70 歳以上でも働ける企業、初の 2 割超 厚労省調査

70 歳以上でも働ける企業の割合が今年、初めて 2 割を超えた。 厚生労働省が 21 日、「高年齢者の雇用状況」として発表した。 人手不足のなか、企業は高齢者を貴重な担い手として位置づけ、定年制の廃止などを進めている。 従業員 31 人以上の約 15 万 3 千社に 6 月 1 日時点の状況を聞き、97% が答えた。 条件つきを含めて 70 歳以上でも働ける企業は約 3 万社にのぼり、前年比 1.1 ポイント増の 20.1% に達した。 増加は 2 年連続で、比べられる 2009 年以降で過去最高だった。

希望者全員が 65 歳以上まで働ける企業も約 10 万 8 千社に増え、72.5% を占めた。 年金支給開始年齢の引き上げに伴って、定年を 65 歳以上にしたり、継続雇用制度を設けたりする企業が増えた。 「人手不足のため、働ける限り働いてもらいたいという会社も多い(厚労省)」という。 安倍政権が掲げる「1 億総活躍社会」の実現に向け、政府も高齢者の就労を後押しする。 厚労省はハローワークに 65 歳以上の求職者専用窓口を設けたほか、16 年度からは 65 歳以上の従業員を多く雇っている企業への助成金を拡充するなどし、高齢者の雇用環境を整える方針だ。 (北川慧一、asahi = 10-21-15)

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シルバー人材不足 定年延長・再雇用広がり

60 歳以上に働く場を提供している各地のシルバー人材センターが人材難に頭を悩ませている。 団塊世代が 65 歳を迎えるなど高齢者人口は増える一方、企業の定年延長や再雇用などで働き続けられる環境にあるため、センターへの登録が伸び悩む。 東海地方の各センターも会員確保に向け、知恵を絞っている。

愛知県大府市シルバー人材センターが 2012 年 4 月、大府市に開店した「喫茶さくら」。 センター運営の喫茶店は珍しい。 メニューは飲み物だけだったが、会員の要望でカレーライスなどの軽食が加わった。 会員手作りの小物販売もあり、口コミで評判が広がった。 来店客が増え、時給は当初の 200 円から 850 円へと大きく跳ね上がった。 開店時から働く同市の白木幸さん (75) は「地域の人と触れ合い、社会に役立つことがうれしい。 報酬で孫に小遣いも出せますよ。」と笑顔を見せた。

総務省が発表した 65 歳以上の高齢者人口(9 月 15 日現在)は、推計 3,384 万人と過去最高になった。 全国のシルバー人材センターの会員数は、09 年度の約 79 万人をピークに 14 年度は約 72 万人と年々減少している。 全国シルバー人材センター事業協会(東京)は、希望者全員を 65 歳まで雇用するよう企業に義務づけた改正高年齢者雇用安定法が 13 年 4 月に施行され、再雇用や定年の引き上げが進んだことが背景にあるとみる。

東海 3 県でも会員の減少が進む。 対策として愛知県センター連合会は、月 2 回だった入会説明会を随時開いたり、調理や剪定せんていなどの技能講習を充実させたりした。 さらに事務職や介護分野の仕事も開拓した。 岐阜県山県市センターは今年 2 - 3 月、企業の退職者を対象に説明会を初開催。 三重県名張市センターは、休耕田で栽培した野菜などの販売過程で、農家の新規会員を獲得したという。

愛知県センター連合会の後藤育夫常務理事は、大府市の喫茶店は成功例とした上で、「会員の減少が進むと、仕事の受注が減るという悪循環に陥る。 このままでは地域に貢献してきたセンターの存在自体を失いかねない。」と心配する。 (yomiuri = 9-22-15)

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シルバー人材センターの登録者、労働時間上限を緩和へ

シルバー人材センターを通じて働く高齢者について、週 20 時間までしか働けない規制を年内にも緩和する方向で、厚生労働省が検討を始めた。 年々増える高齢者に働きやすい環境を整え、人手不足のなか活用したいという自治体などの要望にも応える。 人材センターに登録する人は、65 歳以上の労働力人口の 1 割に相当する。 高齢者の大きな受け皿になっているため、これを 30 - 35 時間程度まで広げる方向だ。

厚労省の生涯現役社会の実現に向けた検討会で、8 日示された報告書の素案に盛り込まれた。 65 歳の定年後も働き続けたいという人は多い。 あわせて、65 歳以上にも雇用保険を適用することや、高齢者を雇う企業への支援の充実策も検討していく。 人材センターで登録した会員に紹介する仕事は、駐車場の管理から介護の補助まで幅広いが、短期的で簡単な作業しかできない。 現役世代の雇用に配慮し、民間企業を圧迫しないようにとの考えから、原則として労働時間は週 20 時間、労働日数は月 10 日を超えないよう、厚労省が通達に基づき指導しているためだ。

こうした規制から利用しにくいという高齢者もいて、会員数はこのところ減少傾向だ。 一方で介護や農作業などの現場は、賃金水準が低く若い人材が集まりにくい。 高齢者をもっと活用したいという自治体などの要望が高まっていたが、規制が「壁」になっていた。 全国の人材センターへの調査では、約 6 割が就労時間や業務内容の条件の緩和や撤廃を求めている。(末崎毅、平井恵美、asahi = 5-9-15)


年休取得率、5 割割れ 政府目標の「7 割」は遠く …

民間企業や医療法人、社会福祉法人などで、2014 年に従業員が与えられた年次有給休暇を取った割合は、47.6% だった。 厚生労働省が 15 日発表した。 政府は 20 年までに取得率 70% をめざしているが、目標達成は遠い。 従業員 30 人以上の 6,302 法人を対象にした就労条件総合調査で、4,432 法人が答えた。 民間企業だけの取得率は 47.3%。 企業のみを対象としていた前回調査より 1.5 ポイント低く、15 年連続で 50% を下回った。

業種別では、製造業や卸売業・小売業などで前年に届かず、厚労省の担当者は「景気がよくなり、製造業などで残業時間が増え、休暇を取りにくくなったのではないか」と話す。 政府は今年の通常国会に提出した労働基準法改正案で、年次有給休暇を 10 日以上与えられた労働者については、5 日分は企業側が時期を決めて取らせるよう企業に義務づける内容を盛り込んだ。 ただ、法案には残業代や深夜手当が払われなくなる新たな制度も盛り込まれており、「残業代ゼロ法案」などと批判が強い。 (asahi = 10-16-15)


貧困家庭の就学援助、27 市町村が縮小 「財政厳しい」

経済的に苦しい家庭の小中学生に、学用品の購入費や給食費、修学旅行費などを補助する「就学援助」の対象が今年度は、27 市町村で縮小された。 文部科学省が 6 日発表した調査結果で明らかになった。 17 市町だった昨年 9 月より多く、補助を打ち切られた子どもが増えた可能性がある。

就学援助は、生活保護世帯と、それに準じて生活が困窮している「準要保護」の子どもが対象。 約 151 万 5 千人とされ、小中学生全体の 15.42% を占める(2013 年度)。 生活保護世帯には国が補助。 準要保護については、市区町村が平均で年 7 万円相当を補助する。 対象者は、生活保護を受ける所得基準(4 人家族で年収約 230 万円)を使うなどして市区町村が決める。 「生活保護の所得基準の 1.3 倍」が一例だ。 文科省によると、全国の 6 割に当たる 1,067 市区町村が生活保護の基準をもとにしている。 (高浜行人、前田育穂、asahi = 10-10-15)


福島原発、除染現場に違法派遣の疑い 青森、4 人逮捕

東京電力福島第 1 原子力発電所事故に伴う福島県楢葉町での除染作業に作業員を派遣し、労働者派遣法が禁ずる業務に従事させたとして青森県警は 7 日、同法違反の疑いで、建設会社社長で青森県大間町議の佐々木信彦容疑者 (37) = 大間町大間内山 = ら 4 人を逮捕した。 県警によると、容疑をおおむね認めている。

4 人の逮捕容疑は 2013 年 11 月から 14 年 2 月までの間、楢葉町で国の直轄除染を受注した下請け業者に自社の従業員計 11 人を派遣し、表土はぎ取りなどの建設業務をさせた疑い。 労働者派遣法は、労働者の安全に責任を持つ観点などから、建設業務への派遣を禁止している。 除染作業に当たった派遣労働者から 14 年 5 月、青森労働局に相談があり発覚。 労働局がことし 6 月に県警に告発していた。 (kyodo = 10-7-15)


待機児童 5 年ぶり増加 受け皿拡大の期待、申込者急増

認可保育施設に入れない待機児童は 4 月 1 日時点で 2 万 3,167 人に上った。 前年同時期よりも 1,796 人多く、5 年ぶりに増加した。 4 月に「子ども・子育て支援新制度」が始まり、保育の受け皿は計画以上に整備されたが、利用申込者が前年より 13 万人以上も増えたことが要因。 厚生労働省が 29 日に公表した。

新制度では、定員が 6 - 19 人の小規模保育などを新たに認可対象とし、幼稚園と保育所の機能を併せ持つ「認定こども園」の整備も促している。 定員 20 人以上の保育所も含めた認可施設、自治体が独自に補助を出したり国の補助を受けたりしている認可外施設、幼稚園での長時間預かりを加えた定員数は約 262 万 7 千人になる。 前年より約 14 万 6 千人分 (5.9%)、2013 年度からの 2 年間では約 21 万 9 千人分が増えた。 政府は 2013 年度からの 2 年間で 20 万人分、5 年間で計 40 万人分の受け皿を増やすとしており、最初の目標はクリアした。

認可保育所や保育所型・幼保連携型認定こども園の利用者は、前年より約 6 万 4 千人 (2.8%) 増の約 233 万 1 千人。 ほかに小規模保育や家庭的保育などで約 2 万 4 千人、幼稚園型認定こども園などで約 1 万 9 千人を受け入れた。 申込者は前年から約 13 万 1 千人多い約 247 万 3 千人。 昨年の増加数は約 5 万 3 千人で、約 2.5 倍になった。 厚労省の担当者は、働く女性が増えている中で「新制度で子どもを預けられるとの期待が高まり、潜在需要が想定以上に掘り起こされた」とみている。 (伊藤舞虹、asahi = 9-29-15)

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「隠れ待機児童」 3 万人 役所発表と異なるのはなぜ?

認可保育所などに入れない待機児童について朝日新聞が 20 政令指定都市と東京 23 区に聞いたところ、計約 7 千人いることがわかった。 前年より 16% 減った。 定員増などが一因とみられる。 だが、入園できないのに、待機児童に数えられない「隠れ待機児童」を集計すると、計約 3 万人いた。 国と一部の自治体が公表する待機児童の数は実態と合っていないとして、親たちから不信の声が上がっている。

43 自治体の4月1日現在の待機児童は厚生労働省の定義で計 7,063 人だった。 前年の同時期より計 1,347 人減った。 待機児童が減った理由として、4 月から始まった「子ども・子育て支援新制度」で認可保育施設の種類が増え、認可の範囲が広がったことなどがある。 昨年度まで認可施設は、認可保育所と、幼稚園と保育所の機能を併せ持つ「認定こども園」の二つだったが、基準を満たした小規模保育所など 6 種類に増えた。

「待機児童ゼロ」と答えたのは 8 市区。 川崎市と相模原市が今年初めて「ゼロ」になった。 東京都千代田区と千葉、新潟、名古屋、京都、北九州の 6 市区は前年に続いて「ゼロ」だった。 前年より減ったのは 22 市区だった。 川崎市は、認可保育所や小規模保育所の新設などで定員を前年より 2,544 人増やした。 また、保育施設に入れなかった人に市側から連絡を取って空きのある施設を紹介し、「定員枠が無駄にならないよう調整した」という。 相模原市も、定員を前年より 1,333 人増やした。

一方、待機児童が最も多かったのは東京都世田谷区で 1,182 人。 続いて、仙台市が 419 人、浜松市が 407 人、熊本市が 397 人、東京都板橋区が 378 人だった。 前年より増えたのは 15 市区だった。

朝日新聞が、各自治体の認可保育施設に申し込んだ人の数から、実際に入れた子どもの数と、厚労省の定義で待機児童とされた人数を引いた数を「隠れ待機児童」として集計したところ、計 3 万 488 人だった。 「隠れ待機児童」の内訳は、@ 保育施設に入れずに育休を延長した、A 自宅でインターネットなどで求職中、B 東京都の認証保育所など自治体が補助をする認可外施設に入った、C 空きのある保育施設があり、自治体が通えると判断したが、入らなかった、などのケースだ。

大阪市が最多で 2,709 人。 続いて、横浜市が 2,526 人、川崎市が 2,231 人、さいたま市が 1,720 人、東京都杉並区が 1,673 人だった。 待機児童に数えられない親たちの思いは切実だ。 (伊藤舞虹、長富由希子、田中陽子、asahi = 8-3-15)

前 報 (4-14-15)


70 歳 5.2 倍、30 歳 2.3 倍 = 公的年金の世代格差で試算 - 厚労省

厚生労働省は 28 日、世代ごとの公的年金の給付と負担の関係について最新の試算を公表した。 厚生年金受給のモデル世帯(40 年加入、妻が専業主婦)では、今年 70 歳の 1945 年生まれは、生涯を通じて支払った保険料の 5.2 倍の年金が受け取れるが、同 30 歳の 85 年生まれは 2.3 倍にとどまった。 試算は、加入者が平均余命まで生きたと仮定して実施。 70 歳は 1,000 万円の保険料負担に対し、5,200 万円の年金を受け取れる。 一方、30 歳では 2,900 万円に対して 6,800 万円だった。 (jiji = 9-28-15)


すかいらーく、パート雇用を 70 歳まで延長

外食大手すかいらーくは 17 日、パート従業員を 70 歳まで雇用すると発表した。 これまでは 65 歳までだった。 国内最大のファミリーレストラン「ガスト」などを運営しており、パートは 8 万人。 業界で先駆的な取り組みになりそうだ。

すかいらーくでは、パートが 60 歳になると時給が下がり、能力にかかわらず 65 歳で契約更新を打ち切っていた。 現場の店長からは「まだまだ働ける人も多いのにもったいない」との声が上がっていたという。 今回の変更では、65 歳で時給が下がるが、健康状態に問題がなく、本人の希望があれば 70 歳まで働ける。 正社員約 4 千人についても定年を 65 歳に延長。 それ以降は、70 歳まで再雇用できる制度にした。 (asahi = 9-17-15)


改正派遣法が成立 派遣社員の働き方、どう変わる?

過去 2 度も廃案になり、政府が「三度目の正直」で国会に出していた改正労働者派遣法が 11 日、衆院本会議で可決、成立した。 企業は人を代えれば派遣社員を使い続けられるようになった。 働き手からみると、3 年ごとに職を失う危機に陥りかねない。 1985 年の制定以来となる大転換だ。 これまで企業が派遣社員を受け入れられる期間は、専門的とされる「26 業務」に制限は無く、それ以外は原則 1 年、最長 3 年だった。 改正法はこの制約を事実上撤廃し、最長 3 年ごとに人を代えれば同じ仕事を派遣社員に任せ続けられるようになる。

派遣社員の働き方は大きく変わる。 最も影響するのは、これまで派遣期間が無制限だった 26 業務の人たちだ。 都内に住む 50 代の派遣社員の女性は約 15 年間、「事務用機器操作」として、同じ会社でパソコンを使って経理書類の作成などに携わってきた。 お茶出しや電話受けといった様々な業務もこなしてきた。 これまでは 3 年を超えて派遣社員として働くことができた。 だが、今後は派遣会社で無期雇用されている場合を除いて、同じ部署での勤務は 3 年まで。 女性は今年に入って派遣先から「3 年後にはやめてもらう」と通告を受けた。 法改正を理由にされたという。 (北川慧一、編集委員・沢路毅彦、asahi = 9-12-15)

前 報 (6-19-15)


「ブラック企業対策法」が成立 違反企業の求人ストップ

若い働き手をこき使う「ブラック企業」対策などを盛り込んだ「青少年雇用促進法」が、11 日の衆院本会議で全会一致で可決し、成立した。 労働法令違反を繰り返す企業の求人を受けつけないなどの内容で、すでに参院は通過していた。 新卒者などを守るねらいがあり、施行日は 10 月 1 日だが、一部は来春からの施行になる。 勤労青少年福祉法を一部改正し、名前を青少年雇用促進法に改めた。 (asahi = 9-12-15)


就職内定率、8 月末で 69% ほぼ前年並み

来春卒業する大学生・大学院生の 8 月末時点の就職内定率は、前年の同じ時点より 0.7 ポイント低い 69.1% だった。 就職情報会社マイナビが 10 日、自社の学生会員を対象とした集計結果を発表した。 今年から大手企業の選考解禁が例年より 4 カ月遅い 8 月 1 日になり、7 月末時点では前年を 10.2 ポイント下回っていたが、解禁後 1 カ月でほぼ前年並みに追いついた。

中小企業や経団連のルールに縛られない大企業もあり、内定率は 7 月末時点でも 57.0% まで上がっていたが、8 月だけで 12.1 ポイント上昇した。 今年は大企業が後から内定を出すケースも多く、マイナビは「企業は今後、内定辞退に備える必要性が高まっている」とみている。 内定を得た人のうち、8 月末までに就職活動を終えた人は 68.4% だった。 一方で、残り3割は就活を続けるとしており、未内定者と合わせると、就活生の 52% は 9 月以降も就活を続けている計算になる。 (asahi = 9-10-15)


昨年度の医療費、40 兆円超え確実 伸び率は鈍化

2014 年度の医療費が、前年度より 7,001 億円 (1.8%) 増えて 39 兆 9,556 億円になった。 高齢化や医療技術の高度化の影響で、12 年連続で過去最高を更新。 厚生労働省が 3 日に速報値を公表した。 1 年後に公表する確定値では、初めて 40 兆円を超える見通しだ。

今回、公表したのは公的医療保険と公費、患者の窓口負担を集計した医療費の概算。 労災や全額自己負担の分は含まれず、医療費全体の約 98% 分に相当する。 このため、確定値となる国民医療費では「40 兆円にのっていると思って間違いない(担当者)」という。 75 歳以上の 1 人当たりの医療費は 93 万 1 千円で、75 歳未満(21 万 1 千円)の 4 倍以上になる。 ただ、人口減少や後発医薬品(ジェネリック)の普及で、伸び率は鈍化傾向にある。 09 - 11 年度は 3% 台だったが、12 年度以降は 2% 前後で推移している。 (asahi = 9-4-15)


生活保護受給が最多更新、162 万 5,941 世帯

厚生労働省は 2 日、6 月時点で生活保護を受給した世帯が 162 万 5,941 世帯だったと発表した。 前月より 3,416 世帯多く、2 か月連続で過去最多を更新した。 受給者は前月より 1,686 人多い 216 万 3,128 人で、3 か月ぶりに増加した。 単身の高齢者世帯が増えたのが主な要因という。 (yomiuri = 9-2-15)

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生活保護、最多の 162 万世帯 厚労省発表

厚生労働省は 5 日、5 月時点で生活保護を受けている世帯は全国で 162 万 2,525 世帯となり、過去最多を更新したと発表した。 前月に比べて 1,601 世帯増えた。 受給者数は前月比 1,972 人減の 216 万 1,442 人だった。 (nikkei = 8-5-15)


「アクティブ・ラーニング」 6 割超で導入 積極校ほど正答率高く

今回の全国学力テストでは、小中学校で子供が自ら課題を発見して解決する「アクティブ・ラーニング」と呼ばれる課題解決型学習の実施状況を調べた。 小中ともに 6 割以上の学校が授業に取り入れており、熱心に取り組んだ学校は、行っていない学校より平均正答率が高かった。

学力調査と同時に行われた学校側への質問紙調査の中で、前年度までの授業で「児童生徒自ら学級やグループで課題を設定し、その解決に向けて話し合い、まとめ、表現するなどの学習活動」を取り入れたかどうか尋ねたところ、「よく行った」と答えたのは、小学校 17.4%、中学校 12.7%。 「どちらかといえば行った」との回答を加えるとそれぞれ 73.0%、63.6% まで増加する。 国語、算数・数学、理科の計 10 科目全てで、熱心に取り組んだ学校ほど、学校の平均正答率が高かった。 よく行った学校と、全く行っていない学校の間では、最大で小学校 6.7 ポイント(算数 A)、中学校 7.9 ポイント(数学 B)の差が生じた。

アクティブ・ラーニングは、平成 32 年度以降に小中学校で全面実施される次期学習指導要領に本格的な導入が検討されている。 今回の結果を受け、文部科学省は「今回の結果のみでは『アクティブ・ラーニングを行っているから結果が良かった』とは判断できないが、学力が伸びているところをみると確かにそうした指導を行っている傾向がある」としており、さらに効果の検証を進める考えだ。 (sankei = 8-25-15)


年金機構になっても減らぬミス 5 年で対応 1 万 5 千件超

日本年金機構による確認間違いや入力漏れといった事務処理ミスの発生が毎年度 2 千件台に上り、2010 年 1 月の機構発足後で 1 万件を超えたことが機構のまとめでわかった。 年金記録のずさんな管理で廃止された旧社会保険庁から引き継いだ分も含め、10 - 14 年度に対応を済ませたのは 1 万 5 千件以上。 機構でもミスを減らせない実態が浮かぶ。

機構は年金の記録管理や支給をしている。 ミスの問い合わせがあると内容を確認し、未払い分は支払い、過払い分は返還を求めるなどして対応する。 対応件数は 13 年度分までは機構が公表し、14 年度分は各月の速報値を朝日新聞が集計した。 それによると 10 - 12 年度には 2 千件台で推移したが、13 年度には 4,871 件と急増、14 年度も速報値で 4,142 件に上った。 未払いなど年金額に影響したのは総額で約 89 億円になる。

14 年度分の 4 割弱は受給者や加入者ら外部から指摘された。 年金額に影響したのは全体の 3 分の 2 で、計約 26 億 8 千万円。 100 万円以上の事例が 656 件あった。 愛媛県では障害年金の確認漏れで、受給者の 1 人に 625 万円が未払いとなった。 確認漏れは機構発足直後の 10 年 4 月に発生。 受給者側からの問い合わせで、昨年 1 月に判明した。 (中村靖三郎、asahi = 8-24-15)


私大の学部新増設抑制へ バランス是正、国立大もペナルティー強化

政府が掲げる地方創生の一環として、文部科学省が地方の大学に学生を誘導するため、都市部の大規模校を中心に私立大学の定員超過へのペナルティーを厳格化することは、以前の当コーナーで紹介しました。 今回は、都市部と地方の大学生の均衡を図るために文科省が放つ次の矢の内容をお伝えしたいと思います。 私立大学の学部設置認可の見直しと、国立大学の定員の扱いです。

現在、私立大学は全体で収容定員を約 4 万 5,000 人上回る学生を抱え、そのほとんどが東京・近畿・関西の三大都市圏に集中しています。 大都市圏の有力大学などに進学する学生が多過ぎるうえ、そのまま大都市で就職して地元に戻らないことが地方の人口減少の原因の一つになっているというのが、政府の見解です。 このため文科省は、入学定員を大幅に超える学生を抱える私立大学に対して、補助金の全額カットという厳しいペナルティーを課すことで入学者数を抑制し、地方の人口減少に歯止めをかけることにしました。 ここまでは前にお伝えしたとおりです。

ただ、定員超過を抑制する代わりに、新しい学部を設置して大学全体の定員自体を増やすという「抜け道」もあるのではという疑問も出てきます。 さらに、国立大学の定員はどうなるのでしょうか。 文科省は大学設置基準を改正して、2017 (平成 29)年度開設分から私立大学の学部新設認可を厳しくすることにしています。 現行は、大学全体の入学者数を入学定員で割った入学定員超過率が「1.30 倍以上」の私立大学には、学部の新設を認可しないことになっています。 この基準を 2017 (平成 29)年度開設分から段階的に引き下げます。

具体的には、入学定員 300 人以上の大規模学部の設置を申請する場合、2017 (平成 29)年開設分は「1.25 倍未満」、18 (同 30)年度開設分は「1.15 倍未満」、19 (同 31)年度開設分は「1.05 倍未満」となります。 中小規模の学部もほぼ同じように変更されますが、大規模大学が入学定員の多い学部を新設しようとするほど認可が厳しくなる仕組みになっています。 これにより大都市の有力私立大学などが、入学定員超過抑制で実際の入学者が減る穴を埋めるため、新しく学部をつくって大学全体の入学定員を増やそうとするのを防止できると文科省は説明しています。

一方、国立大学についても入学定員超過抑制の対策が強化されることになりました。 学生数などに応じて国から交付金を受けている国立大学は現在、入学定員超過率が「1.1 倍以上」になると超過人数分の学生納付金相当額を国に返還することになっています。 この基準を 2016 (平成 28)年度から段階的に引き下げ、最終的には 19 (同 31)年度に「1.0 倍超」としたうえで、しかも公費負担も含めたすべての経費となる教育費相当額を返還させる予定です。 つまり国立大学は、2019 (平成 31)年度から実質的に 1 人の定員超過も難しくなるということです。

地方創生は、受験生やその保護者にとって思わぬ影響を及ぼす可能性もありそうです。 (斎藤剛史、Benesse = 8-17-15)


賃金の伸び鈍く消費低迷 経済財政白書、増税の影響分析

2015 年度の経済財政白書は 14 日の閣議に提出され、消費税率が 5% から 8% に上がった後に消費の回復が遅れた主因を、賃金の伸びが鈍かったためと分析した。 2 年前の白書は「増税は経済成長を必ずしも阻害しない」と強調していたが、現実は厳しかった。

増税前の駆け込み需要の規模は 3 兆円程度。税率が 3% から 5% に上がった 1997 年度は 2 兆円規模だった。 今回は増税幅が大きかったぶん、増税後の消費の落ち込みも大きく出た。 14 年度の実質国内総生産 (GDP) の個人消費は前年と比べて 3.1% 減で、97 年度の 1.0% 減より反動が大きく出ている。 白書では、前回とのもう一つの大きな違いに、賃金の伸びを挙げている。 デフレに入る前の 97 年度は 1 人あたりの賃金が伸び、働き手も増えていた。 働き手全体の賃金の伸びは物価の伸びを上回り、実質所得は前年比で 0.6% 増だった。 (大内奏 生田大介、asahi = 8-15-15)

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実質賃金、6 月は前年比 2.9% 減 毎月勤労統計 特別給与減る

厚生労働省が 4 日発表した 6 月の毎月勤労統計調査(速報、従業員 5 人以上)によると、従業員 1 人当たり平均の現金給与総額から物価変動の影響を除いた実質賃金指数は前年同月比 2.9% 減だった。 5 月は横ばいと 25 カ月ぶりにマイナスを脱していたが、再びマイナスになった。 ボーナスにあたる特別給与が 6.5% 減の 16 万 5,089 円と、大幅に落ち込んだことが影響した。 ただ、賞与の支給時期が去年に比べずれた特殊要因の影響があるとみられ厚労省は「6 - 8 月の状況を総合的に判断する必要がある」としている。

調査対象の事業所に占める賞与の支給割合が 37.7 と、4.2 ポイント下がった。 厚労省は夏季賞与の時期が前後にずれた可能性や、直近 4 年は特別給与が確報値で上方修正されており、上振れしやすいことを指摘している。 現金給与総額(名目賃金)も前年同月比 2.4% 減の 42 万 5,727 円と大幅に減少した。 前年を下回ったのは 2014 年 11 月以来、7 カ月ぶり。

一方、基本給や家族手当にあたる所定内給与は 0.4% 増の 24 万 1,618 円で 4 カ月連続で増加した。 春季労使交渉で広がったベースアップ(ベア)が反映されているとみられる。 残業代など所定外給与は 0.4% 減の 1 万 9,020 円だった。 所定内給与と所定外給与を合わせた「きまって支給する給与」は実質で横ばい、名目では 0.4% 増えた。 所定外労働時間は 1.7% 減の 10.6 時間。 製造業の所定外労働時間は 1.3% 増の 15.6 時間だった。 (nikkei = 8-4-5)

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実質賃金は 25 カ月連続減 5 月、物価上昇に追いつかず

厚生労働省が 30 日発表した 5 月の毎月勤労統計(速報)で、働き手 1 人平均の現金給与総額は前年同月より 0.6% 増の 26 万 8,389 円だった。 物価の伸びに賃金が追いついているかを示す実質賃金指数は同 0.1% 減で、25 カ月連続でマイナスだった。 現金給与総額は建設業や金融・保険業、飲食サービス業など多くの業種で前年を上回り、全体では 2 カ月連続のプラス。 賃金水準を底上げするベースアップが進み、基本給などの所定内給与が同 0.3% 増えたほか、ボーナスなど特別給与も同 19.3% 増えた。

一方、パートタイム労働者の現金給与総額は前年より 0.5% 減で、5 カ月ぶりのマイナスだった。 前年より平日が少なく、出勤時間が減り、時給制で働くパートの賃金を押しさげたとみられる。 実質賃金指数は、物価の上昇に給与の伸びが追いつかない状況が続く。 ただし消費増税が物価を押しあげる影響は一巡しており、下げ幅は昨年度の 2 - 4% 減よりも縮まった。 (asahi = 6-30-15)


全国の学童保育、100 万人超え 子育て新制度で対象拡大

共働きやひとり親家庭の小学生を放課後に校内施設などで預かる学童保育の全国の利用児童数が今年 5 月 1 日時点で前年比 8 万 3,894 人増の 101 万 7,429 人となり、過去最多を更新したことが 7 日、全国学童保育連絡協議会の調査で分かった。 共働き世帯の増加に加え、4 月から子ども・子育て支援新制度が始まったことに伴う法改正で、対象児童が従来の 10 歳未満から小学 6 年生まで拡大されたことも影響した。 一方、申し込んでも入れない学童保育の待機児童は 1 万 5,533 人と昨年度より 6,418 人増加した。 (北海道新聞 = 8-7-15)

前 報 (11-29-14)


独禁法違反行為、番組制作会社 4 割が「受けた」 公取委

テレビ局と番組制作会社の取引について公正取引委員会が調査したところ、番組制作会社約 110 社の 4 割が独占禁止法違反(優越的地位の乱用)にあたる行為を受けたと回答した。 公取委が 29 日、公表した。 公取委は日本民間放送連盟などに独禁法を守るよう求める。 公取委は、番組制作会社 800 社にアンケートを実施。 昨年にテレビ局側と取引があった 109 社のうち、39% が「独禁法違反にあたる行為を受けた」と答えた。 具体的には複数回答可で「買いたたき」が 20%、「著作権の無償譲渡」 13%、「不当な番組制作のやり直し」 12%、「番組の二次利用で収益を配分しない」 10% だった。

独禁法は、取引で優越する地位を利用し、不利益になる取引を受け入れさせることを禁じる。 独禁法違反の恐れがあるテレビ局や系列会社は 48 社あり、特定のテレビ局に取引を依存する番組制作会社ほど不利益を被る傾向があったという。 公取委の鎌田明企業取引課長は「(違反を受けたと回答した割合が)高い印象はある。 特に著作権取引は事前に金額を決めずに取引していたケースが目立ち、改めるよう要請する。」と話した。 (贄川俊、asahi = 7-30-15)


最低賃金 18 円引き上げ 15 年度見通し 全国平均 798 円

厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会の小委員会は 29 日、2015 年度の地域別最低賃金の改定について全国平均の時給で 18 円引き上げ 798 円とする目安をまとめた。 目安通り引き上げられれば、14 年度の 16 円増を 2 円上回り、02 年度に現在の方式になって以来、最大の引き上げ幅となる。 景気の回復傾向を反映したことなどが影響。 二桁の引き上げは 4 年連続で、東京、神奈川では初めて 900 円台となる。

最低賃金は都道府県ごとに決められ、小委員会が示した各地の上げ幅の目安は 16 - 19 円とした。 30 日に審議会を開き、正式に答申。 その後、各地の地方審議会で協議し、10 月ごろから適用される見通しだ。 最低賃金は全ての働く人が企業から受け取る賃金の下限額で、パートやアルバイトら非正規労働者の時給に影響する。

労使代表らが参加する小委員会は 28 日午後から取りまとめに向けた審議を開始。 徹夜の協議の結果、都道府県を経済規模などに応じて A - D の 4 ランクに分類して示す引き上げ額の目安は、東京、神奈川などの A は 19 円、静岡など B は 18 円、岡山など C と青森など D はともに 16 円となった。 B、C、D の上げ幅は、02 年度以降で最大。 この結果、最も高い東京の 907 円と最も低い沖縄などの 693 円との差は 214 円に広がった。 最低賃金で働いた場合の収入が、生活保護の給付水準を下回る逆転現象は勤労意欲をそぐとして課題となってきたが、14 年度改定に続き、今回も逆転は生じない見通し。

小委員会では労使が対立。 物価の上昇が続き、15 年春闘では大企業の賃上げ率が 2% を超えたとして、労働側は 20 円を超える増額を要求した。 経営側は、大幅な引き上げは地方の中小企業などの経営を圧迫するとけん制し、昨年度の 16 円を超える増額に反対した。 両者の意見は一致せず、最終的に公益委員が見解を示し決着した。 6 月に閣議決定した成長戦略に政府は、過去 2 年と同じく最低賃金の引き上げ方針を明記。 安倍晋三首相は、大幅増に向けた環境整備を急ぐよう閣僚に指示していた。

生活安定程遠く

<解説> 2015 年度の地域別最低賃金は、全国平均で時給 18 円増の目安がまとまった。 上げ幅は 14 年度の 16 円増を超えたものの、非正規労働者らを含めた賃金全体の底上げには今後も引き上げの継続が不可欠だ。 経団連や連合の集計による 15 年春闘での大企業の賃上げ率は、2% を超える高水準だった。 今回の引き上げは 2.3% のアップに相当し、同程度の賃上げが実現する格好だ。 景気回復の波及効果が最低賃金やそれに近い時給で働く人たちに届くことが期待される。

だが時給で見ると 798 円。 東京、神奈川では時給 900 円を超えるとはいえ、16 県では 700 円に満たない。 これらの水準で働く労働者にとっては生活を安定させるには程遠い金額だ。 消費税増税の影響は一段落したが物価は上昇傾向が続いている。 物価上昇を上回らなければ、最低賃金の実質的な改善にはつながらず、政権が掲げる「経済の好循環」の実現には今後も増額が欠かせない。

政府は 10 年に、20 年までのできるだけ早期に「最低 8 百円を確保し、全国平均千円を目指す」との目標を掲げた。 達成への道は険しいが、政府や労使の努力が求められる。 特に中小企業には人件費の増加が重荷となるため、効果的な支援策を実施し着実な引き上げにつなげるべきだ。 (共同・水内友靖、東京新聞 = 7-29-15)


パナ工場、従業員の半数去った 業績回復、これが改革か

パナソニックの工場で 5 月末、従業員の半数が職場を去る「リストラ」が決行された。 メーカーを中心に、業績が急回復する日本の大企業の陰には「我慢」を受け入れる従業員や下請けが存在している。 JR 福島駅から南に 3 キロ。 パナソニック福島工場(福島市)では 5 月末、主力製品であるデジタルカメラの生産をやめた。 1970 年にラジオ生産でスタートして以来、地元の人気就職先であり続けた。 しかし、これを機に約 320 人のうち 180 人が異動や退職で工場を去り、120 人は給料の減るグループ会社に転籍し、照明やカーナビに使う電子部品を作る新しい仕事に移った。

「工場がここまで存続したのが不思議なくらいだ。」 福島工場で 40 年以上働いてきた男性 (59) に大きな驚きはなかった。 ピーク時に年 650 万台あったパナソニックのデジカメ生産は、今年 3 月期は 27 万台。 携帯電話に搭載されるカメラの性能がよくなった影響が大きい。 今年 1 月、パナソニックはデジカメの生産を山形、中国の工場に集約すると発表し、デジカメの箱詰めという男性の仕事も失われた。

会社が従業員に示した選択肢は三つ。 関西の工場への転勤、福島工場で電子部品づくりを始める子会社への転籍、そして希望退職。 家族が体調を崩していて福島を離れるのは難しい。 子会社の給料は、今のほぼ半分と説明された。 男性は退職を選んだ。 年金支給まであと 3 年。 バス運転手への転身を考え、今はハローワークで職を探す。 同僚も子どもが高校や大学に通う人が多く、急激な減収を気にしていた。 40 代は転職、50 代は転勤という選択が多かったという。

福島工場をはじめ「構造改革」の名のもとで大リストラを進めた結果、パナソニックは今年 3 月期の純利益が 1,794 億円で、前年の 1.5 倍に増えた。 「会社が進める構造改革って何なのか。」 男性には、釈然としない思いが残る。

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「もともとリストラありきだったのでは。」 別の 50 代の男性従業員は疑いをぬぐいきれない。 会社側が 2 月、労働組合に示した回答には「デジカメの組み立て完成業務は山形工場へ移管するが、生産業務を福島に委託することを検討する」とあった。 生産を続けられるなら、人減らしは必要ない。 「生産移管はリストラの口実に過ぎないのではないか。」

福島工場では過去 4 度、計 200 人を超える希望退職を募った。 遠くへの転勤はないが、給料が 1 - 2 割減る「地域限定社員」制も採用した。 男性はこの制度を受け入れた。 ローンで家を建てたばかりで子どもも小さく、地元で働きたかった。 このとき、福島工場の 8 割が地域限定社員の道を選び、減収を受け入れた。 そんな苦渋の選択をした従業員はまた、厳しい道に直面している。 男性は 6 月以降も福島で働いているが、転勤した仲間を思うと心中は複雑だ。 「何万という人がリストラされた効果」が、業績回復という形になって「今になって出てきている」ように見えるからだ。

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福島工場から車で 15 分ほど離れた高野精器の高野進社長 (64) の元に 4 月 3 日、1 通の手紙が届いた。 デジカメ生産を移すと、工場長名で告げていた。 パナソニックが進出した 8 年後の 1978 年から、検査機器などを納入してきた。 全盛期はパナソニック向けが収入の半分を占めたが、今は 2 割ほど。 パナソニックの生産拠点が中国など海外に移るとともに、機器の現地調達が増えたからだ。

「昔は、少なくても仕事はあったけど、これより少なくなるともうゼロに近くなる。」 福島工場から多くの人が去った今、パナソニック頼みではこの先、いばらの道だと痛感している。 「18 人の社員を雇い続けるためには、よその会社の仕事を取らないと難しい。」 自動車部品メーカーへの検査機や加工機の納入に活路を見いだそうとしている。 (笠井哲也)

会社側「競争力の強化」

中国メーカーなどの追い上げにあった松下電器産業(現パナソニック)は 2000 年、人件費を削る目的で地域限定社員制を導入。 さらに 00 年代初頭の IT バブル崩壊で、業績が急速に悪化した工場を縮小・閉鎖し、不採算事業を売却するなどして、業績を回復させた。 しかし、テレビ事業の不振などで 12、13 年 3 月期に大きな赤字を計上。 再びリストラを加速した。 12 年 3 月末に 13 万 3,605 人いた国内従業員は今年 3 月末、10 万 6,697 人と 2 割減。 14、15 年 3 月期は 2 年連続の黒字に回復した。

津賀一宏社長は「将来に向けて収益性を保っていけるのかを考え、統廃合の結果に至らざるを得なかった拠点もある。 そういう意味での方向づけは、ほぼ終わった。」と話した。 パナソニックは、今回の福島工場の再編について「リストラが目的ではなく、事業環境が厳しさを増す中、グローバル競争力の強化と成長をめざすため(広報)」と説明している。 (asahi = 7-29-15)