楽天送料無料、なおあきらめぬ全店導入 公取委の対応は

楽天は 6 日、ネット通販サイト「楽天市場」で一定金額以上購入した場合に「送料込み」として実質送料無料とする施策について、全店舗での 18 日からの一律導入を見送り、導入可能な一部店舗だけで始めると発表した。 新型コロナウイルスの感染拡大で物流網の人手不足が予想され、出店者の負担増になりかねないためだという。 全店で導入の意向は変えていないが、具体的な時期のめどは明らかにしなかった。

18 日以降、出店者は送料無料を導入するかどうかを選択することができる。 導入で出店者の負担が増えた場合は楽天側が一定期間、支援金を提供する。 金額などの詳細は明らかにしていない。 導入しない出店者には理解を引き続き求めていくとした。 また導入店については、利用者が商品を探す際、送料無料を導入している店であることをわかりやすく表示するなどの施策を検討しているという。

楽天の送料無料策は、購入額が税込み 3,980 円以上の場合に送料無料とするというもの。 現在は「送料込み」と言い換えている。 三木谷浩史会長兼社長が米アマゾンに対抗する狙いなどから昨年初めに導入を表明した。 しかし無料となる送料分の負担が増えかねないとして、出店者から反対の声が噴出。 公正取引委員会も問題視し、2 月末、独占禁止法違反(優越的地位の乱用)の疑いがあるとして、東京地裁に緊急停止命令を出すよう申し立てていた。

6 日にネットを通じて記者会見した楽天幹部は、独禁法上の問題はないと改めて強調。 送料無料策により、出店者ごとにばらばらの送料がわかりやすくなるなどと従来の主張を繰り返した。 野原彰人執行役員は「(方針変更は)公取委うんぬんではない。 (送料無料は)ユーザーにも店舗にもメリットがある。 しかしコロナウイルスの問題で店舗が困っているという声を受け止めた。」と語った。

三木谷氏はこれまで、「店舗の成長につながることは、たとえ政府や公取委と対峙しようとも必ず遂行する」と話し、公取委と対立してでも実施にこだわってきた。 だが 2 月末、公取委が東京地裁に対し、緊急停止命令を出すよう申し立てたため、今月 18 日からの一律実施については見直しを迫られたとみられる。 楽天が 6 日に送った店舗向けの案内では、「今後も本施策の目的の実現をめざす」としており、全店舗での実施を撤回したわけではない。 今回の楽天の対応について、地裁や公取委がどう判断するかが今後の焦点となる。

ネット通販サイト「楽天市場」での送料無料策の導入を巡り、一部出店者や公正取引委員会と対立していた楽天が、18 日からの一律導入を見送った。 ただ 6 日の会見では、あくまで新型コロナウイルスの感染拡大が理由だとし、一部店舗から始めて全店に広げる姿勢を強調。 公取委などと対立する構図は変わらない。 「感染拡大の影響は非常に大きい。 海外からの商品仕入れや在庫の問題が拡大する可能性がある。」 6 日にネットで会見した楽天幹部は、一律導入見送りの理由として「コロナウイルス」を何度も挙げた。

その一方、送料無料策の正当性は改めて強調。 独占禁止法違反の疑いがあるとして、公取委が東京地裁に緊急停止命令を出すよう申し立てたことについては「真摯に受け止める」などとしたが、18 日に導入しない出店者に対しても、引き続き導入を求めていくとした。

送料無料策に反対する出店者は、サイト運営で強い権限がある楽天が今後どんな対応に出てくるかを心配する。 出店者の一人は「無料策に参加しなければ、(商品や店舗の)検索表示順位などで不利な扱いをされるのではないか」と話す。 楽天は送料無料を導入した店舗だけが表示される検索枠をトップページに設置する予定。 送料無料策の店舗であることを、サイトの利用者にわかりやすいよう表示することも検討しているという。

楽天は一律の導入は見送ったものの、送料無料策を撤回したわけではない。 裁判所による緊急停止命令は当面避けられる可能性はあるが、公取委はそもそも、送料無料策が出店者の価格設定の自由を奪うと問題視してきた。 基本的な方針を変えない楽天に公取委がどう対応するかが注目される。 (栗林史子、村井七緒子、asahi = 3-7-20)

楽天の「送料無料」を巡る動き
2019 年1 月楽天の三木谷浩史会長兼社長が「一定額以上の購入で送料無料」の方針だと発言。
8 月送料無料となる購入金額を「3,980 円」にすると公表。
10 月20 年 3 月中旬の実施を表明。
12 月公取委が独禁法違反のおそれを指摘。 楽天は 3 月 18 日の開始を出店者に通知。
20 年1 月22 日一部出店者が公取委に、楽天に対する調査と排除措置命令を出すことを要請。
29 日三木谷氏が「予定通り実施」と強調。
2 月10 日公取委が楽天に対し、独禁法違反(優越的地位の乱用)容疑で立ち入り検査を開始。
13 日楽天が送料無料方針を受け退店する出店者への出店料補てんを表明。 「送料込み」と言い換える方針も示す。
28 日公取委が東京地裁に、楽天への緊急停止命令を出すよう申し立て。

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楽天の送料無料化、3 月 18 日開始に "変更なし" 公取委「緊急停止命令」受けてもなお

公正取引委員会が 2 月 28 日、「楽天市場」の送料無料化施策について緊急停止命令を東京地方裁判所に申し立てたのに対し、楽天は同日、これまでの予定通り 3 月 18 日に送料無料化を実施すると発表した。

この施策は、楽天市場で 3,980 円以上の注文をした際に送料を無料にする「共通の送料込みライン施策」と呼ばれるもの。 送料分を出店者が負担する(送料分を価格に上乗せ)形となることから、出店者で構成する楽天ユニオンなどから「優越的地位の濫用」だと抗議の声が上がっていた。 また、公正取引委員会も 2 月 10 日に立ち入り検査を実施。 28 日に独占禁止法第 19 条(同法第 2 条第 9 項 5 号ハ)違反の疑いがあることから、緊急停止命令の申し立てに至った。

楽天では、「緊急停止命令の申立てを受けた事実を厳粛かつ真摯に受け止め、裁判所の手続きに適切に対応する」とコメントしつつも、「本施策に関しては法令上の問題はないと考えている」と反論。 公正取引委員会の調査については、理解を得るべく全面的に "協力" する所存とする。 楽天広報部も、送料無料化について「さまざまな観点から検討し、法令遵守している施策」と説明する。 なお、今回の施策による出店取りやめを検討している店舗向けに、出店料を日割りで返金する特別措置を実施。 さらに、セーフティネットとしての新たな支援施策をを店舗に案内し、売上や利益についての懸念点を解消するしている。 (Cnet = 2-28-20)

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楽天が 8 年ぶりの最終赤字 「送料無料」の裏にあった誤算

楽天の三木谷浩史会長兼社長は 2 月 13 日の決算会見で、ネット通販サイト「楽天市場」の送料無料化を予定通り 3 月 18 日から実施すると発表した。 楽天関係者が明かす。 「実は幹部は揃って送料無料化に反対していたのですが、三木谷社長は何を言っても聞かず、『とにかくやる』と周囲の反発を撥ねつけた。 2,000 円以上で送料無料を原則としているアマゾンに対抗するために、強行したのです。」

昨年 8 月、楽天は規約を変更し、1 店舗で税込み 3,980 円以上を購入した場合、出店者側の負担で一律送料無料にすると発表。 出店者が抗議し、今年 2 月 10 日に公正取引委員会が楽天に立入検査に入る事態に。 「アマゾンは自社で物流システムを構築し、在庫管理を行っています。 一方の楽天はネット上の場所を貸しているだけなのに、有無を言わさず規約を変えたり、楽天銀行への振り込みを強要するなど、強引なやり方に出店者から批判が高まっています。(IT アナリスト)」

強気な姿勢の裏で、楽天は昨年 12 月、独占禁止法に抵触するかどうかを公取委に相談していた。 その際、公取委から「優越的地位の乱用のおそれがある」という回答を得ていたのである。 公取委に喧嘩を売ってまで、なぜ強引に進めるのか。

第 4 のキャリアの誤算とは?

その背景には、三木谷氏が「アポロ計画」とぶち上げた第 4 のキャリア(携帯電話会社)での誤算がある。 本格サービスの開始は当初の昨年 10 月からずれ込み、今年 4 月を予定している。 「楽天は 4G 対応の通信ネットワークの構築を急いでいるが、基地局の設置数は携帯各社が 20 万局規模なのに対し、3 月末で 4,400 局にとどく程度。 東名阪以外は KDDI のネットワークを借用している。(同前)」 他方、携帯各社は 4G よりも 100 倍速く、1,000 倍容量が大きくなる 5G への移行を 3 月から開始する予定だ。 楽天の出遅れ感は否めない。

楽天の 2019 年 12 月期決算は、8 年ぶりに最終損益が約 319 億円の赤字に転落した。 「米配車サービスのリフトを減損したのは、これまでの M & A のツケが出てきたことのあらわれでしょう。 フリーキャッシュフローは 320 億円あり、当座の懸念はないが、物流整備に 2,000 億、通信事業に 6,000 億と投資が集中し、財務を圧迫することになる。 こうした投資を継続するため、売上増の即効性がある送料無料を打ち出さざるを得なかったのです。(金融機関幹部)」 三木谷氏は「5 万店舗を載せた楽天という船が荒波を乗り切るにはこれしかないという思いだ」と強調するが、船から乗組員が下りれば元も子もない。 (森岡英樹、文春 online = 2-28-20)

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楽天の「送料無料」、独禁法違反のおそれ 来春導入予定

大手通販サイト「楽天市場」を運営する楽天(東京)が打ち出している「送料無料」の方針について、公正取引委員会が楽天に「独占禁止法違反のおそれがある」と伝えていたことが、関係者への取材でわかった。 アマゾンに対抗するため来春の導入を目指して進められてきたが、現状のままでの導入は難しくなり、見直しや変更を迫られることになる。 楽天による送料無料の方針は今年 1 月に打ち出され、一定額以上を購入すれば無料とする仕組み。 8 月にはその価格ラインを「3,980 円(税込み)」と発表し、10 月末には「沖縄・離島等」のラインを 9,800 円とするとともに、制度開始を 2020 年 3 月中旬にすると発表していた。

関係者によると、楽天はこの方針について、独禁法に抵触しないかどうかを公取委に相談。 それに対し公取委は、今月までに口頭で「違反のおそれがある」と回答したという。 出店者に送料負担を強いかねないことから、独禁法が禁じる優越的地位の乱用に当たる可能性を指摘したもようだ。 楽天はこれまで、送料を無料にして販売価格を分かりやすくすることで集客力が高まり、売り上げが伸びるなどと出店者側に説明。 実際にかかる送料については、本体価格に上乗せすることで対処できるという考え方を示してきた。

これに一部の出店者が「出店者が送料を負担することになる」と強く反発。 「どこに送るのか事前にわからないのに、送料を予想して上乗せするのは難しい」、「値上げすると検索順位が下がるため、送料を自社負担して値上げしなくて済む大手出店者には勝てない」などの声も上がった。 楽天から相談を受けた公取委も、送料無料が売り上げ向上につながるかは不透明なため、売り上げが上がらなければ結果として出店者側に負担を強いかねないと判断したとみられる。

政府が楽天を含めた「プラットフォーマー (PF)」と呼ばれる巨大 IT 企業に対する規制を進める中、公取委は 10 月にまとめた報告書で、PF による一方的な規約変更などを問題視した。 公取委はこの報告書に沿うかたちで監視を強めており、楽天への回答もその姿勢の表れと言える。 楽天関係者は取材に対し、公取委からの指摘を認めたうえで、「送料無料は楽天市場の主要施策の一つ。 どうすれば違反にならないか検討している。」と話した。 楽天は「現状、(送料無料の方針に)変更の予定はないが、今後も引き続き理解、協力をいただけるよう出店店舗との対話を重ねる」などとコメントした。 (中野浩至、asahi = 12-19-19)

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楽天に怒り爆発、「送料改革」に出店者が反旗
公取委もプラットフォーマーの動きを注視

「もはや商売にならないくらい利益を圧迫されてしまう。」 「怒りと戸惑いしかない。」 「楽天自身の直販部門や大手ブランド出店者ばかり優遇している。」 「自分たち中小出店者のことをボウフラ程度にしか思っていないのではないか。」 「これ以上黙って見過ごせない。」

日本最大級のネット通販 (EC) モール「楽天市場」。 ここに出店する一部の事業者が、モールの運営主体である楽天に対し反旗を翻している。 「度重なる一方的な規約変更」に対抗するため、「楽天ユニオン」と称する出店者組合を 10 月初旬に設立。 顧問弁護士も立て、施策に反対する署名活動や、楽天出店者トラブル事例収集、それらを基にした公正取引委員会への情報提供などに向けて動き出している。 同組合関連の連絡網には 10 月末現在、200 近い出店者が名を連ねる。

出店者からの反発がとくに強いのは、楽天が今年 1 月に打ち出した「ワンタリフ」構想だ。 これは消費者が楽天市場内のどの店舗で購入しても、一定額以上であれば一律で「送料無料」とするもの。 「楽天市場への消費者の不満で、とくに多いのが送料体系のわかりにくさ(楽天の三木谷浩史会長兼社長)」だったことから検討が始まった。 8 月にはその送料無料ラインとなる購入金額を 3,980 円とすることが、楽天から発表されている。

送料は基本的に出店者負担

そもそも人が運んでいる以上、送料は「無料」であるはずはない。 消費者にとって無料となれば、その分を出店者が負うことになる。 楽天市場で送料無料とする場合の費用は、これまでもすべて出店者負担だったが、送料無料ラインは出店者ごとに自由に決められたため、自社の利益を圧迫しない範囲で設定している店舗が多かった。 だが今回、送料無料ラインを3980円に統一しなければならない。 かつ、基本的にはすべて出店者負担となる見通しだ。

「利幅の薄い商品は厳しい。 品目を絞るか、退店するしかない。(食品や雑貨を扱う出店者)」、「多くの店舗が送料分を価格に転嫁すれば、楽天での販売価格は全体的に他モールより高くなるはず。 楽天市場自体の魅力低下につながるのでは。(家具を扱う出店者)」 出店者からはこうした不安が噴出する。 また、送料体系のわかりにくさ解消については、「送料込みの総請求額で商品を比較できるようにすれば済むのでは」という意見も聞かれる。

楽天は出店者向けに在庫管理、出荷作業などを一括で担う総合物流サービス「楽天スーパーロジスティクス」を 2012 年から展開。 ラストワンマイル(消費者への配送)も含め楽天のコントロールを強化する「ワンデリバリー」構想も打ち出し、これら業務を出店者が個別に行うよりコストを抑えられるような仕組み作りに邁進している。 が、出店者によって扱う商品や売り方はさまざま。 すべての出店者にとって楽天の施策が好条件というわけではない。

楽天は出店者向けの戦略共有会や全国各地で行うタウンミーティングで、ワンタリフ構想の意図や見込まれる効果について説明を行ってきた。 ここで出された出店者の意見も踏まえ、10 月 31 日には一部方針を転換。 配送先が沖縄や離島の注文については、送料無料ラインとなる購入金額を 9,800 円とする旨を出店者に通知した。 なお、こうした例外を設けつつも、送料無料ライン統一への規約改定は 2020 年 3 月中の実現を目指すという。

楽天ユニオンの顧問弁護士を務める早稲田リーガルコモンズ法律事務所の川上資人弁護士は、楽天の送料無料ライン統一施策が、独占禁止法が禁止する優越的地位の濫用に当たる可能性があると指摘する。 「楽天がすべて送料を負担するというなら別だが、そうでなければ一方的かつ店舗側に不利益な規約改定であり、極めて悪質。(川上氏)」 この点について楽天は「当社が実施する各施策については、施策はさまざまな観点から検討を行い、法令遵守に努めている(広報)」と回答した。

消費者にとっては歓迎すべき施策のように思われる「送料無料」だが、そうとも限らない。 「楽天だけの問題ではないが、同社の送料無料という方向への誘導は EC 市場全体に大きな影響力を持つ。 長い目で見て、本当に消費者のためになるのか? という疑問はある。」 個人・法人から EC のトラブル相談を受け付け、EC 事業者の運営に役立つ情報共有などを行っている一般社団法人 EC ネットワークの沢田登志子理事はそう懸念を示す。

「送料無料が当たり前 = 送料無料でなければ買わない 、という消費者が増えると、『送料をご負担いただいたうえで価値のある商品を提供する』という商売が成り立ちにくくなる。 価格競争、ポイント合戦に加え、送料負担で疲弊し、特徴のある商品を扱っている中小零細の店舗が EC 市場から消えてしまう。 結果的に消費者の選択肢が 狭まってしまうのではないか、という危惧がある。(沢田氏)」

過熱するプラットフォーマー間の競争

もちろん、これは楽天1社に限った問題ではない。 EC におけるデジタルプラットフォーマー間の競争は熾烈を極めている。 アメリカのアマゾンが日本でも勢力を増すのに加え、Z ホールディングス(旧ヤフー)がファッション EC の ZOZO を買収するなどさまざまな挽回策を講じる。 アマゾンと双璧を成す楽天も、前述の「ワンタリフ」、「ワンデリバリー」などの構想を実現することで、他モールに利用者を奪われまいと奮闘する。 東洋経済のインタビューに、楽天・コマースカンパニーロジスティクス事業の小森紀昭ヴァイスプレジデントは「本当の日常遣いに適した形に進化しなければ、今後の楽天市場の成長はない」と語っている。

こうした競争を経て、EC 市場における影響力は数社の巨大プラットフォーマーに集約されてきた。 競合を意識するあまり、出店者に対し優越的地位の濫用に当たるような施策の強行は増えているとみられる。 公正取引委員会は 10 月 31 日、「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査(オンラインモール・アプリストアにおける事業者間取引)」の報告書を公表し、出店者などの事業者に「不利な条件を押しつけているおそれがある」と指摘した。

同調査は公取や経済産業省、総務省が昨年立ち上げたデジタルプラットフォーマーに関する検討会での議論を経て、とくに問題点の指摘が多かったオンラインモールとアプリストアについて、運営事業者、出店者などに調査したものだ。 報告書では、今後の取り組みについて「特に(EC モールなどの)運営事業者が、@ どのように規約を変更しているのか、A 利用事業者の取引データを自らの直接販売に利用していないか、B 検索アルゴリズムを操作することなどにより自己又は自己の関連会社を優遇していないか、という点については、デジタル・プラットフォームに特徴的な問題も含んでおり、(中略)引き続き注視していく」と危機感を示している。

楽天ユニオンでも、前述の送料無料ライン導入施策に加え、楽天が店舗向けに提供する決済システム「楽天ペイ」の導入強制、出店者が規約違反を起こした際の罰金制度など、さまざまな規約改定について「一方的で不当なもの」として情報発信を強化している。 公取の指摘する、@ の内容とも符合しており、反発の声はさらに大きくなりそうだ。

自社 EC を強化する出店者も

出店者の中には自社 EC を強化する戦略に舵を切り、EC モールへの依存度を下げようとする動きも出始めている。 とはいえ、楽天やアマゾンの集客力はなおも絶大であり、楽天ユニオンへの参加メンバーにも「やめるにやめられない」という出店者は少なくない。 「楽天には感謝している部分もある。 実店舗の売り上げがどんどん低迷してきたときに、EC がなければ人生終わっていたかもしれない。 今の楽天のやり方には賛同できないが、昔のように、規約をころころ変えない "大人の会社" に戻って、また一緒に成長を目指したい。」 組合活動の中心メンバーの一人はそう話す。

1997 年、三木谷氏率いる 6 人の従業員で開業された楽天市場。 「シャッター通りと化す地方の商店街を目の当たりにする中で、EC で日本をエンパワーメントしたいと思った。」 三木谷氏は現在でも、当時のこのエピソードをたびたび口にする。 だが、課金体系の一方的な変更などで、楽天に対する出店者の不満は長年くすぶってきた。 さらにここ数年のプラットフォーマー間の競争が一段と激化し、出店者へのしわ寄せはいよいよ拡大。 「我慢の限界」と感じる出店者が一気に増えたとみられる。

携帯電話事業などにも挑戦が広がる中、基幹事業である楽天市場の安定と信頼獲得はより重要性を増す。 少なからぬ出店者との間に生まれてしまった亀裂を修復する必要があるだろう。 (東洋経済 = 11-1-19)


なぜヤフーが ZOZO を? 電撃発表の背景にあるものは

電撃的に発表されたヤフーによる ZOZO の買収。 ソフトバンク傘下で、最近 E コマース(ネット通販)事業の拡大路線を明確にしているヤフーと、創業者の前沢友作氏が特徴的なキャラクターとアイデアで事業を引っ張ってきた ZOZO がなぜ今、結びつくことになったのか。

背景には、拡大を続ける E コマース市場を巡る競争激化がある。 ヤフーは近年、E コマース事業のてこ入れを続けてきた。 2013 年には「ヤフーショッピング」の出店にかかる手数料を無料にし、「E コマース革命」を掲げた。 それでも、E コマースでの取扱高は楽天・アマゾンに引き離され、強みだったオークション事業「ヤフオク!」も、メルカリなど新興勢に押されている。 さらなる強化が急務となっていた。

そこでヤフーは今秋、モール事業「PayPay モール」やフリマ事業「PayPay フリマ」を新たに始める。 昨年ソフトバンクと共同で始め、「100 億円還元」が話題となった QR コード決済サービス「PayPay」を中心にすえ、既存の「ヤフーショッピング」を強化する考えだ。 今回、若年層の利用が多い ZOZO を PayPay モールに出店させることで、利用者層を拡大する。 弱かったファッション分野も拡充するねらいだ。

E コマース強化の中では、子会社とのあつれきも起きた。 ヤフーは今年 1 月、子会社のオフィス用品大手アスクルに対し、共同で展開するネット通販「LOHACO (ロハコ)」の事業譲渡の検討を申し入れていた。 だがアスクルが譲渡を断ると、対立の末、今年 8 月にはアスクル創業者で当時社長だった岩田彰一郎氏の電撃解任に踏み切った。 ヤフーは今年 6 月、ソフトバンクの子会社となっている。 急激な E コマース事業の強化には親会社であるソフトバンクグループの意向もあるとみられる。

一方の ZOZO は、19 年 3 月期の営業利益は前年比 21.5% 減の 256 億円と、上場以来初の減益となっていた。 収益の悪化はプライベートブランド (PB) 事業の迷走が大きい。 体形にぴったりの服を提供するとした PB 事業では、採寸専用の「ゾゾスーツ」を無料配布したものの、商品購入に結びつかないケースが続出。 製造が大幅に遅れるといった生産体制の問題も起き、19 年 3 月期の PB 事業の売り上げは目標の 200 億円に対して 27 億円にとどまっていた。 ZOZO はヤフーとの資本業務提携で、ソフトバンクの携帯電話利用者などを含め、顧客を拡大することをねらう。 (栗林史子、asahi = 9-12-19)

ヤフー〉 1996 年 1 月設立。 同年 4 月にネット情報検索のサービス「Yahoo! JAPAN」を開始。 99 年 9 月にはサービスをネットオークションやネット通販にも拡大。 今年 6 月、ソフトバンクの子会社になった。 本社は東京都千代田区。 2019 年 3 月期の売上高は 9,547 億円、純利益は 786 億円。 従業員数は 1 万 2,874 人。

ZOZO〉 1998 年 5 月、前沢友作社長が輸入 CD・レコードの通信販売を手がける「スタート・トゥデイ」を設立。 2004 年にネット上のショッピングサイト「ZOZOTOWN」の運営を開始。 18 年 10 月、「ZOZO」に社名変更。 本社は千葉市美浜区。 19 年 3 月期の売上高は 1,184 億円、純利益は 159 億円。 従業員数は 1,094 人。


ZOZO 離れを火消し? 限定割引価格の非表示を OK に

衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営する ZOZO (ゾゾ)は 26 日、昨年 12 月に始めた有料会員向け割引サービスで、非会員向けにも割引価格を表示するかどうか、アパレル側が選べるようにしたと発表した。 非会員にも割引価格が表示されることで、ブランド価値が下がるとアパレル側が反発。 販売をやめる「ゾゾ離れ」が起きていた。

割引サービスは「ZOZOARIGATO メンバーシップ」。 年 3 千円か月 500 円を払って会員になると、ゾゾタウンの全商品が 10% (初月は 30%)割り引かれる。 割引原資はゾゾが負担する。 割引は有料会員のみが対象だが、利用者の多くを占める非会員向けにも割引価格が表示されていた。 アパレル側は「単なる安売りにとられかねず、ブランドの価値を損ねる」などと反発。 今年 1 月末時点で全体の 3% 超にあたる 42 ショップが商品の販売を取りやめていた。

前沢友作社長は 1 月の決算説明会で「影響は極めて軽微だ」と強調したが、今回の見直しは、一連のゾゾ離れを火消しする意味合いもあるとみられる。 ただ、割引自体は続けるため、アパレル側の不満は解消されない可能性がある。 (筒井竜平、asahi = 2-26-19)


ZOZO が初の減益 19 年 3 月期、PB 不振で純利益 12% 減

ZOZO は 31 日、2019 年 3 月期の連結純利益が前期比 12% 減の 178 億円になる見通しだと発表した。 従来予想は 39% 増の 280 億円で、一転して減益となる。 今期から始めたプライベートブランド (PB) 事業で想定していた需要に届かず、無料配布した「ゾゾスーツ」のコストを補えない。 減益になるのは 1998 年の設立以来、初めてという。 期末配当は従来予想の 22 円から 10 円に引き下げる。 前期は 17 円だった。

「高い勉強代となってしまった。」 同日開いた決算説明会で前沢友作社長は PB 事業の計画未達と業績の下方修正について陳謝した。 ゾゾスーツは顧客が着用し、スマートフォンで撮影すれば採寸できる。 今期からジーンズや紳士服などの PB 事業を開始しておりゾゾスーツを使い顧客にぴったりのサイズの商品を提供するのが目玉だった。

しかし、顧客がゾゾスーツを取り寄せても採寸しないケースが相次いだ。 生産工程でも問題が発生し、PB 事業では 125 億円の赤字を計上する見込みになった。 今期に 200 億円としていた同事業の売り上げ目標は 30 億円に引き下げた。 採寸したデータは衣料品通販サイト「ゾゾタウン」の購入にも活用できる。 取扱高の押し上げ効果があるとみていたが、これも想定に届かなかった。 ゾゾタウンで年間 1 度以上購入する「アクティブ会員」の平均購入金額は 4 万 6,009 円と、前年同期より 700 円近く下がった。

ゾゾタウンの取扱高は増えており、通期の連結売上高は 20% 増の 1,180 億円を見込む。 従来予想からは 290 億円の下方修正になる。 営業利益は 19% 減の 265 億円を見込んでいる。 ZOZO は昨年 12 月下旬、有料会員サービス「ZOZOARIGATO メンバーシップ」を始めた。 税別で年間 3,000 円か月間 500 円を払うと購入額の 10% を割引きする仕組みだ。

前沢社長は「ゾゾタウンの成長を押し上げ、好スタートだ」と話したが、42 店舗が離脱したと明らかにした。 離脱した店舗が取扱高全体に占める割合は 1.1% で「業績への影響は軽微」と説明した。 ただ、サイトに割引価格が表示されることに抵抗がある出店者もいるため「割引価格を表示するかを選べる機能を 2 月中にも始める(前沢社長)」と話した。 ZOZO が同日発表した 2018 年 4 - 12 月期の連結決算は売上高が前年同期比 27% 増の 897 億円、純利益が 16% 減の 136 億円だった。 (nikkei = 1-31-19)


ついに始まる? アパレル「ゾゾ離れ」の現実味

オンワードが全ブランドの商品販売から撤退

地殻変動の前兆か - -。 約 7,000 のブランドが出店する、国内最大のファッション通販サイト「ZOZOTOWN (ゾゾタウン)」。 そのゾゾタウンで、「23 区」や「自由区」などを展開する老舗アパレルのオンワードホールディングスが昨年 12 月 25 日、傘下に持つ全ブランドの商品販売を取りやめた。

ゾゾタウンは 12 月 25 日に始めた会員割引制度「ZOZOARIGATO メンバーシップ」に、他のアパレル企業と同様にオンワードへも参加を呼びかけたが、双方の主張が折り合わなかった。 同制度は、年額 3,000 円もしくは月額 500 円の有料会員になるとゾゾタウンでの商品購入金額から 10% 割引される。 割引された額を指定する団体への寄付などに使うこともできるため、運営元の ZOZO は「社会貢献型のサービス」と説明している。

同制度での割引分は ZOZO が負担するため、ブランドにとって直接的なマイナス影響はない。 だが、オンワードは「自社商品の値引きが日常的に行われることでブランド価値を毀損する可能性が高い」と判断、撤退を決めた。

深まる出店ブランドの苦悩

オンワードはネット通販での売り上げのうち、自社が運営するサイトでの販売比率が 7 割と高い。 ゾゾタウンへの依存度が低いため、撤退による業績への影響は軽微とみられる。 アパレル業界内でも、オンワードの撤退は違和感なく受け止められている。 もともと百貨店向けのブランドが多いオンワードは、比較的若い顧客がメインのゾゾタウンとの親和性は必ずしも高くなかった。

実はここ 1 - 2 年、ブランドイメージの問題などから、オンワードのように "脱・ゾゾタウン依存" を模索するブランドがじわりと増えている。 ゾゾタウンは 2004 年のサイト開設以来、20 - 30 代を主軸としたファッションに関心の高い若者を顧客に獲得してきた。 サイズ表記などを充実させたサイトの利用しやすさや品ぞろえの豊富さを武器に、「試着が必要な服はネットで売れない」という常識を覆し、国内最大のファッション通販サイトへと飛躍を遂げた。

サイト開設当初は、「ユナイテッドアローズ」や「ビームス」といったセレクトショップ系の中高価格帯のブランドが中心だった。 そのため利用者の間では「ゾゾタウンへ行けばおしゃれな服が買える」というイメージが根付き、それを見越して出店を決めたブランドも多かった。

平均単価は 5 年前より 3 割下落

だが、ZOZO の事業規模が拡大するにつれ、ゾゾタウンが取り扱うブランドの幅も急速に広がった。 特に、この数年は「楽天やアマゾンに出店するような(安価な)ブランドが増えて、レッドオーシャン化している。(若者向けアパレル首脳)」 実際、ゾゾタウンの直近の平均商品単価は 3,655 円(2018 年度第 2 四半期の実績)と、5年前の5011円から3割近く下落。実店舗では横並びにならないような高価格帯のブランドと安価なブランドの商品がサイト上に入り乱れ、ネット上では素材感の違いなどが伝わりづらいこともあり、価格だけで比較購買される傾向が一段と強まった。

さらに、頻繁に開催される割引セールや各ブランドが乱舞するクーポンでの値引き合戦も白熱。 その影響で「ゾゾタウンで常に安く売られている」というイメージが付きまとうことを懸念するブランドが増えるようになった。 売り上げに応じて ZOZO に支払う出店手数料の高さも、ブランド側が "脱・ゾゾタウン依存" を模索する理由になっている。

ブランドからの手数料収入を収益柱とする ZOZO は、新規に出店したブランドに課す手数料の比率を年々引き上げている。 現在の平均は売り上げに対して 30% 台半ばに達し、安価なブランドでは残る利益はごくわずか。 「売り上げが増加しても利益は残らない」といった事態を防ぐため、ブランドによっては新商品や主力商品は手数料の掛からない自社サイトで売り、ゾゾタウンでは売れ残った在庫を集中的に販売するなど、サイトを使い分ける動きも出始めている。

方針次第ではゾゾ離れも

圧倒的な集客力を誇るゾゾタウンに出店すれば 売り上げ確保やブランドの認知度拡大を図れるため、多くのブランドはなかなかゾゾタウン依存から抜け出せない。 だが、オンワードのように自社サイトでの販売比率が比較的高いアパレルは、今後の ZOZO のサービス方針次第で「ゾゾ離れ」が続く可能性もある。

ZOZO の前澤友作社長は昨年末、2018 年を漢字四文字で表すと「試行錯誤」だったとツイッター上で振り返った。 昨年 1 月に始動し、商品の発送遅延などのトラブルが多発した PB (プライベートブランド)事業の難しさを指したものと想定される。 ゾゾタウン事業は今のところ順調な拡大が続くが、状況によっては難しい局面を迎えることになりそうだ。 (真城愛弓、東洋経済 = 1-5-19)


ZOZO 前澤社長、元日に 39 億 6,865 万円! 過去最高の一日取扱高を記録

ファッション通販サイト「ZOZOTOWN (ゾゾタウン)」などを運営する株式会社 ZOZO 前澤友作社長 (43) が 2 日、自身のツイッターを更新。同社が元日に過去最高の一日取扱高を記録したことを公表した。 前澤氏はツイッターで「【速報】 2019 年元日の ZOZOTOWN 取扱高が 39 億 6,865 万円(昨年対比 126%)となり、過去最高一日取扱高の記録を更新しました」と報告した。 幸先のいいスタートに「皆さまありがとうございます!!」と感謝の言葉をツイートしていた。 (スポーツ報知 = 1-2-19)