糖尿病疑い、初めて 1 千万人超える 高齢化も影響

国内の糖尿病が強く疑われる成人が推計で 1 千万人に上ることが、厚生労働省の 2016 年の国民健康・栄養調査でわかった。 調査を始めた 1997 年の 690 万人から増え続け、今回初めて大台に達した。 厚労省は高齢化が進んだことが影響したとみている。 調査は昨年 11 月、20 歳以上に実施。 血糖の状態を示す血液中の「ヘモグロビン A1c」値の測定結果がある約 1 万 1 千人を解析し、全国の 20 歳以上の全人口にあてはめて推計した。

ヘモグロビン A1c が 6.5% 以上で糖尿病が強く疑われる「有病者」は 12 年の前回調査より 50 万人増えて 1 千万人に上った。 男性の 16.3%、女性の 9.3% を占め、男女とも高齢になるほど割合が高い傾向だった。 一方、ヘモグロビン A1c が 6.0% 以上 6.5% 未満で、糖尿病の可能性が否定できない「予備軍」は 1 千万人で、前回より 100 万人減った。 厚労省は、生活習慣病を防ぐために 08 年に始まった特定健診(メタボ健診)で予備軍は減ったが、高齢になってインスリンの分泌も少なくなることなどから予備軍の症状が悪化し、有病者が増えたとみている。 高齢化がさらに進み、今後も患者数の増加が予想される。 (黒田壮吉、asahi = 9-21-17)


途上国の医療普及へ各国首脳ら招き会議 感染症の脅威に対応 政府が 12 月開催

政府は途上国への保健医療サービス普及に向け、12 月中旬に各国首脳らを招いた国際会議を東京都内で開催する方針を決めた。 エボラ出血熱やジカ熱などの感染症が地球規模の脅威となる中、誰でも適切な医療が受けられる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ (UHC)」の重要性を訴え、安倍晋三首相が主導する非軍事の国際貢献策として発信を強める構えだ。

アジア、アフリカを中心とした途上国にとって感染症対策は優先度の高い課題。 政府は途上国との関係を強化するためにも支援拡充を図る。 米ニューヨークでの国連総会に合わせて 19 日午前(現地時間 18 日午後)に国連本部で保健医療に関する首脳級会合も開く。 安倍首相がスピーチし、積極的な役割を果たすと表明する。

都内で 12 月 13、14 両日に計画する国際会議「UHC フォーラム 2017」は、各国首脳や閣僚のほか市民団体や研究者、民間企業ら数百人を招き、国連のグテレス事務総長の来日も調整中だ。 政府が保健医療分野に重点を置く背景には、日本の国民皆保険制度が長寿社会につながったとの自負がある。 安倍首相が議長を務めた昨年の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)議長声明でも、UHC の実現に向け外交政策を推進すると明記した。 (sankei = 9-18-17)


昨年度の医療費 14 年ぶりに減少に転じる

国民が医療機関で病気やけがの治療を受けるためにかかった医療費は、昨年度(平成 28 年度)に概算で 41 兆 2,800 億円余りと、薬価引き下げなどの影響で前の年度より 1,700 億円余り減りました。 医療費が減少に転じたのは平成 14 年度以来、14 年ぶりです。 厚生労働省のまとめによりますと、昨年度(平成 28 年度)の医療費は、概算で 41 兆 2,865 億円と、前の年度と比べて 1,762 億円(率にして 0.4%)減りました。

医療費が減少に転じたのは平成 14 年度以来 14 年ぶりで、厚生労働省は「診療報酬改定で薬価が引き下げられたことなどから減少したものの、高齢化や医療技術の高度化は年々進んでおり、医療費の減少は一時的なものとみられる」としています。 昨年度の国民 1 人当たりの医療費は、全体の平均が前の年度より 2,000 円減って 32 万 5,000 円で、75 歳未満では 21 万 8,000 円、75 歳以上は 93 万円となっています。

また、医療費の内訳を診療の種類別で見ますと、入院が 16 兆 5,000 億円、通院が 14 兆 2,000 億円、歯科が 2 兆 9,000 億円、調剤が 7 兆 5,000 億円でした。 一方、厚生労働省が使用の推進に取り組んでいる価格の安い後発医薬品、いわゆるジェネリックの昨年度の使用割合は、数量ベースで 66.8% と、前の年度より 6.8 ポイント増えました。 (NHK = 9-15-17)


高額がん治療薬オプジーボ、胃がんの一部にも保険適用へ

高額ながん免疫治療薬オプジーボ(一般名ニボルマブ)について、厚生労働省の部会は 8 日、胃がんの一部の治療に使うことを了承した。 約 1 カ月後に正式に承認され、保険適用が認められる。 2 種類以上の抗がん剤治療をしても効かず、切除手術できない胃がんが対象。 年間の胃がん患者約 13 万 2 千人のうち、対象者は数千人と見込まれるという。

オプジーボは免疫の働きを利用した新しい仕組みの薬で、小野薬品工業(大阪市)が製造・販売する。 承認は皮膚がん、肺がん、腎細胞がんなど(いずれも一部)に続き 6 種類目。同社は昨年 12 月、胃がんへの適応拡大を申請。 医薬品医療機器総合機構 (PMDA) が有効性や安全性を審査していた。 厚労省は 1 日換算の薬価を約 3 万 9 千円、年間約 1,400 万円と試算する。 オプジーボをめぐっては、1 人当たり年間 3,500 万円かかり、保険財政への影響を心配する声が上がり、厚労省は今年 2 月に半額に引き下げた。 (福地慶太郎、asahi = 9-9-17)

◇ ◇ ◇

オプジーボと特定の薬を併用、がん攻撃する力強化か

がん免疫薬「オプジーボ」と、細胞内のミトコンドリアを活性化する薬を併用すると、がんを攻撃する力が強まる可能性があることを、京都大の本庶佑名誉教授らの研究チームがマウス実験で明らかにした。 17 日、米科学アカデミー紀要に発表する。 来年度にも肺がんの患者向けに、オプジーボと併用する治験を始める。

オプジーボは、免疫のブレーキ役の分子「PD-1」の働きを抑え、免疫ががん細胞を攻撃できるようにする薬。 進行したがんでも効果を示す報告がある一方、効かない患者もいる。 本庶さんらは、がんを攻撃する際、免疫細胞が多くのエネルギーを使って増えることに注目。 大腸がんのマウスに、オプジーボと同じように PD-1 の働きを抑える薬に加え、細胞内でエネルギーを作るミトコンドリアを活性化する様々な薬を注射したところ、がんはほとんど増えなかった。 (合田禄、asahi = 1-17-17)

前 報 (11-16-16)


脂肪や親知らずが治療薬に? 進む体性幹細胞の再生治療

科学の扉

自分の体の中に存在し、骨や神経など特定の組織を再生する能力を持つ体性幹細胞(組織幹細胞)を利用した臨床研究が、iPS 細胞や ES 細胞に先行している。 従来の治療をどのように変えていくのだろうか。

体内に存在、iPS・ES 細胞研究に先行

幹細胞は、体を構成する様々な細胞に変化する分化能と、自分と同じ細胞に分裂できる自己複製能を併せ持つ。 中でも、受精卵の中にある細胞を取り出して作る ES 細胞や、皮膚など体の細胞に遺伝子を導入して作る iPS 細胞は、体の中のどんな細胞でも作り出せ、多能性幹細胞と呼ばれる。

一方、幹細胞のうち、体の中に元々存在し、決まった組織や臓器の中で働くのが体性幹細胞だ。 傷ついて古くなった細胞を入れ替えたり、病気やけがで失われた細胞を新しく補ったりする役割を担う。 体性幹細胞には、赤血球や白血球などの血液をつくる造血幹細胞、神経系をつくる神経幹細胞、骨や軟骨、脂肪などへの分化能がある間葉系幹細胞などがある。 幹細胞の機能を使った再生医療では、安全性の評価などに課題がある iPS 細胞や ES 細胞に比べ、体性幹細胞の研究が実用化に近づいている。

札幌医大の研究グループは 2014 年、脊髄(せきずい)を損傷した患者に、自分の骨髄液から分離した間葉系幹細胞を静脈内に投与して神経を再生させる臨床試験(治験)を開始。 神経や血管系に分化する能力を持つ間葉系幹細胞は骨髄細胞の中に 0.1% 程度含まれる。 これを1万倍に増やし細胞製剤にして点滴すると、患者の体内で傷ついた神経に細胞が集まり、その働きを取り戻すことが期待されている。

国は 16 年に「高い有効性を示唆する結果が出ている」として、承認審査の期間を短縮する「先駆け審査指定制度」の対象に指定し、治験も終了。同大は、骨髄の間葉系幹細胞を脳梗塞(こうそく)患者に静脈投与し、後遺症の軽減を目指す治験も進めている。

他人の幹細胞も活用

ただ、患者自身の幹細胞を使う方法は、摘出する際に体へ負担がかかり、培養に時間やコストがかかる問題もある。 そこで、他人の良質な幹細胞を大量に培養し、必要な患者の治療に使う方法も研究されている。 東海大の佐藤正人教授(整形外科学)は、ひざの軟骨がすり減る変形性膝(しつ)関節症の 8 人を対象に、患者自身のひざから取りだした軟骨細胞を培養したシートを患部に貼り付け、軟骨を再生させる効果が全員にあったことを確認した。 細胞シートが特殊なたんぱく質などを出して、ひざの骨にある骨髄由来の間葉系幹細胞を活性化し、軟骨が再生すると考えられるという。

今年 2 月からは、先天的に指が 6 本ある多指症の赤ちゃんから、手術で切除した指の軟骨の提供を受け、細胞シートに培養して患者に移植する臨床研究を始めた。 佐藤さんは「軟骨は他人の細胞でも拒絶反応が起こりにくい。 乳児の細胞は増殖能力が高く、修復を促す成分も多い。」と話す。 抜歯後に捨てられていた「親知らず」が歯周病の治療に役立つ可能性も見えてきた。 (佐藤建仁、asahi = 8-27-17)


高額薬の値下げ、費用対効果で判断 日本版 NICE 検討

膨れあがる医療費を抑えるため、政府は費用対効果に基づく薬の評価を行う組織をつくる検討に入った。 英国をモデルに日本版の組織を設け、評価の低い高額薬を値下げする仕組みを来年度から本格導入する。 医療は命が最優先のはずだが、コストパフォーマンスを求める議論が進む。 モデルとなるのは、1999 年に英国で設立された国立医療技術評価機構(NICE (ナイス) = National Institute for Health and Care Excellence)。 政府は日本版 NICE のあり方について厚生労働省の専門部会などで検討し、年内に結論を出す。

薬の費用対効果を評価する仕組みも英国にならう。 寿命を 1 年延ばすのに必要な新薬の費用を計算し、既存の薬と比較して、あらかじめ設定した基準額を上回れば値下げする。 基準額は、国民意識調査などを踏まえて設定する方針だ。 こうした仕組みを設けるのは、医療費が増え続けていることが背景にある。 2015 年度の医療費は約 42 兆円で、団塊の世代がすべて 75 歳を超える 25 年には推計で 54 兆円になる。 (asahi = 8-25-17)


紫外線、曇りでも日焼け止めで対策を

新潟大学医歯学総合病院 藤本篤助教(皮膚科)

紫外線対策は、季節、天候にかかわらずおこなってください。 曇りの日で快晴時の 60%、雨の日でも 35% の紫外線が地上に到達します。 炎天下ではいうまでもなく、太陽が照っていなくても紫外線対策は必要です。

日焼け止め(サンスクリーン剤)の紫外線防止効果を示す数値には、シミなどの原因になる UVB 防止の SPF (10 - 50+) と、シワなどの原因となる UVA (+〜++++)とがあり、ともに数値や + の数が大きいほど効果が高いことを示します。 使用する状況に合わせて、SPF と PA を基準に選びます。 おおまかに、海水浴など炎天下でのレジャーでは、SPF30、PA++ 以上が望ましく、それよりも軽い屋外でのスポーツ時や日常生活では、もう少し低いものでも、と覚えておけばよいでしょう。 さらに、海水浴や汗を多くかく場合は耐水性のものを選びましょう。

ローションタイプの場合、顔の面積に対して塗る適量は 1 円玉 2 枚分とされています。 しかし、実際はその半分程度しか塗られないことが多く、十分な量を塗るためには「2 回重ねて塗る」ことが必要です。 そして外出後は 2、3 時間ごとに塗り直しをします。 顔だけでなく、首、腕や手など露出している場所にも塗るようにしてください。

紫外線防止効果を持ち合わせた化粧品も多く発売されていますが、単独で効果的な量を塗るためにはどうしても厚塗りになってしまいます。 あくまで化粧品は補助的なものと考え、サンスクリーン剤は別に塗ることをおすすめします。 順番は、化粧水、乳液、クリームなどの後にサンスクリーンを塗り、次にファンデーションなどを行うようにしてください。 肌の健康寿命は何もしなければ 50 歳で尽きてしまいます。 状況に応じたサンスクリーン剤を選び、正しく塗ることを習慣化してください。 (asahi = 8-19-17)


大阪大、がんのゲノム医療開始へ タカラバイオと連携

大阪大は 8 日、がん患者の遺伝情報(ゲノム)を調べて正確に診断し、個人ごとに最適な治療法を選ぶ「ゲノム医療」を始めるために、タカラバイオ(滋賀県草津市)と連携推進協定を結んだと発表した。 来年 4 月に大阪大病院内でがん関連遺伝子を網羅的に調べる検査体制を作ることをめざすという。

がんは多数の遺伝子が異常になり細胞の増殖が止まらなくなる病気だが、異常になる遺伝子は患者ごとに異なる。 大阪大はがん関連遺伝子の異常を網羅的に調べる検査を 12 月からタカラバイオに委託、来春からは同社の遺伝子解析技術を活用して院内に設ける施設で検査できる体制をめざす。 検査は当面、研究として行う。 (瀬川茂子、asahi = 8-9-17)


角膜濁り視力低下の病気、治療薬の候補発見 同志社大

角膜が白く濁り視力が下がる「フックス角膜内皮ジストロフィー」の治療薬の候補を、同志社大などの研究チームが発見した。 この病気は国内に患者が推定約 1 万人いるが、現在は角膜移植しか治療法がない。 研究成果を応用すれば将来、目薬で治療できるようになると期待される。 英科学誌サイエンティフィック・リポーツに 28 日、発表した。

同志社大の小泉範子教授(眼科学)らは、細胞増殖の調節などを担う「TGF-β」が増えると、患者の角膜内皮で細胞死が進むことを突き止めた。 患者の細胞を使った実験で、TGF-βの働きを抑える物質を加えたところ、異常なたんぱく質が大幅に減少することが確認できたという。 小泉教授は「早期に治験が開始できるよう研究を進めたい」と話している。 (西川迅、asahi = 7-31-17)


平均寿命の延び、都道府県で格差 25 年で最大 1.6 年

日本人の平均寿命の延び方に都道府県間で差が生じている。 東京大や米ワシントン大などのグループの研究で、最近 25 年間で最大 1.6 年の差が出ていることがわかった。 原因は判明しておらず、今後も研究を続けていくという。 19 日付の英医学誌ランセット(電子版)で発表した。 東大国際保健政策学分野の渋谷健司教授と野村周平助教らは、国の人口動態統計を元に最新の統計手法を用いて平均寿命を算出。 ほかにも様々な健康についての指標を都道府県ごとに算出して比べた。

研究によると、日本人全体の平均寿命は 2015 年で 83.2 歳。 1990 年の 79.0 歳から 4.2 年延びた。都道府県ごとにみると、佐賀と滋賀で 4.8 年と最も延び、和歌山、福岡、大分が 4.7 年で続いた。 一方、沖縄は 3.2 年、山形は 3.3 年にとどまった。 最も平均寿命が長い県と短い県の差も、90 年の 2.5 年から 2015 年には 3.1 年に拡大していた。 年齢構成の違いを除いた「年齢調整死亡率」は、日本全体で 10 万人あたり 415 人(15 年)で、90 年から 29% 減少。 だが都道府県ごとにみると、同期間の減少率は 22 - 32% とばらつきがみられた。

研究では、都道府県間の差について、1 人あたりの医療費や人口あたりの医師数などとの関係も調べた。 だが、明確な関連はみられなかったという。 渋谷さんは「今回わかった都道府県間の健康格差は、医師を増やすことなどでは改善できない。 原因を探っていきたい。」と話している。 (川村剛志、asahi = 7-20-17)


ベトナムの小頭症、ジカ熱が原因 東南アジアで初の確認

ジカ熱流行

記事コピー (asahi = 1-21-16 〜 7-20-17)


ヒトゲノム、世界最大級の DB に 日本人特有の特徴発見

東北大学などは 18 日、日本人 3,554 人のゲノム(全遺伝情報)を解析し、公的機関で世界最大級のデータベースを作ったと発表した。 日本人特有の特徴も見つかった。 今後、1 万人に数人の割合で発症する希少な病気と遺伝子の特徴との関係に関する研究を進め、原因究明に役立てたいとしている。 データベースは東北大が岩手医科大や日本医療研究開発機構と連携して作成。 日本各地の健康診断などの際に同意を得られた 3,554 人のゲノムを解析した。

ヒトのゲノムは 30 億個の遺伝情報があるが、今回の解析で、個人によってわずかな違いがある場所が約 3,710 万個あることがわかった。 このうち約 2,690 万個は国際データベースにもない新たな情報で、半数以上が日本人に特有とみられるという。 これまでは欧米を中心とした遺伝情報のデータベースによって、遺伝が関係する病気の解析が進められていた。

日本人に特有な特徴が多く見つかった今回の解析で、東北大の長崎正朗教授は「日本人の病気の解明にも役立つだろう」と話した。 より希少な病気に関係する遺伝子を見つけるため、2020 年度までにデータベースを 8 千人まで増やす計画だという。 解析したデータの一部は 専用のサイト で公開予定で、ほかの大学などに共同研究を呼びかける。 (杉本崇、asahi = 7-18-17)


職場での熱中症注意 こまめな水分補給を

職場で熱中症になり、4 日以上仕事を休んだ人が昨年 1 年間、埼玉県県内で 12 人いたことが埼玉労働局のまとめでわかった。 暑さが本格化する時期を前に、同局は対策の徹底をホームページなどで呼びかけている。

熱中症 危ないのはいま?

同局によると、昨年、熱中症で 4 日休んだ人のうち、業種別で最も多かったのは「製造業」の 5 人。 ほかは「運送業」と「その他」が各 3 人、「建設業」が 1 人だった。 7、8 月が大半を占めており、時間別では午前 9 時台の 3 人が最多で、午後 2 時台と午後 5 時台の 2 人が続いた。 死者はいなかった。 職場での熱中症によって亡くなる人は例年、全国で 10 人以上を数える。 記録的な猛暑だった 2010 年の死者は全国で 47 人、県内でも 4 人に上った。 同局の担当者は「こまめに休憩を取り、のどが渇いていなくても定期的に水分や塩分を取ることが大事だ」と話している。 (角拓哉、asahi = 6-10-17)


がんを抑制する遺伝子の特徴発見 長寿につながる可能性

100 歳を超えるような長寿に関係する遺伝子の特徴を、東京都健康長寿医療センターや慶応大などのチームが見つけた。 1 千人近い長寿の人の遺伝情報を集めて一般の人と比べた。 長寿の人はがんや骨に関係する遺伝子に特徴があり、成果は長寿になるしくみの解明につながる可能性がある。 研究が進めば、創薬などの開発にも役立つ。 成果を米国の老年医学の専門誌で発表した。

人が長生きできるかは、適度な運動や栄養といった生活習慣の要因が大きい。 ただ、生まれつきの遺伝子による影響も 2 - 3 割はあるとされている。 チームは、95 歳以上の 530 人(大部分は 100 歳以上)と、79 歳以下の 4,312 人の血液などから遺伝情報を得て、個人ごとに DNA の塩基が異なる約 24 万カ所を網羅的に解析した。 確認のため、中国人 952 人(うち 447 人が 95 歳以上)でも同様に調べた。

すると、これまで指摘されていた「APOE」という遺伝子に加え、新たに「CLEC3B」という、がんの転移や骨の形成にかかわる遺伝子に特徴が見つかった。 この遺伝子の特定の場所の DNA の塩基が置き換わっている日本人の割合が、一般の人たちでは 19% なのに対し、長寿の人たちでは 26% だった。 同センター研究所の谷澤薫平・協力研究員によると、置き換わっている人は、95 歳以上の長寿となる確率が通常の人に比べて 1.5 倍高い計算になるという。 (編集委員・田村建二、asahi = 6-5-17)


胃薬の成分、抗うつ剤開発のヒントに? 岡山理大が確認

岡山理科大は、ストレスでうつ状態に陥ると脳内で減るたんぱく質をマウスの実験で見いだした。 減少を防ぐ薬剤も確認しており、研究グループは新たな抗うつ剤の開発につながるのでは、と期待している。 1 日、米電子科学誌サイエンスアドバンシズに掲載された。 岡山理科大の橋川直也講師(分子生物学)らは、体が大きく攻撃性が強いマウスと、体が小さいマウスを同じケージで飼育。 普段は真ん中を透明な仕切りで区切り、毎日 10 分間だけ仕切りを外して接触させた。

小さなマウスは、接触時間には大きなマウスから激しくいじめられ、それ以外の時間も大きなマウスの姿や臭いなどを常に感じながら暮らすことになる。 これは、職場でのパワハラなど、人間関係のストレス状況をマウスで再現したモデルとされている。 15 日後、小さなマウスは行動意欲や好奇心が減り、脳では記憶などをつかさどる海馬という部分で、HSP105 というたんぱく質が半減していた。 また、ストレス飼育中、ある薬剤を飲み水に混ぜていたマウスでは HSP105 の減少が予防され、行動の異常も起きなかった。

HSP105 は脳内に多いたんぱく質だが、役割はよく分かっていなかった。 予防効果が見られた薬剤は、よく使われる胃薬に含まれている成分だ。 ただ、マウスに飲ませた量は、胃薬の用量の約 270 - 360 倍と著しく多い。 橋川さんは「医薬品として安全性が確認されている成分なので、うつ治療薬開発の可能性は高い」と話し、今後、この薬剤が脳で働く詳細な機序を調べるとしている。 (中村通子、asahi = 6-5-17)


「ゴムを使う 100 の方法」 HIV 予防へ女性向け冊子

厚生労働省が定める「HIV (エイズウイルス)検査普及週間」が 1 日から始まる。 HIV の感染経路は男性間での性的接触が多いが、女性も決して無関係ではないとして、各地の保健所や検査会場で、若い女性に関心を高めてもらうためのリーフレットが配布されている。

昨年 3 月に完成した「ゴムを使う 100 の方法 女子のための the 100 ANSWERS (A4 判 2 ページ)」。 宝塚大看護学部の日高庸晴(やすはる)教授(社会疫学)が代表の研究班が、厚労省のエイズ対策研究事業の一環で作った。 20 - 30 代の女性に対し、避妊具をつけてほしいことが男性にうまく伝わった体験談をインターネットで募集。 373 人の回答をもとに、「つけなきゃ無理!」などはっきり断る文言や「寝たふりをする」といった 100 の伝え方を挙げた。

作成の中心となった新潟大医歯学総合病院感染管理部の古谷野(こやの)淳子・特任助教(臨床心理学)は、相手が HIV などの性感染症の予防をしようとしない場合、求めるのは勇気がいるとみる。 「予防の知識を教わっていても、いざとなると行動を起こせない人もいる。」 大人になるまで性に関することを教わる場面は少なく、友人とも話しづらい。 リーフレットを見て、「これなら自分も使えそう」と思ってくれたら、と古谷野さんは願う。

普及週間は 7 日まで。 リーフレットは日高教授のホームページ「health-issue.jp」から無料でダウンロードできる。 (花房吾早子、asahi = 5-31-17)


朝起きられない … 病気かも 自律神経の不調で症状様々

体調が悪くて朝起きられず、学校に行けない - -。 そんな子どもは「起立性調節障害 (OD)」という病気かもしれません。 一般的には思春期に発症し、春から夏にかけて症状が強まる傾向があります。 怠け癖や夜更かしのせいだと決めつけず、病気を理解することが大切です。 東京都内の高校 2 年生の女子生徒 (16) の体に異変が現れたのは、中学 3 年の春ごろだった。 朝、ベッドの中で目が覚めても体がだるくて起き上がるのがつらい。 やっと起き上がっても動悸がして息苦しく、登校中に坂道で座り込んでしまいたいほどだった。

「インフルエンザで高熱が出た時みたいにだるい。 気持ちは、部活にも学校にも行きたいのに、体はずっと寝込んでいたいぐらいつらい。」 バレー部に所属していたが、午後から登校する日や欠席する日が増えた。 近所の小児科を受診すると、OD の疑いがあるという。 その年の冬、大学病院の小児科で最終的に OD と診断された。 (伊藤綾、asahi = 5-24-17)


ちぎれた臓器ピタッ「夢の生体接着剤」 岡山大が開発

岡山大は、ちぎれた臓器など、生きた組織をくっつける新たな接着剤を開発した。 体に優しく、接着力も強く、すぐくっつき、剥がすのも容易。 利点の多い新素材に、研究チームは医用以外にも広く使える「夢の生体接着剤」へつなげたいと期待している。 組織接着剤は、主に手術時に切断面の止血や縫い合わせた傷の補修などに使う。 現在、血に含まれるたんぱく質を利用したフィブリン系接着剤が市販されているが、接着力があまり強くないという弱点がある。

岡山大歯学部の松本卓也教授(生体材料学)らは、骨や歯の主成分で、医用品や歯磨き剤、健康食品などに使われている「ハイドロキシアパタイト (HAp)」に着目した。 HAp はたんぱく質などを吸着する性質を持つ。 研究チームは、たんぱく質をより効率よく吸着する微細構造を設計。 独自の手法で成形し、シートや粉末状にした。 このシートや粉末を切断面につけて押しつけると、すぐに組織のたんぱく質と反応して接着した。

マウスの皮膚組織を使って接着力を比べると、従来のフィブリン系接着剤の 2 倍以上のひっぱり力に耐えた。 また、水をたっぷり含ませるときれいに剥がせるという。 構造設計をした岡田正弘准教授は「HAp は価格が安いうえ、無機素材なので加熱消毒ができ、取り扱いも容易という利点があります」と説明する。 食べても大丈夫な成分なので、医用以外に、食品加工や接ぎ木や生け花など植物への応用も期待できるという。 (中村通子、asahi = 5-22-17)


サバ・アジ・イワシ … 寄生虫アニサキスの食中毒にご注意

魚介類に付いている寄生虫「アニサキス」による食中毒の報告件数が、急増している。 生の魚をおいしく、安全に食べる方法とは - -。 体長 2 - 3 センチの糸のような幼虫は魚の内臓に寄生し、水揚げされて時間が経つほど、内臓から筋肉(身)に移動しやすい。 専門家によると、その身を生で食べると幼虫が胃の中の壁を傷つける。 異物を除去しようとする反応が胃の中で起き、平均 6 - 8 時間でみぞおちの激痛や嘔吐などの症状がでる。 内視鏡で幼虫を取り除くと症状が和らぐという。

厚生労働省によると、2016 年 1 年間で、10 年前の 20 倍を超す 124 件、126 人の患者が確認された。 13 年からアニサキスによる食中毒が届け出対象に明示されたのが急増の一因という。 原因の魚を特定できた 49 件のうち、27 件はサバで、他にアジやサンマ、イワシなどだった。 実際の患者はもっと多いという推計がある。 国立感染症研究所寄生動物部第二室の杉山広・前室長は、11 年までの 7 年間の約 30 万人の診療報酬明細書を基に、年に 7 千人の患者がいると計算した。 「届け出が必要な食中毒だという認識が広まっておらず、届け出ない医師が多い」と杉山さん。

幼虫は、酢や塩に漬けても死なない。 厚労省は予防策として、▽ 70 度以上での加熱、▽ 零下 20 度で 24 時間以上冷凍、▽ 幼虫がいないかを目で確認して取り除く、▽ 新鮮な魚を選び早めに内臓を除く - - をあげる。 生魚を食べるときに「よくかむ」は有効なのか。 杉山さんによると、アニサキスの幼虫を傷つければ活動は弱まるが、何回かめば有効なのか、科学的な根拠はなく「あまりお勧めはしない」と話す。 あぶりシメサバはどうか。 幼虫は 70 度以上の加熱で一瞬で死ぬが、魚の中心部まで火が通らないと食中毒の危険は残るため、必ずしも安全とは言えないという。 (福地慶太郎、asahi = 5-20-17)


かかるなら若手医師に? 患者死亡率、高齢医より低く

若い医師が担当した患者の方が高齢の医師が担当した患者より死亡率が低いことが、米ハーバード公衆衛生大学院の津川友介研究員らの研究で明らかになった。 「英国医師会雑誌(BMJ)」に 17 日、論文が掲載された。 研究チームは、2011 - 14 年に内科系の病気で入院した米国の 65 歳以上の患者約 73 万人の予後を、担当医の年齢で比べた。 患者の容体の深刻度で担当医の年齢が偏る可能性があるので、シフト勤務中に緊急入院してきた患者を区別なく診ている「ホスピタリスト」と呼ばれる内科医約 1 万 9 千人を調べた。

その結果、患者が入院して 30 日以内の死亡率は、40 歳未満の医師が担当した場合は 10.8%、40 代は 11.1%、50 代は 11.3%、60 代以上の医師の担当患者は 12.1% と、年齢が若いほど低かった。 ただし、多くの入院患者をみている医師では、死亡率にほとんど差が出なかった。 (錦光山雅子、asahi = 5-19-17)


長野市の高等専修学校生徒ら 14 人搬送 スイセン誤食か

16 日午後 1 時 50 分ごろ、長野市豊野町豊野の豊野高等専修学校から「昼食で生徒ら 23 人がニラの入ったスープを食べ、7 人が具合が悪いと言っている」と、市保健所に連絡があった。 同校によると、生徒 11 人、教員 3 人の計 14 人が市内の病院に搬送され、全員が軽症だという。 長野市消防局などによると、生徒らには嘔吐などの症状があり、有毒で食中毒の症状をひきおこすスイセンの葉をニラと間違えて食べた可能性もあるという。 (asahi = 5-16-17)


コンゴ民主共和国でエボラ出血熱 WHO が集団感染確認

エボラ出血熱

記事コピー (asahi = 3-25-14 〜 5-13-17)


心不全患者、IT で自宅リハビリ 阪大が臨床研究へ

心不全の患者が通院せずに自宅でリハビリができるシステムの臨床研究を始めると、大阪大の谷口達典特任研究員(循環器内科)らが 8 日、発表した。 約 10 人で試した後、大規模な試験をして保険適用を目指すという。

心不全の患者や心筋梗塞(こうそく)になった人、心臓の手術後の人は、心肺や筋力を回復させて再入院や再発を防ぐため、心電図や脈拍を確認しながら歩いたり、自転車をこぐ動作をしたりするリハビリが有効とされる。 ただ、週 3 回ほど必要で、医療機関でのリハビリが必要な患者は全国で 40 万人いるが、実際には 1 割しか行っていないという。

谷口さんらは、患者が心電図や脈拍を測る機器をつけて自宅で運動すると、タブレット端末を通じて随時、理学療法士や医師がデータを確認できるシステムを開発。 遠隔から患者に合った運動負荷の増減を指示できる。 患者は通院しなくて済む。 谷口さんは 2 年前、スタンフォード大と連携して医療機器の開発を担う人材育成プログラム「ジャパン・バイオデザイン」に参加。 今年 3 月にシステムの販売を目的としたベンチャー企業を設立した谷口さんは「1 年後に販売開始、2、3 年後に医療機器としての承認を目指したい」と話す。 (合田禄、asahi = 5-8-17)


DNA の特殊な立体構造、発見 がん創薬に寄与の可能性

なぜ生物の受精卵は、臓器や皮膚などの細胞にきちんと分化できるのか。 人間の 1 個の細胞にある DNA は長さ 2 メートルにもなるが、分化していく際に読み取るべき遺伝子の位置を示す特殊な立体構造を、早稲田大などの研究チームが発見し、米科学誌サイエンスに発表した。

DNA はヌクレオソームと呼ばれる構造が連なり折りたたまれている。 膨大な遺伝情報のなかから、必要な部分を見つけるには、ヌクレオソームに何らかの変化が起きていると予想されていた。 研究チームは、ヌクレオソーム同士が連結して新しい立体構造を作っていることを、大型放射光施設のスプリング 8 (兵庫県)の X 線回折実験で見つけた。

これまで見つかっていたヌクレオソームの構造はすべて、「ヒストン」と呼ばれるたんぱく質 8 個の周囲に DNA が 2 回転弱巻き付いたタイプだけだった。 研究チームは世界で初めて、14 個のヒストンに DNA が約 3 回転巻き付いた構造を発見したという。 早稲田大の胡桃坂仁志教授(構造生物学)は「遺伝子の読み取り位置の異常が卵巣がんなどで見つかっている。 今回の発見は、がん治療の創薬研究に重要な情報になる」と話している。 (伊藤隆太郎、asahi = 5-4-17)


潮干狩り、採った貝持ち帰れず … 貝毒猛威、アサリは激減

ゴールデンウィーク (GW) の行楽として人気の潮干狩りだが、大阪府内では、貝を採っても持ち帰れない事態になっている。 貝毒が発生しているためだ。 アサリの漁獲量は全国的に激減しており、「アサリ不足」でオープンできない潮干狩り場もある。 二色の浜(同府貝塚市)では半袖、半ズボン姿の子供たちがアサリ拾いに夢中だ。 ただ、採ったものは帰り際に回収される。 代わりに検査済みで安全な熊本、宮崎産のアサリを持ち帰る。 女性 (35) は「子供が貝を採ることを楽しめたらいい。 (交換は)気にしていない。」と話した。

府によると、アサリなどの二枚貝は毒素を持った植物プランクトンを食べて毒をためることがある。 これが貝毒で、国の規制値を超えたものを食べると舌や唇がしびれたりすることがある。 最悪の場合、死に至ることもあるという。 昨年 3 月には阪南市の男里(おのさと)川河口でアサリを採って食べた 80 代夫婦が、手や口のしびれやふらつきの症状を訴えた。

近年、アサリの貝毒は毎年のように府内で発生するが、今年と昨年は春先の少雨などで毒素を持つ植物プランクトンが増え、毒性が高い。 3 月末にアサリの貝毒の数値が上がり、現在は低下傾向だが、4 月 26 日時点で阪南市で採れたアサリが規制値を超えている。 府内では、二色の浜に加えて、箱作(阪南市)、淡輪(岬町)の計 3 カ所のすべての潮干狩り場で、持ち帰り用に安全なアサリを用意するよう府が指導している。 農林水産省水産安全室の担当者は「市場に流通する貝は自治体などが検査済みなので、食べて大丈夫です」と話す。 (長富由希子、寺尾佳恵、asahi = 5-2-17)


「お顔のしわ、改善します」化粧品続々 国が効果承認

多くの女性の悩みである、顔のしわ。 その改善効果を真っ正面から掲げる美容液やクリームが相次いで登場している。 医薬部外品として初めて厚生労働省が効果を認めたためで、ポーラと資生堂が商品化。 他社も研究を続けており、新たな市場に育ちそうだ。

資生堂が 20 日、発表した「エリクシールシュペリエル エンリッチド リンクルクリーム S」は、有効成分「純粋レチノール」が肌のヒアルロン酸を引き出すのが特徴。 皮膚の水分量が増えてふっくらすることで、しわを改善するという。 6 月から販売を始め、12 月までの半年で 100 万個の販売をめざす。 参考価格は 15 グラム入りで税抜き 5,800 円。

資生堂は約 30 年前から純粋レチノールの研究を続けてきた。 2 月、しわを改善する効果があると認められ、厚労省から商品化を認められた。 資生堂は、この成分を含む商品を引き続き発売することにして、キャンペーン CM には俳優の宮沢りえさんや石田ゆり子さんら 6 人を起用した。 資生堂ジャパンの杉山繁和社長は「しわ改善を掲げる商品の市場は大きくなっていく」と期待する。

しわ改善の商品で先行しているのはポーラ。 今年の元日に発売した美容液「リンクルショット メディカルセラム」は、20 グラム入りで税込み 1 万 6,200 円と高価だが、発売 1 カ月で約 25 万個を売り上げた。 東京の百貨店では商品を求める行列もできたという。 同社広報は「社を代表する商品になる」と自信を見せる。 しわの軽減に効果のある商品は業界の悲願で、開発は古くから行われてきた。 ただ特定の効果を表記した医薬部外品の販売には、厚労省が商品の有効性と安全性を認めることが必要で、各社はなかなかそのハードルを越えられなかった。

その背景にあったのが、「各社がそれぞれの基準で効果を評価していて、客観的な指標がなかった(川島眞・東京女子医大教授)」こと。 このため、川島教授が理事長を務め、皮膚科医やメーカー研究者らでつくる日本香粧品学会が 06 年、しわの深さを計測する統一基準をつくり、改善効果を証明しやすくした。 それでも、新たな効果をうたう商品の開発には時間も資金もかかる。 ポーラの場合、しわができる仕組みの解明から有効成分の探索、商品の完成までに 7 年、厚労省の審査にさらに 8 年かかり、投資額は 15 億円に上った。 (村井七緒子、asahi = 4-23-17)


はしか患者、3 カ月余で 100 人超 昨年を上回るペース

海外への旅行者が増える大型連休を前に、厚生労働省は感染症への注意を呼びかけている。 国内で感染が広がるはしか(麻疹)は、今年に入り 9 日までに 21 都道府県で計 114 人の患者が報告され、患者が多い東南アジアで感染して帰国した人から広がったとみられるケースもあった。 国立感染症研究所などによると、35 人と最も多い山形県では 3 月、インドネシアのバリ島から帰国した男性の感染がわかった。 男性の宿泊したホテルの従業員らにも感染が広がった。 山形に次いで多いのが三重県の 20 人。 東京都の 13 人、広島県の 11 人と続く。

せきやくしゃみでうつるはしかの潜伏期間は 10 - 12 日。 高熱やせき、鼻水などの症状が出て肺炎や脳炎になることもある。 日本は世界保健機関 (WHO) によって 2015 年、はしかが「排除状態」と認定された。 だが今年は 3 カ月余で 114 人と昨年 1 年間の約 160 人を上回るペースで感染が広がっている。

アジアやアフリカ諸国では今も患者が多い。 厚労省は、有効な対策としてワクチンの接種を挙げる。 抗体ができるまで時間がかかるため、海外に出発する 1 週間以上前に受けたほうがよいという。 同省の担当者は「帰国後に思い当たる症状があれば、電話で渡航歴を伝えてから医療機関を受診してほしい」と話す。 同省は、食べ物や水が感染源となる、E 型肝炎や赤痢、コレラのほか、アジアや中南米、アフリカなどの熱帯・亜熱帯地域で流行し、蚊に刺されることで感染するマラリアやデング熱への警戒も呼びかけている。 (福地慶太郎、asahi = 4-22-17)


ダイエット飲料飲む人、脳卒中・認知症リスク 3 倍 米大

人工甘味料入りのダイエット飲料を飲む習慣がある人は、飲まない人より脳卒中や認知症に約 3 倍なりやすい - -。 こんな分析結果を米ボストン大などの研究チームが 20 日付の米心臓協会の専門誌に発表した。 理由はわかっていないが、研究者は「毎日飲むなら水を勧める」としている。

研究チームは、砂糖や人工甘味料が入った飲み物の健康への影響をみるため、米マサチューセッツ州フラミンガムで継続して調べている住民のデータを分析した。 脳卒中は 45 歳以上の男女 2,888 人、認知症は 60 歳以上の 1,484 人を対象に、食生活などの詳細を聞いた後、10 年以内に脳卒中を発症した 97 人と認知症になった 81 人を調べた。

性別や喫煙習慣、遺伝などが発症に与える影響を差し引くと、人工甘味料入りのダイエット飲料を 1 日 1 回以上飲んでいた人は全く飲まない人より約 3 倍、それぞれ脳卒中や認知症になる確率が高かった。 砂糖入り飲料を飲んでいる人では、目立った影響は見られなかったという。 人工甘味料の摂取が発症リスクを高めるのか、発症しやすい体質や生活習慣の人がダイエット飲料を好んで飲んでいるのかは現時点でわからないという。 研究チームは「裏付けと原因分析のための研究が必要だ」としている。 (ワシントン = 小林哲、asahi = 4-22-17)