路線価 6 年ぶり下落 都心で空室増、全国 1 位もダウン

国税庁は 1 日、相続税や贈与税の算定基準となる 2021 年分の路線価(1 月 1 日時点)を発表した。 全国平均は前年比 0.5% 減と 6 年ぶりに下落した。 新型コロナウイルスの感染拡大による都市部のオフィスやテナントの需要減、訪日客の減少が要因とみられる。 都道府県別では 39 都府県で下落し、前年の 26 県から増えた。 上昇は 7 道県にとどまり、前年の 21 都道府県から大幅に減った。

都道府県庁所在地の最高路線価をみると、上昇したのは前年より 30 減の 8 都市。 一方、下落は前年の 1 都市から 22 都市に増えた。 下落率が最大だったのは奈良市の 12.5% で、訪日客の減少が影響したようだ。 路線価の全国 1 位は、36 年連続で東京・銀座の文具店「鳩居堂(きゅうきょどう)」前。 1 平方メートルあたり 4,272 万円で、9 年ぶりに下落した。 (中野浩至)

1 日に公表された全国の路線価では、都心部のビジネス街でおしなべて下落傾向がみられた。 新型コロナの感染拡大をきっかけに、生活様式や働き方が大きく変わったことが影響しているとみられる。

東京 : 日本有数の商業地である銀座とビジネス街の丸の内を結ぶ東京・有楽町。 近くの晴海通りの路線価は前年の 2.1% 上昇から、7.5% の下落に転じた。 「飲食店やアパレルといった路面店の閉店が目につく」と地元の不動産業者。 こうした街の風景に影響を与えたのが、新型コロナ禍だという。 大手コンサルティング会社の「デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー」の昨年 9 月時点の推計では、都内のオフィスで働く人はコロナ前に比べ約 15% 減った。 この状況が続けば、空室率は 2023 年にはリーマン・ショック期を超える約 10% に達し、翌 24 年には家賃収入がコロナ前の約 8 割に落ち込むとみられている。

一方で、新しいニーズも生まれている。 この地元不動産業者によると、在宅勤務に切り替えた会社から「週 2 回、社員が顔を合わせる場所を探したい」といった問い合わせがあるという。 「曜日単位で貸し出すシェアオフィスを提供するなど、働き方に合わせた貸し方を考えたい。」

大阪 : 大阪の繁華街・ミナミはコロナ禍前、訪日外国人客(インバウンド)でにぎわったが、心斎橋筋の戎橋ビル前の前年からの下落率は 26.4% となった。 一方、「関西最後の一等地」と呼ばれ、再開発が進む JR 大阪駅北側の「うめきた」地区周辺の最高路線価は、ランドマークとなっている複合ビル「グランフロント大阪」南館付近で 1 平方メートルあたり 1,200 万円。 8.2% 減となった。 ターミナル駅のまわりに商業施設やオフィスなどがあり、インバウンドへの依存度が低いため、ミナミほど、コロナの影響が大きくなかったとみられる。 オフィスなどの不動産仲介業「三鬼商事(東京都中央区)」は「貸し手、借り手の双方が様子を見ており、耐えている状況だ」とみている。

名古屋 : 下落傾向は名古屋でも。 JR 名古屋駅近くのオフィスビル・名古屋ルーセントタワーの東側道路は昨年の上昇率は 14.4% で、税務署別の最高路線価で東海 4 県トップだったが、今年は 2.2% の下落に。 繊維商社「タキヒヨー」は在宅勤務を進め、フロアを 3 分の 2 に縮小。 地元の不動産関係者は「首都圏ではオフィスの縮小移転が顕著だが、名古屋でも大口の解約が出たと衝撃だった」と話す。 テレワークの浸透により、名古屋市中心部でもオフィス需要は弱まってきている。 賃貸仲介大手の三幸エステートによると、5 月の名古屋市のオフィス空室率は 3.95% で、14 カ月連続で上昇しているという。

「事務所を使うのは僕だけ。 打ち合わせもオンラインが主流で、栄(さかえ)にオフィスを置く必要がない。」 ウェブサイト制作会社「アットノエル」の水上裕之社長 (41) は 1 月、名古屋市の栄地区から同市千種区にオフィスを移した。 通勤や顧客の打ち合わせで利便性が高く、「栄」のブランドも魅力だったが、昨年 4 月の緊急事態宣言で「電車出勤に抵抗感を覚えた。」 5 人いる社員は在宅勤務に。 今のオフィスは、栄の半分の 53 平方メートル。 家賃と光熱費は約 3 分の 1 になった。 「これからも状況に応じて最適な状態、働き方を模索していきたい。」

一方、東京から移ってくる企業も。 東京と名古屋を拠点にする IT ベンチャー「コラボスタイル」。 昨年 7 月に本社を JR 名古屋駅近くの JP タワー名古屋へ移転した。 東京在住の社員は全員が在宅勤務を続けている。 東京から唯一転居した松本洋介社長 (48) は愛知出身。 コロナ前から「脱・東京一極集中」を考えていたという。 「働く場所は社員が決める。 住む場所も自由。 場所にとらわれない働き方をコロナが後押ししている。」

福岡 : 福岡市中心部では大規模再開発が進められているためか、路線価は下落とはならないものの、上昇率が大幅に鈍った地点が目立った。 九州で最も高かった天神周辺は、前年の 11.8% 上昇が 0% と横ばいに。 JR 博多駅周辺も 22% から 9.9% となった。 両地区では福岡市が「天神ビッグバン」、「博多コネクティッド」と銘打ち、官民連携で再開発に取り組んでいる。 天神地区だけでも、20 年 5 月時点でビル 35 棟が完成。 訪日客の増加を見込んだホテル建設も進み、高い上昇率が続いたが、歯止めをかけたのはやはりコロナ禍だった。

不動産鑑定士の井上真輔さん (59) は「福岡は他県と比べると比較的好調」と見つつ、「新規ビルの開業で、天神や博多はオフィスの大量供給期を迎える。 オフィスを必要としないテレワークなどで働き方が変わるなか、どこまで需要を吸収できるか注目している。」と話す。 不動産仲介大手の三鬼商事の調査では、天神地区のオフィス空室率はコロナ禍前の 20 年 1 月の 1.88% から、21 年 5 月には 3.60% まで上昇。 博多駅周辺でも 5 - 6% に達するなど上昇傾向が続いている。 (中野浩至、徳永猛城、村上潤治、加治隼人、asahi = 7-1-21)

路線価> 主要道路に面した 1 平方メートルあたりの土地の評価額。 国土交通省が発表する 1 月 1 日時点の公示地価の 8 割を目安に、売買の事例や不動産鑑定士の意見を参考にして国税庁が算出する。 今年は約 32 万 5 千地点が対象。


G7 「法人最低税率 15% 以上」 財務相会合で合意

日米欧の主要 7 カ国 (G7) はロンドンで 5 日閉幕した財務相会合で、法人税の最低税率を 15% 以上に設定することや、巨大 IT 企業などに対する「デジタル課税」を導入することで合意し、共同声明に盛り込んだ。 議長国である英国のスナク財務相は「課税制度の改革について歴史的な合意に達した」と述べた。 7 月に予定されている主要 20 カ国・地域 (G20) 財務相・中央銀行総裁会議に議論を引き継ぎ、大筋合意を取り付けたい考えだ。 実現すれば国際課税を巡る大きな転換点になる。

2019 年 7 月以来、約 2 年ぶりに対面形式で開催した。 日本からは麻生太郎財務相が出席。 イエレン米財務長官ら各国代表との会談も行った。 法人税の最低税率を巡っては、米財務省が 5 月、少なくとも 15% に設定するよう提案していた。 米国は当初 21% を念頭に置いていたが、税率 12.5% のアイルランドなど低税率国の反発が強く、歩み寄った。 G7 会合でも米国案を軸に協議。 長年続いた法人税の引き下げ競争に終止符を打って財源を確保し、経済回復や財政再建を図ることで一致した。

「デジタル課税」は、企業が物理的な拠点を置いていない国でも、利用者がいれば課税できる仕組み。 声明では、「大規模で高利益の多国籍企業」に対し、利益率 10% を上回る部分について、最低 20% を課税できるとした。 麻生財務相は記者会見で「ウェブでなく対面で本音の交渉を行い、力強いメッセージを発信できた」と述べ、米国企業を中心に 100 社程度が対象になるとの見解を示した。

国際課税ルールは 11 - 13 日に英コーンウォールで開く首脳会議(サミット)でも議論し、G20 会合での意見集約を経て、最終的に経済協力開発機構 (OECD) での決定を目指す。 イエレン氏は声明を発表し「G7 はきょう重要で前例のない合意に達した。 法人税の『底辺への競争』を終わらせ、世界の中間層と労働者に公平性をもたらす」と述べた。 ドイツのショルツ財務相も英メディアの取材に「企業はもはや低税率国に利益を移して税を逃れることはできない」と語った。

会合では、世界経済に大きな打撃を与えている新型コロナウイルスの感染拡大への対応も協議した。 ワクチン接種が進む先進国と接種が遅れる途上国で経済の回復ペースに差が広がりつつある状況を踏まえ、ワクチン配分を促進するなど、途上国支援を強化することでも合意した。 (横山三加子・ロンドン)、袴田貴行、mainichi = 6-5-21)


「鬼滅の刃」映画が興収 400 億円 前人未到の大台に

日本での映画興行収入新記録を更新中のアニメ映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が、大台の興収 400 億円を突破した。 配給元のアニプレックスが 24 日発表した。 昨年 10 月 16 日からロングラン公開中で、今月 23 日までの合計が 400 億 1,694 万円に到達。 昨年 12 月に「千と千尋の神隠し」(2001 年)の 316 億 8 千万円を抜き歴代 1 位となってから、80 億円以上積み増した。

米国や台湾など世界 45 の国・地域でも公開され、世界興収は約 517 億円になるという。 原作は吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)さんが週刊少年ジャンプ(集英社)に昨年まで連載していた同名漫画で、家族を鬼に殺された少年炭治郎が、仲間らと力を合わせ鬼と闘う物語。 劇場版の続きを描くテレビシリーズ第 2 期「遊郭編」が、年内に放送されることが決まっている。 (小原篤、asahi = 5-24-21)

前報 (1) (11-30-20) 前報 (2) (12-28-20)


4 月の携帯料金、新プラン導入で下落幅最大 消費者物価

総務省が 21 日発表した 4 月の消費者物価指数(2015 年 = 100)で、項目の一つである携帯電話料金が前年同月比 26.5% 減の 62.0 と大きく下がった。 下落幅は、比較できる 00 年以降で最大。 菅政権の意向で春先に携帯各社が安い料金プランを導入したことが影響した。

大手各社の新料金プランは 3 月後半に相次いで導入されたため、指数への反映は 4 月が初めて。 固定電話やはがきなどを含む通信費全体も 15.3% 下がった。 一方、原油価格が上昇傾向にあり、ガソリンは 13.5%、灯油も 11.8% 上昇した。 生鮮食品を除く総合指数は、エネルギー価格の上昇と通信費の下落が打ち消し合い、0.1% 減の101.5 で 9 カ月連続の下落だった。 生鮮食品とエネルギーを除いた総合指数は 0.2% 減で、4 カ月ぶりに下落に転じた。 (古賀大己、asahi = 5-21-21)


GDP 年率 5.1% 減、3 四半期ぶりマイナス 1 - 3 月

内閣府が 18 日発表した 2021 年 1 - 3 月期の国内総生産 (GDP) の 1 次速報は、物価変動の影響を除いた実質(季節調整値)で前期(20 年 10 - 12 月期)より 1.3% 減り、3 四半期ぶりのマイナス成長になった。 年率換算は 5.1% 減だった。 新型コロナウイルス対策として年初に出された 2 度目の緊急事態宣言により、再び経済活動が大きく制約されたことが響いた。 GDP の半分以上を占める個人消費が、飲食店への時短要請や外出自粛で、外食や宿泊などのサービス分野を中心に落ち込んだ。

物価変動を反映した名目 GDP は前期比 1.6% %減、年率換算で 6.3% 減だった。 1 次速報をもとに算出した 20 年度の実質 GDP は前年比 4.6% 減となった。 新型コロナの影響を 1 年間通して受けたため、下落幅は比較可能な 1995 年度以降で最大で、事実上、戦後最悪の落ち込みになった。 これまではリーマン・ショックが起きた 08 年度の 3.6% 減が最大だった。 (asahi = 5-18-21)


強すぎる「スシロー」 コロナ禍なのに 6 カ月で 24 店舗オープンという "大躍進"

コロナ禍で多くの外食チェーンが苦戦する一方、「スシロー」の快進撃が止まらない。 スシローを展開する Food & Life Companies は 5 月 6 日、2020 年 10 月 - 21 年 3 月期の連結決算(国際会計基準)を発表した。 売上高にあたる売上収益は 1,190 億 4,200 万円(前年同期比 10.1% 増)、営業利益は 131 億 1,400 万円(同 59.2% 増)、純利益は 77 億 6,000 万円(同 52.7% 増)だった。 上半期の業績としては、売上収益、各利益ともに過去最高を記録した。 好調の要因はどこにあるのか。上半期の施策を振り返る。

売り上げが伸びた主な要因は、スシローの新規出店を積極的に進めたことだ。 国内では上半期で合計 24 店舗を出店。 内訳は、「To Go 型(持ち帰り専門店)」が 3 店舗、都市型が 5 店舗、通常型が 16 店舗だった。 To Go 型の店舗は、コロナ禍で拡大するテークアウト需要に対応する役割がある。 駅ナカや駅前ビルといった、既存のスシローではカバーしきれない立地に出店するのが特徴。 上半期にオープンした 3 店舗はいずれも駅の改札から徒歩 1 分以内にある。 専用商品も販売しており、想定を大幅に超える売り上げを記録しているという。

都市型店舗は、計 25 店舗まで増えている。 3 月に開店した「新宿三丁目店(東京都新宿区)」は、都市型で最大級の 208 席という規模だ。 オープン初日には 1,000 人以上が来店し、初日としては過去最高の売り上げを達成した。 4 月には西日本最大級の繁華街に「梅田茶屋町店(大阪市)」をオープン。 今後も、首都圏や関西圏の都市部への出店を続けていく方針だ。

既存店も好調

売り上げ増の要因は新規出店だけではない。 既存店も好調だった。 国内の既存店売上高は上半期全体で前年同期比 1.7% 増だった。 コロナ禍の影響で営業時間などに制限があったため、イートインの売り上げは前年を下回った。 一方、テークアウトやデリバリーの売り上げが伸長した。 テークアウトの売り上げを伸ばすため、同社はスシローの店内に土産ロッカーを設置。 118 店舗(全店の 20%)に導入している。 このロッカーは、専用のアプリなどで事前に注文・決済すると、店員と接触することなく商品を受け取れるのが特徴。 好きな時間に受け取ることができる利便性を提供している。 9 月までに 150 店舗以上に設置する計画だ。

店員と接触することなく、お客を席まで案内できる「自動案内」システムの導入も進めている。 20 年 4 月に導入していたのはわずか 6 店舗だったが、21 年 3 月には 308 店舗にまで増加。 9 月には 400 店舗以上に導入する計画だ。 これらの非接触を実現する設備やシステムは、店舗の人手不足を解消する手段として導入が進んできたという側面もある。 それが、コロナ禍で顧客に支持される要因になった。 デリバリーに関しても、新しい取り組みを進めている。 ウーバーイーツや出前館といったデリバリー業者がカバーできないエリアを中心に、自社デリバリーサービスを 29 店舗に導入した。 こうした取り組みを進めた結果、イートインの売り上げが半分程度になる店舗もあったという。

「480 円皿」や「980 円皿」が好調

既存店の成長を支えた要因は他にもある。 まず、「Go To 超スシロー Project」などのキャンペーンが好調だった。 また、「480 円皿」や「980 円皿」の売り上げ比率が上昇。 20 年上半期は高額皿の売り上げ比率は 1.4% だったが、21 年上半期は 3.2% となった。 980 円皿は以前から販売しているが、480 円皿は上半期から本格的に導入し始めた。 具体的には、しゃり 4 貫に穴子を丸ごと 1 本乗せた「穴子一本勝負」や、「とろ鉄火の高菜巻」などを投入。 店内放送を積極的に活用して販促することで、雰囲気を盛り上げ、売り上げを伸ばした。 この方法は、飛沫を飛ばさないというメリットもある。

海外事業では、タイへの新規出店を果たした。 大型ショッピングモールにスシローの店舗としては最大の 350 席を備えた 1 号店を 3 月にオープン。 初日には 1,012 人が来店し、250 万円の売り上げを記録した。 コロナの影響で海外の出店ペースは鈍っているが、下半期で巻き返しを図る。 国内では、多くの店舗が時短営業を強いられている。 しかし、4 月における既存店売上高は前年同月比 179.6% だった。 コロナの影響を受けていない 2 年前の 4 月と比べても 99.9% という水準だ。 スシローはどこまで成長していくのか。 (ITmedia = 5-7-21)

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任天堂、過去最高益 「巣ごもり」需要でスイッチ好調

任天堂が 6 日発表した 2021 年 3 月期決算は、売上高が前年比 34.4% 増の 1 兆 7,589 億円、純利益が同 85.7% 増の 4,803 億円だった。 ゲーム機の「ニンテンドースイッチ」や、人気ソフト「あつまれ どうぶつの森」の販売が好調で、営業利益と純利益は過去最高だった。 昨年 3 月末に発売した「あつ森」は 21 年 3 月期に 2,085 万本が売れ、販売累計は 3,263 万本に達した。 ソフトの人気を受けてゲーム機本体のスイッチの販売台数も伸び、前年比 37.1% 増の 2,883 万台。 全体の売上高は 09 年 3 月期に次ぐ高水準となった。 古川俊太郎社長はこの日の会見で、「上期(20 年 4 - 9 月期)は例のない規模で推移した」と話した。

新型コロナウイルスの感染拡大による「巣ごもり」で、「ゲーム機で久々に遊ぶお客様が増えた(古川社長)」という。 ソフトのダウンロード販売やオンラインサービスの会員料といった「デジタル売上高」も前年比で 7 割近く増えて、3,441 億円だった。 ただ、こうした追い風は一過性の面もあるとして、22 年 3 月期の業績予想は売上高 1 兆 6 千億円、純利益 3,400 億円の減収減益を見込んでいる。 新たなソフトなどが予想通りに販売できるかどうかでも大きく左右されそうだ。

スイッチは販売開始から 5 年目を迎えた。 過去のゲーム機に比べると、時間が経っても堅調な売れ行きという。 22 年 3 月期の販売台数は前年比約 1 割減の 2,550 万台の見通し。新型機に関して古川社長は、「現時点で申し上げられることはない」とだけ述べた。 一方で、半導体不足がゲーム機の製造に影響するおそれも出てきた。 古川社長は「想定以上の需要があり、世界的な半導体部材の需給逼迫もあって、つくりたい数をすべてつくれる状況ではない」と説明。 今後の生産に遅れが生じる可能性も示唆した。

21 年 3月期はゲーム業界の好調さが目立つ。 昨秋からプレイステーション 5 を売り出したソニーグループは、ゲーム事業の売上高が 2 兆 6,563 億円と、前年に比べて 6,787 億円増えた。 10 日に決算を発表予定のカプコンは営業利益 305 億円、純利益 210 億円といずれも過去最高を予想している。 (橋本拓樹、asahi = 5-6-21)


スエズ座礁で渦中の「今治オーナー」は世界四大船主

地中海と紅海をつなぐ国際海上交通の要衝・スエズ運河(エジプト)で 3 月 23 日にコンテナ運搬船「エバーギブン」(全長 400 メートル、幅 59 メートル、パナマ船籍)が座礁して 1 カ月近く。 同船は離礁したものの現地の裁判所に差し押さえられ、運河内の湖に留め置かれたままとなっている。 多額の損害賠償金の支払い問題が背景にあるためだ。 解決にはかなりの時間がかかるとみられる中、問題に直面しているのは船主の「正栄汽船」。 「日本最大の海事都市」、「世界の四大船主の一つ」とも称される愛媛県今治市にある会社だ。

賠償請求 9 億ドルの報道も

座礁事故は 3 月 23 日、エジプト北東部のスエズ運河を通航中に発生。 正栄汽船によると、エバーギブンは台湾の海運会社が運航しており、乗組員は全員インド人。 マレーシアからオランダ・ロッテルダムに向かっており、到着は 3 月 31 日の予定だった。 座礁から 6 日後の 3 月 29 日、11 隻のタグボートで牽引して離礁に成功。 正栄汽船は「事故に際し、多大なるご協力を賜りましたことを感謝申し上げます」とコメントした。

しかしその後、運河を所有・管理するスエズ運河庁が事故の損失として約 9 億ドル(約 980 億円)の損害賠償額を提示し、現地の裁判所が 4 月 12 日に賠償金が支払われるまで船を運河内の湖に留置するとの決定をした - と現地メディアが報じた。 同社によると、運河庁から保険会社を通して損害賠償額を知らされ、減額に向けて交渉を続けているという。 担当者は「早く(賠償額を)決めて船を出したいが、交渉事なので何ともいえない」と話した。 賠償額の決定と支払いは同社が契約している保険会社などを交えて運河庁側と交渉すると見込まれる。 同社によると、取材した 4 月 15 日時点で留め置かれた船がいつ運河を抜けられるか、見通しは立っていない。

香港、ギリシャ、北欧と比肩

座礁事故では、同社の本社がある今治市の存在が図らずもクローズアップされた。 サイクリング人気の高い「瀬戸内しまなみ海道」の四国側 - という印象が強いかもしれない同市だが、実は「世界の四大船主」の一つに数えられるほどの海事産業集積地の顔を持つ。 人口規模は約 16 万人ながら海事関連企業は 500 社以上。 携わる従業員数は計約 1 万人を数え、家族を含むと約 3 万人が暮らす。

内訳は船で海外との間で人やモノを運ぶ「外航海運」の会社が約 70 社。こうした会社は「今治オーナー(船主)」の名で知られ、日本全体の外航船の 4 割超の約 1,050 隻を所有している。 日本国内の貨物輸送に使われる「内航船」も今治市に約 190 社が集中し、国内の約 5% に相当する約 240 隻を所有している。 外航と内航を合わせると全国の約 3 割が今治オーナーだ。

造船業も 14 社あり、市内に本社や拠点のある造船会社で国内建造船の約 3 割を占める。 エバーギブンを所有する正栄汽船は、今治市にある国内最大の造船会社、今治造船のグループ会社だ。 さらに、同市には舶用メーカーと関連企業が約 160 社ある。 海運、造船、舶用といずれも国内トップクラスで、これだけ多くの海事企業が集積していることから、同市は香港、ギリシャ、北欧と比肩する「世界 4 大海事集積地」の一つに数えられる。

荘園から塩を運ぶ

今治の歴史をさかのぼると、古くから四国や島嶼部には皇室や公家、武家、寺社の荘園が多数あり、ここで生産される塩などを畿内へ運ぶ海上交通の拠点だった。 入り江の深い波止浜湾(はしはまわん)があることから船が潮流が変わるのを待つ「潮待ち」の港としても活用し、海運業が栄えたという。 大正 11 年には四国で初めての国の重要港湾として今治港が開港した。

第 2 次世界大戦や戦後のオイルショック、バブル崩壊などの危機をくぐり抜け、現在まで続いてきた海事都市・今治。 だが、特に造船は中国の著しい台頭などで厳しい状況にさらされている。 各社は経営の合理化を図っているが、昨年からは新型コロナウイルスの蔓延で物流が滞り、セールスをかけられない状況が重なった。 技能者不足も深刻な問題となっている。

打開策の一つとして平成 17 年、「今治地域造船技術センター」が発足。 人材育成のため約 50 社が会社の垣根を越えて技能者を無償で講師として派遣し、研修を行って 1 千人以上を現場へ送り出している。 海事産業全体の連携を深める動きは全国へと拡大しており、昨年 12 月には、今治市長を代表世話人として「海事産業の未来を共創する全国市区町村長の会」が発足。 32 団体が参加し、国へ支援の働きかけなどを連携して行っていくという。

国際海事展も開催

5 月 20 - 22 日には、同市内で 7 回目となる国際海事展「バリシップ今治」が開催される予定。 最新の製品発表会、技術セミナーなどがメインのビジネストレードショー(見本市)だが、市では市民や子供も参加して、海事産業に関心を持てるようにしたいと、会場の見学会などを予定している。 昨年秋のプレイベントでは、海上自衛隊多用途支援艦「げんかい」、国立弓削商船高専練習船「弓削丸」が今治港に寄港。 子供たちが艦内を見学した。

同市商工振興課の渡邊赴仁(たけひと)・海事都市推進室長は「人材不足は(業界の)共通の悩み。 市としても人材育成を視野に、特に子供向けに海事産業を知ってもらう取り組みに力を入れている。」と話す。 コロナ禍の予防対策を講じなければならず、バリシップ今治の出展企業は前回の約 350 社から約 250 0社に減少。 参加者も予約制をとり、前回を大幅に下回る 3 千人程度を見込んでいる。 (sankei = 4-18-21)

前 報 (3-29-21)


日本製鉄、2 年連続の大リストラ発表 カギは「脱日本」

日本の基幹産業の今

記事コピー (4-7-21)


日銀短観、大企業・製造業は改善 9 月調査から回復続く

日本銀行が 1 日発表した 3 月の「短観」は、代表的な指標の大企業・製造業の業況判断指数 (DI) が、前回の 2020 年 12 月調査より 15 ポイント上向き、5 となった。 3 四半期連続で持ち直し、新型コロナウイルスの感染拡大以前の水準を回復。 一方、大企業・非製造業はマイナス 1 と、4 ポイントの改善にとどまった。 DI は景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」とした割合を引いた指数。

大企業・製造業は円安傾向が追い風となり、中国向けなどの輸出が好調だった。 コロナ禍前の 2019 年 12 月調査で 0 だった DI は、20 年 3 月にマイナス 8、6 月にはリーマン・ショック後の 09 年 6 月(マイナス 48)以来の低さとなるマイナス 34 に落ち込んだ。 20 年 9 月調査で改善に転じて以降、回復が続いている。 一方で、大企業・非製造業は厳しい景況感が続く。 回復を支えた旅行支援策「Go To キャンペーン」が全国一斉停止となったうえ、1 月には緊急事態宣言が出たことも重荷になった。 20 年 9 月調査で 1 年 3 カ月ぶりに改善へ転じ、20 年 12 月調査で 2 四半期続けて持ち直したが、宿泊・飲食サービスや遊園地などの対個人サービスが暗転した。

短観は「全国企業短期経済観測調査」の略で、経営者らに景気の見方や投資計画などを 3 カ月ごと(3・6・9・12 月)に尋ねる。 全国の約 1 万社が対象で回答率は 100% 近く、景気の動きを全体的に映す。 業況判断 DI は自社の景況感について「良い」、「さほど良くない」、「悪い」の 3 択で答える。 例えば、約 2 千社 (20%) が「良い」、約 4 千社 (40%) が「悪い」と答えると、DI は 20 から 40 を引いたマイナス 20 となる。 (山下裕志、asahi = 4-1-21)


公示地価 6 年ぶり下落 コロナ直撃、都市部商業地で顕著

国土交通省は 23 日、2021 年 1 月 1 日時点の公示地価を発表した。 住宅地や商業地などを合わせた全用途の全国平均が前年より 0.5% 下がり、6 年ぶりに下落に転じた。 前年は 1.4% の上昇だったが、新型コロナウイルスの感染拡大による訪日客の激減や外出自粛の影響で、都市部を中心に大きく下落した。 用途別では、商業地が前年の 3.1% 上昇から 0.8% 下落となり、7 年ぶりに下落。 住宅地も 0.8% 上昇から 0.4% 下落と、5 年ぶりの下落となった。

とくに落ち込みが目立つのは、ホテルや飲食店が集まる都市部の商業地だ。 前年までは、外国人観光客の増加や大規模な金融緩和による投資資金の流入で、都市部ではホテルや商業施設などの開発需要が高まっていた。 ところが、コロナで状況は一変。 訪日客の激減と外出自粛でホテルは不振に陥り、都心の繁華街では、時短営業を余儀なくされた飲食店の撤退が相次ぎ、地価が下がっている。

このため、地方より東京、大阪、名古屋の 3 大都市圏の落ち込みが大きく、全用途で 0.7% 下落となった。 商業地に限ると、前年の 5.4% の上昇から 1.3% 下落に急落。 最も下落幅が大きかった大阪は前年の 6.9% 上昇から 1.8% 下落となり、東京も 5.2% 上昇から 1.0% 下落、名古屋も 4.1% 上昇から 1.7% 下落へと、大幅に落ち込んでいる。地方圏も大都市圏ほどではないが、全用途で 0.3% 下落と 4 年ぶりの下落となった。 再開発などで高い上昇率を維持してきた札幌、仙台、広島、福岡の地方主要4市も平均 2.9% 上昇と、前年の 7.4% 上昇より上昇幅は縮小した。

1 月 1 日までの半年の地価の変化をみると、商業地は横ばいで、住宅地は 0.2% の上昇と、下げ止まりの兆しもうかがえる。 ただ、1 月には 2 度目の緊急事態宣言が出されており、コロナの影響がさらに長期化すれば、下落傾向が長引く可能性もある。 一方、コロナ後のテレワークの拡大で、首都圏からの移住需要が高まり、長野県の軽井沢など一部の地域で地価が上昇するといった変化もみられた。 (友田雄大、asahi = 3-23-21)


GDP、年率換算 11.7% 増に修正 10 - 12 月期

2020 年 10 - 12 月期の国内総生産 (GDP) 2 次速報は、物価変動の影響を除いた実質(季節調整値)で前期(7 - 9 月)比 2.8% 増、年率換算で 11.7% 増だった。 先月公表の 1 次速報(年率 12.7% 増)から下方修正されたものの、年率 22.8% 増を記録した前期に続き、堅調な回復ペースを保ったことが確認された。 内閣府が 9 日公表した。 プラス成長は 2 四半期連続。 2 次速報では最新の統計を反映し、一部の個別項目の数値を修正した。

GDP の下方修正の主な要因は、民間在庫の下ぶれだ。 1 次速報では GDP への寄与度が前期比マイナス 0.4 ポイントだったが、2 次速報ではマイナス 0.6 ポイントに。原油・天然ガスや自動車などの在庫が減った。 SMBC 日興証券の丸山義正氏は「在庫の下ぶれは、半導体不足で思うように自動車がつくれなかったことも一因。 それだけ内外の需要が強かった。」と指摘する。 設備投資も、1 次速報の前期比 4.5% 増から 4.3% 増に下方修正された。

感染「第 3 波」受け、再び落ち込む個人消費

一方、個人消費は前期比 2.2% 増、輸出は 11.1% 増で、それぞれ 1 次速報と同じだった。 実質 GDP の実額は年換算で 541 兆円。 水準で見ると、コロナ危機が深刻化した 4 - 6 月期に落ち込んだ分の 9 割をその後の 2 四半期で回復した計算だ。 ただ、今年に入って回復の勢いは失速している。 感染「第 3 波」を受けて、1 月に 2 度目の緊急事態宣言が大都市圏で出たためだ。 この影響で、GDP の半分以上を占める個人消費は再び落ち込んでいる。

総務省が 9 日公表した 1 月分の家計調査では、2 人以上世帯の消費支出は 26 万 7,760 円。 実質で前年同月を 6.1% 下回った。 中でも外食の飲酒代が 9 割減、鉄道運賃は 7 割減など、サービス消費の冷え込みが鮮明だ。 消費支出は前月比(季節調整値)でも 7.3% 減に急落した。 1 - 3 月期の GDP について、西村康稔経済再生相は 9 日の記者会見で「昨春ほどでないにしても、マイナスを覚悟しないといけない」と述べた。 民間の専門家も、3 四半期ぶりのマイナス成長に陥るとの見方が大勢で、年率数 % - 10% の減少との予測が出ている。 (山本知弘、asahi = 3-9-21)

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GDP 2 四半期連続プラスも、通年は 11 年ぶりマイナス

内閣府が 15 日公表した 2020 年 10 - 12 月期の国内総生産 (GDP) の 1 次速報は、物価変動の影響を除いた実質(季節調整値)で前期(7 - 9 月)より 3.0% 増え、2 四半期連続のプラス成長になった。 このペースが 1 年続くと仮定した年率換算では 12.7% 増。 コロナ危機からの反動で年率 22.7% の記録的な伸びだった前期からは減速したものの、高い成長率を保った。 ただ、コロナ危機で GDP が急落した分は取り戻しきれておらず、20 年の通年では前年比 4.8% 減と、リーマン・ショック翌年の 09 年以来、11 年ぶりのマイナス成長になった。 (山本知弘、asahi = 2-15-21)

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緊急事態受け、成長率引き下げ 日銀会合、緩和策は維持

日本銀行は 21 日の金融政策決定会合で、今の金融緩和策の維持を決めた。 今回まとめた「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、新型コロナウイルスの感染再拡大による緊急事態宣言を受け、2020 年度の実質経済成長率を前回の昨年 10 月時点から下方修正した。 一方で、製造業の回復や政府の新たな経済対策なども踏まえ、経済が「持ち直している」とする景気判断は維持した。

20 年度の実質成長率は昨年 10 月の -5.6 〜 -5.3% (中央値 -5.5%)から、-5.7 〜 -5.4% (同 -5.6%)とした。 政府が出した緊急事態宣言の影響で外出自粛が広がり、飲食などサービス消費がさらに落ち込むとみている。 一方、21 年度については、前回の 3.0 〜 3.8% (中央値 3.6%)から、3.3 〜 4.0% (同 3.9%)に引き上げた。 22 年度についても上方修正した。 20 年度の消費者物価見通しは、中央値が前回の -0.6% から同 0.5% に上方修正された。

日銀は昨年 12 月の会合で、新型コロナ問題対応の資金繰り支援や市場の安定化策の期限を、今年9月まで半年間延長した。 企業の経営や雇用を支える金融機関に有利な条件でお金を流したり、資金調達のために企業が発行する社債やコマーシャルペーパー (CP) の買い入れ枠を拡大したりする措置を続ける。 (渡辺淳基、asahi = 1-21-21)

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GDP 年率 22.9% 増に上方修正 7 - 9 月期 2 次速報

内閣府が 8 日公表した 7 - 9 月期の国内総生産 (GDP) 2 次速報は、物価変動の影響を除いた実質(季節調整値)で、前期(4 - 6 月)比 5.3% 増、このペースが 1 年続くと仮定した年率換算では 22・9% 増だった。 算定基準を一部変更した影響もあって、11 月公表の 1 次速報(年率 21.4% 増)から上方修正され、記録的な伸びがさらに広がった。 プラス成長は消費増税直前の昨年 7 - 9 月期以来、4 四半期ぶり。 コロナ危機で戦後最悪の落ち込みとなった前期からの反動で大きく伸びた。 ただ、水準で見れば、取り戻したのは前期に減った分の約 6 割にとどまり、回復は力強さを欠いている。

上方修正の主因は、内需の上ぶれだ。 個人消費は前期比 5.1% 増(1次速報は 4.7% 増)に修正。 感染拡大がいったん落ち着いた 9 月分のサービス・娯楽関係の消費の伸びが 1 次速報後に公表された統計で確認されたのを反映した。 GDP 算定基準の見直しでリフォーム費用などが新たに加わった住宅投資は 5.8% 減(同 7.9% 減)と減少幅を縮めた。 設備投資も、建物や通信機械への投資が 1 次速報後の統計で確認されたことから、2.4% 減(同 3.4% 減)となった。 一方、輸入が 1 次速報の 9.8% 減から 8.8% 減に修正された結果、外需の押し上げ分はやや縮んだ。

GDP は今回から算定基準が見直された。 リフォームなどから生まれる付加価値額が加わり、過去の分も含めて数値が改定された。 この結果、7 - 9 月期の実質 GDP の年換算額は 527.1 兆円となり、1 次速報の 507.6 兆円より約 20 兆円膨らんだ。 また、19 年度の実質成長率も修正され、1 次速報の前年度比 0.0% 増のプラス成長から一転、0.3% 減のマイナス成長となった。 マイナスは、消費税率が 8% に上がった 14 年度の 0.4% 減以来、5 年ぶりになる。 (山本知弘、asahi = 12-8-20)


好調な情報通信、減益の自動車 4 - 12 月決算で明暗

東証 1 部上場企業の 2020 年 4 - 12 月期決算は、本業のもうけを示す営業利益が前年同期比 26% 減だった。 10 - 12 月の 3 カ月でみると、営業利益は同 15% 増となるなどコロナ禍からの回復傾向が鮮明となったが、改善の度合いは業種間で大きなばらつきがある。 3 月期決算の 1,336 社(除く金融)のうち、発表済みの 1,332 社(全体の 99.7%)を SMBC 日興証券が集計した。 4 - 12 月期の売上高は前年同期比 11% 減の 329 兆円、営業利益は 26% 減の 18.9 兆円、純利益は 16% 減の 17.4 兆円。 純損益が増益だったのは 517 社、減益 808 社、赤字 265 社だった。

主な業種別にみると、鉄道会社などを含む陸運は外出自粛の打撃が大きく、売上高・利益ともに大きく落ちた。 自動車などの輸送用機器、機械、アパレルメーカーなどを含む繊維製品も大幅な減収減益に陥った。 一方で、情報・通信と、ゲーム会社の任天堂などを含むその他製品は、巣ごもり消費の恩恵もあって増収増益に。 食料品、医薬品、IT 関連などを含む電気機器、電気・ガスなどの業種も全体では増益か横ばいとなり、打撃が小さかった。

製造業の 4 割超の 302 社は、今回の決算発表に伴って 21 年 3 月期の通期業績見通しを上方修正した。 通期では、製造業は売上高 10% 減、純利益 6% 増となる見通しだ。 前年はコロナ禍による資産の減損などもあったが、今回は改善した。 増益の主因は、感染防止のために落ちていた経済活動が再開され、抑えられていた消費の反動増が生じたことだ。 最近の株価上昇もこうした製造業の業績改善を反映した動きとみられる。

一方で、非製造業は 2 度目の緊急事態宣言の影響を受ける業種も多く、対面型ビジネスの飲食や交通、レジャーを中心に苦境が続いている。 非製造業の通期の業績は売上高 8% 減、純利益 20% 減となる見込み。 コロナ禍に見舞われた直後の 4 - 6 月期は、集計対象企業全体でみて売上高が前年同期比 22% 減、営業利益 68% 減となるなど、業績が大幅に悪化した。 その後は回復傾向が続いている。 (吉田拓史、asahi = 2-23-21)


消費者物価、1 月も下落 GoTo 停止で下げ幅は縮小

総務省が 19 日公表した1月の消費者物価指数(2015 年 = 100)は、生鮮食品を除く指数が前年同月より 0.6% 低い 101.4 だった。 前年割れは 6 カ月連続。 下げ幅は前月(同 1.0% 減)より縮んだものの、新型コロナ禍での原油安に伴うエネルギー料金の値下がりが、物価を押し下げる構図が続いている。

電気代は 8.2%、都市ガス代は 10.7%、灯油代は 14.4%、ガソリンは 9.5%、それぞれ前年同月よりも安かった。 前月までは下げ幅が 3 割を超えていた宿泊料は、2.1% 減。観光支援策「Go To トラベル」の停止で料金割引がなくなったためで、これだけで指数全体の下げ幅が 0.38 ポイント縮んだという。 調査対象の 523 品目のうち、値上がりは 255、値下がりは 208、横ばいは 60 だった。 1 月に再び出た緊急事態宣言で消費は落ち込んでいるが、物価に及ぼす影響は「見通しにくい(総務省)」としている。 (asahi = 2-19-21)

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昨年の消費 5.3% 減、落ち幅過去最大 コロナが直撃

総務省が 5 日公表した 2020 年の家計調査で、2 人以上世帯が使ったお金の月平均は 27 万 7,926 円となり、物価変動の影響を除いた実質で前年より 5.3% 少なかった。 落ち幅は比較できる 01 年以降で過去最大。 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、不要不急の外出を控える動きが影響した。 前年割れは 2 年ぶり。 10 ある品目分類のうち、「教養娯楽」、「交通・通信」、「被服及び履物」など 7 つで支出が減り、「光熱・水道」、「保健医療」など三つが増えた。

支出の増減はいずれもコロナ禍が直撃した形だ。 個別品目でみると、パック旅行費(70.4% 減)や外食の飲酒代(53.9% 減)などで減少が目立つ一方、マスクなどの保健用消耗品は約 8 割も増えた。 「巣ごもり」需要の高まりから、パソコンは約 3 割増、ゲームソフトは 5 割近く増えた。 同時に公表された 12 月の 2 人以上世帯の支出は実質で前年同月より 0.6% 減った。 減少は 3 カ月ぶり。 感染拡大の「第 3 波」で、飲酒を伴う外食や旅行を控える動きが強まった。 (asahi = 2-5-21)