民泊投資大手が事業停止 実績偽り勧誘、実体ない物件も

マンションの部屋ごとに投資客を募って民泊事業を代行していた、大阪最大手の民泊投資会社「ハンドグローイング(大阪市淀川区)」が経営難に陥り、今年に入って事業停止した。 新型コロナウイルス禍の 2 - 5 月に次々と施設を廃止。 ハンド社は取材に、昨年まで宿泊実績を水増ししながら、新たな投資を募っていたことを認めた。

ハンド社は 2011 年設立の不動産系ベンチャー。 信用調査会社によると、16 年までは賃貸交渉など不動産関連のコンサルタント業を軸にしたが、大阪市が 16 年 10 月から特区民泊事業者の受け付けを始めたのを機に、民泊の運営代行サービスを本格的に始めて急成長。 18 年 10 月期の売上高は 16 年同期の 26 倍超の約 15 億 4 千万円に上った。 25 年の大阪・関西万博誘致のオフィシャルサポーターで、投資客向けセミナーでアピール材料にしていた。

辻武弘社長は 5 月、朝日新聞の取材に応じ、2 月末での負債総額は約 40 億円で、日韓関係の悪化で昨夏から韓国の旅行会社を通じた予約が入らなくなり、新型コロナが決定打になったとした。 大阪市保健所などによると、国家戦略特区制度に基づく「特区民泊」としてハンド社が認定を受けた同市内の施設は 17 年度に 13、18 年度に 31、19 年度に 33 の計 77 カ所、900 室(今年 5 月までにすべて廃止)で、業者ごとではいずれも大阪府内最多だった。 辻社長によると、約 600 の個人・法人と契約し、認定された部屋のうち約 800 室で民泊を代行運営していた。

ハンド社は投資客向けに、運営資金を出した部屋の予約状況をチェックできる専用サイトを公開していた。 4 月に投資客に送った調査報告書では、架空予約について「多数存在した」と認定。 投資客から代金を受け取りながら、家主から引き渡しされていなかった物件も多数存在し、家主と契約できていない物件も存在したとしていた。 ハンド社の資料によると、投資客は、家主に払う礼金や民泊の申請費、家具購入費、予約サイトへの登録費などの初期費用を負担。 民泊営業後は毎月の宿泊代から、家賃や民泊運営の代行手数料などを引いた金額を得る仕組みだった。 投資客の多くは仲介業者からの紹介だったという。

同社関係者は「仲介業者が『予約が埋まったことにしないと投資客に売れない』と言うので、求められて予約があったことにした。 それで売れたので止まらなくなった。」とした。 辻社長は賃貸契約前の物件に投資させたことについて、「エージェント(仲介業者)が先行して振り込み依頼を行った場合がほとんど。 悪意をもって行ったことなどありません。」と文書で追加説明した。

同社はおおむね年利十数% - 20% 超で、初期投資分を 5 年ほどで回収できる見通しと説明していたが、昨年 9 月から利回り支払いが滞り、12 月から自転車操業の状態になったという。 今年 1 月には投資客に民泊事業からの撤退に伴い契約解除を求めた。 東京、大阪、名古屋、福岡などで 3 月以降、投資客を集めて説明会を開き、辻社長らが事業停止に陥ったことを謝罪した。 だまされたとして、すでに損害賠償を求めて提訴した投資客もいる。 (長谷川健、吉村治彦、市原研吾、asahi = 9-15-20)



エアビーが五輪スポンサー加入 仏ホテル業界が猛反発

国際オリンピック委員会 (IOC) の最上位 (TOP) スポンサーに、米民泊情報サイト大手「Airbnb (エアビーアンドビー)」が新たに加わったことが、2024 年夏季五輪の開催地であるパリに波紋を広げている。 AP 通信などによると、猛反発したフランスのホテル業界団体が、パリ五輪の組織委員会との協力関係を凍結。 「不公平な競争にならないか」などと説明を求めている。

エアビーの TOP スポンサー入りは 18 日にロンドンで発表された。 会見には IOC のバッハ会長も駆けつけ、「五輪組織委が宿泊施設にかけるコストを削減できる」と評価した。 民泊は主に住宅の空き部屋を宿泊先として旅行者に貸し出す仕組みで、エアビーには世界で 700 万件以上が登録されている。 しかし、これにフランスのホテル業界が猛反発。 AP 通信の取材に答えた経営者団体の広報は、「エアビーも我々と同じ安全基準を求められるのか。 24 時間体制の受付や朝食の提供を促されるのか。」と疑問を投げかけ、「組織委の明確な説明を待っている」と話した。 既存のホテルだけが厳しい条件を課せられれば、民泊との競争で不利になる恐れがあるからだ。

エアビーの五輪スポンサー入りを巡っては、パリのイダルゴ市長が先週、IOC に対し「地元の商圏を乱し、従来のホテル産業に厳しい競争を強いている」と問題視する書簡を送っていたことも発覚。 イダルゴ氏は、民泊向け物件への投資が住宅価格を釣り上げ、「パリ市民、特に中間層を犠牲にしている」と批判していた。 (ロンドン = 和気真也、asahi = 22-22-19)



日本で民泊した中国人女子大生、家主は酷い使用状況を晒す

マナー違反に批判殺到

観光で日本を旅行した 3 人グループの中国人女子大生が 9 月上旬、5 泊 6 日で利用した大阪府内の民泊施設に大量のゴミや落書きを残すなど、散らかし放題、汚し放題で帰国したことに中国内でも批判が高まっている。 民泊施設の所有者は清掃費用を追加請求したが、3 人が支払いを拒否したことで、所有者はネット上に写真を公開した。

この民泊施設のあまりの惨状に、中国共産党機関紙「人民日報」系の国際問題専門紙「環球時報(電子版)」や華僑向け通信社「中国新聞社(同)」など中国の官製メディアもこの事実を報道し、女子大生を批判。 中国共産党直属のメディアが中国人を批判するのは異例だけに、彼女たちの行動があまりにも非常識だったことがうかがえる。 ネット上で、「(3 人の)国籍を取り上げてもよいくらいだ」との厳しい声が寄せられている。

この所有者によると、19 歳の女子大生 3 人は 6 月、民泊サービス大手の Airbnb (エアビーアンドビー)を通じて予約。 所有者は彼女たちがチェックインの際に、ゴミの分別や宿泊時の注意点を詳しく説明。 「ベランダにある 3 個のごみ箱にごみを分類して入れてほしい」と伝えていた。

ところが、彼女らがチェックアウトしたあと、民泊のマンションに行ってみると、部屋のいたるところにジュースの缶やペットボトル、カップ麺の容器、使用済のトイレットペーパーやティッシュ、ガイドブックなどのゴミが大量に散乱。 使用済みの女性生理用ナプキンも洗濯機の上に放置されるなど、部屋に入った瞬間、悪臭が鼻につくほどのひどい状態だったという。

また、女子大生らは利用客伝言ノートに、所有者を侮辱する罵詈雑言や大便の形の絵文字まで書き残していた。 所有者はメディアの取材に「これまで見たことのない状態だった」と明らかにしている。 所有者は写真をネット上で公開。 さらに、女子大生たちに「部屋の清掃代に 3,000 円かかったので、倍の 6,000 円を支払ってほしい」と要求したが、3 人は「宿泊費はもう支払っている。 自分の家ではないので清掃費は払えない。」として支払いを拒否。

しかし、3 人のあまりにも非常識な対応に、ネット上では批判が沸騰。 あるネットユーザーは個人情報をもとに、彼女らの自宅の電話番号を割り出し、直接電話をして謝罪を求めるなど行動がエスカレートした。

さらに、環球時報などの官製メディアも彼女たちを批判的に報道するにいたって、3 人は中国版ツィッター「微博(ウェイボ)」上で、「私たちが悪かった。 いまからでも許しを請いたい。 問題解決のために最善を尽くしたい。」と謝罪し、追加の清掃料金の支払いに応じたという。 Airbnb もホームページ上で、「われわれも、今回の事例を調べて、適切な対応をとりたい」とのメッセージを掲載している。 (News ポストセブン = 9-23-18)


エアビー、民泊以外でも「ヤミ物件」掲載 法規制及ばず

違法な「ヤミ民泊」物件を掲載していた米エアビーアンドビーのサイトで、民泊以外の宿泊施設でも「ヤミ物件」が掲載されていることが新たに明らかになった。 いまの法律ではエアビーのような海外の仲介事業者は取り締まれないといい、こうしたヤミ物件の掲載が続く可能性がある。 民泊仲介最大手のエアビーのサイトには、6 月に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく民泊物件のほか、旅館業法で営業が認められている旅館・ホテル、「簡易宿所」と呼ばれるドミトリータイプの施設やカプセルホテル、ペンションなどが掲載されている。

旅館・ホテルや簡易宿所を営む場合、事業者は物件ごとに自治体から許可番号をもらう必要がある。 エアビーのサイトにはこの許可番号が掲載されており、朝日新聞が一部自治体が公表している番号リストと照合したところ、東京都北区や新宿区などで複数の物件の番号が違っていた。 マンションや一軒家の一室で営んでいる簡易宿所とみられる。北区保健所は「仕組み上もありえない数字を使っている」といい、無許可の物件の可能性が高いと見て調査する方針だ。

エアビーの広報担当者は「旅館業法上の物件などでも、違法と見られる物件の掲載があった」と認め、「適宜削除する対応をとっている」と説明している。 国内の仲介業者がサイトに旅館・ホテルなどのヤミ物件を掲載すれば旅行業法違反に問われる可能性がある。 だが、旅行業法を所管する観光庁によると、国外に拠点を持ち、国外のシステムを使って仲介する海外事業者の場合、法律上の登録は不要とされ、サイトにヤミ物件が掲載されていても取り締まることができないという。

エアビーのサイトでは、民泊物件についても架空の番号を使ったヤミ物件が複数掲載されていたことが判明している。 民泊新法では、ヤミ民泊を掲載した場合は海外事業者でも取り締まりの対象となるが、エアビーは現在も一部のヤミ物件について掲載を続けている。(北見英城、石山英明、asahi = 8-7-18)


エアビーが架空届け出対策 数千件削除、システム改良へ

民泊仲介最大手の米エアビーアンドビーのサイトに、違法な「ヤミ民泊」と疑われる物件が掲載されている問題で、同社は 21 日、民泊のルールを定めた新法施行後も違法物件の掲載が続いていることを認め、不正を検知できるようにシステムの改良を進めていることを明らかにした。 15 日に住宅宿泊事業法が施行され、民泊を営む場合は自治体への届け出が必要になった。 受理されると届け出番号が付与され、営業できるようになる。

エアビーは、サイト掲載前に届け出番号の提出を民泊事業者に求めている。 だが、同社のサイトに掲載される事業者の届け出番号が、自治体が公表した番号と異なる物件が多数あることが、朝日新聞の調べで明らかになった。 エアビーによると、6 月から違法の可能性が高い物件を自動検知するシステムを導入し、施行後の 15 日以降、掲載済みの数千件を追加で削除した。 だが、架空の番号を使った物件は検知できなかったといい、システムの改良を進めているという。

ただ、同社のサイトには 21 日夕方時点でも架空の番号を記載した物件が掲載されている。 エアビー日本法人の山本美香公共政策本部長は「まだ完璧ではないかもしれない。 精度を高めたい。」と語った。 観光庁には全国の複数の自治体から、エアビーのサイトに届け出のない物件が計数十件、掲載されているとの報告が寄せられている。 同庁担当者は「エアビーに事実関係を確認するよう求めた。 必要に応じて指導したい。」としている。 (北見英城、石山英明、asahi = 6-21-18)

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エアビーサイトで架空の届け出番号掲載 「ヤミ民泊」か

民泊仲介最大手の米エアビーアンドビーのサイトで、民泊のルールを定めた新法の施行以降も、違法な「ヤミ民泊」の疑いのある物件の掲載が続いていることが 20 日、分かった。 架空の届け出番号を記載している物件が複数見つかり、エアビーも状況確認を開始。 観光庁は全仲介業者を対象に実態調査に乗り出した。 民泊を営む場合に自治体への届け出を求める住宅宿泊事業法が 15 日に施行されたばかり。 観光庁によると、15 日時点で 3,728 件の届け出があった。 受理されると、「M」の文字と 9 桁の数字からなる届け出番号が割り振られ、営業が可能になる。

数字の最初の 2 桁は都道府県ごとに 01 - 47 と決められ、東京都内の物件なら「M13」から始まる。 エアビーは掲載にあたって事業者に届け出番号の提出を求め、サイトで公開している。 エアビーの広報担当者は新法が施行された 15 日、「前日夜までに、番号のない民泊物件はすべて非公開にした。 違法物件の掲載は 1 件もない」としていた。 朝日新聞がエアビーのサイトで掲載されている物件の届け出番号を、自治体が公表している受理済みの届け出番号と照合すると、一致しない番号が見つかった。

「東京・新宿で 20 日から大人 1 人が 1 泊」という条件で検索すると、19 日午後 5 時時点で 82 件が表示され、28 件に届け出番号の記載があった。 このうち、14 件は自治体発表の番号と一致したが、残り 14 件は「M23」、「M72」など、東京ではありえない番号で始まっていた。 東京都新宿区は「許可した物件はすべて『M13』で始まる。 無許可営業の可能性がある。」と説明。 観光庁も「記載ミスやシステム上の間違いの可能性はゼロではない」とした上で、「虚偽の番号を使ったヤミ民泊の疑いがある」と話す。 (北見英城、石山英明、asahi = 6-21-18)


民泊、欧州では規制強化 住民とトラブル・住宅費高騰 …

住宅の空き部屋を宿泊用に貸す「民泊」のルールを定めた新法「住宅宿泊事業法」が 15 日、施行された。 一方、先行する欧州では、利用制限や無許可の「ヤミ民泊」の取り締まりなど、規制強化の動きが広がっている。 観光客誘致策として期待されたが、住民とのトラブルや、民泊ブームで住宅費が高騰するなどの悪影響が目立ってきたためだ。

火山や温泉の観光が人気のアイスランド。 首都レイキャビクでは住宅価格がうなぎ登りだ。 昨年 1 年間の上昇率は約 13% に達した。 その一因が民泊ブームだ。 住宅やアパートが民泊向け物件に次々と切り替わっている。 夏の観光シーズンに、民泊最大手・米エアビーアンドビー(エアビー)のサイトに掲載された物件数は、昨夏は 2 年前の 4 倍に急増。 自宅アパートを民泊に貸す男性は「1 週間も貸せば、1 カ月分の家賃を払える」と話す。

あおりでお金に余裕のない若者らが閉め出されている。 ホテルで働くサンヤ・バズダールさん (27) は今年 3 月、友人と住んでいたアパートのオーナーから「民泊に貸す」と 3 カ月以内の退去を求められた。 サンヤさんは「周りに同じ体験をした人はいくらでもいる。」 今は中心部から少し離れた一軒家の一室を借りている。 その家は同様の若者が 6 人が共同で暮らしているという。

住民団体代表のベノニ・アエイションさん (65) は、数年前から自宅周囲のアパートが次々と民泊物件になった。 「隣人が全く面識のない旅行客になり、生活が一変した。 真夜中にベランダで騒がれて迷惑した。」と規制強化を求めた。 アイスランド政府は昨年から、民泊で 90 日以上貸し出す場合、ホテルと同様に安全や衛生の許可などの取得を義務づけ、違反した場合は最大で 100 万クローナ(約 100 万円)の罰金を科すことにした。 90 日未満の場合も届け出を義務付けた。 それでも無登録の「ヤミ民泊」は多く、レイキャビクの民泊物件の「6 - 7 割は無登録(市の担当者)」という。

エアビーが全世界で紹介する部屋数は、昨年 8 月時点で約 400 万件。 米国(66 万件)が最多で、フランス(48 万 5 千件)、イタリア(34 万件)、スペイン(24 万 5 千件)、英国(17 万 5 千件)と欧州各国も目立つ。 民泊はホテル不足を補い、観光ブームを支えた面もある。 しかし、スペイン・バルセロナやイタリア・ベネチアでは観光客の増えすぎで抗議デモも起き、行政も対応を迫られている。

欧州メディアによると、オランダ・アムステルダムでは来年 1 月から、民泊の利用日数の上限を、年 60 日から 30 日に減らす規制が導入される。 スペイン・バルセロナでは無許可物件への罰金が引き上げられ、違法物件を取り締まる職員も増やした。 (レイキャビク = 寺西和男)

ヤミ民泊が巧妙化

日本で施行された「住宅宿泊事業法」では、自治体に届けて認められれば、誰でも年間 180 日まで営める。 一方で、無届け営業の罰金の上限は 3 万円から 100 万円に引き上げられた。しかし「ヤミ民泊」は当局の目を逃れようと巧妙化している。 「届け出のない物件は 14 日夜までに不掲載にした。 いま、1 件も違法物件の掲載はない。」 仲介サイト世界最大手の米エアビーアンドビーの広報担当者は 15 日、こう明言した。 「エアビーデータバンク」を運営する「はりうす(神奈川県藤沢市)」によると、掲載件数は 15 日午前 0 時時点で 2 万 6,319 件。

だが、本当に違法物件がゼロだとしても安心はできない。 東京都新宿区のあるマンションでは、付近の路上に観光バスが頻繁に止まり、訪日客とみられる団体が出入りする。 住民らが調べても、仲介サイトにこの物件情報は掲載されていなかった。 住民に代わってヤミ民泊対策を講じる業者「オスカー」の中込元伸社長によると、どの仲介サイトにも掲載がないケースは経験がないという。 中込氏は「旅行業者と対面で交渉してツアーにヤミ民泊を組み込んでいるのだろう。 宿泊代金も旅行業者経由で支払われると証拠が残らず、摘発が難しい。」と話す。

物件情報を海外のサイトに掲載したり、SNS で直接予約を募ったりと、手口は多様化している。 営業の「証拠」を残さないように、領収書に住所を記載しない業者もあるという。 ヤミ民泊問題に詳しいマンション管理士の飯田勝啓さんは「民泊はこんなにこそこそやるものなのか。 本来はおもてなしのはずなのに。」と話す。 (石山英明、asahi = 6-17-18)


民泊、53 自治体で追加規制 … 芦屋市は全域禁止

住宅の空き部屋などを利用した「民泊」を解禁する住宅宿泊事業法(民泊法)が 15 日に施行される。 民泊のスタートに合わせて、全国で 53 自治体が独自に条例を制定し、民泊法に上乗せする形で厳しい営業規制を設けることが、読売新聞の調査でわかった。 区域を指定して規制する自治体は 49 自治体に上り、兵庫県の条例に基づき、芦屋市では 1 年を通じて全域で民泊が禁止となる。 民泊法では、同法が定めるルールに加え、地域の実情に応じて自治体が条例でさらに厳しい規制を設けることができる。 (yomiuri = 6-15-18)


民泊チェックイン、ホテルフロントで代行 楽天系など

複数の民泊施設のチェックインをホテルのフロントなどを使い 1 カ所でまとめて代行するサービスが始まる。 民泊仲介・運営の楽天子会社、楽天ライフルステイ(東京・千代田)や百戦錬磨(仙台市)がホテルなどと組み相次ぎ乗りだす。 15 日に施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)が求める民泊での本人確認を対面で実施することで、家主と旅行者の安心感を高める。

民泊新法は宿泊者の顔やパスポートをチェックする本人確認と宿泊者名簿の備え付けを貸し手側に求めている。 対面またはタブレットなどの IT (情報技術)を使った方法のいずれかを選べる。 百戦錬磨は 6 月、まず大阪市で近隣に点在する民泊施設向けのチェックイン代行サービスを開始する。 運営を受託する市内の簡易宿泊施設「ボン ホステル」のフロントでスタッフが 24 時間対応する。

チェックイン手続きの代行なら 1 部屋 1 カ月で約 8 千円、鍵も受け渡すなら同 1 万円を手数料として家主から百戦錬磨が受け取る。 年内にも同様のサービスを東京でも始める。 東京ではホテルチェーンに業務を委託し、ホテルのフロントを活用する。 対面以外に、IT を使う受付方法としてはファミリーマートやセブン-イレブン・ジャパンなどコンビニエンスストア大手が、店頭に置く専用機器でチェックインや鍵の受け渡しを旅行者が自ら行えるサービスを発表している。

一方、対面のチェックインは面と向かって相手を確認するため、民泊を悪用しようとする利用者を遠ざける効果に期待する家主や住民もいる。 日本人との交流を求める訪日客も直接話せることで満足度が高まる可能性があり、こうしたニーズに対応しようという狙いがある。 楽天ライフルステイも対面のサービスを早ければ 1 年以内にまず大阪で始める。 心斎橋で運営を請け負う宿泊施設を共同フロントと位置づける。 近隣の 5 カ所程度の民泊の利用を見込む。

鍵の受け渡しや宿泊者名簿の管理、パスポートのコピーなどを宿泊施設のスタッフが代行する。 館内のカフェバーを朝食会場として民泊利用者に開放することも想定している。 民泊では特別な許可がないと食事が出せないため、需要があるとみている。 サービスを全国で広げる際にホテルチェーンと組むことも検討していく。

既存のホテルにとって民泊は競合相手になる場面が増えている。 だが、自らの施設のチェックインの合間に近所の数カ所程度の民泊利用者に対応するのは大きな負担にはならず、手数料収入も得られる。 フロントに一度立ち寄ってもらうことで、レストランなど館内サービスへの集客効果も期待できそうだ。 旅館業法に基づく「簡易宿所」の許可を得た民泊は従来は施設ごとのフロントが求められていたが、10 分以内にスタッフが駆け付けられるならフロントを共用することが認められた。 国家戦略特区や民泊新法に基づく施設はもともとフロントを設置する義務はないが、家主はフロントと同じような対応を迫られる。

楽天コミュニケーションズが 13 日発表した民泊事業者向けの意識調査によると、女性の民泊運営者が不安に感じていることの 1 位は「鍵の受け渡し」、2 位は「チェックイン・チェックアウト」だった。 これまでは許認可のない民泊が多く、本人確認をしていない施設も目立った。 鍵も家主が直接手渡したり、郵便受けにしまって管理したりするケースが多かった。 利用者だけに教えるパスワードで開ける鍵やタブレットで本人確認するシステムも増えているが、普及は道半ばだ。 安心感がある対面チェックインには一定の需要があるとみて各社は取り組みを広げる。 (nikkei = 6-13-18)


住宅宿泊事業法(民泊新法)施行前に撤退業者相次ぐ 設備面等のハードルが高く困難か

「民泊の地下化」に懸念も

⇒ 6 月 15 日の住宅宿泊事業法(民泊新法)施行を前に Airbnb がヤミ民泊の掲載削除を始めた
⇒ Airbnb ではファミリーマートと業務提携し、民泊仲介各社と大手企業との業務提携も進む
⇒ Airbnb へ登録されていた民泊物件は 6 万件だが、5 月 11 日現在で届出 724 件と低調だという

6 月 15 日の住宅宿泊事業法(民泊新法)施行を前に、民泊仲介大手の Airbnb (エアビーアンドビー)が、届け出のない違法なヤミ民泊の掲載削除を始めた。 これは、民泊新法が施行された後に違法となる物件について、合法物件への変更などを求める観光庁からの通知によるものだ。

届け出番号や許可番号が入力されていない民泊物件について削除を前倒しする徹底したスタンスで、既存の民泊ホストには衝撃が走っている。 とはいえ、法令違反のサービス提供を受けることのあっせんは禁じられており(旅行業法 13 条 3 項 2 号、住宅宿泊事業法 58 条 2 号)、正規の登録を受けた民泊仲介業者の Airbnb が違法民泊を削除することは当然ともいえる。

5 月 23 日、Airbnb をはじめとした民泊仲介サイト運営会社計 6 社が、業界の健全化に向けて団体を立ち上げることで大筋合意したことが報じられた。 民泊新法の施行を踏まえ、法やルールを守って民泊を普及・発展させていくという。 Airbnb ではファミリーマートと業務提携し、店舗で民泊のカギ受け渡しなど行うなど、民泊仲介各社と大手企業との業務提携も進んでいる。 違法民泊のあっせんが許されないことは自明の理だろう。

そもそも、民泊新法施行に際し自治体では届け出の受け付けをしているが、観光庁によると 5 月 11 日現在で 724 件と低調だという。 Airbnb へ登録されていた民泊物件は 6 万件を超えていたことからすると確かに少ない。 低調な理由として、まず設備面等のハードルが高いことが挙げられる。 民泊新法では、住宅に家主が居住する "家主居住型" と、家主が不在となる "家主不在型" に民泊業態を区別しているが、特に不在型の場合には、住宅宿泊事管理業者への管理業務委託、一般の宿泊施設レベルの消防設備の設置が求められるなど、イニシャルコストも相当だろう。

また、民泊新法に加え自治体が独自に制定する条例が厳しく申請をためらうケースのほか、民泊新法と同日に施行される改正旅館業法も理由の一つだとされている。 旅館業法改正後は、最低客室数の基準撤廃や一定条件のもとフロントを設置しないことも認めるなど要件が緩和される。 簡易宿所へのシフトも睨んだ様子伺いといったところか。 民泊新法施行に際し、正規の届け出をしないという数名の民泊ホストに話を聞いたところ、リスクを承知で営業を続けるという者、撤退する者など様々だが、簡易宿所へシフトという声は多くなかった。 いずれにせよ民泊仲介サイトへ登録できなければ営業を続けることは困難とのこと。

このようにホスト間では、撤退も含めた "身の振り方" が喫緊の課題だという。 あくまでも残された可能性として、と前置きしつつ「日本へは情報の流れない海外サイトから集客を続ける」と話す民泊ホストもいる。 違法民泊が地下化すれば、実態の把握がいま以上に困難になることも想定される。

一方、民泊新法施行に際し新規開業を予定する事業者にとっても、Airbnb の前倒し削除は衝撃だったようだ。 関西国際空港のお膝元、大阪府泉佐野市で家主居住型の民泊を開業予定の水野哲典さん (48) は、「地元では 150 軒ほど民泊はあったが新法下で申請しているのは自分も含めて 2 軒だけ」、「削除は想定していたがこれほど早く動きがあるとは … でも自身の事業には嬉しいタイミング」と話す。

そもそも宿泊のマーケット全体で民泊のシェアはどのくらいだったのだろうか? 違法民泊も含めると法律で認められていない施設が多く正確な数の把握は難しいが、観光庁によると 2017 年 7 - 9 月期で訪日外国人客のうち 12.4% が民泊を利用したという。 ホテル予約が困難といわれた一時に比べて、東京のホテル稼働率が下がってきたと言われているが、民泊のインパクトは相当なものだと話すホテル関係者は多い。

インバウンド増加という近年の状況下、ホテル不足がクローズアップされてきたが、その中でも民泊は多くの問題提起をしてきた。 違法、トラブルといったネガティブなニュースが注目されると同時に、宿泊業としての資格有無が問われつつも、激増するインバウンド宿泊の受け皿になってきたことは確かだ。 民泊がなかったとしたら、ホテル不足問題はいま以上に深刻さを極めていただろう。

一方で、ホテル数・客室数の増加は堅調であり、今後もホテル稼働は高まる見込みである。 そこで、新法施行下で民泊が宿泊業としての地位を確立できるのか。 あるいは民泊営業は激減してしまうのか。 民泊という概念そのものが変革に迫られている時だといえる。 (瀧澤信秋 = ホテル評論家、News Post/Seven = 6-11-18)


民泊市場 1,251 億円、2016 年から倍増 りそな総研

りそな総合研究所は 8 日、一般住宅に有料で人を泊める「民泊」の 2017 年の市場規模が 1,251 億円にのぼるとの試算を発表した。 前年(619 億円)の 2 倍超で急拡大している。 観光庁が公表した訪日客の消費動向調査などから、民泊に使われた宿泊料金を推計した。 地域別の市場規模は東京(307 億円)、大阪(264 億円)、京都(137 億円)の順に多かった。 エリア別では関西(447 億円)が関東(434 億円)を上回った。

一方、民泊の増加でホテルの稼働率は低下。 大阪の 17 年のホテル稼働率は前年比マイナス 4 ポイントと、全国で最も下げ幅が大きかった。 ただ、現状の民泊は無許可の「ヤミ民泊」が多く、15 日施行の住宅宿泊事業法(民泊新法)で規制が強化されることになる。 りそな総研の荒木秀之主席研究員は「トレンドがどう変化するか見極めていきたい」と話した。 (中島嘉克、asahi = 6-9-18)


エアビー、民泊解約 3 万件超の恐れ 訪日客は困惑

民泊仲介世界最大手の米エアビーアンドビーが、許認可などがない国内の民泊施設で 15 日以降の予約を取り消した影響が広がっている。 訪日客や家主は突然のキャンセルに戸惑う。 観光庁がエアビーに聞き取ったところ、6 月 15 日以降の予約は 30 日までで 4 万件、年末までで 15 万件。全てが取り消されるわけではないが月内だけでも 3 万件超の解約の恐れがある。

「エアビーショック」広がる

「キャンセルの通知が届いてパニックです。 どうすればいいのでしょうか。」 東京都世田谷区の自宅をエアビーに掲載し、民泊施設として貸している家主の女性 (36) は 7 日夜、宿泊予約していたメキシコ人女性からメッセージを受け取った。 女性は夫、子どもと大阪を観光中。 その後に東京に移動し、16 日から 1 週間の日程で世田谷に泊まるはずだった。 予約は 1 カ月前からしていた。 家主の女性のもとには 7 日午後 8 時すぎ、エアビーから電子メールが届いていた。 「チェックイン予定の既存の予約が一律にキャンセルされます」と書かれていて驚いた。

ことの発端は 15 日に控える住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行を前に、観光庁が仲介業者に出した通知だ。 15 日以降は旅館業法の「簡易宿所」、国家戦略特区といった現行ルールの許認可、または新法に基づく届け出のない施設は仲介サイトに載せられなくなる。 観光庁は先立つ 1 日、新法での届け出予定などがないのに載っている施設の予約取り消しなどを通知で求めた。 許認可がない施設も仲介してきたエアビーは通知の直後に動いた。 まず現行の許認可や新法での届け出で発行される番号の入力がないなど違法の疑いがある施設の掲載をやめた。

今春時点で約 6 万 2 千件あった国内施設は足元で約 1 万 3,800 件と 8 割減った。 月内だけで 4 万件ある予約のうち、8 割に影響が出るとすれば、3 万件超が解約になる可能性がある。 エアビーは当初、予約まで取り消す考えは示していなかった。 ところが 7 日夜には 15 - 19 日分の予約をキャンセルし、19 日以降の予約も 10 日前に自動でキャンセルされるとホームページ上に掲載。 家主にも通知した。

利用者への補償は世界初

予約を取り消すことになる顧客には宿泊代のほか、代わりに取った宿の代金との差額分、航空券の変更手数料などを補償する。 おわびの意味を込めて宿泊料と同額相当のクーポンも別に贈る。 これらに総額 11 億円を拠出すると表明した。 利用者へのこうした補償は同社としては世界初としている。 エアビーで代わりの宿が見つからない場合に備え、JTB の訪日客向け予約サイトも紹介する。 電話や電子メールの相談窓口も設けた。

世田谷の女性はこれまで許認可を得ずに営業してきたが、食事や文化体験など手厚いもてなしで人気の宿になっていた。 15 日以降はルールに沿って運営するため、民泊新法に基づく届け出を準備中だ。 だが、番号の発行には時間がかかるため、エアビーで表示されなくなり、キャンセルに追い込まれた。 「子ども連れの旅行者を路頭に迷わせるわけにはいかない。 日本の信用問題にも関わる。」と考えた家主の女性は、すでに新法での届け出が受理された近くの実家にメキシコ人家族を泊める。

同じく新法で届け出手続き中の運営施設が掲載されなくなった北海道の男性 (36) のもとには訪日客から「楽しみにしていた。 なんとか泊まらせてくれないか。」と悲痛な声が寄せられたが、わびながら断った。 「観光庁もエアビーも影響の大きさをどこまで理解していたのか。 もっと早くから周知を徹底し、猶予期間も設けるべきだった。」と憤る。

エアビーに掲載された国内施設に泊まった訪日客は 2018 年 2 月までの 1 年間で延べ 580 万人に達する。 エアビーでの予約可能件数が大きく減ったことで宿泊施設の争奪戦が起きている。 東京都豊島区で戸建て住宅を民泊用に貸す男性 (60) のもとには予約の問い合わせが殺到している。 旅館業法に基づく「簡易宿所」の許可を得ており、現在もエアビーに載っているためだ。 「宿が取れない。 泊まらせてほしい。」と訪日客からの相談が急増しており、既存のホテルや旅館にも顧客が流れる可能性が高い。 新法での届け出件数も 7 日時点で約 2 千件と低調だ。 民泊が低迷し続ければ訪日客数の伸びに水を差しかねない。

圧倒的シェア 影響大

米エアビーアンドビーは 2013 年に日本でサービスを始めて以来、国内の民泊市場で圧倒的なシェアを占めてきた。 民泊の代名詞となり、掲載された国内施設数はそのまま日本の民泊数と言われてきた。 そのエアビーが違法の疑いがある施設の表示取りやめと予約取り消しにいち早く着手したことで、市場はいったんリセットされる。 新規参入が増えた仲介サイトも横一線での競争が始まる。

エアビーは許認可のない施設に新法での届け出を促したが、手続きは煩雑で受理に時間がかかる自治体が多い。 規制を強化する自治体も多く、廃業を選ぶ人も増えた。 6 月に民泊仲介サイトを始める楽天子会社の楽天ライフルステイ(東京・千代田)、合法な農家民泊に力を入れる百戦錬磨(仙台市)など新たな仲介サイトは増えている。 各社を軸に異業種が提携する企業連合ができており、サービスを競う。 ただ新法での届け出件数が伸び悩むなか、施設の確保は共通の課題だ。 各社は民泊に限定せず、個性的なホテルや旅館などもサイトで扱おうとしている。 (大林広樹、nikkei = 6-8-18)


日本の民泊新法、中国人は不動産売り払い撤退の動き - 中国メディア

6 月 4 日、中国新聞網によると、民家やマンションの空き部屋に旅行者を有料で泊める「民泊」を解禁する住宅宿泊事業法(民泊新法)が 15 日に施行されるのを前に、民泊への活用目的で日本に不動産を購入した中国人らが次々と物件を売り払い、撤退の動きを見せている。 東京・新宿に 16 年、民泊への活用目的でワンルームマンションを買った中国人女性は「これ以上民泊は続けられない。 東京五輪前で不動産価格が下がらないうちに売るつもりだ。」と話す。 女性が買ったマンションは駅からも近く、常駐の管理人もおらず、民泊には最適だった。

しかし、民泊を始めて 1 カ月、宿泊客がごみをまき散らしたり、大声で騒ぐなどしたため、近隣住民から苦情が殺到した。 女性は近所に謝罪に回り、客に注意を促すなど対策を練り、まずまずの収益を上げてきたという。 だが、民泊新法の施行で自治体への届け出が義務付けられ、営業日数も年間 180 日に制限されることに。 さらに、新宿区は独自条例で平日日中の営業を禁じたため、女性は民泊の営業を断念したといい「家具や備品にかなりのお金を費やしたのに、元が取れない」とこぼす。

新宿区のほか、渋谷区や港区も条例で民泊利用の制限を強化。 マンションや地域によっては民泊禁止を打ち出すケースもあり、中国人の間に撤退の動きが広がっているという。 (RecordChina = 6-5-18)


セブンで民泊チェックイン 1 千店で鍵渡しなど可能に

コンビニエンスストア大手のセブン-イレブン・ジャパンは 6 月から、一部の店舗に専用端末を置き、民泊利用者の本人確認や鍵の受け渡しができるようにする。 JTB との共同の取り組みで、訪日客が多く訪れる大阪や札幌などの主要都市の 1 千店で展開する予定だ。 18 日に発表した。 民泊のルールを定めた新法「住宅宿泊事業法」が 6 月 15 日に施行されるのに合わせ、専用端末「セブンチェックイン機」を東京・新宿の店舗に設置する。

新法では、家主が同居しない施設の場合、宿泊者名簿の作成やチェックイン時の本人確認などが義務づけられる。 民泊利用者は専用端末のカメラでパスポート写真や顔写真を撮影し、タッチパネルで氏名や住所を入力。 JTB が遠隔でその内容を確認し、端末の保管箱を開けて鍵を渡す仕組みだ。 宿泊後は端末に鍵を返却する。 来店動機をつくりたいコンビニ各社にとって、20 年東京五輪に向けて利用増が見込まれる民泊は商機と映る。 ローソンは今年 1 月、民泊などで使う鍵の保管箱を設置し、19 年 2 月までに 100 店に拡大する。 ファミリーマートも昨年から沖縄で施設の電子キーを開ける QR コードの発券を始めた。 (牛尾梓、asahi = 4-18-18)


民泊禁止 8 割、容認わずか 0.3% マンション管理組合

マンション管理会社でつくるマンション管理業協会は 27 日、会員企業が業務を受託しているマンション管理組合のうち、8 割超が民泊を禁止したとの調査結果を発表した。 民泊解禁が迫る中、トラブル発生や住環境悪化に対する強い警戒感が鮮明になっている。 同協会の会員 365 社は、全国の分譲マンションの 9 割超の管理を担う(戸数ベース)。 調査では、うち 308 社が、受託している管理組合の 2 月 4 日時点での対応状況を回答した。

その結果、管理規約の改正や総会・理事会での決議で民泊を禁止した組合が 80.5% に達する一方、容認は 0.3% にとどまった。残り 19.1% は検討中か何もしないかだった。 民泊を営みたい人の都道府県などへの届け出が 3 月 15 日から始まる。 管理規約や総会・理事会決議で禁止する考えを示していれば届け出は不受理になるが、示さないと黙認していることになる。 そのため、管理組合は対応を急いでいる。

新築では最初から禁止も

「トラブルを防止するため、管理規約を改正して民泊禁止を明確にしたい。」 東京都練馬区にある総戸数約 380 戸の団地で 18 日、管理組合の臨時総会が開かれた。 約 60 人の出席者から執行部の提案に異論は出ず、委任状をふくめて全住民の 4 分の 3 超が管理規約の改正に賛成。 民泊を禁止することが決まった。 違法なヤミ民泊が確認されたわけではない。 ただ、近くの団地ではトラブルがあり、不安が高まった。 理事の男性は「民泊をやりたいという住民の声はなかったが、予防的に禁止することにした」と話した。

京都市右京区の「ルミエール西京極」も、25 日に臨時総会を開いて管理規約に禁止を盛り込んだ。 管理組合の能登恒彦副理事長 (62) たちが昨年から住民に説明に回り、理解を得た。 能登さんは「民泊を確実に防ぐために急いで準備を進めた。 穏やかな暮らしが脅かされてはならない。」 新築の分譲マンションでは、不動産会社が最初から禁止していることが多い。 住友不動産は 2015 年から管理規約案に禁止を盛り込んでいる。 野村不動産や三菱地所レジデンスは 16 年から禁止した。 「資産価値が低下しかねない」、「不特定多数の第三者が入ってくるのは安全上好ましくない」と口をそろえる。

「ヤミ民泊一掃は困難」

すんなり禁止の決まるマンションばかりではない。 東京都中央区のマンションは昨年 9 月に総会を開いたが、必要な全住民の 4 分の 3 以上の賛同を得られず、規約を改正できなかった。 賃貸に出している所有者が多く、委任状が集まらなかったためだ。 名古屋市中区の築 2 年のマンションでは、管理組合が連日、所有者に電話をかけているが、連絡がつかない。 目指すのは 4 月の定時総会での規約改正。 副理事長の金田ゆきさんは「住民同士のつながりが浅く、賃貸に回していることも多い都市部のマンションにとって、規約改正は高いハードルだ」とこぼす。

もっとも、禁止してもヤミ民泊が続く場合もある。 大阪市西区の 18 戸のマンションでは、昨年 12 月の禁止後も民泊が運営されていた。 管理会社が問い合わせると所有者は「貸しているので分からない。」 居住者とされる人物とは連絡もつかない。 管理組合理事長の赤山聡さん (51) が旅行者に部屋の中を見せてもらうと、「誰かに会っても、(民泊仲介サイトの) Airbnb (エアビーアンドビー)で泊まっているとは言わないで」と英語で貼り紙があった。 ある日、宿泊客とおぼしき外国人に問いただすと、「親戚の家に来ている」と言われたという。 赤山さんは「禁止になったからといってやめるような人は、そもそもヤミ民泊をやらない」と話す。

約 800 室のうち、一時は数十室がヤミ民泊に使われた東京・代々木のマンションも、16 年の全面禁止後も数室で運営が続いている。 民泊問題に詳しいマンション管理士の飯田勝啓さんは、「仲介サイトがヤミ民泊の掲載を完全にやめ、自治体が取り締まりを強化しないと、ヤミ民泊の一掃は難しい」と指摘する。 (中島嘉克、森田岳穂、石山英明、asahi = 2-27-18)


民泊、49 自治体が独自で規制へ 住宅地で完全禁止も

住宅の空き部屋などに有料で人を泊める「民泊」が 6 月から解禁されるのを受け、条例で独自の制限をすることが認められている 144 自治体の 3 割超、49 自治体が民泊を規制する方針であることが明らかになった。 住宅地での民泊を完全禁止するなど厳しい方針の自治体もあり、観光庁は「法の趣旨からして適切ではない」としている。

6 月に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行され、原則禁止だった民泊は、届け出ればだれでも年 180 日まで営めるようになる。 一方で都道府県、東京都 23 区、中核市など 144 自治体は、「生活環境の悪化を防止するため必要があるとき」は条例によって営業可能な期間などを制限できる。 条例案は 2 - 3 月の議会で審議される見通しだ。

朝日新聞社が 144 自治体に条例制定の方針を聞いたところ、47 自治体 (32.6%) が「条例を制定して制限する方針」、2 自治体 (1.4%) が「すでに制定した」と答えた。 19 自治体 (13.2%) は「検討中・未定」で、76 自治体 (52.8%) は「現時点では制定しない方針」、「法施行後に問題が起きたら検討する」と回答した。 厳しい対応を取るのは、違法なヤミ民泊が横行する都市部だ。 東京都 23 区では 19 区が制定する方針で、「住居専用地域は全面禁止(大田区)」、「区全域で金曜正午 - 日曜正午のみ営業可能(目黒区)」などと大幅に規制する。

観光庁は昨年 12 月、自治体の規制について「実施そのものを制限するような制限は不適切」などとするガイドラインをまとめたが、強制力はない。 同庁幹部は「不適切とみられる自治体には個別に説明を求めていく」としており、見直しを求めることも含め検討する。 (森田岳穂、石山英明、asahi = 2-10-18)