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マイナンバー保険証、対応 7% 医療機関・薬局、20 日から本格運用

マイナンバーカード普及策の目玉として政府が進める健康保険証としての利用が、今月 20 日から「本格運用」に切り替わる。 ところが、必要なシステムの導入が済んだのは約 23 万の医療機関や薬局のうちまだ 7% 台。 身近な存在とはとても言えない状況だ。

国「1 年半後には半数で」

健康保険証としての利用は 2019 年の法改正で可能となった。 政府はカードだけで受診できるようにする本格運用を今年 3 月末からと決めていたが、試行段階でカードと健保組合のデータが合わないトラブルが多発。約 7 カ月遅れた。 しかし、厚生労働省によると、全国の病院と医科・歯科の診療所、薬局の計 22 万 9,201 施設のうち、10 月 3 日時点で専用の顔認証付きカードリーダーを設置し、準備が完了したのは 7.4% の 1 万 7,032 施設。 先行的に利用を始めているのは、2.7% の 6,190 施設だけだ。

マイナンバーカードの交付率は 10 月 7 日現在で 38.6%。 政府は「健診や薬の情報がネットで閲覧でき、確定申告も楽になる」などと利点をアピールするが、「どれだけ利用者がいるかわからず、様子見している施設が多い(厚労省)」とみる。 国によるカードリーダーの無償提供には 3 日時点で 56.2% の 12 万 8,789 施設が申し込んだ。 23 年 3 月末までの導入には関連費用の補助金を増額しており、厚労省は「順調に進めば、1 年半後には半数以上の施設で使えるようになる」との見方も示す。

「メリット感じない」

ただ、現場の理解はまだ進んでいない。 東京都千代田区の「常喜医院(内科、皮膚科、小児科)」の診察室には、保険証の代わりにマイナンバーカードが使えることを知らせるポスターが貼ってある。 この医院では今年 5 月から先行運用を始めたが、これまでの利用実績は 1 件。

窓口で利用を申し出た患者は他に 2 人いたというが、2 人とも事前に必要な利用登録をしていなかった。 コロナ禍で在院時間を短くする必要もあり、窓口での登録をあきらめて健康保険証を出してもらったという。 「名前や住所などを手入力しないで済むメリットは大きい(常喜真理院長)」と感じて先行運用に参加したが、カードを持ち歩くこと自体を不安視する人が多いのが実感だ。

東京都品川区にある内科クリニックの男性院長は「患者数もそう多くない小規模クリニックなので、メリットを感じない」と導入を見送っている。 これから申し込んだ場合、カードリーダーは国から無償提供されても、それ以外の周辺機器の整備やシステムの改修には自己負担が生じることもあり、「導入にかかる手間や費用を考えると今は必要ないと思う。 万が一、システム障害が起きた時の対応も懸念材料だ。」と話す。

コロナ禍で露呈したデジタル化の遅れに危機感を抱く政府は、マイナンバーカードを挽回の「カギ」と位置づけ、22 年度末までにほぼ全国民に行き渡らせる目標を掲げる。 平井卓也前デジタル相も「デジタル社会のパスポート」との表現で必要性を訴えてきた。 24 年度末には運転免許証との一体化も予定し、さらにマイナンバーとひもづける行政サービスを増やす方針だ。 だが、その試金石と言える健康保険証利用で弾みをつける狙いは、現時点では大きく外れた形だ。

中央大の石井夏生利教授(情報法)は「(用途に応じて)暗証番号が四つあったり、法律上、裏面のマイナンバーを他人にむやみに見せてはいけないことになっていたりするなど、カード自体が分かりづらく、何となく怖いと思われている面がある。 使い方はシンプルだと分かってもらう地道な努力を政府は続けるしかない。」と話す。 (江口悟、中島嘉克、平井恵美、asahi = 10-13-21)


ワクチン入力の遅れよりデジタル化の遅れ 津市長が苦言

「日本はデジタル対応が非常に遅れていると相当驚いた。」 新型コロナウイルスのワクチン接種をめぐって、津市の前葉泰幸市長は 18 日の定例会見で、接種記録の入力方法の粗末さに苦言を呈したうえで、こう述べた。 河野太郎行政改革相は 15 日の閣議後会見で、入力が遅い自治体に対し、ワクチンの配送を見送る可能性があるとの考えを示している。 国への嫌みとも受け取れる発言だ。

前葉市長自らが調査したところ、接種履歴を管理する国の「ワクチン接種記録システム (VRS)」に入力する際、市職員ら 4 人がタブレット端末 4 台を接種済み市民の予診票に 1 枚ずつかざして読み取っていたことがわかった。読み取る際にはエラーも頻発していて、最大で 1 万回以上の入力が遅延していたという。 市は効率化のため、タブレット端末を 5 台追加。 読み取り専用のバーコードリーダーも購入した。 現在では 1 日 2 千 - 3 千件の入力が追いついているという。

この入力作業のために、市内 125 カ所の個別接種会場などから毎日、車で予診票を収集しなければならないことも、前葉市長は問題視している。 「マイナンバーで管理できれば、こんなバカバカしいことをやる必要はない。」 国への恨み節は止まらなかった。 (佐々木洋輔、asahi = 6-18-21)

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平井改革相、ワクチン接種は「マイナンバーで管理を」

平井卓也デジタル改革相は 19 日の閣議後会見で、新型コロナウイルスのワクチン接種にマイナンバーを活用することを、ワクチンを担当することになった河野太郎行政改革相に求める考えを明らかにした。 国民全員が持つ ID だとの認識を示し、「ワクチン接種をマイナンバーとひも付けると(管理に)間違いが起きない」と主張した。 平井氏によると、現行のマイナンバー法や政令などを改正することなく、ワクチン接種の事務に使えるといい、「今回使わなくていつ使うんだと私自身、思っている。 使わないのははっきり言って不作為だ。」と訴えた。

国はワクチン接種は全額国費で接種できるようにする方針だ。 このため、公的医療保険の健康保険証は使われず、自治体をまたいだ転居があると、接種履歴の照会で手間がかかる恐れがあると指摘した。 副作用などの管理も含め、「誰にいつ何を打ったかを確実に管理する方法はマイナンバーしかない」とも述べた。 内閣官房 IT 総合戦略室などの職員を河野氏の下に派遣することも検討するとした。 (西村圭史、asahi = 1-19-21)

編者注〉 確かに平井氏は至言を表明されています。 しかるに、現実はどうなのでしょう? 昨年の「配布金」では全く機能しませんでしたし、ワクチン接種は 1 ヶ月後に迫っています。 健康保険すら未だ機能していない現状で、果たしてしっかりしたトータルのシステムは出来上がっているのか? 地方自治体の各システムとのインターフェースは大丈夫なのか? 未だ明確な情報は知らされていません。 「掛け声だけ大きい」との結果に終わりませんように …。


マイナンバー、中国で流出か = 長妻氏指摘、年金機構は否定

立憲民主党の長妻昭副代表は 17 日の衆院予算委員会で、マイナンバーが業者を通じて中国で流出した可能性を指摘した。 長妻氏は証拠となる通報メールの存在を明らかにした上で徹底調査を求めたが、日本年金機構の水島藤一郎理事長は「流出はしていない」と否定した。 発端は、日本年金機構から個人データ入力の委託を受けた東京都内の情報処理会社が中国業者に再委託した問題。 2018 年に発覚し、当時の機構の特別監査では、中国業者に再委託されたのは 500 万人分の氏名部分の入力で、個人情報の外部流出はないとされていた。

監査のきっかけになったとみられる通報メールは、長妻氏が厚生労働省から入手したという。 差出人はマイナンバーを含む個人情報が中国のインターネット上に流出していると指摘しており、長妻氏はメールの真偽をただした。 これに対し水島氏は、記載されている情報は「基本的に正しい」とする一方で、マイナンバー部分に関しては「正しいものと確認させてもらうことは差し控えたい」と曖昧な答弁に終始した。 (jiji = 2-18-21)


マイナンバーカード、免許証一体化前倒し 政府が工程表

政府は 11 日、マイナンバーカードの機能拡大などを盛り込んだ新たな工程表を取りまとめた。 運転免許証との一体化は 2025 年 3 月までの実現をめざす。 カードの利便性を高め、想定より遅れているカード交付を加速させたい考えだ。 政府はこの日の関連会合で示した工程表で、今後 5 年分の目標を明記した。 会合に出席した菅義偉首相は「必要なことは従来のやり方にこだわらず、変化に素早く対応するスピード感を持つことだ」と述べた。

免許証とカードの一体化は当初の想定より 2 年ほど前倒しした。 免許更新時の講習をネット上で受けられるようになり、警察署への住所変更の届け出が不要になりそうだ。 カード機能がスマホに搭載されるのに合わせ、スマホとも一体化する「モバイル運転免許証」についても検討を進める。 カード機能は 23 年 3 月までにスマホに搭載できるようにする。 パスワードがなくても指や顔などの生体認証で本人確認ができるようになる方向だ。

外国人の在留カードとしての利用は 26 年 3 月までに始める方針とし、医師や看護師といった国家資格証との一体化も検討していく。 来春から健康保険証としての利用も始まる。来秋には薬の服用履歴が、22 年には手術結果なども閲覧できるようになる。 教育現場でも健診結果や学習データの管理に活用する。 預貯金口座をマイナンバーとひもづければ、災害時や相続時に情報照会できる制度を 24 年度に導入する。 口座との連携は任意だが、メリットと引き換えに口座連携を増やしたい考えだ。

カードのシステム運営を担う地方公共団体情報システム機構を活用し、銀行などが本人同意を得て最新の住所を把握し、住所変更の手続きを省略できる仕組みもつくる。 政府は今年 7 月末で 3 千万 - 4 千万枚、来年 3 月末で 6 千万 - 7 千万枚のカードが交付され、23 年 3 月末にほぼ全ての住民がカードを持つと想定している。 だが、今秋から最大 5 千円分のポイントを配る還元策を始めたのに、交付は今月 9 日現在で約 2,976 万枚と想定を下回っている。 (豊岡亮、asahi = 12-11-20)


国・地方デジタル化に 139 億円 総務省

総務省が 2021 年度予算の概算要求で、国と地方行政のデジタル化を促すための施策に 139.5 億円を計上することがわかった。 利用が広がっていないマイナンバーカードの普及促進には 1,451 億円を計上する。 菅政権が力を入れるデジタル化を加速させる方針だ。 行政の効率化と、行政手続きのオンライン化による利便性の向上を図りたい考え。 139.5 億円には、各自治体の情報システムをそろえる標準化に 4.1 億円を計上。 ネット上の安全性を高める施策には 32.1 億円を充て、自治体の対策費を補助する。

このほか、テレワークや遠隔教育・医療を後押しするため、次世代の高速移動通信方式「5G」基地局や光ファイバーなど情報通信基盤の整備に 256.8 億円を盛り込んだ。 総務省の要求総額は 16 兆 8,263 億円で、20 年度当初予算比で 572 億円 (0.3%) 増とした。 (河合達郎、asahi = 9-25-20)

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マイナンバー、郵便局に業務委託へ 菅首相が普及に本腰

菅義偉首相は 25 日、マイナンバーカードについて「2022 年度末にはほぼ全国民に行き渡ることを目指す」と表明した。 自治体ごとに異なる業務システムを 25 年度末までに統一する方針も示し、今後 5 年間で取り組む工程表づくりを急ぐよう指示した。 菅政権にとってマイナンバーカードの普及は、デジタル庁の設置と並ぶ優先課題のひとつ。 カードの交付枚数は 23 日時点で 2,564 万枚と、交付率は約 2 割にとどまる。

菅氏も出席したこの日の作業部会では、今後取り組む普及策も協議した。 具体的には、利便性を高めるため、カードのパスワードを忘れた場合に必要な再設定や、5 年に 1 度更新が必要な本人を証明する情報の更新手続きなど、一部の業務を郵便局に委託できるようにする。 来年の通常国会に関連法案を出す方向で日本郵政グループと詳細を詰める。 将来的にはカードの発行や更新もできるようにすることを視野に入れる。

自治体の業務システムは、介護保険や年金、地方税など分野ごとに、各自治体が個別のシステムを運用してきた経緯がある。 このため、こうした情報を処理するシステムの統一的な仕様を関係省庁で作成。 それに基づいたシステムの導入を自治体に義務づけることを検討している。 必要な費用について、政府が財政支援をすることも検討する。 こうした作業の進め方について、年末までに工程表を作成することをめざす。

新型コロナウイルス対策では、1 人あたり 10 万円を配る特別定額給付金の支給をめぐり、オンライン申請に必要なカードのパスワードを忘れた人が自治体窓口に殺到。 また、国と自治体のシステムの違いから作業効率が悪く、給付の遅れにつながるなどの事態を招いた。 (豊岡亮、asahi = 9-25-20)

マイナンバーカードをめぐる主な予定と検討課題
2020年9月カード保有者へのマイナポイント還元開始
21年3月健康保険証として利用開始
10月医療機関での服薬履歴の閲覧開始
22年度末ほぼ全住民にカードを交付?
23年度頃介護保険被保険者証として利用開始
25年度末自治体システムの統一?
検討課題運転免許証などのデジタル化
カードのスマホ搭載
在留カードとの一体化

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マイナンバーカード、22 年度末には全住民に 首相発言

菅義偉首相は 25 日、自治体の業務用システムの統一について、「全国一斉に迅速な給付を実現するため、25 年度末までをめざし作業を加速したい」と述べた。 マイナンバーカードについても、2022 年度末にほぼ全住民に行き渡るよう、普及策を加速するよう求めた。 行政のデジタル化を議論する政府の作業部会で指示した。 新型コロナ感染症対策では、システムが各自治体で統一されていないことや、マイナンバーカードが普及していないことで、国民1人あたり 10 万円を給付する特別定額給付金の支給などが遅れたと指摘されていた。 (asahi = 9-25-20)


マイナンバーとスマホ 連携検討 免許証と連携に加え

政府が、マイナンバーカードとスマートフォンの一体化を検討していることがわかった。 政府関係者によると、利用が低迷しているマイナンバー制度の普及促進に向け、政府が、将来的にマイナンバーカードとスマートフォンを一体化させることを検討していることがわかった。 一方、政府は 23 日に開いた会合で、マイナンバーカードと運転免許証や国家資格証、在留カードなどとの一体化に向けた議論に入った。 菅官房長官は、「年内に工程表を作成し、できるものから実施していきたい」と強調した。 政府はすでに、健康保険証との一体化については、2021 年 3 月から始めることにしている。 運転免許証やスマートフォンとの一体化が実現すれば、さらに利便性が高まることになる。 (FNN = 6-23-20)


オンライン給付申請「使い物にならない」総社市長が苦言

新型コロナウイルス対策で一律 10 万円を配る国の特別定額給付金のオンライン申請について、総社市の片岡聡一市長は 1 日、「使い物にならないシステムだ」と強く批判し、未申請者に対して郵送とするよう呼びかけた。 市によると、5 月末までに対象の約 7 万人の約 85% が申請し、支給手続きを終えた。 世帯主らからの申請は計 2 万 5 千件余りで、うちマイナンバーカードを使ったオンライン申請は 356 件。

市によると、オンラインでは申請者の本人確認に手間取ったほか、問い合わせで窓口を訪れた市民への説明にも時間を割かれたという。 片岡市長は「市民 1 人に職員が 1 時間かけて説明することもあった。 支給は一刻を争うのに、これでは意味をなさない。」と苦言。 「もっと簡素で安全な仕組みが必要だ」と訴えた。 未申請は 3 千件程度といい市はオンラインの受け付けは続けるが、なるべく郵送とするよう求めている。 (小沢邦男、asahi = 6-4-20)

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10 万円、何度も申請できちゃう? 本末転倒のオンライン

全国すべての人に一律 10 万円を配る「特別定額給付金」のオンライン申請をめぐり、窓口となる市区町村で混乱が起きている。 想定していなかった膨大な確認作業に職員が追われているためだ。 政府は郵送よりオンラインでの申請を推奨するが、自治体トップからは「郵送申請よりかえって手間がかかり、本末転倒だ」との声も上がる。

「内容に誤り多い」

オンライン申請は、内閣府が運営する「マイナポータル」サイト内にある給付金用の申請ページを通じて、自分が暮らす自治体に世帯ごとに申し込む仕組みだ。 申請の際には世帯主の本人確認のためにマイナンバーカードが必要で、世帯主以外の家族の名前は申請者が直接入力する。 東京都内で最多の約 92 万人が住む世田谷区では、2 日にオンライン申請を始めた。 申し込みは殺到し、11 日現在で申請は 2 万 4 千件に達している。

「申請内容に誤りが多い。」 受け付けを始めてまもなく、給付を担当する区職員の間でそんな声が出始めた。 マイナポータルでの申請データを確認すると、1 人で複数回申請したり、家族の情報を誤って入力していたりしても、受け付けられてしまうことが分かった。 そのまま給付すると過払いになりかねない。

対象者に正しく支給するには、世帯情報をまとめる住民基本台帳ネットワークの情報と申請時に入力された情報との照合が必要だ。 世帯情報は自治体だけが持っているため、申請内容が正しいかどうか、職員が 1 件ずつ確認している。 区は担当する職員を急きょ増やして対応する計画だが、郵送申請以上に時間と手間がかかり、郵送よりも給付が遅れる恐れもあるという。 保坂展人区長は「人海戦術による突合(照合)で苦慮している。 電子申請のほうが郵送申請の処理より何倍も手間がかかるという本末転倒の状態。 自治体の現場をまったく踏まえない仕組みだ。」と嘆く。

人口約 74 万人の大田区でも同様だ。 給付金は世帯ごとに世帯主が申請するルールだが、別世帯の祖父母の分まで合わせて申し込む間違いなどが目立つという。 手続き完了を知らせるメールが、「迷惑メール」に分類されて申請者が気付かず、区に問い合わせるといった別のトラブルも続き、職員が対応に忙殺されている。 東京・多摩地区のある自治体には、住民から「国は『一刻も早く支給する』と言っているのに、対応が遅い」という非難の声が届いた。担 当者は「オンライン申請が増えるほど確認作業が増えて支給が遅れる。 非効率な仕組みを押しつけられ、自治体の問題にされているのが悔しい。」とこぼす。

同じ人が繰り返し申請可

なぜこうした事態が起きているのか。 郵送による申請では、自治体が世帯ごとの対象者を確認した上で送った申請書類に、必要事項を記入して返送する。 一方、オンラインでは同じ人が繰り返し申請できる。 家族が多い場合や内容を間違えた場合などを想定したものだ。 申請時に世帯主以外の家族の名前を直接入力する仕組みも混乱の元になっている。 世帯の構成員などの情報が誤っていてもマイナポータルのシステム上は分からない。 こうして入力されたデータがそのまま自治体に送られるため、給付に当たって自治体が再度確認する作業が必須になる。

また、当初は給付金を振り込む金融機関の口座の情報を登録しなくても申請を受け付けたため、自治体側からは「いちいち(申請者に)口座を確認しなければならない」との不満の声が強かった。 システムの設計について、内閣府番号制度担当室は「市区町村に負担はかけるが、利用者の利便性を優先した」と説明。 その後、口座情報を入力しないと申請ができないようシステムを変更した。

実際にオンライン申請をした東京都世田谷区の 40 代男性は「口座情報を登録しようとしたら何度もエラーが出るなど、大変だった。 一体いつ振り込まれるかも分からない。」と話す。 他にも、オンライン申請の際に入力する必要があるマイナンバーカードのパスワードを忘れてしまった人が、パスワードの再発行を求めて自治体の窓口に殺到するという問題も起きている。 (asahi = 5-13-20)

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マイナンバーの「通知カード」が 5 月末に廃止へ - マイナンバーカードはネットで申請可能

住民にマイナンバー(個人番号)を知らせるための紙製のカードである「通知カード」が、5 月下旬に廃止される予定だ。 廃止によって、(1) 通知カードの新規発行・再発行、(2) 通知カードの住所や氏名などの記載変更、の大きく 2 つができなくなるという。 ただし、当面の間は、通知カードに記載された氏名、生年月日、住所などに変更がない限り、引き続き通知カードをマイナンバーを証明する書類として使えるという。 自治体では「この機会にマイナンバーカードを取得しましょう」と促している。 なお、現在マイナンバーカードは、申請してから受取まで約 1 - 2 カ月ほどかかるとのこと。

マイナンバーカードの受け取りは、本人確認のために役所に行く必要があるが、申請自体はオンライン(PC・スマホ対応)や郵便、街中の証明写真機からでもできる。 今回はオンラインでの申請方法を紹介する。

PC から申請する場合は、申請用ウェブサイトにアクセスして、通知カードが送られてきた時に同封されている「交付申請書」に記載されている申請書 ID (半角数字 23 桁)、氏名、メールアドレスを登録。 その後、メールアドレス宛に通知される専用ウェブサイトにアクセスして、デジタルカメラで撮影した顔写真を登録し、生年月日や電子証明書の発行希望の有無などを入力して送信する。

スマートフォンから申請する場合は、スマートフォンのカメラで交付申請書の QR コードを読み取り、申請用ウェブサイトにアクセスして、申請書 ID や氏名、メールアドレスを登録。 メールアドレス宛に通知される専用ウェブサイトにアクセスして、スマートフォンのカメラで撮影した顔写真を登録する。 そのほか、生年月日や電子証明書の発行希望の有無などを入力して送信すると完了だ。

申請後には、自宅に交付通知書(ハガキ)が届くので、通知カードと運転免許証などの本人確認書類、住民基本台帳カード(持っている人のみ)を持って、交付通知書に記載された期限までに本人が受け取りに行く必要がある。 交付窓口で本人確認の上、暗証番号を設定するとカードが交付される。 ちなみに通知カードの廃止後に、初めてマイナンバーが付番される人(出生、海外からの転入をした人)には、「個人番号通知書(仮称)」が送付される予定。 ただし、個人番号通知書はマイナンバー法上の番号確認書類や身元確認書類としては利用できないとしている。 (藤井涼、Cnet = 5-10-20)

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10 万円給付、オンライン受け付け開始 アクセス殺到

全国すべての人が対象となる一律 10 万円の現金給付について、全国の約 4 割の市区町村が 1 日、オンラインでの申請受け付けを始めた。 申請に使う専用サイトはアクセスが急増し、一時つながりにくい状態となった。 申請はマイナンバーカードを持つ人に限られるため、カード自体の交付申請も急増している。 10 万円の一律給付は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策の目玉だ。 市区町村から届く申請書を郵送して返すか、マイナンバーカードがあれば、専用サイト「マイナポータル」上で申し込める。 総務省によると、全国 679 の市区町村が 1 日朝からオンライン申請を受け付け始めた。

自分の自治体で受け付けが始まったかは、総務省の ホームページ で調べられる。 郵送での申請受け付けや現金支給の開始時期の目安もわかる。

行政手続きの効率化などを狙って政府が導入したマイナンバーカードの保有率は、16.3% (4 月 29 日時点)にとどまる。 利便性が低く、交付には自治体の窓口に行く手間もあるためだ。 ところが、総務省によると、1 - 3 月のカード申請件数は平日で 1 日平均 2.4 万件前後だったが、10 万円給付の概要が公表された 4 月 20 日に 3.9 万件、21 日は 5.8 万件と急増。 20 - 28 日の平日平均は 1 日約 4 万件と 3 月以前の 1.6 倍超に膨らんだ。 多くは 10 万円を早く受け取ろうという「駆け込み」申請とみられる。

ただ、カードは申請から交付まで通常 1 カ月ほどかかるうえ、窓口の混雑を避けるため、自治体が交付を遅らせる場合もある。 10 万円の支給時期も自治体によってまちまちで、今からカードを申請しても給付が早まるとは限らない。 (藤田知也、asahi = 5-1-20)



マイナンバー情報利用料 100 億円 健保組合が猛反発

中小企業の会社員らが加入する「協会けんぽ」や大企業の「健康保険組合」などが、加入者やその家族のマイナンバーを使って所得確認などをするシステム利用料が、合計で年約 100 億円にのぼることがわかった。 ただ健康保険組合連合会(本部・東京)が「高額にすぎる」と反発。 厚生労働省は引き下げの検討を始めた。

システムは 7 月の稼働を目指し、厚労省主導で 220 億円をかけて開発を進めている。 健保組合などが加入者のマイナンバーを使って、住民票のデータや家族の収入、年金を受け取っているかどうかなどの情報が取り寄せられる。 加入者の扶養家族の確認や、傷病手当金と公的年金を二重で受け取っていないかなどもチェックできるという。

ところが今年 1 月、厚労省が各健保組合に対して、システム運営費をまかなうために、利用料として加入者とその家族について 1 人当たり月額 10 円弱の負担を求める通知を出した。 個別の利用件数にかかわらない一律の負担。 計 8 千万人余りが対象となり、年間で約 100 億円の利用料となる。病院や診療所が請求する診療報酬の審査などを手がける「社会保険診療報酬支払基金(本部・東京)」が料金を集める。

これに対して、健保組合連合会が今年 2 月、塩崎恭久厚労相あてに「あまりに高額で、事業主や加入者の納得を得ることが難しい」などと指摘して、運営費を下げるよう求める要望書を提出。 強く反発した。 ある健保組合の幹部は、「マイナンバーで得られる情報は、これまで通り加入者にじかに求める方が簡単だ。 システムはかえって手間がかかるので使わない。」と、事情を話す。

こうした批判を受け、厚労省は利用料の引き下げを検討し始めた。 厚労省保険局は「利用料は大幅に引き下げる方向で検討している。 利用が始まれば便利さがわかってもらえる。 将来はより多くの情報が利用でき、便利になる。」と話している。 (松浦新、asahi = 4-6-17)


マイナンバーカード、本格運用 3 カ月延期 習熟図る狙い

高市早苗総務相は 17 日、役所での手続きをマイナンバーカードで簡素化できる制度の開始を、当初予定の 7 月から 10 月ごろに約 3 カ月延期すると発表した。 システムトラブルでカード交付が大幅に遅れた反省から、本格運用を遅らせて十分な習熟期間を置き、混乱の再発を避ける狙い。 閣議後の記者会見で発表した。 開始が延期されるのは、役所で児童手当や年金の受給などを申し込む際、マイナンバーカードがあれば住民票や課税証明書の添付が不要になる「情報連携」と呼ばれる機能。 ネットで保育所の申し込みなどができる「マイナポータル」機能も、大半は 10 月まで使えないという。

この二つの機能は、カードの利点として国が強調してきた。 10 月までの約 3 カ月を全国の役所での試験運用に充てるほか、スマートフォンでマイナポータル機能を使えるアプリを 10 月までに開発する。 一方、カードを使ってコンビニで住民票などを受け取れる仕組みは多くの自治体で導入済みだ。 高市氏は「今のシステムはパソコンでの設定が難しいという声も多い。 利用者目線で、スマホ向けの開始時期に合わせて延期する判断をした。」と説明した。 (上栗崇、asahi = 3-17-17)


マイナンバーカード受け取れない 謎のシステム障害頻発

1 月から動き始めたマイナンバー(社会保障・税番号)のシステムで不具合が続き、市区町村の窓口でマイナンバーカード(個人番号カード)が受け取れない事例が全国で相次いでいる。 システムを運営する総務省の外郭団体「地方公共団体情報システム機構」によると、不具合の原因は分かっておらず、正常化のめども立っていない。

カードはインターネットや郵送で申請し、市区町村の窓口で受け取る仕組み。 ところが千葉市では、受け取りに来た申請者が窓口で今後使う暗証番号を登録する際、システムの作動が止まり、登録できない状態になってしまうことがある。 本来は番号登録後にカードをその場で手渡しするのが原則だが、「市民を待たせるわけにもいかない(担当者)」ため、暗証番号を紙に書いて残してもらい、正常に作動するようになったときに職員が代わりに入力し、簡易書留で郵送しているという。

名古屋市では 2 月 22 日 - 3 月 2 日、窓口で交付できなかったカードが 1,350 枚を超えた。 2 月 22 日は 300 人超が受け取れず、「仕事を休んで来たのに」といった苦情が相次いだ。 職員は「いつシステムが動くかわかりません」と対応に追われた。 職員の残業も増えており、担当者は「一刻も早くシステムを安定させてほしい。 市民には謝り続けるしかない。」と話す。

機構によると、同様の事例は全国の市区町村で起きている。 また、カードの申請から受け取りまでの期間も長期化。 元々カードの作成能力に限りがあったところに不具合が重なった。 機構から市区町村にカードが届いても、交付の処理が遅れる事例も頻発している。 (真海喬生、木村浩之、斉藤太郎、asahi = 3-6-16)


マイナンバーでシステム障害 影響長引く可能性も

今月から役所の手続きで使われ始めたマイナンバー(社会保障・税番号)で 18 - 19 日、システム障害が全国的に起きた。 市区町村で希望者に無料で配る「個人番号カード」が一時的に発行できず、住民の情報もやりとりしづらくなった。 カードの配布を延期する自治体も出ており、影響が長引く可能性もある。 総務省の外郭団体で、システムを運営する地方公共団体情報システム機構が 19 日発表した。 通信がつながりづらい状態になり、2 日間で計約 280 の市区町村から問い合わせがあった。 役所の窓口に来た住民に個人番号カードを渡せなかったり、市区町村から機構に住民情報を送れなくなったりしたという。

機構によると、部品の故障とみられ、一部の装置の稼働を停止し、その後障害はなくなったという。 詳しい原因は調査中としている。 13 日にも同様の障害が起きていたことも明らかにしたが、「外部から入りこめないシステム(機構の担当者)」のため、サイバー攻撃や個人情報漏れの可能性はないとしている。 浜松市は 19 日、20 日から予定していた個人番号カードの配布を延期すると発表。 「カード管理システムに断続的に不具合が発生し、交付事務に支障をきたす恐れがある」と説明している。 (asahi = 1-19-16)


マイナンバー、各所で流出対策 1 兆円市場に沸く業界

日本に暮らす一人ひとりに 12 桁の番号が割り振られる「マイナンバー(社会保障・税番号)」。 その法律が 5 日施行され、今月中旬から番号の通知が始まる予定だ。 企業と自治体は情報漏れ対策やシステム改修に追われ、副業を持つ人に混乱も広がっている。 東京都立川市で 2 日あった中小企業向けのマイナンバーセミナー。 経理や人事の担当者らで 40 席が埋まり、社会保険労務士の講演にペンを走らせた。

「アルバイト従業員でもマイナンバーの取得は必要です。」 「書類を持ち出す時は、マイナンバーが見えない封筒に入れましょう。」 すべての民間事業者が従業員のマイナンバーを集め、安全に保管することが義務づけられる。 中小企業も情報漏洩(ろうえい)対策が必要だ。

立川市のソフトウェア開発会社総務部長の赤沢直美さん (48) は、昨年から同種のセミナーに 5 回ほど参加した。 従業員は約 40 人。個人情報を扱うのは自分だけだが、「マイナンバーがどこで漏れるか不安。 手間が増えるばかり。」 ネットから遮断したパソコンで管理し、周りから見えないよう仕切りで囲う予定だ。 八王子市の遺影写真制作会社の山下俊治常務 (56) は初参加。 「ウイルスが心配。 データが盗まれないよう、社内のセキュリティーを上げなくては。」と気をもむ。

セミナーは、オフィス向け IT 機器の販売やシステム管理が専門のキヤノン S & S が主催。 昨年末から全国で 500 回以上開き、制度の説明に合わせて、マイナンバー対応のキヤノン製複合機や人事・給与システムなどを売り込む。 担当者は「中小企業がセキュリティーを見直す起爆剤。 マイナンバー特需です。」 情報サービス業の大塚商会の 1 - 7 月のセミナーも 1 万 6 千人が受講した。 (工藤隆治 田中ゑれ奈、仲村和代、asahi = 10-5-15)


マイナンバーで「副業ばれる」は本当か 税理士に聞く

マイナンバーが導入されると、副業が会社に知られてしまう - -。 ネットなどでそんな情報が広がり、不安を抱く人たちがいる。 横浜市中心部の歓楽街・関内。 キャバクラに勤務する女性 (42) は建設会社で一般事務をこなす OL だ。 実家暮らしの独身だが、月 18 万円ほどの「本業」の給料はほぼ生活費に消える。 週 3 回の勤務で月 10 万円ほど稼げるキャバクラの仕事は、割のよい「副業」。

しかし、半年ほど前から、「マイナンバーが始まると副業がばれる」とのうわさを耳にするようになった。 会社は副業を禁じている。 「副業収入を小遣いやペットの養育費にあててきたけど、ばれるくらいなら、あきらめて(副業を)辞めざるを得ないかも。」 キャバクラを経営する女性 (39) は、人手不足を心配する。 店に勤務する女性 14 人のうち「副業」は 11 人。 「この子たちが会社にばれるのを恐れて辞めてしまったら、店は回らない。」

副業は本当に会社に知られてしまうのか。 すばる会計事務所(東京都台東区)の森瀬博信税理士は「ばれる可能性は以前からあり、マイナンバー導入とは関係ない」と話す。 確定申告で申告する所得には「給与所得」、「事業所得」、「雑所得」といった分類がある。 森瀬税理士によると、本業の会社に知られる可能性があるのは、アルバイトなど従業員として働き「給与所得」を得るケース。 「給与」にかかる住民税は本業の会社の給料から天引きされるのが一般的で、副業分の住民税額は会社に通知される。 このため、経理担当者などが副業に気づく可能性がある。

一方、キャバクラの収入は多くの場合「事業所得」や「雑所得」で、確定申告時に住民税を「自分で納付する」と選択すれば、会社側に税額は通知されない。 株や FX などの金融取引や広告収入が見込める個人ブログなどの副業も、収入が「雑所得」、「譲渡所得」などに分類され、自分で住民税を納付すれば会社に知られる可能性は低くなる。 ただ、この仕組みは以前からのもので、マイナンバー導入とは関係がない。

マイナンバー導入で可能性が高まるのは、税務署による申告漏れや無申告の指摘が増えることだという。 副業先の店などが税務署に提出する支払い調書に、報酬などを支払った相手のマイナンバーが記載されるため、収入を得た人が確定申告をしたかどうか特定するのが容易になるからだ。 副業でも一定以上の収入があれば確定申告が必要だが、森瀬税理士によると、申告しない人が多いという。 「会社に副業がばれるよりも、税務署に申告漏れがばれることを心配したほうがいい。」 (千葉卓朗、asahi = 10-5-15)


マイナンバー 5 日施行 … 国内全員に 12 桁の番号

国内に住む全ての人に 12 桁の番号(マイナンバー)を割り振る共通番号制度関連法が 5 日、施行され、マイナンバー制度がスタートする。 給与計算や社会保障などの手続きで、マイナンバーを実際に使うのは、来年 1 月からになる。 自分のマイナンバーは、今月中旬から 11 月にかけて、自治体から郵送される「通知カード」で確認できる。 カードは、世帯ごとに家族分まとめて簡易書留で手元に届く。 原則としてマイナンバーは生涯変わらない。

市区町村によって発送時期は異なり、自治体のホームページなどで発送が行われたかどうかを確認できる。 発送済みなのに、しばらくしても手元に届かなければ、5 日時点で住民登録している自治体に問い合わせる必要がある。 希望者は各自治体に、顔写真付きの「マイナンバーカード」を申請でき、早ければ来年 1 月から無料で入手できる。 (yomiuri = 10-4-15)


不審電話からネット占いまで マイナンバー詐欺にご注意

5 日から始まるマイナンバー(社会保障・税番号)制度に便乗し、個人情報やお金をだまし取ろうとする電話や訪問が増えるおそれがあると、国民生活センターが注意を促している。

センターによると、不審な電話などに関する相談は昨年 10 月から寄せられている。 東北在住の 60 代女性宅には行政機関職員を名乗る男から電話があり、「マイナンバーのアンケートをしている」として年金受給者かどうかや家族構成を聞いた。 他にも「制度が始まると手続きが面倒になる。 口座番号を至急教えてほしい。」、「手続きしないと刑事問題になる」などと話しかける例が報告されている。

10 月中旬から 11 月にかけてマイナンバーを記載した通知カードが各世帯に簡易書留で郵送される。 センターは「これからが要注意。 『あなたの情報が漏れている』と不安をあおり、現金を要求するなど、いろんな手口が出てくる可能性がある。 不審な電話はすぐに切り、不安を感じたら消費生活センターや警察に相談してほしい。」と話す。 (毛利光輝、asahi = 9-30-15)

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