ZOZO が抱える "3 つの地雷"! 「ゾゾスーツ」のつまずきと、「ゾゾヒート」のいまさら感

少しばかり前のことになりますが、ZOZOTOWN を運営する ZOZO が、2018 年 9 月中間決算(第 2 四半期連結)で大幅減益となりました。 要するに儲けが著しく減ったということです。 売上高は 25.9% 増の 537 億円と大幅増収しているものの、営業利益が 27.3% 減の 100 億円、純利益が 34.1% 減の 62 億円でした。 100 億円もの営業利益を稼いでいるので経営はびくともしませんが、売上高が大幅に増えているのに、儲けが大幅に減るのは、それだけの損失があったということです。

会見によると、減益の要因は、プライベートブランド (PB) 「ZOZO」の一環である採寸用ボディ「ゾゾスーツ」配布などを行い、広告宣伝費や人件費が増加したとのこと。 PB 単体では 7 - 9 月の四半期で 39 億円の営業損失を計上しています。 もともと PB 「ZOZO」は、初年度の売上高計画として 200 億円を掲げてスタートしましたが、9 月末時点では、受注額 15 億円強で回収金額が 5 億円強止まり。 残り半年で 185 億円もの受注があるということは、ペース配分から考えるとほぼ不可能と言わざるを得ません。

採寸用「ゾゾスーツ」の発表時、一部の支持者からは大いに期待された PB 「ZOZO」がどうして伸び悩んでいるのかを考えてみたいと思います。

ZOZO の失速 - - 3 つの原因

PB 「ZOZO」には、3 つの落とし穴があると考えられます。 それを詳しくみていきましょう。

  1. 見切り発車すぎたゾゾスーツに失望!?

    インターネット通販市場全体の売上高は年々伸びており、現在は 16 兆円に達するとの統計があります。 そのうち衣料品の売上高はどれくらいかというと、2018 年 9 月 25 日付「繊研新聞」のコラムで、9,500 億円とされていました。 つまり衣料品の売上高はインターネット市場全体の 16 分の 1 未満ということになり、現在のところそれほど大きな市場とはいえません。

    この理由については諸説あります。 代表的なものは「1. 試着できないから通販で服は買いにくい」、「2. インターネット通販では低価格衣料品が売れている」の 2 つ。 1 の説だと、通販そのものが衣料品を売りにくいということになりますし、2 の説だと、枚数は売れているのかもしれませんが単価が安いために合計金額も低くなるということになります。 個人的には両方が混然一体となったのが 9,500 億円という結果だと考えています。

    計測用の「ゾゾスーツ」は、この「試着てきない」という問題を解決するために開発されたはずでした。 しかし、ここから ZOZO ブランドの蹉跌が始まります。 当初、発表されたゾゾスーツは、着用してスマホと連動させれば何秒間かで体の全サイズが計測できるというものでした。 そのため、申し込みが殺到したものの、一部のインフルエンサー以外を除いてはさっぱり配布されず。 そして 4 月下旬になって、突如としてこの機能のゾゾスーツではなく、水玉柄の新型のゾゾスーツを配布すると発表したのです。

    新型ゾゾスーツは、夏頃までにほぼ配布されましたが、計測精度は低く、サイズが大きすぎたり小さすぎたりする例が相次ぎ、それがインターネットで拡散されました。 ここでゾゾスーツの信頼性は大きく低下したのです。 当初のゾゾスーツのままだったなら、もしかすると満足度も高かったのかもしれません。 しかし、結局量産できなかったということは、何かがあったということ。 その要因を検証せずに、ゾゾスーツを大々的に発表した ZOZO は、見切り発車といわれても仕方がないといえます。

  2. オーダースーツがいつまでたっても届かない!!

    夏に発表した ZOZO のオーダースーツの大幅な納期遅れは問題視されました。 ゾゾスーツのサイズ計測には不安が残るものの、オーダースーツは大いに注目されていたのですが、10 月になっても商品が届かないばかりか、12 月末まで納期が遅れるとの発表がある始末。 PB の受注金額が 15 億円なのに回収金額が 5 億円しかないのはどうしてかというと、オーダースーツの納期遅れが大きな比重を占めているということです。

    ここまで大幅な納期遅れが生じたということは、ZOZO には製造及び生産管理に関する経験知やノウハウがまるでなかったと考えられます。 通常、アパレル企業は、自家縫製工場を抱えている場合が少なく、外部の協力工場で商品を縫製しますが、製造工程に関する知識や生産管理のノウハウがそれなりにあります。 そのため、大幅な納期遅れは起こさないことがほとんどですが、インターネット通販モールの運営会社だった ZOZO にはその一切がまったくなかったのではないでしょうか。 また、生産ラインの確保も不十分だったと考えられます。

    もちろん急ピッチで、それなりの体制を作ろうとした痕跡は認められますが、ノウハウは一朝一夕に蓄えられるものではありませんし、生産ラインもすぐには確保できませんから、その浅さが露呈してしまったといえます。 人々が抱いていたオーダースーツへの期待は、大きな失望へと変わってしまいました。

  3. 激戦の「保温肌着市場」になぜ参戦?

    高単価商品への取り組みをやめたことも、ZOZO に大きな影を落としています。 オーダースーツの失敗で意気消沈したのか、10 月以降、12 月までに発表した商品は 3,800 円のブラックジーンズと、990 円 - 1,290 円の保温肌着「ZOZOHEAT (ゾゾヒート)」のみ。 売上高 200 億円までには程遠い実績ですから、本来はここで高単価商品を投入すべきだったのです。

    アパレル企業のほとんどは、ウールのコート、ダウンジャケット、カシミヤセーター、革ジャンなどの高単価商品が主力となる秋冬の方が売上高は高くなります。 夏の主力商品となる T シャツやポロシャツと値段を比べると、優に 3 倍は超えるでしょう。 にもかかわらず、ZOZO はこの秋冬、低単価商品のみの投入で終わり、12 月現在、200 億円に到達することは極めて難しくなったと考えられます。

    しかも、ユニクロのベストセラー「ヒートテック」だけでなく、しまむらの「ファイバーヒート」、グンゼの「ホットマジック」、イオンやイトーヨーカドー、ドン・キホーテなど大手各社が何年間もやり続けてきた過当競争激化の低価格保温肌着市場への後発参入ですから、勝ち目は極めて薄いのではないでしょうか。 そもそもゾゾヒートの存在さえ知らない人も少なくないようにも感じます。

こうした負の状況を反映して、ピーク時には 4.800 円もあった ZOZO の株価は 2,300 - 2,500 円くらいにまで低迷しています。 一部の熱狂的なファンを除いては静観の構えで、ゾゾヒート発表後もさして上昇していません。 根本から衣料品の製造を勉強しないことには、今後 PB 「ZOZO」は存続すら難しくなるのではないかと思えてしまいます。 (南充浩、サイゾーウーマン = 12-22-18)


ZOZO、ヒートテック狙い撃ち 初の肌着発売

衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営する ZOZO (ゾゾ)は 7 日、保温性の高い特殊な繊維を使った肌着「ゾゾヒート」を売り出した。 同社のプライベートブランド (PB) では初めての肌着となる。 爆発的な人気を誇るユニクロの「ヒートテック」を追う。 体から発散される水分を吸収して発熱する繊維「メリノウール」を使った。 サイズは 1 千超あり、採寸専用の全身タイツ「ゾゾスーツ」で体形を測れば、ぴったりの 1 着が買えるという。 「肌と生地に余計な隙間がなく、暖かさを逃しにくい」としている。

7 日は、商品を発表する動画をインターネットで生配信。 開発担当者らがユニクロの「ヒートテック」を名指しして機能を比較し、「ぜひ着比べてほしい」などと PR した。 税込み 990 円。 13 日までは同 790 円に値下げする。 ライバル視するヒートテックは 2003 年の発売以降、世界での累計販売が 10 億枚を超えている。 (筒井竜平、asahi = 12-7-18)


前澤友作氏「ZOZOSUIT がいらなくなるかもしれない」 決算説明会で発表

ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営する株式会社 ZOZO の代表取締役社長・前澤友作氏が 10 月 31 日、スマホアプリを使って体型を採寸するボディスーツ「ZOZOSUIT (ゾゾスーツ)」について、新技術の導入によって将来的に「不要」になる可能性を示した。 アナリスト向けの 2018 年第 2 四半期決算説明会で発表した。

「今後は ZOZOSUIT なしでも購入いただけるようになります。」 同社は 2018 年 1 月、新規事業でもあるプライベートブランド (PB) 事業の「目玉」として ZOZOSUIT を発表した。 専用のボディスーツを着用し、連携アプリで体型を測定することで、試着や実際の採寸なしでも一人ひとりの体にフィットする商品を提供すると宣言し、話題を呼んだ。 大きな注目を集めていた ZOZOSUIT や ZOZO の PB 事業だが、前澤氏は 10 月 31 日の決算説明会で、「今後は ZOZOSUIT なしでも(PB 商品を)購入いただけるようになります」と発表。

前澤氏によると、「身長、体重、年代、性別」の 4 つのデータを入力するだけで、顧客の「最適サイズ」を提案する新技術を開発したという。 この技術は、以下の 3 つのデータを元に開発。 すでにデニムパンツなど一部の商品でこの技術を導入しており、今後はビジネススーツなど他の商品にも適応させていく予定という。

  1. これまでに配布した ZOZOSUIT で集めた体型のデータ
  2. 基礎ユーザー情報(身長・体重・年代・性別)
  3. 製品を利用したユーザーから集まった意見やフィードバック

前澤氏は、この技術が全商品に適応することで、「(今後) ZOZOSUIT がいらなくなるかもしれない。 そして ZOZOSUIT を着て撮影することそのものも不要になるかもしれない。 当然、アプリをダウンロードしていただくこともない。」と説明。 さらに、ZOZOSUIT の配布枚数の計画についても下方修正すると発表した。 同社は 2018 年度中に「600 - 1,000 万枚」の ZOZOSUIT を配布することを目標にしていたが、「300 万枚」に変更するという。 これによって、当初見積もっていた配布コストも 70 億円から「40 億円」に減少する見通しだ。

ZOZOSUIT が「不要」になる可能性について示した前澤氏だが、今後は海外ユーザーの体型のサンプルデータを収集していくため、ZOZOSUIT を活用していくという。 しかし、将来的に配布はやめる方針で、決算説明会後に前澤氏は「ZOZOSUITは将来的に廃止予定」とツイートした。 前澤氏は、「本来はブランドですから、服自体に注目が集まらないといけない。 それが、どうしても ZOZOSUIT や計測の部分にスポットが当たりがちだった。 もっと商品を見ていただけるように、製品開発に力を入れていけるようにしたい。」と説明。 チノパンツやシャツのバリエーション追加、靴など新商品の展開に力を入れていきたい、と述べた。

ビジネススーツ納期の遅延は? 「年内に解消」

ZOZO の PB 事業をめぐっては、7 月に受注を開始したオーダーメイドの「ビジネススーツ」の納期の遅れなどが問題視されている。 同社の発表によると、PB 事業では 2018 年 7 月 - 9 月に 15.4 億円分の受注があったが、発送実績は「5.4 億円」に留まっているという。 前澤氏は、「ビジネススーツで初めて ZOZOSUIT にチャレンジしていただいた方も多いと思います。 そういう方に限って遅延をしてしまっており、本当に申し訳ありません。 最大で 2 ヶ月から 3 ヶ月お待ちしていただいているお客様もいる。」とビジネススーツの生産遅れについて謝罪。  納期遅延は年内に解消すると宣言した。 (Huffpost = 10-31-18)


ユニクロが笑う ゾゾタウン前沢氏の死角

人が服に合わせるのではなく、服が人に合わせる - -。 全身タイツのような「採寸スーツ」を無料で 100 万枚以上配る前代未聞のアイデアを実行したスタートトゥデイ社長の前沢友作 (42)。 ユーザーやマスコミを敵に回すことも辞さなかった異色の経営者が表舞台に出始めた。 だがそのアイデアを「おもちゃだ」と一笑に付す人物がいる。 アパレルの巨人、ユニクロの柳井正 (69) だ。

採寸スーツ、毎日 2 万枚発送

「なかなか体に合うジーンズがなかったので、こんなぴったりなものができるとは驚きです。」 神奈川県でトレーニングジムを経営する吉岡素良 (31) はこう語る。 衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイが 1 月から販売を始めたプライベートブランド「ZOZO (ゾゾ)」のジーンズだ。 ジムのトレーナーとしても働く吉岡は、尻や太ももが発達していて、いつも洋服選びには困っていたという。 そんな体形をトレースする道具が採寸服「ゾゾスーツ」だ。

「ゾゾスーツ」には黒地に無数の白いドットがあしらわれている。 これを着用した様子をスマートフォンで 360 度撮影してアプリに登録すれば、ドットの分布の形状から、着用した人の胸囲やウエスト、ヒップ、袖丈、股下などのサイズがわかる。

スタートトゥデイは 7 月末時点でゾゾスーツ 112 万枚を配布済みで、現在も毎日 2 万枚のペースで発送している。 7 月 31 日の決算記者会見で、社長の前沢は、「これまでゾゾの会員でなかった人も含め新規顧客の開拓が期待できる」と話した。 一方、外資系証券アナリストは「無料配布が広がれば、やじ馬的なユーザーも増え購買率は低下する可能性がある」とも指摘する。

だが前沢は意に介さない。 単なる衣料品通販サイトから脱皮しようとしているからだ。 「ゾゾスーツ」を使って広めようとしているプライベートブランド「ZOZO」だ。 前沢は 4 月下旬の記者会見で、「グローバルアパレルのトップ 10 に入る。 1 位は LVMH、2 位はナイキ、ユニクロは 9 位です。」と話した。

「思ったよりしっかりしている」

カジュアル衣料大手ストライプインターナショナル(岡山市)の石川康晴 (47) は、前沢とはライバルでありながら交友関係がある。 今年 1 月末、東京・西麻布の高級割烹にあらわれた前沢は、真冬なのに T シャツとジーンズ姿。 その日の決算説明会で着用していたプライベートブランドの服のまま駆けつけたのだった。 洋服にはうるさい石川だが、前沢の服を触ってみて「思ったよりしっかりしている」と感じた。 価格や戦略を聞く限りパンツやカットソーに強みを持つユニクロを意識しているとの印象をもった。

「ゾゾタウン」は他のブランドの衣料品も扱うため、有力な出店者であるユナイテッドアローズやビームスが手がけていない隙間を狙う配慮も感じ取れた。 それでも、前沢の紅潮した表情からは、ゾゾが世界的ブランドに脱皮しようとする気概と緊張感が感じられた。 石川が驚いたのが 7 月 3 日の発表だ。 前沢はゾゾスーツを使った紳士服を発売すると発表したのだ。 青山商事や AOKI ホールディングスなど紳士服大手の株価は軒並み急落した。

同じ 1 月末の食事会で、石川は前沢に「顧客データを生かすにはビジネススーツをやった方がいい」とアドバイスしたという。 T シャツやデニムは体が細くてもダボッと着たい人がいる。 すべての人がゾゾスーツの強みであるぴったり感を好むわけではないのだ。 その点でスーツはどんな人でもジャストサイズで着る傾向がある。 石川の説明を、前沢は真剣な顔で聞いていたという。

初代ゾゾスーツの失敗

ライバルでありながら思わず助言をしたくなってしまう。 前沢の「人たらし」ぶりはほかの関係者も指摘する。 13 年ほど付き合いがある不動産会社シーラホールディングス会長の杉本宏之 (41) は、「一緒にいて本当に楽しい人です」と話す。

ある日、異色の出版社として知られる幻冬舎社長の見城徹 (67) の記事に感銘を受けた前沢が、「見城さんと 3 人で食事の場を設けてほしい」と頼み込んできた。 前沢は事前に見城の SNS (交流サイト)をチェックして行きつけの店を調べ、その店に見城の好きな酒の銘柄を聞いたうえで、会食当日その白ワインを見城の前に並べたという。 今では定期的に食事をする仲になった。

純朴で子供っぽいところが前沢の魅力だと杉本は語る。 あるとき食事の約束をしていた店の前に前沢の乗るドイツの高級車、マイバッハが止まった。 だがなかなか降りてこないので、「友作、早く降りろよ」といってドアを開けると、運転手を待たせたまま後部座席で涙を流していた。 「ミスチルの新曲が良すぎて涙が止まらなくなっちゃった。 落ち着いたら車降りるから先に店入っていて。」 スタートトゥデイグループの幹部は「実は前沢の自宅にピカソの絵があります。 自宅に行った時に、ピカソの絵を指でなぞって、『ピカソターッチ』ってふざけていた。」と話す。 「やんちゃで子供っぽいところがある。(同幹部)」

今回のゾゾスーツは実は 2 代目で、初代は失敗に終わっている。 昨年 11 月に発表した初代ゾゾスーツは、ニュージーランド企業のセンサー技術を使っていた。 全体に仕込んだ伸縮センサーの伸び具合で計測し、着るだけで採寸するとの触れ込みだったが、量産のメドが立たず生産中止となった。

孫氏と風呂「いま返事しろ」

製造設備の一部や部材を減損処理し、特別損失約 43 億円を 18 年 3 月期に計上することになる。 社内が暗鬱とする中、昨年 11 月末、事後処理のためニュージーランドに飛ぶ前沢から社員にメッセージが送られた。 「ローンチ(サービス開始)日を延期せざるをえなくなった。 必死に作業してもらったのに、本当に申し訳ない。 自ら現場で確認と調整をし、同じことが二度と起きないようにする。 重ねて、本当にすまない。」 前沢の正直なメッセージは辛酸をなめた社員の心に響いたという。

ゾゾスーツを無料で配る方法は、ソフトバンクグループの孫正義がかつてとった手法に酷似しているといわれる。 2001 年、ソフトバンクが ADSL サービス「ヤフー BB」を始めた際、家に置くモデムを無料で配布した。 無料配布でまず利用者を増やし、その後の加入者として取り込む方法だ。 前沢が「尊敬する」と話す孫とは 2010 年に初めて会っている。 その後両者は意気投合した。

関係者によると、孫は前沢を初対面の時から気に入り、ソフトバンク本社にある来賓用の風呂に招き、一緒に入った。 裸の付き合いの中で持ち上がったのがソフトバンクが出資するアリババ集団と、スタートトゥデイが合弁で中国版「ゾゾタウン」を立ち上げるプロジェクトだ。 「俺はソフトバンクの社長で、君はゾゾの社長なんだから、今返事しろ。」 急な提案に、前沢は一度持ち帰って検討しようとしたが、孫はその風呂の中で前沢に提携を決めさせたという。 中国事業はその後撤退に追い込まれたが、付き合いは続いている。

100 万円以下のワインは

前沢はまだ 40 代に入ったばかり。 伸び盛りの数年前までは、「人たらし」が行き過ぎることもあった。 2012 年の 9 月頃のこと。 前沢は東京・表参道の高級レストランで、株主だった大手企業にまねかれ、幹部ら 3 人と食事をしていた。 この幹部は、スタートトゥデイがまだ規模が小さい頃から目をかけてくれて、出資を働きかけたり、有名ブランドが出店するように口をきいてくれた「恩人」だ。

「次は何を飲みましょうか。」 ホスト側が提案すると、前沢はこう話したという。 「僕は最近、100 万円以下のワインは飲まないんですよね。 こちらの店にはないようなので、店を変えてみませんか。」 ホスト役である幹部はその場で激高こそしなかったものの、次の店には行かず、そのまま解散になった。 それ以降、このメンバーでの会食は開かれずじまいになっているという。 ツイッターで、商品の送料がかかることを「詐欺」だとつぶやいた利用者に、ただで商品が届くと思うな、と返信をし、問題になったのも同じ年の出来事だ。 この頃から前沢は言動に慎重になりはじめた、と近しい人物は話す。

柳井氏「おもちゃですよ」

その前沢が、最も苦手とする人物が、ファーストリテイリングの柳井だといわれている。 柳井は、昨年 12 月と今年 7 月の日本経済新聞のインタビューでゾゾスーツをこう評した。 「おもちゃですよ。 あんなのを買っていちいち測るのは面倒くさい。 店舗で店員に測ってもらった方が早い。」 顧客のデータを取るのはいいが「実際に作った商品が身体に合うかどうかは人によって違う」とも話す。 7 月にゾゾがビジネススーツを発表した直後にも「ゾゾスーツはちょっと漫画だと思う」と笑った。 前沢については「彼はショーマンですから。 そういうショーをやったのではと思います。」と辛辣だ。

たしかに、ユーザーからこんな声もある。 7 月 30 日にデニムのパンツを注文し、2 日後に届いたという会社員の谷川悠香 (23)。 「想像以上にサイズがぴったりだったのは嬉しい。 ただ色のつき具合やつなぎ目の位置のせいで脚が太く見えがち。 デザインは残念だった。」と話す。 店頭でなら店員がアドバイスしてくれたかもしれないが、採寸スーツではそうはいかない。

2007 年に上場したスタートトゥデイの株式時価総額は約 1 兆 2,700 億円(3 日終値)。 三越伊勢丹グループの 2 倍以上だがこれは将来性への期待値ともいえる。 時価総額では 5 兆円を超えるファーストリテイリングの連結売上高は 1 兆 8,619 億円(2017 年 8 月期)。 そのおよそ 20 分の 1 の 984 億円(18 年 3 月期)にとどまるスタートトゥデイはひよっこに見える。 歯に衣を着せない柳井だが、若い前沢に伝えようとする本質は、もう一つの発言にありそうだ。 「スタートトゥデイには生産背景がない(柳井)」という言葉だ。 = 敬称略 (鈴木慶太、nikkei = 8-6-18)


「ZOZO スーツ」に感じる 'モヤモヤ感' の正体

ビジネススーツならいいけれど、それ以外の服は …?

つい先日、採寸用ボディスーツ・ZOZOSUIT (ゾゾスーツ)でオーダーした T シャツとジーンズが届いた。 注文してからきっかり 3 週間。 正直なところ、あまり期待していなかった。 というより、批判する気満々で待っていた。 ところがジーンズを履いてみると、予想外に体にフィットする。 これが社長の前澤友作氏が発表会で言っていた「驚くほどの快適さ」の正体だったのか。

7 月 3 日、筆者はスタートトゥデイが開いた「新生 ZOZO ビジョン」の発表会に参加し、前澤氏のプレゼンを聞いていた。 イベント終わりに、出口でゲスト枠で呼ばれた知人女性たちと一緒になり、この発表会について、'熱い立ち話' が始まった。

ファッション系女子と起業家女子との視点の違い

ファッション系メディア女子が言う。 「私は、ファッション好きな方には必要ないかなって思いました。 ビジネススーツのオーダーに慣れている方とか、就活用のスーツとかだったら、オーダーもいいのかもしれませんが、それ以外の服は …。」 ファッション女子的には、この ZOZOSUIT のオーダーで服を作ることにあまり乗り気じゃない。 どうも「サイズがぴったり合うこと = ファッションじゃない」というのがその理由のようだ。 でも一方で、起業家女子は違った。

「『人が服に合わせる時代から、服が人に合わせる時代』ってすごいですよね。 画期的! って思った。 だってジーンズを探しに行ったら、すごく時間がかかる。 自分のサイズを見つけるために試着室に行って何本も試すなんて苦痛。 これって、最短時間で最適な答えに導いてくれる方法なんですね。」 ファッション系女子と起業家女子とで、意見が分かれたのは面白かった。

多くの女性にとってファッションはある意味、ファンタジーである。 「この服を着たらモテるかも」とか、「新しい服を買ったら、なんだか気分が上がった」とか。 服は気分を作る道具でもある。 たとえば 3 歳の子どもがディズニーランドに行くとき、『アナ雪』のエルサのドレスを着るだけでお姫様気分になれる。 情緒とファッションは密接な関係を持っている。

それにしても、起業家女子の「これって最短、最適な服じゃないですか?」という話が引っかかった。 彼女に聞くと「そもそも似合う服ってなんだろう? と思うんです。 スティーブ・ジョブズじゃないけど、黒のタートルネックと決めていれば、服を探したりする時間が短縮できる。 私の周りでも服を選ぶことに疲れている女子っているんですよ。」という。 これはファッションの合理性でもある。 そういうミレニアルズが出ているのか、と驚いた。

友人のデザイナーは ZOZOSUIT が出てきたときにこう話した。 「デザインでいちばん大切なのは、体のサイズからどれだけ余裕をとるか、腕や足の可動域をどうするか。 そこにブランドのスタイルがある。 そもそも最近はむしろビッグサイズがトレンドになっている。 そうやって服のスタイルが作られるのに、ジャストサイズだけがファッションじゃない。」 つまり、デザインこそがファッションであると。

ファッションはイコールサイズだけではない。 時代によって肩をいからせたり、柔らかく添わせたり、ウエストを締め上げたり、または緩めたり、ミニにしたり、ロングにしたりとさまざまだ。 背景にはやはり時代が絡んでくる。 女性を最初にコルセットから解放したココ・シャネルのように、シルエットが持つデザイン性は女性解放まで意味を含んでいた。 デザインは女性の生き方まで変えてきたのだ。

それだけに無限に広がるデザインのバリエーションは、そのまま生き方のバリエーションとも思える。 女性は服で何者にでもなれる。 かつて女性たちにとって、新しさこそがファッションであり、それは流行 = MODE と呼ばれた。 一方で多くの男性にとって、ファッションの原点は制服 = CODE だ。 スタイルが決まっているので、個体差は体型となり、サイズが着こなしの大きな要素となる。

友人の社会学者・古市憲寿は「ファッションって、結局スタイルがいいイケメンが着たらみんなかっこよくなるんじゃないですか?」と言っていた。 相変わらず炎上上等というような口振りだが、ある部分、これも真実だ。 シャツ、ジャケット、パンツ。 女性に比べてアイテムのバリエーションが少ない男性にとって、良い体型、つまりぜい肉の少ない引き締まったバランスのいい体格でサイズが合った服を着ることは服を着こなすために大切なファクターのひとつだ。

前澤氏は発表会のプレゼンの中で「自分自身、背が小さいことでファッションにコンプレックスがあった」と話したが、そうやって男性の服を考えていくと話がつながってくる。 彼は自分に合ったサイズがないことで「世間に認められていない」という気持ちを持ったという。 パンツを履けば、裾を切らなくてはならない。 シルエットが変わってしまう。 そうなると試着が億劫になり、店に行きたくなくなった。 でも服が好きだ。 もっと一人ひとりに合った服ができないかと思った。 サイズという課題を解決する、これが ZOZOSUIT を作る原動力になったという。

自分のリアルサイズを知ることはメンズファッションにとって重要なことだ。 ある男子は ZOZOSUIT の結果を、日ごろ鍛えている自分のボディラインをチェックするのに活用しているという。 トライアスロンまでする彼にとって、自分の体型をアプリでビジュアル化して見ることはある種エクスタシーだ。 ボディラインに自信のある彼に限らず、多くの男子にとって、自分の体を詳らかに見せられることはストレスにならないようだ。

一方、女性にとって、サイズは '最高機密' 事項だ。 多くの日本女性がうなずくと思うが、女性には「9 号信仰」、「M サイズ信仰」がある。 自分のサイズは「標準である」という思い込みと希望だ。 よっぽどの人でないかぎり自分のスリーサイズを正確に把握していない。 みんななんとなく「M かな?」で済ませている。 ルミネあたりにあるブランドの服もほとんどが「フリーサイズ」と呼ばれるワンサイズだったりする。 たくさんのサイズを用意することはメーカー側の負担にもなるので、日本ブランドのサイズ展開はせいぜい「SML」の 3 サイズ止まりで、それも大半は「M」ということになっている。

世界では異色、日本女性の「M サイズ信仰」

海外ではそんなことはない。 身長 172cm の私も日本では「でかいひと」であるが、海外に出れば「普通体型」と言われる。 だから買える服が増えてうれしくなる。 アメリカのデパートでは普通でも 0 から 16 までは優にそろえている。 それが当たり前なのだ。 ワンサイズしかない、なんて言ったら「差別だ!」となるからだ。

人種、性別と同様に海外ではサイズも 'ダイバーシティ(多様性)' の時代だ。 NY コレクションで「プラスサイズモデル」として有名なアシュリー・グラハムは身長 176.5cm。 スリーサイズは上から 96・75・114cm。 洋服のサイズは、日本でいうところの 19 号 (5L) に相当する。 その彼女が人気ブランド「マイケルコース」のショーでランウェーを歩く。 有名グラビア雑誌の表紙に登場し、「世界でいちばんセクシーな体」と言われる。

日本の渡辺直美も自身で「PUNYUS」というビッグサイズブランドを発表。 インスタグラムのフォロワーが 800 万人いる彼女は、『TIME』誌で「世界で最も影響力ある 25 人」に選ばれるほど、世界的にダイバーシティな存在として注目されている。

こうした「多様性」を、スタートトゥデイも意識している。 今回の ZOZO 発表会の目玉のひとつでもあったのが、新しい社名とロゴ、そしてイメージムービーだった。 新生 ZOZO のロゴには秘密がある。 丸、三角、四角で構成されたそのロゴは、それぞれ色も形も違うが、その面積は一緒。 つまり人種も肌の色も性別も体型も違っても、みんな一緒の人間なんだ、というメッセージだ。

前澤氏の言う「人が笑顔になる服」、「人と人をつなぎ合わせるきっかけを作る」、「笑顔から世界平和を目指す」という言葉。 これは同社の「Be unique. Be equal.」という社是につながっている。 この ZOZOSUIT だが、今回「#ZOZO100k」と題して、世界 72 カ国に 10 万枚配布するという。 この発表会も実は 72 カ国で同時配信されていた。 途中、前澤氏は習い始めたばかりという英語でプレゼンをした。

会場には海外配信をする記者も来ていて、発表後「BOF」オンラインや「Racked」などの海外メディアが記事を配信していた。 ところが、いまいち海外からの反応はあまり見えてこない。 おそらくこれから各国のインフルエンサーなどを仕込んだり、プロモーションにも力を入れることになると思うが、海外での可能性は今のところ未知数だ。

周囲の海外の友人に聞くと、あの水玉スーツには「面白い!」と反応がくるが、それでわざわざあの細かな作業をしてサイズを取ろうとは思わない、という。 なぜなら、先ほども書いたが海外ではサイズ展開が豊富であり、多くの人はサイズに困っていない。 一方、本当にファッションが大好きなユーザーたちは、ブランドが出す限られたサイズを着こなせる体型になろうと努力する。(たとえば、『プラダを着た悪魔』に登場するアシスタントのエミリーはアメリカのサンプルサイズ 4 が入らなくなったら人生終わりだ、と野菜しか食べない。 こういう女性たちは多数、実在する。)

はたして ZOZOSUIT は海外で成功するのか

海外で先行する日本のアパレルといえば、ユニクロがいる。 「LIFE WEAR」を掲げて、海外でも支持が広がっている。 昨今は、ユニクロ U にデザイナー、クリストフ・ルメールを起用したり、今季は先日ボッテガ・ヴェネタを退任したトーマス・マイヤーとコラボしたり、もともとの機能に「ファッション」を持ち込もうとしている。 今年、クリエーティブディレクターに元『POPEYE』編集長、木下孝浩氏を起用したのもその一環だ。

ファッションに IT を持ち込み「サイズを最適化」、「工業化」するゾゾ。 かたや、大量生産の工業製品にファッションを持ち込もうとするユニクロ。 まったく違うアプローチをする両者だが、数年後に大成功を収めているのははたしてどちらだろうか。

理論的には、無店舗で世界進出できるが …

すでに一定の成功を収めるユニクロに対し、ゾゾは大きく遅れているように見えるかもしれない。 だが、ゾゾが進めるグローバル化のベースは、「スマホから工場直結」。 店舗を出さずとも、海外進出が可能な形だ。 理論的には各国に支店も店舗もスタッフも置かずにグローバル化ができる。 だからあの「72 カ国で無料配布」というメッセージムービーが効いてくる。 これも IoT が進んだ 2010 年代だからできる新しいグローバル企業の形だろう。

そして、今週 ZOZO は PB に靴とブラジャーの開発を始める、と発表した。 女性にとって一番サイズストレスの大きな 2 アイテムだ。 靴は D2C で先行しているブランドもあるが、ブラジャーは女性性の繊細な部分でもある。 その微妙な部分をテクノロジーでどう解決していくのか、そこも ZOZO の力量が問われるだろう。

オーダーで作ったデニムはまだまだ改良の余地があると感じた。 だが、自分用にカスタマイズされた最適な一本を、店舗を経由せずに買えるということの価値。 これはもはやファッションという既存の軸で斬れるものではないのだろう。 私たちは、日本発アパレルによるかつてない挑戦を、これから見ることになるのかもしれない。 (東洋経済 = 8-1-18)


ゾゾ、自動採寸でフルオーダー 紳士服 PB 展開

衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイは 3 日、「ZOZO (ゾゾ)」ブランドのフルオーダーのビジネススーツを販売すると発表した。 紳士服市場は縮小しているが、オーダースーツは価格低下などを背景に成長しているとされる。 最もサイズ感が重視される衣料品の「本丸」に独自の自動採寸技術で挑む。 衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイは採寸用ボディースーツ「ゾゾスーツ」 10 万着を世界で無料配布する。 グローバル展開に向け知名度を上げる戦略だ。

ゾゾタウンに登録した自分の体形データを使い、一人ひとりの体形に合わせたパターンからつくる「フルオーダースーツ」を販売する。 「世界中で服のサイズに悩んでいる人たちを笑顔にしたい。」 3 日、都内で開いた記者会見に臨んだ前沢友作社長はこう話した。 同日午後 6 時からサイトで受け付けを始める。 価格は、ビジネススーツが 3 万 9,900 円、同じく参入するドレスシャツが 4,900 円。 ただしお試し価格としてそれぞれ 2 万 1,900 円、2,900 円で販売し、セット価格 2 万 4,800 円も用意する。 通常、百貨店などでフルオーダースーツを購入すると 10 万円以上する場合が多い。

採寸用のボディースーツ「ゾゾスーツ」を新たに 10 万枚、日本以外の地域に配布、抽選でデニムと T シャツを無料でつけるキャンペーンを始める。 同社が 1 月末に販売を始めたプライベートブランド (PB) は、採寸用ボディースーツ「ゾゾスーツ」を着て全身の体形データを測定し、一人ひとりに最適なサイズの衣料品を販売するのが最大の特徴だ。

今回販売するビジネススーツは、あらかじめパターンが決められていて裾や着丈だけ調整する「パターンオーダー」と異なり、ゾゾスーツで取得した 3D (3 次元)データから肩の傾きや体形の左右差を読み取り、一人ひとりの型から設計する「フルオーダースーツ」だという。 注文から最短約 1 週間で届く。 ポケットの形やボタン、裏地の色など細かな指定ができる。 色柄はブラックやネイビーなどまず 7 種を用意し、秋に 3 種を追加する予定だ。

団塊世代の大量退職やオフィスウエアのカジュアル化で紳士服市場は緩やかに縮小しているが、オーダースーツは成長市場として、2016 - 17 年にコナカなど大手紳士服チェーンが相次ぎ進出している。 スタートトゥデイの参入で競争激化による価格の下落など、業界に及ぼす影響は小さくないとみられる。 同社の通販事業は、サイト上の購入額を示す年間取扱額が 18 年 3 月期に 2,705 億円と 5 年間で約 2.8 倍に膨らむなど好調だ。

一方で、衣料品通販サイト運営のロコンドとマガシークの提携や、オンワードホールディングスとカジュアル衣料大手のストライプインターナショナル(岡山市)の提携など、通販会社やアパレル企業がネット通販事業を強化しスタートトゥデイを追随する動きも活発だ。

現在配布しているゾゾスーツは 2 代目だ。 17 年 11 月にスタートトゥデイが発表した初代ゾゾスーツは、ニュージーランドのベンチャー企業のセンサー技術を使っていた。 全体に仕込んだ伸縮センサーの伸び具合で計測し、着るだけで採寸するという触れ込みだったが、「大量生産のメドが立たず生産中止にせざるを得なかった。(前沢社長)」 2 代目ゾゾスーツは、ドットマーカーをスマートフォン(スマホ)のカメラで 360 度撮影して計測する。

2 代目ゾゾスーツは、スタートトゥデイが匿名の研究者 3 人から買い取ったアイデアでつくっている。 同社は 2 月に低コストで体形計測できるアイデアとして 3 億円で購入したと発表。 4 月に 2 代目ゾゾスーツの無料配布を始めた。 現在までに 55 万着を配布し、19 年 3 月期中に最大 1,000 万着を配る予定。

一部の利用者の間ではゾゾスーツで正しく計測できないとの指摘もあるが、「マーカーが正しく読み取れない場合は予測して読み取るなど、機械学習を使って精度を高めている(前沢社長)」という。 ただ、最大で100億円規模とみられるゾゾスーツの配布コストを回収するにはオーダーメードの服を注文する顧客の定着が課題になる。

IT (情報技術)を駆使し、全身を採寸する技術はスタートトゥデイだけのものではない。 ワイシャツのオーダー通販を運営する米オリジナル(カリフォルニア州)は今夏にも、スマホで全身を前面と側面の 2 枚撮影するだけで採寸するアプリの提供を始める。 ボディースーツを着て全身を撮影する必要があるスタートトゥデイよりも手間がかからないとされ、自動採寸を巡る競争が本格化する。

前沢社長は「世界中で特許を取得しており、対策はしている。 それに我々のものづくりはそんなに簡単にはまねできない。」と強調した。 今後、技術開発のスピードと顧客対応力が、次世代ファッションの覇者を決めるカギとなりそうだ。 (鈴木慶太、nikkei = 7-3-18)


新型「ゾゾスーツ」を開発 従来品の失敗を認めて謝罪

衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイは 27 日、昨年 11 月に発表した採寸専用で無料の「ゾゾスーツ」の生産を中止し、新型の「ゾゾスーツ」を開発したと発表した。 同日、4 千枚を発送。 今年度中に 600 万枚超を配布するという。 前沢友作社長は同日開いた 2018 年 3 月期の決算説明会に、新スーツを着て登場。 「100 万件の注文をいただいていたが、生産がうまくいかなかった」と失敗を認めて謝罪した。 従来のゾゾスーツは、伸縮センサーが内蔵され、着用すると肩幅や腕の長さなど 24 カ所を測定する仕組みだったが、採寸精度や大量生産に課題があったという。

新スーツは水玉状の白いマーカーが 300 - 400 個ついている。 スマホアプリを起動し、カメラで体を 12 回に分けて 360 度撮影することでサイズを測る。 生産費用は 1 枚あたり約 1 千円で、従来品よりも安いという。 これをもとに体にぴったり合う同社のプライベートブランド (PB) の T シャツやジーンズなどを注文することができる。

18 年 3 月期決算は、売上高が前年比 28.8% 増の 984 億円、本業のもうけを示す営業利益は 24.3% 増の 326 億円、純利益は 18.3% 増の 201 億円だった。 ゾゾスーツの普及で PB 商品の売り上げが増えるとして、21 年 3 月期に売上高 3,930 億円、営業利益 900 億円の達成を目指す中期計画も発表した。 (asahi = 4-28-18)