中国海軍の戦闘機「殲 11」が米偵察機に異常接近 … 米側は「危険な飛行」と非難

【ワシントン = 蒔田一彦、北京 = 田川理恵】 米インド太平洋軍は 29 日、中国海軍の戦闘機「殲 (J) 11」が 21 日、南シナ海上空で米空軍の偵察機 RC135 に異常接近したと発表した。 J11 が機首から約 6 メートル以内まで近付いたため、RC135 は衝突を回避する行動を余儀なくされたという。 インド太平洋軍は声明で「危険な飛行だ」と中国軍機の行動を非難した。

米側の発表によると、RC135 は南シナ海上空の国際空域で「通常の任務を合法的に行っていた」ところ、J11 が接近し、飛行を妨害した。 インド太平洋軍はウェブサイトで、J11 が接近する様子を収めた映像も公開した。 ロイター通信は、米軍当局者の話として、J11 が RC135 の翼から約 3 メートルまで接近したと報じている。

中国軍機による危険な妨害行動は相次いでおり、事故を招きかねないとして各国が懸念を強めている。 4 - 5 月には南シナ海や東シナ海の国際空域で、中国軍機がオーストラリアやカナダ軍の哨戒機に異常接近した。 米インド太平洋軍は 29 日の声明で、「インド太平洋地域の全ての国が、安全かつ国際法にのっとって国際空域を使用することを期待する」と指摘した。

中国外務省の 汪文斌(ワンウェンビン)副報道局長は 30 日の定例記者会見で、米国が長期間にわたり中国機などに頻繁に接近して偵察を行っていると反発した上で、「米国の挑発的な危険行為が海上の安全に関わる問題を引き起こす根源だ」と主張した。 (yomiuri = 12-30-22)


台湾識別圏に中国機 71 機 米台接近に「断固対抗」

【台北】 台湾国防部(国防省)は 26 日、台湾の防空識別圏に同日午前 6 時(日本時間同 7 時)までの 24 時間で中国軍機延べ 71 機が一時進入したと発表した。 米国で台湾への巨額の軍事支援を盛り込んだ 2023 会計年度国防権限法が成立したことへの反発とみられる。 国防部によると、71 機中 33 機が台湾海峡の中間線を越えて台湾側を飛行。 国防部は「厳密に監視、対応している」と説明した。

71 機のうち多くは「殲 16」や「殲 11」などの戦闘機だったが、早期警戒機や電子戦機、ドローンも含まれている。 台湾近海で中国海軍の艦艇 7 隻も探知したという。 台湾メディアは「台湾周辺での中国軍機の探知数は過去最多(中央通信社)」と報道した。 中国軍は 25 日には、「米台結託による挑発への断固たる対抗策(東部戦区報道官)」として、台湾周辺の海空域で統合軍事演習を実施。 台湾の山脈の空撮画像のほか、爆撃機の離陸や艦艇が航行している画像を公表した。 (jiji = 12-26-22)


旧知の米中首脳、深まる対立に打開策は 台湾にウクライナ … 課題山積

バイデン米大統領と中国の習近平(シーチンピン)国家主席による初の対面での首脳会談が 14 日、インドネシア・バリ島で開かれた。 米中両国は、台湾問題をはじめ諸課題で対立を深め、国際社会に不安定さをもたらしている。 旧知の関係でもある 2 人の対話は、事態の打開への糸口を見いだすことができるか。 午後 5 時半(日本時間午後 6 時半)過ぎ、習氏ら中国代表団が拠点を置くホテルにバイデン氏が到着した。 握手をしての記念撮影や冒頭のやり取りでは、お互いが笑顔をのぞかせた。

両氏にとって、今回の首脳会談は双方の国内政治イベントが一段落し、外交を再始動させるタイミングと重なった。 習氏は 10 月の共産党大会で 3 期目の指導部が発足。 内政に加え、外交政策の権限もさらに強化された格好だ。 一方、バイデン氏は苦戦も予想された中間選挙で、上院での民主党の主導権維持が確実となる中で現地入りした。 13 日、訪問先のカンボジア・プノンペンで「私は(以前より)立場が強くなっている」と記者団に述べ、習氏に劣らない影響力をアピールした。

首脳同士としては今回の会談が初の顔合わせとなった 2 人だが、その関係は長い。 バイデン氏がオバマ政権の副大統領だった 2011 年に訪中した際、ホスト役を務めたのが胡錦濤政権で国家副主席を務めていた習氏だ。 以来、2 人は何度も対話を重ねてきた。 だが、11 年前と現在の米中関係は一変している。 世界 2 位の経済大国となり、軍事力増強に突き進む中国への警戒を強めたのがオバマ政権だった。 「リバランス」政策を掲げ、アジア太平洋地域を軸に米軍を再編成した。 17 年に大統領に就いたトランプ氏は「長年にわたり中国とひどい貿易取引をしてきた」と訴え、貿易赤字の解消を中国側に求めた。 両国の主張は折り合わず、「貿易戦争」とも呼ばれる状況に至った。

台湾問題で対立 「レッドライン」は

現在、その対立はさらに亀裂を深めている。 最大の懸案は台湾問題だ。 習氏は、中台統一を「歴史的使命だ」とし、路線が一致しない台湾の民進党政権に圧力をかけてきた。 10 月の党大会では、統一について「武力行使の放棄は約束しない」姿勢を改めて鮮明にした。 これに対し、バイデン氏は米中の国交樹立時に交わした「一つの中国」政策は維持しつつ、台湾有事の際に、米軍が軍事的に介入する意思があるとの発言を繰り返し、中国の動きを牽制してきた。

その緊張は、8 月のペロシ米下院議長の台湾訪問を機に激化した。 中国軍は台湾を囲む地域で「重要軍事演習」を実施。 この動きは静観した米側だが、その後海軍艦艇が台湾海峡を通過し、譲歩しない姿勢を見せた。 偶発的な衝突が起きかねない状況が生じている。 今回の会談で両氏が目指すのは、互いの「レッドライン(越えてはならない一線)」を正確に知ることだ。 バイデン氏は 9 日の会見で「レッドラインがどこにあるのか、最も重要なことは何かを理解する必要がある」と強調。 習氏はかねて「米国は中国の戦略的意図を誤解し、判断を誤っている」と訴えており、対話自体は歓迎だ。

それでも両首脳が一致点を見いだせるかは分からない。 中国外交筋は言う。 「妥協の余地はもうない。 そのことをバイデン氏に伝えるまでだ。」 (バリ島 = 冨名腰隆、清宮涼、asahi = 11-14-22)


米 台湾にミサイルなど 1,500 億円相当売却 中国けん制のねらいか

アメリカのバイデン政権は、台湾にミサイルなど、11 億ドル日本円にして、およそ 1,500 億円相当を売却することを決めました。 アメリカのペロシ下院議長の台湾訪問を受けて、台湾への圧力を強める中国をけん制するねらいがあると見られます。 アメリカのバイデン政権は 2 日、台湾に対し、対艦ミサイル 60 基、空対空ミサイル 100 基などを売却することを決め、議会に通知したと明らかにしました。 金額は合わせて 11 億ドル、日本円にしておよそ 1,500 億円に上ります。

台湾をめぐっては、先月、アメリカのペロシ下院議長が訪問したことに中国が強く反発し、台湾周辺で大規模な軍事演習を行ったり、台湾海峡の「中間線」を越えて戦闘機を飛行させたりして圧力を強化しています。 アメリカは、中国がペロシ議長の台湾訪問を利用し、現状変更を試みていると批判しており、台湾への防衛に関与する姿勢を改めて示すことで、中国をけん制するねらいがあると見られます。 アメリカ国防総省は「今回の売却は、現在や将来の脅威に対応する能力の向上につながることが期待される。 アメリカなどとの相互運用性をさらに高めることができる」としています。

台湾外交部「米政府 台湾の求め非常に重視」

台湾外交部は、歓迎のコメントを発表し「バイデン政権下で 6 度目、ことしだけで 5 度目の武器売却発表であり、台湾への武器売却を常態化する近年の政策が引き続き実行されている」としました。 そして「今回は台湾の自衛力の強化に必要な多数のミサイルが含まれており、アメリカ政府が台湾の求めを非常に重視していることの表れだ」としています。 (NHK = 9-3-22)


中国ドローン? 台湾軍が撃墜 ロシア軍にも打撃、現代戦で軽視できない脅威 世良光弘氏「台湾侵攻の口実にされる恐れも」

「台湾有事」の悪夢が現実となるのか - -。 台湾国防部は 1 日、中国本土から数キロの距離にある金門島周辺の上空で、「正体不明の無人機(ドローン)」を撃墜したと明らかにした。 所属は不明だが、中国側から飛来したとみられる。 ナンシー・ペロシ米下院議長が 8 月初旬に訪台後、中国軍は台湾海峡付近で大規模な軍事演習を強行し、中国軍機による中間線越えは 400 機を超えた。 金門島周辺にはドローンが頻繁に飛行している。 ドローンは、ウクライナに侵攻したロシア軍に甚大な打撃を与えるなど、現代戦では無視できない存在といえる。 台湾海峡の緊張が高まっている。

「挑発行為に対し、強力な対抗措置をとる」

台湾西方の澎湖諸島にある空軍部隊を視察した台湾の蔡英文総統は 8 月 30 日、強度を増す中国軍の威迫についてこう語り、厳格に対応する姿勢を示していた。 今回のドローン撃墜は、こうした中で実行された。 台湾国防部などによると、1 日正午(日本時間午後 1 時)すぎ、台湾軍が金門島近くの小島「獅嶼」付近の制限水域上空でドローンを発見。 駐留部隊が警告したが反応がなく、銃撃して撃墜した。ドローンの残骸は海に落下したという。

台湾をめぐっては 8 月 2 日、ペロシ氏が訪台した後も、米国議員団が予告なしに台湾を訪れたり、ジョー・バイデン米政権が約 11 億ドル(約 1,500 億円)の武器売却を準備するなど、米国と台湾で「自由」と「民主」、「人権」、「法の支配」を守る姿勢を示していた。 一方、台湾を「核心的利益」に位置付ける習近平国家主席率いる中国は強烈に反発した。 ペロシ氏の訪台直後から、台湾を取り囲むように大規模軍事演習を展開し、日米台の連携を揺さぶるためか、日本の排他的経済水域 (EEZ) に弾道ミサイル 5 発を撃ち込む暴挙にも出ていた。

こうしたなか、中台最前線の離島などに飛行する、不気味なドローンの存在もクローズアップされていた。 中国軍の大規模演習に前後して、金門島付近の上空では、ドローンが繰り返し飛行。 台湾軍の基地の様子など、安全保障上の機微に触れるような映像が、中国のインターネットで拡散する事例もあった。 台湾軍は当初、照明弾を発射するなどして警告を行ったが、効果はなかった。 蔡総統が「強力な対抗措置」を表明した 30 日には、金門島付近の上空を旋回する中国のドローンに対し、台湾軍が実弾警告射撃を初めて行った。

今回、撃墜したドローンについて、台湾の国防部は「国籍不明の撮影用の民用無人機」と説明している。 民用撮影に対して、撃墜は過剰な反応とする指摘もあるが、ドローンの脅威は軽視できるものではない。 ロシアの侵攻を受けたウクライナでは、ドローンを使った戦術が威力を発揮している。 戦力で劣るウクライナは、ミサイルや爆弾を搭載したドローンによる攻撃で、ロシアの戦車部隊などに甚大なダメージを与えた。

ドローンは、機体の大きさや搭載する装備で多種多様な運用が可能だ。 戦車や兵士への直接攻撃のほか、敵陣地を精密に偵察して有利に部隊を展開するなど、戦場で欠かせないツールとして注目されている。 ミサイルや爆薬以外にも、化学兵器や生物兵器を載せて敵の周辺に散布するケースも考えられる。 さまざまなリスクが想定されるだけに、台湾も不審なドローンの飛行には過敏にならざるを得ないのだ。

米 CNN (日本語版)は 1 日、中国外務省の「その状況については認識していない」、「(台湾が)緊張をあおろうとしても無意味だ」というコメントを報じている。 今回の撃墜は、台湾海峡にどのような影響を及ぼすのか。 軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「台湾周辺には、中国からドローンが相当の頻度で飛来している。 重要施設が上空から撮影されるなど、台湾も看過できなくなったのだろう。」といい、続けた。

「今回、撃墜されたドローンは民間の小型のものとされ、直ちに紛争になる可能性は低い。 ただ、今後もドローンの飛行は続き、台湾による撃墜も増えるだろう。 中国が台湾侵攻の『口実』づくりを狙っている恐れもあり、撃墜が有事の火種になるリスクがある。 中国は民間ドローンの保有数が世界一だが、人民解放軍も大型の偵察型、自爆型のドローンを保有している。 日本の南西諸島周辺にも大型偵察ドローンが飛来しており、長距離飛行の性能もある。動向を警戒する必要がある。」 (ZakZak = 9-2-22)


中国発? のフェイクニュースに惑わされないために 台湾研究者の答え

ペロシ米下院議長の訪台に反発した中国が、台湾を囲う形で軍事演習を始めた 4 日、蔡英文(ツァイインウェン)総統がビデオメッセージで訴えた。 「中国から発信される情報について、全てのメディアはしっかり真偽を確認し、安易に引用しないで欲しい。」 報道の自由が尊重されている台湾では、異例の要請だった。 蔡政権は、中国政府が、フェイクニュースや偏った論評による台湾世論の揺さぶりを積極的に仕掛けているものとみている。

ペロシ氏が訪台した 2 日以降、台湾の主要紙は連日、多くの紙面を使って台湾での活動や中国の反応などを掲載してきた。 朝日新聞が確認したところ、このうち中国共産党の機関紙「人民日報」などの中国メディアが伝えた中国人研究者らの主張を大きく紹介した記事が 2 本あった。 ペロシ氏訪問による台湾海峡の緊張の責任を米側に求める内容だ。

「中国と米国の駆け引きは崖っぷち 北京が流れを変えようと努めている (8 月 3 日)」
「中国メディアが高らかに報道 (台湾)統一の決意は揺るがない (8 月 4 日)」

報じたのはいずれも、大手日刊紙「中国時報」の巻末 2 ページを使う「旺報」だった。 1950 年創刊の中国時報は 2008 年、食品製造業を営む「旺旺集団(蔡衍明会長、本部・台北市)」の傘下に入った。 その論調は以降、急速に中国寄りに傾斜していく。 蔡会長は 90 年代初めに、中国で最初の工場を設け、中国事業を拡大してきた。 中国時報の買収後にも訪中し、中国政府で台湾政策を担う行政部門「国務院台湾事務弁公室(国台弁)」のトップ・王毅氏(当時、現国務委員兼外相)と面会。 「上層部の指示に従い、祖国(中国)の繁栄をしっかりと報じる」と発言したと報じられた。

蔡会長は 12 年、中国政府に厳しい姿勢を取る台湾の大手紙「リンゴ日報」などを、親会社の香港企業から買い取ろうとしたが、世論の反発もあって断念した。 リンゴ日報は 19 年、旺旺集団が中国政府から多額の補助金を得ていたことを明らかにした。 さらに同年、英紙フィナンシャル・タイムズ (FT) は、中国時報の社説担当幹部らが中台関係の記事の内容や掲載面について、国台弁から直接指示を受けていると報じた。 中国時報側は、FT の記事を書いた記者を台湾の捜査当局に告訴したが、2 年後に取り下げている。

「中国の圧力」を感じた編集長、突然の解任

かつて中国時報でも編集長を務め、19 年末に 10 年務めた「旺報」の社長を辞任した黄清龍さん (60) は「中国政府が台湾メディアにかけてきた様々な圧力」を肌身で感じた一人だ。 黄さんが中国時報グループに入ったのは 92 年だ。 同紙で編集長を務め、06 年には米国留学の機会を得て、大学やシンクタンクで学んだ。 台湾に戻った後、新たなオーナーとなった蔡会長に、中国進出を考える台湾の企業家や留学希望者らを読者ターゲットに据えた新聞の創刊を訴えた。 米留学での経験から、「人々に、国力を増した中国の台湾政策を読み解く記事を提供する必要があると考えた」と言う。

提案は採用され、黄さんは 09 年 8 月、新刊の「旺報」を社長兼編集長としてスタートさせる。 中国政府の投資や留学の受け入れ政策の読み解きに力を割き、定期購読を除いた駅売りなどを 1 日 1 万部超まで伸ばした。

「中国政府の政策についての実用的な記事の掲載に注力したことで、当時の台湾企業の需要に応える役目を果たせたと思う」と振り返る。 会社との間に溝が生じたのは創刊から 2 年余りが経った 12 年 2 月だ。 当時の中国の国家副主席だった習近平(シーチンピン)氏のライバルとされた重慶市トップ・薄熙来(ポーシーライ)氏の絡む不祥事が明らかになった。 政治闘争との見方が出るなか、旺報も多くの紙面を割いて事件を報じ、関連書籍の出版準備も進めた。

だが、事件から 1 カ月、黄さんは突然、社長の肩書を残したまま編集長の職を解かれ、紙面への影響力を失ってしまう。 「人事異動について事前に打診はなく、辞令も第三者を介して伝えられた。 中国政府が事件に関する旺報の報道内容を問題視しているとの話を聞いており、中国政府の意向が働いたのだと思う。」と語る。 異動の背景は、今もわからないままだ。 中国政府の旺報に対する、圧力とも受け取れる動きは続いた。 同年 12 月には、旺報が中国側と共催する中台交流事業で訪台した中国人の参加者が毛沢東や台湾の?介石の時代を「個人崇拝」と批判したことを報じた記事をめぐり、中国政府から「今後は旺報と交流できなくなる」との意向が伝えられたという。

黄さんは編集長職を離れた後、旺報の報道に中国側の主張がそのまま載るようになったと感じてきた。 「中国メディアの記事には、必ず政府の意向が反映されている。 民主主義社会のメディアは、内容を垂れ流すのではなく、自ら分析して読者に示す必要がある。 それが、中国の世論戦を防ぐことにつながる。」と言う。 退職後は、旧知の中国研究者らと立ち上げたシンクタンク「台北市信民両岸研究協会」を使い、かつて何度も訪中した経験を生かし、ネットでの評論発信などを続けている。 朝日新聞は今年 6 月、中国時報グループに対し、黄さんの異動理由などについて、面会や書面での取材を求めたが、「幹部が多忙」だとして回答を拒まれた。

台湾の研究者「メディアリテラシーの向上が大事」

台湾の政治大学で新聞学を研究する馮建三教授は、中国政府による台湾メディアへの様々な働きかけを認めた上で、「中国は今後も台湾メディアを使った世論工作を続けるだろう。 現状で効果を生んでいるかはともかく、それをしなければ状況が更に芳しくないと思っているだろうからだ。」と分析する。 一方で馮教授は、台湾メディアを巻き込んだ中国政府の世論戦が、伝統的なメディアに対する社会の信頼を低下させているうえ、中国を過度にヒール(悪役)化したり、恐れたりする風潮が広がっていると懸念する。 台湾社会は 87 年までの 38 年間にわたり、国民党独裁政権によって、報道の自由が厳しく制限された歴史を持つ。

馮教授は「(台湾の民意を得たいなら)中国は資金に物を言わせる強圧的な宣伝手法を変える必要がある」とした上で、こう語る。 「台湾社会もメディアの自由な報道を狭めさせるべきではない。 大事なのは、人々のメディアリテラシー(情報の識別能力)を高めることだ。」 メディアを宣伝の道具ととらえて統制する中国と、偽情報が流通する懸念も含めて自由を認める台湾。 世論をめぐる攻防は、同じ言語を用いながらも正反対を向く、二つの言論文化のせめぎ合いでもある。 (台北 = 石田耕一郎、asahi = 8-31-22)


アメリカと台湾、正式な通商交渉を開始へ 秋にも

アメリカ政府は 17 日、台湾と正式な通商交渉を「初秋」にも開始すると発表した。 米台は「21 世紀の貿易に関する米台イニシアチブ」を 6 月に発表していたが、双方は今回、「交渉が必須との相互理解に至った」と述べた。 米通商代表部のサラ・ビアンキ次席代表は、「我々は野心的なスケジュールをこなす予定だ。 (中略)それにより、より公正でかつ繁栄と強靭さをもたらす 21 世紀の経済を形作る。」と説明した。 協議では貿易の円滑化のほか、デジタル通商や反汚職基準などが話し合われるという。 米台間の貿易総額は、2020 年に約 1,060 億ドル(14 兆 3,200 億円)だった。

中国は台湾を、自国から分離した省とみており、いずれは再び中央政府の支配下に置かれるべきだと考えている。 一方で台湾は、独自の憲法と民主的に選出された指導陣を持つ独立国家を自認している。 アメリカは台湾を正式に承認していないが、強力な関係を維持しており、台湾が自衛できるよう武器を販売している。

これとは別に、ダニエル・クリテンブリンク米国務次官補(東アジア太平洋担当)は 18 日、中国政府の「威圧感の増大が(中略)台湾海峡の平和と安定を脅かしている」と発言。 「平和と安定を損なおうとする中国政府の現在進行形の動きに直面する中で、我々は長年の方針に沿って、平和と安定を守るために冷静かつ断固とした措置をとり続け、台湾を支援していく」とした。 (BBC = 8-18-22)


中国の台湾への圧力、誤算につながる恐れ = 米国務次官補

[台北/北京] クリテンブリンク米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は 17 日、台湾を威圧し弱体化させようとする中国の試みは、誤算につながる恐れがあるとの見解を示した。 中国が台湾に対する圧力を継続すると見込んでいるとも述べた。 ペロシ下院議長の台湾訪問は米国の「一つの中国」政策と合致し、前例があるにもかかわらず、「中国はこれを言い訳に使って台湾への圧力を激化させる動きに出て、現状変更を試みた。 この結果、台湾海峡一帯と周辺地域の平和と安定が脅かされた。」と電話会見で語った。

「こうした行動は中国による台湾への圧力強化戦略の一環で、今後数週間から数カ月にわたって展開されると思われる」と述べ、台湾を威嚇、威圧し、力を弱めることが目的との見方を示した。 米国の台湾政策は一貫して変わらず、米政府は台湾の正式な独立は支持していないと言明した。 「われわれの政策に変化はないが、変わったのは北京の威圧が増したことだ」と指摘。 「中国の言動は(情勢を)非常に不安定化させている。 誤算につながる危険性があり、台湾海峡の平和と安定を脅かす。」との認識を示した。

米国はあらゆる対話の機会を捉えて中国に危機をあおらず、挑発しないようを伝えてきたと話した。 さらに、中国政府と対話する用意が引き続きあると述べる一方で、米軍は今後も定期的に台湾海峡を航行すると表明した。 「われわれは中国の妨害にもかかわらず、平和と安定を守るために冷静かつ断固とした措置を取り続ける。 従来の政策に沿って台湾を支援していく。 責任を持って着実に断固として行動する」と強調した。 (Reuters = 8-18-22)


米議員団が台湾総統と会談 中国軍は反発 再び「軍事演習」

台湾を訪問したアメリカの議員団が、蔡英文総統と会談。 中国軍は、台湾海峡での軍事演習を行い、反発している。 台湾を訪問したアメリカの超党派の議員団 5 人は、15 日午前、総統府で蔡総統と会談し、議会にあたる立法府では、台湾の議員と面会した。 こうした中、中国軍は 15 日午後、台湾周辺の海域と空域で軍事演習を行ったと発表した。 今回の軍事演習について、「アメリカと台湾が政治的なたくらみを続け、台湾海峡の平和と安定を破壊することに対する厳正な威嚇である」と強調している。 アメリカの議員団が、蔡総統と会談を行ったことを受けての対抗措置とみられる。 (FNN = 8-15-22)


中国軍、上陸演習も 台湾対岸の福建省南部、国営テレビが動画公開

台湾の対岸にある福建省南部で中国軍が上陸作戦の演習を行う様子を 9 日、中国国営中央テレビが伝えた。 ペロシ米下院議長が訪台して以降、軍は台湾周辺での演習を続けている。 上陸作戦の能力も示すことで、台湾を威嚇する狙いとみられる。

中央テレビによると、上陸演習を行ったのは有事の際に台湾上陸を担うとみられる陸軍第 73 集団軍。 公開した動画には、水陸両用戦車が海上から陸上に向かって砲撃したり、戦車と歩兵部隊が砂浜に上陸したりする様子が映っている。 演習の日時は明らかにしていない。 中国軍東部戦区は台湾周辺の海空域で、事前に予告していた演習期間を 7 日に終えて以降も演習を続けている。 9日は早期警戒管制機、戦闘機、給油機などが展開し、空中給油や海上支援のほか、複雑な電磁環境下で封鎖を行う演習も実施したという。 (北京 = 高田正幸、asahi = 8-9-22)


台湾国防部、中国が本島攻撃する模擬演習と発表

[台北] 台湾の国防部は 6 日、中国軍の航空機と艦船が台湾本島を攻撃する模擬演習を同日午前に行ったと発表した。 中国が台湾周辺で実施している軍事演習は 3 日目を迎えた。 国防部によると、台湾海峡で複数の中国軍の航空機を確認。 一部が中間線を越えた。 台湾軍は警告を発し、航空戦力による偵察部隊と艦船を派遣したほか、地上にミサイル防衛システムを配備した。 台湾国防部はこれに先立ち、5 日遅くに金門島の上空をドローン(無人機) 7 機が飛行したため、照明弾を発射して警告したと発表。 馬祖列島の上空にも所属不明の航空機が飛来したため、同様の措置を講じた。 (Reuters = 8-6-22)


米「中国は世界全体を罰している」 ペロシ氏訪台の対抗措置に抗議

中国外務省が 5 日、ペロシ米下院議長の台湾訪問を受けて、米中両国の軍の幹部同士の電話協議や気候変動分野での協議を行わないといった対抗措置を発表したことをめぐり、米国家安全保障会議 (NSC) のカービー戦略広報担当調整官は同日のオンライン会見で、「無責任だ」と批判した。 中国は 5 日、両軍の幹部同士の電話協議や国防省の事務レベル会議、気候変動分野の協議の中止や停止といった対抗措置を発表した。 カービー氏は、気候変動への取り組みに及ぼす影響を挙げて、「中国は米国だけを罰しているのではない。世界全体を罰している」と批判した。 (asahi =8-6-22)


中国軍機 68 機、軍艦 13 隻が「中間線」越え 台湾国防部

台湾国防部(国防省)は 5 日、中国軍が実施している大規模軍事演習について、同日台湾海峡の「中間線」を越えた戦闘機は 68 機、軍艦は 13 隻に上ったと発表した。 同部は声明で、「中間線を意図的に越え、台湾周辺の空海域で挑発行為に及んでいる」中国軍を非難した。 (AFP/時事 = 8-5-22)


米、空母派遣し警戒監視 台湾近海、中国軍能力「丸裸に」

【ワシントン】 米軍は台湾近海に艦艇を派遣し、中国軍の大規模演習を監視している。 原子力空母ロナルド・レーガンや強襲揚陸艦トリポリが展開。 不測の事態を警戒しながらも、中国軍の能力を「丸裸にする好機(軍事関係者)」とみて、情報収集・警戒監視・偵察活動を進めている。 国家安全保障会議 (NSC) のカービー戦略広報調整官は 4 日の記者会見で「ロナルド・レーガンは状況監視のためにとどまる。 当初の予定より少し長くいることになる。」と説明した。 米海軍筋によると、ロナルド・レーガンを中核とする空母打撃群は台湾南東のフィリピン海に展開。 トリポリも台湾東側の海域に位置した。 (kyodo = 8-5-22)


中国の弾道ミサイル 5 発、日本の EEZ 内に落下 外務省「強く非難」

外務省は 4 日夜、台湾周辺で軍事演習をしていた中国軍の弾道ミサイル 5 発が日本の排他的経済水域 (EEZ) 内に落下したと発表した。 同省の森健良事務次官は孔鉉佑(コンシュワンユー)・駐日中国大使と電話で協議し、「我が国の安全保障および国民の安全にかかわる重大な問題であり、中国の行動を強く非難し、抗議する」と表明。 軍事訓練の即刻中止を求めた。 中国は 4 日から 7 日までの日程で、米連邦議会のペロシ下院議長が台湾を訪問したことへの対抗措置として、実弾を使った演習を始めた。 中国が設定した演習地域には日本のEEZが含まれていたことから、日本政府は外交ルートを通じて中国側に「懸念」を伝えていた。

台湾周辺の海域では弾道ミサイル 11 発

中国軍は 4 日から、台湾周辺の海空域で大規模な軍事演習を始めた。 米連邦議会のペロシ下院議長の台湾訪問への対抗措置と位置づけており、台湾海峡をめぐる軍事的緊張が高まる恐れがある。 台湾の国防部(国防省)によると、中国軍は 4 日、台湾周辺の海域に弾道ミサイル計 11 発を発射した。 ミサイルは台湾の北、東、南沖に向けて発射されたという。 同部は声明で「中台の現状を変え、地域の平和を破壊しようとする試みだ」と批判した。 演習は 90 年代半ばの台湾海峡危機を上回る規模とみられる。

中国軍で台湾方面を担当する東部戦区も 4 日、ロケット軍が台湾東部の海域に向けて複数のミサイルを発射したと発表した。 ミサイルの発射地点や種類は明かしていないが、国営メディアの映像から、一部は短距離弾道ミサイルの DF15 とみられる。 ほかに、陸軍が台湾海峡に向けて実弾を発射する訓練を実施したことも明らかにした。 また、100 機超の軍機、10 隻超の軍艦が台湾周辺に展開した。

中国国防省は同日、報道官談話を発表し、ペロシ氏訪台に「強烈な憤慨と反対」を表明。 演習は「米台共謀に対する厳正な威嚇である」と主張した。 中国側が 2 日夜に発表した 4 - 7 日の演習エリアは、台湾を取り囲むように計 6 つあり、台湾が主張する領海や中台間の中間線、日本の排他的経済水域 (EEZ) にもまたがる。 台湾紙・中国時報によると、台湾の海岸から 10 カイリ(約 18 キロ)前後のエリアもある。 (北京 = 高田正幸、台北 = 石田耕一郎、asahi = 8-4-22)


日中外相会談が中止に 中国、ペロシ氏の台湾訪問に反発し軍事演習

4 日午後にカンボジアの首都プノンペンで予定されていた日中外相会談が中止になった。 日本政府関係者が明らかにした。 今年 9 月に国交正常化 50 周年を迎える両国は「建設的かつ安定的な関係」の構築を目指すとの方針では一致しており、会談でもその糸口を探る予定だったが、ペロシ米下院議長の台湾訪問に中国が反発。 同日に軍事演習を開始していた。 日中両外相は、東南アジア諸国連合 (ASEAN) 関連の外相会議に出席するため、カンボジアを訪問している。 林芳正外相は岸田政権の発足後、初めて中国の王毅(ワンイー)外相と約 1 時間対面で会談する予定だった。 (プノンペン = 野平悠一、asahi = 8-4-22)


ペロシ氏「台湾の民主主義、守る決心」 蔡英文氏は歓迎「団結する」

台湾を訪問した米連邦議会のペロシ下院議長は 3 日午前、台北市の総統府を訪ね、蔡英文(ツァイインウェン)総統と会談した。 ペロシ氏は「我々は決して台湾との約束に背かない」と語り、台湾との安全保障や経済における結びつきを深めて支援を続けていく姿勢を強調した。 2 人は午前 10 時半(日本時間同 11 時半)ごろ、台湾の「青天白日満地紅旗」を掲げた部屋に並んで姿を現した。 台湾側は頼清徳(ライチントー)副総統ら政権幹部も同席。 蔡氏からペロシ氏に対して勲章が授与された。

あいさつに立ったペロシ氏は、米国が台湾と断交後、台湾関係法を成立させたことで「台湾を常に支持するとの約束をした」と指摘。 共通の価値観に基づいて協力関係を強め、世界と地域の安全保障に取り組み、経済関係を強化してきたと語った。 その上で「世界が民主主義と専制主義の選択を迫られているなか、台湾と世界の民主主義を守っていく米国の決意は変わらない」と強調。 中国からの圧力の高まりを念頭に「これまで以上に米国と台湾の連帯は重要になっている」と語った。

一方、蔡氏はペロシ氏らの訪問が「台湾に対する米議会の揺るがぬ支持を示している」と歓迎。 「軍事的脅威が高まっても台湾は決して後退せず、民主主義の防衛線を断固として守る」との決意を示したうえで、「世界の民主主義国家と団結し、ともに民主的価値観を守っていきたい」と呼びかけた。 (北京 = 高田正幸、asahi = 8-3-22)


中国、台湾周辺で 8 月 4 - 7 日に軍事演習を実施と発表

中国人民解放軍は、現地時間 8 月 4 日正午(日本時間同日午後 1 時)から 7 日正午(日本時間同日午後 1 時)まで軍事演習を実施する。 国営新華社通信がソーシャルメディア「微博(ウェイボ)」への投稿で明らかにした。 この投稿で掲載された地図には、計画されている軍事演習の場所として台湾周辺の 6 カ所が示されている。 (Crystal Chui、Bloomberg = 8-3-22)


ペロシ米下院議長が訪台すれば、中国は台湾海峡でミサイル発射の可能性も … 米高官が指摘

【ワシントン = 蒔田一彦】 米ホワイトハウスのジョン・カービー戦略広報調整官は 1 日の記者会見で、ナンシー・ペロシ下院議長が訪台した場合、中国が台湾海峡でのミサイル発射などの対抗措置を取る可能性があるとの見方を示した。 カービー氏は「中国がペロシ氏の訪台を危機や衝突に発展させたり、攻撃的な軍事行動を増加させる口実にしたりする理由はない」と述べ、中国に自制を求めた。

一部の米台メディアはペロシ氏が 2 日に台湾入りすると報じているが、カービー氏は、アジア歴訪中のペロシ氏が訪台するかどうか明らかにしなかった。 カービー氏は、中国が「今後数日か、更に長期間」にわたって取り得る対抗措置として、ミサイル発射のほか、中国軍機による台湾の防空識別圏 (ADIZ) への大規模な侵入、台湾海峡中間線を越えた空・海軍の行動、軍事演習の大々的な公開、経済・外交的措置を挙げた。

カービー氏はまた、「下院議長は台湾を訪問する権利がある」として、訪台の判断はペロシ氏が下すべきことだとの考えを示した。 政府としては、歴代米政権が維持してきた「一つの中国」政策に「何も変更はない」とし、「台湾の独立を支持しない」とも強調した。 中国の張軍国連大使は 1 日、安全保障理事会議長国として記者会見し、ペロシ氏が訪台した際の対応について「中国の主権、領土を守るため、できることは何でもする」と述べた。 米海軍の関連団体「米海軍協会」のニュースサイトは 1 日、米空母ロナルド・レーガンがフィリピン海、強襲揚陸艦トリポリが沖縄周辺に展開していると報じた。  中国の対抗措置に備え、しばらく周辺にとどまる可能性があるという。 (yomiuri = 8-2-22)


ペロシ氏訪台か、中国の警戒は最大限に 「撃墜すればいい」発言も

7 月 31 日からアジア歴訪を始めた米国のペロシ下院議長を巡り、中国が台湾訪問への警戒を最大限に高めている。 習近平(シーチンピン)国家主席ら党指導部は、米高官による台湾訪問は看過できない事態と認識。 ペロシ氏は台湾入りについて言及していないが、実際に訪問すれば米中関係に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。 中国国営新華社通信によると、中国空軍の申進科報道官は同日の記者会見で「祖国の山河を守ることは空軍の使命だ。 空軍の多様な戦闘機が『祖国の宝島』を周回し、主権と領土を守る能力を高めている。 空軍には確固たる意思と十分な能力がある。」と述べた。 「宝島」は台湾を指す。

中国国営中央テレビ (CCTV) は 30 日、建軍 95 年にあわせて発表した動画の中で、中距離極超音速滑空ミサイル「DF (東風) 17」の発射訓練を伝えた。 空母などの対艦ミサイルとしても使用が想定される DF17 の発射の様子を公開するのは、初めてとみられる。 同日にはさらに、台湾と向かい合う福建省沖で実弾射撃訓練も実施された。

一方、中国メディアはペロシ氏の動向を積極的に報じ、国民の反米感情をあおっている。 共産党機関紙・人民日報系の環球時報(電子版)は 30 日、台湾専門家らの談話を報道。 「ペロシ氏が台湾を訪問することは、極めて危険な政治的シグナルになる。(朱衛東・中国社会科学院台湾研究所副所長)」、「ペロシ氏は中国の核心的利益に挑んでいる。 中国側の対抗措置に軍事手段が含まれるかどうかは、自明だ。(冷波・同院研究員)」などと武力行使をほのめかす発言も相次いだ。

環球時報前編集長の胡錫進氏は 29 日、「米軍機によるペロシ氏の訪台は侵略であり、警告弾を発射するなどの権利がある。 排除できなければ撃墜すればいい。」などとツイート。 胡氏によると、内容がツイッター社の規則に違反するとして一時アカウントが封鎖されたため、胡氏は投稿を削除したという。 (北京 = 冨名腰隆、asahi = 8-1-22)


台湾めぐり「火遊びすれば自らを焼く」 米中首脳協議で対立浮き彫り

米国のバイデン大統領と中国の習近平(シーチンピン)国家主席は 28 日、台湾情勢やロシアのウクライナ侵攻などをめぐって電話で協議した。 米中関係が悪化するなか、両氏は意思疎通を続ける必要性を確認したものの、習氏が台湾問題で「火遊びをすれば必ず自らを焼く」と警告するなど、意見の対立が改めて浮き彫りとなった。 米ホワイトハウスによると、協議は 2 時間 20 分続いた。 米中両政府は、今回の協議が「率直で掘り下げたものだった」と説明した。

米中間の最大の懸念である台湾問題をめぐって、バイデン氏は「台湾海峡での一方的な現状変更の試みに強く反対する」と習氏に伝えた。 台湾を中国の一部だとする中国政府の立場を認知した米国の「一つの中国」政策に変わりがないことも伝えた。 台湾をめぐっては、バイデン氏が 5 月、台湾有事の際に台湾防衛のために軍事的に関与する意思があるかを問われ、「イエス」と明言し、中国側が強く反発した経緯があった。

一方、中国側の発表によると、習氏は台湾問題について「我々は外部勢力の干渉に断固として反対し、いかなる形の台湾独立勢力にも一切の隙間を与えない」と語った。 米国のペロシ下院議長の訪台計画が報じられていることも踏まえ、台湾への関与を強める米国の姿勢を強く牽制したものとみられる。 中国側は、首脳協議直前にペロシ氏の訪台が取りざたされたことに不信感を強めている。 習氏は「国家主権の保護と領土保全は、14 億人の中国人民の確固たる意志だ」と強調。 「火遊びをすれば必ず自らを焼く」と米側に警告した。

さらに習氏は「戦略的競争の観点から中米関係を定義し、中国を最も深刻な長期的挑戦と見なすことは、両国民と国際社会の誤解を招く」と指摘。 中国を「最重要の戦略的競争相手」と位置づけるバイデン政権に、対中政策の見直しを改めて求めた形だ。 両首脳はウクライナ問題についても協議した。 習氏は中国の原則的立場を改めて伝えたという。 バイデン氏は、中国における人権問題も取り上げた。

両首脳はこれまでの協議に続き、米中間の意思疎通の必要性を強調した。 中国側によると、習氏はロシアのウクライナ侵攻の影響を受けるエネルギーや食料問題などについて、米中がコミュニケーションをとるべきだと指摘した。 米政権高官によると、対面の首脳会談についても、今後調整することを確認したという。 ただ、昨年 11 月のオンライン会談、今年 3 月のテレビ電話協議とは異なり、今回は電話協議にとどまった。 中国側は、協議中に国営メディアが習氏の発言を速報した前の 2 回と異なり、協議終了後に会談の概要を発表しただけだった。

バイデン政権は、トランプ前政権が始めた対中制裁関税の一部を解除するかどうかの検討を続けているが、ホワイトハウスによると、協議では今後の措置については議題とならなかったという。 (ワシントン = 清宮涼、北京 = 高田正幸、asahi = 7-29-22)