韓国の尹錫悦大統領を罷免、憲法裁宣告 「非常戒厳」めぐり弾劾訴追

韓国の憲法裁判所は 4 日、昨年 12 月の「非常戒厳」宣布を受けて国会に弾劾訴追された尹錫悦(ユンソンニョル)大統領 (64) に対し、「憲法秩序を侵害した」などとして裁判官の全員一致で罷免を宣告した。 尹氏は失職し、60 日以内に大統領選が行われる。 現職大統領が弾劾訴追で罷免されるのは、2017 年の朴槿恵(パククネ)氏に続いて 2 人目。

憲法裁に上訴の制度はなく、今回の判断が最終決定になる。 弾劾をめぐる与野党や世論の対立が深まるなか、尹氏の支持者らの強い反発が予想され、混乱が続く恐れがある。 尹氏は昨年 12 月 3 日に、1987 年の民主化後初めてとなる非常戒厳を出し、同 14 日に国会で弾劾訴追案が可決されて職務停止となった。 その後、罷免の可否を判断する弾劾審判が憲法裁で行われ、尹氏も現職大統領として初めて出廷した。 審判では、非常戒厳を出したことの違憲・違法性などについて、野党議員らで構成する訴追団側と尹氏側の主張が真っ向から対立した。

韓国の憲法は、戦時やそれに準ずる国家非常事態の際に、大統領が戒厳を宣布できるなどと定めている。 訴追団側は、今回はこの要件を満たしておらず、憲政秩序を侵害する行為だと指摘。 尹氏が国会に軍や警察を投入して封鎖しようとしたり、議員を「引きずり出せ」と指示したりしたなどと主張した。 一方、尹氏側は「巨大野党」が国政をまひさせていることを国民に知らせるのが目的で、「引きずり出せ」との指示についても否定。 非常戒厳は大統領の権限の範囲内だったと主張した。

弾劾審判は 2 月 25 日に結審したが、宣告までに 38 日を要した。 現職大統領として過去に弾劾訴追された盧武鉉(ノムヒョン)氏と朴氏の場合は結審から 2 週間以内に判断が示された。 今回は弾劾に反対の世論も一定程度あり、非常戒厳という事案の重さなどから、憲法裁が慎重を期したとの見方が出ていた。 検事出身の尹氏は 22 年 5 月に大統領に就任。 文在寅(ムンジェイン)前政権下で冷え込んだ日韓関係の改善を主導し、核・ミサイル開発を進める北朝鮮には強硬な姿勢をとった。 一方、昨年 4 月の総選挙で保守系の与党が大敗し、支持率も低迷して政権運営は行き詰まっていた。

今後は 60 日以内に大統領選が行われることになるが、直近の世論調査では進歩(革新)系最大野党・共に民主党の李在明(イジェミョン)氏が支持率でトップを走っている。 弾劾訴追とは別に、尹氏は内乱を首謀した罪で今年 1 月に逮捕・起訴されたが、裁判所が尹氏側の勾留取り消し請求を認めたため、3 月 8 日に 52 日ぶりに釈放された。 刑事被告人としての立場は変わらず、今月 14 日に初公判が開かれる。 (ソウル・清水大輔、asahi = 4-4-25)

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尹大統領の弾劾審判、25 日結審へ 憲法裁、来月中旬にも宣告か

韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が出した「非常戒厳」をめぐり、尹大統領の罷免の可否を判断する弾劾(だんがい)審判の第 10 回弁論が20 日、憲法裁判所で開かれ、憲法裁は 25 日に双方の最終弁論と当事者の意見陳述を行うことを決めた。 この日に結審し、宣告は 3 月中旬ごろになるとの見方が出ている。 20 日は証人尋問が行われ、韓悳洙(ハンドクス)首相は非常戒厳を出す直前の閣議が成立していたかについて「通常の閣議ではなかった」、「形式的、実体的な欠陥があった」としながらも、「捜査と司法の手続きを通じて判断されなければならない」と述べるにとどめた。

戒厳法は、戒厳を宣布する際は閣議を通さなければならないと定めている。 非常戒厳が出される直前に行われた閣議は約 5 分で、議事録も作成されていないと指摘されている。 出席した閣僚からは閣議ではなかったとの発言が出ており、この日の審判で韓氏も、懇談会程度だったとの発言をしたことがあると認めた。 一方、内乱を首謀した罪で起訴された尹大統領の刑事裁判の初の公判準備手続きも 20 日、ソウル中央地裁で開かれた。 韓国メディアによると、大統領側は捜査記録を確認できていないとし、起訴内容の認否を留保した。 (ソウル・太田成美、asahi = 2-20-25)

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尹錫悦大統領の弾劾審判、大詰め 主張は真っ向対立、主な争点は

韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が出した「非常戒厳」をめぐり、尹大統領の罷免の可否を判断する憲法裁判所での弾劾(だんがい)審判が大詰めを迎えている。 これまで 10 人を超える証人の尋問を実施し、18 日には訴追団側、大統領側の双方がそれらを踏まえ、全面的に対立する主張を展開した。 何が主な争点になっているのか。 争点の一つ目が非常戒厳の位置づけだ。 18 日の第 9 回弁論でも双方の主張がぶつかった。

野党議員らで構成する訴追団側は同日、非常戒厳を「最悪の憲政破壊行為」だとし、速やかな罷免を要求。 これまで訴追団側は軍や警察を国会に投入したことは「警告」などではなく、憲政秩序を転覆する実行行為だったと指摘してきた。 一方、大統領側は 18 日、非常戒厳を出すに至った背景を説明し、訴追団側が主張した「違法行為」についても反論。 尹大統領はこの日は出廷しなかったが、弁護団はこれまで野党による政府高官らへの相次ぐ弾劾訴追などで国政がまひし、不正選挙の疑惑も指摘される中で「警告」の意味で非常戒厳を出したとし、憲法に定める大統領権限の範囲内だと主張した。

国会の機能「無力化」図ったか

争点の二つ目が、尹大統領が国会の機能の「無力化」を図ったかどうかだ。 訴追団側が証人申請した郭種根(クァクジョングン)前陸軍特殊戦司令官は、尹大統領から直接電話で「議決定足数が満たされていないようだ。 早く国会の扉を壊し、中にいる人員を引きずり出せ。」と指示されたと述べた。 非常戒厳の解除要求決議案を採決するため国会に国会議員が集まっており、「人員」は「国会議員」だと理解したという。

憲法裁が職権で証人採用した首都防衛司令部のチョ・ソンヒョン第 1 警備団長も、上官の李鎮雨(イジヌ)前首都防衛司令官から「(国会議事堂の)内部に入って議員らを引きずり出せ」と指示されたと証言した。 チョ団長は再検討を求めたという。 一方の大統領側は指示を否定。 軍や警察の国会への派遣は戒厳下での「警備と秩序維持のため」の最小限のものだったとし、国民に軍人が攻撃を加えた事実もなく、国会議員の出入りを阻止する意図もなかったと主張している。

尹大統領に非常戒厳を出すよう建議した金竜顕(キムヨンヒョン)前国防相は、議員ではなく要員(軍人)を出せと指示したとの趣旨の証言をし、大統領側の主張に歩調を合わせた。

政治家の逮捕指示は?

尹大統領が政治家らの逮捕を指示したのか。 これが三つ目の争点だ。 ホン・ジャンウォン前国家情報院第 1 次長は尹大統領から電話で「この機会にすべて捕まえろ」と指示され、軍防諜司令部を支援するよう求められたと証言。 呂寅兄(ヨインヒョン)防諜司令官(当時)から 14 - 16 人ほどの対象者の名前を聞いたとも述べ、メモが存在している。 これに対し、尹大統領は指示を否定。

大統領側が証人として申請した上司の趙太庸(チョテヨン)国家情報院長は法廷で、メモは複数存在すると述べ、ホン前第 1 次長の証言の信頼性に疑問を呈した。 次回の弁論でホン前第 1 次長の証人尋問が再び行われる予定で、メモや証言の信頼性をめぐって攻防が予想される。

戒厳の手続きも争点に

このほか、非常戒厳を出すにあたって閣議などの手続きがきちんと踏まれていたかなども争点になっており、次回の弁論に証人として出廷する予定の韓悳洙(ハンドクス)首相の証言がカギになりそうだ。 大統領側はこの間、弾劾訴追について野党側による「弾劾工作」などと主張。 憲法裁の裁判官の政治的な性向などを問題視し、審判の進行への不満も訴えており、与党もこれに同調して圧力をかけている。 審判は残りの証人尋問や双方の最終意見陳述などを経て、近く結審するとみられている。 (ソウル・太田成美、貝瀬秋彦、asahi = 2-18-25)

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尹錫悦氏が憲法裁判所に出廷、歴代大統領初 軍幹部への指示「ない」

内乱などの容疑で逮捕された韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が 21 日、憲法裁判所で開かれた弾劾審判に出廷した。 過去に大統領として弾劾訴追された盧武鉉(ノムヒョン)氏、朴槿恵(パククネ)氏は出廷しておらず、弾劾された大統領が自ら出廷したのは初めて。 尹氏側は昨年 12 月に出した「非常戒厳」を改めて正当化し、尹氏は「詳しく調べてほしい」と述べた。

尹氏は非常戒厳を出した後に国会に弾劾訴追され、罷免の可否を判断する弾劾審判はこの日が 3 回目の弁論だった。 弁護団は非常戒厳について、野党が国政をまひさせていることなどへの警告に過ぎなかったとの主張を繰り返し、軍などを動員して国会を封鎖しようとしたとの訴追団側の主張に改めて反論した。 尹氏自身も、国会から議員を引きずり出すよう軍幹部らに指示したかとの裁判所の質問に、「ない」と否定。 「自由民主主義という信念一つを確実に持って生きてきた」とも述べた。

尹氏が非常戒厳を出した後、映像での談話の発表以外で公の場に姿を見せたのは初めて。 尹氏の弁護団は今後も原則として、尹氏がすべての弁論に参加する意向だとしている。 一方で、19 日に逮捕された尹氏は捜査機関の取り調べには応じない姿勢を貫いている。 密室で取り調べを受けるより、公開の法廷で自らの主張を世論に訴える方が得策との判断からとみられる。 また、自ら出廷することで、証人らに圧力をかける狙いもあるのではないか、との指摘も出ている。 (ソウル・太田成美、貝瀬秋彦、asahi = 1-21-25)

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尹氏本人は出席せず 14 日の弾劾審判初弁論 「安全と警護の問題」

韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が出した「非常戒厳」をめぐる憲法裁判所での弾劾審判について、尹氏の弁護団は 12 日、14 日に予定されている初弁論に尹氏は出席しないと明らかにした。 捜査当局が拘束令状を「違法な方法」で執行しようとしており、身辺の安全が懸念されるためだとしている。 弁護団は「大統領が出席するためには、身辺の安全と警護問題が解決されなければならない」とし、「問題が解決されればいつでも出席する予定だ」としている。

尹氏は昨年 12 月 3 日に非常戒厳を出した後、同 14 日に国会で弾劾訴追された。 尹氏の罷免の可否を判断する憲法裁での弾劾審判は同 27 日から弁論準備手続きが始まり、今月 14 日に初弁論が予定され、現時点で初弁論を含め 2 月 4 日まで計5回の弁論期日が指定されている。 (ソウル・貝瀬秋彦、asahi = 1-12-25)


韓国の尹錫悦大統領が釈放 検察が即時抗告断念 与党歓迎、野党反発

韓国の検察は 8 日、「非常戒厳」の宣布をめぐり内乱を首謀した罪で逮捕、起訴された尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の勾留取り消し請求を認めた 7 日の裁判所の決定に対する即時抗告を断念した。 尹大統領は釈放され、52 日ぶりに大統領公邸に戻った。 今後は在宅で刑事裁判に臨むことになる。  釈放によって、捜査を違法だと主張する尹大統領側や支持者らが勢いづく可能性がある。 憲法裁判所が弾劾審判で近く尹大統領の罷免の可否を判断するとみられるが、弾劾をめぐる社会の対立もより深まりそうだ。

尹大統領は 8 日午後 5 時 50 分(日本時間同)ごろソウル拘置所を出た。 公邸前に到着すると支持者らの前で車を降り、手を振ったりガッツポーズをしたりして応えた。 目の前で姿を見た男性 (25) は「弾劾訴追も必ず棄却されると信じる」と述べた。 尹大統領が公邸に入った後も、支持者らは「私たちが勝った」、「弾劾却下、職務復帰!」、「公捜庁(高位公職者犯罪捜査庁)解体」と声を張り上げた。 尹大統領は弁護団を通じたメッセージで、勾留取り消し請求を認めたソウル中央地裁の「勇気と決断」に謝意を示し、「寒い中でも応援してくださった多くの国民と未来世代のみなさんに深く感謝する」と表明した。

保守系与党・国民の力の権性東(クォンソンドン)院内代表は「違法な拘束から 52 日ぶりになされた至極当然の釈放だ」と指摘した。 検察が釈放を決めるまでに 24 時間以上かかったのは「職権乱用不法監禁」だったと攻勢を強めている。 一方、進歩(革新)系最大野党・共に民主党の報道官は尹大統領が「凱旋将軍」のように支持者の前でふるまったとして「(内乱罪の)被疑者であることを否定する破廉恥な態度」だとし、「すでに暴動をあおり始めている」と批判。 「迅速な罷免だけが憲政秩序を守ることができる唯一の道だ」として、憲法裁の決断を迫った。

この日、ソウル中心部では尹大統領の罷免を求める集会も行われ、参加者らが「内乱の首謀者の尹錫悦を罷免しろ!」と声を張り上げた。 尹大統領は 1 月 15 日に拘束令状に基づいて身柄を拘束され、19 日に正式に逮捕された。 検察は 26 日に起訴したが、弁護側はその時点では身柄を拘束できる期間を過ぎており、違法だなどと主張していた。 拘束期間の算定の仕方をめぐり、弁護側と検察側の主張が対立していたが、ソウル中央地裁は決定で拘束期間が満了した状態で起訴されたと指摘し、拘束が適法と見ることは難しいとした。

また、尹大統領の弁護団は、捜査を手がけた公捜庁には内乱罪の捜査権はないとも主張してきた。 同地裁は決定で捜査権などについての判断は避ける一方、「捜査過程の適法性に関する疑問の余地を解消することが望ましい」とし、勾留取り消し請求を認める理由の一つとしていた。 今後の刑事裁判ではこうした点も論点になるとみられる。 (ソウル・貝瀬秋彦、太田成美、asahi = 3-8-25)


韓国の尹錫悦大統領を内乱罪で起訴 検察、拘束延長の不許可を受け

韓国の検察は 26 日、昨年 12 月に尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が出した「非常戒厳」をめぐり、尹大統領を内乱罪で起訴した。 罷免の可否を判断する弾劾審判が憲法裁判所ですでに始まっているが、尹大統領は同時並行で刑事裁判のプロセスにも臨むことになる。 尹大統領は今月 15 日に高位公職者犯罪捜査庁(公捜庁)に大統領公邸で拘束され、19 日に内乱の首謀などの疑いで正式に逮捕された。 だが、公捜庁の取り調べを拒み続け、公捜庁は 23 日に起訴を求めて事件を検察に送った。 公捜庁は、尹大統領は金竜顕前国防相や軍司令官らと共謀して昨年 12 月 3 日、非常戒厳を出して暴動を起こした、などとしていた。

公捜庁は 23 日の会見で「起訴するかどうかを決める検察が追加捜査をすることが、事件の真相究明のために効率的だと判断した」としていた。 これを受けて検察は 23 日、尹大統領の拘束期間の 2 月 6 日までの延長を求めてソウル中央地裁に期限延長を申請。 検察は延長が認められれば、補完的な捜査として尹大統領の取り調べに乗り出す予定だった。 だが、同地裁は 24 日、公捜庁がすでに捜査をして送致した事件について、検察が捜査を続ける相当な理由がないなどとして、不許可を決定。 検察は 25 日に再申請したが、同地裁は再び不許可とした。

聯合ニュースによると、検察は再申請が認められなかった場合に備えて起訴状の作成を進めていた。 検察は延長なしに拘束できる期間は 27 日までとみて、その前の 26 日に起訴することを決めた。 これに伴い、尹大統領の拘束は続くことになる。 尹大統領は公捜庁の取り調べを拒否。 検察も尹大統領への取り調べができていないが、検察は尹大統領に非常戒厳の宣布を建議した金前国防相らをすでに起訴しており、韓国メディアによると、立証には問題がないとの立場だという。 (ソウル・貝瀬秋彦、asahi = 1-26-25)


韓国大統領の拘束延長、裁判所が再び不許可に 起訴の可能性高まる

韓国のソウル中央地裁は 25 日、内乱容疑などで逮捕された尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の拘束期間を 2 月 6 日まで延長するよう求める検察からの再申請を認めない決定をした。 聯合ニュースが伝えた。 これを受けて検察は近く、尹氏を起訴する可能性が高い。 検察は 23 日に拘束期間の延長申請をしたが、同地裁は 24 日、高位公職者犯罪捜査庁(公捜庁)がすでに捜査をして送致した事件について、検察が捜査を続ける相当な理由がないなどとして不許可を決定。 検察は 25 日に再申請したが、同地裁は再び不許可とした。

聯合ニュースによると、検察は再申請が認められなかった場合に備えて起訴状の作成を進めている。 逮捕状に伴って拘束できる期間は今月 27 日までとみているといい、その前に起訴する可能性が高いという。 (ソウル・貝瀬秋彦、asahi = 1-25-25)


韓国の尹錫悦大統領を逮捕 現職は初 支持者が地裁に乱入、破壊行為

韓国のソウル西部地裁は 19 日未明、内乱容疑で拘束されている韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領に対する逮捕状を発付した。 合同捜査本部に加わる高位公職者犯罪捜査庁(公捜庁)が明らかにした。 尹氏は逮捕され、引き続き拘束されて取り調べを受けることになった。 現職大統領の逮捕は初めて。 一方、逮捕状の発付に反発した尹氏の支持者らの一部が同地裁の敷地内に乱入。 窓ガラスを割るなどの破壊行為をおこない、拘束された。

公捜庁によると、逮捕状は 19 日午前 2 時 50 分ごろに発付された。 証拠隠滅の懸念があるためだという。 公捜庁は取り調べのため、尹氏に拘置所から同日午後 2 時に出頭するよう求めたが、尹氏が応じなかったため、20 日午前 10 時に再び出頭を求める予定だという。 公捜庁は内乱の首謀と職権乱用の容疑で 17 日に同地裁に逮捕状を請求していた。 犯罪の重大性と再犯の恐れを考慮して請求したとしている。 18 日午後に逮捕状を出すかどうかの令状審査が同地裁で開かれ、尹氏本人も出席した。 逮捕状の不当性を訴え、棄却を求めたとみられる。

尹氏はソウル拘置所から護送車で同地裁に到着した。 午後 2 時から始まった審査は同 7 時前に終了。 尹氏の弁護団によると、公捜庁側が逮捕の必要性を主張し、弁護団が反論した後、尹氏も 40 分以上にわたり発言した。 弁護団は「(尹氏は)事実関係や証拠関係、法理問題について誠実に説明した」としている。 15 日に拘束された尹氏は、同日の取り調べで供述を拒否し、16 日以降は取り調べ自体に応じないなど、徹底的に争う構えを示してきた。

尹氏の令状審査への出席について、弁護団は「非常戒厳の正当性と内乱罪が成立しないことを直接説明し、名誉を回復させなければならないという気持ちからだ」と説明していた。 尹氏側は昨年 12 月の非常戒厳の宣布について、司法審査の対象にならない「統治行為」で内乱罪は成立しないと主張してきた。 また公捜庁には内乱罪の捜査権がなく、管轄ではないソウル西部地裁から拘束令状の発付を受けたことも違法だとしており、こうした主張を繰り返したとみられる。 さらに、証拠隠滅や逃亡の恐れもないとし、拘束を続ける必要はないと訴えたとみられる。

だが、裁判所は引き続き身柄を拘束して調べる必要があると判断した。 15 日の拘束時から数えて原則として最長 20 日間、拘束されることになる。 韓国メディアによると、逮捕状が発付される前から一部の支持者が地裁の塀を乗り越えて敷地に侵入したり、警察官に暴行したりするなどし、18 日夜までに 40 人が建造物侵入などの容疑で警察に拘束された。 その後、逮捕状発付を知った尹氏の支持者らが消火器などで地裁のガラスを割るなどの暴動を起こしたが、警察に鎮圧された。 (ソウル・貝瀬秋彦 清水大輔、asahi = 1-19-25)


韓国捜査当局、尹錫悦大統領の逮捕状を請求 内乱容疑、現職へは初

内乱容疑で拘束された韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領について、合同捜査本部に加わる高位公職者犯罪捜査庁(公捜庁)は 17 日、ソウル西部地裁に逮捕状を請求した。 現職大統領への逮捕状請求は初めて。 逮捕状が発付されれば、さらに尹氏を拘束して取り調べを続けることができる。 一方、尹氏は 17 日も公捜庁の取り調べを拒否するなど、徹底的に争う構えを崩していない。

15 日に拘束された尹氏は、同日の取り調べで供述を拒否し、16 日は取り調べ自体に応じなかった。 15 日には弁護側が拘束が適切だったのかを問う審査をソウル中央地裁に請求し、16 日夜に棄却されたが、尹氏は 17 日も取り調べを拒否する姿勢を貫いている。 尹氏側は公捜庁には内乱罪の捜査権がなく、管轄ではないソウル西部地裁から拘束令状の発付を受けたのも違法だと主張してきた。 この訴えは中央地裁での適否審査で否定された形だが、公捜庁が逮捕状を請求したことで、尹氏側も出席する令状審査の場で改めてこうした主張をする可能性がある。

また、証拠隠滅や逃走の恐れがないことも訴えて逮捕状請求の棄却を求めるとみられる。 令状審査に尹氏本人が出席するかどうかも注目点だ。  逮捕状が発付されれば捜査当局は原則として最長で 20 日間、尹氏を拘束して取り調べる。 一方、警察は 17 日、大統領警護庁長の職務を代行している金声勲(キムソンフン)次長を拘束した。 金次長はこの日、警察に出頭し、事前に出ていた拘束令状を執行された。 金次長は 3 日に警護庁が尹氏への拘束令状執行を阻んだ際、中心的な役割を果たしたとみられている。 (ソウル・貝瀬秋彦、asahi = 1-17-25)


拘束された尹錫悦大統領とは 親日家・酒豪 … 「独善」との指摘も

尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が出した「非常戒厳」をめぐり、内乱容疑で捜査していた捜査当局が 15 日、尹氏の身柄を拘束した。 現職大統領の拘束は初めて。 尹氏はどのような人物なのか。

尹氏は 1960 年、ソウルで生まれた。 両親ともに大学教授で、父親は韓国経済学会の会長を務め、日本の一橋大学でも研究活動をした。 尹氏は 79 年、名門のソウル大法学部に入学。 80 年に軍が民主化運動を弾圧した「光州事件」が起き、事件をめぐる模擬裁判が大学で開かれ検事役に。 国軍保安司令官として弾圧を主導した全斗煥(チョンドゥファン)元大統領に死刑を求刑し、当局から身を守るため数カ月間、地方に身を隠した。

司法試験に 8 回続けて落ち、91 年にようやく合格。 94 年に検事になった。 韓国の検察は時の政権と近いとされ、「政権の道具だ」とする声もあるなかで、尹氏は「空気」を読まないスタイルだった。 持論は「権力から独立した検察。」 それゆえに、政権幹部や財閥トップを捜査して左遷されたこともあった。 2006 年には、進歩系の盧武鉉(ノムヒョン)大統領(当時)の側近や自動車世界大手の現代自動車グループ会長らの逮捕に関わった。 16 年、保守系の朴槿恵(パククネ)大統領(当時)の知人や大手財閥サムスングループに疑惑が浮上。  捜査を任され、翌年、朴氏を逮捕した。

文在寅(ムンジェイン)政権時にソウル中央地検トップに任命され、19 年に検事総長になった。 だが、20 年、捜査妨害などの疑いで進歩系の文政権の法相から懲戒処分を受けた。 保守勢力が「反文在寅の象徴」として尹氏を担ぎだし、政界に転身。 22 年の大統領選では僅差で勝利した。 検察出身の尹氏は当初から人脈や指導力が不安視された。 閣僚や政府高官に検察出身者や大学時代の旧友らを起用。 政治経験がないという理由で、思い切った決断ができるとの評価があった一方、自らの考えが正しいと信じて突き進む「独善」も指摘されてきた。

尹氏は親日家としても知られ、日本企業に賠償金の支払い命令が出ていた徴用工問題では、韓国側が支払いを肩代わりする解決策を発表。 冷え込んでいた日韓関係の急速な改善につなげた。 24 年 4 月の総選挙では、与党が大敗。 「対話不在」とされる尹氏の政治スタイルが敗因だったという見方が強かった。 酒豪としても有名。 23 年 3 月に来日した際、岸田文雄首相(当時)と遅くまで酒を酌み交わしたという。 (藤原伸雄、asahi = 1-15-25)

2001年トヨタ自動車が日野自動車への出資比率を 36.6% から 50.1% に引き上げて子会社化
1960年ソウルで生まれる
1979年ソウル大法学部に入学
1979年司法試験に合格
1991年検事になる
1994年エンジンの排ガスや燃費の性能を偽っていた問題を公表
2016年朴槿恵大統領(当時)をめぐる贈収賄事件を捜査指揮
2019年検事総長に就任
2021年検事総長を辞任、政界へ
2022年大統領選で勝利
2023年元徴用工訴訟の解決策発表、日韓関係改善へ
2024年4月総選挙で与党が大敗。尹氏への不満が強まる
12月3日非常戒厳を宣布
14日弾劾(訴追案可決、職務停止に
31日裁判所が拘束令状を発付
2025年1月15日身柄拘束


韓国捜査当局、尹大統領の拘束令状執行を見送り 改めて対応協議か

「非常戒厳」を出した韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の拘束に向け、捜査当局が 3 日朝、内乱容疑の拘束令状を執行するために公邸の敷地内に入った。 捜査当局は「執行を始めた」としたが、午後 1 時半ごろに執行を中止したと明らかにした。 大統領警護処が公邸の捜索を拒み、捜査当局と対峙する状況が続いていた。 再度の執行など今後の対応について合同捜査本部で協議するとみられる。

合同捜査本部は「継続する対峙状況で事実上、執行が不可能だと判断した。 現場の人員の安全が懸念され、執行を中止した。 今後の措置は検討後に決定する」としたうえで、「法の手続きに応じない被疑者の態度に遺憾を表明する」とした。 拘束令状はソウル西部地裁が捜索令状とともに発付し、現職の大統領が拘束されれば初の事態だった。

聯合ニュースによると、捜査員らは公邸の警備を担っているとみられる軍部隊と一時対峙したあと、大統領警護処長に令状を示して執行への協力を求めていたが、警護処長は捜索を拒否し続けていた。 警護処は警察とは別の組織で、これまでも大統領府の家宅捜索などを拒んできた。 根拠としているとみられるのが、「軍事上の秘密を要する場所」は、責任者の承諾なしに押収や捜索ができないなどとする刑事訴訟法の規定だ。

「大統領を守ろう!」 厳重警備の中で公邸周辺に支持者 1 千人超

韓国メディアによると今回の捜索令状には、こうした刑事訴訟法の規定を適用外とすると記されているという。 捜査当局はこれをもとに令状執行に協力するよう求めたとみられるが、警護処は応じなかった。 尹氏の弁護団のメンバーも公邸に入っていた。 弁護団は令状の発付に反発しており、捜査当局と執行について協議した可能性もある。 公邸の周辺には大勢の尹氏の支持者らが集まっているが、公邸に近づけないよう警察が統制している状況だった。 聯合ニュースによると、約 2,700 人の警察官が動員されていたという。

非常戒厳は尹氏が昨年 12 月 3 日夜に宣布し、国会の解除要求決議を受けて、約 6 時間後に解除された。 尹氏は内乱などの疑いで告発され、政府高官らを捜査する「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」や警察などの合同捜査本部が「内乱の首謀者」とみて捜査を進めていた。 国会は昨年 12 月 14 日、尹氏の弾劾訴追案を可決し、尹氏は職務停止になった。

その後、合同捜査本部が 3 度にわたって出頭を求めたが応じず、公捜処が同 30 日に拘束令状の請求に踏み切った。 尹氏の弁護側は、捜査よりも憲法裁判所での弾劾審判が優先という尹氏の立場を明らかにし、令状発付にも強く反発していた。 (ソウル・貝瀬秋彦、太田成美、asahi = 1-3-25)


韓国大統領の拘束令状、裁判所が発付 「非常戒厳」めぐる内乱容疑

韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が出した「非常戒厳」をめぐり、尹氏を内乱などの疑いで捜査している合同捜査本部は 31 日、ソウル西部地裁が拘束令状を発付したと明らかにした。 現職大統領に対する拘束令状発付は憲政史上初めて。 合同捜査本部が 30 日に請求していた。 合同捜査本部は尹氏が 3 度にわたって出頭要請を拒否したため、拘束令状の請求に踏み切っていた。 裁判所は同時に請求があった捜索令状も発付した。 合同捜査本部は令状執行の期限は 1 月 6 日までだとし、執行前に警告する公文を送る予定だと明らかにした。

これに対し尹氏の弁護側は、逮捕状を請求した「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」には内乱罪などに関する捜査権はないと主張し、「令状の発付はとうてい受け入れがたい。 令状は法に反しており無効だ」と反発している。 与党・国民の力の権性東院内代表も「現職大統領を拘束しようというのは捜査方法として適切ではない」と批判した。 一方、尹氏の弾劾訴追を推進した最大野党・共に民主党は、拘束令状の発付は「当然で、迅速な令状執行を求める」としている。

韓国の憲法は、大統領は在職中に刑事上の訴追を受けないとする「不訴追特権」を認めているが、内乱などはその例外と規定されている。 (ソウル・貝瀬秋彦、asahi = 12-31-24)


尹錫悦大統領に対する逮捕状を請求 韓国捜査本部、現職へは初めて

韓国の尹錫悦大統領が出した「非常戒厳」をめぐり、警察などの合同捜査本部は 30 日、尹氏に対する逮捕状を請求したと発表した。 聯合ニュースによると、現職大統領に対する逮捕状請求は憲政史上初めて。

合同捜査本部は内乱や職権乱用の疑いで尹氏の捜査を進めているが、尹氏が 3 度にわたって出頭要請を拒んだため、逮捕状請求に踏み切った。 ただ、裁判所が逮捕状を発付するかどうかは不透明だ。 逮捕状は、合同捜査本部に加わる「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」が請求しているが、聯合ニュースによると、尹氏の弁護側は「捜査の権限がない機関からの請求だ」としている。 (ソウル・貝瀬秋彦、asahi = 12-30-24)


尹錫悦大統領が 3 度目の出頭拒否 韓国捜査本部、逮捕状請求含め検討

韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が出した「非常戒厳」をめぐり、警察などの合同捜査本部は 29 日午前 10 時に尹氏に出頭するよう要請していたが、尹氏は指定された時間に現れなかった。 尹氏は 18 日と 25 日にも合同捜査本部の出頭要請を拒んでおり、出頭拒否は 3 度目。 合同捜査本部は尹氏に対し、政府高官らを捜査する「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」に出頭するよう求めていた。 合同捜査本部は内乱や職権乱用の容疑で尹氏の捜査を進めている。

これに対して尹氏の弁護側は、捜査よりも憲法裁判所での弾劾審判の手続きが優先されるべきだとの尹氏の立場を明らかにしているほか、公捜処の捜査権限についても疑問を呈している。 29 日中に出頭しなければ、捜査本部は逮捕状の請求をするかどうかを含め、対応策の検討に入るとみられる。 (ソウル・貝瀬秋彦、asahi = 12-29-24)


韓国国会、首相の弾劾案可決、大統領に続き職務停止 政治混乱に拍車

韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の権限を代行する韓悳洙(ハンドクス)首相の弾劾訴追案が 27 日、国会本会議で野党などの賛成で可決された。 韓氏は職務停止になり、権限代行は崔相穆(チェサンモク)経済副首相兼企画財政相が担う。 韓国で大統領に次いで権限代行の首相まで弾劾訴追されるのは初めて。 政治の混乱は深まるばかりだ。 尹氏の弾劾審判を担う憲法裁判所の裁判官の欠員補充をめぐり、韓氏が「任命を保留する」と述べて事実上拒否したことに、最大野党・共に民主党が反発。 同党が弾劾案を提出していた。

憲法裁の裁判官は 9 人のうち 3 人が欠員。 6 人の賛成で尹氏の罷免が決まるため、補充を求める野党と、韓氏には任命権限がないとする与党が対立していた。 弾劾案で共に民主党は、尹氏の非常戒厳宣布による「内乱犯罪」を韓氏が少なくとも黙認したとも主張した。 弾劾案は、在籍議員(300 人)の半数を超える 192 人の賛成で可決された。 首相の弾劾訴追は過半数で可決されるが、与党・国民の力は権限代行の場合には大統領と同じ 3 分の 2 の賛成が必要だとし、効力停止を求める仮処分を憲法裁に申請した。

崔氏は経済官僚出身。 尹政権では大統領府の経済首席秘書官も務めた。 韓氏の職務停止を受け、「代行の代行」の崔氏が国政のかじ取りを担うことになり、外交・内政ともに大幅な停滞が避けられない見通しだ。 (ソウル・太田成美、asahi = 12-27-24)


韓国大統領、検察時代の先輩を弁護団長に 「審判で堂々と立場表明」

韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の弁護側は 17 日、尹氏による非常戒厳の宣布は内乱罪にはあたらないとしたうえで、憲法裁判所での弾劾審判で「尹大統領が堂々と立場を明らかにするだろう」と述べた。 尹氏は内乱容疑などの捜査にも対応する弁護団の結成を進めている。 弁護団の結成にかかわる石東R(ソクドンヒョン)弁護士が、記者団に初めて立場を表明した。 弁護団の団長には検察時代の尹氏の先輩で、尹政権で閣僚級の放送通信委員長などを務めた金洪一(キムホンイル)氏が就く予定だ。

石氏は、内乱容疑などの捜査と弾劾審判に対応するため、それぞれ弁護団を結成する考えを示した。 韓国メディアによると、警察などからなる合同の捜査本部は 18 日、検察は 21 日までに尹氏に出頭を求めているが、石氏は「検討して立場を示す」とだけ述べた。 一方、聯合ニュースによると検察は 17 日、非常戒厳宣布を受けて戒厳司令官を務めた朴安洙(パクアンス)陸軍参謀総長を内乱などの容疑で逮捕した。

尹氏の弾劾審判をめぐっては、裁判官の欠員補充で与野党が対立している。 9 人のうち国会が選出し、大統領が任命する枠の 3 人が欠員で、弾劾を推進した最大野党・共に民主党は今年中の補充を目指している。 だが、与党・国民の力は 17 日、職務停止となった尹氏の権限を代行する首相には、憲法裁裁判官を任命する権限まではないと主張した。 審判では 6 人が弾劾に賛成すれば尹氏の罷免が決まるが、現状のままなら 1 人が反対すれば免れるとの計算が、与党側にはあるとみられる。 (ソウル・貝瀬秋彦、asahi = 12-17-24)


尹錫悦大統領「決してあきらめない」

韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は 14 日、自身に対する弾劾訴追案が国会で可決されたことを受け、国民向けの談話を発表した。 尹氏は談話で「私は決してあきらめない。 私への叱責、激励、声援を抱いて最後まで国のために最善を尽くす。」と述べた。 談話を読み上げる様子はテレビで中継された。 尹氏は自身の実績について「韓米日協力を復元し、グローバル外交の地平を広げるために昼夜を問わず走り回った」とした上で、「大韓民国 1 号営業社員のタイトルをつけて世界を駆け巡って、成果を上げた時には言葉では説明できない大きなやりがいを感じた」と述べた。

尹氏は訴追案の可決を受けて大統領としての職務が一時停止となる。 「私は立ち止まるが、国民と共に歩んできた未来への旅路は決して立ち止まってはいけないものだ」と述べ、政治家らに対しては「暴走と対決の政治が熟議と配慮の政治に変わるよう努力してほしい」とした。 (asahi = 12-14-24)


弾劾訴追案を可決、大統領は職務停止へ

「非常戒厳」を出した韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領に対する弾劾訴追案が 14 日、必要数を上回る賛成 204 票を集め、韓国国会で可決された。 大統領の職務は停止される。 今後は罷免の可否を判断する憲法裁判所の弾劾審判に移り、大統領の権限は韓悳洙(ハンドクス)首相が代行するが、内政や外交に混乱が生じるのは必至だ。

野党 6 党が提出した弾劾案は、13 日に国会本会議に上程された。 尹氏を「国民の信頼を裏切って憲法が付与した戒厳宣布権を乱用し、内乱罪を犯した」と指摘していた。 可決には国会(定数 300)の在籍議員の 3 分の 2 の賛成が必要で、当初から賛成するとみられた野党や無所属の 192 人に加え、与党議員から 8 人の造反が出るかが焦点だった。 今後は、憲法裁の弾劾審判に移る。 憲法裁は 180 日以内に尹氏を罷免するかを判断し、罷免が相当と判断されれば尹氏は失職となり、60 日以内に大統領選が行われる。 (asahi = 12-14-24)


韓国検察、尹大統領を捜査 不訴追特権ある中、立件の可能性は

韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が 3 日夜に「非常戒厳」を出した問題をめぐり、韓国検察は 8 日、尹氏を内乱と職権乱用の容疑で捜査していると明らかにした。 聯合ニュースが報じた。 検察の特別捜査本部長を務める朴世鉉(パクセヒョン)検事長は 8 日、報道陣に対し、「いかなる疑惑も残らないように力を尽くす」と述べた。 捜査の根拠として、朴氏は「公務員が職権を乱用し、憲法秩序を乱す目的で暴動を起こした」との疑いが内乱と職権乱用に当たるとの見解を示した。


大統領の訴追について、憲法の条文は

検察はすでに、非常戒厳を建議したとされる金竜顕(キムヨンヒョン)前国防相を同日に拘束している。 大統領まで立件の手は伸びるのか。 韓国憲法 84 条は、大統領は在職中に刑事上の訴追を受けないとする「不訴追特権」を認めている。 ただ、「内乱または外患の罪を犯した場合を除く」との例外を規定。 内乱罪なら、捜査機関は尹氏を訴追できる。 朴氏も 8 日の説明で、手続き上は立件が可能だと述べた。 検察は金氏を拘束した際、携帯電話を押収しており、事実関係の究明が加速する可能性がある。 (asahi = 12-8-24)


弾劾訴追案、不成立 与党議員の大半退席で採決に必要な票足りず

韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領に対して野党が提出した弾劾訴追案は 7 日、不成立となった。 韓国国会の議場から与党議員の大半が退席し、採決に必要な 200 票に満たなかった。 (asahi = 12-7-24)


弾劾訴追案を提出 72 時間以内に議決

韓国の進歩(革新)系最大野党・共に民主党など野党 6 党は 4 日午後、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の弾劾訴追案を国会に提出した。 尹氏の行為は「明白な内乱にあたる重大犯罪だ」と糾弾している。

弾劾訴追案の可決には、300 人の在籍議員の 3 分の 2 の賛成が必要になる。 韓国メディアによると発議には 191 人の議員が参加。 可決に必要な数には届かず、与党から造反が出るかが焦点になる。 野党は早ければ 5 日未明にも本会議を開き、弾劾訴追案を国会に上程したい考えだ。  国会法に従い、24 - 72 時間以内に議決する必要がある。 可決され、憲法裁判所が弾劾が相当と判断すれば罷免が決まる。 (asahi = 12-4-24)


非常戒厳下、軍にあらがった人間の盾 「国民の怒りを示した」6時間

韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が 45 年ぶりに出した「非常戒厳」は、国会で決議案を通すことで、約 6 時間後に解除された。 国会議事堂周辺には深夜に数千人の市民が駆けつけ、国会議員を後押しした。 「民主主義を守るためだった」と口をそろえた。 3 日午後 10 時半ごろ、尹氏が非常戒厳を出した直後から、国会議員が国会に向かっているとの情報が飛び交い、記者は国会に向かった。 周囲を警察官が取り囲み、抗議のために敷地内に入ろうとする市民らともみ合いになり、怒声が上がった。

憲法に定めがある非常戒厳を出したのは 1987 年の民主化以降では初めて。 ただ、憲法では、国会議員の過半数が戒厳の解除に賛成すれば、大統領は解除しなければならない。 多くの国会議員が「(政権が)軍隊を動員して逮捕する可能性が非常に高い」と警戒しながらも、国会に次々と駆けつけた。 「翌日に本会議が予定され、多くの議員がソウルにいたため、集まることができた」と野党議員は語る。

国会内では、戒厳軍が迫る中、本会議場周辺のドアを封鎖するため、「早く早く!」と怒号が飛び交った。 議員秘書らがガラス張りのドアをおさえたり、大きな机を運んでバリケードにしたりして、軍の侵入を防いだ。 4 日未明、「解除要求決議案」が可決され、議場前のロビーにいた秘書らから拍手がわき起こった。  市民らは国会の周囲を取り囲み、「人間の盾」になって軍に立ちはだかった。 聯合ニュースなどによると、国会の外には推計で約 4 千人の市民らが集まった。 警察官が国会への立ち入りを統制する中、柵を越えようとする議員の足を支えた。

市民らがスマートフォンで軍のヘリコプターや国会に突入する様子を撮影し、SNS などで拡散した。 進歩(革新)系最大野党・共に民主党の李在明(イジェミョン)代表が、塀を乗り越えて国会に入る様子もユーチューブで中継し、多くの人が視聴するなど、一連の動きを市民が見守った形になった。 大学院生の金榮善(キムヨンシン)さん (25) も4日未明、SNSの映像に衝撃を受け、「国民の怒りを示す必要がある」と国会に駆けつけた。 銃を持った軍人が敷地内に入ろうとする人を引きはがしたり、銃口を向けたりする様子を見て、「絶望した」と振り返る。

「2024 年の韓国でこんなことが起きているなんて信じられない」とため息をつく一方、「多くの人々に民主主義を大事にしたい気持ちがあった。 その勝利だと思う。」と語った。 4 日正午、国会前であった尹氏の退陣を求める集会には、野党議員や市民ら約 5 千人(主催者発表)が集まった。 共に民主党の議員は、ポリ袋に入った「戒厳軍が落とした手錠」を掲げた。 「彼らはこの手錠で大韓民国の民主主義を縛ろうとした。」

集会に参加した女性 (58) が非常戒厳と聞いて思い浮かべたのは、1980 年に戒厳軍が民主化を求める市民や学生を弾圧した光州事件だ。 240 人以上の死者・行方不明者が出た。 「あんなことは二度と起きてはいけない。 民主主義を守らないといけない。」という一心だったという。

識者「民主化の歴史に逆行」

軍事政権下では戒厳令が度々敷かれてきた。 韓国メディアによると、最後の戒厳令は 79 年に朴正熙(パクチョンヒ)大統領が暗殺された直後に出されて 81 年まで続き、後に大統領となる全斗煥(チョンドゥファン)氏が首謀する「粛軍クーデター」と、光州事件につながった。 韓国では昨年、粛軍クーデターを題材にした映画「ソウルの春」が大ヒットしている。 韓国メディアは、今回の非常戒厳の宣布で、国会の前を装甲車が走る様子を「現実版ソウルの春」などと報じた。

慶応大の西野純也教授(東アジア国際政治)は「戒厳は戦争や戦争に準じる非常事態に出されるもので、現在の韓国の状況は当てはまるとは言いがたい。 今回の非常戒厳の宣布は、韓国が過 37 年にわたって積み重ねてきた民主化の歴史に、明らかに逆行する動きだった」と指摘。 「ほとんどの国民は速やかな解除を支持したし、投入された軍隊でも、現場レベルでは違和感を持っていた兵士もいたのではないか」と話した。 (太田成美・ソウル、田中恭太、asahi = 12-4-24)


韓国大統領が「非常戒厳」を宣布 官僚の弾劾訴追で「行政府がまひ」

韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は3日夜、国民に向けて演説し、「非常戒厳を宣布する」と述べた。尹政権発足以来、22件の政府の官僚の弾劾(だんがい)訴追が発議されていることを挙げ、行政府などがまひしていることなどが理由だとしている。突然の表明に、韓国メディアも困惑しながら尹氏の発言を伝えている。 尹氏は弾劾を推進している最大野党の「共に民主党」などを批判。 国会で多数を占める同党が予算案も政争の手段として利用しているとし、国家機関を乱すことで内乱を画策する明らかな反国家行為だと主張した。

lさらに、北朝鮮の共産勢力の脅威から韓国を守り、自由な憲法秩序を守るために「非常戒厳を宣布する」と述べた。 韓国メディアによると、同党は議員らを緊急招集して対応を協議するという。 (貝瀬秋彦、asahi = 12-3-24)