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プラ条約、26 年の合意に期待 「魔法の鍵ある」 UNEP 事務局長

気候変動や生物多様性、環境汚染などの問題に取り組む国連環境計画 (UNEP) のインガー・アンダーセン事務局長が 14 日、都内で朝日新聞のインタビューに応じた。 プラスチックごみ汚染対策の条約作りは、議長の辞任が明らかになるなど難航しているが、「魔法の鍵がある」と述べ、2026 年中の合意を期待すると述べた。 プラごみ汚染対策の世界初の国際条約作りは 22 年から UNEP の政府間交渉で行われている。 当初 24 年中としていた条約案の合意は先送りされ、今年 8 月の再開会合でもまとまらなかった。

アンダーセン氏は「合意ができたかと言えば答えは『ノー』だ。 だが、議論が進んだかと言えば『イエス』だ。」 8 月の会合では、条約にはプラスチックの生産規制が必要だと訴える欧州や小島嶼(とうしょ)国と、反対する産油国や米中などの溝が埋まらなかった。 10 月には、政府間交渉のルイス・バヤス議長(駐英エクアドル大使)が辞任することも明らかになった。

一方、アンダーセン氏は「参加国は明らかに条約を望んでいる。 まだ交渉の席を立っていない。 道の終わりに到達していないという事実について、落胆したり落ち込んだりすべきではない」と話した。 これまでの非公式会合で、どこが譲れない線なのか、各国の思惑を知ることができ、妥協できる線がどこなのか理解が進んだという。 「私が見聞きしたことに基づけば、各国が枠組みを構築する上で着手できる魔法の鍵があると思う。」

もっと時間がかかった気候変動対策のパリ協定や水銀汚染対策の水俣条約の例をあげ、「2 年で(合意を)達成するのは現実として難しかったのかも知れない」としつつも、「プラスチック汚染はあらゆるところで目に見える。 市民も怒っており、解決して欲しいというプレッシャーがある。」 年内に後任議長を選び、26 年後半に次回会合を開いて、合意して欲しいと話した。

気候変動対策「スピード上げる必要ある」

11 月にブラジルで開かれる国連の気候変動会議 (COP30) は、パリ協定で定められた温室効果ガス削減の目標の更新時期にあたり、各国は新たな目標の提出を求められている。 日本は 35 年度に 13 年度比で 60% 削減するという目標を提出済みだ。 アンダーセン氏は「前進の一歩でうれしい。 しかし、より高い目標が見たかった。」と話した。 国連は、各国が提出した目標をまとめた報告書を作成中だ。 アンダーセン氏は「このままでは産業革命前からの気温上昇は 1.5 度を超えるだろう。 だが、世界が終わるわけではない。 少しでも温度上昇を抑えることが重要で、いかに速く下げるかにかかっている。」と強調した。

12 月でパリ協定の採択から 10 年になる。 アンダーセン氏は、新型コロナや各地の戦争、政治的混乱などをあげ「想定外が多く、順調な旅ではなかった。 でも、目的地は同じで変わらない。 我々は正しい道を歩んでいる。 ただ、スピードを上げる必要がある。」と話した。 UNEP は 1972 年、「国連人間環境会議(ストックホルム会議)」を機に設立。 本部はケニア・ナイロビにある。 (編集委員・香取啓介、asahi = 10-15-25)


プラスチックゼロめざすフランスの観光地 朝の海岸清掃で見えた現実

プラスチック汚染と聞くと、広く知られているのが海洋ごみの問題だ。 国内ではたびたび取材してきたが、環境対策が進んでいるとされる欧州ではどうなのか。 8 月に、プラスチック汚染に対処する条約づくりの政府間交渉を取材するため欧州に出張した際、フランスの海岸にも足を運び、取り組みを取材した。 日本では、長崎県の対馬の海岸に大量の漁具や浮きが押し寄せていた。 地元住民や行政の担当者が苦悩していた。 沖縄県の西表島では、漂着するプラごみにマングローブが覆われてしまっている現状を目の当たりにした。 夜にカニやヤドカリが発泡スチロールを食べる音が聞こえるといった話も聞いた。

今回訪問したのは、海洋プラスチック問題に力を入れているという、フランス南部のニース市。 地中海に面したリゾート地で、訪れた 8 月中旬は多くの観光客が海水浴を楽しんでいた。 2019 年、ニース市を中心とした広域自治体はプラスチックゼロをめざす戦略を打ち出した。 その中で、使い捨てプラ製品の禁止や削減、公共施設、イベント、飲食店、市場などでのストローやカップ、皿、カトラリーなどの使い捨てプラの使用禁止などを示している。 戦略の一環として、ニース市は海岸の清掃活動を積極的に実施している。 毎朝午前 5 時から約 50 人体制で清掃していると聞き、日の出前でまだ暗い中、ビーチを訪れてみた。

腰につけたライトで照らしながら、慣れた手つきでビーチの砂に埋もれたごみをトングで拾っていく清掃員の姿があった。 海岸沿いの遊歩道には、ソーラー式で圧縮機能を備えたごみ箱が並ぶ。 ごみ箱の色ごとにガラス瓶用、紙などの包装容器用、一般ごみ用となっていて、容量は約 2 千リットルという。 ごみ箱にはたばこの吸い殻専用の投入口もあり、約 2,500 本まで収容可能だ。

ビーチ清掃とごみ箱に集められたごみを合わせると、1 日あたり約 1.6 トンのごみが回収される。 このうち、最も多いプラごみはたばこの吸い殻だという。 プラスチックからできているたばこのフィルターは、細かくなってマイクロプラスチックとなると、環境汚染や生き物へ影響を及ぼす恐れが指摘されている。 日本では、ごみがあふれることによる景観悪化への懸念などから、ごみ箱の設置は少ないとされる。 一方、フランスではニース市の海岸の遊歩道に限らず、街中にもごみ箱が多く設置されている。 ただ、回収が間に合っておらず、ごみがあふれてしまっている光景を何度も目にした。

ニース市ではごみ箱を、多すぎず少なすぎず、設置していると担当者は説明する。 「人々がごみに責任を持てるように、多すぎないこと。 しかし、街を清潔に保てるように、少なすぎないこと。 これが私たちの方針です。」 学校では子どもたちに「次のごみ箱が見つかるまでごみを持ち歩く」ことを教える教育にも取り組んでいるという。 ニース市は 25 年までに使い捨てプラスチックゼロを掲げている。 今年中に達成しなければならないことになるが、「正直に言えば、プラスチック汚染は依然として存在している」と話す。

プラごみ問題の解決のためには、プラスチック汚染の発生源に対処することも重要だ。 ニース市に建設中の新たな下水処理施設は、下水に含まれるマイクロプラスチックを約 90% 除去し、処理された水は道路清掃などに再利用するという。 海岸には他国からの漂着ごみもあれば、観光客が持ち込んだプラごみもある。 「地域の取り組みだけでは十分ではない。 プラスチック生産を削減するための国際的な合意や、使い捨てプラスチックを禁止する欧州規制が必要です。」

早朝のビーチでは、ごみをつっつき、食べ物をさがす海鳥たちの姿を見た。 人間が食べ残したピザを奪い合ったり、プラごみをくわえていたり。 人間の何げない行動が生き物たちに直接影響を及ぼしている現実を、改めて突きつけられた。 (フランス・ニース、玉木祥子、asahi = 9-2-25)


プラごみ条約交渉、合意また見送り 再び会合開く方針も先行き不透明

スイスのジュネーブで続いていた、プラスチックごみ汚染に対処する国際条約づくりの政府間交渉会合は 15 日、合意を見送り閉幕した。 前回の会合に続いて、またも各国が最後まで歩み寄れなかった。 今後再び会合を開く方針だが、時期など詳細は未定だ。 プラスチックを含む汚染は、気候変動や生物多様性の損失と並ぶ、現代の 3 大環境問題ともいわれる。 2022 年 3 月の国連環境総会で、国際条約づくりが決まり、各国は交渉会合を重ねた。 24 年末、韓国の釜山で開かれた 5 回目の会合で、1 週間をかけて条文をとりまとめる予定だったが、生産規制などをめぐる意見の隔たりが埋まらず、合意は先送りになった。

今回は、会合前から非公式の意見交換などを重ね、日程は前回会合よりも長い 10 日間確保した。 会期中も、釜山では開かなかった閣僚級のイベントなどで合意に向けた結束を強めようという仕掛けを凝らした。 だが、当初 14 日までの予定だった会期を延長して交渉を続けたものの、妥結はできなかった。

日本も橋渡しの努力続けたものの

国連環境計画 (UNEP) のアンダーセン事務局長は合意見送りに、「この問題に懸念を抱くすべての人が非常に失望していることは理解している」と述べた。 プラスチックの原料となる石油が採れるサウジアラビアなどの産油国やインドなどは今回も生産規制に強硬に反対。 中国も生産規制に慎重な姿勢を示し、トランプ政権下の米国も、規制を容認していた前回会合までとは立場を変えた。 一方、欧州連合 (EU) や島嶼国、中南米などは、これに反発。 生産、使用、リサイクルや処理などの上流から下流までの「ライフサイクル」全体を管理する条約が必要だと訴え続けた。

落としどころ見えないまま

ルイス・バヤス議長(駐英エクアドル大使)は会期終盤、2 回にわたり条文の議長案を更新。 だが、15 日未明の時点でも、留保事項が 100 個以上残った。 妥協点を見いだそうと日本なども折衷案を示した。 生産規制などをめぐって溝が深い国々の間に立ち、橋渡し役として立ち回った。 非公式の協議でどうにか落としどころを探った。 そうした働きに謝意を示す国もあった。 日本政府関係者は「今回も合意までいかなかったことは残念だが、対立する両者の間に立って交渉をしていったことで、議論に進展はあったと思う」と振り返る。

昨年末に続き、合意を再び先送りしたことで、交渉決裂による条約づくり断念という最悪の事態は回避された。 だが、主張の隔たりは依然として大きい。 また会合を開いても各国が折り合える可能性は見えず、プラごみ問題への対応の遅れが懸念される。 (ジュネーブ・玉木祥子、asahi = 8-15-25)


最も危険な海洋プラごみ、巨大な「怪物」漁具 長崎・五島で発見

長崎県五島市の多々良島周辺の海から、モンスターのような巨大なゴーストギア(幽霊漁具)が見つかった。 ゴーストギアとは海へ流れ出て漂う漁具のことで、海洋生物を捕らえたり、生態系の破壊や船舶の事故にもつながったりする。 漁具のほとんどは自然界で分解しないプラスチック製で、「最も危険な海洋プラスチックごみ」といわれている。

世界自然保護基金 (WWF) ジャパンが深さ 4 メートルの海底で、高さ約 3 メートル、幅約 1 メートルの塊を発見した。 下部がサンゴや岩に引っかかっていた。近くに世界最大級のオオスリバチサンゴがあり、傷つけてしまう可能性があることから、7 月 10 日、クレーンを装備した作業船で回収したという。 この塊を解体すると、縦 8.9 メートル、幅 95 メートルの刺し網や複数の漁網が絡まり合い、その中からカニやエビが生きた状態で見つかった。 こうした生き物を狙って近づいた魚などがゴーストギアに絡まり、身動きが取れなくなってしまうおそれもある。

また、サンゴや海綿、海藻、中国語が書かれた漁具の浮きやお菓子の袋も絡まっていたという。 WWF ジャパンは 2023 年から潜水調査を開始し、長崎県など全国 7 カ所で調査・回収を行っている。 東シナ海に面した海岸では海外由来の漂着物が確認されているが、今回回収した場所は東シナ海に直接面していない多々良島の奥まった湾内。 調査を担当する、WWF ジャパン海洋水産グループのヤップ・ミンリーさんは「ここまで外国由来のものが流れてきていることに驚いた。世界と協力して解決策を模索していくことが重要だ。」と話す。 (玉木祥子、asahi = 8-3-25)



「100% 植物由来」ペットボトル開発 サントリー、製品化へ

サントリーホールディングスは 3 日、石油の代わりに、木のチップなど植物由来の素材だけを使ったペットボトルを開発したと発表した。 今後製品化を進め、2030 年には全てのペットボトルを植物由来か、使用済みのボトルをリサイクルしたものに切り替えることを目指す。 新たなペットボトルは、米バイオベンチャー企業のアネロテックと開発した。 現在は大半のペットボトルは石油だけを原料に使っているが、「サントリー天然水」のボトルは廃棄されるサトウキビの糖蜜を 30% 用いている。

今回は、その残る70%も木のチップからつくった成分に置き換えることで、100% を植物由来の素材にする。 試作品ではマツの木のチップを使用した。 品質は現行のボトルと変わらないという。 同社が国内外で使うペットボトルは 20 年で約 29 万トンだった。 このうち使用済みのボトルをリサイクルしたものが約 15%、一部に植物由来の素材を使ったものは数 % ほどにとどまっていた。 100% 植物由来のペットボトルについては、米コカ・コーラも試作品を作っている。 (山下裕志、asahi = 12-3-21)


プラ添加剤汚染広がる 世界の半数の海鳥から成分検出 国際チーム

日米などの国際研究チームが世界 16 カ所で海鳥 145 匹を調べたところ、半数以上の 76 匹の体内から、プラスチックの耐久性を高めるために加えられた添加剤の成分が見つかった。 一部の添加剤は生物の免疫などに影響することが指摘されており、研究チームはプラスチックごみの削減や無害な添加剤への転換を訴えている。 プラスチック製品には、燃えにくくする臭素系難燃剤や、日光による劣化を防ぐ紫外線吸収剤が添加される。 こうした添加剤は分解されず、海鳥の体内にたまることが飼育実験でわかっていたが、汚染がどのくらい広がっているのかは不明だった。

そこで、日本のほかアメリカ、オーストラリア、南アフリカなど国内外 18 大学・研究機関が共同で、北極や南極、赤道などで海鳥 32 種を調べることにした。 鳥を傷つけないよう、海鳥が尾羽の付け根から出し、羽に塗る脂「尾腺ワックス」を調べた。 すると、52% にあたる 76 匹の尾腺ワックスから添加剤が見つかった。 とくにハワイのシロハラミズナギドリやオーストラリアのアカアシミズナギドリなどで添加剤の濃度が高かった。 日本では新潟県の粟島でオオミズナギドリ 17 匹を調べ、うち 3 匹から低濃度の汚染が見つかった。

海鳥が食べる魚やエビを通して体内にたまる有害物質ポリ塩化ビフェニール (PCB) の濃度と比べたところ、今回分析した海鳥の 10 - 30% はプラごみを誤って食べたことで汚染されたとみられるという。 これまでの研究で、海鳥が誤って食べるプラごみの量と、血中尿酸濃度に関係があることなどがわかっている。

東京農工大の高田秀重教授は「紫外線吸収剤はプラスチックに必須な添加剤のため、生物蓄積性と毒性がない添加剤への転換を図ることが必要だ」としたうえで、「それ以上に必要なことは、プラスチックの使用量を減らしていくことと、陸上での廃棄物管理をしっかりすることだ」と指摘した。 論文は、日本環境化学会の英文誌 ウェブサイト で読める。 (小堀龍之、asahi = 10-11-21)


海洋プラごみ、条約づくり議論で合意 G20 環境相会合

主要 20 カ国 (G20) 環境相会合が 22 日、イタリア・ナポリで開かれ、海洋プラスチックごみ削減のために新たな国際条約などをつくる議論に参加していくことで合意した。 来年 2 月に開かれる国連環境総会で条約づくりの委員会を設ける方向で議論が進められることになる。 22 日に現地で始まった会合には、日本から小泉進次郎環境相らが参加。 採択された共同声明では、海洋プラごみについて「生態系や沿岸地域、漁業、観光に深刻な影響を与えている」と指摘したうえで、こうした問題に対処するため、新たな国際協定や制度をつくることなどについて議論していくことを確認した。

日本はすでに、新たな条約などをつくる政府間交渉委員会を設置することを支持し、他国にも支持や参加を呼びかけている。 条約づくりに積極的な欧州や日本などは、来年 2 月の国連環境総会への提案に向けて、今回の G20 での合意を足がかりにしたい考えだ。 海洋プラごみ対策の国際的な枠組みについては、2019 年に大阪で開かれた G20 サミットで、50 年までに新たな汚染をゼロにすることをめざす「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を共有し、今回の G20 でも再確認した。

一方で、削減義務などを伴う国際的な条約はない。 有害廃棄物の国境を越えた移動を規制する「バーゼル条約」では、今年から汚れた廃プラの輸出入が規制されるようになったものの、海洋への流出を減らすための規制はないという。 日本は今年 6 月、プラスチック資源循環促進法を成立させたほか、欧州など各国でもプラごみ対策が進んでいる。

国際的な専門家の会合では、国ごとの削減目標の設定や報告、規制など何らかの義務を課す国際的な枠組みが必要という議論が出ているという。 世界では毎年約 800 万トンのプラごみが海洋に流出していると試算されている。 紫外線による劣化や波などで 5 ミリ以下の小さな粒になった「マイクロプラスチック」も、生態系への影響が心配されている。 (川田俊男、asahi = 7-23-21)


「海洋生分解性」素材の開発進む プラごみ問題解決へ

海洋プラスチックごみの問題解決につなげようと、国内メーカーが「海洋生分解性」の素材を次々に開発している。 従来のプラスチックの代わりに使うことができ、海に流れ出てしまっても微生物によって水と二酸化炭素に分解されるので、環境に悪影響を与えづらいという。 以前から、土壌や堆肥(たいひ)作りの設備に入れることで分解できるプラスチックはあったが、海水で分解するのは技術的に難しかった。 コストの高さもあって製品化される例は少なかったが、近年は環境意識の高まりを受け、利用が進んでいるという。

世界的にもこの分野の先端をいくカネカ(東京)が開発した海洋生分解性プラスチック「Green Planet」は、水温 30 度の海水で 6 カ月以内に 90% 以上が分解される。 原料は 100% 植物由来だ。 2 年前から大手コンビニのストローに、昨年 11 月からは化粧品の容器に採用された。 今年 5 月には発泡加工に成功し、鮮魚用の箱としても使われている。 研究を始めたのは 20 - 30 年前で、「やっと日の目を見た」と担当者。 現在の生産能力は年 5 千トンだが、世界的に需要が増えると見込み、今後工場を新設して2030 年には 10 万 - 20 万トンを目指す。

プラスチックをそれ以外の素材で置き換える動きも進む。 ファンデーションなどの化粧品には肌触りを良くするために微小な「マイクロプラスチック」が含まれるが、ダイセル(大阪市)は昨年末、セルロース(食物繊維)などを原料とした代替素材を開発。 海水中で約 9 カ月たつと 90% が分解される。 品質はプラスチックに劣らず、反響は大きいという。 世界では年 800 万トンのプラごみが海に流出しているとされ、それを生き物が食べて死んだり、体にからまって傷ついたりする問題が起きている。 環境省の調査では、10 - 19 年度に日本各地の海岸に漂着したごみ(自然物は除く)のうち、プラスチック関連が重量で半分以上を占めた。 (田中奏子、asahi = 7-11-21)

メモ : カネカの生分解性プラスチック「Green Planet」は、植物油を微生物で発酵させてつくる。  それを使ったストローが、セブン-イレブンの約 1 万店やファミリーマートの一部店舗などで採用されている。 海外の大手菓子メーカーと、包装用素材の開発も進めているという。


微小プラ、年 157 トン発生 国内、環境ベンチャーが推定

海や川に流出したプラスチックごみが細かく砕けた結果、2020 年度に国内で 157 トンの微小なマイクロプラスチックが発生したとの推定結果を、環境ベンチャーのピリカ(東京)が 2 日までに発表した。 16 都道府県の調査地点の約 9 割で微小プラが検出され、同社は対策強化を求めている。 調査は 20 年 4 月 - 21 年 3 月、北海道から鹿児島県までの 16 都道府県の川や港湾、湖で実施。 自治体や大学の協力を得て採取装置で水面付近を調べると、120 地点のうち 112 地点で微小プラを確認した。 河川中の微小プラの濃度や河川流域の特性などを考慮に入れて計算、年間 157 トンが流出したと推定した。 (kyodo = 5-2-21)



海岸に大量のプラごみ漂着、大半が日本製 愛媛の無人島

クジラの胃からレジ袋 - -。 投棄され、海に流れ出たプラスチックごみが生き物を脅かす報告が世界で相次ぐ。 海岸線の長さが全国 5 位の愛媛県にも多くのプラごみが流れ着いている。 その対策の第一歩として導入される 7 月からのレジ袋有料化を前に、愛媛の海の現状を探った。 八幡浜港から約 15 分。 一般社団法人「E.C. オーシャンズ」の代表理事、岩田功次さん (59) と船で無人島・佐島に向かった。

岩田さんは 20 代の頃から仕事のかたわら、八幡浜市の海岸で地元の人たちとごみ拾い活動をしてきた。 2016 年、佐田岬半島にある伊方町三机の海岸で見た光景に驚いた。 人があまり足を踏み入れないような浜に、漁業のブイに使われたとみられる発泡スチロールやペットボトルなどが大量に漂着していた。 「今までしてきたことはなんだったんだろう。」 それから、船でしか行けない南予の海岸や瀬戸内海の島々を見て回るようになった。 漂流ごみのたまり場を調べ、撤去活動を始めた。

佐島の海岸には、ペットボトルやカップ麺の器、ビニールサンダルなどが散乱していた。 大きな冷蔵庫も横たわっていた。 「驚くよ。」 足元のごみを踏みつけながら岩田さんについて行くと、岸から少し上がった林の中の地面が真っ白になっていた。 魚などを入れる発泡スチロールのケースが砕け、その破片で埋め尽くされていた。 「軽いから上に上がってくるんだよ。」 岩田さんによると、海岸のごみのほとんどは日本製だという。

佐島を離れ、近くの大島・地大島を船から見て回った。 岩田さんが南側の小さな浜を指さした。 そこにもかつて発泡スチロールの塊が大量に漂着していたという。 2 年前に延べ 60 人が 15 日間かけて撤去。 回収した発泡スチロールは網でまとめて船で港まで引っ張り、焼却場に運んだ。 今もごみが点在しているように見えたが、「2 年分のごみがたまっている」という。 岩田さんは今後も、地元の人たちと佐島などで漂着物の調査や海のごみの撤去を進めていく。 「このごみは未来に残してはいけない。 ごみを撤去するのは、出した大人たちの責任。」と強調した。

行政も海洋プラごみ対策に本腰を入れる。 県は今年度予算に約 4 千万円を計上し、県内の複数の浜に漂着したり海上を浮遊したりするプラごみの実態を調べる。 その上で効果的な対応策を検討するという。 プラごみ関係の予算は昨年度の約 162 万円から大幅に拡充された。 県循環型社会推進課の和田英夫主幹は「世界的な流れの中で、海に恵まれた愛媛も本格的に取り組む必要がある」と話す。

昨年、大阪で開かれた主要 20 カ国・地域首脳会議(G20 サミット)は、50 年までにプラスチックによる新たな海洋汚染をゼロにすることを目指すと合意した。 海のプラごみ問題に詳しい愛媛大学の日向博文教授は「日本海側は海外からきたごみの量も多いが、瀬戸内海のごみのほとんどは国内から出たもの。 どんなごみが多いか、どこからきたかを確認すれば、何から手を付ければいいかが分かる。 解決の道筋はあると思う。」と話している。 (寺田実穂子、asahi =6-12-20)


微少プラ 湾や川など関東以南の調査地点の大半で検出

環境問題の解決に取り組む社団法人・ピリカ(東京都)は、海洋汚染が問題になっている微小なプラスチック片「マイクロプラスチック」を関東以南の河川、海岸、湖で調査した結果、100 地点のうち 98 地点で見つかった、と 25 日発表した。 人工芝や肥料材料、ブルーシート、ロープなどの破片が都市だけでなく地方でも確認された。

昨年 6 - 11 月、首都圏(1 都 3 県)から沖縄までの 12 都府県で、スクリュー付きの専用装置に河川や海などの水を吸い込ませ、網にたまった大きさ 0.3 - 5 ミリメートルのプラスチック片を分析した。 確認された 98 地点のうち、東京、千葉、富山には、浮遊量が調査地点の平均値の 50 倍以上と高い場所もあった。 多くは港湾や水路など水がよどむところだった。 75 地点と各地で見つかったのが人工芝由来のもの。 検出されたマイクロプラの 14.3% を占めた。 スポーツのグラウンドから流出したとみられるものが多かった。

水田にまく肥料を覆うのに使われるプラスチック材料も見つかり、石川県と富山県のある地点では、検出したうち 6 割を占めた。 太陽の熱や紫外線、波の力などでプラスチックが細かく砕けたマイクロプラスチックは長期間、海中を漂い、生態系に影響を及ぼすとされている。 調査したピリカの小嶌不二夫(こじまふじお)代表理事 (33) は「人工芝や肥料の材料など、流出メカニズムが明らかになった製品を扱う企業や業界と、問題解決に向けた連携をしていきたい」と語った。 調査結果は ウェブ で公開されている。 (水戸部六美、asahi = 3-26-20)


中国、プラスチック使用規制を大幅に強化へ

使い捨てプラ製ストローの使用を年末までに禁止 容器・包装も大幅削減へ

【北京】 中国はプラスチックの使用に対する規制を大幅に強化することを明らかにした。 こうした措置に乗り出すのは約 10 年ぶりで、ネット通販や出前の増加に伴うプラスチックごみの急増が背景にある。 中国政府は数年前からごみの分別や資源ごみの輸入中止などによって、廃棄物と汚染の削減に一層の努力を傾けている。 今回新たに、微生物が分解できない非生分解性ビニール袋の使用を 2020 年末までに主要都市でほぼ禁じるほか、全国の飲食店で使い捨てプラスチック製ストローの使用を禁じる。 この措置は 22 年までにすべての市と町に拡大し、25 年までには生鮮食品を販売する市場でも実施する。 中国の国家発展改革委員会と生態環境省が 19 日に発表した。

また、持ち帰りや出前用のプラスチック製容器・包装も対象としており、飲食店は 25 年までにプラスチック製品の使用を 30% 減らさなければならない。 当局は罰則などの詳細は明らかにしなかったが、規則に違反した事業主の名前を公表するという。 今回の新規制は、中国のプラスチック規制としては 08 年以降で最も包括的なものとなる。 中国政府は、08 年に小売業で顧客に無料のプラスチック製袋を配布することを禁止し、そうした袋の製造も禁じた。 (Stephanie Yang、The Wall Street Journal = 1-21-20)


大気中からもマイクロプラスチック 福岡市内で確認

福岡工業大(福岡市東区)の研究グループが福岡市内で採取した大気から、微細なマイクロプラスチックを検出した。 プラスチックは海洋汚染が世界的な問題になっているが、研究グループは、空気にも微小なものが含まれ、地球規模で移動しているとみて調査を進める。

福工大の永淵修客員教授(環境科学)らは今年 3 - 9 月、同市東区のキャンパスの屋上で空気や雨を採取。 電子顕微鏡や、光を当てて素材を調べる機器などで分析したところ、大きさが数十 - 数百マイクロメートル(1 マイクロメートルは 1 千分の 1 ミリ)のポリエチレンやポリプロピレンを見つけたという。 海で見つかる大きさが 5 ミリ以下のマイクロプラスチックよりも、さらに小さいサイズだ。 永淵さんはこれまで、水銀や鉛などが雨や雪とともに大陸から日本へ運ばれてくる「越境大気汚染」などについて研究してきた。 九州の山で採取した樹氷の分析結果からも、マイクロプラスチックとみられる物質が見つかっているという。

プラスチックは、海に捨てられ、紫外線や波などで劣化して小さくなったものを生物がのみ込む海洋汚染が問題になっているが、大気中のマイクロプラスチックについては今年、フランスとスペインにまたがるピレネー山脈や北極圏など、都市部から離れた場所で検出したとする論文が相次いで発表された。 都市部からのほか、海から風に巻き上げられて大気中をただよい、長距離を移動している可能性があるという。 永淵さんらは今後、福岡市や東京都内の大気のほかに、屋久島や九重、富士山に降った雨や雪、樹氷などを分析して、マイクロプラスチックの有無や移動経路を本格的に調べるという。

マイクロプラスチックが人間も含め、生物の健康に悪影響を及ぼすかどうかはよくわかっていない。 しかし、永淵さんは「PCB や DDT など有害物質がくっついたマイクロプラスチックを吸い込むリスクが、これから問題になる可能性もある」と話す。 大気中のマイクロプラスチックは極めて小さいため、効率的に分析する技術の開発も進めたいという。 (福島慎吾、asahi ~ 11-19-19)


P & G ジャパン、海洋プラスチック再生ボトルプロジェクト
『JOY Ocean Plastic (ジョイ オーシャン プラスチック)』 11 月上旬新発売

プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社

〜 約 6 トンの日本国内の海岸で回収したプラスチックごみから海洋プラスチック再生製品世界最大規模の 55 万本を生産 〜

P & G (本社 : 神戸市)は、世界的な環境問題である「海洋プラスチック削減」への取り組みとして、日本国内の海岸で回収されたプラスチックごみを再生し、ボトルの原料として採用した『JOY Ocean Plastic』を台所用洗剤ブランド「ジョイ」から 11 月上旬より新発売いたします。

『JOY Ocean Plastic』は、「ジョイ」ならではの高い洗浄力はそのままに、日本国内の海岸で回収されたプラスチックごみを再生し、ボトルの原料として再利用した製品です。 台所用洗剤のボトルとしての耐久性を担保できる最大量である約 25% に日本の海岸で回収したプラスチックを使用しており、今回発売する 55 万本という生産量は、海洋プラスチックを使用する製品としては、一つの国に対する世界最大の生産規模です(P & G 調べ)。

また、再生された海洋プラスチックの製品ボトルへの採用は、P & G として日本初、そしてアジアパシフィック初となる取り組みです。 今回、リサイクルのエキスパートであるテラサイクル合同会社協力の下、海岸でのごみの回収からボトルの製造までの全工程が日本国内で行われております。

世界の海洋には毎年 800 万トン以上 (*1) のプラスチックごみが流入しており、2050 年には海洋プラスチックごみの総重量が魚の総重量を超える (*2) との予想が発表されています。 海洋プラスチックごみの多くはアジアを発生源 (*1) としているといわれ、日本でも深刻な問題として対策が求められています。 そこで P & G はその対策の一つとして、日本に流れ着いたプラスチックごみを日本国内の日用品に再利用するという画期的な取り組みを実現しました。

食器用洗剤という生活に身近な製品で、パッケージの耐久性や透明度などの課題を乗り越え、55 万本という大量生産を実現したことにより、海洋プラスチック問題について、より多くのお客さまに知っていただき、関わっていただくきっかけをご提供できると考えております。

世界最大の日用消費財メーカーである P & G は、これまでも環境サステナビリティへの取り組みの一環として、他国において再生された海洋プラスチックの製品ボトルへの採用に取り組んできました。 その経験を生かし、今回、日本国内においても P & G ジャパンを代表するブランドの一つである台所用洗剤ブランド「ジョイ」で海洋プラスチックごみ削減へ向けた取り組みを実施するに至りました。 (PR Times = 11-6-19)

(*1) Jambeck, Jenna R., et al. "Plastic waste inputs from land into the ocean." Science 347.6223 (2015)
(*2) The New Plastics Economy : Rethinking the future of plastics (2016. Jan. World Economic Forum)

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