ルノーと日産、15% の株式相互保有など新たなアライアンス契約で最終契約締結を完了

ルノーグループと日産自動車は 7 月 26 日、ルノーグループと日産が 15% の株式(ロックアップおよびスタンドスティル義務を伴う)を相互に保有することなど、2023 年 2 月 6 日に発表した両社の新たなアライアンス契約について、最終契約の締結を完了したと発表した。 最終契約の締結に伴い、新たなガバナンス体制と両社株式の相互保有のリバランスが正式に定められた事になる。 同契約で規定された取り引きについては、規制当局の承認を含むいくつかの条件を前提にしており、2023 年第 4 四半期に完了する予定。

新たなアライアンス契約では、ルノーグループと日産の株式相互保有のほか、アライアンス各社は新たにラテンアメリカ、インドおよび欧州において実行可能な主要なプロジェクトについて検討することや、電動化や低排出技術に関する既存の戦略に沿って、事業に付加価値が期待できるパートナー各社のプロジェクトに投資・協業することでも合意。 その一環として、ルノーグループと日産はインド事業への新規投資や新型車の投入を含む新たなコミットメントを発表。 また、日産はルノーグループが欧州に設立する EV & ソフトウエア新会社アンペアの戦略的投資家になることなどを決定している。

今回の最終契約の締結について、アライアンス会長のジャン・ドミニク・スナール氏は「本日署名した契約により、アライアンスは次の章に進むことになります。 これらにより、われわれの長年にわたるパートナーシップが強化され、アライアンス各社の価値創造の最大化に貢献します。 また、これは新たなバランスのとれた、公正で効果的なガバナンスの基礎の構築につながります。」とコメント。

日産自動車社長兼 CEO の内田誠氏は「この最終合意の締結により、われわれは相互に有益な革新的分野において、ルノー及び三菱自動車との協業が次のフェーズに進む事になります。 これにより、『Nissan Ambition 2030』の取り組みや電動化戦略において新たな価値が創出されます。 アンペアへの出資は、現在日産が欧州で進めている電動化の取り組みを補完、強化するものであり、コスト効率化、規制対応、EV やパワートレインのラインアップ拡大など多くのシナジー効果を生み出します。」と述べた。

ルノーグループ CEO のルカ・デメオ氏は、

「これらの契約は、グローバルに主要市場での事業を再活性させる堅固な基盤を提供し、ルノー、日産、三菱自動車をはじめとしたステークホルダーにとって何億もの価値を生み出す可能性を秘めております。 また、急速に変革する環境の中、今回の合意により当社は戦略的アジリティを得ることになります。 われわれは正しいマインドセットを共有しており、EVとソフトウエアに特化したアンペアに日産が強力なパートナーとして参加されることを歓迎します。 これは欧州市場でフロントランナーを目指しているこのプロジェクトの魅力が認められた証であり、ルノーとアライアンスのパートナー企業が欧州の EV およびソフトウエア競争のスターティンググリッドの先頭に立てる事を意味します。」

とコメントしている。 (椿山和雄、CarWatch = 7-26-23)



日産、再び復活の象徴になるか 新型「Z」を公開

日産自動車は 17 日、米ニューヨークで開いたイベントで、スポーツカー「Z」の新モデルを公開した。 1969 年の初代発売から半世紀にわたって日産を代表する人気車種。 経営再建を進める同社にとって、新型Zを投入することで復活を印象づける狙いがある。 新モデルは 2008 年以来、14 年ぶり。 初代から数えて 7 代目のモデルチェンジとなる。 米国で来春発売で、価格は 4 万ドル(約 440 万円)から。アシュワニ・グプタ COO (最高執行責任者)はイベントで、V 型 6 気筒 (V6) ツインターボエンジンを備え「スムーズでパワフルで、どんな時でも力強く走る」と紹介した。 販売は順次、各国に広げていく方針で、日本仕様の「フェアレディ Z」の新モデルは、今冬に発表される予定だ。

過去の復活劇にはゴーン氏が …

日産にとって、「Z」は「復活の象徴」という側面がある。 約 20 年前、経営危機の際の経緯があるからだ。 発売当時から、Z はポルシェやフェラーリなどに比べて価格が低く、「手の届くスポーツカー」として米国を中心に人気を博していた。 しかし、日産が業績不振に陥った 00 年にいったん生産中止となった。 その後、仏ルノーの資本を受け入れた後の 02 年、業績を V 字回復させた当時のカルロス・ゴーン社長が日産再生の象徴として復活させた。

現在の日産は経営再建のために「選択と集中」を掲げる。 世界で EV シフトが進む中で、売上高に大きく貢献するわけではないガソリン車の新たなスポーツカーを出すことについて、日産幹部は「従業員やディーラーのモチベーションを上げる意味でも、ファンの期待に応える意味でも、ブランド戦略上も、重要な車だ」と話す。

SUV、ピックアップトラック、EV 車 … 次々と北米投入へ

日産経営陣は再建に向け、かつて営業利益の半分を稼いだ北米での巻き返しを図っている。 昨年末からすでに 3 車種を北米に投入し、年内に SUV とピックアップトラックの 2 車種を更に発売。 その先には、EV の SUV「アリア」の発売も控える。 世界的なコロナ禍にあって、米国は巨額の景気対策などによって消費が上向き、自家用車の販売も好調だ。 今回、50 年以上の歴史があり米国で人気の Z を投入することで、同地域での収益力回復に弾みをつけたい考えだ。 (真海喬生 ~= ニューヨーク、神沢和敬、asahi = 8-18-21)


日産が純損益 3,677 億円の赤字 4 - 12 月期で初

日産自動車が 9 日発表した 2020 年 4 - 12 月期決算は純損益で 3,677 億円の赤字(前年同期は 392 億円の黒字)だった。 四半期ごとの業績を発表するようになった 04 年以降、この期間で純損益の赤字は初めて。 売上高は前年同期比 29.2% 減の 5 兆 3,174 億円、本業のもうけを示す営業損益は 1,316 億円の赤字(同 543 億円の黒字)だった。

販売台数は 278 万台で、前年同期の 369 万 7 千台から 24.8% 減らした。 昨年 12 月の世界販売でみてもトヨタ自動車が前年同月比 10.3% 増、ホンダが同 14.9% 増と大手が販売を回復させているなか、日産は 7% 減と落ち込んでいる。 新型車の不足やブランド力の低下が原因として、日産は昨年 5 月以降の 18 カ月で 12 の新型車を投入し、反転攻勢につなげようとしている。 これまでに 4 車種が発売されているが、効果が出るにはもう少し時間がかかりそうだ。 (神沢和敬、asahi = 2-9-21)


日産の融資に政府保証 1,300 億円 異例の過去最大規模

政府系の日本政策投資銀行(政投銀)が 5 月に決めた日産自動車への融資 1,800 億円のうち、1,300 億円に政府保証をつけていたことがわかった。 仮に返済が滞れば 8 割を国が実質補填(ほてん)する。 大手企業への融資に国民負担を伴う可能性がある保証をつけるのは、極めて異例な対応だ。

日産は「(政府保証は)全く承知していない(広報)」、政投銀は「個別の案件は答えられない(広報)」とコメントしている。

日産への巨額融資、意見割れた政投銀 浮上した奥の手

大企業への融資に対する政府保証はリーマン・ショック後の 2009 年、経営再建中の日本航空でも使われた。 政投銀は約 670 億円を政府保証つきで貸したが、翌年に日航が経営破綻して約 470 億円の国民負担が生じた。 今回の日産の保証額は日航を大きく上回り、過去最大規模となる。 政府はコロナ禍で資金繰りが悪化した企業へ、政投銀などによる「危機対応融資」を 3 月から実施している。 貸す側は融資焦げつきに備え、政府保証にあたる「損害担保契約」を結んで損失を補うこともできる。

一連の融資にかかわった金融関係者らによると、政投銀は 5 月、日産への危機対応融資 1,800 億円を決め、うち 1,300 億円に政府保証を求めた。 返済が滞ると、8 割の約 1 千億円を国が負担する。 当時は政投銀が融資に応じないと、日産の資金繰りが厳しくなる恐れがあり、政投銀独自の判断で決めたという。 多くの下請け企業を抱える日産の苦境が長引けば、日本経済全体に与える影響が大きいと判断した模様だ。

その後、メインバンクのみずほ銀行など銀行団による協調融資がまとまり、日産は 4 月以降に金融機関から計 8,326 億円を調達。 当面の資金繰りにめどをつけて再建を進めている。 政投銀はコロナ関連で大手・中堅企業向けに計 147 件(約 1.8 兆円)の危機対応融資を実行したが、政府保証つきは日産の 1 件のみ。 政府保証があれば金融機関は貸し倒れの恐れが減る一方で、融資先企業は巨額の支援に慣れきってしまい、経営改善が進まない可能性もある。

公的金融による企業支援のあり方について、上智大の中里透准教授(財政学)は「コロナ禍による実体経済に対する悪影響が金融危機に波及するのを防ぐためには、思い切った企業支援は必要だ。 だが巨額の税金が投入される可能性がある場合、なぜ特別な信用補完をしているのか、政府は説明する責任が生じる。」と指摘する。 日産は「(政府保証は)全く承知していない(広報)」、政投銀は「個別の案件は答えられない(広報)」とコメントしている。 (asahi = 9-7-20)


日産、6,700 億円の巨額赤字に コロナ拡大の影響直撃

日産自動車は 28 日、2021 年 3 月期決算の業績予想を公表し、最終的なもうけを示す純損益が 6,700 億円の赤字になるとした。 6,712 億円の赤字となった前年に続き、2 年連続の巨額赤字になる。 売上高は 7 兆 8 千億円(前年比 21% 減)、本業のもうけを示す営業損益は 4,700 億円の赤字(前年は 404 億円の赤字)になるとした。 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、1 年間の販売台数が前年比 16.3% 減の 412 万 5 千台になる見通しとしている。

同日発表した 20 年 4 - 6 月期決算は、営業損益が 1,539 億円の赤字だった。 前年同期は 16 億円の黒字で、四半期決算の開示を始めた 04 年以降で 4 - 6 月期の営業赤字は初めてとなる。 売上高は前年同期比 50.5% 減の 1 兆 1,741 億円、純損益は 2,855 億円の赤字(前年同期は 63 億円の黒字)だった。

日産は近年、拡大路線の中で無理な値引き販売を進めてブランド力を低下させ、売り上げを落としてきた。 このため、20 年 3 月期で、過剰設備となったインドネシアやスペインの工場閉鎖などのリストラ費用として巨額の特別損失を計上。 年間生産能力の 2 割削減や年間 3 千億円の固定費削減などを掲げ、業績回復に向けて再出発していたが、感染拡大の影響が直撃した格好だ。 (asahi = 7-28-20)


自動車会社なのに新型車出さない? 日産の苦境の理由

カルロス・ゴーン前会長が破綻寸前の日産自動車でリストラのおおなたをふるってから 20 年。 日産は今年 3 月までの 1 年間の決算で、当時に迫る巨額の赤字を出した。 今後、複数の工場閉鎖などリストラを急ぐ。 今回の改革の真価は - -。

5 月 28 日午後 5 時。 ウェブを通じて日産の 2020 年 3 月期決算の記者会見が開かれた。 それまでの業績見通しで、すでに 1 千億円規模の純損失は予想されていたが、実際に明らかになった内容は、それを大幅に上回る赤字幅だった。 純損失の額は実に 6,712 億円。 日本の自動車メーカーではまれな大赤字だ。 リーマン・ショック後にトヨタ自動車が出した 4,369 億円、00 年代初めのリコール隠しの際に三菱自動車が出した4,747 億円、経営危機時のマツダが 00 年度に出した 1,552 億円 - -。 日本の自動車業界史に残る数々の赤字決算をゆうにしのぐ。

足もとの新型コロナウイルスの感染拡大の影響も確かに大きい。 しかし、日産の苦境の原因はそれだけではない。 内田誠社長は言う。 「新型車の投入を計画していなかった。 できなかったというより、そういう判断をした経営だった。」

販売現場からの悲鳴

自動車メーカーが新型車を出さない? いったいどういうことなのか。 「このままで、終われるか。」 決算会見の 10 日ほど前。JR 渋谷駅のハチ公口に掲げられた、大きな日産の広告がネット上で話題になった。 広告には、ヘッドライトをまばゆく光らせたオレンジの車体があしらわれた。 車は前方がアップになっており、全容は分からない。 ただ、6 月にも国内で発売されると噂されていた新型車「キックス」ではないかと日産ファンの中で期待が高まった。 「キックスを皮切りに国内でも新車攻勢を!」 ツイッターではそんな声が出た。

日本車の場合、4 - 5 年に 1 度フルモデルチェンジ(全面改良)され、車体のデザインやエンジンなどが大きく変わるのが一般的だ。 目新しさや性能の向上が客をひきつけ、改良後はある程度の期間、大幅に売れ行きが伸びる。 ところが最近の日産車はなかなかフルモデルチェンジされない。 特に国内では他メーカーが次々に新型車を出す中、日産の状況は目立つ。 販売現場からは「こんな状況でトヨタやホンダの販売店と戦うのは無理(関東の販売店幹部)」、「とにかく今の願いは日産に定期的に新車を出してほしい(都内の販売店の担当者)」などと悲痛な声が上がる。

一方、日産経営陣はこう説明する。 ここまでモデルチェンジが遅れたのは、「ゴーン時代」の方針が原因だった、と。 ゴーン前会長は日産・ルノー連合の世界販売台数 1 位にこだわった。 東日本大震災後の 11 年ごろから、インドやブラジル、インドネシア、ロシアなど新興国を中心に積極的な工場建設を進めた。 戦線を世界的に拡大する一方で、肝心の売る車への開発投資がおろそかになった。 車を生産する「器」を大きくしたのに、その中身は他社に比べて古さが目立つものばかりになっていた。

「コミットメント」の功罪,?p>

期待通りに販売が伸びなかった新興国もあった。 加えて、事態を深刻化させたのが、ゴーン氏が植え付けた、目標の数字達成(ゴーン氏は「コミットメント」と呼んだ)を至上とする DNA だ。 かつて経営不振だった日産をよみがえらせるために目標を課し、それを達成して企業価値を上げてきた手法だ。 しかし無理に生産規模を拡大させ、売れる車が乏しい中では、その弊害が目立ってきていた。

世界各地の販売現場は、目先の目標を達成するため、過剰な値引きや、大量に売れるが利幅が薄いレンタカーなど「フリート」と呼ばれる法人向け販売に頼るようになった。 こうした売り方が影響し、特に北米などでは日産には「安売りブランド」のイメージがついた。 そのため値引きを抑えると、今度は販売台数が落ちるという悪循環。 内田社長は「毀損したブランドを取り戻すのは非常に難しい」という。

販売が振るわなくても、各地に建てた工場の維持費はかかる。 設備費や人件費、光熱費など多額の費用が経営を圧迫する。 自動車工場は一般的に、稼働率が 80% 前後を割ると採算が取れなくなるとされる。 だが日産の工場は低稼働の工場が多い。 調査会社マークラインズの調べでは、日産が近年建設したブラジルの工場は稼働率 53%、ロシアの工場は 52% と、一般的な「採算ライン」を下回る。 さらにタイの工場は 40%、インドは 21%、インドネシアの工場に至っては 1.9% にまで落ち込んでいた。 「『赤字』をつくってしまうような工場の存在が、大きなネックになっていた。(関係者)」

この構図を変えるため、日産が 5 月 28 日に満を持して公表したのが、新たな構造改革案だ。 「この状況で利益を出すのはとうてい困難だ。」 内田社長はオンラインでの会見で、こう断言した。 余った設備を減らし、世界の工場の生産能力を 2 割削減するのが骨子だ。

生産能力「2 割減」は本当か

インドネシアの工場は閉鎖し、東南アジアでの生産はタイに集約する。 インドネシアやフィリピンでは、連合を組む三菱自動車に日産車をつくってもらう。 スペインのバルセロナ工場も今年 12 月にも閉鎖する方向だ。 ただ、インドネシアやスペインの工場は以前から閉鎖の必要性が指摘されていた。 この 2 拠点を除くと生産の縮小を言及した拠点はない。 市場では、踏み込み不足の改革案との見方が目立つ。 生産能力の 2 割減についても、その数字にはわかりにくさがつきまとう。 日産は「18 年度時点で世界で 720 万台分あった生産能力を、23 年度までに通常シフトで 540 万台にする」という。 180 万台の大幅カットにみえるが、そうではない。

720 万台は、工場を 3 交代でフル稼働させた生産能力だ。 一方、削減後の 540 万台は 2 交代で稼働させた場合の数字だという。同じ 3 交代での生産能力を比較すると、現状の720 万台に対し、削減後は 600 万台となる。 正確には 720 万台から 540 万台に落とすとはいえない。 日産は昨年示した経営改革案で、22 年度までに 660 万台に生産能力を減らすとすでに表明していた。 今回示した削減案は、それに実質 60 万台を加えただけにとどまる。

内田社長は「マーケットの選択と集中については、規模適正化や撤退を含め、今後も段階的に進める」とし、今後も追加の削減策を打ち出す可能性も示唆した。 多くの従業員を雇用する自動車工場の閉鎖への反発は大きい。 すでに閉鎖検討を表明したスペイン工場では従業員が激しい抗議活動を展開している。 日産は 1983 年にスペインで生産を始め、現在同工場で 3 千人の従業員を抱える。 今後のスペイン政府との折衝も難題だ。

異例の新車投入予告

今回の決算会見では、明るい光が見える内容もあった。 「6 月は米国で(中型 SUV の)『ローグ』を一新し、日本では(小型 SUV の)『キックス』がデビューする。 7 月には(電気自動車 〈EV〉 の SUV)『アリア』を発表する。」 内田社長は新車の投入計画を細かく述べた。 今後 1 年半の間に少なくとも 12 の新型車を売り出すという。 車種数は 23 年度までに 2 割削り、中小型車や EV、スポーツカーに経営資源を集中しつつ、新型車も積極的に投入する姿勢を示した。

会見終了後には動画も公開。 続々と登場する車のシルエットに合わせて、アルファベットが流れた。 A、A、F、K、M、N、N、P、Q、R、T、Z …。 その数は 12 台。 「今後出される新型車ではないか」と、早速ネット上のカーマニアの間で話題になった。 自動車会社は足元で売っている車の売れ行きが落ちるのをおそれ、新型車の詳細な投入計画を公表することはあまりない。 今回の踏み込んだパフォーマンスは、コストカットだけでなく、収入増の計画をしっかり示したいという狙いもあるようだ。

変わろうとする日産だが、まだ周囲の視線は厳しい。 近年の日産は、中期経営計画や業績予想の下方修正が続き、「計画をいまいち信頼できない(アナリスト)」という声も出る。 取引先の部品会社からの信頼も揺らぐ。 昨年、北米市場では新型車 2 車種を投入したが、関係者によるとメキシコ工場での生産開始が当初計画より 2 - 3 カ月も遅れ、取引先の部品メーカーは対応に追われた。「こちらは日産の計画を信じて半年、1 年前から設備や人員を増やしていた。 急に立ち上げが遅れると、それだけ無駄にお金を垂れ流してしまう。(取引先の関係者)」

今後新型車の投入を増やせば、販売が上向くきっかけにはなる。 傷んだブランドを立て直す機会ととらえ、販売の正常化も進められれば、再生の道のりも現実味を増してくる。 コロナ問題の逆風も吹く中、ゴーン前会長の負の遺産を整理し、一昨年からの一連の逮捕問題で失った時間を取り返せるか。 内田体制の手腕が今後問われる。(友田雄大、神沢和敬、asahi = 6-8-20)


日産、6 千億円超の赤字に転落 過剰値引きで悪循環

日産自動車が 28 日発表した 2020 年 3 月期決算は、最終的なもうけを示す純損益が 6,712 億円の巨額の赤字となった。 最終赤字は、リーマン・ショックがあった 09 年 3 月期(2,337 億円の赤字)以来 11 年ぶり。 カルロス・ゴーン前会長が大なたを振るい、多額のリストラ費用を計上した 00 年 3 月期の 6,843 億円に次ぐ規模となった。 もとからの販売不振に、新型コロナウイルスの感染拡大が拍車をかけた。 さらにゴーン時代の拡大路線の転換を加速するため、工場閉鎖といったリストラ費 6,030 億円を特別損失として計上したことで赤字が拡大した。 前年の純損益は 3,191 億円の黒字だった。

追加のリストラ策は、同時に公表した 23 年度までの中期経営計画に盛り込んだ。 世界の年間生産能力は、昨年 7 月に 18 年度の 720 万台から 660 万台に減らすとしていたものを、さらに 120 万台削って 540 万台にする。 スペインやインドネシアの完成車工場を閉鎖し、北米工場では生産車種の集約を進める。 日産は近年、ゴーン前会長が新興国を中心に世界的に生産力増強を進める一方、モデルチェンジ向けの投資を控えて古い車種が増えた。 それを過剰に値引きして売ることで、ブランド価値も下がる悪循環に陥っている。

内田誠社長は 28 日のオンライン会見で、生産能力の削減について「選択と集中を進める。 苦渋の決断だが、一切の妥協なく断行する。」と話した。 国内工場をどうするかについては計画に盛り込まず、具体的な説明もなかった。 人員の削減についても、「リストラがメインではない。 人員削減の視点では公表を控える。」とした。 財務体質について「健全な水準を維持している」とし、当面の資金繰りに問題はないと強調した。

20 年 3 月期の売上高は、前年比 14.6% 減の 9 兆 8,789 億円で、7 年ぶりに 10 兆円の大台を割った。 本業のもうけを示す営業損益は 405 億円の赤字(前年は 3,182 億円の黒字)だった。 21 年 3 月期の業績予想は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が不透明として「未定」とした。 (友田雄大、asahi = 5-28-20)


日産、最終赤字に転落 販売減や貸倒引当金で 20 年 3 月期

日産自動車は 28 日、2020 年 3 月期の連結最終損益が従来予想から約 1.500 億 - 1,600 億円下振れし、赤字になったもようだと発表した。 従来予想は前の期比 80% 減の 650 億円だった。 最終赤字は 09 年 3 月期以来 11 年ぶり。 新型コロナウイルスの感染拡大で世界各国で外出規制などが広がり、販売が落ち込んだ。

前期の世界販売台数は 11% 減の 493 万台。 新型コロナの影響が広がり予想を 12 万台下回った。 こうした新車や部品の販売減少が利益を 900 億円程度押し下げた。 景況感が悪くなるなか、米国などで販売金融の貸倒引当金も追加で 300 億円程度計上。 三菱自動車など持ち分法適用会社の収益悪化も 300 億円程度の減益要因となった。 これらを加味すると赤字は 850 億 - 950 億円となったようだ。 同社は昨年 7 月、23 年 3 月期までの中期経営計画を見直し、世界で従業員を 1 万 2,500 人削減するほか、生産能力を 1 割下げ 660 万台とする構造改革を発表した。

業績悪化を受けて今年 5 月に中計を再び修正する。 一段の合理化を検討しており、前期決算ではこれらに関連する引当金を追加計上する見通し。 赤字額はさらに膨らむ可能性が高い。 決算は 5 月 28 日の予定だ。 前の期は 3,191 億円の最終黒字だったが、業績が急速に悪化する。 新型コロナでは販売に加え、生産も影響を受けている。 日産は 3 月半ばから英国やスペインなど欧州で工場の稼働が止まっているほか、同月下旬からは主力拠点の米国やメキシコも生産を休止している。

コロナ影響を除いても本業は厳しい。 主力市場の北米ではフルモデルチェンジまでの期間が長期化し、販売面で苦戦を強いられている。 てこ入れに向け値引き原資のインセンティブ(販売奨励金)を積み増していることも逆風だ。 電動化や自動運転など「CASE」への先行投資が増えていることも利益を圧迫する。 21 年 3 月期は業績が厳しさを増しそうだ。 同社はコロナ影響で 4 月以降も日欧米などの工場が止まっている。 中国の合弁会社の利益は 3 カ月遅れで持ち分法投資損益として計上しており、中国での操業を停止した 20 年 1 - 3 月期の損益は本体の 4 - 6 月期決算に響く。 (nikkei = 4-28-20)


日産がゴーン被告出国を批判 初の声明、会見前に牽制か

日産自動車のカルロス・ゴーン前会長 (65) がレバノンに不法出国したことが発覚して 1 週間。 日産が不法出国について初めて声明を出し、前会長を厳しく批判した。 前会長は 8 日、2018 年 11月の逮捕後初めてとなる記者会見を開く。 逃亡を正当化し、改めて無実を訴えるとみられる前会長を牽制する狙いがありそうだ。

日産は声明で、前会長の出国を「保釈条件に違反し、裁判所の出国許可を得ないまま逃亡したことは、日本の司法制度を無視した行為で極めて遺憾」と批判。 前会長の不正行為で被った損害の回復に向けて損害賠償を求めるなどの方針は「逃亡によって何ら影響を受けるものではない」と強調した。 日産は約 1 年に及んだ社内調査で、役員報酬の虚偽記載や会社資金の私的流用など、ゴーン前会長とグレッグ・ケリー前代表取締役 = 金融商品取引法違反の罪で起訴 = の総額約 350 億円にのぼる不正を認定した。 日産は声明で「不正規模は多岐にわたり、極めて甚大なもの」だと指摘。 前会長の全役職を解任したのは「経営者として不適格であるとの判断による」と強調した。

米メディアによると、ゴーン前会長は会見で複数の人物の実名を挙げ、事件は「クーデターだ」と主張する可能性があり、日産は前会長の「発信力」に警戒を強めている。 日本の司法制度を批判して出国を正当化するともみられるが、日産幹部は「ゴーン氏の行為の善しあしと日本の司法制度の問題点は別の話だ」と話す。

経済界からも 7 日、前会長の出国を批判する声が出た。 日本商工会議所の三村明夫会頭は経済 3 団体の新年の会見で、「悪いものは悪い。 罪を償わなければいけないのは洋の東西を問わない」と言及。 「日本の司法制度を批判する前に、何をしたのか、どういうことだったのかを明らかにすることが必要だ」と述べた。 日産の元 COO (最高執行責任者)の志賀俊之氏(官民ファンドの INCJ 会長)は「仮に不満があっても、その国の法律を尊重してビジネスをするというのがゴーン氏の持論だった。 日本から逃げるというのは、彼の持論と違って残念だ。」と話した。 (asahi = 1-7-20)

日産自動車が 7 日発表した声明(全文)は次の通り。

元会長カルロス・ゴーンの出国について(ステートメント)

検察当局の声明にもある通り、当社の元会長カルロス・ゴーン氏が、裁判所の定めた保釈条件に違反し、裁判所の出国許可を得ないままレバノン共和国へと逃亡したことは、日本の司法制度を無視した行為であり、極めて遺憾です。

これまで当社は、適正かつ公正に内部調査を実施し、ゴーン氏による数々の不正行為を認め、経営者として不適格であるとの判断により、社内でのすべての役職を解任いたしました。 同氏による不正規模は、報酬虚偽記載や会社資産の私的流用など多岐にわたり、極めて甚大なものです。 また、これまで発表されている通り、米国 SEC も同氏の不正を認定しており、フランス国内においても同氏を被疑者とする捜査が開始されています。 当社としては、引き続き司法及び規制当局に協力し、適切に対応してまいります。

当社の社内調査において判明したゴーン氏の不正行為について、同氏に対して責任を追及するという当社の基本的な方針は、今回の逃亡によって何ら影響を受けるものではありません。 当社としては、同氏らの不正行為により被った損害の回復に向けた財産の保全や損害賠償請求など、適切な法的手続きを継続して行っていく方針です。


日産に課徴金 24 億円余命じるよう証券監視委が金融庁に勧告へ - 報道

日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告による役員報酬不記載事件を巡り、証券取引等監視委員会は、日産に対して 24 億円余りの課徴金を命じるよう金融庁に勧告する方針を固めたと NHK が 8 日に報じた。

監視委は昨年 12 月、ゴーン氏とグレッグ・ケリー元代表取締役、法人としての日産を金商法違反(有報の虚偽記載)の疑いで東京地検へ告発。 東京地検は日産と両氏を起訴している。 一方、ゴーン氏の弁護団は今年 10 月に東京地方裁判所に提出した書面で、同氏への報酬額は有報で開示されており虚偽の記載はないと述べた。 NHK によると、監視委の行政処分の対象になるのは、課徴金の時効にかからない 2017 年度までの 4 年間で、本来の課徴金の額は約 40 億円に上るが、関係者によれば、日産は行政処分についての監視委の検査が始まる前に違反を自主的に申告し、課徴金の減額を申請していたという。 (稲島剛史、谷口崇子、Bloomberg = 12-8-19)


日産、新 CEO に現東風汽車総裁の内田誠氏を任命
現三菱自動車 COO のアシュワニ・グプタ氏が日産の COO に
遅くとも 2020 年 1 月 1 日付けの発令を目指す

日産自動車は 10 月 8 日、経営新体制に関する取締役会を開催。 現専務執行役員で東風汽車有限公司の総裁である内田誠氏を代表執行役社長兼最高経営責任者 (CEO) に任命することを決議した。 これに合わせ、現三菱自動車工業最高執行責任者 (COO) のアシュワニ・グプタ氏を代表執行役兼最高執行責任者 (COO) に任命すること、現専務執行役員である関潤氏を執行役副 COO に任命してグプタ氏にレポートすることなども決議。 この人事異動は、遅くとも 2020 年 1 月 1 日付けの発令を目指すとしている。

今回の決定にあたり、取締役会議長である木村康氏は以下のようにコメントしている。

「取締役会として、内田氏が今後の日産事業を前進させるのにふさわしいリーダーであると判断しました。 選考にあたっては、6 月に移行した指名委員会等設置会社の新たなガバナンス体制のもと、指名委員会のリードによって、徹底したプロセスの下、入念に候補者の審査を行ないました。 内田氏の強いリーダーシップによる新体制のもと、早期業績回復と新しい日産の再建に全社一丸となって取り組んでいただきたい。 アシュワニ・グプタ氏および関潤氏の両名については、それぞれが培った経験をフルに発揮し、新 CEO をサポートいただきたい。」 (佐久間秀、CarWatch = 10-8-19)


日産、営業利益 98.5% の大幅減 4 - 6 月期決算

日産自動車が 25 日発表した 2019 年 4 - 6 月期決算は、売上高が前年同期比 12.7% 減の 2 兆 3,724 億円、本業のもうけを示す営業利益が 98.5% 減の 16 億円と大幅減益となった。 4 - 6 月期として減収減益は 2 年連続。 売上高営業利益率は 0.1% (前年同期は 4.0%)まで落ち込んだ。 純利益も 94.5% 減の 63 億円だった。 日産は 6 月下旬の株主総会を経て新体制に移行したが、移行後初めての決算は厳しい結果になった。

世界販売台数は 6.0% 減の 123 万 1 千台。 主力の米国販売が 3.7% 減と落ち込んだことが響いた。 米国では値引きの原資となる販売奨励金を抑えて、収益改善に取り組んでいるが、その分、客足が遠のいている。 自動運転技術などの研究開発費の増加に加え、円高の影響なども収益を圧迫した。

急速に悪化した業績の立て直しに向け、生産能力や人員を減らすなどのコスト削減策もあわせて発表した。 世界の生産能力を 18 年度から 60 万台削減して 22 年度までに 660 万台にする。 世界の 14 拠点で生産ラインの縮小などを進め(実施済みの分を含む)、稼働率を 69% から 86% に引き上げる。 これに伴い、世界の従業員の約 10% にあたる 1 万 2,500 人以上の人員削減にも踏み切る。 生産モデルの数も 18 年度から 1 割以上減らすとしている。 20 年 3 月期の業績予想は据え置いた。 売上高は前年同期比 2.4% 減の 11 兆 3 千億円、営業利益は 27.7% 減の 2,300 億円、純利益は 46.7% 減の 1,700 億円を見込む。 (asahi = 7-25-19)


日産「誠に遺憾」、ルノーの棄権方針に不快感

日産自動車が今月下旬の株主総会にはかる、指名委員会等設置会社への移行のための定款変更の議案に、大株主の仏ルノーが棄権の意向を示した問題で、日産の西川(さいかわ)広人社長兼 CEO (最高経営責任者)は 10 日、「ルノーの意向はコーポレートガバナンス(企業統治)強化の動きに完全に逆行する。 誠に遺憾」とコメントを出した。 ルノーの事実上の反対表明に対し、不快感を示した形だ。

西川氏はコメントで「取締役会にはルノー指名による代表者も加わり、議論を尽くし、取締役全員が賛同していたにもかかわらず、ルノーからこのような意向が示されたことは大変な驚き」とした。 日産は、カルロス・ゴーン前会長による不正を長年許してきた企業体質を改革しようと、社外取締役の権限を強めて経営の監督と執行の分離を進めるため、指名委員会等設置会社への移行をめざしている。

移行は先月、ルノー出身者も入った日産の取締役会で決議している。 移行に必要な定款の変更は今月 25 日の定時株主総会にはかる予定だ。 日産関係者によると、ルノーが議案に棄権する旨の書簡は、ルノーのジャンドミニク・スナール会長から西川氏に 7 日付で送られてきた。 定款変更には出席株主の 3 分の 2 以上の賛成が必要。 棄権しても出席株主にカウントされるため、日産株の 43% を握るルノーの棄権は、事実上の反対表明となる。

日産は「いずれにしても当社は、すべての株主利益のために、ガバナンス強化のための指名委員会等設置会社への移行の必要性について、理解が得られるよう最善の努力をしていく」としている。 (asahi = 6-10-19)


不振の日産、純利益 57% 減 ゴーン前会長の戦略頓挫

日産自動車が 14 日発表した 2019 年 3 月期決算は、売上高が前年比 3.2% 減の 11 兆 5,742 億円、本業のもうけを示す営業利益は 44.6% 減の 3,182 億円、純利益は 57.3% 減の 3,191 億円だった。 カルロス・ゴーン前会長が進めた拡販戦略が行きづまり、世界販売の 3 割を占める米国事業が低迷したことが響いて大幅な減益を強いられた。

同日発表した 20 年 3 月期の業績予想は、売上高が前年比 2.4% 減の 11 兆 3 千億円、本業のもうけを示す営業利益は 27.7% 減の 2,300 億円、純利益は 46.7% 減の 1,700 億円。 収益の回復が遅れ、売上高は 2 年連続、営業利益は 4 年連続の減少となる見込みだ。 日産はリーマン・ショックの影響で 09 年 3 月期に 1,379 億円の営業赤字に転落したが、営業利益の水準は翌 10 年 3 月期以降で最も低い水準に落ち込む。 業績不振から抜け出せない状況が続きそうだ。

19 年 3 月期は 1 株あたり年間 57 円の配当を出すが、20 年 3 月期は 40 円にする予定も発表した。 減配は 10 年ぶり。 日産は上場企業有数の高配当銘柄として知られるが、業績が低迷するなか、中長期的な成長を実現するには先端分野への研究開発などに資金を振り向ける必要があると判断し、株主還元を縮小する。

23 年 3 月期まで 6 年間の中期経営計画で掲げた目標も下方修正した。 23 年 3 月期の売上高を 17 年 3 月期比 3.7 兆円(約 30%)増の 16.5 兆円、営業利益率を 8% に引き上げる目標を掲げていたが、それぞれ 14 兆 5 千億円、6% 台に引き下げた。 ただ、20 年 3 月期の営業利益率は 2.0% に落ち込む見通しで、この目標も高いハードルとなる。 (友田雄大、asahi = 5-14-19)


日産、2 度目の業績下方修正 3 月期、ゴーン事件も響く

日産自動車は 24 日、2019 年 3 月期の業績予想を下方修正し、営業利益が前回 2 月時点の予想を 1,320 億円 (29.3%) 下回る 3,180 億円、純利益は 910 億円 (22.2%) 低い 3,190 億円になる見通しだと発表した。 19 年 3 月期の業績予想の下方修正は今年 2 月に続いて 2 度目。 売上高の予想も前回を 260 億円 (0.2%) 下回る 11 兆 5,740 億円に引き下げた。 前期実績に比べると、営業利益は約 45% 減、純利益は約 57% 減と大幅な減益となる。

主力の米国市場の販売不振に加え、無段変速機 (CVT) に不具合が見つかった米国の一部車種の保証期間延長に伴うコスト増や、前会長カルロス・ゴーン被告が会社法違反(特別背任)などの罪で逮捕・起訴されたことによる販売面への悪影響が出たという。 世界販売の 3 割を占める米国市場では、値引きの原資となる販売奨励金を増やした結果、販売台数が増えても利益が出にくい構造に陥り、奨励金を減らすと販売台数が落ち込む悪循環に陥っている。 ゴーン前会長が進めた拡販戦略が裏目に出ており、立て直しに苦しんでいる。 19 年 3 月期決算の発表は 5 月 14 日を予定している。 (上地兼太郎、asahi = 4-24-19)