1 - 2

コロナで失職、2 万人超に 半月で倍増、雇用急速に悪化

新型コロナウイルスの影響で解雇や雇い止め(見込みを含む)にあった働き手が 2 万人を超えたことが、厚生労働省が 9 日に公表した集計でわかった。 直近の 5 日時点で 2 万 933 人に上り、足もとでは飲食業で増加が目立つ。 5 月は 1 カ月で約 1 万 3 千人増えたが、1 万人を超えてからは半月で 1 万人増えており、雇用情勢が急速に悪化していることを示している。 2 月から各地の労働局を通じて集計している。 4 月末時点では 3,774 人だったが、5 月の連休明けから急増。 5 月 21 日時点で 1 万人を超え、5 月末時点では 1 万 6,723 人だった。

6 月 5 日までの 1 週間をみると、4,210 人増えており、そのうち非正規の働き手が 2,577 人と 6 割超を占めた。 業種別では、特に飲食業が多く、新たに 1,362 人が解雇や雇い止めにされた。 このうち非正規の働き手が 1,075 人と、8 割近くを占めている。

累計では、宿泊業が 4,348 人で最も多く、次いで飲食業が 3,484 人、製造業が 2,813 人。 都道府県別では、東京都の 3,164 人が最多で、大阪府 2,998 人、北海道 1,149 人、兵庫県 815 人、神奈川県 664 人となっている。 各地の労働局が把握できた人数にとどまるため、実際に解雇や雇い止めにあっている人はさらに多いとみられる。 厚労省は 5 月 25 日から正規・非正規の分類を始め、業種別や都道府県別の内訳も公表するようになった。 (岡林佐和、asahi = 6-9-20)


休業者が過去最多、忍び寄る貧困 経済雇用をコロナ直撃

国内雇用にも新型コロナウイルスの影響が鮮明に表れてきた。 緊急事態宣言で経済活動が止まった 4 月、有効求人倍率と完全失業率は共に悪化が進み、休業者は過去最多まで急増。 5 月以降はさらに経済・雇用への打撃が加速しており、専門家は「本当の危機はこれから」と警鐘を鳴らす。

新規求人数は過去最大の下げ幅

厚生労働省の 29 日の発表では、求職者 1 人に求人が何件あるかを示す有効求人倍率(季節調整値)は前月より 0.07 ポイント低い 1.32 倍で、4 カ月連続で下がった。 就業地(実際に仕事をする場所)別では全国で 1 倍以上だが、求人票などの受理地別では、沖縄県が 0.91 倍に悪化。 2016 年 9 月以来、3 年 7 カ月ぶりに 1 倍を割る地域が現れた。 新型コロナは、宿泊や飲食サービスなど多くの産業の採用意欲をそいでおり、全体の新規求人数は前月比 22.9% 減。 統計を始めた 1963 年以降で、過去最大の下げ幅だった。

総務省が 29 日発表した 4 月の完全失業率は 2.6% で、前月比 0.1 ポイント上昇。 完全失業者は 178 万人で前月から 6 万人増えた。 雇われて働く人は 5,582 万人(原数値、役員除く)と前年同月より 34 万人減った。 正社員は増えたが、非正規の働き手が前年同月より 97 万人減り、このうち女性が 71 万人と男性の 3 倍近くを占めた。 外出自粛などで求職活動を控えた人も多かったとみられ、「数値上、悪化は小幅にみえるが、実態はもっと悪いとみるべきだ」とニッセイ基礎研究所の斎藤太郎・経済調査部長は指摘する。

会社から仕事を休まされた人や事業を休んだ自営業者などの休業者は 597 万人に。 前年同月より 420 万人多く、リーマン・ショック直後のピークだった 153 万人の約 4 倍に上り、過去最多を記録した。 これらの人たちが職場に戻れなければ、さらに雇用情勢は悪化してしまう。 (滝沢卓)

5 - 6 月、大量に雇い止め・解雇のおそれ

新型コロナの影響で解雇や雇い止めをされたり、その見通しがあったりする人は 5 月に急増している。 厚労省によると 28 日時点で 1 万 5,823 人で、5 月だけで約 1 万 2 千人も増えた。 さらに 6 月末で 3 カ月間の派遣契約が切れる人が、5 月末に大量に雇い止めを告げられる可能性も指摘されている。 目立つのは、休業した飲食店などが業績と先行きの悪化で再開を断念し、従業員を解雇するケースだ。

飲食チェーン「美々卯」で働く入社 3 年目の正社員の女性 (21) は 4 月半ば、首都圏の全 6 店舗の閉鎖と運営会社「東京美々卯」の解散を告げられた。 パートを含む従業員約 150 人と共に退職同意書に署名を求められた。 「納得できない」と応じなかったが、勤める店舗は今月 20 日、閉店した。 運営会社によると、緊急事態宣言後の営業自粛で業績が落ち込み継続を断念したという。 女性は、暮らしている会社の寮からも 6 月中旬までに退去するように求められた。 同僚とユニオンに加入し、解雇撤回と事業継続などを求めて交渉中だ。 「(生活するために)接客のアルバイトを探していますが、なかなか見つからない」と不安を漏らす。

消費増税、暖冬にコロナが追い打ち

倒産も増えている。 東京商工リサーチによると、新型コロナの影響を受けた企業倒産(負債 1 千万円以上、準備中含む)は 29 日時点で 192 件。 5 月だけで 83 件と、3 月の 4 倍近くに急増した。 宿泊業(33 件)や飲食業(30 件)、アパレル関連(24 件)が多い。 5 月はアパレル大手のレナウンが民事再生法の適用を申請し、上場企業初のコロナ関連倒産となった。 企業は消費増税や暖冬の影響による売り上げ減で資金繰りが苦しかったところを、さらに新型コロナに見舞われ、人件費や家賃などが重荷になっていると東京商工リサーチはみている。 政府の緊急経済対策による資金繰り支援の融資が間に合わず、倒産した例もあるという。 (佐藤英彬、箱谷真司)

新しい生活様式で減る雇用

緊急事態宣言は全国で解除され、営業を再開した店なども多いが、感染防止のための「新しい生活様式」は雇用にも影響を与えそうだ。 客席の間隔を 1 メートル空けたり、夜の営業時間を縮めたりして、客数や売り上げが減る分だけスタッフを減らす飲食店も少なくない。 「ふだん通りの営業ができない中、パートやアルバイトの就労の機会が減っている。」 外食や小売りなどの労働組合が加盟する産業別組織「UA ゼンセン」の原田光康・総合サービス部門事務局長は危機感をあらわにする。

中小製造業の労組を中心とした「JAM」の安河内賢弘会長は「自動車を中心に世界的に消費が冷え込んでいる。」 日本総研の山田久・主席研究員は「世界的な貿易減を背景に、製造業で雇用調整圧力が高まるのはこれから。 雇用情勢の悪化が最悪期を脱したと見るのは全く違う、むしろ今後が要注意だ。」と指摘する。

政府は今年度の第 2 次補正予算案に盛り込んだ追加の雇用対策で、会社が働き手に休業手当を払う費用を支援する雇用調整助成金を拡充したほか、休業手当を受け取れない人が直接ハローワークに申請して受け取れる給付金も新設する予定だ。 だが、「せっかくのお金が行き渡っていない(大和総研の神田慶司シニアエコノミスト)」と、目詰まりやスピード感不足も指摘され続けている。

路上生活者などを支援する NPO 法人「自立生活サポートセンター・もやい」の大西連理事長によると、コロナの影響が出始めて以降は、生活保護などの公的支援を一度も受けたことがないなど、これまで生活困窮に縁のなかった層からも多くの相談が寄せられているという。 「貯金を崩してギリギリ持ちこたえているが、このまま半年続いたらやばい、という状態の人も多い。 月収 20 万円ほどあり、裕福ではなくても家族と『普通』に暮らしてきた人々に、貧困がしのびよっている」と指摘する。 (吉田貴司、岡林佐和、asahi = 5-30-20)

4 月の新規求人数 各産業で大きく減った
〈前年同月比〉
宿泊、飲食サービス-47.9%
生活関連サービス、娯楽-44.0%
製造-40.3%
教育、学習支援-38.1%
学術研究、専門・技術サービス-36.6%
情報通信-36.0%
卸売り、小売り-34.8%
運輸、郵便-30.6%
医療、福祉-21.7%
建設-15.8%


解雇・雇い止め 1 万人超え、コロナの影響 厚労省集計

加藤勝信厚生労働相は 22 日の閣議後会見で、新型コロナウイルスの影響で解雇や雇い止めをされたり、その見通しがあったりする働き手が、21 日時点で 1 万 835 人になったと明らかにした。 2 月 4 日の集計開始以降、初めて 1 万人を超えた。 主に各地の労働局で把握できた情報を厚労省が集計したもので、実際はさらに多いとみられる。

厚労省は、このうち非正規雇用の働き手が何人いるかや、契約社員や派遣社員といった内訳は把握していない。 加藤厚労相は「非正規と正規、それぞれの動向がわかるよう事務方に指示した」と話した。 また厚労省によると、新型コロナの影響で新卒採用の内定を取り消された人が 21 日時点で 98 人いるという。

厚労省は解雇や内定取り消しを防ぐため、休業手当を払った企業に費用の一部を支援する「雇用調整助成金」の助成率や対象を特例で拡充し、手続きも簡単にしている。 しかし、その一環だったオンライン申請は受け付け開始初日の 20 日、システムトラブルで運用を停止。 申請した企業担当者の個人情報を別の人が閲覧できた可能性があり、原因を調べている。 加藤厚労相は 22 日の閣議後会見で「開始早々、こうした事態を招いたことは心からおわび申し上げたいと思います」と陳謝したが、復旧見通しは明らかにしなかった。 (滝沢卓、asahi = 5-22-20)


3 月のパート労働時間 3.8% 減 コロナで勤務削減か

厚生労働省は 8 日、賃金や労働時間の動向を調べている毎月勤労統計調査の 3 月分(速報値)を発表した。 働く時間が短い非正社員などの「パートタイム労働者」で、1 カ月の総実労働時間が前年同月に比べて 3.8% 減り、平均の現金給与総額も 9 万 6,467 円で 1.1% 減った。 厚労省は、新型コロナウイルスの感染拡大による勤務シフト削減などの影響が出たとみている。 パートタイム労働者の労働時間は、特に所定外労働時間が、前年同月に比べて 19.3% と大幅に減った。 フルタイムで働く「一般労働者」の総実労働時間は 1.2% 減で、平均の現金給与総額は 36 万 6,441 円で 0.2% 減だった。 (asahi = 5-8-20)


まるで「生き地獄」 手取り半減 タクシー運転手の悲鳴

新型コロナウイルス感染拡大で外出自粛が続くなか、街で目につくのがタクシーの「空車」です。 都市部はもちろん、地方の主要駅の前にも長い列が。 どれだけお客さんを乗せて走ったかで収入が決まる運転手たちからは、まるで「生き地獄」だと、激減する手取りに悲鳴が上がっています。

「生き地獄のようですよ。」

東京都内を走る 50 代のタクシー運転手の男性は、そう話す。

具体的な手取り額は …

以前は、都心の青山や赤坂を走っていれば、すぐに乗ってくれる人がいた。 だが今は、誰も乗せないまま通り抜け、空車のままターミナル駅に着いてしまう。 営業職から運転手に転じて 2 年。 こんなことは今までなく、死活問題だ。 勤めるタクシー会社は完全歩合制で、基本給がない。 これまでは、走っていれば、ある程度の収入が得られた。 最も稼げる 12 月は、手取りで 48 万円。 だが、コロナが影を落としてからは 1 月が 34 万円、2 月が 30 万円、3 月が 25 万円と目に見えて減少。 4 月は 12 万2千円と、先月から半減した。

乗せるのも命がけ

だからこそ、少しでもお客さんを乗せたい。 でも実際のところ、乗せることも命がけだ。 マスク姿のお客さんに「病院へ」と言われることも多い。 もし、そのお客さんがコロナにかかっていたら - - 。 そんな不安がつきまとう。 みずからマスクを二重にして、対策はとっている。 ただ、密室にならないように窓を開けるかどうかは、お客さんの判断次第だ。 タクシー運転手も高齢化が進んでおり、「命が大事だ」といって仕事に来なくなった人もいる。

4 月 7 日に東京に緊急事態宣言が出た後も、男性は仕事に出ている。 都の休業要請では、タクシーは「社会生活を維持する上で必要」だとして休業を求められていないからだ。 でも出歩く人はさらに減り、生活は苦しくなるばかり。 今月は 18 時間走って客 6 人、手取りは 6 千円の日もあった。 それでも、生活を考えれば仕事を辞めるわけにはいかない。 まだマンションのローンの支払いもあり、首都圏で暮らすには、食費も含めれば月 20 万円以上はかかる。 パートで働く妻も、勤め先の店が自粛で休む日が増え、シフトが減らされている。

「ぞっとする」今後への不安

そして問題は、これがいつまで続くか分からないことだ。

男性の勤めるタクシー会社は 4 月中旬から当面、月 12 営業日の半分を休業にし、休みの 6 日分は過去 3 カ月間の平均支給額の 6 割を休業手当として払ってくれることになった。 全く無収入になる心配はなくなったが、営業日もいつも通り稼げるわけではなく、休業日も 6 割の収入では生活を維持できるか分からない。 だから不安は消えない。 「今後のことを考えるとぞっとするね。」 妻と 2 人、そう話し合っている。

廃業も「相当ある」

新型コロナがタクシー業界に与えている打撃は大きい。 全国自動車交通労働組合連合会(全自交)によると、東京では売り上げが 7 - 8 割、地方でも 6 - 7 割落ちている。 倒産する会社がでているほか、「ロイヤルリムジン(東京都江東区)」がグループ従業員約 600 人全員に退職を求めたことで労働紛争になる動きも出ている。 松永次央書記長は「(政府の)休業補償には時間がかかり、各社がどこまで持ちこたえられるか。 いま全国を調査中だが、廃業を決めているところは相当あるとみられ、(会社数は) 1 - 2 カ月で 3 分の 1 くらい減るかもしれない。」と危機感を示す。

タクシーは、バスや鉄道と同様に公共交通機関に位置づけられるが、これまで自治体からの補助金などはほぼ入っていない。 国土交通省は「タクシーは個々人の利用で成り立っているサービスで、自治体の財源にも限りがあるため」と説明する。 日本労働評議会が 18 日に開いた緊急の電話相談には、タクシー運転手からのべ 20 件以上の相談が寄せられた(開催翌日にかかってきた分も含む)。 その多くが「(会社が払うべき)休業手当が出ない」、「退職合意書に署名を求められた」といった問題だったという。

労働問題に詳しい指宿昭一弁護士は「タクシーの場合、この状況では普通に働いても賃金が下がってしまい、生活が保障されていない。 歩合制であっても本来、労働基準法に基づいて最低保障給を定めないといけないが、特に中小では定めていないところが多い。」と話す。

「地域の足、残したい」

全自交の松永書記長によると、タクシー業界は、1980 年代のバブル経済期に完全歩合制に切り替えた会社が多かった。 バブル崩壊後も、労働組合のない会社も多いため、固定給部分を戻す労使交渉は十分に進んでこなかったという。 松永書記長は「運転手も不安が多いと思う。 バスや電車では移動しきれない地域も多く、高齢化が進む中、タクシーを地域の足として残せるようにしていきたい。」と話す。 (藤崎麻里、asahi = 4-27-20)

◇ ◇ ◇

東京のタクシー会社、全乗務員 600 人解雇へ 自粛影響

東京都内でタクシー事業を営むロイヤルリムジン(江東区)が、グループ会社を含む 5 社で約 600 人いる乗務員全員を解雇する方針であることが 8 日、分かった。 同社によると、新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛で業績が急激に悪化しており、政府が緊急事態宣言を出したことで今後も回復が見込めないためという。

担当者によると、7 日から順次、乗務員に解雇を伝えているという。 その際、乗務員には「感染拡大が収束した段階で再雇用する。 希望者は全員受け入れる。」と説明したという。 同社は「休業手当を払うよりも、解雇して雇用保険の失業手当を受けた方が、乗務員にとって不利にならないと判断した」と説明している。 (asahi = 4-8-20)


ブリヂストンが 11 工場で一時生産休止 最大 6 日間

ブリヂストンは 20 日、自動車向けタイヤなどを生産する久留米工場(福岡県久留米市)や彦根工場(滋賀県彦根市)、栃木工場(栃木県那須塩原市)など国内 11 工場(一部ラインの休止を含む)で、最大 6 日間生産を休止すると発表した。 新型コロナウイルスの感染拡大で需要先の国内外の自動車工場が止まっているためだ。

休止するのは 3 工場のほか、東京 AC タイヤ製造所(東京都小平市)、那須工場(栃木県那須塩原市)、鳥栖工場(佐賀県鳥栖市)、甘木工場(福岡県朝倉市)、防府工場(山口県防府市)、熊本工場(熊本県玉名市)、関工場(岐阜県関市)、佐賀工場(佐賀県上峰町)。 熊本と関では高圧ホースなど一部の生産ラインのみを止める。

休止する工場では自動車や航空機向けタイヤ、高圧ホースなどを生産している。 休止期間は工場によって異なるが、4 月 29 日から 5 月 8 日までの間で、稼働日ベースでは 2 - 6 日間止める。 対象工場の従業員数は約 8 千人で、ブリヂストンの国内の従業員の半分強にあたる。 休止中は賃金の約 9 割に当たる休業手当を支給する。 (江口英佑、asahi = 4-30-20)


忍び寄る「コロナ破産」 バス運転手、8 月まで仕事なし

見通しは何もたたない

新型コロナウイルスの感染拡大で経済が深刻な打撃を受けるなか、自己破産の危機に直面する人たちが相次ぐ。 各地の相談窓口には悲鳴のような声が寄せられ、対応する弁護士らは「政府が早急に支援策を打ち出さなければ、多くの市民の生活基盤が破壊されてしまう」と警鐘を鳴らす。

「やっと一からやり直せると思ったのに。 見通しは何もたたない。」

大阪府内の観光バス会社で運転手を務める男性 (53) は、自宅で給与明細の束から 3 月分を取り出した。 手取り額約 19 万円。 数字をみつめ、うなだれた。 最も多かった時期の約半分にすぎない。 運転手として 20 年以上働いた。 事務パートの妻との共働きで、高校生と小学生の子 2 人を養い、15 年ほど前に一戸建ての住宅を約 4 千万円で購入した。 毎月、約 12 万円のローン返済を続ける。

バス業界は過当競争ぎみで収入は減っていった。 生活費を補うカードローンの借り入れが増え、昨秋に個人再生手続きを申し立てた。 債務額を減らし、自宅を残したまま暮らしを立て直すためだった。 だがこの春、新型コロナの影響でインバウンド客が急減し、今月中旬から自宅待機に。 8 月まで勤務は入っていない。 会社は基本給約 15 万円は出すという。 ローン返済や生活費がまかなえるのか。 自宅を失う「自己破産」が頭をよぎる。

30 代で結婚し、2 人目の子は 40 代で授かった。 返済に追われる日々で子の笑顔が救いだった。 「子は宝。 生きがいです。」 安心して帰って来られる居場所を残すのが親の責任だと自らに言い聞かせてきた。 国に望むのは、新型コロナ収束まで借金返済を一時的に猶予する制度だ。 経済が持ち直し、仕事が回ってくれば自力で借金を返済できる。 少しの時間がほしい。 「子のために家を守りたい。 返済の猶予できっと多くの人が救われる。」

返済のめどが立たず 自己破産も視野

大阪府内の駅近くでうどん店を営んでいた 50 代男性は 3 月末、先代から 30 年以上続いた店を閉店した。 新型コロナの影響で客が激減。 金融機関からの借入金や住宅ローンなどの返済のめどが立たず、自己破産も視野に債務整理を進める。 早朝から作る自家製麺が自慢だった。 原材料が年々値上げされる中、あげも手作りのきつねうどんが 500 円。 パート従業員を削り、妻と一緒に休まず営業を続けた。 客の笑顔で報われた。

ところが新型コロナに見舞われた。 歌手のライブなどが開催される近くのイベント施設でイベントが次々中止され、イベント帰りの客が消えた。近くの会社員たちも外食を控え始め、売り上げが急減した。 急な閉店で、長年通ってくれた常連客や取引先にお礼も言えていない。 自己破産すれば自宅マンションも手放さなければならず、老後の不安は尽きない。

営業時間短縮の要請を受けても飲食店を続ける友人から、「苦しい」という悩みを聞く。 店の家賃などの固定費は客が来なくても毎月支払いがやってくる。 商売をするなら不測の事態に備えるべきだが、実際には多くの店はそんな余裕はないはずだ。 「行政は一時金ではなく、継続的に支援してくれる仕組みをつくってほしい」と感じている。

多くの不安の声 「退職を求められた」

貧困問題に取り組む有志の弁護士や司法書士、社会福祉士らは 18 日午前、「いのちとくらしを守るなんでも相談会(無料、フリーダイヤル 0120・157930、午前 10 時 - 午後 10 時、19 日まで)」を全国 26 会場で始めた。 大阪の相談会場では「収入が激減した」、「退職を求められた」などの相談が相次いだ。 実行委員会メンバーの小久保哲郎弁護士(大阪弁護士会)は「定期収入の見込みがなくなり、個人再生ができる人が減るのではないか。 住宅ローンなど借金返済の猶予や、生活保護の支給要件緩和といった措置が一時的にでも必要だ」と話した。

これまでの実施された相談会でも、多くの不安の声が寄せられてきた。 3 月 11 日から事業者・労働者向けの無料電話相談窓口(平日午前 10 時 - 午後 4 時、06・6364・2046)を開設している大阪弁護士会でも、計 248 件(4 月 15 日時点)のうち、休業補償に関する問い合わせが 64 件、解雇や雇い止めなどが 24 件あるなど仕事に関する相談が相次ぐ。 「収入が激減し家族を養えない」、「2 週間自宅待機を命じられたのに、休業手当が支給されていない」などの相談があったという。

日本労働弁護団が今月 5 日に実施した全国一斉の無料電話相談では、412 件の相談のうち解雇や雇い止め、派遣切りの相談が 62 件、賃金不払いが 80 件寄せられた。 「約 100 万円の借金があるが、仕事がなくなった」、「貿易の仕事をしているが、知人から 200 万円近く金を借りている」などの声もあったという。

自己破産と個人再生 借金などの債務が返済できなくなったときに裁判所に申し立てる手続き。 破産は自宅などの財産を換金し債権者に分配する。 一方、個人再生は継続的な収入の見込みがある場合に、裁判所が認めた再生計画に基づき、債務額を大きく減額した上で原則 3 年(最長 5 年)間で分割して債権者に返済する。 自宅を残すことができるケースもある。 (遠藤隆史、平賀拓哉、asahi = 4-19-20)


JFE も高炉 2 基を一時休止へ 1.5 万人の一時帰休も

鉄鋼国内 2 位の JFE スチールは 5 日、岡山県倉敷市と広島県福山市の製鉄所の基幹設備の高炉を 1 基ずつ、計 2 基を一時的に休止すると発表した。 新型コロナウイルスの感染拡大で自動車向けなどの鋼材需要が減っているためで、全社員 1 万 5 千人を一時的に休ませる「一時帰休」も実施する。

倉敷と福山には高炉が 3 基ずつある。 倉敷の 1 基は予定していた改修を早め、4 月末に止めて 2021 年末まで工事をする。 福山の 1 基は 6 月末に高炉に熱風を送るのをやめ、再稼働可能な状態で操業を止める。 同社の高炉は 8 基あり、一時休止する 2 基の粗鋼生産能力は同社の約 25% に上る。 再稼働の時期は「需要動向をみて判断する(広報担当者)」という。

一時帰休は 5 月から全社員約 1 万 5 千人に対し、月 3 日を上限に実施する。 従業員の雇用を維持した企業に国から支払われる「雇用調整助成金」を使い、休業日は賃金の 8 割にあたる休業手当を支払う方針だ。 JFE スチールはすでに、川崎市の製鉄所の高炉 1 基を 2023 年度をめどに休止することを決めている。 減損損失の計上で、親会社の JFE ホールディングスは 20 年 3 月期に 1,900 億円の純損失を見込んでいる。

国内最大手の日本製鉄も 2 月に呉製鉄所(広島県呉市)の閉鎖を発表、4 月には高炉 2 基の一時休止や 3 万人の従業員の一時帰休も決めた。 20 年 3 月期の純損益は過去最大の 4,400 億円の赤字になる見通しだ。 鉄鋼各社は、鉄鉱石など原材料価格の高止まりや中国勢の台頭を背景に業績が悪化。 さらに新型コロナの感染拡大で主要顧客の自動車メーカーが工場を休止したうえ、建設需要も低調で鋼材需要は急減している。 経済産業省は 4 - 6 月の国内の粗鋼生産量を、リーマン・ショック以来の低水準と見込んでいる。 (江口英佑、asahi = 4-15-20)


ANA の一時帰休、2 万人に CA だけでなく地上職員も

新型コロナウイルスの感染拡大による航空需要の急減を受け、ANA グループは従業員の休日を増やす一時帰休を大幅に拡大する。 すでに客室乗務員約 6,400 人の一時帰休を 4 月から始めているが、これを間接部門やグループ会社にも拡大する。 新たに一時帰休の対象とするのは、事務を担う全日本空輸の間接部門約 3 千人と、空港の地上業務を担う ANA エアポートサービスなどグループ会社 9 社の従業員約 1 万人。客室乗務員と合わせた一時帰休の対象者は約 2 万人にのぼる。

新たな対象者については 4 月から 1 人あたり月 2 - 4 日休ませる。 期間は最長で 1 年間。 給与の減額分は、休業手当を出して全額補填する。 このほかグループ会社の 20 社ほども従業員の一時帰休を検討しており、対象者はさらに増える可能性がある。 ANA グループでは、全日本空輸で 4 月から、客室乗務員の 7 割にあたる約 6,400 人を一時帰休をさせ、月に 3 - 5 日を休ませている。 (南日慶子、asahi = 4-15-20)

◇ ◇ ◇

ANA 客室乗務員約 5,000 人を一時休業へ 新型コロナウイルス

航空大手の全日空は、新型コロナウイルスの感染拡大で大幅に運航本数を減らしていることに伴って、およそ 5,000 人の客室乗務員を一時的に休業させる方針を固めました。 会社は、雇用を守るための措置だと説明していて、雇用調整助成金を活用するなどして、休業手当を支払う方針です。 新型コロナウイルスの感染拡大により各国で国境の往来を厳しく制限する動きが相次いでいることから、全日空は現在、国際線のおよそ 60%、国内線の 10% 余りで運休や減便を決めています。

このため全日空は、およそ 8,000 人いる客室乗務員のうちフルタイムで働くおよそ 5,000 人を対象に、一時的に休業させる方針を固めました。 労働組合と合意できれば来月にも始め、会社が指定した日に 1 か月当たり数日程度、休業させる方針です。 会社は、今回の対応が雇用を守るための措置だと説明していて、給料が減った分の一部については雇用調整助成金を活用するなどして、休業手当を支払う方針です。 また会社は、役員報酬の減額や管理職の賃金カットなども合わせて実施することにしています。

国内の航空会社でつくる「定期航空協会」によりますと、感染拡大による影響で、業界全体で 2 月から 4 月までの 3 か月間に売り上げは 3,000 億円減る見込みで、航空会社の経営に大きな影響を与えています。 (NHK = 3-19-20)


JR 北海道、社員の「一時帰休」実施へ 民営化後初めて

JR 北海道が、社員を一時的に休ませる「一時帰休」を実施する方向で検討していることが分かった。 新型コロナウイルスの影響で鉄道需要が大きく減少しているため。 JR の一時帰休は 1987 年の国鉄分割民営化後、初めて。 対象の職場や人数などについて、労働組合と協議している。 JR 北海道によると、外出自粛の動きが強まった 3 月から利用者が激減しており、在来線の特急列車は前年と比べて 66.2% 減、北海道新幹線(新青森 - 新函館北斗)は 71.3% 減。 新千歳空港駅発着の快速エアポートの利用者も 49% 減少している。 4 月以降も減少が続いており、6 月末までに約 130 億円の減収を見込んでいる。

同社では 3 月下旬から特急列車を一部減便しているが、一時帰休に合わせてさらに拡大することも検討する。 ゴールデンウィーク期間(4 月 24 日 - 5 月 6 日)の予約状況(13 日現在)も振るわず、北海道新幹線の予約席数は前年比 90.2% 減、特急は同 84.4% 減となっている。 JR 北海道は多くの赤字ローカル線を抱えて経営難に陥っている。 2019 年 3 月期の売上高は 1,710 億円。 営業損益は 418 億円の赤字、純損益は 179 億円の赤字で、いずれも過去最悪だった。 社員数は昨年 4 月時点で 6,648 人。 (長崎潤一郎、asahi = 4-15-20)


日本製鉄が 3 万人一時帰休へ コロナで鋼材需要が急減

鉄鋼国内最大手の日本製鉄が 4 月から、従業員を一時的に休職させる「一時帰休」を実施する方向で労働組合と協議に入った。 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、顧客の自動車メーカーが国内外の工場を止めるなど、鋼材の需要が減っているためだ。 日鉄の一時帰休は、リーマン・ショック後の 2009 年に実施して以来、11 年ぶり。 感染拡大の影響が、製造業大手の働き手にも及び始めた。

日鉄関係者によると、対象は全国の製鉄所などで働く約 3 万人。 2023 年秋までの閉鎖を発表している呉製鉄所(広島県呉市)も含まれる。 休職は月 2 日ほどとなる模様だ。 従業員の雇用を維持した企業に対して国から支払われる「雇用調整助成金制度」を利用し、休業手当を支払う方針。 新型コロナの感染拡大を受け、国は雇用調整助成金を拡充する。

日鉄は、鉄鉱石や石炭など原材料価格の高止まりで利幅が薄くなっているうえ、中国勢の台頭で業績が急速に悪化している。 20 年 3 月期の純損益は過去最大の 4,400 億円の赤字を見込む。 一時帰休について、鉄鋼国内 2 位の JFE スチールの広報担当者は「労組と協議している段階ではない」と話す。 3 位の神戸製鋼所は「需要を見極めている段階」としている。

JFE スチールの親会社、JFE ホールディングスは 20 年 3 月期に 1,900 億円の純損失を、神鋼も 150 億円の純損失を見込んでいる。 日鉄も含め、これらの業績見通しは感染拡大を十分には織り込んでおらず、赤字幅はさらに拡大する可能性がある。 (江口英佑、真海喬生、asahi = 4-4-20)


コロナで解雇・雇いやめ 888 人 厚労省、見通し含め

新型コロナウイルスの感染拡大によって、全国の 3,233 事業所で休業などを検討し、888 人が解雇や雇い止めをされたり、その見通しがあったりすることが 27 日、厚生労働省のまとめで明らかになった。 観光客の減少が経営を直撃した観光業に目立つという。 同日の参院予算委員会で、加藤勝信厚労相が野党議員の質問に答えた。 厚労省が全国の労働局を通じて、新型コロナウイルスの影響による解雇や休業の情報を企業の相談などをもとに集め、25 日時点の数値として集計した。

感染拡大による雇用の悪化は今後、さらに深まる見通しだ。 27 日の参院予算委で西村康稔経済再生相は「求人が急速に減少しており、雇用、所得の環境も急速に悪化している」との認識を示した。 政府は、新型コロナウイルスの影響で業績が悪化しても雇用を維持した企業に給付する「雇用調整助成金」を拡充する特例措置を設けた。 ただ、感染拡大が続いていることから、政府・与党は追加の特例措置として、全国を対象に助成率を最大で 4 分の 3 (中小企業は 10 分の 9)に引き上げる方針だ。 (滝沢卓、asahi = 3-27-20)


「夏まで働けると信じていた」 コロナで雇い止め深刻化

新型コロナウイルスの感染拡大が経済に影を落とすなか、派遣社員らの雇い止めが深刻化し始めた。 「ものづくり」を支える中小の製造業者にも、国際的な部品供給網の分断が直撃している。 暮らしは、地域経済はどうなるのか - -。 「やっぱり非正規から切られるんだ。」 関東のホテルで働く派遣社員の 30 代の女性は今月末での雇い止めを 2 月末に突然、知らされた。 新型コロナウイルスでホテルの業績が悪化した - -。 雇い止めの理由を、派遣元はそう説明した。

大学を卒業したが、人間関係などに悩んだ。 「新卒採用」を逃したことで正社員での就職は難しく、非正規で働いてきた。 現在の職場に派遣されたのは約 2 年前。 仕事に懸命に取り組み、「オリンピックで忙しい時にいてくれないと困る」と職場で言われ、うれしかった。 「今夏までは働けると信じていた」という。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で状況は一変した。 中国など海外からの宿泊客が急減。 勤め先の損失額が日に日に膨らむ様を職場で目の当たりにし、危機感を感じ始めていたところだった。 奨学金の支払いも残り、貯金はほぼない。 「仕事で努力をし、やりがいも感じていた。 自分の落ち度や怠慢でやめるわけではない。 急に闇の中に突き落とされたようで、これからどうすればいいかわからない。」

建築関係の企業で、派遣社員として働く都内の女性 (30) も「繁忙が見込めない」と 4 月末での雇い止めを告げられた。 「新型肺炎で経済が冷え込んでいるのに、次の仕事が見つかるだろうか。 本当は子どもが欲しいけれど、1 人で生きていくだけで精いっぱいです。」

「派遣先の仕事が減って生活が成り立たない。」 「1 カ月休むように会社に言われた。」 ひょうごユニオン(神戸市)などが緊急で始めた「新型コロナウイルス 労働・雇用ホットライン」には、6 日からの 9 日間で計約 100 件の相談が寄せられた。 会社に突然呼び出され、辞めるか、給料が半分のパートになるかをその場で決めるように迫られ、退職したと訴える人もいるという。 相談を受ける担当者は「正社員の相談もあるが、派遣社員やパート、契約社員からが多い。 新型コロナによる業績悪化で、雇用が不安定な人から切られているのだろう。」と話す。

厚生労働省によると、全国の都道府県労働局は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた特別相談窓口を設置。 先月 14 日から 3 月 12 日までの約 1 カ月間でのべ 3 万 6,580 人が相談した。 主な相談内容は、従業員に休業手当を払った企業に費用の一部を助成する「雇用調整助成金(1 万 7,820 人)」、従業員を休ませるなどの休業(7,305 人)、保護者の休暇取得支援(7,151 人)、解雇・雇い止め(882 人)だった。 (長富由希子)

「ものづくりのまち」にも影

6 千近い中小の製造業者が集まる大阪府東大阪市。 新型コロナウイルスの感染拡大の影響は「ものづくりのまち」にも色濃い。 「部品の在庫が底を突けば工場も止めざるをえない。」 従業員 52 人で照明器具を設計・開発する盛光 SCM の草場寛子社長 (46) は不安を口にする。 これまで中国の企業に頼っていた電源部品の入荷は、2 月から止まったままだ。 出品を予定していた東京の展示会も中止となった。 「取引先を広げる機会を失った。 早く部品の調達先や販路を見つけなければ。」

金属部品を作っている石切精密(従業員 18 人)は、中国と取引がある関係先が工場を動かせず、そのあおりで生産縮小を余儀なくされている。 2 月の売り上げは例年より 2 割以上落ちた。 従業員に支払う休業手当の一部を国が補助する「雇用調整助成金」も申請したが、吉田由美子社長 (51) は「制度には休業日数の制限もある。 長引けば頼れない。」と話す。

東大阪商工会議所が 2 - 3 月、従業員 10 人以上の市内の企業 1,998 社を対象とした調査(455 社回答)では、感染拡大で「既にマイナスの影響が出ている」と答えたのは33.8%。 「今後マイナスの影響が生じる可能性がある」は 44.4% だった。 具体的な影響(複数回答)としては「原材料・部品・商品の調達遅延・停止 (47.5%)」、「日本国内での減産・出荷の調整 (42.7%)」などが並んだ。

東大阪の中小企業にも詳しい近畿大経営学部の芦塚格(いたる)教授(中小企業経営論)は「市内には従業員 10 人以下で組織的にも弱い企業が圧倒的に多い。 このままでは事業の継続を諦めてしまう企業が出てきかねない。」と心配する。 ノースヒルズ溶接工業(同 6 人)は、中国企業の孫請けの仕事も多い。 北坂規朗(のりあき)社長 (36) は先行きの見えない不安を募らせる。 「今はまだ大丈夫だが、今後中国の景気が落ち込み、仕事の依頼が無くなるのでは。 本当に影響が大きくなるのはこれからだと思う。」

仕事は受注できても、別の苦しみを感じる企業もある。 金属部品加工の岩井製作所(同 9 人)は、数年前に自社から中国企業に乗り換えた大手メーカー関連の仕事が舞い込んだ。 4 年前、空調機器の部品製造を大手メーカーの孫請けの更に下請けで引き受け、約 1 千万円の設備投資で効率化を図ったが、その直後の値下げの要求を拒否し、仕事は中国企業に奪われた。

ところが今年 2 月、再び同じ部品の発注がきた。 聞けば、中国の工場が止まったという。 中国企業と同等の価格で、という当初の話から交渉を重ね、より高額で引き受けたが、岩井則秀社長 (61) は「うちはいわば『つなぎ』で、またすぐ中国に戻っていく。 仕事を受けたのが正しかったのか分からない。 常に大手に振り回され、憤りも感じる。」 (森下裕介、asahi = 3-19-20)

労働問題に詳しい村田浩治弁護士(大阪弁護士会)の話

受注減で企業が直ちに従業員を解雇できるわけでない。 判例から、解雇の回避努力をしたかや手続きの適正さなどの要件が必要だ。 休ませた従業員への休業手当の一部が助成される「雇用調整助成金」の利用を検討するなど、企業側には解雇を防ぐ努力が不可欠だ。 労働者も、解雇を告げられてもすぐに返事はせず、解雇理由を書面でもらい、労働組合などに相談してほしい。 派遣社員が雇い止めをされた場合、労働者派遣法に基づいて、派遣元には別の派遣先の提供などの雇用安定措置が義務づけられる場合があり、要求する必要がある。

新型コロナウイルス労働・雇用ホットラインへの主な相談

  • 客が激減し、3 月の家賃が払えない。(飲食店経営者)
  • 講師に賃金を払えない。 救済制度はあるか。(スポーツクラブ経営者)
  • 会社から 1 カ月休めといわれた。 生活があるから働きたいと言ったら解雇と言われそうで怖い。(アルバイト)
  • 会社に急に呼び出され、やめるか、賃金が半分になるパートになるか迫られた。 退職したが、会社の対応は妥当か。(正社員)
  • ブライダルの仕事をしてきたが、3 月から仕事がなく、生活費がない。(派遣社員)
  • コロナの影響で会社がストップ。 休業を言われたが、生活が苦しい。(派遣社員)
  • 介護施設に勤務。 「マスクをしろ」と言われるが、売り切れている。
  • 旅行関係で委託の仕事をするが、仕事がない。 生活資金の貸し付けを教えて欲しい。(フリーランス)
    * ひょうごユニオンなどへの取材から

1 - 2