楽天 G、第 3 四半期 744 億円の純損失 - モバイル改善も黒字遠く 楽天グループは 13 日、2024 年 7 - 9 月期(第 3 四半期)業績を発表、純損益は 744 億円の損失と 17 四半期連続の赤字となった。 損失額は前年同期の 685 億円から増加した。 アナリストの予想平均は 251 億円の赤字だった。 楽天 G の資料によると、売上収益は引き続きフィンテック事業が好調なほか、モバイル事業でも前年同期比 2 割増加するなど全体で 9% の伸びになった。 ただ、モバイル事業の赤字幅は縮小傾向にあるものの黒字化が見えていない。 また、第 3 四半期には金融費用が 716 億円と、前年同期の 333 億円から大きく膨らみ、全体の純損益は赤字となった。 9 月末時点の全契約回線数は 793 万と、6 月末の 755 万から増加した。同社は 2024 年中に 800 万 - 1,000 万の回線数を目標としていた。資料によると、第 2 四半期の ARPU (1 ユーザー当たりの売り上げ)は 2,039 円と前四半期の 2,021 円から 1% 以下の伸びとなった。 巨額の負債を抱える同社が NTT などに対し競争力を持つには高額な設備投資が必要になる。 2025 年までに 5,150 億円相当の社債償還を迎える同社にとって、モバイル事業での黒字化は喫緊の課題だ。 決算発表に先立って同社は、みずほフィナンシャルグループに楽天カード株の 15% 弱を 1,650 億円で売却する資本提携を発表した。 同社は 9 月にみずほ FG と戦略的な資本提携の検討入りで合意したことを明らかにしていた。 これについて三木谷浩史社長は決算会見で「大きな戦略的資本提携だ」と述べ、明日会見を開き詳細について説明する考えを示した。 (日向貴彦、Bloomberg = 11-13-24) 楽天モバイルが採用する「スマホ直接通信衛星」、運用を米当局が承認 米 AST SpaceMobile は米国時間 8 月 5 日、スマートフォンとの直接通信が可能な衛星 5 機の配備と運用について、条件付き承認を受けたと発表した。 AST SpaceMobile は地球低軌道 (LEO) に巨大アンテナを搭載した衛星を打ち上げることで、スマートフォンとの高速通信の実現を計画している。 すでに試験衛星「BlueWalker 3」を軌道に投入しており、9 月以降には大型の商業衛星「BlueBird」を打ち上げることで、2026 年の商用サービスの提供を予定している。 米連邦通信委員会 (FCC) の部分的なライセンスにより、AST SpaceMobile は宇宙で V、S、UHF といった周波数帯域で最初の BlueBird を制御することが認められた。 海外メディアの SpaceNews によると、携帯電話の周波数を使用する許可を与えるかどうかの決定は延期されたという。 AST SpaceMobile は合計 45 社以上のモバイルネットワーク事業者と契約を結んでおり、既存の加入者数は合計 28 億人に上る。 米国での継続的なサービス提供には、45 - 60 機の Blue Bird が必要だとしている。 衛星を射場に出荷する準備も終えたという。 AST SpaceMobile は創業時に日本の楽天グループが出資、楽天モバイルが提携している。 (UchuBiz = 8-7-24) 楽天、プラチナバンド 6 月ごろ開始へ 反転攻勢の切り札なるか 楽天グループの三木谷浩史・会長兼社長は 14 日、屋内でも携帯電話がつながりやすい周波数帯「プラチナバンド」について、楽天モバイルで「今年 6 月ごろからのサービス開始をめざす」と明らかにした。 ユーザーや通信量が多い主要都市から順次、始めるという。 この日開いた決算会見で話した。 プラチナバンドは 700 - 900 メガヘルツの周波数帯で、障害物を回り込んで届く特性から、屋内や地下でも電波がつながりやすいとされる。 これまでは競合する NTT ドコモ、KDDI、ソフトバンクの 3 社だけが持っていたが、総務省が昨秋、楽天への割り当てを決定。 楽天は先月から都内で試験電波を発射していた。 三木谷氏は「試験の結果はたいへん好調だ」と強調。 通話品質が向上すれば他社へ流出する顧客をつなぎとめることができ、赤字が続く携帯電話事業の「反転攻勢」の切り札になると期待する。 この日発表したグループ全体の 2024 年 1 - 3 月期決算(国際会計基準)は、売上高が前年同期から 8% 増の 5,136 億円、純損益は同 825 億円の赤字から 423 億円の赤字に改善した。 楽天モバイルの契約回線数や 1 人あたりの通信料が増えたことで、モバイル事業の赤字が同 307 億円減ったことが寄与した。 (上地兼太郎、asahi = 5-14-24) 楽天 G、みずほ銀含む主要行からの借入残高 4 割減 - 資金繰り課題 楽天グループによるみずほ銀行など主要行からの借入残高が 2023 年末までの 1 年間で約 4 割減ったことが、4 日開示された定時株主総会の招集通知で明らかになった。 巨額の社債償還に向けた資金確保という課題に直面している姿が改めて浮き彫りになった形だ。 通知によると、みずほ銀と三井住友銀行、三井住友信託銀行からの借入残高は 23 年 12 月末時点で総額 3,081 億 8,600 万円と、前年末時点の 4,924 億 6,100 万円から 37% 減った。 残高が最も多いみずほ銀で 27% 減り、三井住友銀と三井住友信託銀ではそれぞれ 5 割超減った。 楽天 G はモバイル事業の損失を主因に 5 期連続の最終赤字を計上する中、24 年と 25 年に子会社と合わせて 7,000 億円規模の社債の償還期限を控えており、資金繰りに注目が集まっている。 借入残高の減少は、償還資金の確保に向けて市場からの調達を増やす必要性が高まる可能性を示唆する。 同社は今年に入りドル建て社債で 18 億ドル(約 2,700 億円)を調達し、社債型種類株で最大 1,000 億円を調達する計画も明らかにした。 企業再生アドバイザリー会社アシストの平井宏治代表取締役は、「財務状況から判断すると各行にとって楽天 G は正常な融資先ではなく、返済圧力が強まり、新規の借り入れが難しくなっている可能性がある」と指摘する。 比較的金利の低いローン残高が減る一方で、ドル建て社債の利回りが 12% 超に達したことを挙げ、資金繰りは難航しているように見えると述べた。 米モーニングスターの伊藤和典ディレクターは、「楽天 G がさまざまな資金調達手段を講じている背景には、貸出残高を減らしている銀行の姿勢もありそうだ」と話した。 米格付け会社 S & P グローバル・レーティングは 2 月、モバイル事業の業績が改善する一方、25 年に大量の社債を償還するための資金調達がまだ十分ではないとして、楽天 G の長期発行体格付けを投機的等級とされる「BB」、格付け見通しを「ネガティブ」に据え置いた。 楽天 G の広報担当者は借入残高の減少について、決まっていた契約に基づき返済したと説明し、新たな借り入れはないと明らかにした。 銀行とは良好な関係にあり、1,500 億円のコミットメントライン(銀行融資枠)を更新したという。 22 年 12 月期の有価証券報告書によれば、同社は主要 3 行のほか、三菱 UFJ 銀行、農林中央金庫と契約している。 招集資料からは、楽天 G 全体の従業員数が 3.9% 減ったことも分かった。 22 年末時点で 1 万 1,000 人を超えていたモバイル事業は 5,415 人に半減。 一方、フィンテック事業は 6,070 人にほぼ 1 割増えた。 また、三木谷浩史社長と親族、ファミリー企業の持ち株比率は 28% と、前年の 34% から低下した。 株主総会は 28 日に楽天 G 本社で開催する予定だ。 4 日の東京株式市場で楽天 G 株は一時 5.9% 上昇し、22 年 5 月以来の高値を更新した。 終値は 1.1% 高だった。 (日向貴彦、Bloomberg= 3-4-24) 楽天を襲った「23 年ぶり」の異常事態 モバイル赤字減だけでは喜べない深刻すぎる現状 楽天グループが 2023 年 12 月期の連結決算を発表しました。 ポイントは、営業損益で5期連続となる2129億円の赤字を計上したものの、前年の営業赤字から1588億円も改善したことでしょう。 これはひとえに、連結決算の足を引っ張り続けているモバイル事業の収益改善によるところが大きいといえます。 モバイル事業単体で見ると、前年同期から営業赤字が 1,417 億円も改善しました。 これがいよいよ、本格的な楽天モバイルの正常化につながるものなのか、検証してみましょう。 ● 思い知った「1% の重み」 事業をスタートして以降、楽天グループ決算の足を引っぱり続けているモバイル事業ですが、EC や金融などで得た利益を食いつぶし続けているのが、多額の設備投資です。 事業立ち上げ当初には総額として約 6,000 億円を見込んでいたこの投資ですが、既に 1 兆円を超える巨額を投じています。 一言で申し上げれば、事業計画に対する見通しがあまりに甘かった、ということになるわけです。 三木谷浩史氏(代表取締役会長兼社長最高執行役員)が「通信の人口カバー率は 98% 超え、目標の 99% 以上達成はもうすぐ」と語ったのが、ちょうど 1 年前の決算会見でした。 筆者の知り合いの大手通信キャリア幹部がこの発言を聞いて「98% からの 1% 改善が地獄の苦しみなのを、三木谷さんはご存じないようですね」と言い放ったのが印象に残っています。 三木谷氏のどこまでも甘い基地局整備に対する見通しを、象徴する発言であったといえます。 結局、この「1% の重み」を知った三木谷氏は、ほどなく au 回線でのローミング拡大を決断します。 結果、他社の力を借りて人口カバー率 99.9% を達成し、au への回線賃借の支払いは増えたものの、基地局設置投資は確実にペースダウン。 投資額は 22 年度の約 3,000 億円から、23 年度は約 1,800 億円まで抑えることができました。 24 年度以降の本投資は、さらに年間約 1,000 億円以内に抑えたいとしています。 しかし、これまた果たして思惑通りにすすむのか、過去の見通しの甘さからすれば怪しいところではあります。 ● 一気に契約回線が増えた「カラクリ」 モバイル事業の黒字化に向けては、巨額投資を抑えると同時に、収入を増やすことが不可欠です。 今回の決算発表で示したモバイル事業黒字化の目安は、契約回線数で800 万 - 1,000 万回線、ARPU (契約者当たり月平均収入)で 2,500 - 3,000 円でした。 すなわち、契約回線数と ARPU をともにこの目標領域に到達できれば、黒字化が達成できるもくろみです。 楽天モバイルの契約回線は、23 年 12 月末時点で 596 万回線となっています。 23 年 8 月時点の契約回線数が約 500 万件(8 月 28 日発表)であったので、4 カ月あまりで 100 万件も増加した計算です。 これはなかなかの数字ですが、ちょっとしたカラクリがあります。 楽天モバイルが 23 年 1 月から法人向けのサービスを開始したことに伴って、全社を挙げて法人契約獲得に動いたのです。 EC 部門を中心として約 90 万社の法人取引がある楽天グループですから、この領域に一斉に営業をかけた成果が数字に表れたわけです。 しかし、この手の既存マーケットへの切り込みは、常識的に考えて次年度以降も同じ勢いで獲得が進むようなものではなく、24 年以降は大幅なペースダウンが予想されます。 黒字化目安の最低ラインである 800 万件まであと 200 万件の差があるわけですが、やはり個人の契約数を増やさないことには安々とは到達できる数字ではないのです。 個人契約の獲得増強で大きく立ちはだかるのが「通信の質」の問題です。 つまり「室内でもクリアな音声でつながりやすい通信環境 = プラチナバンド」水準の実現なのですが、ここが楽天モバイル側にして最大の弱点なのです。 念願のプラチナバンド自体は、ようやく 23 年 10 月に認可を得ました。 しかし、これを全国レベルで提供するには、基地局投資が必要なのです。 プラチナバンド水準は実現したいが、投資は抑えたい。 楽天が出した結論は、プラチナバンド投資を「投資 10 年計画」の後半に充てる、というものでした。 すなわち、個人契約増強に不可欠なプラチナバンド水準の実現はまだまだ遠いのです。 ● 知恵を絞れば絞るほど「ドツボ」に 一方の ARPU は、黒字化目安の最低ラインである 2,500 円に対して、23 年 12 月時点で 1,986 円と、まだ月 500 円以上も上乗せが必要です。 特に気になるのは、23 年 9 月時点で 2,046 円と一度は 2,000 円台に乗せていたものの、再び 1,900 円台に落ち込んでしまっている点です。 これは、先にも述べた法人契約数の急増によるところが大きいと楽天側も認めています。 法人契約はその性格上、電話やメールの利用がメインであり、他のサービス利用による ARPU の上昇は見込みにくいのです。 この観点からも、やはり個人契約の増加が楽天モバイル黒字化のカギを握っている、といえるでしょう。 その個人契約ですが、契約者に対する楽天ポイントの優遇付与サービス目的のみで「寝かし契約」をしている個人も多く、この点もまた ARPU 下げの要因となっています。 今回、株主優待として提示した、全株主に対する「年間月 30 ギガ」まで使える自社の音声通話付きデータ通信の無料提供もしかりです。 個人株主の新規契約を狙ったものでしょうが、収益にならない契約者を増やすことになり、ARPU 面ではこれまたマイナス要因となるでしょう。 個人契約の増強で知恵を絞れば絞るほどマイナス効果も生まれてしまう、というジレンマを内包しているのが現状です。 ● 巨額の社債償還にも注目 今回の決算会見で、モバイル事業と並んで取材陣の注目を集めたのが財務問題でした。 焦点は、今年から続々と始まる社債償還対応のゆくえです。 ひとまず 23 年度の償還予定分である 800 億円については、楽天証券株をみずほ証券へ売却し、楽天銀行株を海外市場で追加売却することで確保。 しかし、24 年度はさらに多額の 3,200 億円、25 年度には 4,700 億円もの巨額の社債償還が待ち受けています。 24 年度については 1 月末に、年限 3 年のドル建て債 18 億ドル(約 2,650 億円)の 2 月発行を発表し、23 年の調達分と合わせて「24 年のリファイナンスリスクは解消した。 必要資金は全て確保済み。(廣瀬研二取締役 副社長執行役員)」としています。 しかし、ドル建て債 18 億ドルはあくまで既存債の借り換えに過ぎず、ジャンク債並みへの格付低下により、表面利率だけで年利は 11.25% と金利負担も増えています。 現状の赤字決算が続く限り、毎年償還の資金調達に追われる自転車操業状態は続くのです。 ● 23 年ぶりとなる「無配」も発表 楽天グループにとって、まずは 25 年度の巨額償還をいかに乗り切るか、が大きな焦点です。 いよいよ、本業である EC ビジネスに直結した中核子会社である楽天カード株の売却も現実味を帯びてきました。 そうなった場合に、果たして本業での利益を大きく削ってまで楽天モバイルを運営し続けるメリットがあるのか否か、大きな経営判断を迫られる局面もあるかもしれません。 全ては、モバイル事業の黒字化見通し如何にかかっているといえます。 最後にもう一つ、今回の決算会見で気になったことがあります。 会見資料の中で、生成 AI の活用をはじめとした AI 戦略の重要性について言及してはいたのですが、23 年 6 月期の半期決算会見時に三木谷氏が嬉々として話をしていた OpenAI 社との業務提携について、一言も触れる場面がなかったのです。 OpenAI 社は昨秋にアルトマン CEO の退任騒動がありました。 社内で氏の生成 AI の行き過ぎた商業利用を危険視する風潮が騒動の原因であると報じられました。 楽天との業務提携への影響は避けられないと思われ、大きなアドバンテージになるはずだった施策の雲行きが怪しくなったと感じた次第です。 赤字幅の問題ばかりに注目が集まりがちな楽天グループ決算ですが、株主の立場からすれば今回の決算で最も大きなニュースは「無配転落」でしょう(前年同期は 4 円 50 銭配当)。 同社が店頭登録した 00 年 12 月期以来、23 年ぶりとなる無配です。 5 年連続の最終赤字かつ無配転落という状況は、通常の上場企業の常識であれば「誤った経営戦略を主導した」として、株主からトップ交代を求められても仕方ない状況でしょう。 決算数字上は好転の兆しがあるといえ、出口の見えないモバイル事業黒字化への具体的な道筋を見せることが、三木谷楽天の最優先課題であることを再認識した決算会見でありました。 (大関暁夫、ITmedia = 2-29-24) 楽天 G の最終赤字 3,394 億円、過去最悪の前期から縮小 … 三木谷氏「とにかくダイエットした」 楽天グループが 14 日発表した 2023 年 12 月期連結決算(国際会計基準)は、最終利益が 3,394 億円の赤字(前期は 3,772 億円の赤字)だった。 最終赤字は 5 期連続となる。 コスト削減や携帯電話事業の収益の改善により、00 年の上場以来最大の赤字額となった前期から赤字幅は縮小した。 主力のインターネット通販サイト事業などは好調で、売上高にあたる売上収益は前期比 7.8% 増の 2 兆 713 億円だった。 ただ、グループの携帯事業などで多額の費用を計上したことで最終赤字となった。 携帯事業の単月黒字化を目指す時期を先送りしたことなどで、繰り延べ税金資産を取り崩す費用が 732 億円となった。 また、西友との合弁だったネットスーパー事業の子会社化で事業の価値を見直し、159 億円の減損損失も計上した。 携帯事業の赤字額は 3,375 億円で、KDDI の回線を利用する地域を拡大して設備投資を抑えたことなどで前期 (4,792 億円の赤字)から大きく改善した。 楽天の三木谷浩史会長兼社長は 14 日の決算説明会で、「(これまで)大胆な投資戦略を行ってきたので、とにかくダイエットした」と説明し、昨年 12 月には約 160 億円のコスト削減を行ったことを明らかにした。 今後は、当初の 23 年から 24 年中に先送りした、携帯事業の単月黒字化を達成できるかが焦点となる。 楽天の試算では、黒字化には 800 万 - 1,000 万人の利用者数が必要だ。 23 年末の利用者数は609 万人で、22 年末から 160 万人以上増えた。 直近は毎月 20 万人以上のペースで増加しており、年内にも 800 万人超を達成する可能性があるとしている。 利用者の開拓に向け、楽天は 21 日から、家族で加入すると基本料金を税抜き 100 円割り引く施策を始める。 23 年に獲得したつながりやすい周波数帯「プラチナバンド」も、5 月をめどに順次提供を始める計画だ。 (yomiuri = 2-14-24) |