"ITと野菜" の意外な関係 - 東芝、富士通が野菜を展示した CEATEC JAPAN 2014

千葉の幕張メッセで 10 月 7 - 11 日まで開催されている、最先端 IT・エレクトロニクス総合展「CEATEC JAPAN 2014」。 IT 関連の製品や部品、ソフトウェアが中心だが、今年は異彩を放つ展示が東芝と富士通で見られた。 それが「野菜」だ。 ブースの一角に据えられた棚は、野外のような煌々とした照明を放ち、その下にはレタスなどの野菜が展示されていた。 「なぜ IT 企業が野菜なのか?」をレポートする。

半導体の生産から野菜への転換

富士通の担当者に聞いたところ、野菜を作ろうと思い立った理由は半導体を生産するクリーンルームの活用だったという。 東芝も 5 月 15 日付けのプレスリリースで「当社所有の遊休施設を活用」という文面があるため、事情は同じと推察できる。 つまり、無菌を維持できるクリーンルームであれば、野外で生産するのとは異なり、虫や動物も来ないため、それらに食べられることもなく、媒介する病気にもならない。 つまり、完全な無農薬栽培ができるというわけだ。

また、東芝によると、雑菌による傷みが少ないため、2 週間前後の長期保存ができるという。 まさにサラダ用の野菜やカット野菜を生産するのに最適なのがクリーンルームと言える。 実は IT 企業が円高と半導体不況で生産設備を縮小したり、海外に生産設備を移転した副産物がこの野菜工場なのだ。 富士通は会津若松で、東芝は横須賀に試験的にこの野菜工場を設置し、試験的に生産を始めている。

栄養価を自由に調整できる機能性野菜

クリーンルームで栽培できる野菜のメリットはこれだけはない。 光の照射時間や肥料を制御することで栄養価を自由にコントロールできるという。 もちろん、一般的に売られている野菜と同等の栄養価のものを作ることも可能だ。 とはいえ、今のところ富士通の担当者によると、当面は農家と競合するよりもクリームルームでしか作れない機能性野菜を作り、市場を棲み分ける方向で模索しているという。 例えば富士通が生産するレタスはカリウムの含有量が一般的な野菜の 15 分の 1 だ。

カリウムは腎臓病になると腎臓で処理できず、高カリウム血症により心不全などを引き起こす可能性がある。 そのため、多くの腎臓病患者は食事制限により、生野菜を食べることはできない。 しかし、この低カリウムレタスならば、カリウムが食事制限の対象にならないため、腎臓病の患者でも安心して食べることができる。 また、クリーンルームで生産し、農薬も使わないため、洗わなくても食べられるのも特徴だ。

富士通ではこの低カリウムレタスの出荷を既に開始しており、福島県や関東のスーパー「マルト」や「コープあいづ」、「九州屋」、「ころくや」(いずれも一部の店舗のみ)と福島県立医科大学付属病院にあるローソンや東京労災病院の売店などで販売されている。 また、東芝はベビーリーフのサラダを社内の食堂などで試験的に販売するとのこと。

IT と野菜は実は近い! 既存のインフラを活用し安心な野菜を作る

イマドキの野菜は「生産者の顔が見える」、「生産地が追跡できる」といった消費者が商品の素性を追跡できるようにし、安心して買って貰えるようにするのがトレンドだ。 こういったことをするには、生産管理のシステムが不可欠だが、実は富士通や東芝といった企業であれば、むしろ半導体生産で培った得意分野であり、自社で持っているシステムをそのまま活用できる。

富士通は生育管理システム「agis」を構築、RFID で生育情報、観察記録の管理をしており、クラウド連携で個体情報を簡単に参照できる。 生産管理のシステムはもちろん、自社製品を活用しているのが東芝だ。 東芝は東芝ライテックという照明機器専門のグループ企業があり、そこで野菜の栽培専用にチューンナップした蛍光灯を開発し栽培に活用している。 今後、こうした野菜の工場栽培がより一般的になれば照明機器の需要も高くなるため、市場として花開く可能性がある。

半導体と野菜という違いはあれど、モノの生産を管理し一定の品質でつくるという点では共通しており、半導体メーカーは新規の大規模な投資なく今まで培ってきた技術を転用できる。 半導体は需要と供給の波が激しく定期的に進化する製造プロセスに対応して生産設備の改変が必要だが、野菜ならば需要はある程度一定しており、生産設備の改変も必要ない。

また、天候によって生産量が左右されないため、食料の安定供給という点でも社会的なメリットがある。 とはいえ、半導体と野菜ではそもそもの単価が違うため、富士通の担当者によるとコストが課題とのこと。 特に1つの工場から全国に出荷するのでは輸送コストが掛かりすぎるため、地域ごとに工場を作り、地産地消の方がベストだと語っていた。 (シバタススム、Cnet = 10-11-14)

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テツ分たっぷり野菜ビジネス 鉄道会社、遊休地を活用

関西の鉄道会社が野菜関連ビジネスに力を入れている。 無菌状態の工場で野菜をつくったり、野菜を自宅まで宅配したり。 一見、本業と「畑違い」の野菜を、鉄道会社が選ぶのはなぜ? 今年のノーベル物理学賞で注目が集まる LED 照明から、明るい光が白い建物の中を照らす。 隙間なく埋める緑の葉っぱの中を見回る、白ずくめの服装のスタッフがまぶしく映る。 高架の建設や保線に携わってきた鉄道のプロたちだ。

阪神電気鉄道が、尼崎センタープール前駅(兵庫県尼崎市)の近くの高架下につくった野菜工場で、本格的に生産を始めたのは今年 3 月。 無菌状態でつくり、えぐみが少ないベビーリーフやフリルレタスなどを「清らか野菜」のブランドで系列百貨店やスーパーなどに卸している。 栽培を担当する長田(ちょうだ)真由美さんは「もっと種類を増やしてほしいとの声がきている」と喜ぶ。 (西山明宏、asahi = 10-9-14)

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リストラ工場、第 2 の人生 フロッピーやめて野菜育てる

フロッピーディスクを 1990 年代前半までつくっていた東芝の工場で、いま、ホウレンソウやベビーリーフなどが育っている。 初出荷は 10 月下旬。 まずは社員食堂などに届けるが、いずれはコンビニやスーパーのカット野菜やサラダ用として売りたいという。 工場は神奈川県横須賀市の子会社の施設内にあり、広さは約 2 千平方メートル。 フロッピーディスクの生産を終えた後の約 20 年間は、使われていなかった場所だ。 ほぼ無菌状態が保てる「クリーンルーム」が残っていたため、腐りにくい野菜を作る工場として生かした。

来年度以降、リーフレタス、ハーブなどもあわせて年間 300 万株をつくり、3 億円の売り上げを目指すという。 野菜が育ちにくい土地でも新鮮な野菜がとれれば、富裕層を中心に売り込める。 海外の工場の空きスペースでも、野菜の生産を始める計画もある。 富士通も 5 月から、閉鎖していた福島県の半導体工場のクリーンルームを野菜工場に転用して、出荷を始めたばかり。 リストラされた工場が「第二の人生」を歩み始めている。 (南日慶子、asahi = 10-6-14)


穴開けず紙を圧着してとじる 針のいらないステープラーに新シリーズ

コクヨ S & T は、穴を開けずに 5 枚の紙がとじられる「針なしステープラー <ハリナックスプレス>」を 2014 年 10 月 22 日から発売する。 <ハリナックス> シリーズは、金属針を使わずに紙自体でとじる方式で、環境に優しい、あるいは安全などの理由で人気となったステープラー。

これまでの製品は構造上、紙にとじ穴が開いてしまったが新製品の「プレス」はプレスロック式を採用し、金属歯で紙を非常に強い力で圧着するようにした。 このため穴を開けなくても 5 枚程度のコピー用紙であれば、きれいにとじられ、とじた部分が厚くならずかさばらない。 また、とじ部を平らにならすだけで、簡単に外せる。 希望小売価格は税込 1,188 円。 (J-cast = 10-9-14)


超音波スピーカーで騒音トラブル回避へ 立命館大が研究

立命館大学の研究グループが限られた場所だけに音を伝える超音波スピーカーを使って、住宅密集地でもラジオ体操などを行える空間作りを研究している。 音を巡るトラブルが多い都心でも心おきなく楽しめる空間を作れないかと模索している。 「これならまず苦情は寄せられないでしょう」。」 京都市下京区の広場「壬生(みぶ)オアシスガーデン」の土地所有者、久武(ひさたけ)公一さん (72) は感心していた。

先月上旬の朝、広場周辺の住民ら十数人が集まり、フィットネスクラブのインストラクターと一緒に伸び伸びと運動を楽しんでいた。 住民らの前には直径約 20 センチの超音波スピーカーが 4 台。 軽快な音楽はスピーカーの正面に立てばはっきり聞こえるが、左右に少しずれるだけでほとんど聞こえなくなった。 直進性が高い超音波の特徴を利用した特殊なスピーカーで、音の拡散を抑えているという。 (佐藤剛志、asahi = 10-8-14)


新型衛星搭載の H2A ロケット打ち上げ成功

新型の気象衛星「ひまわり 8 号」を載せた H2A ロケット 25 号機が 7 日午後 2 時 16 分、鹿児島県南種子町の種子島宇宙センターから打ち上げられた。 衛星は 28 分後、高度約 263 キロで切り離され、打ち上げは成功した。 ひまわり 8 号は、現在運用中の 7 号の後継機で、全長約 8 メートル、重さ約 1.3 トン。 観測の性能が格段に上がり、天気予報の精度向上や防災への活用が期待される。 特に、静止気象衛星として世界で初めてカラー画像を撮影でき、気象庁は「雲との判別が難しかった火山灰や黄砂の分布をより細かく把握できる」と話す。

北極から南極までを撮影するのにかかる時間も 7 号の約 30 分から約 10 分に短縮され、日本付近は 2 分半ごとに撮影できるという。 来夏に観測を始める予定。 7 号は予備機として地球の周回を続ける。 国産主力ロケットの H2A の打ち上げは、2005 年から 19 回連続の成功となった。 (yomiuri = 10-7-14)

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H2A ロケット 25 号機、10月7日14時16分打ち上げへ 「ひまわり 8 号」を搭載

三菱重工業株式会社と宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は 10 月 5 日 14 時に、「ひまわり 8 号」を搭載したH2A ロケット 25 号機の打ち上げについて、当初の予定通り 10 月 7 日 14 時 16 分 00 秒に行うと発表した。 打ち上げ可能時間帯は 4 時間後の 18 時 16 分 00 秒まで確保されている。

今後の打ち上げに向けた作業予定についてはまだ公表されていないが、いつも通りであれば 6 日の夜から、ロケットを組立棟から射点へと移動させるための準備作業が始まり、そして 6 日深夜(7 日未明)に機体移動が行われるはずである。 現在、種子島は台風 18 号の影響で荒れた天候となっているが、台風は今日中に抜ける予定で、作業に影響はないと判断された模様だ。

また万が一、7 日に打ち上げができなかった場合の打ち上げ予備期間として、翌 10 月 8 日から 10 月 31 日までが確保されている。 今回の打ち上げでは、H2A は気象衛星「ひまわり 8 号」を、近地点高度約 250km、遠地点高度約 35,976km、軌道傾斜角 22.4 度の静止トランスファー軌道に送り込む。 H2A での静止衛星の打ち上げは、14 号機の「きずな」以来、実に 7 年ぶりとなる。

「ひまわり 8 号」は気象庁が運用する気象観測衛星で、再来年に打ち上げが予定されている同型機の「ひまわり 9 号」と共に、現在運用されている「ひまわり 6 号」と「ひまわり 7 号」を代替する。 「ひまわり 6 号」と「ひまわり 7 号」に比べ、性能が大きく向上しており、天気予報の精度改善などに役立てられるという。 打ち上げ時の質量は約 3,500kg で、東経約 140 度の静止軌道で運用される。 設計寿命は観測機器が 8 年以上、衛星本体は 15 年以上と見込まれている。 (Sorae = 10-5-14)


プラ板に浮かぶ 3D 映像 オムロンが世界で初めて開発

電子機器大手のオムロン(京都市)が、透明なプラスチック板に LED の光を当てるだけで 3 次元映像が浮かび上がる新技術を開発した。 同社によると世界初の技術という。 矢印がどの場所を指しているのかがわかりやすくなる駅の案内板などへの実用化を検討している。 独自開発の特殊な細かい凹凸を施したプラスチックに光を当てると、光が微妙に変化して奥行きがあるように見える仕組みだ。

今回は 10 センチ四方のプラスチック板で開発したが、いくらでも大きくできるという。 矢印を浮かび上がらせて駅の案内板にしたり、小売店でショーウインドーの商品と映像を組み合わせたりもできる。 これから商談を進め、実用化の道を探っていく。 従来は、3 次元映像をつくるために専用レンズや投影装置が必要で、数万 - 数十万円かかったという。 プラスチック板は大量生産できるため、オムロンの篠原正幸・技術専門職は「コストは相当抑えられる」と自信を見せる。 (福山亜希、asahi = 10-5-14)


パナソニック、最小の円筒型リチウムイオン電池

パナソニックは 3 日、ウエアラブル端末向けに世界最小の円筒型リチウムイオン電池を開発したと発表した。 2015 年 2 月に発売する。 電池内のシート状の素材を小さく巻く技術を使い、大きさは単 4 電池の約 20 分の 1 とした。 ウエアラブル端末はメガネ型や腕時計型など様々な製品が開発されており、国内外の幅広い顧客に売り込む。

新型電池は直径 3.5 ミリメートル、長さが 20 ミリメートル、重さは約 0.6 グラム。 例えば、メガネ型端末では耳にかけるツルの部分に組み込める。 タブレットなどに使う電子ペンなどでも使える。 電池の容量は 13 ミリアンペア時。 電子ペンなら 1 カ月程度使える。 大阪府守口市の自社工場で月 10 万個生産する。 17 - 18 年度中に同 150 万個に増やす。 パナソニックは世界のウエアラブル端末市場が 18 年に年 3.1 億台になると予測する。 同社は 18 年に年 2,000 万個の電池の販売を見込んでいる。 (nikkei = 10-3-14)


車いすもブレーキ進化 障害物でストップ、下り坂で減速

車いすが、安全面で進化している。 下り坂での急加速や段差での転倒事故を防ぐため、各社が仕組みづくりを競っている。 車のような「自動ブレーキ」を付けた電動車いすの開発も進んでいる。 1 日、東京ビッグサイトで始まった「国際福祉機器展」には、国内外約 580 社が、高齢者や障害者向けの介護用品など約 2 万点を展示。 3 日まで開かれる。 自動車メーカーのスズキは、試作中の電動車いす「UT コンセプト」を展示。 段差や障害物をセンサーで感知し、数十センチ前で停止する「自動ブレーキ」を付けたのが特徴だ。 操作ミスを防ぐことができ、事故を減らすことができる。 (大畑滋生、asahi = 10-3-14)


技とテクノの融合展 中小企業 275 社が集結

中小企業 275 社が集まる「江戸・TOKYO 技とテクノの融合展 2014」が 10 月 2 日、東京国際フォーラム(東京都千代田区)で開かれる。 伝統工芸、環境・エネルギー関連、先端技術といった業種別に各社ブースが分かれ、出展企業によるプレゼンテーションがある。 商談コーナーもある。 東京信用保証協会の主催。 入場無料。 (asahi = 9-30-14)


ドコモが機械翻訳の子会社 来日外国人増で成長見込む

NTT ドコモは 29 日、高い精度の機械翻訳サービスの開発や販売をする子会社を 10 月につくると発表した。 社名は「みらい翻訳」。 韓国の翻訳ソフト開発会社「シストラン」、大阪市の音声認識・翻訳システム開発会社「フュートレック」からの出資もあおぐ。 ドコモによると、2014 年の機械翻訳の国内市場規模は 12 億円程度だが、来日外国人数は増加傾向にあり、成長が見込める。 新会社は、企業向けでは同時通訳や文書翻訳、個人向けではテレビニュースや交通案内などの翻訳をめざす。 対象言語は、まず英語、中国語、韓国語に取り組み、将来は他のアジアの言語に広げるという。 (asahi = 9-29-14)


米大手アニメ会社買収を交渉 ソフトバンク、米紙報道

【ニューヨーク】 米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は 27 日、ソフトバンクが人気アニメ映画「シュレック」や「マダガスカル」などを手掛けた米大手アニメ制作会社、ドリームワークス・アニメーション SKG の買収交渉を進めていると報じた。 関係筋の話としている。 ソフトバンクにとって豊富な実績を持つドリームワークス・アニメーションを買収すれば、スマートフォンなどモバイル端末向けのコンテンツを強化できるとの狙いがあるとみられる。 (kyodo = 9-28-14)


トルコ市場、日系企業の一大拠点 成長続き周辺国進出も

トルコが、日系メーカーの世界戦略の一大拠点になりつつある。 もともとは欧州に近い「地の利」を求めて進出したが、頼みの欧州経済が低迷。 対照的に、成長を続けるトルコ国内に加えて、中東、アフリカをもにらんだ位置づけに変わってきたのだ。 石畳の細い路地が縦横無尽に走るイスタンブール。 約 600 年続いたオスマン帝国時代を思い出させる光景と対照的に、近代的な電気製品を並べる一角もある。 そんな中でも、「VIKO」と書かれたオレンジ色の看板はひときわ目に付く。 地元最大手の配線器具メーカー、ヴィコだ。

そのヴィコを 2 月に買収したのが、日本や台湾などで配線器具シェア 1 位のパナソニック。 配線器具の世界市場は、国や地域でコンセントの形状が違う事情から単純な拡大が難しい。 このためパナソニックは、ヴィコ製のコンセントやスイッチを現地で売る作戦をとった。 パナソニックと同じような戦略を採るのがダイキン工業。 2011 年 9 月、トルコの空調大手エアフェルを買収した。 活発なビルやマンション建設を追い風に、業務用、家庭用とも空調機器の需要が旺盛なことから、14 年 3 月期の売上高は 6 億 9,500 万トルコリラ(約 340 億円)と、買収当時の 3 倍以上に伸びた。

トルコはいま、世界でも注目される成長市場だ。 12 年の 1 人当たり国内総生産 (GDP) は 1 万 504 ドル(約 114 万円)と、10 年前の約 3 倍。 03 年から続くエルドアン政権の下、インフラ整備や海外企業の投資を増やす政策を採ってきたからだ。 さらに、人口約 7,600 万人のうち 30 歳までが半数を占め、労働力が豊富。 民間消費も GDP の 7 割を占め、勢いがある。

これに伴い、日系企業のトルコ進出も増えている。 外務省の海外在留邦人数調査統計によると、トルコの日系企業数は 05 年の 57 社から、13 年は 121 社と倍以上に増えた。 業務用冷蔵庫のホシザキ電機や日清食品ホールディングス、日立物流など業種も広がりをみせている。 その先駆けは自動車関連メーカーだった。 1994 年にトヨタ自動車、97 年にホンダが生産を開始。 主に欧州向けの輸出拠点としての役割だった。 部品メーカーの進出も相次いだ。

背景には、トルコと欧州が経済的な結びつきを強めたことがある。 96 年、トルコは欧州連合 (EU) と関税同盟を締結。 工業製品や農産加工品に関税がかからないようになった。 05 年には EU への加盟交渉も始まった。 しかし、08 年のリーマン・ショックで欧州経済が失速してトルコの位置づけが一変。 「欧州の統括会社から見て、隅っこの存在だったトルコが一番元気のある市場だと関心が高まった」と、日本貿易振興機構(ジェトロ)の中島敏博イスタンブール事務所副所長は指摘する。

中東やアフリカの成長にともない、トルコから北の欧州だけでなく、南や東を見晴るかす視点も生まれている。 パナソニックが買収したヴィコはアフリカに販路を持っており、どの製品が市場に受け入れられるか検討を進めている。 ダイキントルコの西村英記副社長は「トルコ市場はもちろんだが、中央アジアで事業を拡大させたい。」 住友ゴム工業が建設中の工場も、中東や北アフリカ市場などをにらんだものだ。

シリアやイラクなど紛争地が周辺にあるのが心配材料だが、ジェトロの中島副所長は「短期的には懸念材料もあるが、中長期的にはまだまだ有望だ」と、日系進出は続くとの見方を崩していない。(イスタンブール = 近藤郷平、asahi = 9-22-14)


人型ロボ「ペッパー」開発者に先行販売 ソフトバンク

ソフトバンクは 20 日、来年 2 月に売り出す予定の人の感情を理解するロボット「Pepper (ペッパー)」について、社外の開発者を対象に未完成版の 200 台を先行して販売すると発表した。 開発プログラムも提供し、ロボットの機能を増やすアプリを開発してもらう。

東京・渋谷で 20 日に開いた開発者向けのイベントで明らかにした。 20 日から予約を受け付け、11 月中に抽選する。 当選者には 12 月中に製品が届く予定。 開発者向けの価格は、税抜きで本体が 19 万 8 千円、故障時の修理などのサポートが月額 9,074 円とした。 一般の購入客がアプリをペッパーにダウンロードできる仕組みも、来年 2 月の発売にあわせて公開する予定。 開発者向けの先行販売は、社外にも開発の舞台を広げ、アプリの品ぞろえを充実させるねらいがある。 (asahi = 9-20-14)

前 報 (6-5-14)


迫るサメ、気分は騎士 … ゲーム機「体感型」で復活図る

国内で販売が減少傾向にあるゲーム機が、体全体を使って遊ぶ進化した「体感型」で巻き返しを図ろうとしている。 ライバルのスマートフォンゲームにはまねが出来ないためだ。 一方でソフトメーカーは、外出先でも遊べるようにするなど、スマホに流れるユーザーのつなぎ止めにも力が入る。 差別化と歩み寄りの「両面作戦」は、ゲーム機復活につながるだろうか。

ゴーグルつけて海中体験

大きめのゴーグルをかぶると、視界は一面、海の中。 突然、前からサメが襲いかかってきた。 目の前の柵に体当たりされ、画面が大きく揺れる。 思わずのけぞった - -。 (高木真也 伊沢友之、篠健一郎、asahi = 9-19-14)

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ディスプレーかぶれば仮想現実 ソニー、来年にもゲーム

ソニーは 10 日、2015 年にも家庭用ゲーム機「プレイステーション (PS) 4」で、仮想現実を味わえるゲームを世界で発売する方針を明らかにした。 専用のヘッドマウントディスプレーをかぶれば、恐竜世界の探検や高速そりのレースを「その場にいるような感覚」で楽しめるという。

米国で開催中のゲーム見本市「E3」で試作品を出展した。 ディスプレーには 5 インチの液晶画面のほか、センサーが内蔵されている。 ゲーム機のカメラと組み合わせてプレーヤーの頭の動きを認識するため、コントローラーがなくても、ゲームを楽しめる。 ヘッドマウントディスプレーは外界の視界が遮断されるため、臨場感がより高まる効果がある。 開発には、ソニーの電機部門の技術も活用する。 ゲーム子会社のアンドリュー・ハウス社長は、朝日新聞社とのインタビューで「全く新しい体験ができるゲームをつくる」と話した。 (ロサンゼルス = 伊沢友之、asahi = 6-12-14)


家電業界、狙いはシニア 値段高めでも使いやすさ追求

家電大手は、50 代以上のシニア世代に向けた新製品を次々と売り出している。 国内の人口は減っているが、シニアはこれからも増え続けるのに目をつけた。 シニアが使いやすいように工夫し、その分値段は高めにして、国内市場での売り上げを確保しようとしている。

パナソニックは 17 日、おもに 50 - 60 代に向けた新たな家電シリーズ「J コンセプト」を東京都内で発表した。 紙パック式掃除機は、新開発の小型で軽いモーターを使うなどして同種の掃除機では世界で最も軽いという重さ 2 キロ。 エアコンは冷える足元にしっかりと温風が届くようにした。 掃除機は 11 月 25 日に発売し、税抜き想定価格は 5 万 5 千円前後。エアコンは 10 月下旬から順次発売し、21 万円前後からで、ともに高めだ。

これらの商品は、シニアが家電に抱いている不満を聞いて開発した。 来年度は洗濯機と炊飯器の発売を予定しており、シニア向け家電の売上高は 2016 年度に 500 億円、18 年度に 1 千億円を目指すという。パナソニックの高見和徳専務は「国内の家電市場は長期的には台数が減る。 売り上げのプラスを狙い、シニアに焦点を当てた。」と話す。 (南日慶子、近藤郷平、asahi = 9-18-14)

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力仕事、全身スーツがアシスト パナ関連会社が発売へ

パナソニックの社内ベンチャー企業「アクティブリンク(奈良市)」は 11 日、体に着けて重い物の上げ下ろしを楽にする「アシストスーツ AWN-02」を公開した。 物流や農業などで、力仕事をする高齢者に使ってもらうのが狙いで、2015 年度中に売り出す計画だ。 アシストスーツは、横から見ると「く」の字形に曲がるフレームを、背中から腰、太ももにかけてベルトで固定して使う。 物を持ち上げようとすると、センサーが動きを検知して、二つのモーターがフレームをまっすぐになるように動かし、上半身を起こすのを助ける。

本体の重さは充電池を含めて約 8 キロで、1 回の充電で 150 分使える。 機能を腰の補助に絞ることで部品を減らし、価格は 50 万円程度に抑えるという。 昨年から大阪港の倉庫で実験しており、今秋からは福井県の農家でも実験を始める。 アクティブリンクには昨年、三井物産も出資。 全身を支えるスーツの研究も進めており、災害現場や原子力発電所などで使えるようにするのが目標だ。 藤本弘道社長は「日本は労働力人口が少なくなり、市場が伸びないわけがない。」と期待をかける。(山村哲史、asahi = 9-12-14)

関連ニュース (3-2-14)

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パナソニック「テクニクス」、欧州から復活へ IFA ベルリン

【ベルリン = 戸田雄】 パナソニックの高級オーディオブランド「テクニクス」が今年 12 月、4 年ぶりに欧州で復活する。 国際家電見本市「IFA (5 - 10 日)」が開かれるドイツ・ベルリンで 3 日、パナソニックが、アンプやスピーカーなどで構成する 2 機種を欧州で売り出すと発表した。 日本でも来春までに発売される。 新製品は、最新のデジタル技術で原音を忠実に再現できるという。 価格は 4 万ユーロ(約 550 万円)と 4,000 ユーロ(約 55 万円)。

テクニクスは 1965 年に誕生した。 レコードを載せるターンテーブルをモーターで直接回す「ダイレクト・ドライブ方式」を世界で初めて開発し、愛好家の人気を集めた。 しかし、市場縮小に加え、ブランドを「パナソニック」に統一する戦略の一環として、2010 年に生産を終えていた。 (yomiuri = 9-3-14)

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パナソニック松阪工場を停止へ 600 人配置転換

パナソニックは 29 日、AV 機器などの電子部品をつくる松阪工場(三重県松阪市)を来年 3 月までに停止すると発表した。 従業員約 600 人は、車載向け電子部品をつくる福島県本宮市の工場や、大阪府門真市の研究開発拠点などに配置転換し、もうかる自動車関連事業に軸足を移す。 松阪工場は 1970 年に操業を始めた。 近年は AV 向けの採算が悪化し、工場は研究開発や営業に特化していた。 電子部品のうち電源関連の事業については 10 月、東京の製造受託企業に売る方針だ。 (asahi = 8-30-14)

前 報 (4-28-14)


シャトル後継、スペース X など 2 社に NASA が委託へ

米航空宇宙局 (NASA) は 16 日、スペースシャトル後継機となる有人宇宙船の開発をボーイング社とスペース X 社の米 2 企業に委託すると発表した。 NASA が支払う開発費は、ボーイング社に 42 億ドル(約 4,500 億円)、スペース X 社に 26 億ドル(約 2,790 億円)を見込むという。

後継機に決まったのは、ボーイングの「CST-100」と、スペース X の「ドラゴン」。 いずれも 7 人乗りで、月面有人探査のアポロ宇宙船に似た円錐(えんすい)形の機体。 2017 年以降、国際宇宙ステーション (ISS) に宇宙飛行士を運ぶ。 候補の一つだった米シエラネバダ社のシャトルに似た形の「ドリームチェイサー」は、選ばれなかった。 同社は、日本の宇宙航空研究開発機構 (JAXA) と技術協力を進めている。 (ワシントン = 小林哲、asahi = 9-17-14)


ソニー、2,300 億円の赤字に 今期見通し、無配転落

ソニーは 17 日、2015 年 3 月期の営業損益の見通しを、7 月時点で公表した 1,400 億円の黒字から、400 億円の赤字に下方修正した。 スマートフォンなどモバイル・コミュニケーション分野の不振で、約 1,800 億円を営業損失として計上するためという。 純損益の見通しは 2,300 億円の赤字とし、7 月に公表した 500 億円の赤字から引き下げた。 これに伴い、14 年 9 月末の中間配当と、15 年 3 月末の期末配当は無配とする。 無配は 1958 年の上場以来初。 15 年 3 月期の売上高の見通しは、7 兆 8 千億円で据え置いた。 (asahi = 9-17-14)

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PS4、世界販売 1 千万台を突破 ソニー、国内伸び悩み

ソニー・コンピュータエンタテインメント (SCE) は 13 日、家庭用ゲーム機「プレイステーション 4 (PS4)」の世界での販売台数が 1 千万台を超えたと発表した。 10 日時点の集計。 昨年 11 月の発売以来、約 9 カ月で大台に乗せた。 過去のプレステより 3 カ月以上早い。 ゲームで遊ぶ様子をフェイスブックやツイッターに簡単に投稿できることがうけた、と SCE はみる。 ソフトメーカーがゲームをつくりやすい仕様にしたこともヒットにつながったようだ。

ゲーム機を含むソニーの電機部門全体は不振が続き、収益改善に取り組んでいる。 SCE の PS4 は「売り上げ規模を徹底的に追求しなければいけない事業(ソニーの平井一夫社長)」の一つ。 今秋には、離れた場所にいる、同じゲームソフトを持っていない友達とも、ネットを通じて一緒に遊べる機能を追加する方針だ。

ただ、ゲーム情報誌「ファミ通」の調べでは、日本国内の PS4 の販売台数は 8 月 3 日時点で約 64 万 4 千台と伸び悩む。 スマートフォンのゲームが増えたことに加え、日本人に人気のソフトがまだ少ないことが背景にあるとされる。 SCE は、今後発売されるスクウェア・エニックスの人気シリーズ「ファイナルファンタジー 15」などに期待をかけている。 (伊沢友之、asahi = 8-13-14)

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ソニー営業益倍増 期待の携帯は戦略見直し 4 - 6 月期

ソニーが 31 日発表した今年 4 - 6 月期決算は、本業のもうけを示す営業利益が 698 億円と前年からほぼ倍増した。 だが、「成長事業」と位置づける携帯電話で早くも戦略を見直すなど、回復の道筋はまだ描き切れていない。 昨年 11 月に発売したゲーム機「プレイステーション 4 (PS4)」の売り上げが好調で、リストラを進めるテレビ事業も黒字だった。 一方、スマートフォンの売り上げが中国などで思ったほど伸びず、年間 260 億円の営業利益を見込む携帯電話事業は、損益ゼロに下方修正した。

吉田憲一郎・最高財務責任者 (CFO) はスマホ事業の不振について「見通しが甘かった」と会見で述べた。 今後は価格の高い機種が売れる地域に絞り販売するなど「規模を追わず、収益を重視する」という。 今年から打ち出した新興国に価格の安いモデルを投入し、たくさん売る戦略を早くも転換した。 (高木真也、内山修、asahi = 8-1-14)

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ソニー、本社の土地を子会社に売却へ … 528 億円

ソニーは 28 日、JR 品川駅の近くにある本社(東京都港区港南)の土地を、子会社のソニー生命保険に 528 億円で売却すると発表した。 9 月中の売却完了を目指すという。

売却する土地は約 1 万 8,000 平方メートル。 2006 年 10 月に完成した本社の建物(地上 20 階、地下 2 階)はソニー生命が、土地はソニーが保有しているが、今回の売却で土地もソニー生命が所有することになる。 ソニー広報部は売却について「企業体質を強化するために行っている保有資産の見直しの一環」と説明している。 保有資産の見直しでは、これまでにもソニー創業の地と言われている「御殿山地区(東京都品川区)」の旧本社など、複数の不動産の売却を進めてきた。 (yomiuri = 7-28-14)

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ソニー、画像センサー生産能力 1 割増強 350 億円投資

ソニーは 23 日、半導体子会社傘下の長崎テクノロジーセンター(長崎県諫早市)と熊本テクノロジーセンター(熊本県菊陽町)の画像センサーの月間生産能力を約 1 割増の約 6 万 8 千枚(300 ミリメートルウエハー換算)にすると発表した。 2015 年度までに合計約 350 億円を投資する。 拡大が続くスマートフォン向けの供給力を高める。

増産する「積層型 CMOS (相補正金属酸化膜半導体)イメージセンサー」は光を受けるセンサーの裏面に画像処理チップを貼り合わせる構造でチップ面積を抑えながら高画質にできる。 米アップルの「iPhone」向けをはじめ、中国の新興メーカーからも引き合いが強まっている。 長崎では半導体チップを重ね合わせる工程に必要な設備を増強。 熊本では光を電気信号に変換するフォトダイオードの製造や配線工程などの設備を増やす。 ソニーは 14 年度に半導体で 650 億円の設備投資を見込んでおり、今回の投資額のうち約 90 億円が含まれる。

ソニーはルネサスエレクトロニクスから買収した山形県鶴岡市の半導体工場でも CMOS センサーの量産を 15 年 4 月にも始める。 中長期では CMOS センサーの生産能力を合計で月間約 7 万 5 千枚に高める計画を掲げている。 調査会社テクノ・システム・リサーチ(東京・千代田)によると、13 年のソニーの CMOS センサーの世界シェア(金額ベース)は 33% で首位。 需要増に応じた設備投資で首位を堅持する。 (nikkei = 7-23-14)


3D プリンター、発明したのは日本人 なのに逃した特許

1980 年 2 月。 名古屋市工業研究所に勤務していた小玉秀男 (64) が、後に 3D プリンターの技術につながるヒントを得たのは、新聞の印刷プロセスからだった。 ガラス板の台座に液体樹脂が塗られていた。 樹脂は光が当たった部分だけが固まる性質があり、洗い流すと固まった部分だけが盛り上がった。 文字の形に光をあてると、その部分だけが盛り上がってハンコのようになり、そこにインクをつけて新聞を刷る - - という仕組みだった。 帰りのバスの中で突然ひらめいた。 この工程を繰り返して樹脂を重ねれば、立体物が作れるはずだ。

4 月、小玉は手のひらに乗る大きさの 2 階建ての家をつくった。 厚さ 2 ミリの層を 27 枚重ねた家は、細かい間取りやらせん階段、食卓まで作り込まれていた。 小玉は特許を申請しようと周囲に相談したが、職務上の発明ではないと受け止められ、職場の支援は得られず、自力で特許は申請した。論文を書いて日本と海外で発表し、アイデアを公開したが、反響は芳しくなく、意気消沈。 特許を得るには申請後に「審査請求」をする必要があるが、その手続きをしなかった。

ところが、95 年、小玉は英国の民間財団が優れた発明に贈る「ランク賞」を受賞。 3D プリンターの基礎技術を世界で初めて発表したことが評価された。 このとき、共同受賞者がいた。 米国のチャールズ・ハル。 小玉に遅れること 4 年、84 年に特許出願し、3D システムズというベンチャーを起業していた。

3D システムズはいまや、米ストラタシス社に次ぐ 3D プリンターの世界の 2 大大手だ。 小玉の試算では、もし自分が先に特許を取得していたら、日本だけで 40 億円、米国でも取得していたらもう 1 けた多い利益が日本側に生まれていたはず、という。 小玉は当時の思いをこう振り返る。 「失敗したと、悔しい思いをした。 自分の研究成果の意義をもっと分かってもらう努力をすべきだった。」

米国ではいま、一般家庭にも 3D プリンターが普及しつつある。 5 月、西海岸のサンフランシスコ湾に近い広大な展示会場で行われた「メーカーフェア」。 市民グループやベンチャーが、3D プリンターでつくった作品を並べていた。 アクセサリー、コップや花瓶、有名人の胸像まで。 身近なものはお店で買わず、自分で作って楽しむ動きが広がっている。

各国の企業が参加する世界最大の家電ショー「CES」で今年、昨年に比べて 3D プリンターのコーナーが急激に拡大した。 そこにいた、3D システムズのいまの最高経営責任者 (CEO)、エイブラハム・ライケンタルはいう。 「3D プリンターは今後の数年間で、かつてのインターネットのように家庭に急速に浸透していくはずだ。 ロボット技術や人工知能のように、製造業を変えるだろう。」 (asahi = 9-15-14)


シャープ、次世代画面「MEMS」量産へ 17 年から

シャープは 12 日、次世代画面「MEMS (メムス)ディスプレー」の量産を 2017 年に始めると発表した。 米半導体大手クアルコムと共同開発する。 液晶は屋外など明るい環境では見えにくい弱点があるが、表示方式が違う MEMS は見やすい。 実用化すれば世界初で、スマートフォンや車載用として売り出す。

MEMS は、1 秒あたり最高 1 万回という高速で開閉する微小なシャッターで光を制御し、画像にする技術。 バックライトが液晶やカラーフィルターを通る液晶方式と違って光を効率良く通すため、同じ条件なら画面が液晶より 2 - 3 倍明るくなる。 消費電力も半分以下だ。 このため、日光の下などでも使われやすいスマホやタブレットから普及する可能性が高いという。

零下や高温でも鮮明に映せるため、自動車内で使うカーナビなどの表示部分としても商談が始まっている。 いまは針で示すアナログ式が主流のオートバイ用メーターも、MEMS に置き換えられるとしている。 (福山亜希、asahi = 9-13-14)