ホンダが英工場閉鎖、欧州生産撤退へ EU 離脱引き金?

ホンダは、欧州唯一の四輪生産拠点である英国南部のスウィンドン工場を 2022 年に閉鎖し、欧州生産から撤退する。 19 日午後に記者会見を開き、正式に発表する見通しだ。 欧州販売の低迷に加え、英国の欧州連合 (EU) からの離脱問題も背景の一つにありそうだ。 離脱問題が引き金だとすれば、この問題で日系自動車メーカーが英国工場を閉める初の事例となる。 ホンダは生産を日本に移管する方向で調整しており、生産拠点の大幅な再編を計画しているとみられる。

1985 年設立のスウィンドン工場では約 3,500 人が働く。 昨年は主力車シビックを約 16 万台生産し、米国や日本向けにも輸出していた。 生産能力は年 25 万台あるが、販売の低迷もあり 14 年に第 2 工場を休止していた。 昨年のホンダの欧州販売は前年比 7% 減の 14 万 3 千台。 同社の世界販売(523 万 8 千台)に占める比率は 2.7% と、各 200 万台前後を売る北米やアジアと比べて収益性は高くない。

EU 離脱問題の不透明感を背景に、英国では今年に入り、自動車メーカーの生産休止などが相次いでいる。 日産自動車は今月 3 日、英国中部のサンダーランド工場で予定していたスポーツ用多目的車 (SUV) 「エクストレイル」の次期モデルの生産を見送り、現モデルと同様、日産自動車九州(福岡県苅田町)で生産すると発表した。 独 BMW も、英国での小型車「ミニ」の生産を 4 月 1 日から約 1 カ月間休む。 英ジャガー・ランドローバーも 4 月上旬に一時生産停止に踏み切る方針だ。 (asahi = 2-19-19)


英議会、EU 離脱協定案を否決 反対 432・賛成 202

3 月 29 日に欧州連合 (EU) から離脱する英国の議会下院で 15 日夜(日本時間 16 日朝)、円滑な離脱に向けた協定案の採決があり、賛成 202、反対 432 の大差で否決された。 これを受け、メイ首相は英議会の 3 開会日以内に代替案を示すことになる。 政権も議会の多数派も、混乱を招く「合意なし離脱」は避けたい意向だが、打開策は見いだせていない。 離脱の先行きはますます見通せなくなった。

協定案は、離脱から 2020 年末までを移行期間とすることや、在英、在 EU の双方の市民が引き続き社会保障を受給する権利を認めることなどを定めたもの。 昨年 11 月に、英国と EU が合意していた。 スムーズな離脱に欠かせず、3 月末までに英・EU 双方の議会が批准手続きを終えなければ、「合意なし離脱」となる。

協定案で特に反発が強かったのが、英領北アイルランドをめぐる「非常措置」だ。 地続きの EU 加盟国アイルランド共和国との間で人と物の自由な往来を続けるため、通商協定などの解決策が用意できない限り、英国全体が将来にわたり EU の関税ルールに従うという内容。 与党・保守党内でも、EU の規制やルールから早く逃れて「主権回復」をしたい強硬離脱派が反発、最大野党・労働党などと共に反対に回った。

合意なし離脱では、英国と EU の間の鉄道や国際便の運行に支障が出たり、物流が停滞したりして、市民生活や経済が大きく混乱すると予想されている。 経済界を中心に「最悪のシナリオ」とされてきた。 EU 側もこれは避けたいのが本音で、英国と EU の双方から、離脱の先送りはやむを得ないとの見方も出てきている。 (ロンドン = 下司佳代子、asahi = 1-16-19)


英・EU、離脱条件で正式合意 焦点は英議会の承認に

欧州連合 (EU) は 25 日、臨時の首脳会議を開き、来年 3 月に英国が EU を離脱する条件を定めた協定などで正式合意した。 EU 史上、加盟国の離脱が正式に認められるのは初めてで、第 2 次大戦後に政治、経済的な統合を深めた欧州には大きな節目となる。 今後の焦点は、合意案への強い不満が出ている英議会で承認できるかに移る。 EU と英国が合意したのは、離脱後も双方の市民に保障する権利などを定めた「離脱協定」と、通商など将来の関係の大枠を示した「政治宣言」。

離脱協定は、経済や市民生活の混乱を避けるため、英国が離脱後も 2020 年 12 月末までは実質的に EU 内にとどまる「移行期間」についても規定。 この期間は最大 2 年間、延長でき、双方で通商協定などを議論するのに使われる。 移行期間の議論の下地になる政治宣言は、「野心的で幅広くバランスの取れた経済関係」の構築を目指すとしており、EU と英国による関税なしの自由貿易圏創設や、EU から英国への移民流入を制限することも想定している。

解決策が見いだせていない EU 加盟国のアイルランドと、陸続きで接する英領北アイルランドの国境管理問題については、政治宣言で英側の意向を反映した。 監視カメラなどの技術を駆使し、モノの移動をこれまで通り円滑に進めることを目指すとした。 ただ、現時点で EU はこの手法の実現性を疑問視しており、今後の議論に委ねられる。 (ブリュッセル = 下司佳代子、津阪直樹、asahi = 11-25-18)


英首相の「ミッション : インポッシブル」 EU からの脱出は本当に可能なのか

[ロンドン] テリーザ・メイ英首相は欧州連合 (EU) と 585 ページの離脱協定書について合意し、5 時間に及んだ臨時閣議で承認を取り付けた。 11 月 25 日の EU 臨時首脳会議で署名される。 しかしドミニク・ラーブ離脱担当相ら閣僚 2 人が辞任し、12 月中に離脱協定書が英議会を通るかどうか予測がつかない。 15 日、下院で 3 時間にわたって強硬離脱派と残留派の集中砲火を浴びたメイ首相は「協定書は最終の合意ではない」と含みを持たせた。

首相の決定に下院で与野党からこれだけ反対意見が述べられるのは、宥和政策でナチス・ドイツの拡張主義を許したネヴィル・チェンバレン首相(在任 1937 - 40 年)以来だと英メディアはメイ首相の退陣をほのめかす。 1939 年 9 月、ナチスのポーランド侵攻で第二次大戦が始まり、チェンバレンは 1940 年 5 月、後に「ノルウェー・ディベート」と呼ばれる歴史的な下院討論で与野党から攻撃される。 ナチスのノルウェー侵攻を防げず、無様に退却した責任を問われたのだ。

失意のうちに死んだチェンバレン

海軍元帥がノルウェー作戦におけるチェンバレンの無能ぶりを批判し、保守党議員からも「あなたは首相の座に長く居すぎた。 即刻、辞任しろ。」と詰め寄られた。 野党・労働党との戦時内閣樹立に失敗したチェンバレンはナチスのベルギー侵攻を許し、辞任する。 半年後、チェンバレンは失意のまま大腸がんで死亡する。 独裁者ヒトラーに追い詰められた英国の苦境は、アカデミー賞を受賞した昨年の英映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男(原題 : Darkest Hour)』で詳細に描かれた。

この 1 年で強硬離脱派の頭目ボリス・ジョンソン前外相やデービッド・デービス前離脱担当相を含む 18 人の保守党議員がメイ政権の要職を辞任した。 離脱交渉で EU に屈したように見えるメイ首相はチェンバレンと同じ運命を辿るのか。 だとしたら英国を救うのはチャーチル、すなわち次の首相ということになる。 下院は、メイ首相と同じ穏健離脱派、離脱後に米国と自由貿易協定 (FTA) を締結、環太平洋経済連携協定 (TPP) 参加 11 カ国の新協定「TPP11」に参加したい強硬離脱派、EU 国民投票のやり直しを求める残留派に大きく分かれる。

保守党も労働党も分裂状態なので、メイ首相の主導する離脱協定書で過半数を取れるのか、票読みをするのは非常に難しい。 英誌スペクテイターのフレイザー・ネルソン編集長は「メイ首相は1票差で勝てると読んで勝負に出た」と TV ニュース番組で解説した。 北アイルランド、アイルランド間に「目に見える国境」を復活させないためには、EU 関税同盟と単一市場と同じルールを維持する必要がある。 そうすると英・米 FTA や TPP11 参加が不可能になる。 北アイルランドだけを EU に留めると、英国本土と北アイルランド間のアイリッシュ海に「新しい国境」ができてしまう。

EU がこれまでの頑なな態度を軟化させ、英国とフレキシブルな通商協定を結ぶことに応じない限り、このトリレンマは永遠に解消できない。 離脱後に始まる通商協定交渉が決裂した場合、英国全土が EU 関税同盟に留まり、北アイルランドは単一市場にも留まるとした離脱協定書のバックストップ(安全策)が永遠に英国を EU に繋ぎ止める「手錠」になると強硬離脱派は息巻く。 世論調査会社 YouGov のクイック投票ではメイ首相と EU が合意に達した離脱協定書を「強く支持する」人はわずか 4%、「どちらかと言えば支持」が 16%。 「どちらかと言えば反対」が 16%、「強く反対」が 44% にものぼっている。

また「離脱協定書以上のものは望めない」と回答したのが 29%、「さらに好条件の合意が可能」は 49% もあった。 多くの人がメイ首相の交渉結果に不満を抱いているのは明らかだ。 メイ首相が「一番苦しい時 (Darkest Hour)」を耐え抜き、議会で離脱協定書の承認を得られるかどうかは、「血と苦労、涙と汗以外に差し出せるものを私は持たない」と演説したチャーチルのような覚悟を示せるかにかかっている。

しかし、これまでの演説では「これで精一杯だから我慢して」という言い訳にしか聞こえない。 議会承認に向け、メイ首相が「通商協定交渉でベスト・ディールを必ず英国に持ち帰る」と力強く演説できるのか否か、英国民だけではなく、世界が固唾をのんで見守っている。 (木村正人、NewsWeek = 11-16-18)


EU 離脱の国民投票「再実施」を要求 英国で大規模デモ

英国の欧州連合 (EU) からの離脱が来年 3 月に迫る中、ロンドンで 20 日、EU 離脱の是非を問う国民投票の再実施を求める大規模なデモが開かれた。 主催した市民団体によると、推定で約 70 万人が参加した。 デモ後の集会にはサディク・カーン・ロンドン市長や EU 離脱に反対する国会議員らが出席。 カーン市長は「(離脱交渉で)政府は国の利益より政党間の駆け引きを重視している。 この重要な問題を政治家の手から取り戻す時だ。」などと述べ、再投票で国民に問うように求めた。

2016 年 6 月の EU 離脱をめぐる国民投票では離脱 (51.9%) が残留 (48.1%) を小差で上回った。 デモに参加した映画制作会社で働くジョージ・ムーアさん (21) は「離脱派の政治家は当時、離脱すれば経済はよくなるなどと言っていたが、現状は混乱が予想されて全く違う。 今の状況を踏まえて再度、国民に問うべきだ。」と話した。 ただ、メイ首相は国民投票で示された離脱の民意を尊重するとして、再投票の実施を否定している。 (ロンドン = 寺西和男、asahi = 10-21-18)


合意なく EU 離脱のおそれ 英の日系企業、行方注視

英国の欧州連合 (EU) からの離脱交渉は、17 日の EU 首脳会議でも具体的な進展はなかった。 英・EU 間の貿易の特別な取り扱いなどの合意がないまま、英国が来年 3 月に離脱する事態に備え、英国に製造拠点を置く日系メーカーは対応を急いでいる。 生産停止や負担増を迫られるおそれもあり、先行きへの警戒感が広がっている。

EU 域内の貿易は無関税。 多くの規制が統一され、輸出入手続きも簡素化されている。 英国と EU は、英国のEU離脱後も 2020 年末まで「移行措置」としてこの関係を続ける方針で一致しているが、離脱方法などを定める協定で合意できなければ、移行措置も白紙になる。 そうなれば、英国の離脱後に関税が復活し、国境で部品の税関検査が必要になる。 日系メーカーは、EU 加盟国からの部品供給が滞ることを懸念している。

トヨタ自動車、日産自動車、ホンダの英国内の工場は、効率的な運営のため部品の在庫を最小限に抑えている。 4 時間分の在庫しか持たないトヨタの工場は、EU から調達する部品の税関検査が滞れば生産停止に追い込まれるおそれがある。 トヨタ幹部は「工場を止めざるを得なければそうする。 注視したい。」と話す。 (木村聡史、ロンドン = 寺西和男、asahi = 10-19-18)



英 EU 離脱後に 10% 関税なら吸収不可能 = ホンダが議会に意見書

[ロンドン] ホンダは 9 日、英国の欧州連合 (EU) 離脱(ブレグジット)後、世界貿易機関 (WTO) のルールに従い英国内で生産した自動車に 10% の関税がかけられることになった場合、吸収できないコスト増を招くと警告した。 英自動車生産台数の約 8% を占めるホンダは、米フォード・モーター、仏プジョー傘下オペルの英国部門ボクソールとともに議会経済委員会に意見書を提出した。

その中でホンダは「10% の関税がかけられた場合、当社の自動車は競争力を失い、吸収不可能なコストが加わることになる」と主張した。 英自動車産業にとって EU は最大の輸出先であり、関係閣僚は EU との間でできるだけ自由な貿易を保証する協定を結ぶと繰り返し述べている。 ホンダはまた、「税関に絡むリスクを軽減する費用を確保することで、新しいハイブリッド車や電気自動車を英国市場に投入するための資金が減る可能性がある」と警告した。

ボクソールは、離脱後の貿易の枠組みが不透明な状況では、税関検査でモノの移動に遅延が生じる恐れがあるため、部品在庫を積まざるを得ないとし、「『ジャストインタイム』生産方式を守るため、部品を保管する倉庫に投資する必要が出てくる」と主張した。 フォードも、EU 離脱に伴う税関検査の拡大などは「キャッシュフローに深刻なマイナスの影響」を及ぼす可能性があると警告した。 3 社はその上で、2019 年 3 月の離脱後に移行期間を設けるよう求めた。 (Reuters = 11-10-17)


英政府の EU 離脱交渉、有権者の 61% が不支持 = 世論調査

[ロンドン] 調査会社 ORB が英国で実施した世論調査で、与党保守党が過半数議席を失った 6 月の総選挙以降、欧州連合 (EU) 離脱に向けた英政府の姿勢に否定的な見方が増加していることが示された。 調査は有権者 2,000 人を対象に 8 月 2 - 3 日に実施。 それによると、EU 離脱を巡る英政府の交渉を支持しないとの回答が 61% と、全体の 3 分の 2 近くに上った。不支持の割合は 7 月の 56%、6 月の 46% から上昇した。

メイ首相が適切な合意を形成できると確信しているかとの質問に対しては、44% がそうでないと回答。 確信しているとの回答は 35%、21% は分からないと答えた。 ORB のマネジングディレクター、ジョニー・ヘルド氏は調査結果について「総選挙結果のダメージが依然としてブレグジット(英国の EU 離脱)に疑問を生じさせていることを示唆している」と指摘。 「首相が適切な合意を形成できるかどうかに対する信頼感は引き続き揺らいでいる」と述べた。 (asahi = 8-7-17)


英、EU に「手切れ金」 360 億ポンド検討 現地紙報道

欧州連合 (EU) との離脱協定締結に向けて本格的な交渉に入っている英国が、EU 側に「手切れ金」として 360 億ポンド(約 400 億ユーロ、約 5 兆 2 千億円)の支払いを検討していることが分かった。 6 日付の英紙サンデー・テレグラフ紙が英政府高官の話として報じた。

交渉では、EU 側が「EU 市民の権利保障」、「予算などの分担金」、「北アイルランド和平の尊重」の 3 分野を離脱交渉の優先課題に据え、これらで十分な進展がない限り、英国が早期の決着を望む自由貿易協定の交渉に進めない。 同紙によると、英国はこの難局を打開するため、EU 離脱後も 3 年を上限に年間 100 億ユーロ(約 1 兆 3 千億円)ほどを「移行措置」として EU 側に支払う考えがあるという。 (ロンドン = 渡辺志帆、asahi = 8-6-17)

〈編者注〉 英国が EU を離脱するために、ここまでしなければいけないのかと、考えてしまいます。 そこまでして、未来的にはたして英国の国益を守れるのか、あるいは見合うのか、間違いなく歴史に逆行している方策ですので、どうしても疑問符を打ってしまいます。


英、6 月 8 日に総選挙 EU 強硬離脱へ支持訴え メイ首相「安定政権つくる」

【ロンドン = 小滝麻理子】 英国のメイ首相は 18 日、緊急声明を発表し、下院を解散して 6 月 8 日に総選挙を実施する意向を明らかにした。 メイ氏は欧州連合 (EU) との離脱交渉を巡り「現政府を支持するか民意を問い、より安定した政権をつくる」と強調。 EU 単一市場から完全撤退するといった「強硬離脱(ハードブレグジット)」方針への支持を訴えた。

メイ氏は声明で、18 日の閣議で 2020 年の予定だった総選挙を前倒しする考えで一致したと述べた。 実施には議会の 3 分の 2 以上の同意が必要で、メイ氏は 19 日に承認を求める。 最大野党、労働党のコービン党首は総選挙を歓迎する考えを表明し、議会は賛成多数で承認する見通しだ。 メイ氏は「英政府は正しい離脱戦略を持っている」と強調した。 ただ「議会はばらばらで交渉の成功を脅かしている」と野党を批判。 そのうえで「離脱を成功に導ける安定した強い政権をつくる唯一の方法として、やむを得ず選挙実施を決断した」と説明した。

メイ氏はこれまで 20 年まで総選挙は行わないと明言してきた。 方針転換の背景には、自らの離脱戦略について国民に信を問い、政権基盤を強化して対 EU の交渉力を高める狙いがある。 英下院でメイ氏の与党、保守党は過半数をわずかに上回る勢力にとどまる。 ただ 4 月上旬に判明した世論調査では、保守党の支持率が 44% と労働党に 20 ポイント以上の差をつける。 現時点で総選挙を実施すれば、保守党が勝利するとの見方が多い。

メイ政権は域内無関税などを定める EU 単一市場からの完全撤退などハードブレグジットの方針を掲げる。 一方、労働党など野党勢力は EU との結び付きを維持する「穏健な離脱(ソフトブレグジット)」を主張。 EU 残留の支持が多いスコットランド民族党 (SNP) が独立を求める住民投票の再実施を表明するなど議会の分裂が鮮明だ。 メイ氏は「保守党による安定政権か労働党を軸にした不安定な連立政権のどちらがよいか」と支持を訴えた。

英国は昨年 6 月に国民投票で EU 離脱を決定。 メイ氏は今年 3 月末に EU に離脱を通知し、原則 2 年間の交渉が正式に始まった。 本格交渉が始まるのは 5 月半ば以降とみられ、メイ政権は 6 月初旬に総選挙を実施すれば影響を最小限に抑えられるとみている。 労働党は「国民の意思を尊重する」として離脱自体には反対しておらず、どのような選挙結果でも英国の離脱方針そのものは変わらない見通しだ。 (nikkei = 4-19-17)


メイ英首相、EU 単一市場離脱を表明へ 17 日に演説

【ロンドン = 黄田和宏】 英国のメイ首相は 17 日の欧州連合 (EU) 離脱の基本方針を示す演説で、EU 単一市場から完全に離脱する用意があると表明し、12 の優先事項を提示する見通しだ。 EU と部分的な関係を続けるよりも、明確に離脱した上で、新たな関係を築くことを方針に掲げて EU との交渉に臨む考え。 単一市場へのアクセスよりも、移民制限や司法権の独立など英国の権限回復を優先する。

英主要メディアが 16 日、電子版などで演説要旨を一斉に報じた。 メイ氏は英国時間 17 日昼(日本時間同夜)にロンドン市内で演説し、EU 離脱の方針を示す予定だ。 演説では「独立し、自ら統治し、グローバルな英国と、我々の友人で同盟関係にある EU との間に、我々は新しく対等なパートナーシップを求める」と述べるとみられる。 今後の EU との関係については「部分的な EU への加盟や準加盟国ではない。 つまり、半分残り、半分出るようなことはない。」と発言する見通し。

加盟国の間でモノやサービスなどを自由に取引できる EU の単一市場から離脱する用意があることを明確にするもようだ。 同盟国の間で関税なしに取引できる関税同盟から脱退するかどうかも焦点で、離脱交渉に向けた英国の立場を明確にする方針だ。 メイ氏は「すべての過程で可能な限りの確実性と明瞭さを示す」とともに「より強く、より公正にし、よりグローバルな英国を築く」という交渉に向けた 4 つの理念を掲げる。

これに基づき、離脱交渉の 12 の優先事項を提示する考えで、具体的な内訳を 17 日の演説で明らかにする見通し。 優先事項には国境を管理する権限の回復や欧州裁判所の司法権からの独立、自由貿易協定の締結などが含まれるとみられる。 (nikkei = 1-17-17)


世界の大富豪上位 8 人の資産、下位 36 億人の富に相当 = 報告

[ダボス(スイス)] 国際非政府組織 (NGO) オックスファムは 16 日、世界で最も裕福な 8 人の資産が、世界人口のうち下位 50% (約 36 億人)の合計額とほぼ同じだとする報告書を発表した。 報告書は貧富の差がかつてないほど拡大していると指摘。 中国とインドに関する新たなデータについて、世界人口のうち下位 50% の資産額が当初の予測よりも少ないことを示唆しているとした。

最新のデータを基に計算すると、2016 年には当時推定された 62 人ではなく 9 人が、2010 年には 43 人が世界人口の半分に当たる 36 億人の資産と同等の資産を所有していたことになるという。 報告書では、多くの労働者の収入が伸び悩んでいるのに対し、最富裕層の収入は 2009 年以降、平均で年間 11% 増加していると指摘。 オックスファムのマックス・ローソン氏は「大半の人々にとってより有益な資本主義の運営方法がある」と語った。 (Reuters = 1-16-17)


スコットランド、英の EU 離脱後も単一市場に残る案を 20 日公表へ

[ロンドン] スコットランド行政府は 20 日、英国の欧州連合 (EU) 離脱後もスコットランドが EU の単一市場にとどまる方法に関する提案を公表する。 行政府が 18 日明らかにした。 6 月の国民投票では英国全体で EU 離脱派が残留派を上回り、EU 離脱が決まったものの、北部スコットランドでは EU 残留派が大多数を占め、行政府は先に英国の EU 離脱後も EU 内にとどまることを望む意向を示していた。

行政府のラッセル EU 離脱担当相は「われわれは EU 加盟の恩恵をすべては受けない一方で、EU 離脱のダメージを軽減する妥協案を示す」と表明。 「提案の核心はスコットランドを RU 単一市場にとどめる枠組みだ」と語った。 同相は、英国が移民規制を優先して EU 単一市場へのアクセスを失う「ハードブレグジット」を選ぶ場合、スコットランドでは 10 年で 8 万人の雇用が脅かされる「災難」と警告。 提案はスコットランドに解決策をもたらすと述べた。 提案には、英国の EU 離脱後、スコットランド議会に新たな「実質的」権限を付与することも盛り込まれるという。 (Reuters = 12-19-16)


日産が英国生産決定、次期「キャシュカイ」と「エクストレイル」

[東京] 日産自動車は 27 日、多目的スポーツ車 (SUV) 「キャシュカイ(日本名 デュアリス)」と「エクストレイル」の次期型車を英国サンダーランド工場で生産することを決定したと正式発表した。 日産は 26 日に開いた経営会議で決定したとし、同社のカルロス・ゴーン最高経営責任者 (CEO) は「英国政府から支援と公約を得られた」とコメント。 この決定が同工場の競争力維持を公約する同国政府の表明を受けてなされたものであるとした。 同工場への投資を増やし、同工場で働く 7,000 人以上の雇用を確保・維持することも表明した。

同工場はイングランド北東部にある英国最大の自動車工場で、同国が欧州連合 (EU) から離脱したため、今後も生産・投資を継続するかが注目されていた。 同工場での昨年の生産台数は 47 万 5,000 台で、その 8 割を 130 以上の国と地域に輸出している。 英国の EU 離脱で輸出に関税が課される可能性があり、競争力低下が懸念されていた。 ゴーン CEO は 21 日、同工場への投資継続の是非を来月決定すると述べていた。 「キャシュカイ」の次期型車の生産は 2018 年か 19 年に開始すると見込まれており、それまでにかかる時間を踏まえるとまもなく生産拠点を決める必要があった。 (Reuters = 10-27-16)


フランスが英国抜き GDP 世界第 5 位に浮上、ポンド急落で

[パリ] ポンドの急落を受けて、経済規模でフランスが英国を抜き世界第 5 位に浮上した。 ロイターが現在の為替レートを用いて算出した。 国際通貨基金 (IMF) のデータによると、英国の 2015 年国内総生産 (GDP) は 1 兆 8,640 億ポンド。 ユーロ換算で比較すると、15 年の英 GDP は 2 兆 1,720 億ユーロ相当と、フランスの 2 兆 1,820 億ユーロを下回った。 通常は、当該年の経済規模を比較するのに平均の為替レートを使用するが、ロイターが現在の相場水準で算出したところ、フランスが英国を逆転した。 ポンドはオーバーナイトの取引で、2013 年以来初めて 1.17 ユーロの水準を割り込んでいる。 (Reuters = 7-7-16)


「政争の具」で王国に深い傷 英保守党、国民投票の誤算

欧州連合 (EU) からの離脱を決めた英国の国民投票は、多くの移民が暮らす英国社会や、「連合王国」を形づくる 4 地域の間に深い亀裂を生んだ。 英国の与党・保守党内の政争の具とされた国民投票は、民意を刺激し、国内に癒やしがたい傷を残した。 「望んだ結果ではなかった。」 国民投票で残留を訴え、敗北したデービッド・キャメロン首相 (49)。 27 日、英下院での緊急演説で唇をかんだ。

議場に、次期首相の最有力候補と目される保守党下院議員、ボリス・ジョンソン前ロンドン市長 (52) の姿はなかった。 2 人とも、名門私立イートン校からオックスフォード大学に進んだエリート。 ジョンソン氏が先輩だ。 ジョンソン氏は、離脱派の旗振り役として「主権を取り戻せ」と訴えた。 かつて英紙のブリュッセル特派員として、欧州統合の機関の官僚主義を酷評してきたジョンソン氏。 「非民主的で、無駄が多く腐っている」など、これまでも EU 批判の発言はあった。

だが今年 2 月下旬、人気政治家のジョンソン氏が、EU 改革にとどまらず、さらに過激な離脱の主張を始めたのは人々を驚かせた。 背景には、自らの存在感を高め、政敵を出し抜こうという思惑があったとみられている。 ジョンソン氏本人は、国民投票で離脱派が敗れると予想していただろう - -。 保守党閣僚は、英紙にそう語った。 敗れても EU 懐疑派が多い党支持層の間で株が上がれば、次の首相への可能性が増す。 そんなシナリオを描いていたようだ。

一方のキャメロン氏が EU 離脱を問う国民投票の実施を打ち出した上で、残留を訴えたことにも政治的な思惑があった。 2013 年、国民投票の実施を表明。 15 年の総選挙の公約にも掲げた。 13 年当時、保守党内では EU に権限が集中する状況に「EU 懐疑派」の不満が募り、キャメロン氏の求心力を脅かしていた。 また移民規制を掲げる英国独立党 (UKP) が保守党の支持層に食い込んでいた。

「国民投票」を掲げることで UKP を抑えられ、EU からも有利な条件を引き出せると踏んだ。 EU から得た条件を手に国民投票で残留を勝ち取れば、EU 懐疑派を抑え込めるとの計算もあったとされる。 15 年の総選挙は勝った。 だが国民投票は敗れた。 政治家たちの「賭け」と「誤算」は国論を二分し、国民の暮らしと世界経済を危機にさらした。

ヘイト犯罪、国民投票後に急増

移民問題が争点となった国民投票の後、英国で人種や民族の間の憎悪をあおる動きが表面化している。 特に標的になっているのが、ポーランド人だ。 26 日午前、ロンドン西部のポーランド社会文化協会の建物で、人種差別的な落書きが見つかった。 ロンドン警視庁の発表によると、当日早朝、フードを被った男 1 人が自転車で近づき、黄色いスプレーで落書きする様子が監視カメラに映っていたという。

在英ポーランド大使館は 27 日、「ショックを受け、憂慮している」との声明を出した。 警視庁は「ヘイトクライム(憎悪犯罪)」として捜査を続けている。 英国ポーランド人連盟のタデウシュ・ステンゼル議長 (67) は朝日新聞の取材に、「こんなことがロンドンで起きたのは初めてだ。 国民投票の結果が影響したのかもしれない。悲しい。」と述べた。 また地元報道によると、ロンドンの北約 90 キロの町ハンティンドンでは、「EU 離脱 ポーランドの害獣はもういらない」と英語とポーランド語で書かれたカードが小学校周辺などでばらまかれたという。

国家警察署長評議会によると、国民投票のあった 23 日から 26 日にかけてヘイトクライム専用窓口への通報は 85 件。 4 週間前の 4 日間に比べて 57% 増だった。 ポーランドは 2004 年に EU に加盟。 多くの人が英国に働きに来ており、英国家統計局の推計によると、14 年時点で 79 万人が英国内に住む。 外国出生者ではインドに次いで多く、EU 域内からの移民では最多だ。 国民投票を前にした移民を巡る議論の中でも、たびたび名指しされた。 ネット上では、他国の人にも「国に帰れ」などの暴言が浴びせられている。

パキスタン系 2 世のカーン・ロンドン市長は 27 日、「国民投票を口実に我々を分断しようとする、いかなるヘイトクライムやいじめにも立ち向かう」との談話を出した。 またキャメロン氏も 27 日の下院での演説で、「私たちはヘイトクライムを支持しない。 それらは根絶されなければならない。」と発言した。

「連合王国」分断の危機

英国はもともと、国の中枢が集中するイングランドを中心に、自治政府を持つウェールズ、スコットランド、北アイルランドが緩やかにつながる「連合王国」だ。 EU 離脱が決まった結果、各地域が四分五裂しかねない状況にある。 62% が「残留」に投票した北部スコットランド。約 2 年前に英国からの独立を問う住民投票が行われたが、否決された。 だが英国の EU U離脱決定で、再び独立を求める機運が高まっている。 自治政府のスタージョン首席大臣は 25 日、独立を問う住民投票の再実施について「選択肢にある」と表明。 シュルツ欧州議会議長と 29 日に会い、スコットランドが EU に残留する方策を話し合うという。

55.8% が「残留」を支持した北アイルランドでも「英国からの離脱」を問う住民投票を求める声が上がる。 隣国アイルランドへの併合を求める少数派のカトリック系住民と、英国の統治を望む多数派のプロテスタント系住民による対立が続いてきた。 実際に住民投票が行われれば、衝突が再燃する懸念もある。 離脱派が上回ったウェールズでも、英国からの分離独立派が血気盛んだ。 ロイター通信によると、ウェールズ民族党のウッド党首は 27 日、「イングランドと一緒にされては困る」と述べ、会議を開いて今後の対策を練るとした。

キャメロン首相は 27 日の演説で「EU との交渉の準備には、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの自治政府を含める」と述べ、各地域の利益を考慮すると強調した。 (ロンドン = 渡辺志帆、松尾一郎、ブリュッセル =山尾有紀恵、asahi = 6-29-16)


EU 離脱「自由な労働どうなるのか」 残留派に独立論

英国では、欧州連合 (EU) からの離脱が決まった翌日も動揺が続いた。 世界中から人が集まる都市部では、移動の自由が制限され、労働や教育の機会が減ることへの不安の声が相次ぐ。 仕事で輸出入のコストが上がることを心配する声も出ている。 「これまでは自由に働けたけど、(離脱交渉の期間が終わる) 2 年後からどうなるのか分からない。 子どもたちの教育もあるから、とどまるつもりだけど。」 エスプレッソの香りが漂うロンドン中心部のイタリアンカフェ。 EU からの「離脱」決定から一夜明けた 25 日、ウェートレスとして働くルーマニア出身のアイオネラ・ユガさん (35) は、心配そうに話した。

2007 年にルーマニアが EU に加盟した後、ロンドンで働くことを決めた。 カフェのオーナーはエジプト人で、従業員のほとんどがポルトガルやポーランドなど EU 諸国からの「出稼ぎ組」だ。 「ルーマニアでは働いても月 300 ポンド(約 4 万 2 千円)がせいぜい。 ここでは月 1,400 ポンド。 生活費は高いが、それでもこちらのほうがいい。」と話す。 ルーマニア人の夫との間にロンドンで 2 人の子どもが生まれ、母国に戻るつもりはない。 英国籍取得のテストを受けるべく、準備するつもりだ。

国際都市のロンドンには、世界中から学生や労働者が集まる。 とりわけ EU 市民にとって、英国の教育レベルや生活水準の高さは魅力で、旅行先としても人気だ。 英国の EU 離脱で、就労や教育目的の自由な滞在は不可能になり、ビザ取得などの手続きが必要になる可能性が高い。 (ロンドン = 山尾有紀恵、渡辺志帆、榊原謙 ロンドン = 渡辺志帆、高久潤、asahi = 6-26-16)


英中接近、政府内に警戒感 EU 離脱後の安保環境を懸念

英国の国民投票で欧州連合 (EU) からの離脱が決まったことを受け、日本政府内からは「アジアの安全保障への影響が出ないと思っている人はいない(高官)」など、安保環境の変化を懸念する声が出ている。 背景には、沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域に軍艦を進入させるなど、海洋進出を強化する中国と英国が距離を縮めるのではという警戒感がある。

岸田文雄外相は 24 日、「日英両国は基本的価値を共有し、政治、経済、安全保障などで協力関係にあり、引き続き関係の維持・強化に努めていく」との談話を発表、日英関係に問題は生じないとの認識を強調した。 一方で、杉山晋輔外務事務次官を急きょ 29、30 日にブリュッセルとロンドンに派遣し、EU や英国関係者と意見交換するよう指示した。

英国は昨年 3 月、中国主導のアジアインフラ投資銀行 (AIIB) に、主要 7 カ国 (G7) で初めて参加する方針を示した。 それだけに日本は、英中の接近に神経をとがらせている。 EU は前身である EC (欧州共同体)時代の 1989 年に起きた天安門事件を機に、中国への武器輸出を禁止している。 だが、ある政府関係者は「EU から離脱した英国が輸出を解禁する可能性もある」と話す。

日英は昨年初めて、外務・防衛閣僚会合(2プラス2)を開いた。航空自衛隊機と英空軍戦闘機による共同訓練を今秋、日本周辺で実施することも決めている。5月のG7伊勢志摩サミットでは、中国の海洋進出を強く牽制(けんせい)したばかりだ。 防衛省の杉山良行航空幕僚長は24日の会見で、今後の安保政策への影響について質問されると「(離脱が)どう影響していくのか本当にわからない」と戸惑いを隠さなかった。ある政府高官は「英国が不安定になっているときに、安全保障上の様々な問題を進めるのは難しい」と漏らした。 (小林豪、asahi = 6-25-16)


EU 離脱、日本企業にも衝撃 計 1,380 社が英国に拠点

今後の世界経済はどうなるのか - -。 英国の欧州連合 (EU) 離脱で、英国に進出する日本企業にも衝撃が広がった。 離脱で英国と EU の関税などの仕組みが変われば、英国での事業展開を見直さざるをえなくなる可能性がある。 欧州全体の事業への影響や、急速な円高による輸出採算の悪化を懸念する声も出ている。 「予想外だ。 イギリス人の気持ちがここまで変化してきているのかと驚いた。 冷静にみれば、歴史の転換点が近づいているのかもしれない。」 経済同友会の小林喜光代表幹事(三菱ケミカルホールディングス会長)は 24 日午後、都内で記者団に語った。

帝国データバンクによると、英国に進出している日本企業は 1,380 社。 英国で製品をつくり、EU 域内に輸出するメーカーは、EU 域内の貿易でかからない関税が、離脱後の英国と EU 間でかかりかねないことを心配する。 トヨタ自動車は英国工場で年 19 万台を生産し、4 分の 3 を EU 各国へ輸出する。 関税がかかれば輸出コストが上がり、輸入する部品の調達コストもかさむ。 以前からの「英国工場は欧州一体が前提で、影響は重大。 現地の雇用にも影響が出かねない。(幹部)」との懸念が膨らむ。

三菱レイヨンは、アクリル樹脂の原料をつくる工場から製品の 6 - 7 割を英国外の EU 域内に供給する。 親会社・三菱ケミカルホールディングスの越智仁社長は 24 日、「為替の急激な変動などリスクを最小限にとどめるよう政策当局の協調した対応をお願いしたい」との談話を出した。 また、北海の油田などに出資する三井物産の安永竜夫社長は「現時点で見直し対象の特定は難しいが、英国事業の戦略見直しを検討する必要が出てくる」とコメント。 今後の事業計画の変更を示唆した。

すでに影響が出ているとの声もある。 ダイキン工業の宮住光太執行役員は「ロンドンではマンションなどの建設ブームが起きていたが、富裕層が離脱によるポンド安を警戒し、着工前に建設が凍結されている物件もある」と指摘。 空調の販売で「影響が出る可能性がある」と話した。 ただ、辞任を表明したキャメロン英首相の後継の政治体制も定まらず、今後の経済政策は不透明だ。 当面は推移を見守らざるを得ない面もある。

日立製作所は昨年 9 月、英国北部に鉄道車両工場を建設。 以前は「英国が EU の一員だということで工場をつくった(東原敏昭社長)」としていた。 東原社長は 24 日、「業績への影響を慎重に評価し、対応を検討したい」とコメントした。 英ガラス大手「ピルキントン」を傘下に持つ日本板硝子は「欧州での自動車メーカーの生産態勢の変更や景気後退の可能性もあり、中長期的な影響を見極めたい(広報)」という。 英国でゴルフクラブをつくるスポーツ用品大手ミズノの水野明人社長は 24 日、「今後どうなるのか予想がつかない。 短期的にはかなりの混乱が起こるのではないか。」と心配する。

ロンドンは欧州の金融センターとしての位置づけも大きい。 野村ホールディングスは欧州での本社機能があり、中東やアフリカもカバーする。 EU 加盟国のどこかで許可を取れば、他国でも業務ができる「シングルパスポートルール」を 5 カ国で活用する。 離脱については「必要な対策を講じる(広報)」という。 三井住友銀行も英国の認可をもとに EU 域内で営業する。 英国の離脱により、EU 域内で営業できなくなる恐れがあるため、「対応を検討している(幹部)」という。

欧州全体でのマイナス影響に懸念

英国の EU 離脱は欧州全体のビジネスにも影響する可能性がある。 金融と産業の基盤がある英国を欧州の拠点と位置づける企業は多く、英国と他の EU 各国との関係が変化すれば、従来通りに事業を続けられるかどうかが不透明になる。 日本鉄鋼連盟の進藤孝生会長(新日鉄住金社長)は「極めて残念。 英国、EU はもとより世界経済へのマイナス影響が大きく懸念される。」とコメントした。

24 日の金融市場では先行きの不透明感から「安全資産」の円が買われ、今後も円高基調が定着しかねない。 輸出企業には減益要因だ。 IHI の 2017 年 3 月期の想定レートは 1 ドル = 110 円で、現在のレートは 10 円近く円高だ。 株主総会で影響を問われた桑田始常務執行役員は「英国に生産拠点はないが、離脱となれば為替などの影響が出る」と語った。

基本的に運賃がドル建ての海運も、円高で利益が減る。 日本郵船は、1 円円高になると、年間で利益が 7 億円、商船三井は 10 億円、川崎汽船は 5 億円減る。 商船三井は 1 ドル = 108 円、他 2 社は 110 円の想定で、現時点の相場はより円高だ。 海運大手幹部は「先行き不安から世界的に消費マインドが冷えれば、結果的に運ぶ荷物が減る懸念もある」という。 経営者の多くは、今後 2 年間かけて進むとみられる離脱交渉や、主要 7 カ国 (G7) の対応に注目している。 日本貿易会の小林栄三会長(伊藤忠商事会長)は、「英国や EU 各国は、日米をはじめ主要国と連携し、混乱の終息に全力を挙げることを期待する」とコメントした。 (asahi = 6-24-16)


米カリフォルニア州、フランス抜き世界 6 位の経済規模に

[サンフランシスコ] 2015 年は米カリフォルニア州の経済規模が、フランスを抜いて世界第 6 位だったことが明らかになった。 州経済の活況と強い米ドル相場が支えとなった。 カリフォルニア州の 6 月の官報によると、同州の 2015 年の成長率は実質 4.1%、総生産は 2 兆 4,600 億ドルだった。 国際通貨基金 (IMF) の統計によるとフランスの国内総生産 (GDP) は 2 兆 4,200 億ドルで世界第 7 位となり、インドは 2 兆 0,900 億ドルで第 8 位だった。

州財務当局のチーフエコノミスト、イリーナ・アズムンドソン氏は、2014 年のカリフォルニア州の順位は 8 位だったと指摘。 電話インタビューで「2015 年のカリフォルニア州は、極めて好調だった」と語った。 同氏によると、カリフォルニア州は、シリコンバレーやハリウッドなど多様で力強い経済拠点があり、深刻な干ばつのなかでも製造業と農業が好調だった。 (asahi = 6-20-16)