鳥取大、がん抑制遺伝子を制御する因子を同定

鳥取大学は 2 月 4 日、がん抑制遺伝子を制御する因子としてマイクロ RNA-19b (miR-19b) の同定に成功したと発表した。 同成果は同大学大学院医学系研究科遺伝子機能工学部門の久郷裕之教授の研究グループによるもので、2 月 3 日の英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。 遺伝子の集合体である染色体の末端には、染色体を保護するテロメアという部分がある。 テロメアは分裂のたびに短くなり、やがて細胞は死滅する。 一方、多くのがん細胞では、テロメレースという酵素が活性化されテロメアの短縮を防ぐ形質を持つことが、増殖し続ける原因となっている。

久郷教授らはこれまでの研究で、この形質を抑制する遺伝子「PITX1」を発見していたが、そのはたらきについては詳しくわかっていなかった。 今回の研究では、PITX1 の発現を調節している分子として miR-19b がはたらいていることを発見。 細胞内で miR-19b を過剰に発現させると、PITX1 のタンパクレベルの低下によるテロメレースの活性化と細胞の増殖能が高まることが確認された。 また、miR-19b が PITX1 の特定塩基配列を直接標的とし、発現を抑制しているともわかった。

さらに、悪性黒色腫では、miR-19b の発現亢進と PITX1 の発現低下が見られ、悪性黒色細胞腫株における mir-19b の発現消失解析では、PITX1 の発現が上昇したのに伴い、テロメレース活性および細胞増殖能の低下が認められた。 同研究グループは、マイクロ RNA ががん抑制遺伝子を調節してテロメレース活性を制御する分子経路が明らかとなったことで、がんを治すための創薬や早期診断薬の開発につながるとしている。

さらに、テロメレース制御ネットワーク機構の理解から、幹細胞の維持機構、細胞の老化および不死化、複雑ながん発生の秘密を解き明かす鍵となることが期待される。 (MyNavi = 2-4-15)


心臓に貼り薬、血管の再生促す 大阪大が 6 月から治験

大阪大学は 30 日、重い心不全の患者に、薬を使って心臓の血管再生を促す治験を 6 月から始めると発表した。 傷んだ組織などを再生させる治療に、薬を用いる初めての試みだという。

阪大の澤芳樹教授(心臓血管外科)らによると、治験に使うのは、血液が固まるのを防ぐ飲み薬として 1990 年代に途中まで開発された薬。 下痢などの副作用が出るため、製品化は見送られていた。 研究チームは、この薬が細胞に作用して血管を新たに作り出す効果に着目。 薬を少しずつ放出するように加工してシートを作り、ミニブタの心臓に貼り付けたところ、血流量が約 2 割増えた。 薬の効果はシートを貼った患部周辺に限られるため、副作用も生じないという。 (野中良祐、asahi = 1-31-15)


理研、ヒト ES 細胞から小脳神経組織への分化誘導に成功 - 3 割が「プルキンエ細胞」に

理化学研究所多細胞システム形成研究センターの六車恵子専門職研究員らの研究グループは、ヒト ES 細胞を小脳神経組織に高い確率で分化誘導することに成功した。 マウス由来 ES 細胞での培養法を改良してヒト ES 細胞に適用したところ、ES 細胞全体で見ると大部分が神経前駆細胞となり、約 3 割が神経細胞「プルキンエ細胞」に分化することを確認した。

プルキンエ細胞は小脳皮質で重要な役割を果たす神経細胞で、異常があれば運動機能に支障が生じる。 また、プルキンエ細胞以外の小脳神経細胞の発現も確認でき、それらの細胞が妊娠約 13 週目の胎児と同等の小脳皮質構造を形成することが分かった。 従来の研究では、無血清凝集浮遊培養法(SFEBq 法)と呼ばれる手法でマウス ES 細胞をプルキンエ細胞に分化することに成功していた。しかし、人間の小脳の神経細胞発生過程は複雑で、ヒト ES 細胞での分化誘導は困難とされていた。

研究チームは、小脳神経細胞の分化誘導過程での細胞死を防ぐ阻害剤と、神経分化を促進する阻害剤を培養液に添加し、SFEBq 法で培養した。 その後、48 - 72 時間の間に繊維芽細胞増殖因子 FG2 を添加した。 するとヒト ES 細胞でプルキンエ細胞の発生過程を再現でき、同時にプルキンエ細胞に情報を伝達する役割の顆粒(かりゅう)細胞の分化にも成功した。 iPS 細胞を使った分化誘導も一部確認できており、今後、検証を進めていく。 (日刊工業新聞 = 1-30-15)


ノルウェーで BSE 発生、輸入停止 厚労省

厚生労働省は 30 日、ノルウェーで牛海綿状脳症 (BSE) の発生が確認されたとして、ノルウェー産牛肉の輸入を同日付で停止したと発表した。 BSE 発生で輸入を停止するのは、2012 年のブラジル以来。 ノルウェー産の牛肉と牛内臓の輸入量は、13 年度実績で計約 100 トンだった。 厚労省によると、BSE が確認されたのは 15 歳の肉用繁殖雌牛。 えさを通じて感染する BSE とは異なるタイプで、市場には流通していないという。 同国での BSE 発生は初めて。 厚労省は、BSE が発生していない国でも、脳や脊髄などの特定危険部位を輸入しないように業者を指導している。 (asahi = 1-30-15)


カナダ:北米で初、H7N9 感染者 … 中国から帰国

鳥インフル感染

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マグロの脾臓からウイルス 大量死の葛西臨海水族園

葛西臨海水族園(東京都江戸川区)でマグロやカツオが大量死した問題で、東京都は 20 日、クロマグロ 2 匹とスマ(カツオの仲間) 1 匹の死体の内臓からウイルスが検出されたと発表した。 大量死の原因の可能性があり、病原性かどうかを含めウイルスの特定を進める。

都は 10 日に解剖した 3 匹の病理検査を日大生物資源科学部に依頼。 培養検査の結果、3 匹ともに脾臓(ひぞう)の細胞からウイルスが検出された。 いずれも脾臓が変性しており、悪影響を及ぼすウイルスとみられる。 同時に培養した脳からは 3 匹ともにウイルスは見つかっていないという。 同園には昨年 12 月 1 日の時点でマグロとスマ、ハガツオが計 165 匹いたが、スマは 19 日までに全滅し、20 日夕の時点でマグロ 3 匹、ハガツオ 4 匹まで激減している。 錦織一臣副園長は「7 匹もあまり良い状態ではない」と話している。 (asahi = 1-20-15)


佐賀の養鶏場で鳥インフルの疑い 簡易検査で陽性反応

鳥インフルエンザ

記事コピー (asahi = 12-2-14 〜 1-17-15)


インフルエンザ 1 週間推定患者 206 万人 流行ピークへ

国立感染症研究所は 16 日、全国約 5,000 の定点医療機関から 5 - 11 日に報告されたインフルエンザの患者数が 1 医療機関当たり 33.28 人となり、1 週間の推定患者数は約 206 万人になったと発表した。 前週の 139 万人より増加、流行のピークに向かいつつある。 直近の 5 週間に検出されたウイルスは A 香港型がほとんどで、B 型、2009 年に新型として登場した A 型が続いた。 都道府県別で 1 機関当たりの患者数が多いのは宮崎(76.42 人)、沖縄(62.98 人)、熊本(57.23 人)、福岡(54.29 人)、長崎(50.86 人)の順だった。 (kyodo = 1-16-15)

◇ ◇ ◇

インフル、3 週間早く流行入りへ 国立感染研が集計

国立感染症研究所が 28 日発表した集計によると、全国約 5 千の定点医療機関から 17 - 23 日の 1 週間に報告されたインフルエンザ患者数は 1 医療機関当たり 0.94 人となり、全国流行の指標となる 1 人に迫った。 今週の患者数は 1 人を超えるとみられ、平年並みだった昨シーズンより 3 週間ほど早い流行入りとなるもようだ。 17 - 23 日の週に医療機関を受診した患者は推定 4 万人。 都道府県別で医療機関当たりの患者数が多かったのは、岩手(6.20 人)、福島(2.76 人)、神奈川(1.96 人)、東京(1.92 人)、埼玉(1.83 人)の順で、東日本が中心だった。 (kyodo = 11-28-14)


新糖尿病薬 : 脱水症状に注意 厚労省、製薬会社に添付指示

昨年に相次ぎ発売された新しい糖尿病治療薬「SGLT2 阻害剤」を服用後に重い脱水症状が表れたとの報告が 18 例あり、厚生労働省は 9 日、医療関係者向けの添付文書を改訂するよう製薬会社に指示した。 この薬は生活習慣が主な原因とされる 2 型糖尿病用で、糖が尿の中に排出されるのを促進することで血糖値を下げる。 使用者は全国で 10 万人以上と推定されている。

脱水関連の情報はもともと添付文書の注意事項に書かれていたが、今回は「重大な副作用」の項目に追加。 高齢者や利尿剤を併用している患者などには慎重に投与するよう書き加えることで、あらためて注意を促した。 (kyodo = 1-10-15)


中国のパンダ 4 頭が感染症、うち 1 頭死ぬ ワクチンなし

中国陝西省にある野生動物の研究施設で飼育されているジャイアントパンダが「犬ジステンパー」に感染し、1 頭が死んだことが分かった。 これまでに 4 頭が感染し、3 頭の感染が疑われているという。 中国メディアが伝えた。 報道によると、感染した 4 頭のうち 8 歳のメスが先月 9 日に死に、2 頭も危険な状態が続いている。 感染した場合の致死率は 90% に達するという。 感染したり、感染が疑われたりしているパンダは隔離されている。 施設では 25 頭が飼育されていたが、18 頭は省内の自然保護区に移された。

犬ジステンパーは、主にイヌの病気として知られるが、野生動物などもかかるウイルス性の感染症。 イヌ向けのワクチンはあるものの、パンダに効果があるかは分からないという。 食べ物や飛沫(ひまつ)を通じても感染するとされ、今回の感染経路は分かっていない。 陝西省は、四川省と並ぶ野生のジャイアントパンダの生息地として知られる。 (広州 = 延与光貞、asahi = 1-5-15)


B 型肝炎治療薬、がん転移抑制の可能性 九州大チーム

B 型肝炎治療用の飲み薬に、がんの転移を抑える可能性があるとするマウスでの研究結果を、九州大の研究チームがまとめた。 ヒトでの臨床試験(治験)で有効性や安全性を確かめ、5 年程度で公的医療保険の適用を目指すという。 論文が 3 日付の米医学研究誌に掲載される。

がん細胞の周囲には、がん細胞の成長を促す細胞の集まりがあり、その集まりの拡大には CCL2 というたんぱく質がかかわっている。 研究チームは、そのたんぱく質の働きを抑えるプロパゲルマニウムという B 型肝炎治療薬に、がんの転移を抑える効果があるかどうかを調べるため、マウスで実験をした。 薬を与えたマウスは与えていないマウスと比べ、がん細胞の転移する量が、乳がんで約 10 分の 1、皮膚がんの一種のメラノーマで約 4 分の 1 だったという。 (野瀬輝彦、asahi = 1-3-15)


ヒト万能細胞から精子・卵子のもとを作製 英大学など

ヒトの万能細胞から、精子や卵子のもとになる「始原生殖細胞」を安定的につくることに成功したと、英ケンブリッジ大などのチームが 24 日付の米科学誌セル電子版に発表した。 マウスでは京都大のチームがすでに成功しているが、ヒトでは安定してつくるのが難しかった。

受精卵を壊してつくる ES 細胞と、体の細胞からつくった iPS 細胞を万能細胞として使い、それぞれ始原生殖細胞に変化させた。 これまでも作製に成功したとの報告例はあったが、今回の研究では、マウスと違って「SOX17」という遺伝子が重要な役割を果たすことを突き止め、安定的につくれるようになったという。 この始原生殖細胞を精子や卵子に変えられるようになれば、精子や卵子ができる仕組みを詳しく調べることができるようになり、将来的には不妊の原因解明にも役立つ可能性がある。 (asahi = 12-25-14)


「悪いニュース」に STAP も 米科学誌 10 大ニュース

米科学誌サイエンスは 19 日付で 2014 年の科学 10 大ニュースを発表、1 位に欧州宇宙機関 (ESA) の探査機ロゼッタによる彗星(すいせい)への接近飛行と着陸の成功を挙げた。 社会を混乱させた「悪いニュース」の一つには、STAP 細胞をめぐる研究不正を挙げた。 10 大ニュースには、利根川進・理化学研究所脳科学総合研究センター長らがマウスの脳神経を操作して「記憶の置き換え」に成功した実験や、宇宙飛行士の若田光一さんが国際宇宙ステーションから宇宙に放出した「超小型衛星」が入った。 1 位以外に順位はつかない。 その他は次の通り(順不同)。

▽ 恐竜が鳥類に進化する過程の解明、▽ 血液交換による筋肉や脳の若返り研究、▽ 自律型ロボットの開発、▽ 脳のように情報処理するチップの開発、▽ ヒト iPS 細胞などからインスリンをつくるβ細胞の作製、▽ インドネシア洞窟壁画の再評価、▽ 大腸菌による人工 DNA の実験 (行方史郎、asahi = 12-22-14)


「ウイルス療法」で脳腫瘍治療 東大が国内初の治験へ

がん細胞をウイルスに感染させて破壊する日本初の「ウイルス療法」の治験を脳腫瘍(しゅよう)の患者で始めると、東京大医科学研究所が 18 日、発表した。 ウイルス療法は手術、抗がん剤治療、放射線治療に次ぐ第 4 の治療法として期待されている。 研究チームは、3 - 4 年以内の実用化を目指す。

対象は、脳腫瘍の中でも最も治療が難しい「膠芽腫(こうがしゅ)」で、手術でがんを摘出後、放射線と抗がん剤を使ってもがん細胞が残っていたり、再発したりした 30 人。 口唇ヘルペスウイルスの遺伝子を改変し、がん細胞だけで増殖し、正常な細胞では増えないようにした。 このウイルスを針で腫瘍に注入して、がん細胞に感染させて破壊する。

安全性を確認するための臨床研究では、副作用はほとんどなかった。 通常診断から 1 年ほどの平均余命だが、10 人中 3 人が 3 年以上生存した。 今回は医師主導で治験を行い、生存期間がどの程度延びたか、治療効果をみる。 この治療用に改変したウイルスは、あらゆる固形がんに応用できる可能性があるという。 現在、前立腺がんと嗅神経芽細胞腫でも臨床研究を進めている。 藤堂具紀教授(脳腫瘍外科)は「製薬企業の協力を得て実用化を目指したい」と話す。 (岡崎明子、asahi = 12-19-14)


着床前検査、臨床研究へ … 実施計画案を承認

日本産科婦人科学会は 13 日、理事会を開き、体外受精させた受精卵のすべての染色体を調べ、異常のないものを子宮に戻す「着床前スクリーニング」の臨床研究の実施計画案を承認した。 来年 2 月にシンポジウムを開き、一般の意見を聞いた上で、来年度にも臨床研究を始める。

妊娠年齢が高くなり、不妊治療をしても出産に至らないケースが増えている。 染色体の異常が原因の一つと考えられている。 臨床研究は、受精卵を調べ、異常がないものだけを子宮に戻すことで、妊娠の可能性を高めたり、流産を減らしたりできるかどうか検証する。 体外受精を 3 回以上失敗したり、流産を 2 回以上経験したりした女性が対象。 600 人を着床前スクリーニングを行う群と行わない群に分け、妊娠率や流産率の差を調べる。 (yomiuri = 12-14-14)


乳児の先天性心臓病難手術成功 岡山大、高リスク合併症

岡山大病院は 13 日、先天性の心臓病と冠動脈の異常を併せ持った生後 25 日の男児 = 長野県飯田市 = に、動脈を正常な位置に移す難手術を実施、成功したと発表した。

男児の心臓病は、大動脈と肺動脈が通常とは逆の心室につながり、治療しないと死亡する「完全大血管転位症」。 岡山大によると、国内で年間 100 - 120 例の報告があり、生後 2 週間以内の手術が必要。 今回のように 2 週間を過ぎ、冠動脈異常もある、より高いリスクの手術成功は国内初とみられ、早ければ約 3 週間で退院という。 男児は長野県立こども病院(安曇野市)で生まれ、完全大血管転位症と診断された。 (kyodo = 12-13-14)


RS ウイルス流行中、3 週連続で患者増加 乳幼児は注意

赤ちゃんが感染すると、重い肺炎になることもある「RS ウイルス」が流行している。 国立感染症研究所は 12 日、全国の小児科定点医療機関から寄せられた患者数は 3 週間連続で増え、最新の 1 週間(11 月 24 - 30 日)で 5,495 人になったと発表した。 感染研によると、迅速診断キット検査の公的医療保険の対象が外来診療に訪れる乳児らにも広がった、2011 年 10 月以降では最も多いという。

RS ウイルスは、秋から冬にかけて感染が広がり、2 歳までにほぼ全員が感染する。 大人は軽い鼻かぜ程度で済むことが多いが、乳幼児は重い肺炎にかかって入院して酸素吸入などが必要になる場合がある。 心臓や肺に病気があったり、免疫が弱かったりすると、より重症化しやすいという。 子どもの感染症に詳しい、川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は「小さい赤ちゃんは重症化することがある。 極めてまれだが、亡くなることもある。 せきがゼホゼホと続いてぐったりしたり、ミルクを飲む量やおしっこが少なくなったりしたら、早めにかかりつけの小児科医で受診してほしい。」と注意をよびかけている。 (寺崎省子、asahi = 12-12-14)


がんの種類ごとに実績ある病院検索 新システム本格稼働

がんの種類ごとに、全国の主要な病院が何人の患者を診療したかを詳しく調べられる新しい検索システムを国立がん研究センターが開発し、9 日から本格稼働させた。 患者は、都道府県の拠点病院にある「がん相談支援センター」などで相談すれば、希望するエリアで自分と同じがんの診療実績がある病院を紹介してもらうなどのサービスが受けられる。

新システムは、全国 407 のがん診療連携拠点病院で登録された 2009 - 12 年の約 220 万人分の患者情報を活用。 皮膚がんや骨肉腫など患者数の少ないがんについて、3 年間で患者登録が 5 例以上ある病院と症例数を検索できるようにした。 また、患者数の多いがんでも、たとえば肺がんなら扁平(へんぺい)上皮がんか腺がんかといった細かい分類ごとに検索できる。

新システムにもとづく病院探しの相談は、全国のがん相談支援センターのうち 46 カ所、国立がん研究センターの 2 病院などで受けられる。 支援センターなどでは、これまでも地域の病院などの情報を提供してきたが、国立がん研究センターの東尚弘がん政策科学研究部長は「特に遠い地域における希少ながんについての情報が入手しにくく、紹介が難しかった」という。 今後は「実家に帰って受診できる病院を知りたい」といった相談にも答えやすくなるという。(鍛治信太郎、asahi = 12-10-14)


カイコ使い MRSA に有効な抗生物質候補を発見

東京大の関水和久教授らのグループは、抗生物質が効きにくいメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) に有効な新たな抗生物質候補を発見した、と発表した。 米化学専門誌に 9 日、論文が掲載される。 研究グループは、実験動物にカイコを使って、化学物質の薬効を調べる手法を開発。 約 1 万 5,000 株の土壌細菌が生産する化学物質の中から、既存の抗生物質が効かない MRSA に有効な物質を発見。 「ライソシン E」と名付けた。 カイコは、通常使うマウスに比べ、10 分の 1 の費用で簡単に実験でき、効率的に薬効を調べることができるという。 (yomiuri = 12-9-14)


大腸がん悪化の「目印」特定 転移予測の実用化目指す

大腸がん悪化の目印となる分子を京都大などのグループが見つけ、3 日発表した。 この分子に特定の化学変化が起きていると、がん細胞が別の場所に移って転移しやすくなり生存率が低かった。 大腸がんの転移を予測する診断法はまだ確立されておらず、数年後の実用化を目指している。 大腸がんの死亡率は男性では肺、胃に次ぎ 3 番目、女性では最も高い。 死亡するケースの大半は転移が原因だ。

グループはマウスを使って転移を起こす大腸がんの細胞を研究。 「Trio (トリオ)」というたんぱく質の特定の部位に化学変化が起きていると、がん細胞の運動を促す分子を活性化させることがわかった。 京大病院が保存する中程度の大腸がん患者 115 人のがん細胞を調べると、70 人でこの化学変化が見られ、2 割が診断から 5 年以内に転移で亡くなっていた。 一方、化学変化が見られなかった 45 人はこの間、全員が生存していた。

グループの武藤(たけとう)誠名誉教授(実験腫瘍(しゅよう)学)は「患者の転移の起きやすさがわかれば、効果的に治療できる可能性がある」と話す。 成果は米がん学会の学術誌電子版に掲載された。(阿部彰芳、asahi = 12-4-14)


腎臓の構造、再現に成功 ラットの細胞から 岡山大

岡山大学は、ラットの腎臓から採った 1 個の細胞から、腎臓の複雑な立体構造を再現することに世界で初めて成功した。 ヒト細胞でもできれば、腎不全の再生医療につながる可能性があるという。 24 日、米専門誌ステムセルズに掲載された。 腎臓は、構造が最も複雑な臓器の一つ。 岡山大医学部の喜多村真治講師(腎臓内科)らは、ラットの腎臓から、腎幹細胞を分離。 ゲル状の特殊な立体培地に埋め、細胞が縦横に成長できるようにした。

すると 3 週間後、腎臓の基本単位であるネフロンに酷似した構造体になった。 尿を作る機能も一部確認できたという。 ネフロンは細かい管が複雑なループ状につながっている。 構造再現は極めて難しいと見られていた。 喜多村講師は「まず腎臓を使う動物実験の代替として使えるでしょう。 ヒト細胞で製法が確立できれば、iPS 技術と組み合わせて、再生医療に応用できる可能性がある。」と話す。 (中村通子、asahi = 11-25-14)


6 歳未満臓器提供 : 大阪大病院で男児への心臓移植終了

順天堂大付属順天堂医院(東京都)で脳死と判定された 6 歳未満の女児からの臓器提供で、大阪大病院は 24 日、提供された女児の心臓を、重い心臓疾患の 10 歳未満の男児に移植する手術が無事終了したと発表した。 他の臓器の移植手術も各地の病院で進んだ。 阪大病院によると、男児は、心臓の筋肉がうまく育たない左室心筋緻密化障害。 心不全を繰り返し、阪大病院に入院した今年 10 月から補助人工心臓を使っていた。 手術は午前 11 時半ごろ始まり、午後 7 時ごろ終了した。

男児の両親は「ドナーになられたお子様とご家族、ご親族の方々に感謝申し上げます。 息子が新たな人生を、ドナーの方や家族の方々の思いと共に精いっぱい歩んでいけるよう、家族で支えあって生きていきたいと思います。」とのコメントを発表した。

2010 年施行の改正臓器移植法で認められた 15 歳未満からの脳死臓器提供は 6 例目で、脳死判定基準がより厳しい 6 歳未満は 2 例目。 残る臓器のうち、肺は京都大病院で 10 歳未満男児、肝臓は同病院で 10 代女性、腎臓は東京医科大八王子医療センターで 60 代女性、もう一つの腎臓は東京女子医科大病院で 40 代女性に、それぞれ移植される。 膵臓(すいぞう)と小腸は医学的理由で断念した。 (畠山哲郎、mainichi = 11-24-14)


脳卒中リハビリ、全国屈指のロボット外来 佐賀大病院

全国屈指のロボットリハビリテーション外来が、佐賀大学医学部付属病院(佐賀市)で本格稼働している。 人間によるリハビリに比べ、よりポイントを絞った機能回復訓練が期待できるという。 6 種類のロボットが、脳卒中の患者たちの社会復帰を助けている。

腕の筋肉の電気信号に反応して動く「義手」や、腰から足にかけて装着して体を動かそうとする微弱な信号をセンサーで読み取って歩行を助けるロボット - -。 同病院のリハビリテーション科に 10 月に開設されたロボットリハビリ外来では、患者は 6 種類のロボットを選べる。 従来のリハビリを終えた脳卒中患者で、手足の動きをもっとよくしたいと考える十数人が来院。 1 日 6 人ほどが 1 人 1 時間、交代で取り組んでいる。 患者の状態にあわせてロボットを使い分け、1 クール 1 カ月 - 1 カ月半の計画だ。 (祝迫勝之、asahi = 11-15-14)


アルツハイマー、発症前に血液判定 国立長寿研など発見

アルツハイマー病を発症する前に、原因物質が脳内に蓄積しているかを数滴の血液で判定する方法を、国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)や島津製作所(京都市)の研究チームが発見した。 11 日、日本学士院の学術誌電子版に論文を発表した。 ノーベル化学賞を受けた、同社の田中耕一・シニアフェローの技術を応用した。 早期診断や治療薬の開発に役立てたいとしている。

アルツハイマー病の原因物質のアミロイドベータは、軽度の認知障害などの症状が出る 15 - 20 年前から脳内で蓄積が始まるとされる。 検出には腰の部分から針を刺して脳脊髄(せきずい)液を採取するなどして調べるが、体への負担が大きい。 研究チームは、田中さんらが開発した質量分析の感度を高めた技術を使い、血液約 0.5 ミリリットル(数滴分)でアミロイドベータに関連する 2 種類のたんぱく質の量を比較。 9 割以上の精度でアミロイドベータの蓄積の有無を判定できた。 (伊藤綾、asahi = 11-11-14)


世界初、8K 内視鏡手術 … 鮮明画像で安全性向上

ハイビジョンの 16 倍の画素数がある超高精細な「8K」のカメラを使った世界初の内視鏡手術が 10 日、杏林大学病院(東京都三鷹市)で行われた。 従来の内視鏡では見づらかった細い血管や神経、臓器同士の境界が鮮明になり、手術の安全性の向上が期待できる。 実施したのは、国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)や NHK 放送技術研究所(同)などによる共同研究組織。 同研究所の技術を医療分野に応用しようと昨年 8 月に設立された。 医療、工学の専門家、企業が参加し、8K 内視鏡の開発を進めている。

この日行ったのは胆のうを摘出する手術 2 件で、有効性と安全性を確かめる臨床研究として行われた。 執刀した杏林大外科の森俊幸教授は「8K の豊富な画像情報は、より安全で高度な手術につながる可能性がある」と話した。 ただ、今回のカメラは重さ約 2.2 キロ・グラム。 現在使われている内視鏡と違い、片手で操作できないなど課題もある。 今後、軽量化など改良を進め、早ければ 2、3 年以内の実用化を目指す。 (yomiuri = 11-11-14)


難病患者に遺伝子治療 = 症状改善、長期観察へ - 国立成育医療センター

国立成育医療研究センター(東京)は 7 日、遺伝子の異常が原因で重い感染症を繰り返す難病「慢性肉芽腫症」の患者に、正常な遺伝子を組み込んだ細胞を投与する治療を行ったと発表した。 症状は改善しており、今後 15 年以上、効果と副作用を観察する。 慢性肉芽腫症は、遺伝子異常が原因で白血球が細菌などを殺す力が弱まる遺伝性疾患。 健康な人から白血球などのもとになる造血幹細胞の提供を受けて移植すれば治る可能性が高いが、白血球の型が一致する提供者が見つからない場合もある。

同センターは 7 月、提供者が見つからなかった 20 代の男性患者に遺伝子治療を実施。 患者の血液から造血幹細胞を取り出し、正常な遺伝子を組み込んだ上で、注射して体内に戻した。 患者は正常な白血球がわずかに増え、感染症が改善。 10 月に退院した。 (jiji = 11-7-14)


がん狙い撃ち新物質、シカゴ大・中村教授が発見

【ワシントン = 中島達雄】 がん細胞を狙い撃ちする分子標的薬の新しい有力候補となる化合物を見つけたと、米シカゴ大の中村祐輔教授の研究チームが 22 日、米医学誌「サイエンス・トランスレーショナル・メディシン」に発表した。 中村教授によると、この化合物を使ってマウスで実験したところ、肺がんが完全に消えたという。 研究チームは、がん細胞の増殖で重要な役割をする「TOPK」というたんぱく質に注目。 30 万種類の化合物の中から、TOPK の働きを妨げる化合物を探し出した。

この化合物を、肺がんのマウス 6 匹に週 2 回ずつ 3 週間、注射した。 すると、5 匹のがん細胞は、最初の注射から 25 - 29 日後に完全に死滅した。 TOPK の働きが妨げられ、がんの細胞分裂が止まったとみられる。 化合物をそのまま投与すると白血球が減るなどの副作用があったが、化合物を脂質の膜で包む改良を加えると、副作用は小さくなったという。 (yomiuri = 10-23-14)


血糖値 : 調整にグルタミン酸関与 … 新たな糖尿病薬に可能性

体内の血糖値を調整するホルモン「インスリン」の分泌に関わる新たな仕組みを突き止めたと、清野進・神戸大教授(分子代謝医学)らの研究チームが米科学誌セル・リポーツ電子版に発表した。 新しい糖尿病治療薬開発につながる可能性があるという。 マウスやラットを使い、膵臓(すいぞう)のインスリンを分泌する細胞内で、血糖値の上昇に伴ってグルタミン酸が作られることを発見した。

さらにエサを食べた後に小腸から分泌されるホルモンのインクレチンが膵臓の細胞に達すると、それをきっかけにグルタミン酸が細胞内のインスリンを蓄えた袋(分泌顆粒)に取り込まれ、インスリン分泌を促すことが分かった。 現在、主流の薬の一つは、インクレチンの作用を利用し、使用患者は国内で約 300 万人に達するが、効かない患者も少なくないという。 清野教授は「インクレチン関連薬が効きにくい患者向けの新薬が開発できるかもしれない」と話す。 (永山悦子、mainichi = 10-20-14)


乳房再建で傷痕残らない新手法 皮膚伸ばし、自然な形に

乳がん手術で切除した乳房を、特殊な装置で吸引して皮膚を伸ばし、おなかの脂肪を注入して再建する臨床研究が進められている。 再建では体に傷痕が残らず、自然な形の乳房になるという。 装置はプラスチック製でブラジャーのような形。 カップを胸に装着し、モーターでカップ内の気圧を下げ、皮膚を引っ張って伸ばす。 もともと美容医療の豊胸で用いられている方法だ。

横浜市立大市民総合医療センターは、新しい乳房再建の臨床研究として、この 2 年間で約 80 人に実施した。 脂肪注入の前後に 4 週間ずつ、胸に装置を1 日 10 時間つける。 皮膚を伸ばした後、おなかや太ももから吸引した脂肪を針で胸に注入する。 数時間で終わり、入院の必要はない。 (岡崎明子、asahi = 10-19-14)


関節リウマチ、原因分子特定 治療法に期待 京大など

関節の炎症で腫れや痛みが出る関節リウマチを引き起こす原因分子を京都大などのグループが初めて見つけた。 関節リウマチは、体内の分子を免疫細胞が「外敵」とみなして炎症を引き起こすが、どの分子が標的なのかはよくわかっていなかった。 原因の解明が進めば、根本的な治療につながる可能性がある。

米科学誌サイエンスに 17 日発表する。 体に侵入した病原体は、司令塔役の免疫細胞の「T 細胞」が外敵と判断して排除される。 T 細胞は様々な病原体に対応できるようそれぞれ違うセンサーを持ち、体内に数億種あるとされる。 T 細胞の制御がうまくいかないと、免疫細胞が体を攻撃し始め、関節リウマチなどの病気を引き起こすと考えられている。 (阿部彰芳、asahi = 10-17-14)


移植できる膵臓細胞作製か 米大学、1 型糖尿病治療に光

ヒトの iPS 細胞とES細胞から、インスリンを分泌する膵臓(すいぞう)のβ細胞の作製に成功したと、米ハーバード大幹細胞研究所が 9 日付米科学誌セル(電子版)に発表した。 ヒトへの移植ができるレベルで機能するとしている。 免疫異常が原因の1型糖尿病の根本的な治療法につながる可能性があるという。 1 型型糖尿病は、膵臓のβ細胞が壊されてインスリンが分泌されない病気で、多くは子どものころに発症する。 1 日数回のインスリン注射が生涯必要で、治療をしないと命にかかわる。 β細胞がある膵島(すいとう)の移植などが試みられているが、提供者不足や移植後の拒絶反応などが課題となっている。

ハーバード大のダグラス・メルトン教授らは、ヒトの iPS 細胞やES細胞からβ細胞をつくり、大量に培養した。このβ細胞は糖の刺激によってインスリンを分泌したほか、ヒトの膵臓のβ細胞と遺伝子の働きが変わらず、糖尿病のマウスに移植するとヒトのインスリンを分泌し、高血糖の症状が改善したという。 (岡崎明子、asahi = 10-10-14)


糖尿病の根本治療薬に道 原因のたんぱく質、働き解明

生活習慣が原因とされる 2 型糖尿病で、発症にかかわるたんぱく質「CD44」の働きを抑えると、血糖値を下げるだけでなく、脂肪細胞の炎症も抑えられるとする研究結果を、米スタンフォード大や北里研究所がまとめた。 肥満の人は脂肪細胞が炎症を起こし、インスリンがうまく働かなくなると考えられており、糖尿病の根本的な治療薬の開発につながる可能性があるとしている。

7 日付の米糖尿病学会誌(電子版)に論文が掲載される。 研究チームは、肥満のマウスを、CD44 の働きを抑える物質を与える、糖尿病治療薬を与えるなど四つのグループに分け、観察した。 その結果、CD44 の働きを抑えたマウスは、治療薬を与えられたマウスと同じように血糖値を下げただけでなく、脂肪細胞の炎症や体重増加も抑えられたという。

現在の糖尿病治療薬は、インスリンの分泌を促すことで血糖値を下げるタイプが主流だ。 スタンフォード大上席研究員の児玉桂一さんは「糖尿病の原因となる脂肪細胞の炎症を抑えることができれば、インスリンがうまく作用し、糖尿病を治すことができるかもしれない」と話す。 (岡崎明子、asahi = 10-8-14)


子宮移植受けた女性が出産 世界初、スウェーデンで

子宮移植を受けたスウェーデンの女性 (36) が男児を出産したと、同国のイエーテボリ大のチームが 3 日付の英医学誌ランセットに発表した。 世界初の成功例となる。

移植を受けた女性は卵巣はあるものの、病気で生まれつき子宮がなかった。 閉経した 61 歳の知人女性から昨年、子宮の提供を受けた。 自身の卵子と夫の精子を体外受精させ、移植した子宮に受精卵を入れて妊娠した。 胎児の心拍に異常が出たことから今年 9 月、妊娠 31 週で帝王切開によって 1,775 グラムの男の子を出産した。 母子ともに健康で、すでに退院している。 チームによると、この女性のほかに、子宮移植を受けた 7 人が妊娠中という。 子宮移植による妊娠は、昨年にトルコで成功したが、その後、流産した。 (岡崎明子、asahi = 10-4-14)


抗がん剤、極小カプセル化に成功 副作用軽減に効果

岡山大と岡山理科大の共同研究グループは、複数のがんの標準治療薬になっている抗がん剤を極小の「人工カプセル」に封じ込め、がん細胞内に効率よく送り込む技術開発に成功した。 マウスの実験で、抗がん剤の副作用を抑え、がんの進行を止める働きを確認した。 9 月 29 日、米電子科学誌「プロスワン」に掲載された。

抗がん剤パクリタキセルは、肺がんや卵巣がんなどに幅広く使われている。 水にほとんど溶けないため、ひまし油とエタノールに溶かして使う。 岡山理科大の浜田博喜教授(生物化学)らは、この抗がん剤にブドウ糖の分子を 1 個くっつけ、水に溶けやすく加工。 岡山大の妹尾昌治教授(生物工学)らが、この加工パクリタキセルを、水に溶けるものしか入れられない特性を持つ球状の脂質膜「リポソーム」に封じ込めた。 (中村通子、asahi = 10-2-14)


お酒に弱い人、心臓も? 心筋梗塞、重症化の傾向

お酒に弱い体質の遺伝子型を持つ人は、心筋梗塞(こうそく)になったときに心臓のダメージが大きくなりやすいとする研究結果を、米スタンフォード大のチームがまとめた。 ヒトの iPS 細胞を使った実験で確かめたという。 論文を米医学誌サイエンス・トランスレーショナル・メディシン電子版に発表した。 お酒に強いか弱いかは、悪酔いの原因となる物質アセトアルデヒドを分解する酵素をつくる遺伝子の型に左右される。 遺伝子に変異があって、その酵素をうまくつくれないタイプの人はお酒に弱くなる。 こうしたタイプは東アジアの日本人や韓国人、中国人に多い。

チームは、東アジア系でお酒に弱い遺伝子タイプの 5 人と、そうではない 5 人の皮膚の細胞から iPS 細胞をつくり、心筋細胞に変化させて性質を調べた。 この酵素は心筋梗塞になったときに出てくる活性酸素の解毒にもかかわっていて、お酒に弱いタイプでは心筋細胞でもこの酵素がうまく働かず、細胞が死にやすくなっていることがわかったという。 お酒に弱い人は心筋梗塞などが重症化しやすい傾向にある、と臨床医の間では経験的に受け止められていた。 これまでのマウスの実験では、この酵素に心筋細胞を守る働きがあるかどうかははっきりしていなかった。 (竹石涼子、asahi = 9-28-14)


豚のコラーゲンで角膜組織再生 生物研などが新素材、10 年以内に実用化も

農業生物資源研究所(生物研、茨城県つくば市)と東京大医学部付属病院の研究チームは、豚のコラーゲンから人の角膜組織などを再生させる新素材を開発したと発表した。 実用化すれば、この素材から大量培養で角膜組織を作ることもできるという。 角膜内皮の病変で視力が低下し、年間 5 千人が発症するとされる水疱性(すいほうせい)角膜症の患者など、角膜移植が必要な人には朗報といえそうだ。

研究チームが開発した「アテロコラーゲンビトリゲル膜」は厚さ約 20 ミクロンの高密度コラーゲン線維膜で、水分やタンパク質を通す半球面状の素材。 この素材を使うことで今後、1 人の細胞を基に角膜組織の大量培養が可能になるという。 人の黒目の部分に当たる角膜は外側から上皮、実質、内皮の 3 つの組織で構成される。 内皮細胞は再生能力がなく、加齢や白内障手術などで細胞数が極端に減ると視力が低下する。 視力回復には角膜移植が必要だとしている。 今回、開発した素材をウサギの目に移植したところ、炎症などの異常はみられなかった。

角膜移植はドナー(提供者)からの角膜提供に頼っているが、移植を望む患者は多く、国内では年間約 700 人が移植待ちの状態。 また移植が必要な患者の約 4 割が水疱性角膜症が原因とみられる。 東大病院では 10 年以内の実用化も可能という。 生物研の竹沢俊明上級研究員は「多くの患者に角膜内皮の移植実現につなげたい」と話している。 (sankei = 9-21-14)


まつ毛フサフサ? 国内初の薬 緑内障治療薬で「副作用」

まつ毛の本数が少ない、短いと悩んでいる人向けの薬が 29 日、発売される。 緑内障の治療薬を使っている人は、まつげがフサフサしているという「副作用」に注目し開発された。 まつ毛に人工毛を接着するエクステンションのトラブルが問題となる中、医師の処方による「目力アップ」が可能になるかもしれない。 製品名は「グラッシュビスタ」。 今年 3 月、日本初のまつ毛貧毛症治療薬として、厚生労働省から製造販売承認を受けた。 成分は緑内障の点眼薬と一緒で、1 日 1 回、寝る前に上まつ毛の生え際に塗る。 自由診療のため各医療機関で異なるが、70 日分が 1 万 - 数万円で販売される見込みだ。

約 170 人を対象に行われた臨床試験では、薬を 4 カ月間使うと、約 8 割の人が「長さ」、「太さ」、「濃さ」などの印象度が改善したという。 副作用には結膜の充血などがある。 まつ毛のエクステは手軽に受けられる一方、国民生活センターにはアレルギーやかぶれなど、年間 100件前後の相談が寄せられている。 東邦大学医療センター大橋病院(東京都目黒区)の富田剛司教授は「元々点眼する薬なので、エクステに比べれば目への障害は少ないのではないか」と話している。 (岡崎明子、asahi = 9-21-14)


人工甘味料 "血糖値下がりにくい"

清涼飲料水やお菓子などに使われる人工甘味料を摂取すると、糖尿病や肥満のリスクを高める血糖値が下がりにくい状態になることを、イスラエルの研究チームが発表し、人工甘味料の健康への影響を巡って議論となりそうです。 これは、イスラエルの研究チームが 18 日付けのイギリスの科学誌「ネイチャー」に発表したものです。

研究チームは、マウスにサッカリンやスクラロースなどの人工甘味料を混ぜた水を与え、変化を調べたところ、マウスの腸内の細菌のバランスが崩れ、糖尿病や肥満のリスクを高める血糖値が下がりにくい状態になることが分かったということです。 また、研究チームがヒトへの影響を探るためおよそ 380 人を調べたところ、人工甘味料を多く摂取する人は少ない人に比べて体重が重かったり血糖値が高かったりする傾向が見られたということです。

研究者の 1 人は「広く大量に使われている人工甘味料の影響について再評価する必要がある」と指摘しています。 人工甘味料は、カロリーを摂取せずに甘さを加えられるとして清涼飲料水やお菓子に幅広く使われていますが、健康への影響はないとする別の研究もあり、今回の発表を受けて議論となりそうです。 (NHK = 9-18-14)