再エネ、法令違反ならFIT交付金支払い停止 トラブル防止へ提言案 太陽光発電など再生可能エネルギーの施設の設置をめぐり、土砂災害などを心配する地域住民らとのトラブルが全国で相次ぐ中、関係省庁の有識者会議は 28 日、地域の理解を得ながら再エネを拡大させるための提言案をまとめた。 発電中に法令違反が見つかった場合に、固定価格買い取り制度 (FIT) の交付金の支払いを止める制度などを検討し、改善を促す。 政府は今後、必要な法改正などを進める。 会議は、再エネや土地利用などの法律を所管する経済産業、農林水産、国土交通、環境の 4 省が合同で 4 月に立ち上げた。 提言案では、開発前の段階で土砂災害などを防ぐために、森林法などで規制された区域では開発手続きの厳格化などを課題に挙げた。 今後増えると見込まれる太陽光パネルの撤去や処理については、リサイクルを進めるための支援制度をつくる方向で対応する。 地域住民が知らないうちに大規模開発が進むことがないよう、事前説明会などでの周知を義務化することも盛りこんだ。 (岩沢志気、asahi = 7-28-22) 嫌われ者になったドイツの風力発電は危機的状況に ドイツの風力発電産業は苦境に立たされている。 新しい風力発電は建設されず、古い風力発電は廃止されてゆく。 風力発電業界は、新たな補助金や建設規制の緩和を求めている。 バイエルン州には新しい風車と最寄りの住宅地との距離が風車の高さの 10 倍でなければならないという「10H ルール」がある。 最近の風車は高さ 200 メートルなので、2 キロの距離が必要となる。 これで多くのプロジェクトが実施不可能になる。 他の州でも、無数の自然保護団体や市民グループが、景観が損なわれていること、低周波音などの騒音があること、それによって健康が脅かされていること、希少な鳥類が危険にさらされていること等を理由として、規制や訴訟などあらゆる手段を講じて風車の新設に反対している(朝日新聞記事)。 風力発電の停滞は統計にはっきり表れている。 2016 年にドイツで新たに設置された風力発電容量は 4,625 メガワット (MW) に達し、2017 年は更に増えて 5,334MW であった。 だが 2018 年には 2,402 MW、2019 年には僅か 1,078MW にまで落ち込んだ。 昨年も、1,431MW で、連邦政府が目標としている年間 2,800MW を大きく下回った。
さらに悪いことに、多くの風力発電所が閉鎖の危機に瀕している。 2000 年から施行されているドイツの再生可能エネルギー法は、風力発電事業者に 20 年間の確実な補助金を保証してきた。 だがこれは今後数年で切れる。 補助金がなければ収益性はない。 2025 年までには、ドイツの陸上風力発電の 4 分の 1 以上に相当する 15,000MW の風力発電プロジェクトが失われる恐れがあるという。 連邦政府には、操業継続のための資金援助を求める声が上がっている。 風力発電業界と緑の党は規制緩和を求めるが、多くの自治体や州の政治家は、風力発電の規制緩和に反対している。 一度ここまで嫌われ者になってしまうと、復権は難しいだろう。 ドイツは 2030 年までに洋上風力発電を 20,000MW 建設するとしているが、こちらは環境問題をクリアして順調に行くのだろうか。 洋上とは言っても岸から近ければ景観をそれなりに害するし、渡り鳥は衝突して死ぬかもしれない。 深い海に立地すればコストも嵩む。 仮に洋上風力が上手く開発できても、陸上での閉鎖が相次げば、風力発電全体では減少に向かうのかもしれない。 (杉山大志、Agora = 9-6-21) 太陽光発電、災害リスク高い区域の規制検討 小泉環境相 小泉進次郎環境相は 6 日、太陽光発電所の建設地について、災害リスクが高い区域をあらかじめ指定して候補から外す新たな規制ルールの検討を始めたことを明らかにした。 静岡県熱海市で起きた土石流の原因とは別の問題としたうえで、「地域のみなさんが不安に思うようなところに(太陽光パネルが)あることはまったくプラスだとは思わない」などと述べた。 小泉氏は会見で、急傾斜地などに太陽光パネルが設置されていることについて、「あまりにリスクが高いのではないかというところに対しては、建てるべきではない、という対応もちゅうちょなくやるべきだ」などと語った。 不適地を候補地から外す「ネガティブゾーニング」のような考え方を検討しているとして、新たな規制に乗り出す考えを示した。 規制した場合、温室効果ガスの排出量を 2030 年度までに 46% 削減(13 年度比)するという目標との整合性については「高い目標をかかげることで官民挙げて努力を引き出していくことは必要」としつつ、「達成を優先して人命を第二にするというのは絶対にありえない」と強調した。 熱海市で崩落した場所の南側には太陽光発電所があるが、崩落は確認されておらず、静岡県も「直接の関係は今のところみられない」としている。 (川田俊男、asahi = 7-6-21) 494MW の洋上風力発電事業に環境大臣意見 山形県遊佐町沖で計画 環境省は 3 月 25 日、丸紅(東京都中央区)と関西電力(大阪府大阪市)が山形県飽海郡遊佐町沖の海域において、最大出力 49 万 4,000kW の風力発電所を設置する「(仮称)山形県遊佐町沖着床式洋上風力発電事業」に係る計画段階環境配慮書に対する環境大臣意見を、経済産業大臣に提出した。 この事業の事業実施想定区域は約 40km2。 単機出力 9,500kW - 14,000kW を最大 52 基(9,500kW の場合)設置する計画だ。 この区域・周辺に、住居等があることや、渡り鳥の集団渡来地として指定されている国指定最上川河口鳥獣保護区が存在し国内希少野生動植物種に指定されている鳥類等の生息が確認されていること、自然公園法に基づく国定公園と隣接することなどを踏まえ、大臣意見をまとめている。 生活環境・鳥類・景観への対応をまとめた各論では、風力発電設備の配置用の検討に当たって、各影響について適切に調査・予測・評価を行い、以下の措置を講じることを求めている。
累積的な影響も踏まえ配置等の検討を また、事業実施想定区域周辺では、他の事業者による複数の風力発電所が稼働中または環境影響評価手続中であるため、今回の事業とこれらの風力発電所による累積的な影響が懸念される。 このため、既存の風力発電設備等に対するこれまでの調査等から明らかになっている情報の収集、環境影響評価図書等の公開情報の収集、他の事業者との情報交換等に努め、累積的な影響について適切な調査・予測・評価を行い、その結果を踏まえ、風力発電設備等の配置等を検討することとしている。 山形県のウェブサイトによると、遊佐町沖では、たとえば、以下の洋上風力発電事業が計画されている。
経済産業大臣は環境大臣意見を勘案して意見 環境影響評価法と電気事業法は、出力 10,000kW 以上の風力発電所の設置または変更の工事を第一種事業として対象事業としており、環境大臣は、事業者から提出された計画段階環境配慮書(事業の計画段階に、重大な環境影響の回避・低減についての評価を記載した文書)について、経済産業大臣からの照会に対して意見を述べることができる。 今後、経済産業大臣から事業者である丸紅と関西電力に対して、環境大臣意見を勘案した意見が述べられ、事業者は、意見の内容を検討した上で事業計画を決定し、事業段階の環境影響評価(環境影響評価方法書、準備書、評価書)を行うこととなる。 (環境ビジネス = 3-29-21) ◇ ◇ ◇ 風力アセス、大規模事業に限定 環境省が規制緩和方針 環境省と経済産業省は 11 日、風力発電所の環境影響評価(環境アセスメント)の規制緩和について、対象事業の規模を現在の 1 万kw 以上から5万kw 以上に引き上げる方針案をまとめた。 再生可能エネルギーである風力発電の導入を促す。 方針案では、法律に基づく環境アセスの対象を工事が必要な面積がおよそ 50ha 以上となる 5 万kw 以上の事業規模とした。 大規模な事業に手続きを限定し、風力発電施設の建設を後押しする。 月内に最終決定し、2021 年度に政令を改正する方針だ。 1 年後の施行を目指す。 風力発電は小規模でも立地によって環境影響が大きくなる。 このため自治体があらかじめ再生エネ導入を進める区域を指定する枠組みを今後検討し、設置後の影響調査を充実することも求める。 独自に環境アセスの条例を設けている自治体があり、国と自治体の調整が課題となる。 現行の環境アセスは 4 - 5 年の期間と数億円の費用がかかり、事業者の負担が大きい。 20 年 12 月に開かれた内閣府の会合で、河野太郎行政改革担当相が、風力発電を大量導入する妨げになっているとして 20 年度内に建設の要件を緩和するよう要望していた。 (nikkei = 3-11-21) 太陽光発電、山梨県が独自規制へ 森林伐採伴う開発禁止 太陽光発電施設の設置をめぐり、防災や環境保全の観点から各地で反対運動が起きていることを受け、山梨県は設置に関する規制を大幅に強化する条例を制定する方針を固めた。 森林伐採を伴う開発や、急傾斜地への設置は原則として禁止する。 県は現在、条例案づくりを進めており、長崎幸太郎知事が 24 日の県議会で概要を説明した。 説明によると、規制対象とするのは出力 10 キロワット以上の事業用施設。 山間部の急傾斜地など災害リスクが高い地域での新設は原則禁止し、安全性の確保や環境・景観への配慮などの対策が講じられた施設に限って許可対象とする。 近隣住民への十分な説明を求め、許可するかどうかの判断にあたっては地元の市町村長の意見を尊重する。 規制区域内では、既存施設も含めて維持管理計画の提出を義務づける。 必要に応じて立ち入り検査や事業に対する改善命令を行い、従わない場合は事業者名を公表したり、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の適用外となるよう関係機関に通報したりすることを明記する。 こうした内容を盛り込んだ条例案を今年 6 月の県議会に提出する方向で調整している。 知事は「太陽光発電施設は本来環境を守るためのものであるにもかかわらず、自然環境を破壊し、生活環境を脅かす事例が見られる。 安全安心な生活と自然環境との調和が不可欠であることを明確にする。」と条例の趣旨を述べた。 県は 2015 年に太陽光発電施設の設置に関するガイドラインを定め、事業者に安全対策や環境への配慮を要請してきたが、強制力はなかった。 全国の都道府県では、和歌山県が禁止区域を設定できる条例を定めているという。 (吉沢龍彦、asahi = 2-25-21) 気温上昇 2 度と 1.5 度では大違い 温室効果ガス削減
気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」は、気温上昇を 2 度未満に抑えることを目指し、可能なら 1.5 度に抑えるという努力目標を掲げる。 国連気候変動に関する政府間パネル (IPCC) が 18 年に公表した「1.5 度特別報告書」が予測する未来はこうだ。 2100 年までの海面上昇は、気温上昇が 2 度の場合よりも 1.5 度の場合のほうが約 10 センチ少なくなり、リスクにさらされる人は最大 1 千万人減る。 世界の海洋での年間漁獲量の減少は 2 度なら 300 万トンを超えるが、1.5 度では半分の約 150 万トンだ。 他にもさまざまな影響の差がある。 特別報告書は、1.5 度に抑えるには、主要な温室効果ガスである二酸化炭素 (CO2) の世界の排出量を 30 年に 10 年比で 45% 減らし、50 年には、森林などの吸収分や技術で回収する分などを差し引いて「実質ゼロ」にする必要があると指摘した。 産業革命前からの気温上昇 1.5 度と 2 度での影響の違い
実質ゼロへの課題は? 石炭火力、住宅、自動車 … 「この挑戦は日本の成長戦略そのものです。」 「実質ゼロ」を受けて 26 日に記者会見した梶山弘志経済産業相は、技術革新で実現をめざす姿勢を強調した。 洋上風力などの再生エネルギーや原子力、水素、蓄電池などを最大限活用するとともに、火力発電については、CO2 を分離・回収し、貯留する技術 (CCS) や有効利用する技術を進める考えだ。 日本は電力などエネルギー起源の CO2 排出量が、温室効果ガス排出全体の 9 割近くを占める。 CO2 排出量が多い石炭火力発電所が、50 年時点で CCS 抜きで稼働していれば、実質ゼロは困難だ。 最新式でも、天然ガス火力の 2 倍の CO2 を排出する。 政府は非効率の石炭火力発電所を閉鎖していく方針だが、新設は認めている。 NGO のネットワーク「Japan Beyond Coal (ジャパン・ビヨンド・コール)」によれば、計画あるいは建設中の石炭火力発電所は国内に 17 基ある。 CCS はコストが障害になる。 貯留が可能な候補地は、いまのところ国内に数カ所しかない。 地球環境戦略研究機関の研究顧問、甲斐沼美紀子さんは「CCS は、セメント工場や製鉄所など CO2 排出をなくせない施設で使う方法だ。 石炭火力はなくし、再生エネへ置き換えなければならない。 原発の稼働がなくても再生エネでまかなえる。」と話す。 住宅や自動車の対策も欠かせない。 断熱性や省エネ性能を上げ、屋根で太陽光発電をするなどしてエネルギーをつくり、エネルギー消費量を正味ゼロにする住宅は「ゼロエネルギー住宅 (ZEH)」と呼ばれる。 政府は「20 年までに新築の注文戸建て住宅の半数以上を ZEH にする」との目標を掲げる。 1 戸あたり 60 万 - 百数十万円の補助金をつけているが、19 年度時点で ZEH は新築注文戸建て住宅の約 2 割にとどまる。 中小工務店が ZEH の新築に対応しきれていないことや、顧客の予算の問題があるという。 30 年には建て売りも含めすべての新築住宅の標準を ZEH にする目標だが、達成には努力が必要だ。 車の脱炭素化でカギを握るのが電気自動車と燃料電池車だ。 英国は 35 年以降、フランスは 40 年以降のエンジン車の新車販売禁止を宣言した。 米カリフォルニア州も 35 年以降の新車販売禁止を表明している。 日本は 30 年までに、電気自動車と燃料電池車を、それぞれ新車販売台数の 20 - 30% と 3% にすることをめざす。 だが、19 年度時点の実績は電気自動車が約 0.5%、燃料電池車が 0.02% にとどまっている。 国内で電気自動車を購入すると、最大 40 万円の補助金とエコカー減税などによる支援はある。 だが、フランスやドイツは補助額が最大 100 万円以上。 日本の支援度は各国より低い傾向だ。 準備着々の欧州、 施策は多彩、市民も参加 50 年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするには、しっかりとした工程が必要だ。 先行する欧州連合 (EU) は、着々と準備を進めている。 EU の環境相会合は 23 日、実質ゼロに法的拘束力を持たせる「欧州気候法案」に合意した。 昨年 12 月に取りまとめた行動計画、「欧州グリーンディール」の中核をなす施策だ。 約 50 の行動計画には、環境規制が緩い海外からの製品に課税する「国境炭素税」、「エネルギーの脱炭素化」、「循環経済への移行」、「既存建築物の省エネ改修」、「クリーンな輸送」、「持続可能な食料システム」、「生態系と生物多様性の保全」、「持続可能な投資」など、様々な施策が並ぶ。 EU の取り組みは段階的で、20 年に温室効果ガスを 20% 削減(1990 年比)、最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を 20% という目標を掲げ、30 年には温室効果ガスを 40% 削減、再エネ比率 32% としている。 温室効果ガスについては 50 - 55% 削減を検討中だ。 「実質ゼロ」には市民の視点や協力が欠かせない。 くじ引きで選ばれた市民が直接、政策形成にかかわる動きも広がっている。 フランスでは昨年 10 月、電話番号から無作為に選ばれた 150 人による気候市民会議が始まった。 30 年までに温室効果ガスを 90 年比で少なくとも 40% 削減するための具体的な政策を提案する。 市民会議は専門家の助けも借りながら 6 月、約 150 項目にわたる提言書を政府に提出。 燃費の悪い車の都市部への進入禁止や新たな空港の建設の禁止、全プラスチックのリサイクルの義務化などが含まれている。 マクロン大統領は、146 の提言について議会や国民投票にかける考えだ。 英国の気候市民会議には、住所録から無作為に選ばれた市民 110 人が参加。 50 年実質ゼロの手段、政策について、6 月に首相に中間報告書を提出した。 9 月には、コロナ禍からの復興を含む最終報告書「ネットゼロへの道筋」が公表された。 高村教授に聞く 「50 年実質ゼロ」目標を掲げる意義 これまで日本は「今世紀後半のできるだけ早期」や「50 年にできるだけ近い時期」など、脱炭素社会を実現する明確な年限を定めてこなかった。 世界的に期限を決めて目標を掲げることが潮流となる中、日本も目標を打ち出すことは、国際的にも評価を得られるだろう。 また 50 年と期限を定めると、そこに向かうために、「30 年にどんな目標を持つべきか」、さらに「いまは何をするべきか」ということが決められるようになる。意義は大きい。 例えば、CCS が付いていない火力発電所の 30 年の新設はないと見えてくる。 30 年以降に新築する建物や住宅は、エネルギー消費量が正味ゼロとなる建物や住宅でないといけないとわかる。 そうした 30 年時点の立ち位置と、現状のギャップを埋めていく作業が必要になる。 50 年実質ゼロは、温室効果ガスを排出しない構造へ、社会を根本的に変えていかないと実現できない。 そのためにイノベーション(技術革新)は必要だ。 ただし、それだけでもいけない。 すでにある技術なのに、十分に普及しきれていないものを使いこなす対策も重要だ。 理由は二つ。 一つは、未来技術で CO2 を回収するよりも、太陽光パネルなど今ある技術で早めに CO2 削減に取り組んだ方が、温暖化対策にかかる総コストが抑えられるからだ。 二つ目はイノベーションへの投資のためだ。 企業も、30 年先にもうかるかもしれない技術の開発だけで食べてはいけない。 電気自動車や燃料電池車など、今あるグリーンな技術を十分に展開でき、もうかる仕組みがいる。 50 年実質ゼロの達成には、「イノベーション」だけでなく「いまできる対策」も。 この二足のわらじを履かざるを得ない。 (asahi = 10-30-20) SDGs って何? 親子で学べるサイト、ユニセフが開設 人と地球と経済活動の調和をめざす世界共通の行動計画 SDGs (エスディージーズ、持続可能な開発目標)。 それって何だろう。 私たちには何ができるのだろう - -。 そんな問いに子ども目線でわかりやすく答え、考えるヒントを与えるサイト「SDGs CLUB」が、日本ユニセフ協会によって作られた。 「親子で学べる」をコンセプトに、たくさんの図や動画を盛り込みながら、すっと内容が頭に入ってくるしかけになっている。 サイト開設から 1 カ月ほどだが、学校の先生や企業の社内研修担当など、大人たちからも好評だ。 日本ユニセフ協会は、国連児童基金(ユニセフ)の活動の広報や募金活動を国内で行う団体だ。 2015 年に国連サミットで 17 の目標と 169 のターゲットから成る SDGs が採択されると、学校の先生向けのガイドを作成。 2018 年には SDGs が必要な世界の現状を知らせるリーフレットを作り、教材として全国の中学 3 年生に配ってきた。 今回のウェブサイトはその延長だ。 コミュニケーションデザインに関するコンサル業などを手がけ、「SDGs 手帳」も作ったアソボット代表取締役の伊藤剛さんと共に、1 年かけてサイトを作り上げた。 日本ユニセフ協会の担当者である鈴木有紀子さんは、「大人は目標達成のためにとにかく頑張らないといけないが、次の世代に課題をある程度引き継ぐことになるのは確実。 子どもたちに本当にチェンジメーカーになってもらえるような資源にしたかった。」と話す。 サイトの一番の特徴は、169 のターゲットのオリジナルの子ども訳だ。 ターゲットは、SDGs の 17 目標をさらに具体的な行動目標に落とし込んだもの。 それを小学校 5 - 6 年生でも理解できるようにと、日本ユニセフ協会が半年以上かけて丁寧に言葉を選んでいった。 原文は英語なので日本では国が訳した「仮訳」が一般的だ。 ところが、専門用語や熟語の連続で大人でもわかりにくい。 伊藤さんは、「17 の目標で終わらず、この 169 項目に出会うことが重要。 この子ども訳は子どもたちに向けたものでもあるけれど、その前に動くべき大人たち、特に 17 目標のカラフルなアイコンだけで理解したつもりになり、SDGs の本質をわかっていない企業の人たちにも届けたい。」と話す。 その他サイトでは、写真や動画、イラストやグラフなど、視覚的にわかりやすい資料をふんだんに使い、より深く学びたい人のために、各データには出典元に飛べるリンクをつけた。 トップページの 17 目標のアイコンは動かせるので、自分なりにグループ分けをしたり、横のつながりを考えたりするのに役立つ。 一人一人の行動を促すため、世界中で実際に動き出している子どもたちの紹介も加えた。 サイトは情報を随時更新し、今後より深い内容も紹介していく予定だ。 さらに、このサイトを使った学習プログラムも提案していきたいという。 伊藤さんは、「SDGs を学ぶのではなく、SDGs で学んでほしい。 世界や地球を考えるための『窓』として、SDGs やこのサイトを生かしてもらい、SDGs の枠を飛び越えた新しい発想が生まれてほしいなと思います。」 「SDGs CLUB」のサイトはこちら。 (植松佳香、asahi = 9-2-20) メガソーラー撤退検討 諏訪・霧ヶ峰近くに計画 業者、週内にも説明 諏訪市四賀の霧ケ峰高原近くで進む大規模太陽光発電所(メガソーラー)計画で、事業者の Looop (ループ、東京)が、事業からの撤退を検討していることが 15 日、分かった。 週内にも地権者に正式に説明する。 国内有数規模の同計画を巡っては、荒廃する里山の活用策として期待する声がある一方、水源などへの影響や災害誘発への懸念が諏訪、茅野両市の市民らから出ていた。 ループは取材に、「(撤退は)現時点で決まっていない。 地権者、ステークホルダー(利害関係者)を含めて協議している。」とした。 東京電力福島第 1 原発事故後に設けられた「固定価格買い取り制度 (FIT)」は、電力の買い取り価格の段階的引き下げが始まっている。 一方、ループの計画は環境影響評価(アセスメント)の手続き中。 提出書類の不備などで遅れが生じた上、環境影響評価法施行令改正により、4 月から同法に基づくアセス(法アセス)に移行した結果、着工は当初予定の今年 3 月ごろから大幅に遅れる見通し。 同社にとっては採算性の確保が課題となっている。 昨年、計画が環境に及ぼす影響を調査・予測した結果と、環境への悪影響を回避・抑制するための対策の案を示した同社のアセス準備書が公告された。 最終的な評価書の前段階に当たる手続きだが、諏訪、茅野両市長は今月 1 日、準備書は科学的データが不足し、「適正に評価されているとは言えない」などとする意見を県に提出していた。 アセスが続いた場合、知事は 8 月末ごろまでに、準備書に対する意見を公表。 その後、経済産業省環境審査顧問会による審議や環境相意見などを経て、来年 1 月末までに経産相が勧告を出すと、評価書の作成が可能になる。 着工には林地開発の許可なども必要だ。 (信濃毎日新聞 = 6-16-20) 宮城・大崎の住民団体、太陽光発電所の計画撤回を事業者に要請 昨年 10 月の台風 19 号で浸水被害を受けた宮城県大崎市鹿島台姥ケ沢の住民組織「念仏山太陽光発電計画に反対する会(柴和雄代表)」は 7 日、周辺地域で大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設を計画する事業者を招き、撤回を求めた。 地元の行政区長ら約 15 人が参加。 再生可能エネルギー事業を手掛けるコアフィールズ(埼玉県桶川市)の中田純一社長は、建設予定地で既に山林を伐採したことなどに関し「過去に何度も浸水被害に遭われた歴史的な背景について知識が欠けていた」と謝罪した。 水害のリスクを減らすため当初から計画していた防災調整池の整備を優先的に進める考えを示したが、住民側は「発電所計画から撤退するべきだ」、「再び木を植えてほしい」と求めた。 中田社長は「建設を強行することはしない。 予定地から土砂の流出を防ぐ応急処置などできることを提言したい。」と述べ、協議を続ける姿勢を示した。 計画によると、鹿島台木間塚の民有地約 4.1 ヘクタールを借り、3.5 ヘクタールに太陽光パネルを設置する。 (河北新報 = 6-8-20) メガソーラー規制を強化 住民「災害リスク増」、国が方針転換 東京電力福島第 1 原発事故後、全国で急増した大規模太陽光発電所(メガソーラー)の設置計画に、住民が反発するケースが相次いでいる。 「災害や自然破壊のリスクがある」との声があり、最も有望な再生可能エネルギーとして普及を支援してきた国も規制に乗り出した。 住民側からはより厳しい制度づくりを求める声が上がる。 福島市の山あいにある高湯温泉からほど近い山林で、民間企業が出力約 4 万キロワットのメガソーラーを設置する計画が進む。 「地元の誰もが『なんでここに?』と思ったはずだ。」 麓の集落の佐藤和弘さん (63) は、急斜面を見ながら眉をひそめた。 計画地内を流れる沢は土石流の恐れがあるとして、福島県が以前から危険地域に指定。 昨年の台風 19 号では土砂や石が県道に流れ出た。 「林が伐採されれば雨水を吸収する力が落ちる。 いつ土石流が集落を襲うか分からない。」 佐藤さんら住民は昨年末、計画中止を要望する署名を県に提出、県は事業者に誠意を持って住民に対応するよう求めた。 県は 2011 年の原発事故後、40 年ごろまでに県内のエネルギー需要の 100% 相当量を再生エネで生み出すという目標を掲げた。 県内で新たに導入された再生エネの発電施設のうち、フル稼働時の出力量に当たる「設備容量」の 7 割超を太陽光が占める。 担当課は「国の固定価格買い取り制度の下で、設置期間の短い太陽光が急増した」と説明する。 買い取り制度開始後、太陽光発電は全国に広がった。 だが山間部での開発も増え、住民が土砂災害の恐れや自然破壊を訴えるトラブルが相次ぎ、国は環境影響評価(アセスメント)の対象外だった太陽光についても、アセスの評価対象に加えようと検討を始めた。 設置計画地を抱える栃木や静岡、三重など 10 府県の住民団体などは昨年 1 月、環境省と、発電事業の認可を担う経済産業省に対し、計画地の自治体から要望があった場合は、全てアセスの対象とするよう求めた。 ところが国は昨年 7 月、加える対象を原則、新設される出力 4 万キロワット以上のメガソーラーまでとした。 呼び掛け団体の一つ、太陽光発電問題連絡会(長野県)の小林峰一さん (57) は「ほとんどの計画が対象から外れ、各地の問題は解決されない」と批判。 「認可前に自治体と情報共有し、地元合意がない事業は認可しないような運用に切り替えてほしい」と訴えた。 (sankei = 5-29-20) 日本が石炭火力依存続けば 2 流国に落ちる根拠 私はいま、日本の状況を大変憂えています。 液化天然ガスの最大の輸入国で、石炭と石油についても世界のトップ 4 の輸入国。 そして、発電の 3 分の 1 を石炭火力に依存している - -。 拙著『グローバル・グリーン・ニューディール』にも詳述しましたが、気候変動の問題が危機的状況にある現在、大胆な経済政策の転換、「グリーン・ニューディール」 - - スマートでデジタル化されたインフラの整備、社会の脱炭素化、グリーン経済部門における雇用創出等 - - を地球規模で実現することが人類の急務です。 日本ではいま、約 100 基の石炭火力発電所が稼働しています。 そして、新たに建設中または建設予定のものが 22 基ある。 この 22 基が排出する二酸化炭素の量は、全米で売られているすべての自動車が排出する量に相当します。 日本は、グリーン・ニューディールどころか、その逆の方向に進んでいるのです。 「座礁資産」に気をつけろ 問題は排出する二酸化炭素の量だけではありません。 新しく建設される石炭火力発電所は、すべて座礁資産になってしまいます。 座礁資産というのは、市場や社会の状況が急激に変化することで価値が大きく下落する資産のことです。 再生可能エネルギー技術が安価になれば、需要の下落により地下に埋蔵されたままになる化石燃料や、石炭火力発電のために開発されたパイプラインや海洋プラットフォーム、貯蔵施設、発電所など、関連するあらゆる資産が放棄されることになります。 原子力発電は問題外です。 原子力発電のコストは 1 キロワット/時当たり 112 セント程度ですが、天然ガスと石炭は 40 - 50 セントです。 太陽光・風力発電の発電コストは 30 - 40 セントなので、日本が原子力発電や石炭火力発電を続けることはさらに座礁資産を増やすことになります。 私は過去 20 年間にわたって EU、そして最近では中国に対してゼロ炭素社会への移行に向けてアドバイスを行ってきました。 中国はすぐに行動に移し、太陽光・風力発電への投資額と設備容量で世界のトップになりました。 現在はリアルタイムで国全体の送電網(グリッド)をデジタル化しています。 グリーン・ニューディールへの移行の中心となるのは、第 2 次産業革命のインフラを構成する以下の 4 部門です。
注目すべきことに、日本はエネルギーと電力以外の部門では世界のリーダーです。 エネルギー部門だけが中国や EU の後塵を拝している。 その原因となっているのが、TEPCO (東京電力ホールディングス)です。 しかし、よい兆候もあります。 東電は、株に比べて変動が少なく安全で、利益が予測しやすいグリーンボンド(温暖化対策や環境プロジェクトなどの資金を調達するために発行される債券)の発行を検討しています(注 : 発行体は再生可能エネルギー発電事業を手がける全額出資子会社、東京電力リニューアブルパワー)。 ドイツの取り組みから学ぶこと ドイツの例からも、日本が学ぶべきことはたくさんあります。 2005 年頃、ドイツにおける太陽光・風力発電の割合はたった 4% で、残りは石油・石炭などの化石燃料と原子力によるものでした。 しかし、太陽光・風力発電のコストがかなり安くなったこともあり、2018 年には、再生可能エネルギーが全エネルギー源の 35.2% を占めるまでになりました。 オーストリアの偉大な経済学者シュンペーターは「創造的破壊」について説明しましたが、それは新しいビジネスが古いビジネスを駆逐するというもので、インフラの移行こそが歴史上最も大きな破壊であることは理解していませんでした。 およそ 100 年前に電灯が発明されると、あっという間にガス灯に取って代わりましたが、それが好例です。 インフラが移行する際には、ビジネスモデルを変えなければならないのです。 ドイツは新しいビジネスモデルを創りました。 再生可能エネルギーの割合が大きくなったことで、ドイツを含むヨーロッパは 2010 - 2015 年の間に 1,800 億ドル相当の金額を失いました。 日本も同様の「創造的破壊」をこの 2、3 年の間に経験するでしょう。 大手電力会社は、石油・石炭・天然ガスという中央集権型のエネルギー源による発電に強みを発揮します。 これらは、採掘から輸送、電力への転換に多額の資本を必要とするからです。 しかし、再生可能エネルギーによる発電は分散ネットワーク型です。 太陽光パネルや風力タービンは、小規模な発電施設として無数に建設され、企業や地域、個人が、自分で使うエネルギーの生産者になることができます。 ドイツ連邦政府は固定価格買取制度 (FIT) を導入し、再生可能エネルギーによって発電した電気を送電網に逆流させ、市場価格よりも高く電力会社に買い取ってもらうことを可能にしました。 いまでは太陽光・風力発電のうち、96% の電力が個人や中小の企業によって発電されています。 電力会社の役割は、電力を売ることから、プロバイダー・ユーザーネットワークとしての送電網を用いてエネルギーを管理することに移行します。 ロジスティクスとディストリビューション・チェーンを通してエネルギー効率と生産性を高めるサービスこそが、これからの電力会社のビジネスとなるでしょう。 ドイツの大手 4 電力会社は、私が提示したこのビジネスモデルを実行しています。 これは東電にとって大きな教訓です。 日本のポテンシャル エネルギー部門以外で日本が世界をリードしていることは先に述べたとおりですが、日本政府が行動していますぐにエネルギー部門でグリーン革命を実行しないと、20 年もすれば日本は 2 流国に成り下がります。 化石燃料のために開発されたパイプラインや施設がすべて座礁資産になってしまうからです。 化石燃料由来のグレー水素を、再生可能エネルギー由来のグリーン水素に移行すれば、従来のパイプラインを少し改良するだけで使えるようになるので、日本はゼロ炭素社会を達成できます。 過剰に発電した分を水素に変換すれば、太陽が輝いていないとき、風が吹いていないときでも、パイプラインをグリーンエネルギーの貯蔵に活用できます。 ヨーロッパではすでに実行されていますが、スマートな送電網を構築することができれば、燃料電池や EV 車に貯蔵した電気を需要のピーク時(電気価格が高くなったとき)に送電網に戻すことで利益を得ることも可能になります。 日本は平野が少なく、ソーラーパネルや風力タービンを設置する場所が少ないという説を聞いたことがある人もいるでしょう。 実際、2018 年の時点で、再生可能エネルギーの割合は、ヨーロッパではすでに 30% に達しているのに対し、日本では全体の 17.4% にとどまっています。 太陽光・風力発電はたったの 7% にすぎません。 しかし、スタンフォード大学とカリフォルニア大学バークレー校の共同研究の調査結果によれば、日本は電力の 86% を太陽光、9% を風力(陸上と海上)、4.4% を水素エネルギー、0.7% を波エネルギー、0.5% を地熱エネルギーで賄うことが可能です。 日本には非常に大きなポテンシャルがあるのです。 日本にいま必要なことは政治的意思です。 そして ICT/通信と電力会社が、輸送/ロジスティクス企業とひざを交えて話し合い、建設業と協力しなければなりません。 日本が建設業で世界のトップクラスに位置することはあまり知られていませんが、IoT のインフラを充実させて、気候変動に対してレジリエントな建物を建設することができる技術力を持っています。 もし私が安倍首相にアドバイスする立場にあれば、日本の座礁資産、およびヨーロッパと中国のグリーン・ニューディールに関する状況の説明をして、政治的意思を喚起するでしょう。 いま私たちがいるのは進歩の時代ではなく、レジリエンスの時代です。 気候変動がどれほど危機的状況にあるか、多くの人が気づいています。 自然は我々の理解を超え、人間が制御できないものになりつつあります。 グリーン・ニューディールが最重要と気づいた若い世代 私は楽観主義でもなく、悲観主義でもなく、「用心深い希望」を持っています。 Z 世代(1990 年代後半から 2000 年生まれの世代、インターネットや携帯電話の環境に生まれ育った世代)やミレニアル世代(1980 年代から1990年代半ば生まれの世代)のような若い世代が、昨年 140 カ国で大規模なデモに参加しました。 脱炭素社会への転換を地球全体で進める必要性を訴え、各国政府へ早急に気候変動対策をとるよう要求したのです。 これは宗教や民族の違い、イデオロギーの違いを超えた、歴史上類を見ないデモです。 この若い世代は、自分たちを「絶滅危惧種」とみなし始めたのです。 彼らはグリーン・ニューディールが最も重要な優先事項であることに気づいたのです。 このことを理解していない古い政党を権力の座から一掃するには、アレクサンドリア・オカシオ?コルテス(30 歳、アメリカ下院議員で活動家)やグレタ・トゥーンベリ、サンナ・マリン(最近フィンランドで首相になった 34 歳の女性)のような人が何百万人も必要です。 アメリカはこれからの 4 年間で古い政治権力を一掃しなければなりません。 そのためには、政府がグリーン・ニューディールに移行するまでのロードマップを作らなければなりません。 日本にはこのグリーン・ニューディールを達成できる、すべての技術がそろっています。 このレジリエンスの時代に人類が絶滅しないためには、すべての人、産業が関わる必要があります。 あとは政治的意思だけです。 政治的意思がなければ、それを実行することはできないのです。 (Jeremy Rifkin、東洋経済 = 3-24-20) |