ワイモバイルも値上げ追随、最大 630 円↑ 経済圏なら実質据え置き ソフトバンクは 4 日、携帯電話のサブブランド「ワイモバイル」の料金を改定し、最大で月 630 円値上げすると発表した。 携帯各社は物価高の影響を受け、近年続けた値下げ競争をやめて値上げに動いている。 ワイモバイルはデータ通信量に応じて 3 種類ある料金プランのうち、最も小さい S の基本料を 630 円値上げして、税抜き 2,780 円に改定する。 データ量は 4 ギガから 5 ギガに増やす。 M(30 ギガ)と L (35 ギガ)はデータ量は変えずに月 130 円値上げする。 もっとも、料金をペイペイカードで支払い、さらに固定通信サービスを契約する場合は、S (980 円)、M (1,980 円)、L (2,980 円)の割引料金が適用されて実質据え置きとなる。 ソフトバンクの寺尾洋幸専務は、値上げの理由を「電気料金など原価の高騰が非常に大きく、円安の影響や人件費のベースアップなど全体的にコストが上昇している」と説明。 「グループシナジーを生かせば安いかたちで使っていただけるようにした」と狙いを話した。 携帯業界では 2020 年ごろから、楽天モバイルの本格参入や菅義偉政権時の「官製値下げ」で価格競争が続いたが、物価高の影響を受けて、各社が値上げに動いている。 NTT ドコモは今年 4 月に、KDDI も 6 月に主要プランの値上げを発表。 楽天モバイルも動画配信サービスが見放題になる新しい料金プランを打ち出し、ソフトバンクの動きに注目が集まっていた。 (村井七緒子、asahi = 9-4-25) 圏外でも X やグーグルマップ使えます KDDI がスマホ衛星通信拡充 KDDI は 28 日、スマートフォンと人工衛星の直接通信サービス「au Starlink Direct」で、X (旧ツイッター)やグーグルマップなど 19 のアプリが利用可能になったと発表した。 圏外エリアでも空が見えれば通信がつながるため、災害時や山間部、海上などでの利用を見込む。 KDDI によると、従来の SMS の送受信などに加え、ニュースの NewsPicks やスマートニュース、気象情報のウェザーニュース、登山情報の YAMAP といったアプリを利用できるようになった。 米スペース X 社の衛星「スターリンク」とスマホの直接通信でのデータ通信は世界初としている。 対応機種は「Google Pixel 10」シリーズや、「Galaxy Z」の Fold7、Flip7 の計 6 種類だが、順次拡大する。 au のスマホ利用者であれば追加料金なしで使用でき、他社回線の契約者も月額税込み 1,650 円で利用できる。 対応アプリも今後増やしていくという。 利用者の多いメッセージアプリ「LINE」は現時点では使えないが、この日の会見で KDDI の担当者は「コミュニケーション系アプリのニーズは高い。 LINE さんを含めて KDDI からお声がけさせて頂いている」と説明した。 (黒田健朗、asahi = 8-28-25) 楽天モバイルに不正アクセス容疑、16 歳を逮捕 3 少年と手法共有
記事コピー (2-14-24〜8-22-25) 赤字インテルにソフトバンク G が出資 AI 半導体に賭ける孫氏の読み
記事コピー (10-24-19〜8-19-25) 特殊詐欺の被害、過去最悪 597 億円 「ニセ警察官」深刻 上半期 オレオレ詐欺など特殊詐欺の今年上半期(1 - 6 月)の被害は、暫定値で昨年同期の約 1.5 倍の 1 万 3,213 件、被害額は約 2.6 倍の 597 億 3 千万円で、いずれも統計がある 2004 年以降、上半期としては最悪となった。 警察官をかたって捜査名目で現金などをだまし取る「ニセ警察詐欺」の被害が目立つ。 警察庁が 31 日、発表した。 ニセ警察詐欺は、「あなたの携帯電話が犯罪に使われている」などと偽り、LINE など SNS でやりとりして警察手帳や逮捕状の画像を送るなどした上で「あなたのお金が犯罪に関与しているか判断する」などと言って、口座に現金を振り込ませるなどする。 今年上半期の被害は認知件数が 4,737 件で特殊詐欺全体の 35.9%、被害額は 389 億 3 千万円で全体の 65.2% を占めた。 今年 1 月から統計を取り始めたため昨年同期との比較はできないが、特殊詐欺の被害増の大きな要因となっている。 被害者の年代別では、30 代が 20.5% と最多で、20 代 18.7%、40 代 13.3% などと広く被害に遭っている。 うその電話の 7 割近くがスマートフォンなどの携帯電話にかかっていた。 「2 時間後からこの電話は使えなくなる」などと、まず自動音声ガイダンスが流れる手口も増えている。 1 件あたりの被害額は約 828 万円で、他の特殊詐欺の 3 倍以上と被害額が多いのも特徴という。 警察庁は「警察が SNS で連絡したり、振り込みなどを求めたりすることは一切ない」として注意を呼びかけている。 特殊詐欺全体では、未遂も含め、ニセ電話に使われた番号の 7 割以上が「+」で始まる国際番号だったといい、警察庁は国際電話の着信を規制できるアプリやサービスの利用を勧めている。 特殊詐欺とは別に、著名人をかたるなどして投資を誘う「SNS 型投資詐欺」と、恋愛感情を抱かせて金銭をだまし取る「ロマンス詐欺」の今年上半期の被害は合わせて 5,345 件(昨年同期比 4.6% 増)、被害額は 590 億 8 千万円(同 10.7%減)だった。 SNS 型投資詐欺が減った一方、ロマンス詐欺が大きく増加している。 (編集委員・吉田伸八、asahi = 7-31-25)
スマホ新法、指針で違法 100 事例 アップル「EU 型規制はリスク」 米アップルと米グーグルを規制する「スマホソフトウェア競争促進法(スマホ新法)」について、公正取引委員会は 29 日、法律の詳細を定める政令や規則、ガイドライン(指針)を固めた。 これを受け、アップルとグーグルは法律が施行される 12 月までに対応を迫られる。 スマホ新法は、スマートフォンをめぐる市場の競争促進を目的に、支配力を強める2社に対し競争を阻む行為を規制する。 アプリストアへの他社の参入を妨害することなどを禁止し、ブラウザーなどを利用者が選びやすいよう選択画面を表示することなどを義務づける。 指針では 100 以上の事例で、違法となる行為を具体的に示した。 6 月中旬まで実施した意見公募では、グーグルが「利用者の利便性を正当な理由による(規制の)例外として含めるべきだ」などと意見。 アップルはスマホの基本ソフト(OS)の機能を他社にも同等の性能で提供するよう求める義務に「意図しない結果をもたらす」と懸念を示し、アップルと同じ目的での使用に限定するよう求めた。 公取委はいずれの意見も採用せず、アップルの指摘には「具体的事例ごとに個別に判断する」とした。 アップルは同日、「政府が導入しようとしている EU 型の規制は、プライバシーやセキュリティーの保護を損なうだけでなく、私たちの技術やサービスを競合他社に無償で提供することを強いるものであり、新たなリスクを生じさせかねません」とコメントし、改めて懸念を示した。 公取委の鈴木健太官房参事官は「引き続き、関係事業者と法律の施行に向けた対話を続ける」と話した。 (東谷晃平、asahi = 7-29-25) 前 報 (3-31-25) U-NEXT 失意からの逆襲 ネトフリ迫る国内 2 位、見据える再編 U-NEXT HOLDINGS が運営する動画配信サービス「U-NEXT (ユーネクスト)」が好調だ。 有料会員は 466 万人超、国内市場ではシェア 2 位となり、王者ネットフリックスに迫る。 宇野康秀社長 (61) はかつて、配信事業の売却を銀行に迫られるなど、失意の日々を過ごした。 どのように逆襲を遂げたのか - -。 6 月 23 日、東京・渋谷のホール。 楽天モバイルとユーネクストの提携発表会見に臨んだ宇野氏は、感慨深げにこう語った。 「23 年を経て、自信をもって楽天さんと最強タッグになる機が熟し、ここに私は立てている。」 実は 23 年前にも、同じ渋谷で、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長 (60) と並んで会見したのだった。 三木谷氏も「日本企業の最強タッグ」、「運命共同体だ」と強調した。 最強タッグとは、楽天モバイルのデータ通信量無制限の主力プランに月 1,100 円を上乗せすると、月額 2,189 円のユーネクストが見放題になる施策のことだ。 10 月から始める。 スマートフォンで動画を視聴する習慣が根付いたいま、通信と動画配信サービスの親和性は高まっている。 三木谷氏によると、自身がユーネクスト側に提携を提案したという。 宇野氏は 1998 年、父の興した音楽などの有線放送事業を 34 歳で継いだ。 もっとも、動画配信への思いは大学時代までさかのぼる。 80 年代、郵政省や電電公社(現 NTT)が開発を進めていた「キャプテンシステム」など、文字や画像のデータ送信システムがニューメディアとして脚光を浴びていた。 映画を愛し、レンタルビデオ店に連日通い詰めていた宇野青年には、大容量の動画もデータ送信により便利に視聴できる時代が到来する予感があった。 「そんな時代が来たらすごいんじゃないか、と。 映画好きとして、そこに関わる仕事がしたいと思った。」と取材に振り返る。 そして 2002 年、当時の有線ブロードネットワークス(現 U-NEXT HD)は、楽天とともにパソコン向けの有料動画配信「ShowTime」のサービスを始めた。 宇野氏が渋谷で三木谷氏と並んで会見したのはこのときだった。 だが、学生時代からの夢をかなえたはずの「ShowTime」は、うまくいかなかった。 当時はスマホが普及しておらず、インターネット回線の通信速度も遅かったため、ユーザーにとって快適な環境での視聴は難しかった。 05 年からは広告収益を軸とする無料動画配信「GyaO」にも取り組んだが、台頭してきた YouTube などに押された。 そのうえ、08 年のリーマン・ショックの影響で社業が傾き、その後いずれの事業も手放した。 それでも、07 年にテレビ向けの有料配信「GyaO NEXT」として立ち上げたユーネクストは、銀行から売却を迫られても事業を続けた。 失意のなかでも、「広告収入による無料配信よりも、有料配信の方がビジネスとして大きくなる」という勝算があった。 反転攻勢のため地道に取り組んだのが、配信作品の増加だ。 「品ぞろえのロングテール戦略」にこだわり、他社は敬遠するような昔の映画作品の権利も獲得。 巣ごもり需要が伸びた新型コロナウイルス流行時には、音楽ライブやスポーツ中継の配信を拡充させた。 そして 23 年、TBS やテレビ東京などが出資していた動画配信サービス「Paravi」の統合が急成長につながった。 ドラマ「半沢直樹」などの人気作を取り込めたことが大きかった。 現在、見放題の作品数は国内最多の 32 万本以上をうたう。 ユーネクストの施策は、海外発のネットフリックスやアマゾンプライムビデオなどが力を入れる「独自コンテンツ戦略」とは対照的と言える。 ただ、定額制配信(サブスク)が世間に浸透するなか、作品数の多さはユーザーにサービスを選んでもらう大きな強みとなった。 リサーチ会社 GEM Partners の調査によると、動画サブスクサービスの国内市場(金額ベース)シェアでユーネクストはアマゾンプライムビデオを抜いて 2 位につけ、首位のネットフリックスに迫るまで成長した。 動画配信で躍進を果たした宇野氏がいま注視するのは、民放を含めた各社がパイを奪い合う国内市場の動向だ。 日本テレビ系の Hulu やフジテレビ系の FOD、テレビ朝日系の TELASA などのサービスが乱立。 海外勢のサービスも好調だ。 デジタル赤字も懸念しつつ、宇野氏は「外資支配を許していいのか。 国内で唯一ネットフリックスに対抗しうるポジションにいるのは我々ぐらい。」と自負をにじませる。 「国内のサービス事業者が力を合わせて『日本丸』を作らなければ。」 逆襲の先に見据えるのは、自社を中心とした業界再編だ。 (黒田健朗、asahi = 7-29-25) NTT ドコモ、6,980 円のスマートウォッチ発売 NTT ドコモは 7 月 7 日、低価格ながら健康機能を充実させた「スマートウォッチ 01」、「スマートウォッチ 02」の 2 機種を発売した。 いずれも 6,980 円で、全国のドコモショップとドコモオンラインショップで取り扱う。 「スマートウォッチ 01」は 1.83 インチの大型ディスプレイを採用し、時計表示や文字が見やすい視認性重視のモデル。 一方の「スマートウォッチ 02」は 1.45 インチの小型ディスプレイを搭載し、軽量で装着感に優れたモデル。 なお、ディスプレイの輝度に差があり、スマートウォッチ 01 は 500cd/m2 なのに対し、スマートウォッチ 02 は 800cd/m2 と高く、屋外での視認性がより優れている。 健康運動管理にフォーカス 機能面では、スマートフォンの着信やメッセージを手首の振動で知らせる通知機能を搭載。 さらに、歩数や心拍数の計測、睡眠の質の可視化など健康管理機能も充実している。 運動管理では、ウォーキングやランニングなど100 種類以上のスポーツに対応しており、ユーザーの運動スタイルに合わせてデータを取得できる。 計測したデータはアプリを通じて「d ヘルスケア」と連携でき、継続的な健康管理をサポートする。 発売時点では歩数データと睡眠データの連携に対応し、今後、連携可能なデータ項目を拡充する予定。 d ヘルスケアとの連携には「TechWear」アプリのほか、iOS では「ヘルスケア」アプリ、Android では「Health Connect」が必要となる。 (Cnet = 7-7-25) 「ゴジェック」ドライバーらから待遇改善求める声 各地で大規模デモ インドネシアで、アプリで注文された料理の出前やバイクを用いたタクシーなど、アプリ経由で単発の仕事を請け負う人々(ギグワーカー)から待遇改善を求める声が上がっている。 アプリを運営するプラットフォーマー側の取り分の縮小などを求め、5 月には大規模なデモを展開した。 世界第 4 位の約 2 億 8 千万人の人口を抱えるインドネシアでは、経済成長とともにデリバリーアプリが一気に普及。 地元メディアによると、同国発のデリバリーアプリ「Gojek(ゴジェック)」の 2022 年のユーザー数は国内で約 6,400 万人。 東南アジア各国で類似のサービスを展開する「Grab」の利用者数も約 3,360 万人。 多くの利用者はジャカルタなどの大都市圏に集中している。 人気の理由は利便性と安さだ。 片道 10 キロでもバイクタクシーなら 300 円程度。 特に大都市圏の住人であれば気軽に利用できる価格帯だ。 業界団体は 20 年、バイクタクシードライバー数が全土で 400 万人に達したと発表した。 一方、頻繁な割引セールなどによる価格競争も進み、配達員の待遇改善が課題となっている。 地元メディアによると、首都圏の配達員 225 人への調査では、ガソリン代などを差し引いた 1 日の収入は、国内主要都市の平均最低賃金を下回る水準だった。 5 月に全国各地であった大規模デモでは、現行で 20% とされるプラットフォーマー側の取り分を、10% に縮小することなどを要求した。 だが地元メディアによると、政府とプラットフォーマー側のいずれも「20% は顧客サービス維持に不可欠」などとして要求を拒否した。 デモに参加したリオ・ライサンさん (21) は新型コロナ禍で失職し、ドライバーに転じた。 生活は苦しく「1 千ルピア(約 9 円)でいいから分け前を上げてくれ」と懇願する。 (ジャカルタ・河野光汰、asahi = 7-1-25) 大阪の民宿で中国人宿泊客のモバイルバッテリーが爆発、床板が焦げ 15 万円賠償 - 中国メディア 日本を訪れた中国人男性が所持していたモバイルバッテリーが民宿内で爆発・発火し、民宿側から賠償を求められる騒動があったようだ。 中国メディアの極目新聞が 18 日に報じた。 記事によると、王さんは今年 5 月 25 日に日本を旅行で訪れ、大阪の民宿に宿泊。 モバイルバッテリーを充電して就寝したところ、翌朝 6 時ごろに「バンッ!」という破裂音が聞こえて側頭部に熱を感じた。 飛び起きて確認したところ、枕元のナイトテーブルに置いたモバイルバッテリーが発火していた。 王さんはすぐにプラグを抜き、火がベッドに燃え移るのを防ぐためにモバイルバッテリーを床に投げ落とした。 延焼を防ぐため、靴でたたいて火を消そうとしたがうまくいかなかった。 火がそばにあった荷物に燃え移ったため、水を汲んできてまず荷物の消火に当たった。 この時点ですでに煙が部屋に充満し、火災報知機のアラームも鳴っていたという。 王さんは「こういう事態に遭遇するのは初めてで、当時はかなり動揺していた。 消火器を探そうとしたけど、宿泊初日で設置場所が分からず、見つけられなかった。」と語った。 その後、友人の手を借りて水をかけ、なんとか火を消し止めたという。 王さんが撮影した現場の映像では、床のフローリングの一部が黒く焼け焦げ、天井の一部も黒くすすけている様子が確認できる。 民宿のオーナーからは、床板の交換費用やごみ処理の費用として計 15 万円を請求された。 モバイルバッテリーのメーカーは中国の ROMOSS で、今年 3 月に購入したばかりだった。 ただ、公式店ではなく別のオンラインショップで購入したものだといい、購入したショップ上ではすでに商品が削除され、店のカスタマーサポートにメッセージを送っても返信がなかった。 王さんは「悪質な業者に当たってしまった」と肩を落とした。 しかし、今月 16 日に ROMOSS のモバイルバッテリーに「潜在的な安全上のリスクがある」として自主回収(リコール)が発表されたことを受け、王さんは同社に賠償を請求できないか改めて検討している。 深セン市市場監督管理局の公式サイトによると、リコールの対象は 2023 年 6 月 5 日 - 24 年 7 月 31 日の間に製造された一部のモバイルバッテリー 3 機種、計 49 万 1,745 台。 中国ではこれに先立ち、北京の複数の大学が同社製のモバイルバッテリーの使用を禁止したとの情報が話題になっていた。 (北田、Record China = 6-19-25) 最新 iPhone にも搭載「AI 半導体」 CPU とは何が違うのか AI は半導体で進化する 高性能な AI (人工知能)を実現するためには、高性能な半導体が不可欠である。 現在、AI の処理には、画像処理用の半導体である「GPU」が広く利用されている。 最先端の AI が要求する膨大な計算量を処理するため、GPU を進化させた AI チップの開発が進んでいる。 AI の進化に対して、半導体はどのように進化しているのか。 そして、半導体の進化は、AI の進化にどのような影響をあたえるのだろうか。 利用者の要望に応じて新しい文章やイラストなどをつくりだしてくれる「生成 AI」の利用が世界中で広がっている。 文章を生成してくれる OpenAI の「チャット GPT」は、日本でも人気の生成 AI の一つだ。 アップルの「シリ」やグーグルの「ジェミニ」、アマゾンの「アマゾンアレクサ」などの AI アシスタントを日常的に使っている人も多いだろう。 そのような AI の進化を裏で支えてきたのが「半導体」だ。 近年の AI は、その性能を発揮するために膨大な計算量を必要としている。 膨大な計算量を短時間で処理するためには、高性能なコンピューターが必要だ。 コンピューターの性能は、その中に搭載されている半導体の性能が決めるといってもよい。 すなわち、高性能な AI は、高性能な半導体なしには実現できないのである。 半導体、LED や冷蔵庫のセンターにも そもそも「半導体」とは、金や銅などの「導体」と、ゴムなどの「絶縁体」の中間的な電気の通しやすさをもつ物質のことだ。 代表的な半導体は、ケイ素(シリコン)やゲルマニウムである。 最近では、半導体でつくられた電子部品、すなわち「半導体デバイス」のことを指して、「半導体」とよぶことが多い。 「次世代半導体の開発」や「半導体製造工場を新たに建設」などとニュースで報じられるときは、物質としての半導体ではなく,半導体デバイスのことを指している。 ひとくちに半導体デバイスといっても、その種類は実に幅広い。 スマートフォンやパソコンの頭脳として使われている「CPU (中央処理装置)」は、現代の代表的な半導体デバイスの一つだ。 また、照明として広く使われている「LED (発光ダイオード)」も半導体デバイスであり、炊飯器や冷蔵庫に入っている「温度センサー」も半導体デバイスだ。 現代では、電気を使うあらゆる製品に半導体デバイスが使われているといってよい。 AI の需要の高まりにともない、「AI 半導体」が注目を集めている。 AI 半導体とは、AI の処理に適した、あるいは AI の処理専用の半導体デバイスのことである。 スマートフォンやパソコンの頭脳として利用される CPU は、幅広い処理を行うことができる汎用的な半導体デバイスである。 そのため、CPU でも AI の処理は可能だ。 しかし、AI の処理には膨大な計算量が求められるため、CPU で処理しようとすると、かなりの時間がかかる。 そこで現在は、AI に関する処理はそれに適した半導体デバイス、すなわち AI 半導体にまかせることが多くなっている。 AI 半導体は,あなたのスマートフォンの中にも入っているかもしれない。 2024 年に発表されたアップルのスマートフォン「iPhone 16」には、「A18」という半導体デバイスが搭載されている。 A18 は、スマートフォン全体の制御を行う CPU と、画像処理を行う「GPU (画像処理装置)」という半導体デバイス,そして AI の処理を行う「ニューラルエンジン」という AI 半導体を一つにまとめたもの(半導体チップ)である。 AI 半導体を搭載することで,アップルの AI アシスタント「シリ」の処理速度などを向上させている。 ニューラルネットワークの処理に向いている GPU 現代の AI の多くは、「ディープラーニング(深層学習)」という手法を使っている。 ディープラーニングとは,ヒトの脳の神経細胞(ニューロン)のネットワークをコンピュータープログラムとして模した「ニューラルネットワーク」を使って、画像や言語など、さまざまなものを学習する手法だ。 ニューラルネットワークは、層状に配置された多数の人工ニューロンの間で信号がやりとりされることで、学習などを行う。 AI の処理に膨大な計算量が求められるのは、多数の人工ニューロンの間で行われる大量の信号のやりとりを計算しなければならないからだ。 現在、ニューラルネットワークの計算に適した半導体デバイスとして,「GPU」が広く利用されている。 GPU (Graphics Processing Unit : 画像処理装置) は、コンピューターが画像をえがくための処理を行う半導体デバイスだ。 画像処理と AI のニューラルネットワークの処理は、計算方法が似ていることが知られている。 GPU が AI の処理に広く利用されるようになったきっかけは、2012 年に開催された画像認識コンテストだ。 このコンテストで優勝したのは,カナダ・トロント大学の AI 研究者ジェフリー・ヒントン博士(1947 〜)らの研究チームである。 彼らはディープラーニングの手法を使うことで、圧倒的な成績(画像認識の正解率)で優勝を果たした。 このときのディープラーニングの計算に、GPU が使われていたのである。 これ以降、画像処理用の GPU が AI の処理に広く使われるようになった。 さらには、GPU を土台に改良された AI 専用の半導体デバイスも開発されるようになっていく。 コンテストで優勝したヒントン博士は、ディープラーニングの開発者の一人でもある。 ヒントン博士は、ニューラルネットワークを使った AI の学習方法の開発に貢献したとして、2024 年のノーベル物理学賞を受賞している。 構造(アーキテクチャ)がちがう CPU と GPU CPU や GPU は、微小な「トランジスタ」などの半導体部品(素子)を、1 枚の基板上に組み合わせた「集積回路 (IC)」の一種である。 トランジスタとは、電流のオン・オフを切りかえたり、電気信号を増幅したりする機能をもつ素子である。 集積回路の中には,「MOSFET」とよばれる 1 万分の 1 ミリメートル程度の微小なトランジスタがぎっしりと詰まっている。 一つの集積回路に含まれるトランジスタの数は、ときに数百億から数千億個にもなる。 CPU や GPU は、集積回路中のトランジスタの電流のオン・オフを高速で切りかえることで、さまざまな計算や論理演算を行う。 CPU も GPU も、トランジスタなどの素子によって構成されていることは同じである。 ここでくわしくは説明しないが,材料や製造方法も基本的に同じだ。CPUとGPUの半導体デバイスとしての大きなちがいは,その構造(アーキテクチャ)である。 CPU や GPU において、プログラムなどの処理(計算)を行う単位を「コア」という。 CPU は、コンピューターの頭脳として、複雑で多様な処理を行わなければならない。 そのために、CPU は計算能力の高いコアを数個〜数十個そなえている。 一方、GPU が担当するのは画像処理だ。 なめらかな画像をえがくためには、較的単純な計算を同時に大量に行う,、すなわち並列処理を行う必要がある。 そこで GPU は、並列処理を行うために数千個のコアをそなえている。 ただし,一つ一つのコアの計算能力は,CPU のコアにくらべると低い。 CPU と GPU はコアの計算能力やその数、並べ方などの構造(アーキテクチャ)がちがうことで,ことなる機能を実現しているのである。 (福田伊佐央、asahi = 6-3-25) |