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東京・新宿区が民泊 4 事業者に都内初の「廃止命令」、違反繰り返す 東京都新宿区は 5 日、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づき、4 事業者 11 施設に「廃止命令」を出したと発表した。 命令は 4 日付。 同区によると、廃止命令が出されたのは都内で初めてだという。 区によると、4事業者は宿泊日数などの報告義務を怠ったとして、9 月に 30 日間の業務停止命令を受けていた。 このうち 1 事業者は停止命令の期間中にも客を宿泊させていた。 残りの 3 事業者は、停止命令を受けた後も報告義務違反を繰り返したという。 廃止命令を受けた事業者は、今後、3 年間は民泊事業ができなくなる。 4 事業者は、この以前にも区から注意や業務改善命令を受けていた。 繰り返し指導したにもかかわらず、改善が見られないため、区が初の廃止命令に踏み切った。 区内では 2020 年度に 1,528 件だった民泊施設が、今年 7 月には 3,272 件と倍増。 全国の民泊施設の約 1 割が集中している。 昨年度は、ゴミ出しや騒音、たばこの煙の流入などの苦情が計 561 件に上り、区は違反を繰り返す事業者への取り締まりを強化する方針を打ち出している。 (寺沢知海、asahi = 12-5-25) 山手線徒歩圏の民泊に家宅捜索 「違法営業ならブルーオーシャン」 東京都荒川区にある民泊と、新宿区の運営会社が 28 日、住宅宿泊事業法(通称・民泊新法)に違反した疑いで警視庁の家宅捜索を受けた。 JR 山手線の西日暮里駅から徒歩 6 分の住宅街。 28 日午前 10 時 25 分ごろ、段ボールを持った警視庁保安課の捜査員ら 4 人が 2 棟並んだ住宅に入っていった。 登記簿によると、どちらも 2019 年築の木造 3 階建てで、延べ床面積は約 72 平米。 所有者は、同じ場所に本店を置く法人と記されていた。 警視庁が家宅捜索に入った新宿区の民泊運営会社は、この法人から建物を借り、民泊として運営していたとみられる。 民泊のホームページには、予約サイトで受け取ったパスワードを使って利用する方法などが日本語、英語、中国語で記されていた。 大手民泊予約サイトでは、1 泊 4 万円ほどで募集されていた。 「知らなかったは成り立たない」 荒川区の業務改善命令を無視か 捜査関係者によると、この民泊は、2024 年、荒川区の条例に違反して平日に営業し、区にうその宿泊実績を報告していた疑いがあるという。 警視庁はこうした行為が民泊新法に違反するとみている。 単純計算で、仮に週 7 日すべて営業した場合の売り上げは 1 部屋あたり 28 万円となり、ルールを守って土日だけ営業した場合の 3.5 倍になる。 民泊運営のルール違反に荒川区は目を光らせてきた。 民泊新法による民泊運営についてまとめた「住宅宿泊事業のてびき」には、「違反となる行為においては知らなかったという抗弁は成り立ちません」と強い言葉が記されている。 だが、捜査関係者によると、荒川区が平日の営業や虚偽報告の疑いを指摘し、同法基づく業務改善をこの民泊側に命じたが、必要な措置はとられなかったという。 ルール守らぬ業者の存在 「たまったものじゃない」 警視庁には 24 年ごろから「騒ぎ声がする」や「ゴミの不法投棄がある」との苦情が寄せられていた。 荒川区の民泊は家宅捜索を受けたものも含めて 26 件ある。 民泊を運営する人にとっては、どんな地域なのか。 都内などで複数の民泊を運営する会社の担当者は「ルールが厳しく、営業の難易度が高い」と説明する。 区独自の条例により、平日営業できない上、おおむね 1 キロ以内の営業所などに常駐することも求められているためだ。 ただ、外国人観光客でにぎわう浅草や上野から近く、成田空港からのアクセスも良い立地でニーズがある。 仮に違法状態で運営する場合、一般論として「競合がいないブルーオーシャンの市場。 もうけやすい状態なのではないか。」と話した。 民泊をめぐっては、許可や届け出なく営業する「ヤミ民泊」の存在や、騒音などに関する住民からの苦情を想定して、自治体が厳しい「上乗せ条例」を制度開始時点から設けていた。 荒川区もそんな自治体の一つだった。 この担当者は、「一部のルールを守らない事業者のせいで民泊全体に対する風当たりや規制が強まっている。 優良事業者からすればたまったものじゃない。」と話した。 (松田果穂、太田原奈都乃、山本知佳、asahi =11-28-25) 大阪市の「特区民泊」、新規の受け付け停止へ 年内にも国が許可 民泊の開業規制を緩和する「特区民泊」について、大阪市は 17 日、東京で開かれた国の国家戦略特別区域会議で、民泊事業者からの新規申請の受け付けを来年 5 月 29 日で停止すると提案した。 年内にも国から正式に認められる見通し。 市内で宿泊者による騒音やごみ出しなどをめぐり、近隣住民らの苦情が相次いでおり、市は受け付け停止の方針を発表していた。 来年 5 月 30 日以降は市内全域で、特区民泊を新たに開業することができなくなる。 また、すでに開業している特区民泊の居室を追加したり、広くしたりすることも認められない。 横山英幸市長は会議後、「今後、課題解決に向けて(特区民泊の)監視指導体制を強化するとともに必要な制度改正を実現していく」とコメントを出した。 この日の会議では、大阪府内の寝屋川市と八尾市も同時期に受け付けを停止することを表明。 大阪府が所管するほかの 29 市町村も足並みをそろえた。 一方、受け付け停止前に申請が認められた特区民泊は今まで通り営業できる。 半年後の終了を前に「駆け込み」とみられる申請が窓口に殺到しており、大阪市は手続きの事前予約対応をとりやめている。 特区民泊は増加するインバウンド(訪日外国人客)の受け皿として導入され、大阪市も 2016 年から申請の受け付けを開始した。住宅宿泊事業法(民泊新法)では年間の宿泊日数は 180 日を上限としているが、特区民泊ではそうした上限はない。 旅館業法の特例が受けられ、ホテルなどに比べて開業しやすい。 そのため大阪市内で急増しており、9 月末時点で 7,068 施設あり、全国の 9 割超が集中している。 市が 24 年度に受け付けた特区民泊に関する苦情は 399 件で、3 年前の 4.5 倍にのぼっている。 (村井隼人、asahi = 11-17-25) ◇ ◇ ◇ 「特区民泊」ルール明確化へ大阪市が初会合 新規受付停止も視野 国家戦略特別区域法によって開業規制などが緩和されている「特区民泊」について、大阪市は 25 日、課題を協議する初会合を開いた。 特区民泊の施設数が全国で突出する大阪市では、近隣住民らとのトラブルも頻発しており、実態把握や法令の問題点の洗い出しが狙い。 事業者による申請の受け付け停止も視野に検討を進める。 市はインバウンド(訪日外国人客)の急増などによるホテル不足を背景に、2016 年から国家戦略特区制度による特区民泊を推進してきた。 通常の民泊の年間営業日数は 180 日以内だが、特区民泊は日数制限なしの営業が可能。 市内には今年 4 月末時点で 6,194 施設(1 万 7,016 室)があり、全国の 9 割超の施設が集中している。 一方で、宿泊者によるキャリーケースを引く騒音やゴミ出しのマナー違反など近隣住民とのトラブル事例も相次いでいる。 また、市内では 6 月、市内の 200 室以上の新築マンションが丸ごと特区民泊として認定されたが、周辺住民による反対運動も起きていた。 ただ市によると、現行法には民泊を運営する事業者が、こうした苦情に対応する義務は定められていないという。 こうした背景から、大阪府の吉村洋文知事は今月の記者会見で「新規の(事業申請)募集は停止すべきだ」と述べていた。 市は今後、国とも協議しながら、法令の改正などを通じて苦情対応や事業者を処分するルールの明確化をめざす方針。 9 月の会合で具体的な対応策を示す見通しだ。 横山英幸市長は記者団に、国との協議で具体策がまとまらない場合には「新規受け入れができるかどうかの議論になる」として、事業受け付けのとりやめも検討する考えを示した。 (村井隼人、asahi = 7-25-25) ◇ ◇ ◇ 新築マンション 200 室、全て民泊 開業も運営も簡単「ほぼホテル」 部屋数は 200 室以上、14 階建て新築マンションを丸ごと民泊に - -。 大型ホテルのような民泊施設が、大阪市の認定を受けて今月 30 日に開業する。 これほどの規模は「想定していなかった」と市の担当者。 インバウンド(訪日外国人客)需要の拡大とともに、民泊が大規模化した背景を探った。 レストランに温泉スパ、BBQ 施設も ユニバーサル・スタジオ・ジャパン (USJ) にほど近い大阪市のベイエリア。 マンションが立ち並ぶ一角に、その建物はある。 最上階にレストランや温泉スパ、屋上にバーベキュー施設などを備える。 事業者は、「民泊マンション」とうたう。 隣のマンションの住人男性 (43) は、「規模も機能も、ほぼホテルですよ。」 「特区民泊」制度を活用した施設として、市から 6 月 27 日に認定を受けた。 特区民泊とは、国家戦略特区に指定された区域に限って、宿泊施設の開業規制などを緩和する制度。 東京都大田区や新潟市、北九州市なども指定区域だが、大阪市は観光資源が豊富なうえ、市内の多くが指定区域となっており、9 割超の特区民泊施設が集中している。 大阪市によると、今年 4 月末時点で 6,194 施設(1 万 7,016 室)。 今回の「民泊マンション」は、市内最大という。 年間 19 万人が訪れる想定 「どの特区でも起こる」 事業者によると、もともとは、賃貸マンションの計画だった。 「全室を民泊にする。」 今年 2 月に周辺住民へ伝えられ、その後にあった住民説明会で、年間の利用者想定が 19 万人と明らかにされた。 単純計算で 1 日 500 人余りが訪れることになる。 周辺住民らは住環境の悪化への懸念から、市に認定しないよう求める約 2 万 1 千筆の署名(オンライン署名含む)を提出した。 住民らは「全国の特区どこでも同じような事例が起こる可能性がある」と懸念していた。 市は認定したが、横山英幸市長名での要請書を事業者側に出した。 ▽ 騒音や交通渋滞をできる限り抑えるよう努めること、▽ 地域住民と定期的な協議の場を設け、協定書を締結すること、などを求めた。 事業者は、朝日新聞の取材に「当初、民泊施設にする予定はなかった」としつつ、方針転換の理由は「経営判断に関する事項を含むので、回答を控える。」 住民からの懸念の声を踏まえ、「トラブル対応や交通整理などに協力する。 近隣住民の意見を最も大切だと考え、必要な対応をとる。」とした。 営業日数に上限なし 「民泊にした方が …」 ホテルのような民泊が登場した背景には、特区民泊制度の特性がある。 一般的な民泊には、年 180 日までという営業日数の制限があるが、特区民泊に上限はない。 室数にも制限はなく、大規模な宿泊施設を通年で営業することができる。 2024 年に日本を訪れた外国人は前年比 47.1% 増の約 3,687 万人で、過去最多だった。 大阪府も 24 年は推計 1,464 人と、同じく最多を更新した。 民泊に詳しい阪南大の松村嘉久教授(観光地理学)は、「賃貸よりも民泊にした方が利回りが良いし、特区民泊は、ホテルよりも開業が簡単だ。 インバウンドによる追い風もある」と話す。 ホテルや旅館の場合、建築計画などについて事前に自治体に届け出る必要があるが、特区民泊は不要だ。 域住民への説明会を開く必要があるが、「合意」までは求められていない。 トラブル対応のため、住宅宿泊事業法(民泊新法)は、事業者か管理人が駆けつけられる態勢を取るよう求めているが、人数の定めはない。 一定のサービスが求められるホテルでは、管理人らフロントの人数も清掃スタッフも充実させる傾向にある。 ただ、松村教授は「民泊の場合は清掃頻度が低く、フロントも基本的に置かない施設が多い。だから運営コストが低い」と話す。 「摩擦は当然、制度設計を考え直す時期」 キャリーケースを引くときのガラガラ音、ポイ捨て、周辺道路の混雑 …。 特区民泊をめぐる苦情は社会問題化しており、大阪市によると、24 年度は 399 件。 前年度に比べ 2.3 倍、前々年度の 3.6 倍に増えた。 松村教授は、現行制度の中で住民の生活を守りながら民泊と共存するためとして、「行政が住民と民泊の間に入って対応できるような体制を構築することが必要ではないか。」 そのうえで、「住む地域とにぎわい創出の地域を分けなければ、摩擦が起きるのは当然。 制度設計を考え直す時期に来ていると思う。」と指摘した。 (武井風花、河原田慎一、asahi = 6-29-25) |