ヤマハ発動機、初回交渉で「満額」 前倒しは初めて

ヤマハ発動機は、今春闘の初回の労使交渉で、労働組合からの月 1 万 1 千円のベースアップ(賃金改善)要求に満額回答したと発表した。 定期昇給分を含む賃上げ総額は 1 万 7,400 円。 一時金(ボーナス)も要求通り、年 6.5 カ月分を回答した。 同社が、春闘で集中回答日(3 月半ば)を待たずに回答するのは初めて。 「昨今の物価上昇や経済の好循環へ貢献するという社会的要請を踏まえて、満額で回答することを決定した」とコメントした。 残り 3 回予定している労使交渉では、「職場や働き方の課題について議論する」という。 (asahi = 2-21-24)

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ヤマハ労組、単身赴任手当の期限撤廃も要求

楽器メーカー、ヤマハの労働組合は、今春闘で月 1 万 3 千円の賃金改善(ベア)を要求することを決めた。 前年は 7 千円を求め、要求を上回る 8 千円の回答だった。 一時金(ボーナス)は年 5.2 カ月分(前年は 5.9 カ月分に満額回答)を要求する。 このほか、現在 4 年までとなっている単身赴任手当の期限撤廃も求める。 伊佐地豪文(かつふみ)・中央執行委員長は「共働きが増えている中、単身赴任の解消がどうしても難しい場合には、手当で報いて欲しい」と話した。 要求書は 16 日に提出し、経営側は 3 月 13 日に回答する予定だ。 ヤマハの山畑聡取締役は「業績は厳しいが、賃上げはするだろう。 組合要求に応えるというよりは、業界を超えた人材確保の競争だ。」と話す。 (asahi = 2-15-24)

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ヤマハ発動機労組、ベア 1 万 1 千円要求決め

二輪大手のヤマハ発動機(静岡県磐田市)の労働組合は中央委員会で今春闘で 1 万 1 千円のベースアップ(ベア)を含む、1 万 7,400 円の賃金改善を求めることを決めたと明らかにした。 物価上昇率を上回る 5% 以上の賃上げ率になるという。 前年はベアで 7 千円を求め、要求を上回る 9 千円の回答を得た。 その後も物価上昇が進んだため、前年を上回る要求とした。 年間一時金(ボーナス)は 6.5 カ月分。 前年は 6.6 カ月分を求め、6.5 カ月分の回答だった。 賃上げにより、今年の要求は金額では前年を上回る。 平野雅紀・中央執行委員長は「自動車産業全体で人材不足が深刻化している。 よりよい人材を獲得するためには魅力を高める必要があり、賃金も継続的に上げていかなければならない。」と話した。 (asahi = 2-9-24)

ヤマハ発動機社長「インフレ率以上の回答したい」

ヤマハ発動機の日高祥博社長は、2023 年 12 月期の決算発表会見で「昨年末以降、インフレ率以上の賃上げはしなきゃいけないと発言してきた。 そのスタンスに沿って回答していきたい。」と述べた。 同社の労働組合は午前、昨年要求を 4 千円上回る、月 1 万 1 千円のベースアップを経営側に要求した。 (asahi = 2-14-24)


ホンダが満額回答 賃上げ総額 2 万 1,500 円、過去最高

ホンダは今春闘で、労働組合が要求していた賃上げと一時金(ボーナス)に満額回答したと発表した。 昨年に続くスピード決着となった。 ベア相当分の回答は月平均 1 万 5 千円。 要求額に 1,500 円上乗せした形だが、これは 22 年春闘で妥結した「人への投資」分としている。 定期昇給まで含めた賃上げ総額は 2 万 1,500 円で賃上げ率は 5.6% になる。 ボーナス 7.1 カ月分も満額回答で、いずれも過去最高となった。

また、大卒初任給は 1 万 1,300 円引き上げて 26 万 2,300 円(現在は 25 万 1 千円)になる。 非正規従業員についても平均 5.3% の賃上げを実施する。 ホンダの青山真二副社長は「労使双方の課題認識が大枠で一致したため、早期に満額回答した。 経営としてこれまでの職場のがんばりに報い、より一層のがんばりに期待するという強い意志の表れだ。」とコメントした。 (asahi = 2-21-24)

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ホンダ労組、月 1 万 3,500 円要求 31 年ぶり高水準

ホンダの労働組合「本田技研労働組合」は、ベア相当額で月 1 万 3,500 円を要求した。 平均賃金の 3% 超にあたり、1993 年以来 31 年ぶりの高水準だ。 年齢や勤続年数などに応じた定期昇給(定昇)を含めた合計額は 2 万円で、全体では 5% 超の賃上げになるという。 一時金は過去最高の 7.1 カ月分(昨年は 6.4 カ月分)とした。 交渉に臨んだホンダの青山真二副社長は「経営としての強い意志を示しながら『意志を持って行動し、成果を出す従業員を増やすことで、それぞれの職場における変革につなげていくこと』を達成するため、スピード感を持って労使議論をしていく」とコメントした。 (asahi = 2-14-24)


マツダが賃上げ 1 万 6 千円の満額回答、一時金含めた引き上げ率 6.8%

マツダは今春闘で、労働組合が要求した賃上げや一時金に満額回答したと発表した。 ベアと定期昇給などを合わせた賃上げは月 1 万 6 千円で、総額要求になった 2019 年以降で最高。 年間一時金(ボーナス)は 5.6 カ月で、こちらも満額回答。 賃上げと年間一時金を合わせた、賃金全体の引き上げ率は 6.8% という。 14 日に労組が申し入れて以降、初となる労使協議会で会社側は満額回答を示した。 指定回答日は 3 月 13 日だったが、前倒し回答は、2 回目の労使協議会で回答した 05 年以来という。

人事担当の竹内都美子(とみこ)執行役員は大幅な処遇改善について「経営への財務的影響などを考慮した」としたうえで、「人の力を引き出せる環境をつくることが、会社の持続的成長と地域との共存共栄への貢献につながると考えた」と語った。 (asahi = 2-21-24)

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マツダ労組、月 1 万 6 千円要求 03 年以降で最高

マツダ労働組合は、現在の人事制度になった 2003 年以降で最高となる 1 人あたり月 1 万 6 千円の賃上げを要求した。 この額には賃金改善分と定期昇給分を含む。 賃上げ率は 4.9%。 年間一時金は 5.6 カ月分(前年は 5.3 カ月)を求めた。 昨年は 1 人あたり月 1 万 3 千円の賃上げを要求し、満額回答を得た。 (asahi = 2-14-24)


九州 FG 傘下銀、5% 以上賃上げへ 初任給「メガバンク並みに」

南九州を地盤とする九州フィナンシャルグループ (FG) は、今春から傘下銀行で 5% 以上賃上げする方針を決めた。 肥後銀行(熊本県)ではベースアップ 3.8% と定期昇給 2.0% を合わせ、約 5.8% の賃上げ。 鹿児島銀と九州 FG 本体は、いずれもベアと定期昇給を合わせ 5% 以上引き上げる。 肥後銀と鹿児島銀の大卒の初任給も、2 年かけて引き上げる。 いずれも今春は 2 万円引き上げた 24 万円、来春は「メガバンク並み」の 26 万円とする。 (asahi 2-20-24)


シャープ労組、ベア 1 万 3 千円要求 初任給は 9 千円増

シャープ労働組合は、月 1 万 3 千円のベアを要求した。 上部団体である電機連合の統一要求に足並みをそろえた。 初任給は 9 千円の引き上げを求める。 シャープは 2024 年 3 月期の純損益が 100 億円の赤字になる見通し。 労組幹部は取材に「実質賃金は下がっている。 業績が厳しい中でも組合員のモチベーションを上げていかないと、持続的成長につながらない」と話した。 また、「電機連合の統一要求に今ついていかないと、人材の確保・定着が難しくなるのではないかという危機感もあり、しっかり要求しようと判断した」という。

パナソニックグループ労連、傘下組合がベア 1 万 3 千円要求

パナソニックグループ労働組合連合会は、傘下の主要 10 組合が月 1 万 3 千円のベアを要求したと発表した。 定期昇給分を含めた賃上げ率は 6 - 7% 程度としている。 福沢邦治・中央執行委員長は「人材確保が非常に難しくなっている。 これをクリアさせていくことと、デフレ環境を完全に払拭させるという意味で、1 万 3 千円という水準に至った」と述べた。 同労連では昨年に続き、傘下の 122 労組が、それぞれの事業会社と労使交渉を行っている。 今回はグループ全体の統一要求として、ベア 1 万 3 千円以上、年間一時金 5 カ月分を掲げた。

日立製作所「期待の声は承知している」 労組、ベア 1 万 3 千円要求

日立製作所労働組合は、昨年を 6 千円上回る、ベア 1 万 3 千円を要求した。 一時金は 6.4 カ月分とした。 日立製作所の人事担当の田中憲一常務は「昨年を上回るような賃金引き上げを期待する声があることは承知している」と話し、業績や国内外の経済の動向などを踏まえて検討していく考えを示した。 (asahi = 2-15-24)


JR 東労組、ベア 1 万 2 千円要求 2 年連続 1 万円超

JR 東日本労働組合は、今春闘で月 1 万 2 千円のベアを要求する方針を決めた。 要求額は加盟する JR 総連の方針に合わせた。 1 万円超えは 2 年連続となった。 前年は 1 万円の要求に対し 5,957 円の回答だった。 旅客需要が想定を上回る堅調ぶりで、会社は 1 月末に 2024 年 3 月期の純利益見通しを 1,650 億円になるとし、従来予想から 280 億円上方修正した。 労組は現場への還元を求めている。

自動車総連会長「勇気づけられるスタート」

自動車関連の労組でつくる自動車総連の金子晃浩会長は会見で、高水準の要求が相次いでいることについて「額も含めて大きな勢いのある要求をしていただいたので、勇気づけられるようなスタートではないか」と評価した。 春闘を通じて強い需要が引っ張る日本経済への転換を説き、「そのためには賃上げが必要だ。 30年間上がらなかった賃金を動かす大きな年になる」と話した。

ダイハツ労組、ベア要求見送り

ダイハツ労働組合は今春闘で、基本給を底上げするベースアップ(ベア)の要求を見送った。 昨年はベアと定期昇給を合わせて月 1 万 1,200 円の賃上げを要求し、2006 年以来の満額回答を得ていた。 ダイハツ工業によると、労組側からは「会社の状況を鑑みた結果」との説明があったという。 同社は昨年 12 月に大規模な車両認証不正を行っていたことを発表。 国内四つの完成車工場が稼働を止め、現在も二つの工場で稼働再開の見通しが立っていない。 稼働停止期間分の仕入れ先企業への補償に資金も必要となる中、労組はベアを見送る判断に至ったとみられる。 ただ、ベアは要求しないが、労組側は年間一時金については 5.0 カ月分(前年は 5.5 カ月分)を求めた。 定期昇給分の賃上げについては別途協議するとしているという。

全トヨタ労連 持続的な賃上げ「日本全体に問われている」

トヨタ自動車グループの労働組合でつくる全トヨタ労働組合連合会が開いた記者会見で、吉清一博事務局長は「働く者の生活や、労働の価値を守るという観点で、物価上昇に負けない賃上げを持続的にできるかが、日本全体に問われている」と語った。

三井金属、ベア月 2 万円で合意 要求を 5 千円上回る

三井金属は、ベア月 2 万円で労働組合と合意した、と発表した。 労組が要求していた 1 万 5 千円を上回り、バブル後の最高額だという。 4 月から実施し、定期昇給を含めた平均賃上げ率は 7.7% となる。 今回の合意は、管理職をのぞく一般社員が対象。 管理職についてもベアをする方針で検討中だという。 ベアは前年の月 4 千円増に続く賃金改定となる。 若手人材の獲得につなげるため、初任給も卒業の区分によって 2 万 - 4 万 5 千円増額する。 大学の学部卒で入社すると 2 万円増となり、現行の 23 万 4 千円から 25 万 4 千円にアップする。

中小企業、賃上げ予定は 61.3%

日本商工会議所が発表した中小企業の賃上げ動向の調査によると、2024 年度に賃上げを予定する企業は 61.3% で前年より 3.1 ポイント上昇した。 ただし、その 6 割は、業績が改善したわけではないものの人手の確保につなげる「防衛的賃上げ」だという。 調査は 1 月、全国 6 千社あまりを対象に実施し、約半数から回答を得た。

日産労組、月 1 万 8 千円要求 過去最高

日産自動車労働組合は、現在の賃金体系になった 2005 年以降で最高となる 1 人あたり月 1 万 8 千円の賃上げを要求した。 前年より 6 千円高く、賃上げ率は 5% を超える。 年間一時金は 5.8 カ月分(前年は 5.5 カ月分)を求めた。 昨年は 1 人あたり月 1 万 2 千円の賃上げを要求し、満額回答を得た。

トヨタ労組、1999 年以降で過去最高水準の賃上げ要求

トヨタ自動車労働組合は、経営側に「比較可能な 1999 年以降では過去最高の水準」の賃上げを求めた。 賃上げには、基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給分を含む。 組合員平均として賃上げを求めるのではなく、職種や階級別に 17 種類の要求額を示しており、いずれも昨年を大幅に上回る額を求めた。 ボーナスについても過去最高となる、基準内賃金の 7.6 カ月分を要求している。 (asahi = 2-14-24)


重工大手 1 万 8 千円を要求

川崎重工業の川崎重工労働組合は、今春闘の要求として月 1 万 8 千円の賃上げ(賃上げ率は 5.3%)を求める要求書を同社の山本克也副社長に手渡した。 労組の浜田圭・中央執行委員長は「私たちの労使の責務はデフレマインドから真の意味で脱却をし、日本経済を好循環に転換させることにある」と述べた。 昨年の春闘では月 1 万 4 千円の賃上げを要求したのに対して、1974 年以来、49 年ぶりの満額回答だった。 今年は前年実績を上回る要求だが、浜田委員長は「物価の上昇は続いている。 このままでは生活の質と量を維持することは不可能だ」と訴えた。 経営側は「社会的な責務も意識しつつ、様々な考慮要素を踏まえ、検討していきたい」とするコメントを出した。

ほかの重工大手の三菱重工業、IHI の労働組合も要求書を提出し、月 1 万 8 千円の賃上げを要求した.

オリエンタルランドが平均 6% 賃上げへ

東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは従業員の賃金を 4 月から平均で約 6% 上げる方針を明らかにした。 従業員が働きがいを感じられるようにするためといい、平均で約 7% を引き上げた前年に続いて、高い賃上げ率となる。 対象は社員や準社員(パート・アルバイト)ら約 2 万 4,400 人。 時給は一律で 70 円引き上げ、改定後は 1,210 - 1,600 円になる。 2024 年度の新入社員の初任給は一律 1 万 7 千円引き上げる。 改定後は大卒・大学院卒の初任給が 25 万 5 千円となる。 労働組合からの要望を受けて協議していた。

JR 東海労組、ベア 1 万円要求 1995 年以来の水準

JR 東海の最大の労働組合「JR 東海ユニオン」は 9 日、月 1 万円(約 3%)の基本給ベースアップ(ベア)を軸とする今春闘の要求書を経営側に出した。 1 万円以上のベア要求は、1995 年に 1 万 200 円を求めて以来だという。 昨年はベア 3 千円を要求し、1 千円で妥結した。 今年はコロナ禍の影響がやわらいで東海道新幹線の乗客数が回復し、業績が上向いていることを踏まえた。 一時金の夏季手当については月給 3 カ月分を要求。 勤務地による手当額の格差も問題視し、高いほうにそろえて解消するよう求めた。

日鉄労連、50 年ぶり高水準 3 万円賃上げ要求

日本製鉄労働組合連合会は 9 日午前、「基本賃金の 1 人あたり 3 万円改善」を柱とする今春闘の要求書を経営側へ提出した。 賃上げの要求額としては、過去最高だった新日本製鉄時代の 1975 年の 3 万 2 千円(回答は 2 万 3 千円)に次ぐもので、3 万円(回答は 1 万 5,500 円)を求めた 74 年以来の水準。 当時はいずれも毎年の交渉で、98 年から 2 年に 1 回となったが、経営環境をふまえ今春闘は単年度での賃金交渉に切りかえた。

労連の幸野直通会長は東京都千代田区の日鉄本社で「厳しい事業環境においても高収益を確保できる企業基盤を構築できたことは、組合員のたゆまぬ協力・努力があったからこそである」などと要求書を読み上げ、日鉄の十河英史常務執行役員へ手渡した。 経営側は交渉に向けて「要求を真摯に受け止める。 会社の思いや期待をできうる限りわかりやすく説明するとともに、人材確保・活躍推進の実現に向け、理解を深めたい。」とコメントした。

JFE スチールの労働組合が要求書提出

鉄鋼大手 JFE スチールの労働組合は 9 日、月額 3 万円の賃上げなどを求める春闘の要求書を同社の上田洋輔専務に提出した。 労組は要求について「組合員の総意である今次要求に対して会社の誠意ある対応を求める」とコメントした。 鉄鋼業界の労働組合は2年に1度、2年分の賃金改善を要求する方式を長年とってきた。 このため昨年分は一昨年にすでに妥結済みだったため、要求しなかった。 今年は物価高に対応するため、単年度分のみを要求している。 (asahi = 2-9-24)


トヨタ労組、今春闘でもベア要求 引き上げ額「過去最高水準」求める

トヨタ自動車労働組合は 29 日、春闘の要求の執行部案を公表した。 昨年に続き、基本給を底上げするベースアップ(ベア)を求める。 平均賃金の引き上げ額は明らかにしないが、比較可能な 1999 年以降では、過去最高の水準という。 年間一時金(ボーナス)については、過去最高となる、基準内賃金の 7.6 カ月分を要求する。 正社員の賃金については、職種や階級別に要求額を示しており、いずれも昨年を大幅に上回る額を求める。

トヨタの業績は半導体不足が解消し、世界生産、販売が復調したため好調だ。 物価上昇や、人材確保へ向けて魅力向上を目指し、若手を中心に待遇改善に力を入れる。 記者会見した鬼頭圭介委員長は「組合員の努力は、決算として出ている」とし、「要求を掲げたからには(満額回答を)勝ち取るべく会社と議論したい」と話した。 トヨタは昨年、労組からの賃上げと一時金(ボーナス)の要求に初回の労使協議で満額回答で応じている。 (江口英佑、asahi = 1-29-24)


連合・経団連どちらも「賃上げを」 物価上昇を上回るか 春闘幕開け

経済界と労働組合の代表が賃上げなどについて話す経団連主催の「労使フォーラム」が 24 日、東京都内で開かれた。 物価が下がり続けるデフレを脱却して、賃金や物価が安定して上がる社会に向け、労使がともに賃上げを唱える異例の春闘が事実上始まった。

労働組合の中央組織・連合の芳野友子会長はこの日、「今春闘は、経済も賃金も物価も、安定的に上昇する経済社会へとステージ転換を確実に進める正念場だ」と強調した。 連合は今年の春闘に向けた統一要求の賃上げ目標を「5% 以上を目安」と設定。 昨年の「5% 程度」より表現を強め、傘下の産業別労働組合も要求額を過去最高とする方針が相次ぐ。 一方、中国訪問中でビデオメッセージとなった経団連の十倉雅和会長は「物価動向を重視し、ベースアップを念頭に置きながら、できる限りの賃金引き上げの検討、実施を」と呼びかけた。

経団連会長と連合会長、共にデフレ脱却に言及

労使がそろって賃上げに積極的なのは、デフレ脱却に向けて賃金と物価がともに上がる社会を実現したいという考えで一致しているからだ。 十倉会長は「今回のインフレはデフレから完全脱却できる千載一遇のチャンス」と指摘。連合の芳野会長も「日本で長く続いたデフレから脱却できるか否かのカギを春闘が握っている」とした。 日本経済は、1990 年代のバブル崩壊や金融危機を経てデフレに突入。 連合の集計によると、年齢などに応じて上がる定期昇給(定昇)を含めた賃上げ率は 2000 年代に 2% を割り込んでいった。 中でも、賃金体系を底上げするベースアップ(ベア)がほとんどない時期もあった。

昨年は歴史的な物価高を受けて、賃上げ率が 3.58% となり、30 年ぶりの高い水準となった。 ただ、物価高への対応として重要なベアは 2.12% にとどまった。 22 年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く)の上昇率 3.0% に届かず、物価の影響を考慮した実質賃金は昨年 11 月分まで 20 カ月連続で前年割れが続く。 今春闘で物価上昇を上回るベアが実現するかも大きな焦点になる。 各労組の賃上げ要求は 2 月以降に本格化し、大企業の回答は 3 月中旬に集中する見通しだ。 (片田貴也、北川慧一、asahi = 1-24-24)


金属労協のベア要求「月 1 万円以上」へ 来春闘、現在の方式で最高額

自動車や電機などの産業別労働組合(産別)でつくる金属労協は 27 日、2024 年春闘で基本給を底上げするベースアップ(ベア)の統一要求額を「月額 1 万円以上」とすることで最終調整に入った。 今春闘の「6 千円以上」から大幅に引き上げ、現在の要求方式で過去最高だった 1998 年(7 千円)を上回る。 金属労協の関係者への取材で分かった。 12 月 6 日に開く協議委員会で正式に決める。 年齢や勤続年数に応じた定期昇給を前提に、ベアの要求を検討してきた。

22 年まで 7 年連続で「3 千円以上」としてきた。 今年は物価上昇や、企業の業績がコロナ禍前の水準に回復していることを踏まえ、前年の 2 倍に引き上げた。 その後も物価上昇は続き、働き手の購買力を示す実質賃金のマイナスが続いていることなどから、来年はさらなる賃上げをめざす。 来年の春闘の賃上げをめぐっては、労働組合の中央組織・連合が 10 月、統一要求の賃上げ目標を「5% 以上」とする方針を発表。 今春闘の「5% 程度」より表現を強め、定期昇給分の 2% 確保を前提に、ベア目標を 3% 以上としている。

金属労協は自動車や電機、鉄鋼・造船・重機、中小製造業などの産別で構成し、組合員数は約 200 万人にのぼる。 傘下にはトヨタ自動車や日立製作所、日本製鉄など日本を代表する企業の労組も多い。 金属労協の要求方針を参考に産別が方針を決め、各単組も要求を出すことから、波及効果は大きい。 金属労協傘下の産別で中小製造業の労働組合でつくる「JAM」は今月 21 日、ベアを「月額 1 万 2 千円」とする方針案を発表した。 1999 年の JAM 結成以来、過去最高の水準となる。 組合員の所定内賃金の平均額を基に換算したベアは 4% 程度となるという。 (片田貴也、asahi = 11-27-23)



非正社員にも賃上げ広がる 春闘、正社員上回る上げ幅も

今春闘で契約社員やパートら非正社員の賃上げが相次いでいる。 人手不足を背景に時給を引き上げるほか、賃金を底上げするベースアップ(ベア)で正社員より契約社員を優先させる企業も出てきた。 今後も継続的に賃上げが続くことが、正社員との格差が縮まるかどうかのカギとなる。

大丸松坂屋百貨店は、従業員の約 4 分の 1 にあたる約 1,500 人の契約社員らを対象に、月額で一律 1 千円のベアを実施する。 大丸と松坂屋が 2007 年に経営統合して以来初めてだ。 正社員のベアは要求しておらず、労組の林幹夫書記長は「待遇の低い契約社員を優先した」と話す。 対象者からは「賃金が上がることで士気が高まる」と喜ぶ意見が多いという。 (asahi = 3-24-15)

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非正規雇用の賃上げ、昨年を上回る可能性 = 甘利経済再生相

[東京] 甘利明経済再生相は 24 日、閣議後の会見で、非正規雇用の賃上げが昨年を上回る可能性があるとの見方を示し、賃上げの広がりを好感した。 一方で、経済の好循環を確実にするために、政労使会議を近く開催し、引き続き賃上げの拡大などを要請すると語った。 現時点での非正規の賃上げについて「昨年は 12 円、今年は 20 円で、このまま最終回答までいくと昨年をかなり上回る」と見通した。 さらに「安倍内閣になって、非正規・正規、男性・女性の賃金格差が縮小しつつある」とし「良い傾向だ」と語った。

そのうえで、景気回復の好循環を中小企業に波及させるために政労使会議を近々開き、「賃上げ拡大、下請け代金の改善などに向けての努力を引き続き要請することになるだろう」と語った。 政府が春闘に未来永劫関与することは好ましくないとしながらも、現時点では「今年、来年、その先もずっと賃上げが景気の好循環を後押ししていくサイクルに入れるよう環境整備していく」と語った。

株高は日本経済への期待の表れ、「もや」が取れつつある

2 万円の大台乗せも視野に入る最近の株高の背景については「日本経済への期待」の表れだとした。 「日本経済が回復基調にあり、次第に先のもやが取れつつあることへの市場の期待だ」と述べた。 過熱感があるかとの質問にはコメントを控えた。 (吉川裕子、Reuters = 3-24-15)


春闘の平均賃上げ額 7,497 円、2.43% に

連合は 20 日、2015 年春闘の第 1 回集計結果を公表し、経営側から回答を得た 798 組合の平均賃上げ額は 7,497 円(賃上げ率 2.43%)となった。 14 年春闘の第 1 回集計の 6,491 円 (2.16%) を 1,006 円上回り、2000 年以降で最も高い水準となった。 組合員数 300 人未満の中小企業の 419 組合では、平均賃上げ額は 5,747 円 (2.26%) で、14 年春闘の 5,560 円 (2.22%) よりわずかに改善した。

また、基本給を底上げするベースアップ(ベア)の実施が確認できた 509 組合の平均ベア額は 2,466 円で、14 年春闘の 1,279 円の倍になった。 非正規従業員の賃上げでも、これまでに回答を得た 55 組合の平均賃上げ額(時給)は 19.67 円で、14 年春闘の 11.97 円から大幅に上昇した。 (yomiuri = 3-20-15)


春闘は高額回答相次ぐ、中小への波及が焦点に

[東京] 2015 年春季労使交渉(春闘)で、主要企業は 18 日、労働組合の要求に対して一斉に回答した。 焦点となった賃金を一律に引き上げるベースアップ(ベア)は、トヨタ自動車が月額 4,000 円(前年 2,700 円)で決着。 パナソニックや日立製作所など、大手電機 6 社も月額 3,000 円(前年 2,000 円)とした。 安倍政権の賃上げ要請を受け、前年を上回る高水準の回答が相次いだ。 ただ、労働者の 7 割を占める中小企業は依然として慎重な姿勢を崩しておらず、所得から消費への前向きな循環が強まるかどうかは不透明だ。

高額回答相次ぐ自動車・電機

トヨタのベア 4,000 円は現行の要求方式となった 2002 年以降で最高となった。 定期昇給分を含む賃上げ額は 1 万 1,300 円 (3.22%) にのぼり、消費税増税分の 3% を上回る。 会見した上田達郎常務役員は「通常であればなかなか難しい金額だが、将来の投資。 日本経済の好循環、会社の競争力向上のために熟慮熟慮を重ねた結果、こういった回答を出した。」と語った。 日産自動車のベアはトヨタを上回る月額 5,000 円(前年 3,500 円)で決着。 年間一時金は 5.7 カ月と満額回答となった。

日立はベア 3,000 円、年間一時金 5.72 カ月。 ベア実施は 2 年連続で、現行の要求方式となった 1998 年以降で最高額となる。 一時金は要求の 5.9 カ月には届かなかったが、前年の 5.62 カ月は上回った。 三菱電機の一時金 6.03 カ月と 2008 年の 5.83 カ月を上回り、過去最高となった。 会見した電機連合の有野正治中央執行委員長は「役割りを一定程度果たせた」としながらも、「組合員の 7 割を占めるグループ企業や中堅・中小企業にこの結果がどれくらい波及していくかがポイントだ」と述べ、焦点は今後本格化する中小企業の労使交渉に移るとの見方を示した。

人手不足で流通・外食も動く

流通や外食企業では、円安や増税後の消費停滞など取り巻く環境は厳しいものの、人手不足もあり、ベアを実施する企業が相次いでいる。 2015 年 2 月期で 28 期連続で増収増益が見込まれるニトリホールディングスは、12 年連続でのベア実施を決めた。 ベアは 5,042 円 (1.56%) となり、ベアや定期昇給を含む月額賃金改定は 3.16% 増の平均 1 万 0,185 円で妥結。 一時金は 0.38 カ月増の 5.20 カ月。 一方、パート・アルバイト社員についても、時給を 30.5 円 (3.35%) 引き上げる。 パート・アルバイトのベアは 2 年連続だという。

牛丼「すき家」を運営するゼンショーホールディングスは、定昇 1.85% (5,700 円)、ベア 0.65% (2,000 円)で正社員の月例給は 2.50%、7,700 円引き上げる。 菅義偉官房長官は 18 日午前の記者会見で「過去 15 年で最高だった昨年の水準を上回るような、力強い賃上げの動きが広がっている。 さらに関係の業界や会社に広がることを期待したい。」と述べた。

厳しい状況続く中小企業

ただ、円安によるコスト増などに苦しむ中小企業が賃上げに踏み切れるかどうかは不透明だ。 加盟する組合の 8 割が従業員 300 人未満の中小企業で構成されている、ものづくり産業労働組合 JAM の眞中行雄会長は、加盟組合の年間一時金の要求がほぼ前年並みにとどまったことなどを踏まえ「中小にはアベノミクスの効果が表れていない」と厳しい見方を示した。

ロイターが 17 日に公表した企業調査によると、今年の大企業・中堅企業の賃上げは、トヨタなど一部の好収益企業を除き、前年を超える勢いが広がっているとは必ずしも言えない結果となった。 前年を上回る賃上げ率を予定しているのは全体の 14% で、ベアを予定していないと回答した企業は 39% に達した。 4 月の賃金改定後のベースで、昨年の 3% の消費増税前と比較した賃金上昇幅は 76% が「2% 以下」となり、増税分をカバーできていない。 (志田義寧 白木真紀 清水律子、Reuters = 3-18-15)


日産、ベア月 5 千円で決着 トヨタを上回り最高水準に

日産自動車の 2015 年の労使交渉が、賃金体系を底上げするベースアップ(ベア)を月 5 千円とすることで事実上決着した。 すでに決着したトヨタ自動車の 4 千円を上回り、自動車や電機などの大手製造業のなかでも最高の水準となる。 日産の昨年実績は、組合の要求に対して満額となる 3,500 円だった。 今回、組合は 6 千円を求めていた。 これに対して経営側が 5 千円で応じることで、1 人あたりの賃上げは、これまでの賃金体系を維持するための 6 千円とあわせて 1 万 1 千円となる。 年間一時金は、5.7 カ月分の要求に対し満額回答する。

日産の 1 万円を超える賃上げの水準は、1990 年代前半以来だという。 同社は北米市場などでの販売が好調で、15 年 3 月期の売上高が過去最高を更新する見込みだ。 経営側は 18 日に正式に回答する。 (asahi = 3-17-15)


トヨタ、ベア 4 千円決着へ 2002 年以降で最高額

トヨタ自動車の 2015 年春闘は 15 日、賃金体系全体を底上げするベースアップ(ベア)について、月 4 千円を回答することで事実上決着した。 要求の 6 千円には届かないものの、昨年の 2,700 円から大きく積み増す。 18 日に正式回答する。

定期昇給にあたる 7,300 円に、ベア 4 千円を加えて 1 万 1,300 円の賃上げとする。 トヨタのベアは 2 年連続。 比較できる 2002 年以降では最高額になる。 15 年 3 月期に 2.7 兆円の空前の営業利益を見込むなか、従業員への還元を進めて消費を促す姿勢を示し、日本経済全体の好循環につなげる考えだ。 一時金は、要求通り 6.8 カ月分を満額回答する。 昨年と同じ月数だが、金額では昨年を約 2 万円上回る 246 万円になる。 (asahi = 3-15-15)


トヨタ、富士重など、一時金満額回答へ ベアは上乗せ交渉も

2015 年春闘の労使交渉は、相場形成に影響力をもつ自動車や電機の大手で最終局面に入った。 焦点のベースアップ(ベア)については自動車メーカー各社で前年実績を上回る水準で最終調整が進められる一方、一時金(ボーナス)は多くの組合で要求通り満額回答となる見通し。 電機メーカーは 14 日、ベアを月額 3 千円とすることで労使が事実上決着した。

自動車各社の組合でつくる自動車総連の相原康伸会長は 14 日、東京都内で開いた会見で一時金については「おおむね半数を超える(傘下の)組合で満額との報告を受けている」と明らかにした。 トヨタ自動車(組合要求 6.8 カ月)、富士重工(同 6 カ月)などが満額支給の見込み。 ベアについては各メーカーの組合はそろって月額 6 千円を要求。 トヨタ自動車は過去最高となる月額 4 千円前後で労使が調整しているほか、日産自動車や富士重工業なども前年実績を上回るベアを実施する見通しだ。

相原会長は「経営側が満額で答える実態にはなく、要求水準とのギャップはまだ解消されていない」と述べ、18 日の集中回答日に向けて上乗せ交渉を進める姿勢を示した。 電機メーカーの労組でつくる電機連合も同日、東京都内で経営側と最後の労使交渉を行った。 経営側は前年回答額を千円上回る 3 千円とする方針。 (東京新聞 = 3-15-15)


日航、14 年ぶりベア実施へ 業績好調で一律 2 千円

日本航空は今春闘で、毎月の賃金水準を底上げするベースアップ(ベア)を 14 年ぶりに実施する。 組合員が最も多い「JAL 労働組合」が 1% 相当のベアを要求したのに対し、全社員に一律 2 千円のベアを行うと回答した。 2010 年の経営破綻(はたん)後に社員を約 3 割減らし給与も約 2 割下げたが、業績が好調なため待遇を改善する。

会社回答は、要求の 1% 相当には届いていないという。 JAL 労組によると、前回ベアがあった 01 年は、2,700 円を要求し、500 円を獲得した。 これ以降、ベア要求を見送ってきた。 00 年代前半は米国同時多発テロや SARS (重症急性呼吸器症候群)の流行、イラク戦争などで国際線の不振が続き、その後は日航が深刻な経営難に陥ったためだという。

日航は経営破綻後、路線を縮小してコスト削減を進めてきた。 公的資金による再建で負債が大幅に減った影響もあり、15 年 3 月期の営業損益は 1,670 億円の黒字になる見通し。 黒字幅はライバルの ANA ホールディングスの約 2 倍に達する。 ANA の労組も今春闘で、3,500 円のベアを要求している。 ANA のベア要求は 08 年以来だ。 (上栗崇、asahi = 3-13-15)


電機大手、ベア 2 千円台後半で調整 前年超え確実に

電機大手の春闘交渉は、毎月の賃金水準を底上げするベースアップ(ベア)について、2 千円台後半を軸に調整に入った。 今の要求方法で最高だった昨年の 2 千円を超えるのは確実だ。 労使は 18 日の集中回答日に向け、ベアの水準を週内にも決着させる構えだ。 ベアの水準は、パナソニック、日立製作所、東芝、富士通、NEC、三菱電機の労務担当役員と、各社の労組を束ねる電機連合の幹部が統一交渉する。 水準は、ほかの電機メーカーの労使交渉にも影響を与える。 9 日の統一交渉では、電機連合が昨年を上回るベアを求め、経営側は「物価に配慮する」と認める考えを伝えた。

ただ経営側は、IT や新興国のインフラなど一部の事業で先行きに不安があることや、消費者物価見通しが下ぶれしていることを指摘した。 労組が要求しているベア 6 千円はもとより、昨年を大きく上回る回答には否定的だ。 それでもある大手幹部は、「2,500 円は下回らない」と言う。 (asahi = 3-11-15)


春闘の潤い届かぬ中小企業、賃上げ格差広がる懸念

[東京] 国内景気の先行きに不透明感が続く中、今年の春闘は、政府や経団連などの賃上げ要請を受け、大手企業が昨年を上回る回答に動く可能性もある。 大企業の賃金水準が高まれば、その恩恵がいずれ中小企業や家計に波及する「トリクルダウン(したたりおちる)効果」があるというのが「アベノミクス」のシナリオだ。 しかし、その潤いを感じている中小企業はまだ決して多くはない。

「昨年の労使交渉では安倍首相の賃上げ要請について言及したが、会社側にはそれは関係ないと言われた。」 片倉工業の子会社で、東京・八王子に本社を構える消防車メーカー、日本機械工業。 従業員 155 人のうち、124 人が所属する同社労組の山口弘宣書記長はこう語り、賃上げ環境の厳しさを強調した。

実感少ないアベノミクスの恩恵

昨年の春闘では、安倍政権による賃上げ促進の追い風を受け、日本労働組合総連合会(連合)側がベア 1% を要求、最終的に 0.4% の伸びが実現した。 今年の連合要求は 2%。 賃上げには経団連も企業側に働きかけを強めており、ロイターの取材によると、ベアや手当を含めたベースで「1% の攻防」になるとみられている。

大手企業側は、組合側の要求には難色を示しつつも、賃上げ幅は昨年の水準を上回る可能性もある。 しかし、円安によるコスト増などに苦しむ中小企業の状況は厳しく、日本商工会議所の調査では、15 年度に所定内賃金を引き上げる予定であると答えたのは昨年 12 月時点で回答企業 3,156 社中、33.5% にとどまり、前年同時期の 40% 程度を下回った。

この背景にあるのは、アベノミクス下で広がる大手と中小の収益格差だ。 日銀による異次元緩和は、トヨタ自動車のような大きな輸出企業に恩恵をもたらした。 しかし、多くの小規模企業にとって、「円安による輸入コストは吸収できない水準にあり、それが十分価格転嫁できていない(商工会議所)」状況が続く。 財務省が昨年 12 月に公表した 2014 年 7 - 9 月期の法人企業統計調査によると、資本金 10 億円以上の大企業の売上高経常利益率は 5.9% だったが、資本金 1,000 万円から 1 億円までの小規模企業は 2.8% にとどまった。

中小企業庁によると、日本の 4,000 万人超の従業員うち、大企業は 3 割強にとどまり、7 割弱は中小企業で働く。 大企業が大盤振る舞いをしても、そのほかの多くの中小企業が追随しなければ、消費主導の景気回復は望めない。 「トリクルダウン効果」を声高に語る政府に対し、労組側や一部のエコノミストから厳しい指摘も少なくない。

三井住友アセットマネジメントのシニアエコノミスト、武藤弘明氏は「生産性を上げると賃金は上昇するが、政府による賃上げの再要求は本末転倒だ。 政府が笛を吹いても、企業は踊らないだろう。」と冷めた見方。 BNP パリバ証券のシニアエコノミスト、白石洋氏も「政府は少数の大企業、特に利益面で極めて順調な主要輸出企業に賃上げを要請している。 多少は成果があるかもしれないが、マクロレベルでの影響は限られる。」と話す。

機械・金属産業を中心に 2,400 の労働組合が加盟、35 万人の組合員を抱えるものづくり産業労働組合 JAM の総務・企画グループ長、五味哲哉氏は、サプライヤー(部品供給企業)は常に大手からの値下げ圧力にさらされており、「たとえ小規模の会社が稼いでも、親会社を上回る賃上げは難しい」と指摘する。

強まる賃上げ要請、中小は蚊帳の外

政府の賃上げ要請を受け、今春闘では大手企業の労組側が大幅アップへの攻勢を強めている。 25 日には大企業の春闘相場に強い影響力を持つトヨタの労使交渉が始まったが、大手自動車メーカーの各労組は、ベースアップ(ベア)に当たる賃金改善分として月額 6,000 円を要求。 実現すれば、前年実績 2,700 円を大きく上回る賃上げとなる。

トヨタ労組はこれに加えて、賃金制度維持分の月額 7,300 円と 6.8 カ月分の賞与を求めている。 合計 1 万 3,300 円の賃上げ要求額は 1998 年(1 万 3,000 円)以来の高水準だ。 組合の要求に対して、同社の上田達郎常務役員は「要求は非常に高額で、そのまま回答するのは到底不可能だと言わざるを得ない」との難色を示すものの、最終的な妥結水準は昨年を上回る可能性もある。

だが、八王子の消防車メーカー、日本機械工業の労組にとって、こうした大手優良企業の春闘は別世界の出来事に映る。 「今年も同じ回答だろう - 。」 同労組の山口書記長は、組合事務所と売店を兼ねた木造の小屋で、お茶をすすりながら、こうつぶやいた。

同社は 2008 - 09 年の金融危機を受け、賃金カットに踏み切った。 昨年はこの一部が回復したものの、組合側は家計費の上昇に見合っていないと主張。 同組合が 1 月に公表した調査では、40% 以上の組合員が現在の生活水準に「大いに不満」と回答しており、その比率は前年の 35% からむしろ上昇している。 賃上げ交渉についてのロイターの取材に対し、会社側はコメントを拒否している。 (ティム・ケリー、スタンレー・ホワイト、Reuters = 2-27-15)


自動車・電機、ベア実施へ 2 年連続 物価上昇上回るか焦点

春闘相場を引っ張る自動車や電機の大手メーカーは今春闘で、2 年連続で賃金水準を底上げするベースアップ(ベア)を実施する方向だ。 円安などで業績が上向いているためだ。 来月 18 日の集中回答日に向けて各社の労使交渉が続くが、物価の上昇ペースをベアが上回れるかが焦点となる。 トヨタ自動車や日産自動車など自動車大手の労組は 18 日までに、6 千円のベア要求で足並みをそろえた春闘の要求書を経営側に提出した。 電機でも、東芝と NEC が 18 日に要求書を出した。 日立製作所やパナソニックも 19 日に出すが、いずれもベア要求は 6 千円だ。

要求を受けて、トヨタや日産などは 2 年連続でベアに応じる方向で検討に入った。 東芝、NEC など電機大手も、統一交渉を行う6社を中心にベアの水準の検討を始めた。 多くの自動車・電機大手は、好業績を背景に、景気の「好循環」をめざす安倍政権が求める賃上げに応じられると判断している。 企業が求める法人税減税などを進めた安倍政権に協力姿勢を示す狙いもある。 大手自動車の幹部は「デフレ脱却の正念場で、賃上げが必要だと考えるのは妥当」と話す。

昨春闘では、自動車・電機大手は労組側の 3,500 - 4 千円の要求に対し、800 - 3,500 円を回答。 ただ、昨春の消費増税の影響などで物価上昇がベアを上回り、消費への影響は限定的だった。 今春闘では、経営側が昨年を上回るベアに応じるかが注目される。 (asahi = 2-19-15)


企業の 48.3% 「賃金改善を見込む」 06 年以来最多

信用調査会社の帝国データバンクは 16 日、来年度に賃金の改善を見込む企業は 48.3% で 2006 年に調べ始めてから最高だったとの調査結果を発表した。 労働力を確保しようと賃金改善を見込む企業の割合が、前回比で大幅に増えた。 同社は毎年 1 月に翌年度の賃金動向について企業に聞いている。 今回は 1 万 794 社が回答した。 改善の内容はベースアップが重視され前回調査比 2.7 ポイント増の 36.7% だった。 一方、一時金は 0.4 ポイント減の 27.4% だった。 (asahi = 2-16-15)


自動車・電機労組、ベア 6 千円で足並み 00 年以降最高

春闘を先導する自動車や電機大手の労組は、今春闘で 6 千円のベースアップ(ベア)を求めることで多くの足並みがそろいそうだ。 賃上げ率は 2% 前後で、今年度の消費者物価の上昇幅(日銀の見通しで 2.9%)には及ばない。 だが、昨年の獲得額を大幅に上回り、2000 年以降で最高の要求額だ。

トヨタ自動車労働組合は 29 日、月 6 千円のベアを求める案を組合員に示した。 一時金は、満額回答を受けた昨年と同じ年 6.8 カ月分。 来月 18 日に会社に要求を出す。 日産自動車やホンダ、三菱自動車、マツダなどほかの自動車大手も、6 千円の要求を固めている。 昨年はトヨタが 4 千円、ほかが 3,500 円と分かれた。 (asahi = 1-30-15)