エボラ出血熱、コンゴ民主共和国で流行 コロナも拡大中

アフリカ中部コンゴ民主共和国の保健省は 1 日、同国北西部にある都市ムバンダカで、エボラ出血熱の感染者を確認したと発表した。 4 人が死亡し、少なくとも 3 人の感染が確認された。 世界保健機関 (WHO) は同日、「同地域でエボラ出血熱が流行している」として、感染拡大防止へ支援に乗り出した。 WHO によると、コンゴ民主共和国でエボラ出血熱が流行するのは 1976 年に初めて確認されてから 11 度目。 感染すると高熱などで苦しみ、致死率は 30 - 80% に及ぶ。 同国東部の北キブ州などでも 2018 年 8 月から感染が広がって 2,280 人が亡くなり、WHO は昨年 7 月、同地域に「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」を宣言した。

コンゴ民主共和国では新型コロナウイルスの感染も拡大しており、5 月 31 日時点で 3,195 人が感染し、72 人が死亡した。 テドロス・アダノム WHO 事務局長は 6 月 1 日、「今回のエボラ出血熱の発生は、新型コロナだけが人々の健康を脅かすものではないことを思い起こさせる」と訴えた。 (ヨハネスブルク = 石原孝、asahi = 6-2-20)



エボラ出血熱、新薬で生存 9 割に 臨床試験で専門家見解

アフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)で行われているエボラ出血熱の治療薬の臨床試験で、2 種類の新薬のいずれかによって治療を受けた患者の生存率が早期の段階なら 9 割に達することがわかった。 世界保健機関 (WHO) などが 12 日、発表した。 エボラ出血熱は約 5 割と死亡率が高く、有効な治療法も見つかっていない。 コンゴ民主共和国では昨年 8 月から感染が拡大し、これまで約 1,800 人が亡くなっている。 WHO は 7 月、緊急事態を宣言した。

昨年 11 月に始まった緊急の臨床試験では、これまで治療薬の候補と見られていた「ZMapp (ジーマップ)」と呼ばれる薬を含む四つの薬の安全性や効果を調べている。 これまで 700 人近い患者が試験に参加し、499 人分の結果が公表された。 英科学誌ネイチャーによると、米製薬企業 2 社がそれぞれ開発した 2 種の新薬を投与された患者の死亡率はそれぞれ 29%、34% で、ZMapp の 49% や、もう一つの抗ウイルス薬の 53% よりかなり低かった。

ウイルスの血中濃度が低い時点で新薬のいずれかを使うと生存率が上がり、ネイチャーは「早く治療を受ければ 9 割以上の人が死なずに済む」との専門家のコメントを報じている。 ZMapp と今回の新薬 2 種はいずれもモノクローナル抗体と呼ばれる薬で、エボラウイルスにくっつき、ウイルスが人間の細胞に入るのを防ぐ働きが期待されている。 (勝田敏彦、asahi = 8-14-19)


コンゴのエボラ流行で「緊急事態宣言」、史上 5 度目 WHO

世界保健機関(WHO)は17日、コンゴ民主共和国で流行が続くエボラ出血熱について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態 (PHEIC)」を宣言した。 PHEIC が宣言されるのは史上 5 度目。 コンゴでは、これまでに 1,600 人以上が死亡している。 WHO のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長はこの日、スイス・ジュネーヴでの記者会見で、「世界が留意すべき時だ」と述べた。

コンゴでは今週に入り、人口 100 万人以上の東部ゴマでも症例が確認された。 今回の流行で、ゴマで感染者が確認されたのは初めて。 ゴマは、コンゴとルワンダ国境の街で、主要な交通の拠点となっている。 WHO は、隣国への感染拡大のリスクは「非常に高い」と警告している。 ウガンダでは、5 歳の男児と 50 歳の祖母の死亡が確認されている。

史上 5 度目の緊急事態宣言

PHEIC とは、最も深刻なレベルの流行を対象とした警告。 2014 年から 2016 年に西アフリカで 1 万 1,000 人以上が死亡した、エボラ出血熱流行など、これまでに 4 度しか出されていない。 国際赤十字・赤新月社連盟 (IFRC) は声明で、「エボラの被害者や、エボラ感染への対応にあたる人たちの、現地の実情をこの宣言で変えることはできないが、この宣言によって世界の注目が集ることを望んでいる」と述べ、WHO による緊急事態宣言を評価した。

コンゴでのエボラ流行はどれほど深刻なのか

北キヴ州とイトゥリ州では、昨年 8 月以降、エボラの感染が拡大している。 史上 2 番目に深刻な状況とされる。 これまでに 2,500 人以上が感染し、そのうち 3 分の 2 にあたる 1,600 人以上が死亡した。 224 日間で、症例数は 1,000 件に達し、それからわずか 71 日後には、2 倍の 2,000 件にまで上った。 毎日、約 12 件の新しい症例が報告されている。

ワクチンは一部の人のみ

エボラワクチンは西アフリカでのエボラ流行中に開発された。 その効果は 99% とされ、すでに 16 万 1,000 人以上が接種している。 しかし、誰もが予防接種を受けているわけではない。 接種を受けるのは、エボラ感染者と接触する医療従事者などに限定される。

なぜ流行を食い止められていないのか

コンゴでのエボラ感染拡大への対策をめぐっては、状況は難航している。 理由は、治安の悪化だ。 今年 1 月以降、医療従事者やエボラの治療施設などへの襲撃が 198 件発生しており、7 人が死亡、58 人が負傷している。 別の大きな問題は、地元の人々が医療従事者へ不信感を抱いているということだ。 これまでの死者の 3 分の 1 は、治療施設以外の場所で命を落としている。 つまり、治療を求めず、近隣住民や親族に感染するリスクを冒していることになる。 さらに、エボラウイルスの感染経路をたどるのも難しいのが現状だ。 相当数の症例で、感染者との接触が確認できていない。

I国際医療 NGO 「国境なき医師団 (MSF)」のトリシュ・ニューポート氏は、「エボラの発生から 1 年たったが、状況は少しも改善されていない」と述べた。 「暴力や紛争が長く続いてきた複雑な場所だ。 それだけに、地域以外から来る外国人への不信感は根強い。 我々が信頼してもらうためには、地域社会との関係や結びつきを築かなければならない。」

資金不足

WHO は数カ月前から、エボラ対策に必要な資金が不足していると公表している。 今年 2 月から 7 月までの間に必要な資金について WHO は、9,800 万ドル相当(約 106 億円)と見積もっていたが、結果的に 5,400 万ドルが不足している。 (BBC = 7-18-19)


エボラ熱、WHO が緊急委開催へ ウガンダに拡大

【ジュネーブ】 世界保健機関 (WHO) は 12 日、コンゴ(旧ザイール)東部で流行しているエボラ出血熱の隣国ウガンダへの拡大を受け、専門家による緊急委員会を 14 日にジュネーブで開くと発表した。 「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に当たるかどうか判断する。 緊急事態が宣言されれば 2016 年 2 月のジカ熱以来となる。

WHO によると、コンゴでの感染者は疑い例を含めると 2 千人を超え、約 1,400 人が死亡。 隣国への感染拡大が懸念されていたが、今月 11 日、ウガンダで感染者が確認された。 コンゴ政府が 18 年 8 月にエボラ熱の流行を宣言後、WHO が緊急委を開くのは 3 回目。 過去 2 回は緊急事態に当たらないとし、渡航や貿易の制限措置も取らなかった。 (kyodo = 6-13-19)


エボラ出血熱、死者 1 千人超す 現地は医療施設の襲撃も

アフリカ中部のコンゴ民主共和国東部でエボラ出血熱が流行している問題で、現地の保健省は 3 日、昨年 8 月からの死者数が千人を超えたと発表した。 現地の治安が悪化しており、感染の封じ込めを妨げているという。 AP 通信によると、イルンガ保健相は同日夜、疑いも含めたエボラ出血熱による死者が 1,008 人に上ったと説明。 2014 年に西アフリカのリベリアなど 3 カ国で流行し、1 万人以上の感染者が亡くなって以来、最多の死者数になっている。

世界保健機関 (WHO) などによると、感染者はコンゴ民主共和国東部の北キブ州などで拡大。 周辺は鉱物資源を収入源とする多数の武装勢力が乱立しており、医療物資などの搬送が滞る地域もあるという。 医療従事者を狙った襲撃事案も今年 1 月から 119 件発生し、42 件は医療施設が襲撃された。 医療従事者の殺害に至るケースも出ている。 襲撃を恐れ、医療施設ではなく、自宅にとどまる感染者もいるという。 国境を接しているルワンダやウガンダも警戒を強めており、すでにワクチンを配布しているという。 (ヨハネスブルク = 石原孝、asahi = 5-4-19)