技能実習生と留学生による難民認定申請は異常

今月 13 3日に法務省入国管理局が発表したプレス・リリースによれば、2017 年に難民認定申請を行った外国人の数は、対前年比で約 80% 増の 1,928 件(速報値)で、過去最高だったという。 驚くべきは申請者数トップ 3 の国籍である。 フィリピン人が最多で 4,895 人、次いでベトナム人 3,116 人、スリランカ人 2,226 人となっている。 国籍別でみたこれらの国々の申請者数の対前年比増加は、それぞれ 347%、291%、237% という異常な状況である。

勿論、国際政治的に見て、これらの国において難民・避難民を大量発生させるような特別な事情があった訳ではない。 事実、全申請者のうち実際に難民認定を受けた者は 20 人、難民と認定されなかったものの人道的な配慮を理由に在留が認められた者は 45 人に過ぎない。 このうち、上記トップ 3 の国からの申請者は当然ながら一人もいない。

何故、アジアの国々からの難民申請が増えているのか。 その最大の理由は、在留期限の過ぎた技能実習生が、難民申請することによって日本で就労し続けようと意図する事例が著増していることである。 彼らは、申請後 6 ヵ月が過ぎれば(審査結果が出るまでの生活維持のためとの理由で)就労が認められる。 留学生の場合も同様の「偽装申請」が増えている。

しかし、考えてみるまでもなく、技能実習生あるいは留学生として日本で一定期間を過ごした者が、在留期間の満了を前に (あるいはその直後に) 俄かに難民認定を申請するのは理屈に合わない。 法務省の説明によれば、これらの申請者の申請理由が、本国における友人・知人とのトラブルだったり、借金問題だったりするとのことであり、難民認定条約に規定される「難民」に明らかに該当しない者が多いという。

法務省もこうした状況に頭をかかえている。 難民申請の審査に要する行政経費も馬鹿にならない。 こうした事情を背景に、先月、同省が発表した「運用の見直し」によれば、(1) 案件内容の振り分け期間を設けて速やかに措置を執ること、(2) 難民認定の可能性の高い者には速やかに就労可能な在留資格を付与する一方、明らかにその可能性のない者には在留を許可しないこと、そして、(3) 本来の在留資格に該当する活動を行わなくなった後に難民申請する者(すなわち元技能実習生、留学生など)には就労を許可せず、在留期間も 3 ヵ月に短縮すること、の諸方針が明確にされている。

特に、この (1) は重要であり、厳格に運用されれば難民申請者の数は大幅減になろう。 技能実習生を監理する団体や留学生を受け入れる教育機関(特に日本語学校)への周知も欠かせない。 ただ、何としてでも就労し続けようとして失踪する者が一時的に増える可能性があるので、不法滞在者を雇用する側への注意喚起、悪質な雇用者への罰則強化も必要であろう。

それと、もう一つ、難民認定申請書を代筆して荒稼ぎしている「代書屋」ともいうべき業者が存在するので、彼らに対する警告も有用である。 難民認定を受けられなかった者に「不服申立書」を提出させるべく、更に書類を用意して代書料を稼ぐような悪徳業者の存在も耳にする。 勿論、シリアやアフガニスタンなどの紛争地から命からがら逃げて来た者を助けようとする人道団体・NGO もあるので、「悪徳業者」との峻別が必要なのは言うまでもない。

最後に、難民認定申請者の出身国政府との関係も検討すべきであろう。 明らかに難民認定申請の理由のない国(フィリピンやベトナムなどの東南アジアの国々)の者が申請してくる場合は、当該政府に申請者の氏名を通報し、送り出し機関や仲介業者に警告を発出してもらうことも有用である。 技能実習生や留学生の中には日本の制度に無知な者が多く、彼らが「悪徳代書屋」に騙されているケースもあるからである。

また、ベトナムなどからの若者は訪日前に(仲介手数料や預託金支払いのために)多額の借金をし、その返済のために日本での就労継続を余儀なくされているケースも少なくないと聞く。 出身国内での啓蒙が必要な所以である。 (坂場三男、Blogos = 2-26-18)

〈編者注〉 上記から読み取ると、最後の章、出身国側の問題をもっと詳細に調査する必要があるように思われます。 出身国で多大の借金を抱えているのであれば、帰るに帰れない技能実習生や留学生がこの問題を大きくしているのではないかと思えてなりません。 確かに、日本にとって現地で派遣者の選別をして貰えるのはありがたいことですが、それを理由に大きな経済的束縛を課されるのであれば、あまりにも不幸です。 技能実習生や留学生を必要としているのが現実ですから、派遣国側の問題として目をつぶるのではなく、日本側も積極的にそれなりの対応を考慮すべきでしょう。


技能実習生を現地で育成 北九州のウチヤマ HD 6 月インドネシアに訓練校

介護やカラオケ事業を展開するウチヤマホールディングス (HD) = 北九州市 = は 19 日、日本での外国人技能実習を希望する人を対象とした職業訓練校を 6 月にインドネシア・バリ島で開設すると発表した。 自社で運営する介護施設での人材確保に加え、日本のサービス業で働く人材の育成も図る。 日本の労働力不足を背景に、技能実習制度の対象職種が拡大していることを踏まえ、海外での人材育成事業に乗り出した。

訓練校は介護やホテル、小売業での実習希望者が対象。 最大 150 人を受け入れ、6 - 8 カ月で日本語や業界でのマナーを習得させる。 月間 20 人程度の日本への派遣を目標とし、来日後の生活支援も行う。 現地の人材派遣会社と共同で、訓練校の運営会社を 6 月に設立。 希望者からの授業料や、受け入れ先の企業が支払う管理料で収益を上げる予定。 採算を見て今後、訓練校を増やす計画。 同社担当者は「日本のサービス業界の人手不足緩和に加え、現地の若者にとっても学びの機会が増えればいい」としている。 (西日本新聞 = 2-20-18)


外国人実習生への 2 年連続不正減少 = 法務省

法務省入国管理局は 19 日、外国人技能実習生を受け入れた企業や団体のうち、2017 年に賃金不払いなどの不正行為が確認されたのは 213 機関で、2 年連続減少したと発表した。 不正行為は 299 件だった。 不正行為を類型別に見ると、賃金不払いが 139 件で最多。 不払いを隠すため、虚偽の源泉徴収票を提出するなど文書偽変造が 73 件と続いた。 違法な時間外労働など労働関係法令違反は 24 件。 (jiji = 2-19-18)


技能実習生、行政が守る 豊後高田市受け入れ団体設立へ

企業訪問で労働実態を点検

国内で増加する外国人技能実習生の労働環境を守るため、大分県豊後高田市は 14 日、賃金や労働時間を市が直接チェックする態勢づくりに乗り出すと発表した。 市も関わって実習生受け入れ団体を設立、市職員が受け入れ企業を訪ねて労働実態を調べる。 人手不足が深刻化する中、実習生を安定的、継続的に受け入れるための試み。 厚生労働省によると、行政が直接、実習生の労働環境改善を図る取り組みは珍しいという。

この日、市と豊後高田商工会議所、人材派遣会社が受け入れ団体設立に関する協定に調印した。 団体には市職員を派遣し、空き家の改修など実習生の住居確保や身辺相談に取り組む。 また、実習生を採用した企業には市職員が 1 カ月おきに訪問。 勤務実態や給与水準、休暇の取得状況などを確認するという。

市によると、市内の昨年 12 月の有効求人倍率(推計)は 2 倍超。 自動車関連企業などで既に約 300 人の実習生が働いている。 2025 年には市内の生産年齢人口(15 - 65 歳)は 2 千人減る見込みで、人手不足は深刻化している。 一方、技能実習制度では低賃金が問題化。 09 年度に公益財団法人・国際研修協力機構が実施した調査では、平均給与が 15 万円未満だった。 市は、行政が関わることで良好な労働環境をアピールし、主にベトナム人の受け入れ増加につなげたい意向だ。

関西学院大の井口泰教授(労働経済学)は「実習生が貴重な労働力となっている以上、(行政主導で)受け入れ団体をつくったり、雇用先企業を監視したりする仕組みは望ましい」と評価している。 (西日本新聞 = 2-15-18)


外国人実習生らに違法残業 容疑の業者を書類送検 青森労基署

外国人技能実習生らに違法な残業をさせたなどとして、青森労基署は 8 日、労働基準法違反と労働安全衛生法違反の疑いで、青森市の水産加工品製造業「成邦商事」と社長 (58)、総務部長 (66) を書類送検した。 送検容疑は 2016 年 5 月 16 日 - 6 月 15 日、実習生の中国人女性 15 人を含む労働者 31 人に、時間外労働に関する労使協定(三六協定)が無効なのに法定労働時間を超えて働かせた疑い。

そのうち日本人男性 12 人には、早出残業分の賃金計 47 万 6,281 円を支払っていなかった。 1 カ月の残業時間の最長は、過労死ラインの 100 時間を超える約 144 時間だった。 同社は製造業に義務付けられた安全委員会や衛生委員会を設けず、15 年 4 月に労基署から是正勧告を受けた。 その後も設置することなく、総務部長が議事録を偽造し、労働基準監督官に「委員会は毎月開催している」と虚偽の説明をした。 (河北新報 = 2-9-18)


コンビニを支える "偽装留学生" のカラクリ デタラメな留学ビザで出稼ぎに来る

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外国人も地域の仲間 技能実習生、市民と交流・仙台

(宮城)県内で暮らす外国人技能実習生について理解を深めてもらおうと、県国際化協会は 28 日、仙台市青葉区の市民活動サポートセンターでセミナーを開いた。 県内の水産加工会社などで働くインドネシア人とベトナム人の技能実習生約 40 人と、市民約 50 人が参加。 実習生を受け入れている企業 4 社が、日頃の実習生の働きぶりや、宿舎周辺の住民との交流行事に参加する様子などを紹介した。

インドネシア実習生を受け入れている塩釜市の「ぜんぎょれん食品」の佐々木健さん (53) は「実習生は意欲的で勉強熱心。 日本人従業員も刺激を受け、職場の活性化につながっている。」と語った。 来場者と実習生が歓談する時間もあり、インドネシアとベトナムのお茶が振る舞われた。 インドネシア人実習生が来場者に歓迎の気持ちを表す民族舞踊を披露した。

石巻市の食品会社「ヤマトミ」で働くベトナム人のグェン・ティ・トアさん (27) は「もっと多くの日本人と知り合い、日本の文化を知りたい」と話した。 泉区の主婦宿利(しゅくり)富美子さん (65) は「これまで労働者としてしか実習生のことを見ていなかった。 機会があれば、同じ地域住民として交流したい。」と述べた。 (河北新報 = 1-30-18)


外国人実習生の残業代などで岐阜の繊維業者 28 社に法令違反 時給「400 円」の業者も

岐阜労働局は 26 日までに、外国人技能実習生の待遇を巡る申し立てなどを受け、2017 年 4 - 11 月に同県内の 117 社を監督指導した結果、繊維業 36 社のうち約 8 割に上る 28 社で、残業代未払いなどの法令違反があり、是正勧告したと明らかにした。 建設業などを含む 117 社全体では違反率は約 6 割で、繊維業での違反の多さが目立った。

労働局によると、28 社の違反内容は、残業代の支払いが不十分(24 社)、最低賃金が守られていない(14 社)、労働時間が守られていない(12 社)などだった。 岐阜県の最低賃金は 1 時間当たり 776 - 800 円だが、400 円しか払っていない業者もあった。 岐阜労働局の佐藤健治監督課長は「安価な労働力として違法に扱われる現状がいまだに改善されていない」と話している。 (sankei = 1-26-18)


実習生の労組脱退求める、群馬 外国人受け入れ団体

フィリピン人技能実習生 (25) が職場の暴力に耐えかねて労働組合に加入したところ、実習生の受け入れ窓口となった監理団体「AHM 協同組合(群馬県高崎市)」が労組にファクスを送り、実習生を脱退させるよう求めたことが 21 日分かった。

実習生にも労組加入の権利があるが、実習生を保護する監理団体などが役割を果たしていない形。 労組は不当労働行為として神奈川県労働委員会に救済を申し立てた。 ファクスには公益財団法人「国際研修協力機構 (JITCO)」などが AHM に対し、労組加入者は実習先が見つからないとの見解を示したとも記載。 これが脱退要請につながった可能性もある。 (kyodo = 1-21-18)


愛媛県、カンボジア人の技能実習生 1,000 人受け入れ

労働職業訓練省と愛媛県の労働組合連合会は、今年から約 1 千人のカンボジア人技能実習生を日本に派遣する覚書を締結した。 クメールタイムズ紙が報じた。 クメールタイムズ紙によると、愛媛県の中村時広知事は 25 日、今後 1 年で少なくとも 1,000 人のカンボジア人研修生が愛媛に派遣されると記者団に語ったという。

現在、約 120 万人のカンボジア人労働者が海外に出稼ぎしており、毎年約 20 億ドルをカンボジアに送金しているという。 また、2007 年以降、日本への研修生やインターンシップ生の派遣が始まり、2017 年末までに 6,177 人のカンボジア人が日本で働いているという。 (Cambodia Business Partner = 1-17-18)


「外国人技能実習生」にまつわる深い闇 明川文保

外国人技能実習生の新制度

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外国人実習生 3 年で 22 人労災死 国全体より高い比率

労災による死亡と認定された外国人技能実習生が 2014 - 16 年度の 3 年間で計 22 人に上ることが 14 日、厚生労働省のまとめで分かった。 大半が事故とみられるが、過労死も 1 人いた。 政府統計で実習生の労災死の実態が明らかになったのは初めて。 労災保険の給付対象となる休業 4 日以上の労災件数は 3 年間の平均で年 475 件だった。

実習生は職種が限られており、労災死比率が日本の雇用者全体の労災死比率を大きく上回っている。 実習の名の下に日本人より危険で過酷な労働を負担している現実が示された。 厚労省によると、死亡した実習生のうち労災認定されたのは 14 年度が 8 人、15 年度が 9 人、16 年度が 5 人。 労働基準監督署に報告があった実習生の死亡事案の中で、労災認定されたものを集計した。 実習生の国籍や都道府県別の人数は不明。

法務省によると、実習生の数は 14 年 16 万 7,641 人、15 年 19 万 2,655 人、16 年 22 万 8,589 人。 集計が年と年度で違うが、単純計算すると 3 年間の労災死は 10 万人当たり 3.7 人になる。 一方、日本全体では厚労省の集計で 14 - 16 年の労災死は計 2,957 人。 総務省統計局による雇用者数の 3 年間合計(1 億 6,964 万人)で計算すると、労災死は 10 万人当たり 1.7 人。 実習生の仕事は農業、機械加工など 70 余りの職種だけという違いはあるものの、差が大きい。

実習生に詳しい自由人権協会の旗手明理事は「慣れない日本の労働現場、しかも労働安全衛生への意識が低い中小企業で働くことが多い上、実習生は日本語での意思疎通がうまくできない」と労災が多い背景を分析。 「けがで働けなくなった実習生を強制帰国させるケースもあり、労災隠しは横行している」と話す。 (kyodo = 1-14-18)


外国人実習生、受け入れ事業者の 9 割違反 長時間労働など 北海道

北海道労働局は、道内で外国人技能実習生を受け入れていた事業者の約 9 割に労働基準法などの違反があったと発表した。 例年同様、使用する機械に安全対策が取られていなかったり、違法な時間外労働をさせたりしているケースが多く、「長時間労働が疑われる事業者を中心に監督指導に入ったため、違反率が上がった可能性がある」としている。

違反があったのは昨年 12 月初旬までに監督指導に入った 106 の事業所のうち、食品製造業などの 91 事業所 (85.8%)。 違反件数は計 133 件あり、▽ 安全措置対策がとられていない機械を使用させた (35 件)、▽ 労使協定を超えた時間外労働 (22 件)、▽ 時間外労働に対する割り増し賃金の未払い (20 件)、▽ 労働条件を母国語で明示しない (14 件)などがあった。 違反事業者に対しては各労基署が指導し、安全教育などを実施させている。 (藤渕志保、mainichi = 1-9-18)


介護実習生に在留資格

厚労・法務省、国家試験合格で 深刻な人材不足補う

厚生労働省と法務省は介護現場で受け入れが始まる外国人技能実習生について、介護福祉士の国家試験に合格すれば日本で働き続けることができるように制度を見直す。 2025 年度に 37 万人超の人材が不足するとされる介護現場では貴重な担い手となる。 途上国への技能の移転を目的とした技能実習制度の本来の趣旨とどう整合性を図るかが課題となる。

技能実習は発展途上国との技術協力や国際貢献を目的に、労働現場で外国人を実習生として受け入れる制度。 建設業や農業などに加え、17 年 11 月から介護が新たな受け入れ先となった。 同制度では初めての対人サービスとなり、18 年中に実習生の第 1 陣が来日する。 現行制度でも一定の実務経験などの条件を満たした上で試験に合格すれば介護福祉士の資格を得られる。 ただ日本に残って働き続けることは認めていない。 介護現場で外国人を受け入れる枠組みには経済連携協定 (EPA) もあるが、対象国はインドネシア、フィリピン、ベトナムの 3 カ国に限られている。

新しい仕組みを導入すれば、受け入れ国を限定せずに、介護福祉士の資格を取得した人が就労ビザを得て日本で長く働けるようになる。 厚労省と法務省は必要となる省令を改正した上で、早ければ 18 年度中にも始める。 介護業界は慢性的な人手不足とそれによる人件費の上昇に悩む。 団塊の世代が 75 歳以上になる 25 年度には 37.7 万人の介護人材が不足するという推計もあり、人手の確保が急務になっている。

技能実習制度は本来、日本で先進的な技能を身に付けた上で、母国に帰りその技術を生かしてもらうことが目的。 在留資格を得て日本で働き続けることになれば、技能実習の本来の理念とは離れかねない。 そのため厚労省と法務省は最大 5 年の実習期間が終わった段階で、実習生に一度母国に帰国してもらうことも視野に入れている。 その場合は再度来日して働き続けてもらうことになる。 一方で専門知識を身に付けた人材には日本国内で活躍の場を与えるべきだとの声もあり、一度帰国してもらうかどうかは慎重に検討する。

介護福祉士の試験は日本語で専門用語も多く、外国人には難関だ。 EPA の枠組みでは 16 年 10 月までに約 2,800 人を介護福祉士候補として受け入れたが、資格を取得できたのは累計で 2 割に満たない。 外国人も含めた介護人材の確保には現場の実態に即した試験のあり方も課題になる。 (nikkei = 1-3-18)


「あす入管に連れて行く」外国人実習生、制度変更の余波

劣悪な労働環境への批判が絶えない外国人技能実習生の保護強化策を盛り込んだ技能実習適正化法が先月施行されたが、制度変更のあおりでビザの更新ができない実習生が出るという皮肉な事態が起きている。 受け入れ先の監理団体のずさんな対応が主な原因。 帰国を余儀なくされた実習生もいる。

「明日、組合が入国管理局に連れて行くから、荷物をまとめておくように。」 12 月初旬、関西地方の繊維会社で実習生として働く 20 代のベトナム人女性は、社長から突然こう切り出された。 実習生ビザの期限が切れる直前だった。 日本に来て約 2 年。来年も働き続けるつもりで、ビザ更新の申請書類を 11 月に渡していた。 何度理由を聞いても、社長は「ビザの手続きができなかったら、そのまま帰国することになる」と言うだけだった。

技能実習制度では、主に事業協同組合や商工会が監理団体として実習生を受け入れ、中小・零細企業で実習させるのが一般的。 監理団体が届け出制だった旧制度では原則、届け出た団体は実習生ビザを更新できたが、新制度では、新設された「外国人技能実習機構」から適切な団体と認められ、実習生の受け入れを「許可」されないとビザ更新を申請できなくなった。

機構は 6 月から申請を受け付け、11 月に許可を出し始めたが、許可が出るまでに約 3 - 4 カ月かかる。 約 1,900 団体が申請し、12 月 20 日時点で 1,027 団体が許可を受けたが、ベトナム人女性を受け入れた協同組合は実習生を受け入れる許可が出ていなかった。

国は制度変更に伴い、11 月から来年 1 月の間に在留期限を迎える実習生を対象に、10 月末までにビザを申請すれば旧制度での更新を特例で認めていた。 だが機構によると、「申請を忘れていた」などの理由で特例期間中にビザ更新を申請せず、10 月までに機構に許可の申請もしなかった監理団体が数十あったという。 そのあおりでビザを更新できなくなった実習生は、来年 1 月までに約 100 人にのぼるとみられる。

法務省は 11 月中旬、監理団体から相談があれば、実習生に 90 日間の短期滞在ビザを取得できると伝えるよう全国の入国管理局に指示した。 ただ、実習生は短期滞在ビザでは働けない。 機構の許可がいつ出るかも分からないため、費用を抑えようと実習生を一時帰国させる監理団体が多いという。 一度帰国すると、再入国できる保証はない。

実習生を支援する愛知県労働組合総連合(愛労連)の榑松(くれまつ)佐一議長は「多額の借金をして入国している実習生が多く、ビザの更新ができないのは死活問題。 最悪の場合、帰国を嫌がって失踪しかねない。」と危機感を募らせる。

愛労連には 11 月下旬以降、関東や関西の実習生から同様の相談が 3 件寄せられた。 入管に掛け合って短期滞在ビザがとれたケースもあるが、一時帰国した実習生もいる。 榑松氏は「監理団体や実習先の企業は責任をもって、実習生が生活できるよう対応するべきだ。 国や機構もしっかり指導してほしい。」と話す。(贄川俊、asahi = 12-25-17)


ローソン社長「外国人技能実習は必要。 コンビニ追加を。」

コンビニ大手ローソンの竹増貞信(たけますさだのぶ)社長が朝日新聞のインタビューに応じ、外国人技能実習制度の対象職種にコンビニ運営業務を追加することについて、「必要だ。 やるなら早い方がいい。」と述べ、早期の実現を求めた。 コンビニ業界では人手不足が課題となっており、実習生を「安い労働力としてとらえている」との懸念もあるが、「人手不足対策ではない」と強調した。

業界団体の日本フランチャイズチェーン協会(東京都港区)は来年 1 月にも、外国人技能実習生がコンビニ業務を学べるよう厚生労働省に申請する方針だ。 竹増社長は「レジ係に限らず、コンビニには商品の発注や店舗の清掃など小売業のノウハウが満載だ」と指摘。 「コンビニ業務を身につけて自国に帰れば、その国の小売業で活躍できる」と利点を強調した。 (牛尾梓、久保智、asahi = 12-25-17)


フィリピンで慰安婦像より重大な「技能実習生」問題

目隠しされ立ちすくむ従軍慰安婦像がこのほど、フィリピンで設置された。 台座には「1942 年から 1945 年まで続いた日本支配の時代に、日本軍に虐待されたフィリピン人女性を忘れない」と刻まれている。 場所は首都マニラ中心部のロハス通りで、外国人観光客や日本人ビジネスマンも多いエルミタ地区やマラテ地区のすぐ近く。 通りに沿ってマニラ湾を望む遊歩道が続く、市民や旅行者の憩いスポットだ。

ただ「取材のため、像を探してみたが、周辺をパトロール中の交通警官もどこにあるのか知らない。 何人かの警官が集まって相談し、ようやく『もしかしたら、あの像のことかな』とわかったほど」とは現地在住記者。 像を見に訪れる人はなく、デモ隊がいるわけでもない。 「この像は、フィリピン国家歴史委員会という政府機関の一つが建てたもので、背後には中華系団体の献金があったといわれる。 とはいえ、ドゥテルテ大統領が統治する大統領府は正式な表明なども出していない。 日比関係を考慮し、問題には触れず、スルーの姿勢。(同)」

第 2 次大戦時、旧日本軍が現地で多大な損害と迷惑を与え、多くの人々が命を落とし、人権を踏みにじられた女性たちがいたのは歴史的事実だ。 「でも今では、地元民の多くは過去の出来事として捉え、日本に対し、声高に抗議する動きはない。 『忘れてはいない、しかし、許そう』という寛容の心がある。」と同記者は指摘する。

フィリピンというと、日本人の中高年には "夜遊び" のイメージが強く、慰安婦像と絡めて問題視されるのではないかという声も一部にある。 マラテ地区には日本人向けのカラオケなども並ぶが、皮肉なことに「フィリピンで今、派手に遊んでるのは韓国人。 日本人は駐在員も旅行者も経済的な問題もあり、以前ほど "肉食" ではなく、目立たなくなっている。(同)」という。

フィリピン国家歴史委員会の支援団体は今後デモを計画しているというが、現地報道はあまり大きなものではない。 慰安婦像設置が日比関係に影を落とすことはないと考えられているが、前出記者によれば「それより研修生の問題のほうが深刻」という。 日本は技能実習生の名目で外国人労働者を受け入れている。 この制度が介護の分野にも拡大されることになり、ホスピタリティー精神のあるフィリピン人女性は日本の介護施設にとって貴重な人材だ。

ただ、一部の職場で実習生を低賃金、重労働で酷使していることが、国際的な批判を浴びている。 そんな劣悪な労働条件が待っているとなれば、フィリピン人も日本行きをやめてしまうだろう。 フィリピンでは慰安婦像設置以上の問題として、むしろこちらを注視しているという。 (室橋裕和、東スポ = 12-23-17)


大炎上した「セシルマクビー」運営会社が外国人実習生問題で声明

「不適切な人権労働環境のもと製造されていたとすれば、誠に遺憾」

人気ファッションブランド「セシルマクビー」を展開するジャパンイマジネーションは 12 月 15 日、「一部 TV 番組放送内容に関して」という文書を公式サイトに掲載した。 同社は、孫請けの縫製工場が外国人実習生に違法な長時間労働を強いていたことが「ガイアの夜明け(テレビ東京)」で放送され、非難を浴びていた。

問題があったのは、同社の取引メーカーが商品を発注していた岐阜県内の縫製工場。 外国人技能実習生たちは、ほとんど休みがもらえずに時給 400 円で働かされ、約 630 万円に上る賃金や残業代も支払われていなかった。 番組内では、どこのブランドの服なのか明らかにされなかったが、洋服のタグからセシルマクビーのものだと判明し、ネットで炎上していた。

本年 9 月をもって同工場での製造は終了しております。

同社は、実習生の労働問題について「本年 7 月に岐阜一般労働組合及び番組制作会社より一報を受け、弊社として初めて認識致しました」としている。 それまでは孫請けの工場の労働環境を把握していなかったということだ。 問題となった工場への発注については、「弊社としては、取引メーカー様へ同工場での商品の製造を取りやめて頂くよう申入れ、本年 9 月をもって同工場での製造は終了しております。」という。

番組では、岐阜一般労働組合と実習生たちが 12 月 5 日、代々木にある同社のビルを訪れたときの様子を放映している。 同社の社員はビルの外で待機しており、要請文を受け取ると、実習生たちの質問を無視してビルの中へと戻っている。 その後、テレビ東京に「法的義務のないことについて、取材には応じられません」という通知文を送付してきたという。

今後は製造現場について更なる関心を払う。

同社は文書の中で、次のように謝罪している。 「弊社の商品が取引メーカー様の先の縫製工場において、不適切な人権労働環境のもと製造されていたとすれば、誠に遺憾であると考えており、またその実情を知り得なかったことについては、大いに反省すべき点であると認識しております。」 しかし、実習生や労組への冷淡な対応を考えると、テレビ番組で放映されて炎上したため、慌てて謝罪したという印象が否めない。

今後は、「取引メーカー様と共に、製造現場について更なる関心を払い、弊社の商品がそのような環境下で製造されることがないように努力をして参る所存です。」としている。 今後、同社が縫製工場の環境改善に取り組むよう期待したい。 (キャリコネ = 12-18-17)

◇ ◇ ◇

時給 400 円で働く外国人技能実習生の訴えを拒絶した人気女性服ブランドが大炎上

ガイアの夜明け : 外国人技能実習生 孫請け 未払い賃金立替制度

12 月 12 日放送の「ガイアの夜明け(テレビ東京)」が、再び外国人技能実習生の問題に切り込んだ。 8 月の放送で、外国人実習生たちの過酷な労働環境が紹介され大きな反響を呼んだが、今回はさらに発注元の親会社の対応に非難の矛先が向かった。 彼女たちが日々作っていたという服が画面に映し出されると、すぐにネットユーザーによってブランド名が特定された。 いわゆるギャル向けの人気女性服ブランドだ。 すぐさまツイッターで炎上し、トレンド入りする事態になった。

工場の弁護士「だってやれるんだもん。 法律が認めているんだから。」

問題になった孫請け、岐阜県の縫製工場は、実習生たちをほぼ休みなく時給 400 円で長時間労働させた上に、1人 600 万円以上にものぼる賃金や残業代が未払いのままだ。 請求されると「倒産した」として支払いを免れているが、場所や社名を変えて再び開業。 明らかに、国の「未払い賃金立替制度」を悪用した計画倒産だ。

請求した実習生 5 人は解雇され寮も追い出され、訴えはいまだ無視されている。 実習生たちを支援する岐阜一般労働組合のケンカイさんが電話で問題点を追及すると、弁護士は悪びれず「だってやれるんだもん。 法律が認めているんだから。」と言い放った。 技能実習生の問題に詳しい指宿昭一弁護士は、こうした制度の悪用はよく行なわれており、違法ではないが「制度上の不備がある」と問題視している。 本当に、技能実習生とは名ばかりの「安く使い倒す労働力」になってしまっているのだ。

親会社「法的義務のないことについて、取材には応じられません。」

悪いのは直接雇用する縫製工場やその弁護士ではあるが、そこに発注しているアパレル会社に責任はないのか。 ケンカイさんは、実習生たちと共に東京・代々木にある親会社へ要請文を手渡しに向かった。 アパレル会社の社長宛てに辛かった労働の日々と賃金未払いの窮状を綴り、「どうかお願いします。 私たちのような実習生をこれ以上出さないと約束してください。 そして、その約束を世の中に発表してください。」と訴えた。

未払い賃金を払ってくれと言っているわけではなく、こうした窮状を知って、今後こうしたことがないようにして欲しいと願い出たのだ。 しかし、会社の外で待っていた担当者の対応は冷たいものだった。 手紙は受け取ったが質問には一切答えず、「これでよろしいですか。 もう結構です。」と言って建物内へ消えた。 実習生たちは中にも入れないことに呆然としていた。

後に送られてきた通知文には、「法的義務のないことについて、取材には応じられません」とあった。 実習生との間に法的契約や労使関係は無く、法的要求を受ける立場も義務もないという。 確かに法的義務はないかもしれないが、道義的責任はないのだろうか。 ツイッターユーザーからは「同じ日本人として恥ずかしい」など、批判や失望の声が上がり大炎上。 「大手なのに危機管理ゼロなの?」といった声もあったが、彼女たちの話を真摯に受け止める姿勢を少しでも見せていれば、ここまでの批判には至らなかったのではあるまいか。

世界的にも生産現場の環境改善を求める動き

親会社としては、ちゃんと契約した加工賃を払って発注しただけで、悪徳企業は孫請けだという言い分があるだろう。 もっと言えば、いい物を安く求める消費者ニーズに答えただけというかもしれない。 しかし、こうした考え方がいつまで通るだろうか。 今年 3 月、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは、工場の労働環境の改善や生産過程の透明化を求める声に押され、主な縫製工場のリストを公表した。

こうした動きは欧米のアパレル企業で進んでおり、日本でも広がる可能性があるという。 末端の労働環境に配慮しないメーカーは、今後淘汰されていくのかもしれない。 (okei、キャリコネ = 12-13-17)


失踪する外国人実習生が急増、半年で 3,000 人越え

昨年は減少していましたが … 法務省「さらに分析しないと、原因示せない」

日本で働きながら技術を学ぶ技能実習生として入国し、実習先の企業などからいなくなる外国人が急増している。 法務省によると、今年は 6 月末までに 3,205 人で半年間で初めて 3 千人を突破。 年間では初の 6 千人台になる可能性が高い。 実習生が増える中、賃金などがより良い職場を求めて失踪するケースが続出しているとみられている。

近年の失踪者の急増を受けて、法務省は失踪者が出た受け入れ企業などへの指導を強化。 賃金不払いなど不正行為があった企業などには実習生の受け入れをやめさせたりした。 その結果、一昨年に過去最多の 5,803 人となった失踪者は昨年、5,058 人にまで減っていた。 今年の失踪問題の再燃を、法務省は「率直に言って遺憾だ。 さらに分析しないと、何が原因か示せない。(幹部)」と深刻に受け止めている。

法務省によると、日本にいる実習生は 6 月末時点で 25 万 1,721 人。 ベトナム人が 10 万 4,802 人と最も多く、中国人(7 万 9,959 人)が続いた。 この半年の失踪者もベトナム人が 1,618 人で最多。 次いで中国人(859 人)、ミャンマー人(227 人)、カンボジア人(204 人)だった。 昨年上半期に比べ、ベトナム人は 793 人、ミャンマー人は 160 人も増えた。 (asahi = 12-13-17)

前 報 (5-3-17)


祖国で大漁誓い修了 … インドネシア人実習生

受け入れ 20 年 日本でも戦力

(三重県)紀北町や尾鷲市のカツオ一本釣り船などに 3 年間乗り組み、漁業を学んできたインドネシア人技能実習生 12 人の修了式が 8 日、同町長島の三重外湾漁協紀州支所で行われた。 実習生は帰国後の活躍を誓い、寝食を共にした乗組員らが激励した。 実習生の受け入れが始まって 20 年。 漁業への就業者が減少する中、実習生は日本の漁業に欠かせない存在になっている。

インドネシアの水産高校を卒業した 12 人は 2014 年 12 月に入国。 カツオの漁場は春の小笠原南方から秋の三陸沖にまで及び、1 年のうち約 10 か月間、日本人漁師から一本釣りの技術などを学んだ。 修了式では「第 18 清福丸」のアフマド・エクサンウディンさん (21) が実習生を代表し、「親方(船主)や関係者の皆さん、ありがとうございました。 経験をこれからの人生で役立てます。」とお礼の言葉を述べた。

3 年間で体重が 10 キロ以上増えてたくましくなったイファン・ブディ・クリスタントさん (21) は「大きなカツオを釣った時が一番楽しかった」と振り返った。 帰国後は船員の免許を取って船乗りを目指すことにしている。 洋上生活を共にした乗組員らは「実習生は家族のような存在」と語る。 清福丸の水谷浩さん (57) は「力も強くなり、日本人漁師と同じか、それ以上の腕前に上達した」とたたえた。 実習生は帰国しても、子供に自分が乗った船の船頭の名前を付けたり、電話で互いの近況を報告し合ったり、付き合いは長く続いているという。

一方、実習生受け入れの背景にはカツオ一本釣り漁を取り巻く厳しい実情もある。 全国の近海船は現在、宮崎、高知、三重県などに計約 50 隻のみ。 日本近海の漁獲量の減少に伴って、隻数はこの 30 年間で 4 分の 1 以下に減った。 これに加え、漁村の高齢化や就職先の多様化などで若手漁師の確保が難しくなっており、全国の近海船は 20 年ほど前から実習生を受け入れている。

同支所の三鬼晃常務理事 (76) は「彼らは漁業の担い手として欠かせなくなっている。 法被を着て祭りにも参加してくれており、町の活性化にもつながっている。」と語った。 卒業の 12 人は 14 日に日本をたち、インドネシアに帰国する。 代わって新たな実習生が入国し、日本の漁業の一角を支える予定だ。 (菊池宏一郎、yomiuri = 12-9-17)

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元実習生の社長 4,000 人集結 インドネシア

国際人材育成機構(略称・アイム・ジャパン、裄V共榮会長)の元実習生で構成する「アイム・ジャパン帰国技能実習生 社長の会(インドネシア研修生実業家協会)」は、インドネシアの西ジャワ州で全国大会を開催した。 元実習生の企業経営者約 4,000 人が参加し、100 社を超える企業ブースにおいて、情報交換などを行った。 日本からは実習生受入れ企業約 30 社の代表者などが参加した。 アイム・ジャパンは外国人技能実習制度がスタートした 1993 年にインドネシア人実習生の受入れを開始し、累計約 4 万人を受け入れている。 (労働新聞 = 11-3-17)


不法就労先で「火を付けられた」 元技能実習生が提訴へ

技能実習生として来日したが実習先から逃げ出した中国籍の男性 (32) が、不法に働いていた土木会社で日本人の社員(当時)に火を付けられ、大やけどを負ったなどとして、会社と元社員に慰謝料など計約 9 千万円の損害賠償を求め、近く東京地裁に提訴する。

訴状などによると、男性は 2014 年に技能実習生として来日。 千葉県の農家で実習したが、「低賃金なうえ差別を受けた」として逃げだし、インターネットで見つけた茨城県の土木会社「来栖商事」で 16 年から働いた。 在留期限が切れた直後の 17 年 5 月、同県内の作業現場で工具の管理方法を巡り同僚の元社員とトラブルになり、油をかけられて火を付けられた、と訴えている。 男性は上半身をやけどして 2 カ月入院した。

元社員は、茨城県警に逮捕され、調べに争いの経緯を認めた上で「ライターは持っていたが、着火はしておらず、勝手に火が付いた」などと主張。 水戸地検下妻支部は同年 6 月、男性に油をかけたことのみを罪に問い、元社員を暴行罪で起訴。 水戸地裁下妻支部は同罪で懲役 1 年 6 カ月執行猶予 3 年の判決を出した。 元社員の起訴後、男性は会社と示談し、400 万円を受領した。 ただ、首などにケロイドが残るほか、腕が十分に上がらないなどの後遺症があるという。

男性側代理人の川上資人弁護士は「ガソリンが混じった油をかけられ、やけどの結果もある。 少なくとも傷害罪で起訴されるべきだった。」と指摘。 裁判では示談当時は後遺症の程度や逸失利益が未判明だったと主張するという。 男性は現在、東京入国管理局に収容中で朝日新聞の取材に「暴行ではなく殺人(未遂)だ。 後遺症で今後も仕事はできない。」と訴えた。 同社は 4 日までに、朝日新聞の取材申し込みに回答していない。

法務省によると、今年 7 月 1 日時点で、技能実習生として来日した外国人の不法残留者は 6,532 人で過去最多。 実習先からの逃走や、実習期間の終了後も帰国せずに別の職場で働くケースがほとんどとみられ、同省の担当者は「警察と入管で摘発しているが、すべての不法残留者の所在は把握できていない」と言う。 (小林孝也、asahi = 12-5-17)