化学繊維メーカーが「スマート衣料」で攻勢! 背景にコロナ禍で普及するリモートレッスン

導電素材で生体情報把握

化学繊維メーカーが導電素材を用いて心拍などの生体情報を把握する「スマート衣料」で攻勢をかけている。 東洋紡はフィルム状導電素材「COCOMI (ココミ)」を用いてサイクリング向けアンダーシャツを制作、5 - 6 月をめどに一般向けに発売する。 帝人フロンティア(大阪市北区)はゴルフレッスン向けにセンシングウエアとアプリケーション(応用ソフト)を開発した。 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、対面でのレッスンや体調確認が難しい点も後押ししており、需要の伸びが見込まれる。

東洋紡はサイクリスト向けに、市販のセンサーを装着して心拍を計測できるアンダーシャツを開発した。 正確なデータを取るため、適度に身体に密着する一方、伸縮性がある素材を用いることで、着心地に配慮した。 サイクリング観光事業に力を入れる千葉県南房総市の観光協会と連携した認知度向上などを図り、広く需要が見込めると判断。 エンドユーザーへのネット販売を決めた。 1 枚 8,000 円程度、年間数千枚の販売を見込む。 ココミは既にスポーツ時の体調管理のほか、競走馬の見守りなどに採用されている。

帝人フロンティアはウエアラブル(着用型)関連のセンサーやウエアを、「MATOUS (マトウス)」ブランドで展開している。 ゴルフレッスン向けに提供する「マトウス ゴルフ」はセンサーと一体化したウエアを着用することで、スイング時の姿勢を計測、自動解析する。 コロナ禍で対面指導が難しい中、リモート指導などを行うティーチングプロへのレンタルを始めた。 野球やテニス向けにも拡大予定だ。

マトウスを用いた睡眠管理サービスも 3 月に開始した。 睡眠時の呼吸数や寝返りの回数などを計測するセンサー「マトウス エスエス」を寝具の下に敷き、専用アプリで睡眠の質を判定する。 重村幸弘帝人フロンティア取締役執行役員は「コロナ禍によるリモートワーク増加などで、睡眠のリズムや質に悩む人が増えている」と説明する。

熱中症での事故防止

東レは NTT と共同開発した「hitoe (ヒトエ)」のラインアップ拡充に取り組む。ヒトエは導電性高分子をナノファイバーニットの隙間に固着した機能性素材。 無意識に体から発する電気信号を収集し、心拍数などを把握する。 リモートワークの普及や熱中症への関心の高まりで「特に作業者の見守りへの需要は増えている」と、機能製品事業部の勅使川原崇部長代理は語る。

工事などの作業やスポーツと比べ、体の動きが大きくない医療用途への拡販を念頭に、肌触りが柔らかい製品や、着脱しやすい製品を春以降出す予定だ。 熱中症などによる事故防止や、高齢者の体調管理の観点から、今後もスマート衣料の需要は高まると見られる。 機能に加え、デザイン性や着心地、価格を訴求する動きも進みそうだ。 (江上佑美子、NewSwitch = 3-20-21)


積み重なる衣料 苦境のアパレル、余った在庫の行き先は

密を避け外出を控える「巣ごもり」などの影響で、洋服やアクセサリーなどの需要は減少傾向。 大型商業施設ではテナントの大量閉店も相次ぎ、新型コロナウイルスの感染拡大によるアパレル業界の苦境が浮き彫りとなっている。 一方で、これまでとは違った形での服の流通も広がりつつある。 大阪市西成区の倉庫。 大量に積み上げられた段ボール箱の中身はほとんどが衣料品だ。 在庫を現金化したい全国のアパレルメーカーや小売店から持ち込まれた衣料品で、店頭販売定価の約 1 割で買い取られているという。

衣料品を管理するのは在庫処分大手のショーイチ(同市中央区)。 山本昌一社長 (42) は「あるものは選ばずに買い取る。 断ることはありません。」と話す。 新型コロナの感染が拡大した昨年 3 月ごろから買い取りの依頼が急増。 倉庫内の在庫は約 200 万着にもなり、例年の 2 倍以上だという。 買い取った商品は依頼主の希望に応じて、ブランドのタグなどを切り取るなどの作業をした後、同社が経営する東京、大阪、東南アジアなど国内外 20 店舗に運ばれ格安で販売される。 ただ、同社の店舗でもコロナ禍で売り上げは以前より下がっているという。

一方、店舗での販売の代わりに在庫処分の新たな受け皿として機能しているのが、衣料品のサブスク(サブスクリプション = 定額制)だ。 滋賀県草津市のベンチャー Brista (ブリスタ)では、30 - 50 代の女性向けのワンピースやジャケットなど約 3 着分を 1 カ月 1 万 1 千円(税込み)からレンタルすることができる。 複数の有名ブランドを扱う三陽商会などのメーカーと取引があり、会社役員やセミナーの講師など人前に立つキャリア女性に人気だという。 店頭価格で 4 万円前後の普段着ではない服を手頃な価格で利用できるのが売りで、5 千着以上の在庫の中から、好みの商品をネットで注文でき、気に入ればそのまま買い取ることもできる。

同社でも感染拡大以降、取引を希望するブランドは例年の 2 倍に膨らんだという。 これまで取引のなかった高級ブランドなどからも声がかかるという。 会員登録者数も 2019 年から 1,5 倍に増加。 コロナ禍で外出を控える人たちからは「自宅にいながら試着し、買い物ができる」と評判で、買い取り件数は約 10 倍にまで増えたという。 高橋瑞季社長 (36) は、「コロナ禍の外出自粛の影響で、衣料品の流通が変化してきている。 ブリスタのようなサブスクは店舗における試着の位置づけも担い、今後は『ネットで借りた服をネットで買う』という流通がトレンドになりそうだ」と話していた。 (金居達朗、asahi = 3-8-21)


セールなしで在庫消化 99% 持続可能ファッションの力

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はき口伸びーる靴下考案 父のリハビリから見えたヒント

【埼玉】 簡単に靴下をはけたり、はかせたりできれば - - そんな介護の現場の思いから生まれた靴下「歩(ほ)から」が人気だ。 はき口が 50 センチにも伸びるのがその秘密。 さいたま市浦和区岸町 4 丁目の靴下と生活雑貨の店「さきっちょ」の越野陽子さん (51) が考案した。 靴下をはくのが大変な妊婦にも好評という。 きっかけは脳梗塞で倒れた父のリハビリだった。 自分で靴下をはきたいが、思うようにいかない。 介護する側も大変だった。 「靴下をはくのを人にやってもらうというのは、プライドが傷つくんですよね」と越野さん。

ヘルパーの意見も採り入れて、片手でもはけるように、伸びる素材を使ってはき口を広げる工夫をした。 縫製が丁寧な工場に発注し、伸びたままにならず、洗濯にも強い靴下にした。 越野さんは以前、通販会社で働いていた。 様々な商品を売っていたが、自分で納得した品物を売りたいとの思いが強くなり、会社を辞めて 2011 年から自分がこだわりを持っている靴下の通販を始めた。 最初はシルクの 5 本指の靴下の販売を始めた。 口コミで広がり、レビューも付くようになった。 「歩から」は 13 年に売り出し、5 本指タイプの「ごっ歩」も加えた。 顧客が増えて 17 年に「さきっちょ」を開店。 「靴下から生活を変えられることがある。」 そんな思いが実り始めた。

靴下の工夫は怠らない。 今年に入り、「岩盤浴ソックス スパオール」を売り出した。 「歩から」に温泉鉱石を使った塗料をプリント。 その温熱効果が足冷えを和らげるとともに足の動きが良くなり転倒防止効果もあるという。 健康器具開発販売会社「ナチュラルアビリティ(東京都葛飾区)」との共同開発。 これも父の足が冷えているのをみて思いついた。 越野さんは「札幌の病院にいて会うことができない父にも歩ける自分をあきらめないでリハビリを続けてほしい」と話している。 「歩から」は 1,500 円、「岩盤浴ソックス スパオール」は 3,500 円。 ともに税別。 「さきっちょ」は金〜日曜開店。 月 - 水曜は予約制。 問い合わせは同店 (048・789・7640)。 (堤恭太、asahi = 2-11-21)


アパレルから売れ残った衣料品を買い取って安価で販売するゲオ、出店加速のワケ

【名古屋】 ゲオ ホールディングス (HD) はアパレルメーカーなどから売れ残った衣料品を買い取って安価で販売する業態「オフプライスストア」について、毎年 2 ケタのペースで出店する。 現在、関東や東海などに構える 8 店舗にとどまるが出店を加速し、将来は 300 - 400 店舗を目指す。 オフプライスストアはコロナ禍を背景に衣料品の余剰在庫が膨らむ中で参入が相次ぐ業態。 多店舗展開により知名度向上を急ぐ。

ゲオ HD は子会社のゲオ クリア(名古屋市中区)を通じてオフプライスストア「ラック・ラック・クリアランスマーケット」を展開している。 2019 年に 1 号店を開店して以降、関東、東海、関西地域の大型ショッピングモールを中心に出店を進め、20 年 11 月には業界で初めて百貨店に出店した。 今後、百貨店など「広域客が集まる主要都市の駅近郊(川辺雅之ゲオクリア社長)」での店舗展開を加速する考え。

コロナ禍をきっかけにアパレル需要が低迷し、メーカーや小売店には売れ残った在庫が積み上がっている。オフプライスストアはそうした在庫を買い取って販売するディスカウント業態。アパレル大手のワールドや、「ドン・キホーテ」を展開するパン・パシフィック・インターナショナルHDなど参入が相次ぎ、競争が激しくなっている。 (NewSwitch = 2-3-21)


地球に優しい服、がカッコイイ 投資マネーも動き始めた

人と地球に優しい商品を求める消費者の声が、コロナ禍で強まっている。 消費行動の変化を捉え、企業は環境に配慮した商品やサービスの開発を加速。 注目が集まる環境分野に、巨額の投資マネーが流れ込んでいる。 新型コロナウイルスの感染拡大は、繊維・アパレル業界に大打撃を与えた。 大量生産と在庫セールに頼るビジネスモデルは行き詰まりつつあったが、コロナ禍による休業や買い控えが追い打ちになり、大手のレナウンも昨年倒産した。

T シャツ 1 枚分に水 2,700 リットル

だが、衣料素材ベンチャー企業「hap (ハップ、東京都中央区)」の鈴木素(もと)社長 (43) の元には、アパレル大手やデザイナーから「『新素材』について教えてほしい」という相談が月 30 件ほど寄せられる。 コロナ前の 5 倍以上だ。 「新素材」とは、古着や布切れ、オーガニックコットンなどを原料にしたサステイナブル(持続可能)な繊維に、抗菌や消臭、撥水(はっすい)などの機能や耐久性を加えた hap 独自の生地のことだ。 素材の新しさだけでなく、製造過程で化学薬品を極力使わず、水や電力の消費を半分に抑える環境対応でも先行する。

繊維・アパレル業界は大量の化学薬品や水、電力を消費する。WWF (世界自然保護基金)によると、T シャツ 1 枚分の綿花を作るのに必要な水は 2,700 リットルに上る。 鈴木社長は環境への悪影響に胸を痛め、14 年前に繊維商社を辞めて hap を設立した。 サステイナブルな繊維を売りにするブランドは増えているが、機能や耐久性を持たせるには技術開発が欠かせない。hap は、新素材の開発をフィンランドの大学や信州大学繊維学部(長野県上田市)の宇佐美久尚教授 (56) = 有機材料化学 = の研究室と共同で進めている。

12 月上旬、宇佐美教授の研究室を訪ねた。 細長いガラス管に入れた青色の液体に光を当てると、徐々に無色になった。 光を使って汚れを分解する光触媒の効果だ。 これを応用して汚れが落ちやすい繊維を開発して衣服を作れば、洗濯を減らして長持ちさせられると宇佐美教授は説明する。 宇佐美教授は「着た時の風合いは変えず、汚れの分解効果は高く保つ。鈴木社長が求めるハードルはいつも高い」と笑う。 hap の新素材を使った T シャツ 1 枚の原価は、平均的なものより数百円高いが、今年の販売実績は前年比の倍増ペースだ。 hap 製品を愛用する弘前大 3 年の斉藤拓海さん (22) は「その服がどうやって作られたかまで含めてファッションだと思う。 おしゃれをするなら環境に優しい方がいい。」と語る。

H & M が始めた「切り札」

鈴木社長は「本気で環境問題に取り組まなければ、企業は時代にも消費者にも置いていかれる。 アパレル業界は、製造過程も含めて自信を持って語れる服を、適正な量と価格で売るという考えにシフトしつつある」と指摘する。 環境負荷が少ない商品を目指すのは世界的潮流になっている。 大量生産モデルで成長してきたファストファッションの H & M (スウェーデン)や、ZARA を展開するインディテックス(スペイン)は、商品の素材を環境に配慮したものに切り替える目標を掲げる。

H & M は 10 月、スウェーデンの首都ストックホルムにある店舗の一角にガラスで区切ったコーナーを設けた。 中に設置したのは、古着を生まれ変わらせる全自動の装置「Looop (ループ)」だ。 装置は顧客が持ち込んだ古着をオゾン処理して洗い、細かく裁断して糸を紡ぎ直す。 その糸をよりあわせ、顧客が望むセーターなどを編み上げる。 水や化学薬品は使わない。H & M は循環型社会への「切り札」とアピールする。

ただ、1 着の再生には約 10 時間かかる。 利用料金は 1 回あたり会員 100 クローナ(約 1,250 円)、非会員 150 クローナ(約 1,880 円)。 採算ベースに乗るのはまだ先だが、21 年 3 月まで予約は埋まっている。 H & M のサステイナビリティー責任者、パスカル・ブルン氏は Looop について「古着にも価値があると訴えることが最大の目的。 顧客の賛同なくして、ファッション業界に真の変化をもたらすことはできない」と強調する。(鈴木友里子、佐藤啓介、ロンドン = 和気真也、asahi = 1-1-22)


アパレル "総崩れ" はコロナのせい? 復活に必要な 6 つの「シフト」

ファッション業界の再建

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【日本初】 サブスクモール「submee」開設 アパレルやアウトドアの人気ブランドが出店

submee は 12 月 10 日、人気ブランドが出店するライフスタイル・サブスクモール「submee (サブミー)」をオープンした。 モール型のサービスにより、新たなサブスクの形を提供する。 「submee」は、さまざまなジャンルのブランドが出店するモール型のサブスクリプション・サービス。 利用者は大型ショッピングセンターで買い物するように、お気に入りのブランドが提供する「メニュー」を楽しく選ぶことができる。 オープン時点では、メンズ & レディース「Urban Research」、レディース「Rope Picnic」、キッズ「petit main」、ペットグッズ「Three Arrows」が出店しており、今後はコスメ、スポーツ、インテリアなど多数のライフスタイルブランドが参加予定としている。

取り扱うサブスクリプションの形態は、商品が定期的に届き、商品の返却が不要な「定期購入型」と、商品を定期で利用でき、利用期間終了時に残価での買取も可能な「定期利用型」の 2 つ。 子ども服ブランド「petit main」の新作デイリーキッズウェア(1 点 + ボトムス 1 点のコーディネート)が毎月届く、定期購入型の「Girls デイリーセット(月額 3,630 円/税込)」。 上級キャンパー垂涎の「Coleman x Urban Research」セット(ヒーリングチェア/クイックアップ IG シェード/コンパクトフォールディングチェア/エクスカーションクーラー)が定期利用できる「Colman コンプリート・セット(月額 8,000 円/税込 : 最低利用期間 3 カ月)」などがラインアップする。

「submee」では、出店希望企業を受け付けており、出店のメリットとして、初期費用および月額固定費が無料であること、ブランドコンセプトの訴求、オムニ・チャンネルの強化が図れることに加え、同サービスのユーザーが増加することで事前に需要が把握でき、計画生産による在庫の圧縮が可能になるとしている。

「submee」は、便利なサービスであるだけではなく、サブスクリプションすることで持続可能な社会作りにも貢献できるサービスであるとし、不要となった商品の無料回収とその再利用または寄贈を行うとしている。 さらに将来的には、「submee」のユーザーが増えるにつれ各ブランドが計画生産できるようになり、過剰生産が抑制されて廃棄物の発生も削減されるとしている。 それにより各ブランドのコストが削減されることで、その分より面白い製品やサービスが登場する可能性が高まるとし、「環境のために我慢する」のではなく、「生活を楽しみながら持続可能社会を実現する」ところにサブスクリプションの意義があるとの考えを示した。 (日本ネット経済新聞 = 12-13-20)


日本企業初、アシックスがファッション産業の環境負荷低減に向けた「The Fashion Pact」に加盟

アシックスが 12 月 10 日、ファッション産業の環境負荷低減に向けた国際的枠組み「The Fashion Pact (ファッション協定)」に加盟したと発表した。 日本企業が加盟するのは同社が初めて。

The Fashion Pact は、2019 年 8 月にフランス・ビアリッツで開催されたG7サミットで欧米を中心とするファッションおよびテキスタイル企業 32 社が、気候変動、生物多様性、海洋保護の 3 分野で共通の具体的な目標に向かって取り組むことを誓約した協定。 現在までに「グッチ」や「サンローラン」を擁するケリング、「ザラ」の親会社インディテックス、「アディダス」、「ナイキ」、「シャネル」、「エルメス」、「ディーゼル」、「モンクレール」、「バーバリー」、「ラルフ ローレン」、「ステラ マッカートニー」など 60 社 200 以上のブランドが加盟している。

アシックスは気候変動問題に積極的に取り組んでおり、現在は 2030 年に向けた温室効果ガス排出量削減を目標に設定。 2015 年時と比べて事業所における CO2 排出量を 38% 削減、サプライチェーンでの CO2 排出量を製品あたり 55% 削減することを目指している。 昨年には、2050 年までに温室効果ガスの排出実質ゼロに向けて、産業革命前からの気温上昇を 1.5 度未満に抑えるための科学的根拠に基づいた温室効果ガスの排出削減目標を設定すると表明。

また、生物多様性や海洋保護分野では、2025 年までにアパレルとアクセサリーで使用するコットンを 100% サステナブルコットンへ切り替えるほか、全世界の直営店を対象に 2020 年末までにプラスチック製から環境配慮型紙製のショッピングバッグへ順次切り替えている。 アシックスの廣田康人代表取締役社長は、The Fashion Pact への加盟について「多くの人々が心身ともに健康的になる世界を実現させるためには、持続可能な地球環境が不可欠であると考えています。 The Fashion Pact 加盟企業と連携し、業界一体となった取り組みを推進していきます。」とコメントしている。 (FashionSnap = 12-10-20)

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変身急ぐ高級ブランド、「ファッション協定」で環境戦略

レナウン、セシルマクビー、米ブルックス・ブラザーズ …。 新型コロナウイルス禍で、著名なアパレル企業やブランドが国内外で相次いで破綻や店舗撤退に追い込まれている。 マイナーなブランドも含めれば、相当数がアパレル市場から撤退を迫られており、その流れは簡単に止まりそうにない。 原因として百貨店の営業自粛が響いた、安価なファストファッションに押された、との解説もあるが、もはや正しいとはいえない。 見込み生産と売れ残りの値下げセール、そして大量廃棄を続けるファッション業界の悪弊に NO が突きつけられたとみるべきだろう。

世界のファッション産業をリードするのは、仏ケリング、仏 LVMH モエヘネシー・ルイヴィトンといったハイブランドを複数抱える企業グループだ。 優れたクリエーターたちが競い合い、先端的なデザインや素材を発掘し、時代が求めるだろうライフスタイルや理想の人間像を発信して、各国のリーダー層の装いや幅広い消費産業に影響力を及ぼす。 今、ハイブランドを軸に広がるのが「ファッション協定」という環境重視の産業構造を目指す動きだ。 エルメス、バーバリー、モンクレールなど約 150 ブランドが約 1 年前、主要 7 カ国首脳会議(G7 サミット)に合わせて署名した。

ファッション協定は気候変動、生物多様性、海洋の 3 分野で具体的な目標と企業行動を求める。 主導するフランス政府は 2 月、洋服などの売れ残り廃棄を禁止する法律を施行。 そこにコロナ禍が重なった。 コロナ禍は冬物や春物衣料の販売機会を奪い、3 密になるセール開催も許さなかった。 半年以上前にパリやミラノでファッションウイーク(コレクション)を開き、流行色やデザインを PR して量産。 定価である程度売れれば、利益は出る - -。 そんなビジネスモデルがつまずき、サステナビリティー(持続可能性)を事業戦略にすえる流れが加速している。

例えばグッチは 6 月、「グッチ・オフ・ザ・グリッド」という新シリーズを立ち上げた。 再生ナイロンや環境負荷の小さい無溶剤接着剤を使い、鉛フリー(不使用)などを重視する。 ハイブランドではないナイキも工場で出た廃材などを再利用したスニーカー「スペースヒッピー」を売り出し、人気を集めている。 日本も流れの中にいる。 「サステナ気分で着こなして」、「持続可能な未来をまとう」。 こんな言葉が女性ファッション誌に目立ち始めたのは今夏からだ。 8 月 26 日、小泉進次郎環境相は伊藤忠商事などアパレル関連企業を集めて意見交換会を開き、ファッション協定への参加を促した。

流行は移り変わる。 サステナ気分が冷める時期はあるかもしれない。 それでも大量生産、大量廃棄を省みない企業はもうおしゃれじゃない。 (山根清志、日経産業新聞 = 9-12-20)

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小泉環境大臣が「日本企業も "ファッション協定" に参加を」 意見交換会で提言

小泉進次郎・環境大臣は 26 日、NPO 団体「ファッション レボリューション ジャパン」の提言を受け、伊藤忠商事や豊島、ファーストリテイリング、H & Mジャパン、アダストリア、帝人フロンティアなど 9 社のファッション企業との意見交換会を行った。

ファッション企業が自社の取り組みを説明しているのを聞き、小泉大臣は「手元の報道媒体にある "ファッション トランスペアレンシー インデックス" では日本ブランドの名前がまだまだ目立っていないし、欧米の有力企業・ブランドが入っている『ファッション協定 (The Fashion Pact)』にも日本企業が一つも入っていない。 多くの素晴らしい取り組みをしているからこそ、まずは加盟することで向こうの土俵に乗り、その上で取り組みをアピールしてほしい。」と逆提案を行った。

意見交換会には、上記の伊藤忠などのほか、日本環境設計、クラボウ、東レ、アダストリアが自社のサステナブルの取り組みを紹介。 その後は環境省の「森里川海プロジェクト」アンバサダーで意見交換会のファシリテーターを務めた鎌田安里紗さんのほか、クルックの江良慶介氏、モデルのトラウデン直美、森摂「オルタナ」編集長、渡辺三津子「ヴォーグジャパン」編集長も交えたディスカッションを行った。

ファッション協定は、フランス政府の呼びかけによって 2019 年に発足した環境保護などを定めた協定で、協定の発足をリードしたケリング (KERING) を筆頭に、シャネルや H & M などの有力企業が数多く参加している。 小泉大臣のファッション協定加盟の呼びかけに、参加者の 1 人で昨年まで JFW 推進機構の国際ディレクターを務めた信田阿芸子氏は、「ファッション協定はフランス政府主導の協定。 むしろ日本政府主導で、日本版ファッション協定を作って国際社会に新たな潮流を生み出してほしい」とリクエスト。

小泉大臣は「できることしか言わない、できるかわからないからアピールしないでは、国際社会の潮流から取り残される。 まずはやってみよう姿勢に変え、素晴らしい取り組みをもっと世界にアピールしてほしい。」と企業にエールを送った上で、「環境省も今後は音頭を取って "日本版ファッション協定" やサステナブルファッションアワードの創設などにも取り組んでいきたい」と語った。 (横山 泰明、WWD = 8-26-20)


仏プランタン 7 店閉鎖 老舗百貨店、コロナ打撃

新型コロナウイルスによる経済への打撃が広がる中、フランスの老舗百貨店プランタンを運営するグループは 10 日、国内店舗のうちプランタン 4 店と、若者向け店舗シタディウム 3 店の計 7 店を閉鎖する計画を発表した。 地元メディアが伝えた。 グループは「損失を食い止め、市場の需要に適応して長期的に経営の継続性を保つため」としている。 今後従業員側と交渉し、閉店の実行は 2022 年初めまでかかる可能性があるという。 国内に 19 店あるプランタンのうち閉鎖の対象となるのは、パリ南部のイタリア広場にある店舗と、東部ストラスブールなど地方都市の 3 店。 (kyodo = 11-11-20)


ルイ・ヴィトン、ティファニー買収で再合意 1.6 兆円

仏高級ブランドのモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン (LVMH) は 29 日、9 月に撤回した米高級宝飾大手ティファニーの買収計画で同社と再び合意したと発表した。 ティファニー側が買収価格の引き下げに応じ、買収総額が 158 億ドル(約 1 兆 6,600 億円)と、前回より約 4 億ドル(約 420 億円)低くなった。 来年早期の買収完了をめざす。 買い取り価格を 1 株 135 ドルから 131.5 ドルに下げた。 コロナ禍で業績が悪化したため、水面下で見直しを交渉していた。

LVMH は昨年 11 月、宝飾品部門の強化を目的にティファニーと買収で合意。 今年 9 月になって買収計画を突然、撤回した。 仏政府から買収期日を延ばすよう助言されたことなどを理由に挙げていた。 ティファニーは、一方的な撤回だとして米裁判所に提訴。 LVMH も逆提訴して泥沼化していたが、両者は今回、和解する。 LVMH のアルノー会長兼最高経営責任者 (CEO) は声明で「ティファニーブランドの強力な潜在力を、これまでになく確信している」などと述べた。 (ロンドン = 和気真也、asahi = 10-30-20)

前 報 (11-25-19)


三陽商会が「クレストブリッジ」初の複合路面店を原宿に出店
基幹ブランドの旗艦店出店強化へ

三陽商会が展開するウィメンズの「ブルーレーベル・クレストブリッジ」とメンズの「ブラックレーベル・クレストブリッジ」が、初の複合路面店「ブルーレーベル/ブラックレーベル・クレストブリッジ 原宿本店」を原宿に 10 月 24 日オープンする。 同社がチャネル戦略で掲げる基幹ブランドの旗艦店出店強化の一環と位置付けており、OMO (Online Merges with Offline) を体現する旗艦店として展開し、EC とリアル店舗を融合した購買体験の提供を目指す。

「クレストブリッジ」は、三陽商会が展開していた「バーバリー・ブルーレーベル」と「バーバリー・ブラックレーベル」の後継ブランドとして 2015 年 6 月にデビューした。 立ち上げ時にはブルーレーベル・クレストブリッジとブラックレーベル・クレストブリッジからそれぞれ原宿に店舗を出店していたが、ビルの老朽化に伴いブルーレーベル・クレストブリッジの原宿店が今年 4 月に閉店。 閉店店舗の売上補完や、直営店の強化を図るために旗艦店の出店を決めた。

新店舗は今年 7 月に閉店した同社が展開するウィメンズブランド「キャスト: (CAST:)」の旗艦店「キャスト: 渋谷店」が入居していたビルに出店。 売場面積は約 298 平方メートルで、店舗デザインはロンドンのホテルレセプションをイメージし、 英国の伝統様式のなかにコンテンポラリーな要素を加えたことでブランドらしさを表現した。 店内には植栽を多く設置し、落ち着きのある空間に仕上げた。 ターゲットは 20 - 30 代の男女に設定し、店頭ではメンズとウィメンズのウェアをはじめ、 アクセサリーや服飾雑貨、生活雑貨、同店限定商品などを販売する。 カップルでの来店にも対応するため、一部のメンズエリアにはペアルックで着用できるよう XS サイズのアイテムを取り揃えたという。

旗艦店ではオンライン接客とショールーミング機能を導入。 オンライン接客では CCC フォトライフラボの接客特化型ライブコマース「ライブトルッテ (Live torutte)」を採用した。 配信者による一方的な発信型ではなく、視聴者と双方向のコミュニケーションを可能にしたライブコマースで、店舗スタッフ対複数の視聴者の接客スタイルや、1 人対 1 人の接客スタイルなどに対応する。 スタッフへの質問も可能で、直接対話しながら実際に店舗で接客を受けているような感覚で商品購入の検討ができるという。

11 月末から導入し、まずは月 1 回のペースで実施していく予定。 ショールーミング機能では、公式オンラインストアの限定商品を旗艦店で試着や購入が可能となった。 オープン時は両ブランド合わせて 23 型の EC 限定商品が店頭に並ぶ。 店内に在庫を置かないため過剰在庫を抑制できるとし、また購入品を配送にすることで手荷物の削減にも繋がるという。

なお、三陽商会では 2015 年に英国バーバリー社とのライセンス契約が終了して以降、業績不振が継続。 2016 年度から 4 期連続で最終赤字を計上しており、今期で 5 年連続での赤字決算となる見通しだ。 今回の新店舗では、同社が進める再生プランのチャネル戦略の中に含まれているオンライン接客とショールーミング機能を導入したことで、直営店の強化とブランド力の向上を図る考えだという。 なお、旗艦店における初年度の目標売上高は非公表としている。 (FashionSnap = 10-23-20)


中国の衣料品生産量、1 - 8 月は 11.95% 減

中国服装協会によると、一定規模(年間の主要業務売上高が 2,000 万元 = 約 3 億 1,340 万円)以上のアパレル企業による 2020 年 1 - 8 月の衣料品生産量は前年同期比 11.95% 減の 134 億 8,100 万枚で、減少幅は 1 - 7 月に比べ 1.47 ポイント縮小した。 衣料品・衣料小物の輸出額は同 12.9% 減の 826 億 900 万ドル(約 8 兆 6,938 億円)で、減少幅は 1- 7 月に比べ 3.7 ポイント縮小。 8 月単月では前年同月比 3.23% 増と、今年に入り初めて増加に転じた。

同協会は「国内の新型コロナウイルス感染抑止によって国内需要は大きく回復し、国際市場の需要回復を受けて輸出もある程度改善している。 ただ通年でみた経済指標はプラス転換しておらず、海外ではコロナ禍が続き、国内外の経済環境は複雑に変化して不確定要素が多い。 中国アパレル産業の持続的回復は依然、一定の圧力に直面している」と指摘した。 (中国新聞/sankei = 10-16-20)


H & M、21 年に 250 店舗閉鎖へ ネット通販強化

【ロンドン = 佐竹実】 スウェーデンのアパレル大手ヘネス・アンド・マウリッツ (H & M) は 1 日、2021 年に全体の 5% にあたる 250 店舗を閉鎖する計画を明らかにした。 ネット通販を強化し、不採算店舗などを閉じて経営を効率化する。 世界のアパレル大手は新型コロナウイルス禍を機に拡大戦略を転換している。 H & M が同日発表した 2020 年 6 - 8 月期の売上高は、前年同期比約 2 割減の 508 億 7 千万スウェーデンクローナ(約 6 千億円)だった。 前の期は新型コロナの感染拡大を受けた店舗閉鎖で売上高が半減したが、都市封鎖の解除とともに回復した。 ヘレナ・ヘルマーソン最高経営責任者 (CEO) は「困難な状況が終わるのはまだ先だが、最悪期は脱した」と述べた。

流行を迅速に取り込む大量生産で拡大してきたファストファッションだが、ここ数年はネット発の新興アパレルなどに押されている。 コロナ禍で消費者のネット志向が強まったこともあり、脱店舗を加速させている。 「ZARA」などを展開するアパレル世界最大手インディテックス(スペイン)は 21 年までに、全体の 16% に当たる最大 1,200 店舗を閉める計画を明らかにしている。 (nikkei = 10-2-20)

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H & M ジャパン 愛知県東郷町など 3 カ所に年内出店へ

海外ファッションブランド大手の H & M (エイチ・アンド・エム/ヘネス・アンド・マウリッツ)の日本法人のルーカス・セイファート社長が、朝日新聞のインタビューに応じた。 日本で新たに愛知県東郷町など 3店を年内に出す計画があるとし、「コロナ禍でも日本は潜在性が高い市場だ。 50 カ所以上の場所に開設余地がある」と話した。

コロナ禍でグループ全体の 2020 年 3 - 5 月期の売上高は前年同期比の 5 割にとどまり、日本でも 52% 減だった。 今後は、ネット通販も強化して、日本での市場拡大をめざすという。 ネット通販強化にあたっては、日本市場向けのカスタマーサービスセンターを今年 3 月、中国・上海から札幌市に移設した。 同氏は「コロナ禍でデジタルシフトは加速する。 日本では特に品質に対する評価が厳しく、よりよいサポートやサービスができるように移設した。」とした。

日本では昨年から今年にかけ、服の標準サイズの見直しを進めている。 袖や裾をやや短くするなどして、「日本人の体形によりあったものにする」という。 H & M の 2019 年 11 月期のグループ全体の売上高は 2 兆 5,600 億円(前期比 11% 増)。 うち、日本では 550 億円(同 9% 増)を売り上げた。 (佐藤亜季、asahi = 7-27-20)


無印良品が衣料品の大幅値下げを実施 コロナ禍で期間限定セールも廃止

無印良品を展開する良品計画は 10 月 1 日、2020 年の秋冬シーズンから日常着を中心とした衣料品 72 アイテムを値下げすると発表した。 また、期間限定セールや週末セールは今後行わないとした。 値引きの対象となるのは自然素材にこだわった衣料品や肌着などの主力アイテム。 値下げは 10 月 2 日から順次行う。

紳士向け商品としては、「縦横ストレッチチノパンツ」や「軽量ポケッタブルノーカラーダウンベスト」をそれぞれ 3,990 円(税込、以下同)から 2,990 円に値下げする。 婦人向けの「クルーネック長袖 T シャツ」は 1,290 円から 990 円に、「首のチクチクを抑えたタートルネック洗えるセーター」は 2,990 円から ,2490 円に値下げする。 婦人・紳士向けとなる「脇に縫い目のない フランネルパジャマ」は 4,990 円から 3,990 円に値下げする。 今回の大幅な価格改定に先立ち、9 月 3 日に大人用靴下(3足 790 円)と子ども用靴下(2 足 490 円)をそれぞれ 3 足 690 円としている。 お客からは好評で、売り上げは伸びているという。

コロナ禍で売れ筋に変化

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、外出時に着用する衣類などの売り上げが低下する一方で、普段使いのアイテムが売れるようになった。 また、同社の幹部によるとコロナ禍の影響で家計が苦しくなったことを受け、客は「うわついた消費をしなくなった」という。 無印良品は毎年のようにさまざまな商品の価格改定を行っているが、2020 年の秋冬シーズン向けには日常的に使用する衣料品の値下げをすることにした。 期間限定セールや週末セールは今後行わない。 一時的に来店者数が増えると店内が「密」な状況になってしまい、お客だけでなく従業員を感染リスクにさらしてしまうためだ。 (IT media = 10-1-20)


伊藤忠とクラボウがタッグ、日本の "サステナブルアパレル連合" 結成を呼びかけ

伊藤忠商事とクラボウは 25 日、環境に配慮した商品開発やビジネスモデルの創出などを目的とした戦略的パートナーシップ契約を締結した。 同時に、伊藤忠はクラボウの海外生産拠点であるタイ・クラボウ(本社タイ・バンコク)株式の一部を取得する。 グローバルな生産、販売体制の連携強化をれぞれの強みであるサステナブル原料とテキスタイル技術を組み合わせた新商品の開発や新規ビジネスの開拓をめざす。 さらに、繊維業界にとって重要課題となっているサステナブル社会の実現にめざす取り組みとなる「アパレル サステナブル コンソーシアム(仮称)」の設立を計画しており、日本の繊維・ファッション企業に幅広く参加を呼びかける。

提携後初の画期的な新商品が近々完成

提携の狙いについて、クラボウ繊維事業部・事業推進部の中川眞豪部長は「繊維素材メーカーが単独でサステナブルな取り組みを行なってもできることには限りがある。 他社との共創をテーマに社会に新たな価値を創出していきたい」と説明する。 同事業部は 1993 年にものづくりの基本姿勢として「ヒューマン・フレンドリー発想」を打ち出し、サステナブルな素材、製品の開発とサービスの提供を行なってきた。 同社独自のアップサイクル技術「ループラス」や原綿改質技術「ネイテック」、サステナブルインサレーション「エアーフレイク」は国内外で高い評価を得ている。 ここ数年はモノ売りからコト売りへとビジネス転換を図り、独自技術を基本とした新規ビジネスの構築をめざしてきた。

一方、原料部隊を有する伊藤忠のファッションアパレル第三部は、オーガニックコットンをはじめ、循環型ポリエステル「レニュー」、最先端セルロース繊維「メッツァ・リヨセル」などのサステナブル原料を中心としたグローバルなバリューチェーンの構築をに力を入れている。 「川中分野が不足している当社にとっては、アセアンに生産拠点を持ち、紡績から織、加工まで技術力の高いクラボウと戦略的パートナーシップを結ぶことで、我々のユニークな原料が生きてくるという狙いがある。 そうしないとなかなかマーケットに受け入れられにくいという思いがあり、互いに意気投合した」と、同社ファッションアパレル第三部の大室良麿部長は振り返る。 今回の契約提携を弾みとし、両社の取り組みを加速度的に進めたい考えだ。

すでに、伊藤忠傘下の「エドウィン」で、クラボウの「ループラス」を採用するほか、「レニュー」のカジュアルウェアやワーキングウェアでも取り組みが始まっているという。 さらに、レニューを採用した中綿素材「エアフレーク」が近々完成予定で、「象徴的な商品として大々的に売っていきたい(クラボウの中川部長)」と意欲を見せる。

今年度内にコンソーシアムの基本構想策定

構想中の「アパレル サステナブル コンソーシアム」は「単独では困難なサステナブル社会の実現をめざし、川上から川下まで繊維業界全体を巻き込んだ初めての試み。(大室部長)」 事務局をクラボウと伊藤忠商事が共同で運営する。 2020 年度内に基本構想をまとめ、同年度末をめどに賛同企業の募集を始める。 パートナー企業は生産、流通、小売など各専門分野の企業・団体を中心に大学・研究機関、マスコミを含めて想定しており、幅広い参画を呼びかける。 3R への取り組みや新技術の創出、新ビジネスモデルの構築、エシカル消費の促進で参画企業と連携を図り、ビジネスを前提とした取り組みで循環型社会の実現をめざす。

繊維業界紙向けの合同取材で、伊藤忠の大室部長は「サステナブル社会の実現にあたってはサプライチェーンの多岐に渡る分野が関与してくるのでコンソーシアムが大きな役割を果たすことになると思う。 世界をリードする日本発のファッション協定につながる取り組みにしていきたい。」と意気込みを語った。 (橋長初代・流通ライター、WWD = 9-29-20)


帝国データバンク調査 : アパレル上場企業の 8 割が売り上げ減 8 月分、コロナ禍に酷暑追い打ち

自粛ムードがある程度緩和されたコロナ禍だが、今も多くの業界に影を落としている。 帝国データバンクが、月次売上高を公開しているアパレル上場企業 24 社について調査したところ、8 月の売り上げが前年同月を下回ったのは約 8 割に当たる 19 社だった。 帝国データバンクは原因について「新たな生活様式による外出機会の減少や、酷暑による客足の低下」を挙げている。

ワークマンなど 5 社のみ前年同月比増

調査は同社が、アパレルなど衣服類販売を手掛けている上場企業、またはその中核企業のうち、公式サイトなどで月次売上高を公表している 24 社の 8 月分全店実績について集計した。 上記の 24 社のうち、8 月売上高(全店ベース)が前年同月を下回ったのは 79.2% に当たる 19 社。 上回ったのはファーストリテイリング、ワークマン、西松屋チェーン、コックス、TOKYO BASE の 5 社となった。 テレワークの影響を受けた紳士服や、コロナ禍で集客減が続く百貨店に入っているアパレルブランドは軒並み苦戦を強いられた。

EC サイト強化間に合わず

売上高の増減度合いに注目すると、8 月分が前年同月比で減少した 19 社のうち 14 社において、7 月時の減少幅(前年同月比)よりもさらに数値が悪化する結果となった。 コロナ禍で小売店舗の集客が悪化する中、アパレル各社は EC サイトなどの販路強化を急いでいる。 ただ、中国などと比べ、実店舗での売り上げ減を補うレベルには至っていないのが現状だ。 (ITmedia = 9-23-20)