリカが台湾を支持する姿勢を鮮明にしました。 マッカーシー氏は蔡総統との会談後、「アメリカは共通の価値観への支持を表明する」と述べました。

一方、蔡総統は中国を念頭に「われわれの民主主義は前例のない困難に直面している」としたうえで「台湾は地域の安定の礎となることを目指す」と強調しました。 アメリカと台湾の関係をめぐっては、2022 年 8 月、当時のペロシ下院議長が台湾で蔡総統と会談した際、中国が台湾周辺で大規模な軍事演習を行うなど強く反発したことから、今後の中国の対応に注目が集まっています。 (テレ東 = 4-6-23)


中国空母が台湾の南東海域を航行 蔡総統と米下院議長の会談を牽制か

台湾国防部(国防省)は 5 日夜、中国海軍の空母「山東」の艦隊がバシー海峡を抜けて、台湾の南東海域を航行したと発表した。 蔡英文(ツァイインウェン)総統が米国でマッカーシー米下院議長と会談するのを前に、中国が台湾側を牽制したとみられる。 山東が西太平洋で訓練を実施するのは初めて。 台湾国防部は、台湾周辺で中国の航空機や船舶が活動を活発化させていることについて「地域の安全と安定を損ない、責任ある近代国家の行動ではない」と批判した。

一方、中国側は、台湾の対岸に位置する福建省の海事当局が 5 日、台湾海峡で大型巡視・救助船などによる「連合巡航パトロール」を始めたと発表した。 3 日間行うという。 蔡氏は中米訪問の帰路に米ロサンゼルス郊外で米国時間 5 日にマッカーシー氏と会う予定で、中国は反発している。 (台北 = 井上亮、asahi = 4-5-23)


「中国の台湾侵攻は失敗」米研究所が最新分析 日本は武力行使断念させよ

山下裕貴氏「中国に頼らぬ経済安全保障態勢の整備を」

米有力シンクタンク、戦略国際問題研究所 (CSIS) が、中国の「台湾侵攻」を想定したシミュレーション結果をまとめた報告書を公表した。 2026 年に侵攻開始という設定で、ほぼすべてのシナリオで中国の企ては失敗に終わる分析となっていた。 ただ、報告書は、米国や日本の艦船や航空機、要員にも甚大な損失が生じると言及している。 「台湾有事は日本有事」とされるなか、夕刊フジが安全保障に詳しい複数の識者に聞いたところ、シミュレーションは現時点では「妥当」と評価した。 そのうえで、中国に武力行使を断念させるため、外交力の裏付けとなる防衛力強化や、有事に備えた日本と台湾の防衛協力を進めるべきと提言した。

注目の報告書は、「次の戦争の最初の戦闘」というタイトルで、9 日に公表された。 「台湾有事」のシナリオとし、26 年侵攻をモデルにシミュレーションを 24 回実施した。 侵攻は、中国が最初の数時間で、台湾の海空軍の大半を破壊する攻撃で始まるとし、中国海軍は台湾を包囲し、数万の兵士が軍用揚陸艇や民間船舶で海峡を渡り、空挺部隊が上陸拠点の後方に降下すると予測した。 しかし、開戦と同時に米軍が介入するなど、ほぼすべてのシナリオで「侵攻は失敗する」と予測した。

台湾の地上軍は上陸拠点の中国軍を急襲し、「日本の自衛隊によって強化された」米国の潜水艦、爆撃機、戦闘機などが上陸船団を撃沈する。「中国は日本の基地や米軍の水上艦を攻撃するが、結果を変えることはできない」とし、在日米軍基地が攻撃を受ける想定に触れつつ、台湾の自治権は維持されると結論付けた。

報告書は、同盟諸国と軍事支援を継続しつつ部隊を送らないウクライナへの関与とは異なり、「米国が台湾を守るならば、米軍は直ちに直接的な戦闘に従事する必要がある」と強調した。 同時に日本の役割の重要性にも言及した。 在日米軍基地からの米軍の展開は「介入の前提条件」で、日本は「台湾防衛の要となる」と指摘し、日本との外交・安全保障関係のさらなる深化を優先させるべきだと提言している。

一方で、報告書は台湾有事介入に伴う日米の被害についても分析を行った。 米国と日本は米空母 2 隻を含め艦船 40 隻前後、航空機 380 機以上、要員 3,000 人以上を失うと予測した。 このシミュレーションをどう評価すべきか。

元陸上自衛隊中部方面総監で、千葉科学大学客員教授の山下裕貴氏は「現時点では妥当な結果ではないか。 台湾海峡は潮の流れが早く、大規模な上陸艦隊が清々と渡るのは難しいといわれ、上陸する適地も大きく 2 カ所しかない。 海岸に上がってもすぐに市街地が発達しているなど、上陸部隊が作戦を展開しにくい。 今は中国側は同時に 2 万人程度しか上陸させることしかできず、その弱点を突かれると中国側は大変苦しい戦いになる。 ただし、中国が軍の近代化を進め、能力を高める『奮闘目標』としている 27 年以降になると分からない。 台湾がウクライナのように最後まで戦うという前提も重要で、中国がそれを切り崩す工作をやってくるとみるべきだ。」と話す。

CSIS は 1962 年設立、本部はワシントン。 米国の歴代政権に、提言を行ってきた。 軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「CSIS は信頼のおけるシンクタンクで、現実的なシミュレーションをしたとみられ、結果も妥当ではないか。 日本政府も今回のようなシミュレーションを何度もやった方がいい。 そのうえで、『どのようなことが防衛に必要なのか』を具体的に把握して、有事の際に『どれだけ日本が貢献できるのか』について米軍とすり合わせをしておくべきだ」と語った。

安倍晋三元首相は生前、「台湾有事は日本有事、日米同盟の有事」と語った。 「台湾有事」となれば、台湾に加え、支援にあたる日本、米国の被害も予想される。 有事とならないよう中国の武力行使を封じ込めることが重要となってくる。

前出の山下氏は「日本としては、中国にすべてを頼らない経済安全保障態勢をつくり、『何かあれば対抗する』というぐらいの防衛力を高め、外交力を行使して地域の安定に寄与していくことが重要だ。 日本と台湾の防衛協力を進めることも必要となる。 中国が『武力行使はやめた方がいい』と思いとどまらせるような抑止力をつくっていくべきだ」と話す。 (ZakZak = 1-11-23)