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サムスン、中国でのスマホ生産から撤退へ
中国市場でのシェアは 1% 以下に低迷

韓国サムスン電子が、中国での携帯電話製造から撤退することが明らかになりました。 韓国の経済メディア MoneyToday は、同社中国恵州で稼働していたスマホ生産拠点を 10 月末に閉鎖すると報道しました。 サムスンの中国恵州の工場で生産されたスマートフォンは、もっぱら中国国内市場向けに出荷されており、工場閉鎖は中国市場での販売縮小につながるものと思われてます。 この背景には中国の賃金増加によるコスト増と、サムスンの中国市場での不振という 2 つの事情があります。

中国市場はファーウェイ、OPPO、Vivo、シャオミといった地元に基盤を持つ企業がシェアを伸ばし、海外勢ではアップルがかろうじて数 % の市場シェアを保っている状況です。 直近では、Google との取引禁止により中国市場外での販売見通しが厳しくなったファーウェイが中国市場にいっそう注力する動きを見せています。 同紙が Strategy Analytics の市場調査として伝えたところによれば、サムスン電子の中国スマホ市場でシェアは 0.7% (2019 年第 2 四半期)と、低迷を続けている状態。 サムスン恵州工場の売上高は、今年 2019 年上半期は 1 年前の実績からほぼ半減となる 3 兆 5,000 ウォン(約 2,700 億円)へと減少する見通しとしています。

今後、サムスンは中国市場で、ODM 方式の生産を拡大する方針を示しています。 つまりアップルなどと同じように、自社で設計したスマホの生産を工場へ委託する形を採用することになります。 あわせて、ベトナムとインドの自社工場での生産量を増加することによって、中国生産の撤退による不足分を補う方針です。 (石井徹、engadget = 10-1-19)


サムスン、中国の「半導体素材・装備同盟」拒否

中国政府がサムスン電子に半導体素材・装備の共同開発を提案していたことが分かった。 サムスン電子はいくつかの理由を挙げて中国政府の要求を断ったという。 中国は韓国および米国企業との協業計画を変更し、独自で半導体素材を開発してメモリー半導体を生産する方向に転換した。

中国「素材・装備の共同開発を」

半導体業界によると、中国政府は 7 月中旬、サムスン電子に半導体素材・装備を共同開発し、関連産業を共に育成しようと提案した。 日本政府が半導体生産に必須の 3 大核心素材(高純度フッ化水素、フォトレジスト、フッ化ポリイミド)に対する輸出規制措置を発表した直後だ。

中国政府が世界半導体市場を掌握する、いわゆる「半導体崛起」を実現させるためには、世界 1 位メモリー半導体企業のサムスン電子の支援が必要だと判断したというのが業界の見方だ。 日本の半導体輸出規制で韓国も中国と協業する必要性が高まったというもサムスン電子にラブコールを送った要因の一つに挙げられる。 韓国の半導体素材および装備の国産化に中国が少なくない役割をするという意図だ。 中国はフッ化水素生産に必要な原料の無水フッ酸を生産中だ。 高純度フッ化水素の国産化に動き出した(韓)国内企業ソルブレーンも中国産無水フッ酸にある程度依存している。

半導体装備部門では中国が韓国より優位という評価を受ける。 中国上海マイクロエレクトロニクスは半導体露光装置を開発中だ。 オランダの ASML が独占中だが、韓国では生産していない装置だ。 中国アドバンストマイクロファブリケーションは米国が独占中のエッチング装置を生産している。 4 - 6 月期の中国の半導体装備生産額は 33 億 6,000 万ドルと、韓国(25 億 8,000 万ドル)を上回った。 今までは中国企業が主に自国の半導体装備を購入しているが、SK ハイニックスをはじめとする韓国企業も中国産装備の購入を増やす傾向にある。

サムスンの拒否で独自生産に動き出した中国

サムスン電子が中国政府の提案を受け入れなかったのは、短期的には半導体素材・装備国産化にプラスになっても中長期的に韓国半導体産業を脅かすと判断したからだ。 中国国有半導体会社はサムスン電子と SK ハイニックスが二分している DRAM、NAND 型フラッシュメモリーなどメモリー半導体生産を推進中だ。

サムスン電子が拒否の意を伝えると、中国は独自開発に方向を定めた。 中国国有半導体企業の紫光集団は 16 日、韓国や米国との協力を通じて半導体競争力を強化するという従来の計画をあきらめると宣言した。 その代わり独自の研究開発 (R & D) でメモリー半導体を生産すると発表した。 中国重慶産業基金の支援を受けて今後 10 年間に 8,000 億元(約 15 兆円)を DRAM 量産に投資する計画という。 紫光集団は 2015 年、DRAM 市場 3 位の米マイクロン買収を進めたが、米国政府が承認しなかった。 今年 2 月には米中貿易紛争の影響でインテルとの第 5 世代 (5G) 移動通信モデムチップ協力を中断することにした。 (韓国経済日報/中央日報 = 9-30-19)


サムスン、ぶれぬ日本重視 「日韓半導体連合」には暗雲

日韓の産業界が輸出管理の厳格化で揺れるなか、渦中の韓国サムスン電子による日本重視の調達姿勢は足元では変わっていない。 半導体の先端開発を主導する同社にとって部材で先行する日本からの調達は必然で、日系企業も巨大顧客サムスンを手放す理由はない。 ただ政治対立により日本依存リスクが表面化したことで、「日韓半導体連合」の先行きには不透明感も漂い始めている。

「実際に禁輸まで踏み込む可能性はあるのでしょうか」、「我々は日本政府の真意を測りかねています」。 日本政府が半導体やディスプレーの生産に不可欠な材料輸出の管理厳格化を表明した 7 月 1 日。対象 3 品目を扱う素材メーカーだけでなく幅広いサプライヤーの営業担当者に、サムスンの調達部門から問い合わせが相次いだ。

経済産業省から事前に説明を受けていた日系メーカー側は「書類さえそろえばこれまで通り許可は出すと聞いています。 御社の工場を止めるようなことはありません。」と回答した。 それでもサムスンは本社の調達チームを日本に派遣し調達先を個別に訪ね、生産量や在庫の確認に奔走した。

主要調達 100 社中、日本は 23 社

サムスンが技術開発をけん引する半導体では、主要部材は日本メーカーに頼る部分が大きい。 取引関係を公表する主要 100 社のサプライヤーリストのうち日系企業は 23 社で、韓国系企業(39 社)に次いで 2 番目に多い。 23 社の内訳は住友化学や SUMCO、大陽日酸といった素材メーカー、東京エレクトロンやキヤノン、アルバックなど製造装置メーカーが並ぶ。

「調達先を変えるリスクをサムスンはよく知っている。」 半導体製造用の薬液を供給する化学大手幹部はこう解説する。 半導体の生産は数千ともいわれる精緻な工程を 2 - 3 カ月かけてこなす。 同じ材料でもメーカーごとに微妙な「癖」があり、調達先を変更すれば歩留まり(良品率)悪化を招きかねない。

ディスプレーや電池などでも中核材料を日本企業がおさえている。 サプライヤー各社も「そう簡単に材料が切り替えられるとは思えない(旭化成の柴田豊副社長執行役員)」との声が大勢だ。 実際にサムスンに半導体部材を供給する日系メーカー首脳は「サムスン首脳陣の(日本重視の)調達姿勢は揺れていない」と口をそろえる。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領が 7 月 10 日に大手財閥のトップを緊急招集した際にも、サムスングループを事実上率いる李在鎔(イ・ジェヨン)副会長は日本への出張を優先。 あらかじめ予定していた金融機関に加えて装置・部材メーカー首脳とも面談し、政治的な対立の中でも企業間の協調を訴えた。

テレビや携帯電話、半導体、ディスプレーといった分野で日本の電機各社を追い越してきたサムスン。 成長過程において「日本に学べ」という経営方針は徹底していた。 創業者の故・李秉普iイ・ビョンチョル)氏、中興の祖の李健熙(イ・ゴンヒ)会長、李副会長と 3 代続けて日本に留学。 流ちょうな日本語を話し「日系企業との契約を次々に決めていった。(元電機大手首脳)」

祖業の製糖業から電子産業に進出するきっかけとなったのも、1969 年の三洋電機と結んだ白黒テレビの合弁設立だった。 その後も NEC や東芝、東レ、ソニー、住友化学などと協業して巨大企業の礎を築いていった。 韓国・水原(スウォン)市のサムスン本社内の博物館「サムスン・イノベーション・ミュージアム」には三洋への恩義が記されている。

サムスンが他社から技術を吸収してきた背景には「短期で成果を求める韓国企業では 5 年、10 年単位の基礎研究は難しい(サムスンで働く日本人技術者)」という事情もある。 調達力を高めるサムスンにとって、先端部材は自前開発よりも外部調達がコスト面でも有効という判断も働く。

一方の日系サプライヤー側にも「サムスン・ファースト(第一)」となる事情がある。 かつて主要取引先だった日系電機が相次ぎ事業から撤退・縮小。 日本勢の退潮を尻目にサムスンは半導体で 8 兆円、ディスプレーで 3 兆円の売上高を持つ世界最大のデバイス企業に成長した。 「結果的にサムスンが最大顧客となった。(製造装置大手)」

先端部材を外部に頼るサムスンと、最大顧客を失いたくない日系サプライヤーの相互依存関係は今のところ強固なままだ。 しかし日本政府の輸出管理の厳格化を、韓国政府や国内世論は「経済報復」として激しく反応。 結果的に先端部材の日本依存がリスクとして強く認識されたことで、サムスンも足元では代替調達を模索せざるを得ない状況となっている。

8 月以降に日本政府が管理厳格化の 3 品目に対して輸出許可を出し始めたとはいえ、韓国側が日韓軍事情報包括保護協定 (GSOMIA) の破棄を決めるなど両国の関係改善は進んでいない。 政府間の対話不足に対して口を閉ざす両国産業界。 むやみな挑発行為が続けば、サムスンと日系サプライヤーが築いてきた共存共栄の分業体制ですら破壊しかねない。

日韓対立、利するのは中国勢

日韓の政治対立は経済面でも中国を利することになりそうだ。 特に半導体などハイテク産業での覇権を狙う中国にとって、半導体世界首位のサムスンはいつかは追い越すべき対象と映る。 数兆円規模の設備投資を政府主導で進める中国勢の追い上げに、サムスンといえど足踏みしている余裕はない。

足元では半導体製造装置メーカーの「中国シフト」は始まっている。 設備投資額が 1 兆円規模の半導体工場の建設計画が次々と浮上する中国は、生産設備を売る装置メーカーにとって有望市場。 日系企業も「営業担当を 100 人単位で中国に長期出張させて各地で商談を進めている(東京エレクトロン担当者)」という。

中国メーカーが先端半導体を安定的に量産するにはまだ時間がかかる見込み。 だが、将来的に日系部材メーカーも中国シフトに動くのは間違いない。 液晶パネルでは中国勢が生産能力で韓国勢を追い抜いたという先例がある。 業界内では「次は半導体」との声は根強い。 韓国半導体産業協会の安基鉉(アン・ギヒョン)常務は「日韓の間に壁ができれば、材料、装置、最終製品の各分野で覇権を狙う中国の半導体産業を利することになる」と警鐘を鳴らす。

日本のエレクトロニクス産業を追い詰めたサムスンが、今度は中国勢にのみ込まれるシナリオが現実味を帯びる。 韓国の輸出全体の 2 割を担い、証券市場の時価総額の 2 割を占める同社の衰退は韓国経済全体の衰退を意味する。 足元の経済停滞に悩む韓国政府もまた政治対立を続ける余裕はないはずだ。 (細川幸太郎、新田祐司 = 日経産業新聞、nikkei = 9-20-19)


サムスン、半導体工程に 8 月中旬から韓国製フッ化水素投入

サムスン電子が DREAM や NAND 型フラッシュなどメモリー工程に日本製フッ化水素の代替品を投じ始めた。 日本政府が 7 月 4 日にフッ化水素、フォトレジスト、フッ化ポリイミドの先端素材 3 品目に対する対韓輸出規制に出てから 1 カ月半ぶりに代替材の投入に出たもの。 このようにサムスン電子や SK ハイニックスで日本製フッ化水素の代替作業が予想より早く進み、年末を前後して完全に代替作業を完了できるだろうという見通しが出ている。

3 日の半導体業界によると、サムスン電子は韓国のソルブレインと ENF テクノロジーが製造したフッ化水素の納品を受け先月中旬から一部工程に投じ始めた。 2 つの会社は中国製の無水フッ化水素酸を輸入して日本から輸入していた純度 99.999% のフッ化水素の液状製品を作るのに成功した。

ただ、国産フッ化水素を半導体生産のすべての工程ラインに投じる段階ではない。 サムスン電子関係者は「韓国企業が生産したフッ化水素の試作品を敏感度が低い工程から順次投じており、敏感度が高い工程に広めていく方針」と説明した。 半導体の工程は 500 種類ほどで構成されており、このうちフッ化水素が必要な工程は 50 工程前後だ。 サムスン電子はこのうち 1 - 2 工程から日本製に代わり国産製品を使っているという。

SK ハイニックスもやはり韓国企業が生産したフッ化水素を近く試運転作業に投じる計画だ。 今年に入り 2 度減産に入った SK ハイニックスは、日本発の素材不足では相対的に余裕がある方だ。 SK ハイニックスは中国・無錫にある半導体生産ラインでは中国製フッ化水素で日本製の代替作業を完全に終えたという。

これとともにサムスン電子と SK ハイニックス内部の素材開発担当エンジニアは国産フッ化水素試作品に対する成分分析を進めている。 韓国企業が作ったフッ化水素を半導体ラインに合わせて素材成分などを調整する作業だ。 素材企業とサムスン電子、SK ハイニックスが一種の「共同開発」をする過程で、これまで使っていた日本のステラケミファと森田化学工業の製品と比較して成分構造で大きな差がなければ半導体工程に全面的に投じた時にも製品欠陥が発生しないためだ。

これに加えて韓国企業のソルブレインが今月末に予定通りに忠清南道(チュンチョンナムド)の公州(コンジュ)工場増設作業を完了する場合、国産フッ化水素の量産規模もさらに大きくなる見通しだ。 ソルブレインと ENF フテクノロジーはそれぞれの日本のステラケミファ、森田化学工業から輸入したフッ化水素を精製した後、エッチング液形態でサムスン電子に半導体工程用素材として納品してきた。 これら韓国企業は日本の輸出規制が始まってからフッ化水素の輸入先を台湾と中国に変えた。 (韓国・中央日報 = 9-4-19)


Samsung、ガラケー型の二つ折りスマホを開発中か?

電話というよりガラケーみたいに折りたためるタブレット?

たとえ多くのレビュアーたちがたった 1 日で壊したとしても、「Galaxy Fold」が革新的なデバイスであることに間違いないでしょう。 これはどちらかというと、折りたたんでスマホのサイズになるタブレット端末といったデバイスです。 なのでポケットが小さい人たちにとっては、使わないときは小さく折りたためる携帯サイズのデバイスのほうが好まれるはず。 Bloomberg によると、Samsung は同様のデバイスを開発中であり、早ければ来年にも発表するよう動いている、と伝えています。

ガラケー型の二つ折りスマホになるみたい

この新デバイスは、いわゆる折りたたみ式スマホにはならないでしょう。 イメージは、すでに流出している Lenovo と Motorola の Razr 製のデバイスみたいな感じ。 韓国の報道機関 ET News もウワサを報じていましたよね。 6 月に Samsung がガラケー型の二つ折りスマホを出すと! 当時私たちは、こうしたウワサをバカバカしいと言っていたのですが …。 Bloomberg の記事を見るにその可能性は高そうです。

ポケットのサイズになる

Samsung の新型機は、開くと 6.7 インチのディスプレイが中に搭載されている、と伝えられています。 その大きさは、巨大な「Galaxy Note 10+」より 0.1 インチだけ小さいディスプレイとのこと。 Bloomberg がいうには、新型機は「ポケットの大きさ」に折りたためるのだそうです。

高級ファッション・ブランドとの合作

また Bloomberg によれば、この新端末は Galaxy Fold よりスタイリッシュなものを目指しており、高級服ブランドの THOM BROWNE がデザインを手掛けているとのこと。 テック大好きっ子以外の層にも訴求を目指しているようですね。 THOM BROWNE の服は、現代的な雰囲気を醸し出した東海岸向けのものが多く、若者向けのラルフローレンみたいなイメージのブランドです。 おそらくですが、THOM BROWNE の協力は Samsung の将来の構想にクラシカルな風合いを授けてくれるのではないでしょうか。

Samsung にとっての問題とは …

彼らにとって障壁となるのは、スマホがテクニカル過ぎることではありません。 それが高価でかつ悪評なことです。 スマホが発火、もしくは保護フィルムを 1 枚はがしただけで壊れるのが問題なのです。 それに値段が 1,000 ドル近くになると、人々は毎年、あるいは 2 年に一度のアップデートさえ、ためらうようになるでしょう。 ですが Samsung は、閃きとスマートなデザインが、人々の心を変えてくれるであろうことに期待を寄せているようです。

Bloomberg によると、このガラケー型の二つ折り電話は、2020 年のどこかで発売するようです。 (Alex Cranz、Gizmodo = 9-4-19)


米メディアが新製品を酷評、続くサムスンの苦境

「私はこんなことまでスマートフォンでできるなんて想像もしなかったの。 ハロー! みんな、聞いてる?」 8 月 7 日、米ニューヨークのブルックリンで開催されたサムスン電子の新型スマホの披露イベント「サムスン・ギャラクシー・アンパック 2019」。 写真投稿アプリの「インスタグラム」で 18 万人を超えるフォロアーを持つアーティストのシャーン・ダンテスさんは、外に設置されたデモンストレーション・エリアから会場の観衆にこう呼びかけた。

8 月 23 日発売のサムスン電子の最新スマホ「ギャラクシーノート 10」がこの日の主役だ。 有機 EL を使った 6.3 インチのディスプレーの「ノート 10」と 6.8 インチの「ノート 10 プラス」の 2 種類が披露された。 想定する顧客層の一例がダンテスさんのような若いインスタグラマーだ。 スマホを三脚に置き、付属のスタイラスペンのボタンを押すと遠隔でシャッターが切れたり、スタイラスペンで円を描く動作をするとカメラがズームイン/アウトしたりする。 若いユーザーがいかにも喜びそうな機能をふんだんに盛り込んだ。

その中にこんな機能がある。 スマホのカメラを起動させてスタイラスペンで画面の中に絵を描くと、画面に映る空間の中にその絵が 3D で浮かび上がる。 スマホを絵に近づけると絵はアップになり、側面に動かすと絵を横から眺めることもできる。 ダンテスさんは、こんなデモで会場を盛り上げようとしたが、歓声が一向に湧かなかったため、冒頭のような呼びかけにつながった。 サムスンとしてみれば、最新の機能に自信があったに違いない。 スマホ事業の高東真(コ・ドンジン)社長は壇上で「サムスンは技術革新の最先端を走っている」と胸を張った。 だが、イベント後に出た米メディアの反応は真逆だった。

WSJ は「新しさのない新しいもの」と酷評

特に辛口だったのがニューヨークの地元紙だ。 ウォール・ストリート・ジャーナル (WSJ) は「サムスン電子は『新しさのない新しいもの (same new thing)』をもはや好まなくなっている消費者を、ノート 10 で魅了したいと望んでいる」と評価。 ニューヨークタイムズは「イヤホンジャックをなくしたアップルやグーグルのスマホをちゃかしていたサムスンが、ノート 10 で同じことをした」との AP 通信の記事を掲載して皮肉った。 米国でこうした評価を受けたことは、日本政府による輸出管理の厳格化の影響を受けるサムスン電子にとって危機的状況とも言える。

7 月に発表した同社の 19 年 4 - 6 月期決算は、売上高が前年同期比 4% 減の 56 兆ウォン(約 5 兆 1,000 億円)、営業利益は同 56.2% 減の 6.5 兆ウォンの減収減益だった。 米中貿易摩擦による中国の華為技術(ファーウェイ)への半導体出荷減などに加え、本のように折りたためるスマホ「ギャラクシーフォールド」で不具合が見つかり、発売を同年 9 月に延期したことも響いた。

サムスンが 2019 年後半の業績回復の切り札に位置付けていたのがノート 10 だった。 だが、米メディア評と同様に消費者からの評価も厳しく、ノート 10 の売れ行きが芳しくなければ、業績回復は見込めない。 さらに日本からの半導体材料の輸入に手間取ることがあれば、半導体事業の売り上げにも悪影響を及ぼしかねない。 そんな同社に朗報が入ったのは、ノート 10 発表の翌日(米国時間)だった。 日本で世耕弘成経済産業相が会見を開き、輸出管理厳格化の対象となっていた半導体材料の一部の出荷を許可したことを公表した。

日本の輸出管理厳格化より中国経済の減速が懸念材料

日本の輸出管理厳格化ついて、米メディアは現実的な報道をしている。 WSJ は日本が厳格化を決めた直後の 7 月 2 日の記事でこう予見していた。 「韓国の半導体は世界市場の半数を占めるため、製造に支障をきたすようなことがあれば日本の企業の首を絞めることになる。 さらに半導体メーカーは通常、数カ月分の在庫を持っている。 日本の管理厳格化は韓国の半導体メーカーに致命的なダメージを与えるようなことにならないだろう。」

世耕大臣の会見の主眼も「優遇措置の適用除外はあくまで不適切な事例を排除するためで、問題のない案件については許可する」という日本政府の意向を示したものだ。 実際、最初の許可は製造に直接的影響のない、約 1 カ月という短期間で出た。

ただ、先の WSJ の記事などは、サムスンにとってさらに悩ましい問題についても触れている。 世界経済の停滞による半導体の売り上げ減だ。 とりわけ中国経済の動向はサムスンに与える影響が大きい。 サムスンは半導体の多くを中国企業に販売しているためだ。 悩みの尽きないサムスン。 メディア評を吹き飛ばし、米国市場をはじめ世界中でノート 10 の大ヒットを飛ばすことができるだろうか。 (池松由香、日経ビジネス = 8-14-19)


パカパカするスマホ、22 万円 サムスンが 9 月から販売

携帯電話世界最大手の韓国サムスン電子は 25 日、画面が折り畳める新型のスマートフォン(スマホ)を、9 月から販売開始すると発表した。 折り畳む部分の画面に不具合が生じ、4 月に発売延期を明らかにしていたが、デザインや部品などを変えて対応した。

サムスンが発売するのは「ギャラクシー・フォールド」。 折り畳んだ状態だと 4.6 インチ画面のスマホだが、広げると 7.3 インチに広がる。 販売価格は 1,980 ドル(約 22 万円)の見込みだ。 サムスン電子は、どの国で販売を始めるか明らかにしていないが、当初から予定していた米国を皮切りに日本を含む世界各国に広げるとみられる。 サムスンは、この新製品の開発に約 8 年をかけ、当初は年内に 100 万台の販売を目標としていた。 (ソウル = 神谷毅、asahi = 7-25-19)

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サムスン幹部「Galaxy Fold は準備不足だった」と認める

「不可能を可能とする」社内哲学も原因の 1 つかも

サムスンのモバイル部門を統括する DJ Koh 氏は、同社の折りたたみスマートフォン Galaxy Fold につき、準備不足のまま市場への投入を急いだことを認めたと報じられています。 Galaxy Fold は、本来は 4 月 26 日に発売予定だった製品。 ところが試用した複数のレビュアーからわずか 1 日で故障したとの報告が相次ぎ、発売を延期することに。その後7月発売も無理との噂が報じられたかと思えば、サムスン幹部からは「ディスプレイの問題はほとんど解決され、発売準備ができている」との発言もありました。とはいえ、現時点では正式な発売日はいまだに発表されていません。

英国メディア Independent によると、Koh 氏はメディアイベントで Galaxy Fold にまつわる一連の出来事を「恥ずかしいこと」と語り、「何かを見落としていた」と認めているとのこと。 現在は 2,000 以上のデバイスをあらゆる面でテスト中であり、レビュアーのおかげで考えもしなかった問題も判明し、大規模な検証は続行中だと述べられています。

Koh 氏は Galaxy Fold の問題を自らの責任としていますが、Independent によればサムスン幹部の 1 人は、原因の一部は同社の「不可能を可能にする」ブランド哲学にもあると示唆しているそうです。 そうした理念に惹かれた人々がサムスン初の折りたたみスマホ Galaxy Fold を予約したとも思われますが、2,000 ドル(約 22 万円)近い高額商品だけに、今度こそできるかぎり万全の状態で発売を望みたいところです。 (Kiyoshi Tane、Engadget = 7-3-19)

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サムスンが画面を折りたためるスマホ発表 21 万円相当

携帯電話世界最大手の韓国のサムスン電子は 20 日、米サンフランシスコで開いたスマートフォンの発表会で、画面を折りたためる新製品「ギャラクシー・フォールド」を発表した。 4 月 26 日から米国など世界各国で発売するが、日本での発売は未定だという。 「折りたたみスマホ」は、中国企業が昨年末に発売する形で先行しており、今後、競争が激化することになりそうだ。

「ギャラクシー・フォールド」は折りたたんだ状態だと 4.6 インチの画面のスマホだが、それを広げると裏側についている画面が 7.3 インチのタブレット端末になる。 いずれも鮮やかな色彩が特徴の有機 EL を画面に使用。 タブレット画面では、三つのアプリを同時に開いて操作することもできる。 同社幹部は「全く新しいカテゴリーのスマートフォンだ」と強調した。 高速通信網の LTE 対応型のほか、新規格の 5G にも対応する機種を出すという。

ただ、販売価格は 1,980 ドル(約 21 万 9 千円)だといい、かなりの高価格になった。 タブレットを折りたたむとスマホになる端末は、中国系のベンチャー企業「ロヨル(柔宇科技、本社 = 中国・深セン)」が昨年末に中国で発売している。 (サンフランシスコ = 尾形聡彦、asahi = 2-21-19)


苦戦! シェア 20% → 0.8% 韓国サムスン「最後のスマホ工場」中国撤退か

中国広東省にある恵州サムスン電子は今月、公式サイトで従業員向けに他の中国メーカーなどの合同企業就職説明会を行うと発表した。 さらに公式サイトには地元企業の紹介などが載せられており、業界では大規模リストラの予兆と捉えられている。 「企業が社員のために新しい仕事を探すというのはあまりないことだ。 すでにリストラ、工場閉鎖の計画を始めたということだろう。」ある部品サプライヤーの経営者は中国メディアに対して語った。

このサプライヤーに対しては 1 年以上前から、サムスンからベトナムに移転するよう要請があったが断り、協力関係も途絶えたという。 さらに「サムスンは前からサプライヤーをベトナムやインドに移転させてきた。 サムスン工場が閉鎖するのも必然のことだ。」と語った。 つまりサプライチェーンごと生産拠点を移転する計画を進めているというのだ。 中国メディアによると、恵州サムスン工場は 1992 年に設立され、1993 年に正式に生産を開始した。 2018 年 12 月、サムスンは天津の工場を閉鎖し、恵州サムスン工場が中国で最後のスマートフォンの生産工場になっていた。 その「最後の工場」も撤退間近との観測が出ているのだ。

撤退観測の背景には中国市場での苦戦ぶりがある。 つい 6 年前の 2013 年、サムスンの携帯電話は中国市場でシェア 20% を占め、堂々の 1 位だった。 しかしその後、NOTE7 の爆発事故による消費者離れや、ファーウェイ(華為)やシャオミ(小米)、VIVO、OPPO など中国メーカーの技術力とブランド力が急上昇し、サムスンのシェアは急落。 2018 年には市場シェア 0.8% まで落ちた。 街中のサムスンショップも苦戦とともに徐々に姿を消していった。

また、中国国内での賃金上昇に伴い、製造コストが高くなったことも撤退の理由とみられる。 中国メディアによると、恵州での一人あたりの人件費は月に約 72,000 円を下回ることはないが、ベトナムでは約 24,000 円程度、インドでは 32,000 円程度だという。 「電子製品は同質化の傾向にあり、材料、設備などのコストはどこでもほぼ変わらない。 企業にとっては人件費を抑えられれば、その分利益が増すことになる。 企業にとっては必然的な選択だ。」と別のサプライヤーは語った。

米中貿易戦争の影響で、今、多くの企業が追加関税から逃れるために中国から東南アジア、南アジアへの生産移転を進めている。 サムスンは今回の動きについて韓国メディアに対し、「米中間の貿易摩擦とは関係がない」とコメントしているが、中国の研究機関は米中貿易戦争の影響に伴い世界のサプライチェーンの再構築が加速していると分析した上で、サムスンや台湾の鴻海精密工業の例を挙げ、「移転の動きが顕在化している」と指摘している。 サムスンの場合、製造環境の変化に対応した経営判断ともいえるが、巨大市場からほぼ駆逐されてしまったのは大きな痛手に違いない。

アメリカの調査会社 IDC が発表した、2019 年 1 - 3 月期のスマホ世界市場でのシェアによると、サムスンはトップの地位を維持しているが、市場そのものが縮小する中、上位メーカーで前年実績を上回ったのは 2 位に浮上したファーウェイのみで、サムスン、アップルともに出荷台数が落ち込んでいる。 日本の輸出規制によって半導体製造で打撃を受ける中、スマホでも中国勢の猛追によって逆風にさらされている。 (北京 = 高橋宏朋、FNN = 7-24-19)

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