春闘賃上げ率 5.42% サービス分野などで伸び 連合の第 3 回集計

労働組合の中央組織・連合が 3 日発表した今年の春闘の第 3 回集計結果で、定期昇給(定昇)を含む正社員の賃上げ率は平均 5.42% となり、前年同期を 0.18 ポイント上回った。 2 年連続で 5% 台の高水準が続いており、業種別では昨年の春闘で苦戦したサービス関連などが大きく伸びた。 1 日午前 10 時までに回答があった傘下の 2,485 組合分をまとめた。 基本給を底上げするベースアップ(ベア)は、明確にわかる 1,986 組合分の平均で 3.82% となり、前年同期より 0.19 ポイント上昇した。

業種別では、昨年の春闘で定昇とベアを含めた賃上げ率が 3% 台にとどまった交通やサービス関連の伸びが目立った。 サービス・ホテルは前年同期比 1.32 ポイント増の 5.04%、交通運輸は同 1.42 ポイント増の 4.68% だった。 一方、製造業は同 0.12 ポイント減の 5.65%、商業流通は 0.68 ポイント減の 4.78% だった。

サービス分野の伸びについて、流通や外食などの労組でつくる産業別組織、UA ゼンセンの永島智子会長は記者会見で「インバウンド(訪日客)効果で経営が改善している影響は非常に大きいが、すべての業種で人手不足となっていることが賃上げの大きな要因ではないか」と述べた。 一方、組合員 300 人未満の中小 1,441 組合の賃上げ率は、前年同期を 0.31 ポイント上回る平均 5.00% だった。 3 月下旬に発表した第 2 回集計では割り込んでいた 5% 台を再び回復した。 (北川慧一、asahi = 4-3-25)


春闘賃上げ率 5.40% 中小は 5% 台割る 連合が第 2 回集計

労働組合の中央組織・連合が 21 日に発表した今春闘の第 2 回集計で、定期昇給を含む正社員の賃上げ率は平均 5.40% となり、昨年同期を 0.15 ポイント上回った。 14 日公表の初回集計 (5.46%) に続き、2 年連続で 5% 台を確保した。 一方、中小労組の賃上げ率は、初回集計の 5% 台を割り込んだ。 19 日午後 5 時までに回答があった傘下の 1,388 組合分をまとめた。 基本給を底上げするベースアップは、明確にわかる 1,116 組合分で平均 3.79% となり、昨年同期より 0.15 ポイント増えた。

組合員 300 人未満の中小 724 組合の賃上げ率は、昨年同期を 0.42 ポイント上回る平均 4.92% だった。 高水準は維持しているものの、初回集計で 1992 年以来 33 年ぶりに超えた 5% は維持できなかった。 連合は「集計が進むなかで、高水準とは言えない回答も含まれ始めた」としている。 芳野友子会長はこの日の会見で、「企業規模にかかわらず引き続き高水準(の賃上げ)を維持しており、新たなステージの定着にむけて着実に前進している」と話した。 (片田貴也、asahi = 3-21-25)


航空業界、ベア平均 1 万 1,300 円 「業種間格差」を縮める動きも

航空業界の労働組合でつくる産別組織「航空連合」は 18 日、今春闘での賃上げ要求と回答の集計状況を発表した。 すでに回答を得た労組では平均で月 1 万 1,308 円 (3.81%) のベースアップ(ベア、賃金改善)を引き出したという。 航空連合が求めていた「月 1 万 2 千円 (4%)」の水準には届いていないが、昨年の回答を上回った。 加盟する 58 労組のうち、17 日までに 38 労組が会社側から回答を得た。 平均で月 1 万 1,161 円 (4.02%) のベアを獲得した昨年の春闘と比べ、まだ途中段階ではあるが、額としては過去最高の水準で推移している。

日本航空グループでは、昨年の回答額を下回る月 1 万円のベア回答となった。 一方、空港で地上業務を担うグランドハンドリング(グラハン)などの会社では、航空連合の要求水準を上回る回答が多かった。 人手不足が深刻なグラハン業界には、航空会社などに見劣りしない水準に賃金改善する動きがあり、関西の加盟労組では月 1 万 5 千円のベア回答を引き出した事例もあったという。 また、「額」ではなく「率」でベアを要求した労組が大幅に増えたことも今年の特徴だ。 定率でベア要求したのは、昨年の春闘では 2 労組だったが、今年は 17 日までの段階ですでに 13 労組に上っている。

定額のベアでは中堅層以上が受ける賃上げの恩恵が若手に劣る一方、定率だと全世代で生活改善を実感しやすいため、要求方式を切り替えた労組が多かったという。 ただ、定率で回答したのは 2 社にとどまった。 航空連合の内藤晃会長はこの日の会見で「グラハンなど賃金水準が低い業種では、(航空連合が掲げるベア) 1 万 2 千円を大きく超える要求をすることで業種間格差を埋めていきたいといった思いもある」と指摘。 今後も賃上げの勢いを継続させるには、「生産性を向上して人への投資の原資のパイ(総額)を拡大していくといった取り組みが重要だ」と語った。 (中村建太、asahi = 3-18-25)


JR 九州、ベア 1 万 5,528 円 若年層に手厚くする方針

JR 九州は、55 歳未満の一般職の平均で、ベースアップ(ベア)月 1 万 5,528 円 (5.6%) とすると発表した。 定期昇給分の月 4,166 円 (1.5%) .5(1.5%)を合わせ、全体で月 1 万 9,694 円 (7.1%) の賃上げになる。 夏季手当は 2.6 カ月分を支給し、一時金 25 万円も併せて支給する。 ベアは若年層に手厚くする考え方で、年齢に応じて 1 万 5 千 - 1 万 8 千円の幅を持たせるという。

最大労組の九州旅客鉄道労働組合は、1 万 5 千円のベアと諸手当などを含めて平均 6% 以上の賃上げ、夏季手当 3.0 カ月などを要求していた。 一律に支給する 25 万円の一時金は、2024 年度まで 3 年間の中期経営計画の目標が達成見込みとなったことに対し、従業員への感謝の意を込めたものだという。 (asahi = 3-13-25)


楽器のヤマハ、ベア 1 万 5 千円 要求下回るも過去最高

楽器大手のヤマハは、賃金体系を底上げするベースアップを 1 万 5 千円とする回答を労働組合に示し、発表した。 1 万 7 千円の要求には満たないとはいえ、過去最高の賃上げとなる。 年間一時金は、満額回答の年 5.2 カ月分。 中国でのピアノ需要の低迷で経営環境は厳しいが、山浦敦社長は「経済の好循環に向けた企業の役割や物価上昇を考慮した」とコメントした。 初任給は、大卒で 26 万 3 千円、高卒で 21 万 3 千円と、それぞれ 1 万 3 千円ずつ引き上げる。 (asahi = 3-13-25)


スズキ、要求上回る回答 賃上げ 2 万 1,600 円

スズキは、今年の春闘で、ベースアップと定期昇給を合わせた 2 万 1,600 円の賃上げを労働組合に回答したと明らかにした。 労組要求の 1 万 9 千円を上回る。 年間一時金は要求通りの年間 6.6 カ月分で、過去最高だった昨年の 6.2 カ月を上回る。 同社は、要求を上回る回答について「チームスズキが一人ひとりの能力を向上させる期待値」と説明した。 (asahi = 3-12-25)


日鉄のベアは 1 万 2 千円 満額には届かず 背景に中国発の「逆風」も

日本製鉄は 12 日午後、1 万 2 千円のベースアップ(ベア)を労働組合に回答したと発表した。 ベア分の賃上げ率は 3.6%。 労組が要求した 1 万 5 千円 (4.5%) には届かなかった。 背景には中国発の「逆風」もありそうだ。 昨年の春闘では、労組要求の 3 万円を上回る過去最高の 3 万 5 千円 (11.8%) を回答していた。 「事実上の 2 年分」との見方もあった。

今年の回答について日鉄は「昨年に引き続き足元の物価上昇を上回る大幅な改定」と強調し、昨年の水準や今年の要求を下回った理由についての言及は避けた。 要求を下回る回答となった背景には業界を取り巻く環境の悪化もあるとみられる。 鉄鋼業界では、世界最大の生産国である中国で不動産不況が長引き、大量に余った鉄鋼が世界各地に輸出されている。 昨年の日本への流入は普通鋼も特殊鋼も前年比でおよそ 2 割増えた。 汎用品の市況を下押ししている。

日鉄の経営側は、こうした「逆風」を乗り切るためにも生産性を引き上げたい考え。 今回の回答についてのコメントの中で「従業員には、自己の生産性を徹底的に高めることを通じて、処遇改善に必要な原資を自ら獲得していく強い気概と緊張感を持ってほしい」と呼びかけている。 (山本精作、asahi = 3-12-25)


第一生命 HD、賃上げ 7% 妥結 営業職員も「30 年で最大級」のベア

第一生命ホールディングスは 10 日、定期昇給とベースアップなどを合わせて、4 月に国内社員の賃金を平均 7% 引き上げると発表した。 営業職員も含めた約 5 万 2 千人が対象となる。 この賃上げには、「過去 30 年で最大級」という一律 1 万円のベアも含まれる。 営業職員は成果による報酬の割合が大きいため、ベアのような対応は通常していないが、「昨今の物価高による生活費などへの影響などを総合的に勘案した(同社)」という。 (東谷晃平、asahi = 3-10-25)


電機連合、主要労組でベア「月 1 万円以上」を下限に 前年と同水準

電機メーカーの労働組合でつくる電機連合は 10 日、今年の春闘で要求している、基本給を底上げするベースアップ(ベア)相当分について、主要労組では「月 1 万円以上」を妥結の最低水準とする方針を決めた。 物価高などを踏まえて、比較できる 1998 年以降で最高だった前年と同水準とした。 電機連合は、主要労組がベアの要求額をそろえる統一交渉を慣例とする。

今春闘では、ベア相当分の要求目標を「月 1 万 7 千円(5% 程度)以上」とし、主要 12 組合が同じ額を要求している。 12 日に経営側から回答を受ける予定だ。 電機大手では事業構造や業績に違いがあるため、電機連合は妥結額に差が出ることを容認している。 一方、「歯止め基準」とも呼ばれる妥結額の下限を定め、下回った場合に各労組がストライキに踏み切るかどうかの判断基準としている。 (高橋豪、asahi = 3-10-25)


春闘 JR 東、ベア 1 万 3,782 円 会社発足以降で最高

定期昇給と合わせた賃上げは平均で月 2 万 171 円となり、これも過去最高という。 会社側は「足元の業績や中長期的な経営見通し、生産性向上に向けた取り組みの進捗を踏まえるとともに、物価等の生活実態などを総合的に勘案した」とコメントした。 夏季手当は 2.8 カ月分の支給で回答した。 JR 東労組は 3.2 カ月分を要求していた。 (asahi = 3-7-25)



大企業の賃上げ率 5.58%、33 年ぶり高水準 今春闘、経団連集計

経団連は 20 日、大企業の春闘の回答・妥結状況(1 次集計)を発表した。 定期昇給と、賃金体系を底上げするベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ率は 5.58%。 昨年の 3.99% (最終集計)を大きく上回り、バブル崩壊直後の 1991年以来、33 年ぶりの高水準となった。 原則として従業員 500 人以上の大手企業を対象に、この日までに報告があった 16 業種 89 社分を集計した。 賃上げ率が 5% を超えたのも 91 年の 5.60% (最終集計)以来だ。 経団連は「今夏にまとめる最終集計でも 5% 台の水準になることはほぼ確実」とみている。 月例賃金の平均引き上げ額は 1 万 9,480 円で、比較可能な 76 年以降で最高となった。

賃上げ率が高くなった要因について、経団連は「物価上昇による賃金の目減りを防ぐことに加え、人材の確保・定着のためにベアを実施した企業が昨年より増えた。 とくに地方の企業でその動きが強まっている。」とする。 業種別にみると、鉄鋼や造船、非鉄・金属などで賃上げ率が 6% を超えた。 熟練工の確保・定着に向けて賃上げの必要性が高まっていることが背景にある。 人手不足感が強い建設業も 5.85% に達した。

長くデフレに苦しんだ日本の大企業は賃金を抑える傾向が続き、経団連が「ベアは論外」と宣言した時期もあった。 経団連は今春闘で、賃金と物価の好循環によるデフレ脱却をめざす立場から、大企業で 4% 以上の賃上げをめざす考えを表明し、前年以上の賃上げを呼びかけた。 労働組合の中央組織・連合が掲げた「5% 以上が目安」とした目標についても、「労使の検討・議論に資する」としていた。 大幅な賃上げの実現を受け、「来年は賃上げのモメンタム(勢い)をしっかりと定着させる年にしたい。 賃上げを当たり前の社会的規範にしていくことが大事」とする。

一方、労働組合の中央組織・連合が今月公表した春闘の第 5 回集計結果では、従業員 300 人未満の中小企業に限ると賃上げ率は 4.66% にとどまり、大企業との賃上げ格差が表面化している。 中小企業が賃上げの原資を確保できるよう、大企業が適切な価格転嫁に率先して取り組むかどうかが問われている。 経団連の十倉雅和会長は今月 7 日の記者会見で「デフレ下で労務費の転嫁は否定的に見られていたが、付加価値を生む商品やサービスでは労務費を含めて転嫁するのは当たり前のことだ」と述べ、会員企業に意識改革を促した。 (木村裕明、asahi = 5-20-24)


中小企業の賃上げ幅、大手との差 2 倍以上に拡大 コスト転嫁が進まず

今年の春闘で、中小企業に対する賃上げ回答が本格化している。 主要製造業の産業別組織でつくる金属労協が 2 日発表した中小労組が獲得した賃上げは平均で月 8 千円を超え、比較可能な 2014 年以降で最も高い。 ただ、上げ幅では大手との差は広がっており、持続的な賃上げには課題が残る。 金属労協の集計では、組合員 300 人未満の中小労組で、賃上げを獲得した 598 組合の平均額は月 8,019 円だった。 一方、1 千人以上の大手労組の 190 組合は 1 万 2,389 円で、中小との差は 4,370 円。 大手と中小の差は、前年同時期 (1,818 円) の 2 以上に広がった。

賃上げ幅の差が広がる背景には、大手との人件費比率の違いがある。 企業が人件費にどれだけ回しているかを示す「労働分配率」を、財務省の 3 法人企業統計(金融・保険業除く)のデータを分析すると、10 年度以降、資本金 1 億円未満の中小企業は 70% %ほどで推移しているのに対し、10 億円以上の大企業は足元で 40% を割り込む。 限られた収益のなかから人件費を捻出している傾向が読み取れる。 さらに、中小企業は取引上の立場が弱いとされ、原材料費などが上昇した分の取引価格への転嫁は進んでこなかった。 賃上げの原資を確保するのは簡単ではない。

金属労協傘下で、中小製造業などの労組でつくる産業別組織 JAM の安河内賢弘会長は同日開いた記者会見で「大手と中小の格差は容認できない水準まで開いている。 背景には公正な取引がされていないことがあり、価格転嫁の取り組みの強化を続ける必要がある」と話した。

「経営は好調で、満額回答を見込める要求だったのに…」

産業機械などを造る都内にある中小企業の労働組合の委員長は、3 月中旬に経営側から受け取った春闘の回答内容にショックを受けた。 基本給を底上げするベースアップ(ベア)は月 1 万 2 千円の要求に対し、9 千円との回答だった。 一方で、経営側は住宅や役職などの一部手当を増やしたり新たに設けたりすることを打ち出した。 ただ、労組によると、手当をもらえるのは組合員の 4 分の 3 にとどまる。 昨年の春闘で要求にほぼ近いベアを獲得し、物価高などを背景に今年もバブル期以降で過去最高額を要求した。

今春闘では、大手で昨年実績を超える要求に対して満額回答が相次いだ。 要求を上回り、10% 以上のベアを回答した企業もあり、賃上げ機運は高まっていた。 そうした中で要求を下回る回答に、委員長は役員と一対一で話し合いを 2 度重ねた。 物価が高騰するなかで賃金を引き上げなければ新入社員の確保は難しく、中途退社する社員も増えるのではないか。 そんな危機感を示して、回答内容の変更の可能性を尋ねたが、「募集をかければ、人は来るでしょ」と経営側に危機感は薄く、「9 千円以上のベアはありえない」とかたくなだった。

委員長は「将来的な人件費の増大を見すえて、ベアを抑えたかったのだろう」とみる。 残業代や賞与、社会保険料は、基本給などの「所定内給与」をもとに算出されるため、ベアに連動して増額となり、手当の引き上げよりも人件費はさらに増えるからだ。 最終的に労組は当初の回答内容で妥結した。委員長は「社会的に賃上げ機運が高まっている中でも、中小の賃上げは難しいことを痛感した」と話した。 (片田貴也、asahi = 4-2-24)