骨粗鬆症予備軍の 40 代女性 コロナ下で外出自粛、「骨は 80 代」に 骨粗鬆症の対策には、運動して骨を丈夫にすることが重要だ 治療中の患者の 9 割以上が女性である骨粗鬆症は、年々患者数が増え続け、国内に推計 1,590 万人とする研究もある。 新型コロナウイルスが流行し、外出自粛による運動不足が症状を悪化させたと指摘する医師もいる。 どんな対策が必要か。 2018 年、閉経したばかりだった都内の当時 40 代後半の女性は、関節リウマチの治療先のクリニックで検査を受け、骨減少症だとわかった。 コロナで 1 年半運動できず 骨減少症は、骨密度(骨量)が若年成人の平均値の 70 - 80% にまで低下した状態。 70% 未満が骨粗鬆症と診断されるため、「骨粗鬆症予備軍」ともいわれる。 女性は、カルシウムの吸収に必要なビタミン D を処方してもらい、骨の強度を高めるため、毎日 2 時間の散歩を始めた。 しかし、20 年に新型コロナが流行し始めた。 リウマチ治療で免疫をやや抑える薬を服用中だったため、人との接触が怖く、散歩をやめて、ほとんど外出しない生活が 1 年半つづいた。 22 年、久々に骨密度を調べると、骨粗鬆症の領域まで低下し、医師からは 80 代の平均相当だと言われた。 まだ小さな子を育てている最中で、ショックだった。 医師の指導で、骨を壊す働きを抑える薬を飲み始めた。 買い物は隣駅まで 2 時間かけてゆっくりと歩き、カルシウムをとるため、ヨーグルトや豆腐を多く食べた。 いま女性の骨密度は少しずつ上がっているが、まだ骨粗鬆症の領域にとどまる。 主治医で日本骨粗鬆症学会認定医の中山久徳医師(そしがや大蔵クリニック)は、こう指摘する。
骨粗鬆症は、骨量が減る、または骨の質が低下することで骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気だ。 転倒はもとより、腰を曲げて荷物を持ち上げる、転びそうになって手をつく、といった日常の動作でも骨折が起きやすくなる。 特に大腿骨を骨折すると、入院や安静を強いられ、寝たきりにつながりやすい。 治療患者の 9 割が女性 厚生労働省の調査によると、23 年に骨粗鬆症で治療を受けた患者は 138 万 7,000 人だった。 ただ、骨粗鬆症の初期は症状がほとんどないため、自覚のない患者が多数いるとみられる。 患者全体のうち、女性が 9 割以上の 130 万 9,000 人だった。 なぜ女性に多いのか。 日本骨粗鬆症学会の診療ガイドラインによると、骨粗鬆症は、加齢、遺伝のほか、飲酒や喫煙といった生活習慣の影響を受ける複合的な疾患だ。 さらに女性の場合、50 歳前後で閉経すると、女性ホルモン「エストロゲン」が急激に減る。 エストロゲンは骨が壊れるのを防ぐ作用があるため、閉経後に骨密度は低下しやすくなる。 また、女性は 20 歳までに最大骨量に達する。 若い頃に過度なダイエットをすれば、カルシウムが不足して骨量が増えず、高齢になってからの発症リスクを高める。 コロナによる運動不足が拍車をかけた可能性もありそうだ。 骨はウォーキング、ジョギングといった重力のかかる運動によって刺激を受けて丈夫になるため、外出が減れば、もろくなりやすい。 また、カルシウムの吸収を促すビタミン D は、その多くが日光を浴びることで生成されるが、外出が減れば不足しがちだ。 運動、日光浴の不足が影響 中山医師は、「食事はほとんどデリバリー、移動は家の中の最低限のみであれば、寝たきりに近い状態になっているという危機感をもってほしい」と警鐘を鳴らす。 骨粗鬆症を予防するには、どうすればいいか。 中山医師は、「適度な運動」、「適度な日光浴」、「十分なカルシウム摂取」が不可欠だと指摘する。 運動は、縄跳びでジャンプしたり、ウォーキングで力強く足踏みしたりして、骨に負荷や振動を加えることを意識する。 高齢者でも家の中で安全にできるのが、つま先立ちでかかとを上げて落とす運動だという。 日光浴は、国立環境研究所ホームページにある「ビタミン D 生成・紅斑紫外線量情報」を見れば、地域や天気、時間帯に応じた適切な照射時間を考えるための参考になるという。 食事は、骨を丈夫にするカルシウムとビタミン D を多く摂取したい。 ただ、カルシウムは吸収率が悪いため、中山医師はレモン汁を飲み物や食事にかけることを勧める。 レモンに含まれるクエン酸がカルシウムの吸収を助けるという。 年齢で異なる予防策 また、対策は年齢によっても異なる。 国の外郭団体「骨粗鬆症財団」がまとめている。 骨粗鬆症の予防策 10 - 30 代は、骨密度を最大化して維持することが目的。 カルシウム、ビタミンD、たんぱく質を積極的に取り、過度なダイエットをやめ、運動を習慣にする。 40 - 60 代以降は、骨密度の低下を遅らせることが目的。 カルシウムとビタミン D を積極的に取り、適切な体重を維持し、運動を習慣にする。 定期的に骨量を測り、転倒にも注意する。 (枝松佑樹、asahi = 3-8-25) 我が子にも勧められない? 消化器外科医、半減の危機 手術に影響も 胃や腸の手術を担う消化器外科が窮地に立っている。 日本消化器外科学会の試算では、今後 20 年で学会員が半減し、手術までの時間が長くなったり、救急患者の受け入れが難しくなったりするおそれがあるという。 「断らない救急」を掲げる神奈川県横須賀市の横須賀共済病院は、年間 7,500 件の手術があり、うち 1,500 件は緊急手術だ。 腸に穴があいた、打撲でおなかが痛いなど、消化器外科が対応することが多い。 執刀機会を求める若い医師が自然と集まってくる。
昨年夏、外科医 2 年目の北本真悠さん (27) が大腸がんの腹腔鏡手術を執刀した。 指導医の助言をもらい、約 3 時間で手術が終わった。 週 3 回ほど執刀し、難しい症例も任されている。 北本さんは外科を選んだ理由について、「目に見えて病変を取り切ったことがわかることと、実習で手術が楽しかったから」と話す。 手術を担当した患者が、しっかり食べて歩いて退院する姿を見るのはうれしい。 帰宅途中や寝る前に手術の動画を見るなどして、勤務時間外で勉強に費やす時間も少なくない。 ただ、この病院は 10 年ほど前から土日は外科医 2 人が当直し、何かあればその 2 人に任せる仕組みに変えた。 土日の出勤は月に 1 回の当直のみ。 1 泊 2 日の旅行などで、リフレッシュしている。 ただ、大学の同級生からは「私は外科医にならないな」と言われたこともある。 10 時間近くかかる手術や緊急の手術が多く、土日の休みがない印象も根強い。 皮膚科や麻酔科のほか、開業しやすい整形外科は依然として人気がある。 美容医療に進む同級生もいる。 消化器外科医でもある長堀薫院長は「対象疾患が多いからこそ消化器外科は魅力があるが、業務量が多いのは事実」と話す。 将来はがんの手術がしたいという外科 1 年目の吉川雄祐さん (27) も「緊急手術が多く、予定していた仕事を後回しにすることはよくある」という。 ただ、それ以上にやりがいを感じる。
学会が異例の声明「待遇改善の後押しを」 消化器外科は胃や肝臓、腸などのがんの手術のほか、虫垂炎や腸に穴があいた患者の緊急手術にも対応する。 一般的な「外科」は消化器外科を指すことが多い。 なり手不足の主な原因は、「忙しさ」だ。 医師の働き方改革で、2024 年 4 月から勤務医の時間外労働が罰則つきで規制された。 だが、学会が今年 1 月に公表した学会員へのアンケートでは、「労働時間が減った」と回答した医師は 2 割弱にとどまった。 1 割は、いまだに月 100 時間以上の時間外労働をしており、過労死ライン(月 80 時間)を超えている。 74% が「業務負担の軽減なし」と答え、待遇の改善もほとんどみられなかった。 こうした状況で、医師の全体数は増えているのに、特に若い消化器外科医が減っている。 外科のなかでも形成外科や美容外科の医師は増えており、一人負けに近い。 学会員の高齢化が進み、65 歳以下の会員数は 23 年から 33 年までに 26%、43 年までに 50% 減ると学会は試算している。 危機感が高まったきっかけは、23 年に実施したアンケートだ。 回答した学会員 2,932 人のうち、消化器外科医になることを自分の子どもに勧めたいと思う人はわずか 14% だった。 昨年 7 月の会見で、北里大の比企直樹主任教授は「頭を殴られるような思いで結果を見た」と語った。 「忙しさや責任の重さが正当に評価されていない」という思いが「消化器外科離れ」につながっていると指摘した。 学会は昨年、診療体制維持のために必要な待遇改善に理解と後押しを求める声明を公表した。 ただ、処遇の問題だけではない。 女性医師が増えている状況をふまえ、誰でも働きやすい職場への変化は欠かせない。 また、若手のやりがいを引き出す病院の工夫も必要だ。 消化器外科医が不足すれば、がんの手術の待機時間が大幅に長くなる恐れもある。 広島大は 4 月から若手外科医に月額 10 万円の手当を創設するが、こうした取り組みはまだ全国的にも珍しい。 厚生労働省も診療科間の医師の偏在を問題視しており、今春以降に改善に向けた議論を始める予定だ。 (後藤一也、藤谷和広、asahi = 2-28-25) 「子宮移植」臨床研究、審査委が計画了承 慶大病院が実施するか検討 子宮がない女性の出産を可能にするための「子宮移植」について、慶応大病院は 27 日、同大の研究チームが申請していた臨床研究の計画が、学内の審査委員会に了承されたと発表した。 今後、病院として実施するかを検討する。 計画は 2022 年 11 月に申請された。 チームによると、対象は、生まれつき子宮がないロキタンスキー症候群など「子宮性不妊症」の 20 - 30 代の患者 3 人。 子宮は、実の母親など患者と親族関係にあり、健康な女性から提供してもらう。 子宮移植は、移植を受ける患者も子宮の提供者も、長時間の手術が必要で負担が大きい。 子宮がない患者にとっては、自ら妊娠・出産するための唯一の方法だが、生命維持のための臓器移植ではないため、慎重な姿勢が取られていた。 日本医学会の検討委員会が 21 年に公表した報告書では、臨床研究として、子宮移植の実施を容認した。 ただ、研究が適切に行われるための条件として、臨床研究の実施機関での審査に加えて、日本移植学会と日本産科婦人科学会の合同検討委員会での二重の審査も求めている。 今回承認された計画も、実施に向けては、2 学会の合同委員会での審査が求められることになる。 (野口憲太、asahi = 2-27-25) 細胞から出る「EV」を AI で高効率に検出 がんの早期発見に期待 AI (人工知能)を使って、全身の細胞から分泌される微粒子「細胞外小胞 (EV)」を高効率に検出できる技術を開発したと、東京大などの研究グループが発表した。 がんの早期発見につながると期待される。 EV は脂質の膜で分子を包み、細胞から分泌されたもので、直径は数十 - 数百ナノメートル(ナノは 10 億分の 1)。 血流で離れた臓器に情報を伝える役割があり、効率よく検出できれば、がん検査などに応用できる可能性がある。 高速で解析する従来の装置は感度が低く、微粒子の信号を見逃してしまうことが課題だった。 そこで、研究グループは装置を改良するとともに、AI で粒子由来ではない信号(ノイズ)を取り除くことで感度を上げる手法を開発した。 AI に問題と正解をセットにして学ばせる「教師あり学習」の場合、今回のノイズは人の目でも判別が難しいため、正解のデータが作れない。 そこで、先にノイズだけを与え、その特徴を AI 自身が学習していく「教師なし学習」を使った。 その結果、最小 30 ナノメートルの微粒子を 1 秒間に約 10 万個検出できた。 感度と速度は世界最高水準という。 さらに、この技術で検出した EV を濃縮して解析することで、大腸がん患者と健常者で、がん特有の物質の含有率の違いを見分けることに成功した。 東大先端科学技術研究センターの岩本侑一郎・特任研究員(情報計測)は「実世界を AI 自体が学ぶことで、人間でも見分けられないものを見分け、課題を解決できることが示された点でも、研究の意義がある」と言う。 岩本さんは「今回の研究は、がんで亡くなった母への弔いでもあった。 こうした技術で EV を使った検査などが進むことで、病気の超早期発見ができ、みんなが幸せな人生を送れる社会を実現したい。」とも話している。 英科学誌ネイチャーコミュニケーションズ に論文が掲載される。 (佐々木凌、asahi = 2-21-25) PFAS 血液検査、水飲んだ住民の濃度突出 岡山・吉備中央町説明会
記事コピー (9-17-23 〜 2-16-25) 希少がんセンター、患者とともに 10 年 研究や情報提供、着実に成果 患者数が少ないため、診断や治療の情報が乏しく、治療法も少ない希少がん。 治療の研究開発や情報提供などのため、国立がん研究センター(東京都中央区)に希少がんセンターが設立されてから 10 年がたちました。 患者と医療者がともに取り組んできた成果が、少しずつ出始めています。 患者からの寄付、研究原資に 昨年 11 月 30 日、東京・築地の国立がん研究センター研究棟で、患者らの寄付による「希少がんグラント」の助成を受ける研究者や医療者が、成果や経過を発表する会があった。 通常の発表会と違ったのは、希少がんの患者会メンバーも研究者らと壇上に上がって活動を紹介し、互いにやりとりしたことだ。 ポスター発表では患者たちが研究者の話を聞き、質問もした。 優秀な研究の表彰式では、患者会から「未来への架け橋賞」が贈られ、ロビーには患者会のブースも並んで交流が生まれていた。 主催は 2014 年 6 月に国立がん研究センター内に開設された「希少がんセンター」。 患者たちとの協力、協働を大切にしながら 10 年、活動してきた。 21 年に始まった「希少がんグラント」もその一つで、原資は患者たちからの寄付だ。 この日、節目を意識して、会場には 10 年の「歩み」を紹介する大型展示も掲示された。 その制作も患者会が手がけた。 希少がんセンターの加藤陽子さんは「患者たちと協力しあうことを大切にしています。 10 年間、センターの根底にあるその姿勢を、グラントの発表会でも貫きました。」と話した。 患者データ蓄積 治療薬開発に活用 希少がんは、人口 10 万人当たり 6 人未満で、診療上の課題が大きいものと定義され、肉腫や脳腫瘍、中皮腫など 200 種類以上あるとされる。 それぞれのがんは全体の 1% に満たないが、すべての希少がんを合わせるとがん全体の約 2 割にのぼる。 希少がんをめぐる課題の一つに、確立された治療法が少ないことがある。 患者数が少ないため治療に関するまとまったデータが乏しく、研究開発や臨床試験の実施が難しいためだ。 国立がん研究センター希少がんセンターの川井章センター長は「患者が少なく利益が出ないがんの治療薬の開発はやはり後回しになってしまう」と話す。 そこでセンターなどが 2017 年から始めたのが、希少がん患者の大規模なデータベースをつくる「マスターキー・プロジェクト」だ。 国立がん研究センター中央病院など 11 の医療機関とともに複数の製薬企業が参加。 希少がん患者の遺伝子の情報や診療情報を登録する。 集まったデータを臨床試験に活用して効果のある治療薬の開発や病態の解明などにつなげる狙いがある。 昨年、登録者数は 4 千人を超えた。 23 年には、このプロジェクトに登録している患者が参加した臨床試験で、希少がんに多い遺伝子変異を持つがんに対する分子標的薬の有効性が確認され、薬事承認につながった。 川井センター長は「患者が少ないからこそ、患者、医療者の協力がより重要になる。 患者の登録数はさらに増やしていく必要はあるが、少しずつ成果がでてきている。」と話す。 広がるホットライン 「患者の希望に」 希少がんは、まれであるがゆえに情報が少なく、相談窓口へのアクセスの乏しさも長年の課題となっている。 国立がん研究センターでは、希少がんセンター開設前の2014 年 1 月に電話相談窓口「希少がんホットライン」を設置。 専門の看護師や医療ソーシャルワーカーらが担当する。 どの病院に行けばいいのかや、セカンドオピニオン、治療法、臨床試験の情報などについて情報提供し、相談に乗っている。 相談者数はこれまで 5 万人を超えている。 設置から 7 年間、電話相談を担当した加藤さんは「医療者ですら、病名やどんながんか知らないケースもあり、患者さんたちの不安も大きい。 相談できる窓口があるというのは患者さんにとっては希望になる。」と話す。 ホットラインには、患者や家族向けとは別に、医療者からの相談を受け付ける番号も設け、相談に応じている。 こうした電話相談のホットラインは、大阪国際がんセンターや九州大病院、名古屋大病院、東北大病院、岡山大病院、北海道大病院でも設置され、少しずつ広がりつつある。 さらに 17 年からは希少がんセンターの待合室を使い、「希少がん Meet the Expert」と題したセミナーを開催。 毎回、様々な希少がんをテーマに取り上げ、患者や家族向けに専門の医師による解説や当事者の声を届けた。 新型コロナウイルスの流行後はオンラインで開いている。 加藤さんは「希少がんの情報は乏しく、不安を感じている患者さんは多い。 各地の医療機関や患者会と連携して、診断や治療についての正確な情報を少しでも多くの患者さんに伝えられるようにしていきたい」と話している。 (土肥修一、上野創、asahi = 1-25-25) 長崎大の施設、「BSL4」に指定 国内 2 カ所目、エボラなど研究へ 厚生労働省は 24 日、エボラウイルスなどの危険度が最も高い病原体を扱う「BSL4 (バイオセーフティーレベル)」施設として、長崎大の研究施設を指定した。 今後、所定の手続きを経れば、危険度の高い病原体を扱う実験ができるようになる。 BSL4 施設は、世界保健機関 (WHO) が危険度によって病原体を 4 段階に分類したうち、最も危険度が高いものを扱うことができる。 病原体の流出を防ぐための構造や厳格な保管体制が指定の要件となっている。 国内の BSL4 施設は、1981 年に完成し、2015 年に指定を受けた国立感染症研究所の村山庁舎(東京都武蔵村山市)に続き、長崎大が 2 カ所目。 ただ、感染研は地元住民との取り決めで、感染者の診断や治療などを目的とした研究に特化している。 このため、長崎大の BSL4 施設は基礎研究ができる国内唯一の施設となる。 長崎大では、病原体の特性やメカニズムの解明、医薬品開発などにつながる幅広い基礎研究の実施を目指している。 今回指定を受けたのは、2021 年に完成した長崎大の高度感染症研究センター実験棟(長崎市)。 エボラ出血熱やマールブルグ病、ラッサ熱など、感染症法上の 1 類感染症の病原体を輸入したり譲り受けたりする際には、その都度、厚労相の指定を受ける必要がある。 感染研は BSL4 施設に指定されてから実際に病原体を輸入するまで 4 年かかっており、厚労省の担当者は「長崎大については未定だが、同様に一定の時間がかかることも想定できる」としている。 (足立菜摘、asahi = 1-24-25) 鳥インフル、今季処分 120 万羽へ 「深刻な事態」盛岡で発生相次ぐ
記事コピー (11-5-20〜1-22-25) 変異ウイルスにも対応 新型コロナ薬の候補開発 東京科学大など
記事コピー (12-31-19〜1-22-25) カシューナッツをアレルギー表示義務付けへ ピスタチオは推奨表示 消費者庁は 21 日、食物アレルギーの原因として食品などへの表示を義務づけている特定原材料にカシューナッツを追加する方針を示した。 また、ピスタチオを、表示を推奨する品目に加える予定。 この日に開かれた食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議で提案した。 2025 年度中に追加することを目指す。 現在、特定原材料(義務表示)に 8 品目、推奨表示 20 品目が指定されている。 カシューナッツは 13 年に推奨表示に追加されたが、21 年度、24 年度の症例数は鶏卵、牛乳などに次いで 7 番目に多かった。 ピスタチオは 21 年度に 20 番目に入り、24 年度は 14 番目に上がっていることなどから、推奨表示に加える予定だ。 近年、健康ブームなどの影響でナッツ類は消費量が増えている。 カシューナッツの輸入量は 11 年の調査では 6,190 トンだったが、23 年は 1 万 3,607 トンとなり倍増。 ピスタチオも 2,151 トンから 3,131 トンに増えている。 加工品として輸入された量は含まないため、国内消費量はさらに多いとみられる。 特定原材料や、それに準ずる推奨表示の品目は、全国のアレルギー専門医を対象に実態調査を実施し、症例数や重篤度などを踏まえて決めている。 (井上道夫、asahi = 1-21-25)
インフル感染者数、4 週連続で警報レベル超え 入院者数は減少 厚生労働省は 17 日、全国に約 5 千ある定点医療機関から報告された 6 - 12 日のインフルエンザの新規感染者数が 17 万 2,417 人で、定点あたり 35.02 人だったと発表した。 年末年始の休診と重なった前週の 33.82 人から増加し、4 週連続で警報レベルとなる 30.00 人を超えた。 定点あたりの感染者数が最も多かった都道府県は徳島で 57.38 人。 次いで宮崎 57.24 人、高知 56.36 人。 40 府県で 30.00 人を超えた。 入院患者数は 4,684 人で、前週の 5,304 人から 620 人減少。 集中治療室 (ICU) の入院者数は 271 人で、前週から 4 人増えた。 厚労省によると、6 - 12 日の新型コロナウイルスの新規感染者数は計 3 万 4,857 人で、1 定点あたり 7.08 人。 2 週ぶりに増加した。 (足立菜摘、asahi = 1-17-25) ◇ ◇ ◇ 抗インフル薬「在庫あるなら流通させて」 出荷制限に専門家が懸念 全国でインフルエンザの感染が拡大しています。 厚生労働省が 9 日に発表した直近 1 週間の全国の新規感染者数は、過去最多となりました。 感染から身を守るために何が必要なのか、感染症に詳しい小児科医の菅谷憲夫・けいゆう病院名誉参事に聞きました。 昨年 12 月 29 日までの 1 週間の定点医療機関あたりの新規感染者数が 64.39 人となり、現在の方法で統計を取り始めた 1999 年以降で最多となりました。
感染からどのように身を守るべきか ワクチンの有効性は変わっていないのですね。
生産が追いつかないとして一部の抗ウイルス薬の出荷が制限されています。 一方で厚労相は 10 日、抗ウイルス薬には 1,500 万人分の在庫があると発表しました。 抗インフル薬「過剰発注控えて」 厚労相「適正使用で対応できる」
どのように感染から身を守るべきですか。
◇ ◇ ◇ インフルエンザの感染者、過去最多に 現行の統計開始以降 先月 12 月 29 日までの一週間の全国のインフルエンザの感染者数が、現行の統計開始以降、最多となりました。 厚生労働省によりますと、先月 23 日から 29 日までの一週間に、全国の定点医療機関から報告されたインフルエンザの感染者数は 1 医療機関あたり 64.39 人で、前の週のおよそ 1.5 倍となり、1999 年に現在の方法で統計を取り始めてから最多となりました。 (日テレ = 1-9-25) ◇ ◇ ◇ インフルエンザの患者倍増、437 件の集団感染 都内で警報基準超え 東京都は 26 日、インフルエンザの流行がコロナ禍前の 2019 年 1 月以来、6 シーズンぶりに警報基準に達したと発表した。 16 - 22 日に定点医療機関から報告された患者の数は計 1 万 6,727 人、1 機関あたり平均 40.02 人と、前週(17.36 人)から倍以上に増えた。 9 月 2 日以降、都内で報告された患者は 14 歳以下が半数以上を占める。 直近 1 週間だけで 437 件の集団感染の報告があり、このうち小学校が 223 件、中学校が 85 件で、学級閉鎖も相次いだ。 保健所別に 1 機関あたりの平均患者数をみると、警報基準を超えたのは全 31 カ所中 20 カ所。 多い順に八王子市(74.11 人)、多摩小平(63.65 人)、荒川区(62.71 人)などだった。 入院患者数も 234 人(前週 97 人)に上っている。 インフルエンザは例年 12 月から 3 月にかけて流行する。 都健康安全研究センターによると、感染対策が進むなどしたコロナ禍ではインフルエンザの患者数は少なかった。 担当者は「12 月に警報基準を超えるのは例年より早い」と話す。 人の移動が活発化する年末年始にはさらに感染が広がる可能性があるとして、都は、こまめな手洗いやマスク着用など基本的な感染対策とともに、感染が疑われる場合の早めの受診を呼びかけている。 (太田原奈都乃、asahi = 12-26-24) ALS 新薬「トフェルセン」、厚労省承認 原因たんぱく質減らす効果 厚生労働省は27日、米バイオジェンが開発した筋萎縮性側索硬化症 (AJS) の新たな治療薬「トフェルセン」を承認した。 SOD1 という遺伝子の変異がある患者が対象となる薬で、ALS 患者の約 2% にこの変異がある。 ALS は運動神経が変性する難病で、全身の筋肉が次第に動かなくなっていく。 国内の患者数は約 1 万人で、発症から人工呼吸器を必要とするまでの期間は中央値で 3 - 4 年とされる。 ALS の原因は複数あるが、SOD1 やそれ以外の遺伝子の変異が関連する家族性 ALS は 5 - 10% を占める。 変異を起こした SOD1 の遺伝子がつくるたんぱく質は、運動神経の障害を引き起こすと報告されている。 トフェルセンは、このたんぱく質を作り出さないように作用し、症状の進行を抑えることを目指して開発された。 こうした作用を持つ治療薬の承認は、ALS では国内で初めてとなる。 108 人の患者が参加した海外の臨床試験(治験)では、投薬から 28 週間後時点で、症状の進行の抑制効果を示す目標は達成できていない。 ただ、原因となるたんぱく質を減らす効果などはみられ、承認について厚労省は「代替する治療法がないことなどもふまえて検討した」としている。 (足立菜摘、asahi = 12-27-24) 中国など 6 カ国からの入国者に結核の検査義務へ 中長期滞在者が対象 厚生労働省は 26 日、結核が流行するアジア 6 カ国の人に対し、日本に中長期滞在する際、入国前の結核の検査を義務づけると発表した。 フィリピン、ネパール、ベトナムの 3 カ国は 2025 年中に開始し、中国、インドネシア、ミャンマーの 3 カ国の開始時期は調整中だという。 対象となるのは、この 6 カ国の国籍を持つ人のうち、日本に 3 カ月以上の滞在を希望する人。 制度が始まると、ビザの申請時、結核を発病していない証明書の提出が必要となる。 証明書の発行には、日本が指定する対象国内の医療機関で、医師の診察と胸部の X 線検査を受ける必要がある。 ただ、対象国以外の国や地域に現在住んでいる場合は、制度の対象外となる。 フィリピンとネパールでは、25 年 3 月 24 日に検査の受け付けを始め、6 月 23 日から証明書の提出を義務づける予定。 ベトナムでは、検査の受け付けを 5 月 26 日に始め、証明書提出の義務づけは 9 月 1 日からを予定している。 インドネシア、ミャンマー、中国については調整を続けており、開始時期は決まっていない。 23 年の 1 年間に、日本で新たに結核患者として登録されたのは 1 万 0,096 人。 このうち、16% が外国生まれの人で、8 割以上を今回対象の 6 カ国の人が占める。 特に若い世代で、外国生まれの結核患者が増えている。 すでに米国や英国などで同様の入国前の結核検査を実施している。 日本でも 18 年に厚労省の専門家部会で導入の方針が示されていたが、新型コロナウイルスの流行で外国からの入国者が激減したことなどから、見送られていた。 結核は結核菌が原因で、ほとんどがせきやくしゃみを通じ、気道経由で感染する。 厚労省によると、感染した 10 - 15% の人が 1、2 年で発病するが、菌が体内にとどまり、数年から数十年経って発病することもある。 日本は 21 年に 10 万人あたりの罹患率が 9.2 人となり、初めて低蔓延国の基準の 10.0 人を下回った。 (足立菜摘、asahi = 12-26-24) 海外製の鉄サプリで過剰症に 日本人の基準大きく超える量を含有 鉄を摂取することを目的にした海外事業者のサプリメントには日本人の推奨量を大きく超える量が含まれている場合があり、過剰摂取につながる可能性があると、国民生活センターが 25 日、注意を呼びかけた。 実際に鉄過剰症などの健康被害が発生したとの事例が 2 件、同センターに寄せられている。 同センターの「医師からの事故情報受付窓口」へ今年 2 月に伝えられた情報によると、保護者がインターネット通販で購入した海外事業者の鉄サプリを約 3 年間飲んだ 10 代の女性が、口内炎と歯茎の腫れを訴え、鉄過剰症と診断された。 1 錠あたり 54 ミリグラムの鉄を含むサプリを 1 日に 1 - 2 錠飲んでいて、推奨量を大きく超える鉄をとっていたとみられる。 また 20 代の女性が鉄サプリをインターネット通販で買い、約 11 カ月飲んだところ倦 感を訴え、鉄過剰状態と肝機能障害を疑われたという事例も、同時期に医師から窓口へ寄せられた。 同センターは大手インターネットショッピングモールなどを通じて、海外事業者の鉄サプリ 5 点を購入。 1 日あたりの摂取目安量における鉄の含有量とパッケージの表示量を調べた。 その結果、5 点とも日本人の推奨量を大きく超えていた。 最も多いものでは含有量が 76.6 ミリグラム、表示量が 65 ミリグラム。 最も少ないものでも、含有量が 19 ミリグラム、表示量が 18 ミリグラムだった。 日本人の食事摂取基準に基づく 1 日あたりの鉄の推奨量は、18 - 64 歳の月経がある女性は 10.0 - 10.5 ミリグラム、月経がない女性は 6.0 ミリグラム。 18 - 64 歳の男性は 7.0 - 7.5 ミリグラムとされている。 調査した 5 点はいずれも米国企業製で、パッケージには米国の 1 日摂取量に占める割合が示されていた。 だが米国の 1 日摂取量は 18 ミリグラムの設定で、日本人の値とは大きく異なる。 同センターは割合の数値を目安に日本人が摂取すると、過剰摂取につながる恐れがあるとしている。 「気になる症状があり、鉄の不足が心配な場合は、サプリを使う前にまず医療機関を受診し、医師に相談を」と同センター。 女子栄養大学栄養学部の上西一弘教授は、鉄は食事から摂取することが基本、とした上で「鉄の吸収率は、栄養状態や月経、妊娠の有無などによって大きく変動するため、一般の方が今の自分に必要な鉄の量を正確に把握することは難しく、多量に鉄が含まれるサプリメントを長期間にわたって摂取することは、過剰摂取につながる可能性がある」とコメントしている。 (大村美香、asahi = 12-26-24) |