医薬品の誇大広告に課徴金、売上の 4.5% 厚労省方針

虚偽・誇大広告など不当な方法で医薬品を販売した製薬企業に、売上額の 4.5% を課徴金として納付させる方針を厚生労働省が決めた。 今国会に提出予定の医薬品医療機器法(薬機法)改正案に盛り込む。 製薬大手ノバルティスの高血圧治療薬ディオバンの論文不正事件を受け、虚偽・誇大広告によって得た不当な利益を徴収する必要性が議論されてきた。 欧米の制度を参考に、厚労省の検討会で昨年、課徴金制度の導入方針が決まった。

現在の法に違反した場合には、刑事罰が科されても罰金の最高額は 200 万円。 医薬品の中には年間の売上額が 1 兆円を超えるものもあり、課徴金が導入されると、数百億円規模の課徴金の納付が命じられる可能性もある。 課徴金の納付命令は厚労省が企業などに出す。 金額は対象製品の売り上げの 4.5%。 期間は、虚偽・誇大広告を行っていた期間に半年を加えたもの。 広告をやめても半年間は影響があるとみているためという。

虚偽・誇大広告の抑止が目的なので、医薬品の製造や販売の許可の取り消し処分を受け十分な抑止効果があると判断した場合や、保健衛生上の影響が軽い場合は納付命令を出さないこともある。 売上額が 5 千万円に満たない場合は対象外とし、自ら違反を報告した場合は課徴金を半額にする。 (姫野直行、asahi = 3-12-19)


サルで子宮移植の実験、人での実施めざす 東京女子医大

子宮がなくても子どもを産みたい女性に、子宮を移植することをめざして、東京女子医科大の加藤容二郎助教(腎臓外科)らのグループが、サルでの子宮移植の動物実験を始めたことがわかった。 将来的に人間で安全に行えるよう、手術方法や免疫抑制剤の使い方などを確認する。 子宮移植は、生まれつき子宮がないロキタンスキー症候群や、がんで子宮を摘出した女性が、妊娠、出産できるようにと考案された。 欧米などで少なくとも 58 例行われ、14 人の子どもが生まれたが、日本ではまだ例がない。 ロキタンスキー症候群やがんで子宮を摘出した女性は、国内に 20 - 30 代だけで推計 5 万 - 6 万人いる。

加藤助教らの計画は、子宮がない状態にしたメスのカニクイザルに、別のカニクイザルから摘出した子宮を移植する。 体外受精した受精卵を入れて、妊娠、出産をめざす。 2 月、1 例目の実験を始めた。 妊娠、出産を目的とする子宮移植は、心臓や腎臓をはじめ患者の命を救う目的の臓器移植とは異なる。 人間の場合、そうした移植が妥当なのか倫理面の課題がある。 国際産科婦人科連合は、臨床研究の前にサルなどの動物で十分に実験を行うべきだとしている。

加藤助教は、臨床研究の実施については未定で、倫理面など多くの課題を解決する必要があるとしつつ、「日本で子宮移植ができるようになれば、子宮がない女性や家族が前向きになるきっかけになりうる」と意義を話す。 サルでの実験を重ねている慶応大は昨年秋、ロキタンスキー症候群の女性を対象とした臨床研究の計画案を、日本産科婦人科学会などに提出。 関係学会などは今後、子宮移植について倫理面から議論する方針だ。 (福地慶太郎、asahi = 3-6-19)


命めぐる決断に寄り添えるか 新出生前診断、条件緩和

「新型出生前診断 (NIPT)」を、現在より多くの医療機関で受けられるようにする。 条件緩和を決めた日本産科婦人科学会(日産婦)は、学会ルールを守らない認可外施設で検査を受けるカップルを減らすためだと意義を強調した。 NIPT は結果次第で命をめぐる重い決断を迫られる。 緩和してもカウンセリングの質が担保できるのか、危ぶむ声もある。

2 日に東京都内で開いた理事会後に会見した、日産婦の苛原稔・倫理委員長は「認可外が不適切な検査をして、多くの問題が報告されている」と指摘。 条件を緩和し、検査施設が増えることでカップルが検査を受けやすくなり、「認可外に行く人は減ると思う」と説明した。 藤井知行理事長は「NIPT は検査の値段が高いからこそ、いろいろな施設が参入したがっている」と述べた。 そのうえで、学会が認める検査施設の検査費用を下げる努力をして、費用面でも認可外での検査に歯止めをかけたい考えを示した。

新設する「連携施設」でのカウンセリングが適切に行えるのかを問われると、苛原氏は、専門性を持つ高いレベルでカウンセリングができなければ、検査施設として認めないと説明。 現在は検査施設がひとつもない県があることや、認可外で相当数の検査が行われている現状を踏まえ、「この仕組みがベストだと思っている」と話した。 (大岩ゆり、福地慶太郎、asahi = 3-2-19)

前 報 (3-19-18)


薬 10 種類服用、手が震え失神 … 実は副作用? 医師が警鐘

高齢になると、複数の病気にかかることが多くなり、薬の種類や量が増えがちだ。 一方、若いころに比べ、薬を分解、排泄する体の機能は衰え、転倒や物忘れなどの副作用が出やすくなる。 医師や薬剤師によく相談することが大切だ。 奈良県に住む 80 代の認知症の女性は、ときおり気を失うようになった。 ある日、手が震えていることに家族が気付いた。 診察したやわらぎクリニック(奈良県三郷町)の北和也副院長(総合診療科)は、薬の副作用を疑った。

認知症に加え、不整脈や高血圧の薬など 10 種類を使っていた。 手の震えは不整脈の薬によって、気を失うのは高血圧の薬(降圧薬)の効きすぎで低血圧になったことで、起こされた可能性があった。 そこで家族と相談。 2 年かけて 4 種類に減らした。 気を失うことは少なくなり、手の震えはおさまったという。

複数の薬を使っている高齢者は多い。 全国の薬局調査では 75 歳以上の 4 割で 5 種類以上の薬が出されていた。 薬が 6 種類以上になると、副作用が増えるという報告もある。 だが、薬の副作用として、ふらつきや転倒、物忘れ、うつ、食欲低下、便秘などがあっても、これらは高齢者によくみられる症状のため、見過ごされがちだ。 ふらふらして転びやすい人のなかには、睡眠薬や降圧薬、抗うつ薬などの副作用が疑われることがある。 (編集委員・瀬川茂子、asahi = 2-8-19)


子宮頸がんの患者増加 治りにくいタイプ、若者に広がる

子宮頸(けい)がんの患者数が 2000 年ごろから増えているとする研究結果を、大阪大などのチームがまとめた。 治療が効きにくいタイプの子宮頸がんも、若い世代で増えているという。 米専門誌に掲載された。 阪大の上田豊講師(産婦人科)らは、1976 - 2012 年の大阪府がん登録データを使い、約 2 万 5 千人の子宮頸がんの患者について、高齢化による影響を調整したうえで分析した。

人口 10 万人あたりの罹患(りかん)率は、1976 年は 28.0 人だったが、減少傾向となり、00 年は 9.1 人になった。 がん検診が普及し、がんの前段階で見つかって治療する人が増えたことなどが原因として考えられるという。 しかし、00 年以降は増加に転じ、12 年は 14.1 人になった。 性交渉の低年齢化などを指摘する声もあるが、原因ははっきりしないという。

子宮頸がんはヒトパピローマウイルス (HPV) が原因となることが多く、性交渉によって感染する。 なかでも「18 型」というタイプのウイルスが主な原因となる「腺がん」は見つかりにくく、治りにくいとされるが、30 代以下の若年層で増えていた。 最も早い段階で見つかった場合、治療法は手術か放射線治療が一般的だが、若年層では放射線治療が効きにくいこともわかった。 (asahi = 2-5-19)


スギ花粉、伐採せず減らせる? 油を使った撃退法が誕生

今年もスギ花粉が飛ぶ季節がやってきた。 花粉症対策として、スギ花粉を飛ばさない研究が東京農業大学や森林総合研究所で進んでいる。 油由来の成分や微生物で雄花を枯らす方法だ。 スギ林伐採や植え替えに比べて人手や費用、時間がかからない。 東京農大の小塩海平教授が民間企業と共同開発したのは、天然油脂に由来する花粉飛散防止剤だ。 夏から初秋にスギの若い雄花に吹きかけると雄花だけが枯れ、翌春に飛ぶ花粉が 9 割も減らせた。

小塩教授は 25 年以上前から、試行錯誤を重ねてきた。 粘り気ある液体で花粉を固めようと、松ヤニや海藻のヌルヌル成分「アルギン酸」などに、雄花を漬け込んだ。 花粉は固まらなかったが、サラダ油に漬けた雄花が枯れた。 微量のサラダ油を混ぜた溶液をヘリコプターでスギ林にまく実験で効果を確認した。 (小堀龍之、asahi = 2-5-19)


血液数滴でめざす「がん超早期発見」 高精度との報告も

わずか数滴の血液で、極めて早期に 13 種類のがんを診断する技術の研究が進んでいる。 すでに、がんを判別する手がかりになる、血液中の「マイクロ RNA」の組み合わせを特定した。 目指しているのは、がん検診での実用化だ。 さまざまな生体機能を調節しているマイクロ RNA は、細胞の発生やがん化などに深く関わっているとされる。

がん細胞から分泌されたマイクロ RNA は、直径 100 ナノメートル前後の小胞体「エクソソーム」に守られており、血液中でも分解されにくい。 「がんが小さい段階でも分泌されるため、これを捉えることでがんを早期に見つけられる。」 国立がん研究センター研究所の落谷孝広・分子細胞治療研究分野プロジェクトリーダーは言う。

同センターや国立長寿医療研究センターなどを中心に、血液などに含まれるマイクロ RNA を測定し、がんを発見する技術を開発する 5 年計画の研究を 2014 年度から進めている。 落谷さんは研究を率いており、日本人に多い胃がんや大腸がん、肺がん、肝臓がん、乳がんなどの早期発見、死亡率の改善や医療費の削減を目指す。 検査用キットを開発する東レや東芝なども参加。 産官学の国家的な事業に位置づけられている。

現在、がん検診で行われている、肺がんのエックス線検査や乳がんのマンモグラフィー検査などは、がんがある程度大きくならないと発見することが難しいとされる。 また、血液検査の「腫瘍(しゅよう)マーカー」は早期発見には適していない。 がん患者の経過観察や治療効果を判定する際に利用されているが、細胞のがん化に伴って出てくる物質を調べるため、がんの初期では陰性と判定されることも多い。 (佐藤建仁、asahi = 2-3-19)


インフル患者 222 万人、1999 年度以降で最多 全都道府県で警報レベル

厚生労働省は 1 日、全国約 5,000 の定点医療機関から報告されたインフルエンザの患者数が、1 月 21 - 27 日の 1 週間で 1 医療機関当たり 57.09 人になったと発表した。 前週(53.91 人)から増加し、現在の方法で統計が始まった 1999 年度以降で最多となった。 この 1 週間で受診した患者数は約 222 万 6,000 人と推計される。

都道府県別では、多い順に、▽ 埼玉 84.09 人、▽ 新潟 77.70 人、▽ 千葉 73.00 人、▽ 宮城 69.81 人、▽ 神奈川 67.94 人。 東京(64.18 人)と大阪(47.99 人)を含む 31 都道府県で前週より患者数が増えた。 全ての都道府県で、流行の警報レベルを超えている。 根本匠厚労相は同日の閣議後記者会見で「外出後の手洗いや、せきエチケットなどの予防策に努めてほしい」と呼びかけた。 (熊谷豪、mainichi = 2-1-19)

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インフルエンザ患者が急増 全国で「警報レベル」に

インフルエンザの患者が急増している。 厚生労働省は 18 日、全国 5 千カ所の定点医療機関から報告された直近 1 週間(1 月 7 - 13 日)の 1 医療機関あたりの患者数が 38.54 人となったと発表した。 大流行の発生・継続が疑われる「警報レベル」とされる 30 人を今季初めて上回った。 警報レベルに達したのは、昨季より 1 週間早い。

直近 1 週間の全国の推計患者数は、約 163 万 5 千人で、前週より 100 万人以上増えた。 冬休みが終わり、学校も再開したが、休校や学年・学級閉鎖をした保育所や幼稚園、小中高校は、583 施設に上った。 都道府県別で最も多いのは愛知で 75.38 人。 次いで、熊本(58.79 人)、岐阜(53.94 人)、鹿児島(52.34 人)、静岡(52.22 人)、福岡(51.87 人)、高知(50.19 人)、長崎(48.66 人)が続いた。 東京(41.71 人)や大阪(36.81 人)でも 30 人を超え、計 32 都道府県が警報レベルに達した。 (水戸部六美、asahi = 1-18-19)

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インフルエンザ流行、全国的に注意報レベル超え

厚生労働省は 9 日、今冬のインフルエンザの全国的な流行が、今後 4 週間以内に大流行となる可能性を示す注意報レベルを超えたと発表した。 全国約 5,000 の定点医療機関での 1 週間の患者が、1 医療機関当たり 10 人を超えるのが目安。 最新の 1 週間の集計(昨年 12 月 24 - 30 日)で 11.17 人になった。 この 1 週間の推計患者数は約 45 万人。

都道府県別では、1 医療機関当たり患者が 10 人を上回ったのは 13 都道府県で、多い順に、▽ 北海道 32.07 人、▽ 愛知 30.45 人、▽ 岐阜 20.33 人、▽ 熊本 14.53 人、▽ 三重 13.68 人、▽ 福岡 13.59 人、▽ 長野 12.78 人、▽ 東京 11.53 人、▽ 高知 11.23 人、▽ 神奈川 11.21 人、▽ 大阪 11.01 人、▽ 長崎 10.47 人、▽ 埼玉 10.02 2人。 このうち北海道と愛知は、大流行中の目安となる警報レベル(30 人)を超えている。 (野田武、mainichi = 1-9-19)

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インフル「流行入り」 H1N1 型の検出最多

厚生労働省は 14 日、インフルエンザが流行入りしたと発表した。 今月 3 - 9 日に全国約 5,000 の定点医療機関から報告された患者数が、1 か所当たり 1.70 人となり、流行の目安である 1 人を超えた。 流行入りの時期は例年並み。 発表によると、報告患者数は 8,438 人。 都道府県別で最多は香川(4.00 人)で、北海道(3.96 人)、愛知(3.43 人)、和歌山(2.90 人)、鹿児島(2.76 人)と続く。 全国の推計患者数は約 6 万人。

現在検出されているウイルスは、A 型の一種で 2009 年に新型として流行した H1N1 型、A 香港型、B 型の順に多い。 例年は 1 月下旬から 2 月上旬が流行のピークとなる。 川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は「せきが出る人はマスクの着用を心がけて。 特に重症化しやすい高齢者は早めにワクチンを接種し、予防してほしい。」と呼びかけている。 (yomiuri = 12-14-18)


「フリマアプリ」に出没、緊急避妊薬 T シャツ装って …

「即日発送」、「フリマアプリ対応」。 インターネットで「緊急避妊薬」、「アフターピル」と検索すると、売買を持ちかける SNS 上の書き込みが多数出る。 緊急避妊薬は、性交後 72 時間以内に飲むことで妊娠の可能性を大幅に低くする。 出血や頭痛など副作用の可能性がある。 日本では 2011 年に承認された。 医師の処方箋が必要だ。 (荒ちひろ、稲垣千駿、asahi = 2-1-19)

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緊急避妊薬「スマホ処方」検討へ 性交後 72 時間に壁

避妊に失敗したり拒否されたりした女性が、望まない妊娠を避けるためにのむ緊急避妊薬について、厚生労働省の検討会がオンライン診療で手に入れやすくする議論を始める。 医師と対面しての初診が原則今は必要だが、これを不要としスマートフォンなどを使っての処方を可能にするか - -。 23 日から始まるオンライン診療の指針見直しの検討会で話し合う。

緊急避妊薬は自由診療になるが処方箋(せん)をもらうため医療機関を受診する必要がある。 一方、性交後 72 時間以内にのまなければならず、入手しづらいとの指摘がある。 人目が気になって受診をためらったり、休診や仕事のために受診できなかったりするためだ。 欧米の多くの国では処方箋なしで買え、国内でも市販薬にすることを求める意見は多い。 厚労省の検討会で 2017 年に議論されたが、欧米に比べて性教育が遅れていることや悪用や乱用の恐れを理由に認められていない。 (姫野直行、松本千聖、asahi = 1-22-19)


ロボが薬剤を運びます 看護師不足でメーカーの開発本腰

看護師不足に悩む病院をロボットや AI (人工知能)で助けようと、大手電機メーカーが開発に本腰を入れ始めた。 病院ならではの業務の省力化に向けて、各社が取り組みを加速させている。 川崎市の聖マリアンナ医科大学病院では昨年 12 月中旬から今月 11 日まで、検体や薬剤をロボット「Relay (リレイ)」が運ぶ実証実験が行われた。 薬剤は、エレベーターもはさんで別棟まで約 130 メートル運ばせた。 手がけたのは NEC の子会社、NEC ネッツエスアイ(東京)だ。

病院で薬剤や検体を運ぶ業務は専門スタッフが担っているが、夜間や緊急時は看護師が対応せざるを得ないことも多い。 看護師の負担軽減や業務の効率を高めるために、米ベンチャーが開発し、すでにホテルで客室に備品を運ぶなどの用途で実用化されている Relay を医療現場に応用。 薬剤をすり替えられたりしないよう、荷物を入れるケースは専用のカードを使わなければ開閉できないように改良して安全性を高めた。

「操作面は使いやすいと評価された。 改善要望を受けた点もあるので、検証結果を踏まえて実用化をめざしたい。」と NEC ネッツエスアイ広報は話す。 パナソニックも病院で薬剤などを運ぶロボット「ホスピー」を開発。 2013 年に改良発売し、現在は全国で 15 台が稼働している。

看護師が患者の様子を書きとめる「看護記録」に注目するのが富士通研究所だ。 患者と医師らが交わした会話をもとに、医療に特化した音声認識 AI によって、体温や病状などを記録することができるようにする。 医師や看護師が胸などにつけられるよう、端末を縦 7.5 センチ、横 9.5 センチ、幅 1 センチ弱、重さ 65 グラムのカード状に小型化。 3 月までに医療機関で実証実験をする予定だ。 厚生労働省の試算では、25 年には看護職員が全国で 3 万 - 13 万人ほど不足するという。 ロボットや AI などによる病院業務の合理化は、これから本格的な商機を迎えそうだ。 (北川慧一、asahi = 1-20-19)


ノロウイルス 13 人が食中毒 総菜店のオードブルを食べ 熊本県小国町

ノロウイルス

記事コピー (asahi = 12-20-16 〜 1-18-19)


がん患者、2016 年は延べ 99.5 万人 初の全数調査

厚生労働省は 17 日付で、2016 年に全国で新たにがんと診断された患者は延べ約 99 万 5 千人と発表した。 全国の医療機関に情報提供を義務づける全国がん登録に基づく、初の全数調査。 「詳細な分析ができるようになる。 がん対策に生かしたい。」と厚労省の担当者は言う。 これまでの都道府県レベルのがん登録は地域がん登録と呼ばれ、病院の参加や患者の届け出が任意だったため、データの精度には地域差があった。 2013 年に成立したがん登録推進法で、全国約 1 万 3 千施設の情報を国が一元管理することになり、16 年 1 月から登録が始まった。

違う部位でがんがみつかれば複数の患者と数える。 16 年の延べ数は男性 56 万 6,575 人、女性 42 万 8,499 人、性別不詳 58 人の計 99 万 5,132 人。 15 年調査の 89 万 1,445 人(男性 50 万 1,926 人、女性 38 万 519 人)より、10 万 3,687 人増えた。 国立がん研究センターの若尾文彦・がん対策情報センター長は増加について「法律で義務づけられたことが大きい。 国が一元管理することで分析も早くできるようになる。」と話した。

部位別にみると、男性は胃(9 万 2,691 人)、前立腺(8 万 9,717 人)、大腸(8 万 9,641 人)、肺(8 万 3,790 人)、肝臓(2 万 8,480 人)の順。 上位 5 つの部位で 67.8% を占めた。 14 年時に 4 位だった前立腺は 15、16 年は 2 位に。女性は乳房(9 万 4,848 人)、大腸(6 万 8,476 人)、胃(4 万 1,959 人)、肺(4 万 1,634 人)、子宮(2 万 8,076 人)の順で 64.2%。 男女合計では大腸(15 万 8,127 人)、胃(13 万 4,650 人)、肺(12 万 5,454 人)、乳房(9 万 5,525 人)、前立腺(8 万 9,717 人)の順だった。

年齢別では全体の 42.5% を 75 歳以上が占め、65 - 74 歳は 31.3%。 45 歳未満 4,7% と高齢者に多い。 ただ、女性の乳がんは 30 代から増え始める。 乳がん患者が増えている背景には、飲酒や運動不足の影響が指摘されているという。 男性の前立腺がんは 50 代から増え始め、70 代でピークを迎えた。 前立腺がんの増加について、厚労省の担当者は「今までは届け出がなかった早期がんが含まれるようになった可能性がある」と言う。 (黒田壮吉、月舘彩子、asahi = 1-17-19)


がんのリスク「飲酒・喫煙」で↑ 遺伝子レベルで裏付け

がんの原因になりうる「遺伝子の変異」は、健康な人でも多く起き、それは加齢や飲酒、喫煙によって増える - -。 そんな研究報告を、京都大や東京大などのチームがまとめた。 加齢や飲酒、喫煙が、がんのリスクを高めることは統計学的な傾向で明らかになっているが、遺伝子レベルでも裏付けられた形だ。 英科学誌ネイチャー電子版に 3 日、掲載される。

チームは、喫煙や飲酒とがんの関連が大きいとされる「食道」に着目。 23 - 85 歳の食道がん患者を含む 134 人について、がんになっていない「正常な食道の組織」を採取。 自身の血液細胞の遺伝子と比較し、遺伝子の変異がどれほど起きているか、網羅的に調べた。

すると、134 人のうち食道がんの患者は全員で、健康な場合も 94% の人で、何らかの遺伝子の変異がみられた。 がん患者かどうかにかかわらず、変異の数は加齢に伴って増加。 飲酒や喫煙の習慣がある人は、ない人に比べて、変異の数が増すペースが統計的に有意に高まっていた。 がんとの関連が深いとされる「がん関連遺伝子」でも、同様の傾向がみられた。

ただし、がん細胞で一般的にみられる遺伝子変異のパターンとは異なる部分もあったという。 チームの小川誠司・京都大教授(腫瘍生物学)は今回の研究成果について「がんの初期の発生を解き明かす大きな手がかりだ。 一方で、(正常な細胞が)がんになるにはまだ段階があり、飲酒や喫煙をしない人はそれほど心配することはない」と話す。 (野中良祐、asahi = 1-3-19)


風疹の予防接種、男性 3 年無料に 免疫ない 39 - 56 歳

首都圏を中心に流行する風疹の予防接種について、厚生労働省は 11 日、免疫がない 39 - 56 歳の男性を 3 年間、原則無料の定期接種の対象にすると発表した。 事業規模は、地方負担分含めて約 60 億円。 抗体検査を受け、免疫が十分ではないと判明した人に限る。 来春にも始める。 1962 年 4 月 2 日 - 79 年 4 月 1 日に生まれた男性が対象で、約 1,610 万人いる。 期間は 21 年度末まで。 抗体検査も同じ対象者が無料になる。

平日の昼間は働いている人が多いことから、厚労省は、職場健診で抗体検査が受けられるよう企業に協力を呼びかける。 検査費用は企業の負担にはならない。 夜間・休日に検査や予防接種を受けやすくするための体制整備もする。

国立感染症研究所によると、風疹の今年の患者数は 5 日時点で 2,454 人。 3 分の 2 は 30 - 50 代の男性という。 定期接種は現在、1 歳と小学校入学前 1 年間の計 2 回。 ただ、制度変更の影響で 39 - 56 歳の男性は定期接種を一度も受けておらず、抗体保有率は他の世代や女性に比べて低く、約 80% にとどまる。 厚労省は感染拡大を防ぐため、東京五輪・パラリンピックがある 2020 年までに、この年齢層の抗体保有率 85% を目指す。 さらに根本匠厚労相は「今後、同様の感染拡大が起こらないように対策をさらに進め、21 年度末までにこの世代の男性の抗体保有率を 90% 以上に引き上げることを目指します」としている。

風疹は、気付かないまま感染を広げてしまうことが少なくない。 妊娠初期の女性がかかると赤ちゃんに難聴や心疾患などの障害が出るおそれがある。 (黒田壮吉、asahi = 12-11-18)

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風疹患者 1,100 人、昨年の 12 倍に 職場で集団接種も

関東を中心に風疹の流行が続いている。 今年に入ってからの患者数は 1,103 人となり、昨年 1 年間の約 12 倍に上る。 患者の中心は 30 - 50 代男性だ。 時間のない働き盛り世代のため、職場で集団予防接種をする企業も出ている。 患者が増え始めたのは 7 月下旬。直近では 5 週連続で 100 人超の患者が出た。 特に多いのが東京、千葉、神奈川、埼玉など首都圏。 そのほか愛知や大阪、広島、福岡などでも患者が発生。 今年、風疹患者が出ていないのは、7 日までの報告で、佐賀や長崎など九州を中心に 7 県のみだ。

風疹はウイルス性の感染症で、くしゃみやせきなどのしぶきでうつる。 潜伏期間は 2 - 3 週間。 発熱や発疹、リンパ節の腫れが主な症状だ。 発疹がでる 1 週間前から、人に感染する。 妊娠初期の女性がかかると、赤ちゃんに難聴や心疾患などの障害が出るおそれがある。 1 万 6 千人超の患者が出た 2012 - 13 年の大流行では、45 人の赤ちゃんに障害が出て、うち 11 人が亡くなった。 発熱などの症状を和らげる対症療法以外に治療法はなく、ワクチンで感染を防ぐほかない。

ワクチンは 1 回接種だけでは免疫がつかない人が 5% いる。 2 回接種でより高い効果が得られる。 接種歴が不明で、抗体検査の時間がない場合も、免疫がすでにある人が再度接種しても副反応などの問題はない。 子どもの頃の接種歴は母子手帳に書いてある。 大人になったら自分で保管することが大切だ。 また妊娠中は予防接種が受けられないので、女性は妊娠の 2 カ月前までに済ませておく必要がある。

今年の風疹患者の約 7 割は、働き盛りの 30 - 50 代男性だ。 この世代は予防接種の制度変更の影響で、抗体保有率が低い。 13 年の流行時は 20 - 60 歳の患者のうち、男性の 7 割弱、女性の 4 割弱が職場で感染した。 社内での感染を防ぎ、従業員やその家族の健康を守ろうと、ロート製薬は全従業員約 1,700 人を対象に、希望者に無料で予防接種を始めた。 (水戸部六美、asahi = 10-21-18)

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風疹患者が関東で急増 … 千葉・東京が群を抜く

関東地方で患者が増えている風疹について、国立感染症研究所(感染研)は 28 日、今月 19 日までの 1 週間で新たに 43 人増え、今年に入り全国で計 184 人になったと発表した。 数十人規模で患者が急増するのは、国内では大流行した 2012 - 13 年以来。 専門家は注意を呼びかけている。 都道府県別の患者数は、千葉県 62 人(前週比 20 人増)と東京都 47 人(同 8 人増)が群を抜いて多く、神奈川県や埼玉県などでも増えている。 予防接種の機会が少なく、免疫がない 30 - 50 歳代の男性が多い。

風疹の症状は発熱や発疹などだが、症状が出ない人も 3 割程度いる。 くしゃみやせきなどで感染し、潜伏期間は 2 - 3 週間ある。 妊娠初期の女性が感染すると、先天性風疹症候群の赤ちゃんが生まれ、心疾患や難聴、白内障などの障害が出る恐れがある。 予防には 2 回のワクチン接種が有効だが、妊婦は受けられない。 感染研の多屋馨子(けいこ)・感染症疫学センター第 3 室長は「妊婦の周囲の人、パートナーはワクチン接種など予防策をとってほしい」としている。 (yomiuri = 8-28-18)

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風疹が流行する兆し 厚労省、予防接種の徹底を呼びかけ

風疹が流行する兆しがあるとして、厚生労働省は 14 日、予防接種の徹底などを呼びかける通知を全国の自治体に出した。 予防接種率が低い 30 - 50 歳代の男性に患者が多い。 通知は、全国の患者数が 1 万人を超えた 2013 年以来 5 年ぶり。 厚労省によると、5 日までの 2 週間の患者数が 38 人に達し、千葉県など関東地方を中心に急増している。 今年の累積患者数は 96 人で、すでに昨年 1 年間の 93 人を超えた。 夏休みなどで多くの人の往来が見込まれることから、今後さらに感染が広まる恐れがある。

今年の患者は男性が 7 割を占め、特に 30 - 50 歳代に多い。 1994 年まで中学生の予防接種は女子に限られたため、この世代には免疫がない男性が多いことが影響しているという。 風疹は、せきやくしゃみを通して感染する。 2、3 週間後に熱や発疹、リンパ節の腫れなどの症状が出る。 妊娠初期の女性が感染すると、赤ちゃんにも感染して先天性の心疾患や難聴、白内障などを引き起こす危険性がある。 (黒田壮吉、asahi = 8-14-18)

参照記事 (1-15-14)


75 歳以上の医療保険料の軽減特例、来秋廃止で検討へ

政府は、75 歳以上が加入する後期高齢者医療制度で低所得者の保険料を軽減している特例を、来年 10 月の消費増税時に廃止する方向で検討に入った。 特例廃止で社会保障費は年約 600 億円削減できると見込む。 来年度は半年分の約 300 億円で、薬の公定価格(薬価)引き下げなどと合わせ、6 千億円と見込まれる来年度の社会保障費の伸びを 5 千億円未満に抑える。 後期高齢者医療制度は、低所得者の保険料を 7 割軽減する仕組みとなっているが、収入に応じてさらに最大 9 割まで軽減する特例がある。 ともに年金収入が 80 万円以下の夫婦 2 人暮らしなら保険料は 9 割軽減され、全国平均で 1 人月 380 円だ。

政府は現在進めている来年度予算編成で、この特例を消費増税時に廃止することを検討。 消費増税による増収分を使った低所得者の介護保険料軽減や低年金者への給付を併せて実施することで、特例廃止による「負担増」が相殺されると見込む。 また、相殺されない場合でも負担増を防ぐ仕組みを早急に検討する。 政府の社会保障制度改革推進本部は 2016 年 12 月、特例を 17 年度から段階的に廃止すると決定。 17 年 4 月の消費税率 10% への引き上げに伴う増収分で低所得高齢者の負担を軽減することが前提だった。 だが、安倍政権が消費増税の延期を決めたため、特例廃止も先送りされた。 (asahi = 12-8-18)


東京・葛飾区の幼稚園で園児 11 人が赤痢感染

東京・葛飾区の幼稚園で、園児 11 人が赤痢に感染していたことがわかりました。 今年に入って都内で発生した集団赤痢は、2 例目となります。 東京都によりますと、先月 18 日、葛飾区内の幼稚園に通う 4 歳の男の子が下痢などの症状を訴えたため、病院を受診したところ、赤痢と診断されたことがわかりました。 その後、4 日までに、3 歳から 6 歳の 11 人の園児が細菌性の赤痢に感染し、下痢や腹痛などの症状を訴えましたが、いずれも軽症だということです。

感染の経路はわかっていませんが、園で提供された給食からは赤痢菌は検出されなかったため、園児同士の接触や不十分なトイレの処理などが原因とみられます。 都内では、今年 10 月に目黒区の保育園で園児ら 21 人が赤痢に集団感染していて、東京都が注意を呼びかけています。 (TBS = 12-4-18)


シリコーン製バッグ破れ … 乳房再建の女性、腫れて胸に塊

豊胸や乳房の再建術でバッグ型の人工乳房を入れた後に感じた体の不調について、米食品医薬品局への報告が今年上半期で約 8,300 件に上ることが、国際調査報道ジャーナリスト連合 (ICIJ) の調査でわかった。 バッグにシリコーンを入れたタイプは米国や日本で使用が認められているが、医学界では安全性をめぐる議論が続いている。

ICIJ は米食品医薬品局に届けられた豊胸や乳房の再建術に関する内容を分析した。 施術後の不具合は 2008 - 16 年に毎年 171 - 371 件で推移したが、同局は昨年、報告義務を従来の機器メーカーから輸入業者や医療従事者にも広げ、患者からの報告も統計に含めるよう変更。 すると、昨年は前年比 10 倍超の 4,462 件、今年 1 - 6 月は 8,345 件に増えた。

届け出対象の製品は、米国で販売・使用が認められた医療機器メーカー 4 社のシリコーンや生理食塩水が入ったバッグ型の人工乳房計 8 製品。 このうち 1 社のシリコーンが素材のものは日本の厚生労働省も承認し、乳がんの手術で乳房を切除した後の再建手術で保険適用される。 同局は件数の増加について ICIJ の取材に、届け出範囲の拡大が主な要因とし、新たな健康問題が浮上したとの見方を否定。 ただ、来年 3 月に施術と健康被害の関連性などをテーマにした会議を開くという。

103 カ国の美容形成外科医でつくる国際美容形成外科学会(本部・米国)によると、こうした施術を受ける人は世界で近年、年間 100 万人を超える。 米国では施術で使う製品を巡り、1980 年代以降、自己免疫疾患や希少性がんなどの発症を指摘する声が相次いだ。 一方、日本国内ではシリコーン製バッグにかかわる被害の報告は多くない。 自己免疫疾患とみられる症状を訴える例はあるものの、希少性がんの発症は確認されていない。

形成外科医で豪マコーリー大学のアナンド・ディーバ教授は ICIJ の取材に、「シリコーン製バッグが原因で合併症を引き起こす可能性は低くない。 問題への対処は不十分で、安全性の担保は欠落したままだ。」としている。

手術から 2 年半後、左腕が腫れ出し

米ミシガン州デトロイト郊外に住むローラ・ディカラントニオさんは 13 年 12 月、乳がんで切除した左の胸に、アイルランドの医療機器メーカーのシリコーン製バッグを入れた。 この製品は 10 カ月前に、米食品医薬品局が承認した。 手術前には米国で起きた安全性を巡る論争が頭をよぎったが、形成外科医の「シリコーンが危険だというのは過去の古い話。 体に大きな支障が出ることは生涯ない。」という言葉で決断した。 当時は 5 歳と 7 歳の娘がおり、他の方法より入院期間が短いという説明も魅力的だったという。 (飯島健太、軽部理人、編集委員・田村建二 編集委員・田村建二、asahi = 11-27-18)


赤ちゃんが花粉症やアトピーならない? 妊娠中に予防で

妊娠中に「予防接種」を受けることで赤ちゃんがアレルギー体質にならないようにするしくみを、国立成育医療研究センターなどの研究チームがマウスの実験で見つけ、26 日に発表した。 花粉症や食物アレルギー、ぜんそく、アトピー性皮膚炎などを防げる可能性がある。 今後、人での効果を確かめて数年以内の実用化を目指す。

アレルギー体質になるかどうかは、生後 3 カ月までに免疫グロブリン E (lgE) と呼ばれる物質をたくさんつくる体質になるかどうかで決まる。 lgE が花粉や食物、ダニなどと反応し、花粉症や食物アレルギー、ぜんそくを発症する。 研究チームは、胎児や乳児期にのみ現れる「mlgE 陽性 B 細胞」に注目。 この細胞の表面にある lgE に、花粉や食べ物などの原因物質(アレルゲン)が結びつくと、lgE を大量に作り始める。 一方、この lgE に特殊な薬を結合させると、細胞を自殺させるスイッチが入り、生涯にわたって lgE が作られなくなる。

妊娠中の母親マウスに薬を注射すると、胎児マウスの体内では、ほとんど lgE が増えないことを実験で確かめた。 母体からへその緒を通じて赤ちゃんに送られ、mlgE 陽性 B 細胞が死滅した可能性が高いとみている。 効果はマウスが生まれた後大人になっても続き、アレルギー体質にはならなかった。 悪影響がないことも確認した。 日本人の 2 人に 1 人が何らかのアレルギー疾患を抱えている。 だが、これまで治療の多くは対症療法だった。 この技術を人に使えれば、将来にわたってアレルギーのリスクを下げられる。 この薬はすでにアレルギー患者の症状を和らげるために使われている。

lgE は今年 7 月に亡くなった石坂公成博士らが 1966 年に発見し、アレルギー検査などに広く使われている。 今回の研究は石坂博士が着想し、国立成育医療研究センターを中心に進めてきた。 今後、アレルギー体質の妊婦らに協力してもらい効果を検証する。 同センターの森田英明・アレルギー研究室長は「人での安全性を確認し、数年以内に臨床での実用化につなげたい」と話した。 (小坪遊、asahi = 11-26-18)


内視鏡手術「オエッ」軽減 吐き気 8 割減の新器具開発

食道や胃などを内視鏡(胃カメラ)で検査する際、のどを通るときに催す嫌な吐き気の軽減につながるマウスピースを、鳥取大医学部付属病院(鳥取県米子市)とゴム製品メーカーが共同で開発した。 奥歯でもかむ馬蹄(ばてい)形にしたことで、前歯だけでかむ従来の筒型マウスと比べて安定し舌の位置も下がって、のどが広がるため不快感が減らせるという。

開発に関わった耳鼻咽喉(いんこう)科医で、のどの動きに詳しい藤原和典准教授によると、不快感は内視鏡が舌やのどの壁に触れることで反射的に起きる。 筒型は前歯だけのため不安定で緊張感からのどの奥も狭くなり、検査が難しくなるという。 外れると歯で内視鏡が傷つくこともあった。 消化器内科医から「検査が楽にならないか」との相談が開発のきっかけになった。

新製品は適度なかみ心地がある軟質の樹脂素材を採用した。 歯全体でかむことで安定し、のどの奥も広がることで内視鏡が触れにくくなって不快感が減らせるという。 10 人を対象にした実験では、挿入時の吐き気の回数は筒型よりも 8 割以上減り、検査を受ける際の苦痛や内視鏡医のストレスも改善される結果が出た。 少しでも楽に検査を受けられることで病気の早期発見と治療につなげられるという。 (杉山匡史、asahi = 11-23-18)


子ども靴、きちんと履かないと足が変形も 選び方も注意

靴の正しい履き方や選び方を知っていますか。 きちんと履けていないために、足にトラブルを抱える子も多いといいます。 専門家は、幼少期からの「靴教育」の大切さを訴えます。 東京都港区の区立青南幼稚園で 9 月下旬に開かれた「足育(あしいく)教室」。 靴教育に詳しい早稲田大招聘研究員の吉村真由美さん (55) が、テープのついた上靴の履き方を園児に教えていた。

床に座ったまま、靴のテープをベリベリッとはがす。 靴に足を入れたらつま先を上げ、かかとをトントンと床について靴と足を合わせる。 つま先を下ろして足と反対の方の手で靴の左右を押さえ、もう片方の手でテープをぎゅっと引っ張り、くっつける。 靴を履き終え、立ち上がって足踏みした子どもたちからは、「(靴が)ぴったりくっついてる」、「軽い!」と声が上がった。 最後に、新山裕之園長が「靴は手を使って、丁寧に脱いだり履いたりしようね」と呼びかけた。

園では昨年度から、靴の履き方指導に力を入れている。 早く履き替えて遊びたい園児たちは、テープをはがさずに足を入れたり、つま先をトントンして履いたりと、履き方が雑になりがちだ。 正しく履けていなかったり、サイズが大きかったりすると、走った時に靴が脱げたり、転んだりする原因になる。 保護者にも足と靴に関心を持ってもらおうと、吉村さんによる靴の選び方や足のトラブルに関する講演会も開かれた。 新山裕之園長は「足と靴がぴったり合った感覚を知り、幼い頃から丁寧に靴を履く習慣を身につけておけば、将来、履き方や選び方も変わってくるはず」と話す。

全国の幼稚園や学校が加盟する公益財団法人「日本学校体育研究連合会」は、靴の履き方や選び方といった出前授業や指導案づくり、実践研究などを通じ、子どもたちの足の健康をつくる「足育」に、2011 年から取り組んでいる。 同園はその研究推進園だ。 連合会は昨年度、東京都内の 14 校で出前授業や講演会をした。 菅原健次理事は「『足育』を、今後は全国の学校や幼稚園にも広めていきたい」と話している。 (斉藤純江、西村綾華、asahi = 11-9-18)


「子宮移植」臨床研究の計画を提出 国内初に向けた一歩

子宮がない人に第三者の子宮を移植し、妊娠、出産をめざす臨床研究の計画案を、慶応大の木須伊織・特任助教(産婦人科)らのチームがまとめ、日本産科婦人科学会(日産婦)に 7 日提出した。 国内初となる子宮移植に向けた一歩となる。 一方、患者の命を救ったり、生活の質の向上を目指したりする従来の臓器移植医療とは目的が異なり、妊娠、出産のための移植となる。 容認するかどうか倫理面が課題となる。 日産婦は日本移植学会と連携して、安全に行うための条件などについて議論を始める。

子宮移植は、生まれつき子宮がない「ロキタンスキー症候群」や、がんで子宮を摘出した女性が対象。 欧米などで少なくとも 54 例行われ、13 人の子どもが生まれている。 国内で、ロキタンスキー症候群やがんで子宮を摘出した女性は国内に 20 - 30 代だけで推計 5 万 - 6 万人いる。 (福地慶太郎、asahi = 11-7-18)