一般人のスマホ普及が変えたニュースの映像事情

「その瞬間」の映像が SNS で拡散、一方でリスクも

情報を取り巻く環境が大きく変化する中で、あふれる情報の中から有益な情報を見つけ、きちんと消化したうえで、場合によっては SNS などを通じて発信していくにはどうしたらいいか。 日本テレビ「news every.」前統括プロデューサーが情報リテラシーについてまとめた『メディアを賢く消費する「情報リテラシー」 情報洪水時代の歩き方』より一部抜粋、再構成してお届けする。

スマホでの「映像洪水」もニュースを変えた

筆者が日本テレビに入社した 1996 年には、携帯電話はあったものの通話するだけであり、メールもカメラも携帯電話の機能としては備えていなかった。 そもそも会社のパソコンに個人用のメールアドレスすらなかった。 この年から 2022 年までの 26 年間で一気にデジタル技術が進歩し、取材および放送の環境が激変することになる。 これはペンと ENG カメラ(肩に担ぐタイプの映像用のカメラ)といういわば剣と銃、さらには中継車という戦車で戦っていた軍隊に、スマホとパソコンと中継アプリがハイテクなステルス戦闘機のような装備が投入されたようなものだ。

中でもスマホは取材を大きく変えた。 筆者が入社した頃には、火事の現場にカメラマンと記者が到着して、映像を撮るのが先か、目撃者のインタビューを撮るのが先かで大げんかになったと言われる伝説があるくらい ENG カメラの役割は重要だった。 火事の映像を撮る際にはカメラがふさがるので、並行してインタビューを行うことができなかったのだ。 今であればスマホでインタビューを撮影したりできるだろうが。 このような撮り直しのきかない時代だけに、報道マンは他社に先駆けていち早く現場に到着し、少しでも発生感のある映像を押さえることは重要な使命だった。

先輩記者からは、「カメラマンの機嫌を損ねればよい映像は撮れないぞ」とも教えられ、カメラマン、記者、音声、ドライバーと、少なくとも 4 人のチームでいかに協力しながら取材をするのかが、テレビ記者の仕事で重要な心得だと叩き込まれてきた。 しかし、現在では発災直後の映像や事故発生の瞬間映像など、生々しい映像の大半は「視聴者撮影」というクレジットで紹介されることが多い。 街角に居合わせた方々がスマホで撮影した映像だ。 画角が曲がっていたりしても、発生瞬間の映像はどんな立派なカメラマンの完璧な映像よりも強いインパクトを持つ。 今は、毎日のニュースの中で、視聴者撮影の映像が流れない番組はないと断言できるほど存在感を増している。

このスマートフォンでの撮影というのは「飛び道具」であり、簡易に誰でも撮影ができる。 電車内で火を放ち、人々を刺すような事件があった際には、乗客たちが避難をしながらスマホのカメラを回していたので、火の手が上がる瞬間の映像を入手して放送した。 これは各社同様であるが、こうした映像の投稿を募集しているし、SNS 上にアップされたものはこちらからコンタクトを取り、入手するべく動いてもいる。 もちろん真贋確認は極めて重要であり、フェイクの映像でないのかは確認をしたうえで放送を行っている。 自分の映像の拡散を狙い、関係ない映像を交ぜて編集したり、悪意がある場合には嘘の映像投稿で情報を混乱させようとしたりするケースもある。

21 世紀は映像量の爆発

国内の事件や事故のみならず、ウクライナの戦争や世界の大災害に至るまで、あらゆる映像が撮影されては SNS にアップされ、それが大手メディアを通じて世界中で放送されている。 20 世紀を情報量の爆発だとすると、21 世紀は映像量の爆発だとも言えるだろう。 さらに映像の情報としての重要性が飛躍的に増したのだ。 もちろん報道カメラマンは映像の意 味や説明力など、あらゆる意識を持ち撮影するプロであり、存在価値が薄くなるのではなく、ますます本来の役割は大きくなっていることも付記しておきたい。

スマートフォンのリスクとしては、政治家や財界人が「オフレコ」のつもりでうっかり放言をしてしまうと、鞄やポケットの中のスマホで録音や録画をされているというリスクも生じている。 ある女性政治家が秘書に暴言を吐いている音声がメディアを騒がせたこともあった。 さらには偶然居合わせた人が何気なく手に持っているスマホで隠し撮った芸能人のスキャンダルが明るみに出るというケースもある。

小さなスマホでは、撮影ボタンが押されているのか、よほど気をつけなければわからない。 同様に投稿者がスマホで撮影した素材も、映り込んでいる人が取材を受けていると理解していなかったケース、テレビで放送されるとは予期していないケースもある。 放送に際してはそのスクープ性の高さや公益性を踏まえても、十分に撮影されている人への配慮を行うことも必要だ。

インパクト強い「告発型映像」が抱えるリスク

このような機動性の高さから、「告発型映像」としてスマホ撮影による素材が世の中に出てくることも珍しくはなくなった。 ただ、インパクトは強いものの、誰かを追い落とす目的で撮影されたものは、双方の言い分をきちんと取材しなければ、そのインパクトだけで善悪のレッテルを貼ることにつながりがちである。 だからこそ慎重な裏付けと当事者取材をすることが必要で、双方の見解を含めずに伝えることはできないものだと考えている。 告発型の動画に安易に乗ることなく、冷静に対応しなければ「動画センセーショナリズム」にメディアが利用されてしまう。 そこが公共メディアとネット投稿の重要な境でもある。

スマートフォンは動画の撮影ができるのみではない。 スマホの中に「簡易中継」をできるアプリをインストールすれば、かつてのように大きな中継車が到着して、何本ものケーブルをつなぎ合わせなくても、簡単に世界中から瞬時に中継を行うことができるようになった。 記者なりディレクターなりが 1 人で現場に急行、あるいは現場に居合わせた際には、スマホで撮影をし、さらには中継まで行えるようになった。 こうなると、ライブ(生)の映像も爆発をしていると言える。 このケースでも同様で、その場にいる人はまさかスマホから全国ニュースで中継をされているとは思わないケースもあるだろう。 やはり撮影の許可や周囲の人への配慮なども、瞬時に判断することが必要になる。 (大野伸、東洋経済 = 3-18-23)



まずはスマホの「正しい持ち方」から! 60 代以上の親にスマホ操作を伝える際の基本ポイント

スマホを初めて手にした親に、何を教えておけばいいか? ササっと使えてしまう私たちには簡単だと思っていても、親世代にはわからないことも多いです。 60 代以上の親に伝えたいスマホの基本について、今回はレクチャー編です。 親と一緒にスマホを購入し、機種の用意と設定まで終えたら、操作は親自身に覚えてもらわなくてはなりません。 触っていれば分かるものだと考えてしまいますが、親世代や初心者の人にはそういうわけにもいきません。 かといって多くを教えすぎても覚えられません。

延べ 7,000 人以上の高齢者にスマホの使い方を教えてきた筆者が、60 代以上の親に伝えたいスマホの基本操作と、操作をどこまでレクチャーしておくかをお伝えします。 私たちが "当たり前" に思って忘れがちな点もありますよ。

スマホの持ち方から 「画面に指が触れず、側面のボタンも押せる正しい持ち方」

まずはスマホの持ち方です。 ばかばかしいと思われるかもしれませんが、持ち方によって操作の仕方も変わってしまうので大事なポイントです。 スマートフォンは、利き手と反対の手で、握るように持ちます。 この持ち方をしない人が実はとても多いのです。

おすすめしない持ち方 「親指が画面に触れてしまっているので操作ができなくなる」

手帳タイプのケースを好む人が多いのと、親指を画面に置いて支えて持つ人をよく見受けます。 文庫本などを持つような感じですね。 画面が保護されて安心でしょうが、手帳タイプのケースは通話もしにくいしカメラを使う際も持ちにくいのでおすすめしかねます。 握るように持つのは、画面に他の指が触れてしまっていると押したい場所をタップしても反応しないので他の指が触れないようにすることと、側面の電源ボタンや音量ボタンを押しやすくするためです。 次の項目にもつながりますので、しっかりマスターしてもらいましょう。

スマホのロック解除とスリープ

次はスマホのロック解除と使い終わってからのスリープの仕方を教えます。 以前、「生体認証によるロック解除はおすすめしない」とお伝えしたとおり、パスコードによる解除に慣れてもらいましょう。 まずは画面を点灯(電源ボタン or r画面タップ)させて、上下か左右いずれかの方向にスライドさせます。 このときに「勝手に解除されないように、スマホに "今から使うよ" って意思表示するんだよ」と説明するといいでしょう。

パスコードを入力して(機種によっては入力後に enter や OK ボタンをタップ)ようやくホーム画面が開きます。 使い終わったらそのまま放っておいてもスリープ状態になりますが、電源ボタンを押して画面消灯に慣れてもらうといいですね。 このときに正しいスマホの持ち方が生きてきます。 ケースによっては側面のボタンを押すのにそこそこの握力を要するものもあります。 どうしても片手で押せないようでしたら、持ち手で支えながら反対の手の指で押すといいでしょう。

押しにくい状態のケースや持ち方だと、電源ボタンがうまく押せずに「電源を切る」、「再起動」、「セーフモード」などが表示され、意図せず電源を切ってしまったりアプリが使えない状態になったりしてしまいます。

ホームボタン・戻るボタン

最初のうちは、画面に突然ポップアップが表示されたり意図しないページやアプリが起動してしまったり(誤動作など)、何かと戸惑うことが多いです。 そしてほとんどの人はポップアップに書かれていることを読まない傾向にあります。 「読んでも意味が分からない」と思っているようです。 アプリを終了する際だけではなく、よくわからないポップアップや画面が出てきたらホーム画面に戻るように伝えておきます。

ポップアップに「はい・いいえ」、「許可する・許可しない」などの選択肢が出ている場合、たいていは一旦「いいえ」、「許可しない」にしておくと意図しない動作や設定になることは防げるでしょう。 タップする場所を間違えて意図しない画面に遷移してしまった場合には、戻るボタンで戻る方法を伝えておきます。 タスクボタンに関しては、「使った機能の履歴が分かるボタンだけど、特に使わなくていいよ」くらいの簡単な説明でいいかと思います。

コミュニケーションツール

連絡を頻繁に取りたい家族や友人の連絡先や LINE トークは、お伝えしたようにホーム画面にウィジェットを設置しておけば、それほど難しくないと思います。

電話

発信よりも着信に戸惑う人が多いです。 まずは一緒にいながら家族で発信 & 着信のやり方を教えておきましょう。 「緑のボタンは通話開始(発信と受電)、赤のボタンは通話終了」の説明で分かりやすくなります。 受電の場合、スマホはロック状態と解除状態で確認してください。 特にロック状態でかかってきた電話はタップだけで出られないようになっています。 (誤動作防止のため)ロック状態では「電話に出ますよ」という意思表示(通話ボタンを上下左右にスライドするなど)が必要です。

余談ですが、昨今は通話料が高いという相談が多いそうです。 理由はスマホの画面が通話中でも別の画面に遷移可能であること(* 一部機種では画面遷移しない設計になっている)。 通話終了時に終了の赤いボタンではなく、ホームボタンや電源ボタンを押してしまってつながったままという事例が非常に多いです。 どちらか一方が終話すればいいのですが、スマホ初心者同士の場合に起こりがちです。 「赤い受話器のボタンで通話を終了する」点をしっかり覚えてもらいましょう。

メール

これまでどのメールツールを使っていたかによって、その人にとって使いやすい場所に設置しておきます。 メールや SMS は詐欺も多いです。 迷惑メール (SMS) 拒否設定もありますので設定しておくようにしましょう。 それでも変なメールは来るものですので、知らない(登録していない)メールアドレスや番号からのものは "無視する" に尽きます。

メールの削除方法は、余裕があるなら教えておきます。 覚えられそうになければ紙に書いて残しておくか、放置してもらいましょう。 大事な連絡は電話か別の手段(LINE など特定の相手とのみやり取り可能なツール)で行うよう、これを機にツールを切り替えるのもおすすめです。

LINE

利用者が多い LINE なので、コミュニケーションの幅が拡がりスマホの楽しさを味わえるツールでもあります。 また安否確認という意味でも優れています。 文字入力は最大の難関なので、スタンプとボイスメッセージの方法を伝えておきましょう。 スタンプは使えそうなものをいくつか送信して、履歴に残しておけば探すのも簡単です。 音声は「+」から「ボイスメッセージ」で、マイクのボタンを押している間は録音します。 指を離すとそのまま送信されます。家族であれば失敗してもいいので、まずは連絡手段として機能する方法から覚えてもらいましょう。

代わりにやってあげるだけじゃなくやり方も教える

以上の基本機能が問題なく操作できるなら、あとはご家族も協力してなるべくやり取りしてあげてください。 「(お孫さんの)写真が送られてくるのがうれしい」と笑顔になる人もいます。 楽しみながらスマホに触れる習慣と操作に慣れていくのは、コミュニケーションが一番良いでしょう。 他に「写真を撮りたい & 送りたい」、「よく行くお店のアプリを使いたい」など、スマホでやりたいことが明確にあるなら、ぜひ使えるように設定とレクチャーしてください。

スマホは難解なものではなく、人生をサポートしてくれる頼もしい存在です。 私たちにしてみれば、スマホがない生活なんてもはや想像もできないですよね。 もしスマホの使い方で困っている人がいたら、やってあげるだけではなく「ここを押すんですよ」って簡単な説明も添えると喜ばれますよ。 (津田マリリン、AllAbout = 12-29-22)



あなたの iPhone にも新機能がやってくる : 「iOS 15」で注目すべき 6 つのポイント

アップルが開発者向けカンファレンス「WWDC 2021」で「iOS 15」の詳細について発表した。 正式リリースは 2021 年秋の見通しで、これによって「iPhone 6s」以降の iPhone なら新機能を利用できるようになる。 FaceTime にメッセージ、通知にいたるまで、注目すべき新機能について 6 つの切り口から紹介しよう。

この秋になれば米国では「Apple Wallet」に運転免許証を追加できるようになり、「FaceTime」では新しい音楽アルバムを友達と一緒に聴けるようになる。 iPhone のホーム画面では、勤務時間中は仕事関係のアプリと通知のみを表示するようにカスタマイズも可能になる - -。 これらの新機能は、アップルのモバイル OS の最新版である「iOS 15」で実装されるもので、6 月 7 日(米国時間)に開幕した開発者向けカンファレンス「WWDC 2021」で発表された。 このイベントは新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の影響で、2020 年と同にくオンラインで開催されている。

  1. 「FaceTime」と「SharePlay」

    今年はアップルのビデオ通話アプリ「FaceTime」に、いくつかの大型のアップグレードが予定されている。 これにより「Zoom」や「Google Meet」のようなビデオ会議サービスに近いものになる。 まずは Zoom でのグループ通話のように、複数の人がチャットに参加する際のグリッドヴューが導入される。 そしてポートレートモードでは、カメラアプリの機能と同様に顔に焦点を合わせる一方で背景の散らかった部屋をぼかしてくれる。

    ほかの人をビデオチャットに招待する FaceTime リンクの作成と共有も可能になり、このリンクはカレンダーにも追加できる。 このリンクを受け取った人は、たとえ Android スマートフォンや Windows のノート PC からでも、「Google Chrome」や「Microsoft Edge」といったウェブブラウザー経由で通話に参加できる。 その場合も通話はエンドツーエンドで暗号化される。 また、ビデオ通話の音がより自然に聞こえるようになる。 FaceTime は空間オーディオに対応し、グリッドビュー上の位置に合わせて参加者の声を配置する。 これにより、全員が同じ部屋にいるような感覚をつくり出す。

    さらにマイクからの音声入力には、新たなオプションが追加される。 音声を環境音と分離する「Voice Isolation」と、あらゆる音を拾う「Wide Spectrum」だ。 前者は周囲のノイズをすべてカットし、発話者の音声だけを相手に届ける。 後者は周囲の音をすべて拾う。 そして「SharePlay」だ。 すでに触れたように、FaceTime で通話している相手と映画、音楽、そして画面の共有が可能になる。 友達と一緒に音楽のニューアルバムを聴きたければ、「Apple Music」から再生できる。 遠距離で暮らすパートナーとビデオチャットをしながら、一緒に映画を観たいときも簡単だ。 再生中の映画を AirPlay でテレビに配信し、大画面で見ることもできる。

    アップルによると、コンテンツのストリーミング機能を含むアプリを SharePlay に対応させることは、どの開発者でも可能だという。 すでに「Disney+」、「HBO Max」、「ESPN+」、「TikTok」といったサービスが、今秋の iOS 15 の配信に合わせて SharePlay に対応すると発表している。 この機能の導入により、開発者の自由度は大幅に高まるだろう。

    とはいえ、例えばこの機能を利用する際にビデオ通話をしているふたりが両方とも Disney+ のアカウントをもっている必要があるのか、まだはっきりとはわからない。 ディズニー側は片方のユーザーに無料トライアル登録を許可するか、月 1 本に限り SharePlay を通じた映画ストリーミングをすべてのユーザーに許可するか、または通話への参加者が誰もアカウントをもっていない場合はアクセスを完全にブロックするかもしれない。

  2. 新しくなる通知機能

    iPhone の通知が多すぎて困惑したことがあったとしても、もうその心配はいらない。 iOS 15 では通知の外見が新しくなり、さらに新しい管理機能も導入される。 メッセージには連絡先に登録した写真が表示され、アプリの通知ではアイコンが大きめになる。 さらに、すべての通知を一時的にオフにできる新しい「おやすみモード」が登場する。

    新機能「Notification Summary(通知サマリー)」では、重要性の低いアラートを朝や夕方などの決まった時間にまとめてチェックできる。 機械学習によってスマートフォンの使用パターンを特定し、どの通知をサマリーにまとめ、どの通知を直接伝えるべきかを解析する機能も用意される。 メッセージや不在着信の通知がサマリーに入れられることはないので、不安に思わなくても大丈夫だ。

    メッセージ機能でも「おやすみモード」をオンにできるようになり、その設定状況は会話相手の友達や家族からも確認できる。 ただし、Slack の「おやすみモード」と同様に、どうしても連絡が必要な場合はメッセージを送れる仕様だ。 おそらく最高の新機能は、気分に合わせて iPhone のホーム画面全体を整理できることだろう。 「仕事」、「個人用」「就寝中」といった設定(最大 10 個まで作成できる)を選ぶと、それぞれのモードに合わせたアプリとウィジェットのみがホーム画面に表示される。

    例えば朝 9 時に仕事を始めるときは、ホーム画面に仕事用のアプリとウィジェット、そして同僚からのメッセージのみを表示するようにホーム画面をカスタマイズできる。 こうしたモードは、時間帯や特定の場所からの出発時や到着時、あるいはカレンダーに設定した予定に合わせてオンにできる。 また、設定によって表示されていないアプリであっても、「App ライブラリ」から起動できる。 ホーム画面の設定は素早く切り替えることが可能だ。 メッセージアプリでは、誰にもじゃまされたくないときに「集中モード」を設定して相手も状況を確認できるようになるが、この機能は興味深いことに「Status API」経由でどのメッセージアプリにも搭載できるという。

  3. 写真アプリと Safari

    iOS 15 で最もクールな機能のひとつが「Live Text」だろう。 これはアップルのコンピュータービジョン技術の発展と結びついたものだ。 文字が書かれているものにカメラを向けると、文字部分が強調表示され、簡単にほかのアプリにコピー & ペーストできる。 この機能は写真ライブラリー内の画像でも有効で、文字の部分を指でスワイプするだけでコピーできる。 写真に電話番号や住所が書かれていれば、Live Text がリンクに変換してくれる。 そこをタップすると、電話番号なら通話アプリが、住所ならマップがそのまま起動する。

    Apple Music と写真アプリの統合は、少し奇妙なものに思えるかもしれない。 写真アプリを起動すると、新しいヴァージョンの「メモリー」が表示される。 この機能は旅行やイベントの写真を集めたミニムービーを自動生成し、Apple Music からそれに合った曲を自動的に選択する。 このムービーは表示時に再生速度や音楽、フィルターを変えたり、写真を入れ替えたりしてカスタマイズできる。 18 年に導入された「Google フォト」の機能とそこまで変わらないが、Apple Music と統合することでより自由な編集が可能になっている。

    「Safari」も片手で簡単に操作できるようになる。 アドレスバーが画面下部に設置され、スクロールすると隠れるので画面を広く使える。 新規タブページの外観は、macOS や iPad に近いものになっていることに気づくだろう。 お気に入りのウェブサイト、リーディングリスト、共有されたコンテンツが表示される。 タブはスワイプして簡単にまとめてグループ化することも可能だ。 そして iOS に Safari 拡張機能が初めて導入され、App Store からダウンロードできるようになる。

  4. Wallet とマップ

    アップルは物理的な財布にとって代わるべく取り組みを続けている。 2020 年には「Wallet」アプリにクルマのキーを追加できるようになったが、iOS 15 ではほかにもキーを追加できるようになる。 スマートロックを使っている場合は自宅の鍵、オフィスに入る際に使うアクセスカード、そしてホテルの部屋の鍵といった具合だ。 アップルによると、ハイアットが世界のホテル 1,000 カ所でこの機能を導入する予定だという。 そう、Apple Watch をタップするだけで部屋に入れるようになるのだ。

    さらに素晴らしいことに、米国の運転免許証を iPhone のカメラでスキャンして、Wallet アプリに追加することもできる。 ただし、この機能を利用できるのは対応している州のみに限られる。 デジタル ID を最初に活用できるようになる場所のひとつは空港だ。 アップルによると、米運輸保安庁 (TSA) はこの機能に対応するチェックポイントの設置を進めている。

    旅行といえば、アップルが昨年導入した改良版のマップが、新たにスペイン、ポルトガル、イタリア、オーストラリアの 4 つの国にも導入される。 また iOS 15 では、マップのデータがさらに詳細になっている。 商業地域では通りごとにより細かい情報を見ることができ、さらに都市での標高情報のほか、ゴールデン・ゲート・ブリッジのようなランドマーク用のカスタムデザインも登場する。

    運転中はマップに高速道路のインターチェンジが 3D で表示されるので、どの車線を走るべきかよりわかりやすくなるだろう。 この機能は年内に「CarPlay」にも実装予定だ。 公共交通機関を利用しているなら、マップが降車のタイミングを教えてくれる。 バス停や地下鉄からの道がわからなければ、目の前の建物にスマートフォンを向ければ、アップルの拡張現実 (AR) 機能が道を教えてくれる。 Google マップの「ライブビュー」に近い機能だ。

  5. iPadOS 15

    アップルのタブレット OS である「iPadOS」も例年通り、iOS で利用できる新機能をほとんどすべて網羅している。 今回もそこは変わりないが、もちろん iPadOS にはいくつか独自の新機能が盛り込まれる。 結果として、これまでになく見やすくなるかもしれない。 まず、iPhone と同様にウィジェットをホーム画面上のどこにでも設置できる。 大きな画面を生かしてウィジェットは大きくなる。 さらに App ライブラリが導入されるので、ホーム画面が増えすぎずに済むだろう。 App ライブラリには iPad の「Dock」からアクセスできる。

    マルチタスク機能もようやく、わずかに強化される。 画面の上部に新しいメニューが表示され、「Split View」モードと「Slide Over」モードをすぐに切り替えることができる。 スワイプは必要ない。 アプリの起動中にこのメニューをタップすると、メニューが右側に移動し、ホーム画面が表示されて別のアプリを同時に起動できるようになる。 アプリを切り替えたいときは、アプリの画面を下にスワイプすれば、ホーム画面から別のアプリを選べるようになる。

    いくつものアプリのウィンドウを連続的に切り替えたい場合には、「シェルフ」と呼ばれる新しいエリアに起動中のアプリを配置できる。 このマルチタスクの新機能は新たなキーボードショートカットに対応しており、iPad の画面に触れなくても使えるようになっている。 メモアプリは「Google ドキュメント」に似たものになる。 連絡先に登録されている人の名前を共有メモに書き込むと、共有相手に通知が表示される。 会社名のタグをつけたり、「アクティビティ表示」で正確な変更履歴を確認することも可能だ。

    なかでも最高なのは「クイックメモ」だろう。システム全体でメモ機能を使えるようになり、iPad のどこからでもアクセスできる。 画面の縁から内側に向けてスワイプすると、付せんほどのサイズのノートパッドが表示され、すぐにメモを書きとめることができる。 そして翻訳機能にも大幅に改良されている。 誰かが話していると翻訳アプリが自動的に音声を認識し、リアルタイムで会話の翻訳を始める。 画面をタップする必要はない。 また、翻訳機能もシステム全体で使えるようになる。 テキストを選択してコンテクストメニューから「翻訳」をタップすると、別の言語に変換される。 この機能は iOS でも利用可能だ。

  6. その他の新機能

    iOS 15 には、ほかにもさまざまな機能がある。 いくつか目立つものをピックアップしていこう。 今夏のベータテストの進行にあわせて、このリストはさらに長くなるはずだ。

    • メッセージ : メッセージアプリで共有された写真の表示方法が新しくなる。 コラージュして表示したり、複数のページをスワイプして切り替えたりできるようになる。
    • あなたと共有 : メッセージアプリで送られてきたコンテンツは、それぞれのアプリの「あなたと共有」という新しいセクションにまとめられる。 例えば、参加した旅行の写真を誰かが共有した場合、この画像は写真アプリの「あなたと共有」に表示される。 ニュース記事が送られてきたら、「Apple News」の「あなたと共有」に表示される。 これは友達や家族から送られてきたコンテンツをすぐに見る時間がないときに、あとから確認しやすくなる機能だ。 「あなたと共有」」のセクションは写真やApple News、Podcast、Safari、Apple TV、ミュージックといったアプリに導入される。
    • ヘルス : 健康データを家族や介護者と共有できる。 「歩行安定性」という指標が追加され、転ぶリスクを定期的に分析する。
    • 天気 : アップルは人気の天気予報アプリ「Dark Sky」を 2020 年に買収したが、その成果がようやく日の目を見るようだ。 「天気」アプリのデザインが一新されてより詳細なグラフィックが表示されるようになり、現在の天候に合わせて正確に変わる背景が導入される。 また、解像度の高い天気図も表示できるようになる。
    • 探す : 「探す」アプリでは「AirPods Pro」と「AirPods Max」を探せるようになる。
    • Spotlight : 「Spotlight 検索」のデザインが新しくなり、連絡先に登録された人や著名人、映画などを検索すると、より詳しい情報が手に入る。写真の検索も可能だ。
    • 画像を調べる : 「Google レンズ」のように建造物や植物、ペット、本などにカメラを向けると、写っているものについての情報を得ることができる。
    • メールプライバシー保護 : メールを開いたかどうかを送信元から確認できないようにし、IP アドレスと位置情報を秘匿する機能。
    • アプリケーションのプライバシーレポート : 設定メニューには新しいセクションが導入され、どのアプリがカメラやマイク、位置情報、写真にアクセスしているのかが表示される。 アプリが通信した外部のドメインが強調表示されるので、自分のデータがどこに送られているのかを本当の意味で確認できる。
    • Siri : iOS 15 の Siri は、これまでにないほど安全になる。 ユーザーの音声がデバイスの外に送信されることはなくなるからだ。 ダークモードの起動やアラームのセットなど、Siri を通じてデヴァイス内のさまざまな機能を、インターネットに接続することなく従来よりはるかに素早く操作できるようになる。
    • iCloud+ : この新機能は「iCloud」の有料プランを契約していれば利用できる。 追加料金は必要ない。 ウェブサービスに登録するために使う使い捨てメールアドレスの生成機能、「HomeKit Secure Video」への対応のほか、「iCloud Private Relay」と呼ばれる機能も追加される。 これはデータを傍受されないようデバイスから発信されたあらゆるトラフィックを暗号化する仕組みで、仮想プライベートネットワーク (VPN) に近いものだ。
    • iCloud バックアップ? : iClound の有料プランを利用していなくても、新しい iPhone にデータを移行する際に一時的にデータを iCloud にバックアップできる。

iOS 15 が一般リリースされる時期は?

アップルによると、すでに iOS 15 の開発者向けプレヴューが利用可能となっており、7 月にはベータ版が一般公開される。 公式リリースは秋の予定で、「iPhone 13(仮称)」の発表に合わせて 9 月ごろになる可能性が高いだろう。 (Julian Chokkattu、Wired = 6-13-21)

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Android スマホが車の鍵になる機能も! Google I/O 2021 で発表されたテクノロジーまとめ

Google の年次カンファレンス「Google I/O」が、米国時間 18 日 - 20 日にオンラインで開催された。 その中で新たに発表された機能やサービスをまとめて紹介しよう。

Android 12 では、Android 端末が車の鍵になる

ベータ版がリリースされた Android 12 は、スマホが車の鍵になる「デジタルカーキー」に対応。 Android スマホを使って車の鍵のロック/ロック解除を行ったり、車を始動させたりでき、家族や友人とリモートで鍵を共有することも可能。 今年後半から一部の Pixel および Samsung Galaxy 端末で利用可能になるとのことだ。 また、GoogleTV などの AndroidTV OS を搭載したテレビでは、Android スマホをリモコンとして使うことも可能になる。 こちらも今年後半に展開予定。

このほかに Android 12 では、壁紙の色に合わせてアイコン、通知画面などを統一した色に設定できるパーソナライズ機能や、アプリがカメラやマイクを使用しているときに、インジケーターを表示する機能も搭載された。

Google マップが進化! AR 機能も拡充

Google マップでは、また、AR ナビ「Live View」の機能が強化された。 通常の地図画面上のボタンからライブビューを起動できるようになり、複雑な交差点では道路標識なども表示されるようになる。 さらに、周囲のレストランなどの情報や混雑状況も確認できる。 また、地図上に表示される情報を、時間帯や旅行中かどうかといった状況に基づいて調整する機能も搭載。 たとえば、平日の朝ならコーヒーショップが、週末なら観光スポットが優先的に表示されるといったぐあいだ。

さらに、カーナビ利用時にブレーキ回数が少なくてすむルートを予測して提案する機能や、地域ごとの相対的な混雑度が表示される機能も追加。一部の都市ではすでに開始している歩行者用の詳細なマップについても、対応都市を拡大予定だという。

Wear OS はサムスンの Tizen と統合!

ウェアラブルOS の「Wear OS by Google」は、サムスンの「Tizen」とプラットフォームを統合することが発表された。 この統合によって、共通した API によるアプリ開発が可能になる。 また、パフォーマンスの向上や、より長いバッテリー寿命の実現に向けても両社が協力していくという。

Google フォトにも新機能

Google フォト内の「レンズ」機能では、スクリーンショットに写っている商品などを検索できるようになった。 また、色や形の似ている写真が 3 枚以上見つかった場合に、その写真をまとめて表示する「リトルパターン」や、続けて撮った 2 枚の写真の間の動きを合成することで、短い動画を生成する「シネマティックモーメント」なども登場した。

プライバシー機能の強化

プライバシー機能も強化され、過去 15 分の検索履歴を削除する「Quick Delete」や、Google フォトにパスコードで保護されたフォルダを作成できる機能が新たに追加された。 また、Chrome のパスワードマネージャの新機能も発表。 他のパスワードマネージャからデータを簡単にインポートできる機能や、パスワードが漏えいした場合に警告を表示、即座にパスワードを変更できる機能が追加された。

遠隔コミュニケーションを支援する「smart canvas」

ビジネス向けサービス「Google Workspace」では、遠隔での効果的なコミュニケーションを実現する機能群「smart canvas」が発表された。 Google ドキュメントのコメントで、「@」に続けてファイル名やユーザー名などを入力することでリンクを簡単に埋め込むことのできる機能や、ページ区切りのない表示形式、作業中のファイルをそのまま Meet のビデオ会議で共有できる機能などが追加される。

Google I/O ではこのほかに、柔軟な受け答えが可能な AI 言語モデル「LaMDA」や、新しい検索アルゴリズム「MUM」、3D 映像の相手とオンライン会議のできる「Project Starline」など、現在開発中の技術についても発表された。 (酒井麻里子、RBB = 5-24-21)