二つの作戦で挑んだ日米首脳会談 高市氏が安倍氏と決定的に違う点は

28 日の高市早苗首相とトランプ米大統領の会談は、かつての安倍晋三元首相とトランプ氏との蜜月関係をほうふつとさせ、高市首相とトランプ氏が今後個人的な信頼関係を強めることを予期させるものとなったといえるだろう。

長年、米国の軍事力に日本は「ただ乗り」していると批判を展開してきたトランプ氏だが、会談では日本への不満を述べるどころか、日本の防衛力強化の取り組みを評価。 さらに首相に「質問や疑念、要望がある時、出来ることがあれば力になる」と語りかけ、普段はなかなか見ることのできない配慮の姿勢まで見せた。 その後、米原子力空母ジョージ・ワシントンに搭乗した両首脳は、米軍兵士を前に強固な日米同盟をアピール。 中国に対し、米国がアジアで影響力を譲らないとのメッセージを送った形だ。

首相側は今回の会談に二つの作戦で臨んだ。 一つ目は、首相と安倍氏のイメージを重ね合わせてアピールすること。 二つ目が、事前に防衛費の国内総生産 (GDP) 比 2% への増額の前倒し達成方針などを表明し、日本が主体的に防衛費増に取り組んでいる姿勢を見せること。 首相が今回の会談の最優先課題としてきたトランプ氏との関係構築は「想像以上の成果(官邸幹部)」だったかもしれない。

ただし、トランプ氏側にとって、今回のアジア外遊の最大の勝負どころは、中国の習近平(シーチンピン)国家主席との会談だ。 米中首脳会談直前に、アジアにおける日米の蜜月ぶりを見せつけ、中国側に心理的なゆさぶりをかけようという冷徹な計算もあったとみられる。

今回の日米首脳会談ではトランプ氏からの直接的な厳しい要求を回避できた格好の首相だが、多くの難題が山積している状況は変わらない。 例えば、首相が意欲を見せたさらなる防衛費増についても、新たな財源をどう確保するかという深刻な問題に直面する。 日本の財政余力が低下する中、現状の GDP 比 2% への増額でさえも財源の一部として見込まれる所得税増税の開始時期は先送りされたままだ。

首相が自らの姿を重ね合わせる安倍氏と決定的に違うのは、首相は衆参で与党が過半数をもたない脆弱な政権基盤にあるという点だ。 首相がトランプ氏に約束した政策が国会で前に進まない可能性もあり、トランプ氏が日本側の取り組みが遅いと判断すれば、圧力を強めてくることも考えられる。 今回の首脳会談のやりとりだけで今後の日米関係を楽観的に語ることはできないだろう。 (清宮涼、畑宗太郎、asahi =10-29-25)


80 兆円の対米投資、三菱重工や東芝など参加候補 日米両政府が公表

日米関税合意で日本側が提案した 5,500 億ドル(約 80 兆円)の対米投資について、日米両政府が 28 日、投資先の候補を共同文書にまとめた。 文書にはエネルギーや AI (人工知能)、重要鉱物の生産などに関する 21 の案件が盛り込まれ、三菱重工業や東芝、パナソニックなどが関心を示した。 この日開かれた日米首脳会談にあわせて公表した。 共同文書には、

▽ 米原発会社ウェスチングハウスによる SMR (小型モジュール炉)などの原発建設に三菱重工業や東芝が関与を検討、
▽ 三菱電機がデータセンター向けの発電に関するシステムを供給、
▽ パナソニックがエネルギー貯蔵システムを供給すること、

- - などが盛り込まれた。 ほかに、ソフトバンクグループや日立製作所、村田製作所などが関与する案件もならぶ。 事業規模は 21 件で総額 4 千億ドル(約 60 兆円)規模になる。 日米両政府が 9 月に交わした対米投資に関する覚書では、日米でつくる「協議委員会」や米商務長官が議長を務める「投資委員会」での議論を経て、大統領が投資先を選ぶことになっている。 投資に参画する日本企業は、日本の政府系金融機関による融資や融資保証が受けられる。 ラトニック米商務長官は 27 日、朝日新聞などの取材に、第 1 号案件について「電力インフラが重要分野となる」との考えを示していた。

日米首脳「同盟の新たな黄金時代」

トランプ大統領の来日をめぐり、焦点となっていたのが、日米関税合意で日本が約束した巨額の対米投資を、どこまで具体的に示せるかだった。 日米両政府は、米が相互関税や自動車関税の税率を引き下げる代わりに、日本が 5,500 億ドル(約 80 兆円)を米国に投資をすることで合意した。 トランプ氏と高市早苗首相は 28 日の首脳会談で、「同盟の新たな黄金時代」をうたい、合意内容の着実な履行を約束する共同文書に署名した。

さらに日本政府は同日夕、対米投資に関する新たな文書も公表。 政府が水面下で企業側と調整を急いできた投資案件の候補が記され、三菱重工業や三菱電機、東芝、日立製作所など約 10 企業の名前が並んだ。 日立は文書に盛り込まれた投資について、米商務省と覚書を結んだとも発表した。 関税交渉を担当した赤沢亮正経済産業相はこの日の会見で「多くの企業が名乗りを上げて関心を示してくださり、ありがたいことだなと感じている。 最終的に大きな果実を生むようなものに育ってくれることを期待する。」と語った。

トランプ氏に直接、対米投資の姿勢をアピールする動きもあった。 同日夜にはトランプ氏と日本企業トップらとの会合が東京都内であった。 ただ、トランプ氏の大統領としての任期が終わる 2029 年 1 月までに、5,500 億ドルの投資がどこまで実行されるのかは見通せない。 文書に記された 21 の案件はまだ企業による「関心表明」の段階で、正式に決まるのはこれからだ。 また、21 件で総額 4 千億ドル(約 60 兆円)にのぼる事業規模についても、取材に対して「額が大きすぎる。 根拠がわからない。」と戸惑う企業もあった。

さらに両政府はこの日、両国の造船能力の拡大などで協力する覚書にも署名した。 関税合意に基づく対米投資の対象分野の一つとして位置づけられたものだ。 今後、日米で作業部会を設置し、建造能力の拡大や共同開発などについて協力関係を深めるという。 覚書を結んだ金子恭之国土交通相は「造船業は日米両国の経済と安全保障を支える重要な分野。 この覚書は日米の造船の新たな歴史を作り出すものだ。」と述べた。 (多鹿ちなみ、友田雄大、大和田武士、asahi = 10-28-25)

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80 兆円の対米投資、1 号案件は「電力インフラ」か 米高官が言及

日米首脳会談にあわせて来日中のラトニック米商務長官が 27 日、東京都内で朝日新聞などの取材に応じた。 日米関税合意で約束した 5,500 億ドル(約 80 兆円)の対米投資について、「電力インフラが重要分野となる」との考えを示した。 米国では AI (人工知能)などの普及に伴い電力需要が高まっており、発電所の建設や送配電網の整備などが念頭にあるとみられる。

ラトニック氏はこの日、日米関税交渉を通じて親しくなった赤沢亮正経済産業相と歌舞伎座を視察し、ワーキングランチを行った。 その後、取材に応じたラトニック氏は、対米投資の最初の案件について「電力インフラは重要な分野になるだろう」と言及。 「日本の電力インフラと企業は世界トップクラス。 (投資の案件として)とても適切だ」と述べた。 ラトニック氏によると、その後、日本企業の経営者と会い、「投資プログラムへの参加方法を理解してもらう」とも語った。

赤沢氏は「(米側から投資案件の)提案をもらったあと、(日米などの)委員会での審査を進める。 提案を楽しみにしている。」と応じた。 日米両政府は 7 月下旬、米国が関税を引き下げるかわりに、日本は米国産品の輸入拡大や巨額の対米投資をすることを約束した。 (多鹿ちなみ、asahi = 10-27-25)


高市首相、ASEAN 重視の姿勢強調 就任後初の対面首脳会談は比と

高市早苗首相は 26 日、訪問中のマレーシアで東南アジア諸国連合 (ASEAN) 関連首脳会議に出席し、フィリピンのマルコス大統領らとも個別に会談した。 海洋進出を強める中国を念頭に、安全保障における ASEAN 各国との連携を強化する姿勢を打ち出した。 首相は一連の会議、会談を終えた後、記者団に「海洋安全保障や AI (人工知能)など各分野の新たなイニシアチブを説明し、各国首脳との間で、今後の協力の基礎となる信頼関係を構築できた」と述べた。

日フィリピン首脳会談は、首相就任後、初めての海外首脳との対面会談。 首相は会談後、「経済的な協力だけでなく、安全保障面でもお互いの懸念を率直に話し合えた」と語り、さらなる関係強化に取り組む姿勢を示した。 対中牽制を念頭に、日米比の協力も推進したい考えだ。

記者団に公開された日・ASEAN 首脳会議の冒頭では、首相は中国の名指しを避けた。 会議内では「世界のどこであれ、力または威圧による一方的な現状変更の試みを強要してはならない」と強調。 中国が海洋進出を強める東シナ海、南シナ海情勢や、台湾問題にも言及したという。 また安全保障や経済、人材交流などのこれまでの協力の進展を確認し、「一層発展させ、日本と ASEAN が共に強く、豊かになるための協力を進めていきたい」とも語った。

首脳会議では、中国を念頭に、日本が ASEAN の海洋安全保障強化に向けた支援を続けることを確認。 ODA (政府の開発援助)を通じた巡視船、警備艇の整備の推進や、防衛装備品などを無償提供する「政府安全保障能力強化支援 (OSA)」で ASEAN での支援国を拡大するとした。 政府間での経済関係強化のためのワーキンググループの立ち上げも確認した。 海域の開放性や法の支配を掲げる「インド太平洋に関する ASEAN アウトルック (AOIP)」に関する共同声明も 5 年ぶりに採択した。 ASEAN が 2019 年に採択した AOIP の推進と実施が、国際秩序の促進に寄与することを確認した。

首相は、安倍晋三元首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋 (FOIP)」を外交の柱に据え、ASEAN を含むグローバルサウスや同志国との連携強化を進める方針を掲げている。 声明では、FOIP と AOIP が、国際法の順守や繁栄を推進するうえで本質的な原則を共有していることを再確認した。 首相は豪州のアルバニージー首相、ASEAN 議長国のマレーシアのアンワル首相とも会談。 一方で、トランプ米大統領の 27 日の訪日に合わせて帰国するため、中国の李強(リーチアン)首相とはすれ違いとなり、日中の首脳会談は実現しなかった。 (クアラルンプール・太田成美、asahi = 10-26-25)


韓国系団体が設置の少女像を撤去、ベルリンの当局 裁判所が訴え棄却

ドイツのベルリン市ミッテ区は 17 日、区の公有地に置かれていた慰安婦を象徴する少女像を撤去したと明らかにした。 少女像は韓国系市民団体が設置し、日本政府が不適切だとしてドイツ政府に撤去を働きかけていた。 少女像は 2020 年 9 月、市民団体が区の許可を得て設置。 区は当初 1 年だった設置期限を 1 年延長したが、その後に置く場所について団体側と折り合えなかったことなどから撤去を命じた。

設置継続を求める団体側は命令の差し止めをベルリンの行政裁判所に申し立てたが、今月 13 日に棄却された。 上級行政裁判所も 16 日、訴えを棄却する判断を下していた。 少女像をめぐっては 22 年、来日したショルツ首相(当時)との首脳会談で岸田文雄首相(同)が撤去を求めていた。 (ベルリン・寺西和男、asahi =10-18-25)


国交省から台湾に水位観測ブイを無償提供 台風 18 号に伴う水害受け

台風 18 号の接近に伴う大雨により、台湾東部の花蓮県で 9 月に起きた水害をめぐり、国土交通省から台湾側に土砂ダムの水位を常時観測できるブイが無償提供された。 日本台湾交流協会台北事務所(日本大使館に相当)が 17 日、台湾側の対日窓口機関である台湾日本関係協会に引き渡した。

「ものすごいスピードで濁流が」 台湾で被害、泥に埋め尽くされた町

台北であった引き渡しの式典には交流協会台北事務所の片山和之代表(大使に相当)と関係協会の蘇嘉全会長が出席。 蘇氏は「台湾と日本は災害が起きた際、家族のように互いを気にかけている」と語り、日本側への感謝を表明した。 水害は 9 月 23 日、今年 7 月の台風被害でできた土砂ダムから水があふれ、市街地に流れ込んだことで発生。 これまでに計 19 人の死亡が確認されている。 提供されたブイは日本メーカーが製造した製品で、ヘリコプターから投下して利用するという。 (台北・高田正幸、asahi = 10-17-15)


USAID 解体めぐり「日本のリーダーシップ発揮を」 米 NPO提言

トランプ米政権による米国際開発局 (USAID) の解体をめぐり、NPO ピースウィンズ・アメリカと米日財団が 10 日、援助の現場への影響や日本への提言を盛り込んだ報告書を発表した。 日本に対し、ODA (政府の途上国援助)を削減するのではなく維持や増額し、開発分野におけるリーダーシップを発揮するよう求めた。 報告書は、ピースウィンズ・アメリカのジェームス・ギャノン代表と、USAID でアジア担当の長官補を務めたマイケル・シファー氏が執筆した。

報告書は、米国の援助を受けていた NGO のスタッフ 23 万人以上が解雇を余儀なくされたほか、日本の国際協力機構 (JICA) などの援助においても、協力団体の職員がいなくなるなどの影響があったと指摘した。 中国が戦略的に重要な国々で、米国の空白を埋めつつあるとの警戒感も示した。

「日本が単独で米国が抜けた空白を埋めることはできない」としながらも、開発分野における日本への期待が高まっていると指摘。 日本の対外援助をめぐっては「米国の先例にならって、削減するよう圧力がかかるかもしれないが、それは間違いだ」とした。 日本の対外援助が日本の国際的地位や影響力などを支えてきたとして、もしも後退させれば、「人道的成果だけでなく、国家の中核的利益をも損なうことになる」と警鐘を鳴らした。 (清宮涼、asahi = 10-11-25)


世界のメディア、「保守派」、「女性初」強調 高市氏の総裁選出を速報

「靖国神社への参拝で物議」、「画期的な出来事」 - -。 4 日に自民党の新総裁に選ばれた高市早苗前経済安全保障相 (64) について海外メディアからは、「保守派」、「女性初」を強調する論調の記事が目立った。 韓国メディアは高市氏の総裁選出を相次いで速報。 高市氏を「強硬保守」、「極右性向」の政治家だとし、靖国神社参拝を続けてきたことなどに触れ、「協力基調を続けてきた韓日関係にも影響が及ぶ可能性がある(聯合ニュース)」、「(歴史や領土の問題で)再び対立が深まる可能性がある(朝鮮日報)」と伝えた。

一方で複数の韓国メディアが、高市氏が選挙期間中に韓国との協力の重要性に触れたことや、靖国参拝について「適切に判断する」として参拝を明言しなかったことなども指摘した。 中国のネットメディア「ポンパイ新聞」は、総裁選直後に「『奈良の女』高市早苗は何者か」と題する動画を投稿。 「日本を代表する右翼政治家の一人」だとして、「中国への侵略の歴史を否定し、何度も靖国神社を参拝している」と強調した。 SNS 「微博(ウェイボー)」では一時、高市氏の新総裁選出についての投稿がアクセスランキングでトップとなった。

台湾総統は祝福 「揺るぎない友人」

一方、4 月に訪台した高市氏と面会した台湾の頼清徳(ライチントー)総統は「熱烈にお祝い申し上げます」と X (旧ツイッター)に日本語で投稿し、祝意を示した。 高市氏を「台湾にとって揺るぎない友人」と表し、「台日関係を新たな段階へと押し上げる」ことを期待しているとした。 中国に対する強い警戒感で知られる高市氏について、台湾の民進党政権の期待は大きい。

2022 年のウクライナ侵攻後に高市氏を制裁対象としたロシアでは、国営タス通信が「伝統的価値観の支持者で同性婚に反対」だと高市氏を紹介。  靖国神社を何度も訪問し、戦力の不保持と戦争の放棄を定めた憲法 9 条の改正を支持していると伝えた。 英 BBC は高市氏について、安倍晋三元首相の後継でタカ派だと紹介。 夫婦別姓や同性婚に反対し「日本の平和憲法の改正を目指している」と報じた。 ドイツの国際公共放送ドイチェ・ウェレ (DW) は「靖国神社への参拝で物議を醸している」と指摘した。

女性の選出「画期的」 NYT

高市氏が女性初の首相になる公算が大きくなったことを示す記事も目立った。 米紙ニューヨーク・タイムズは、日本の政治分野では「女性が大幅に過小評価されている」として、高市氏の選出が「画期的な出来事」だと評価。 スペイン紙エルパイスは、現在の石破内閣に女性の閣僚が 2 人しかいないことに言及し「女性の政治参加が大きく遅れている国で、(高市氏の選出は)歴史的なものになる」と伝えた。

インドのヒンドゥスタン・タイムズは「男女平等ランキングの低い国において、指導的立場の一つに女性が就くことは新鮮な風のように思えるかもしれない」と言及。 一方で、高市氏の保守的な姿勢が「女性よりも男性に支持されている」として、「依然として多くの人が不安を抱えている」とも伝えた。 (asahi = 10-4-25)


日韓首脳、シャトル外交定着へ 1 カ月ぶり会談 石破氏「緊密に連携」

石破茂首相は 30 日、韓国南部の釜山を訪問し、同国の李在明(イジェミョン)大統領と会談した。 両首脳は日韓関係を安定的に発展させ、安全保障分野などで戦略的な意思疎通を続けることで一致した。 また、共同文書を発表し、少子高齢化や人口減少など、日韓両国が抱える共通の社会課題について解決策を模索する当局間協議体の継続的運用を確認した。 両首脳の会談は 8 月の李氏の東京訪問以来。 首相は会談で「日本と韓国がどの国よりも緊密に連携し、頻繁に交流する努力をしたい」と強調。 李氏も「シャトル外交を定着させ、いつでも行き来し、ともに発展を期したい」と語った。

今回の首相の訪韓は李氏が前回会談で、地方創生に取り組む首相に韓国の地方都市への訪問を呼びかけたのがきっかけ。 釜山は韓国第 2 の都市だが、少子高齢化などの課題を抱え、日韓共通の社会課題について議論する象徴的な都市として選ばれた。 日本政府関係者によると、首相は前回会談から 1 カ月間という短期間のうちに訪韓することで、首脳間のシャトル外交を定着させ、日本の次期政権でも両国関係を安定化させたい意向があったという。

日韓共通の社会課題について解決策を模索する協議体をめぐっては前回会談で設置を確認し、29 日に関係省庁を交えた会合を初開催。 30 日発表の共同文書では、両政府は少子高齢化、人口減少、地方創生、首都一極集中問題、農業、防災、自殺対策などの共通の社会問題についての協議を継続的に実施し、経験や成功例を共有する方針を打ち出した。 協議体を通じ、意思疎通の機会を拡大し、連携や協力を強化すべく取り組むとしている。 日韓が前向きに協力しやすい共通の課題に取り組み、未来志向の日韓関係を印象づける狙いがある。

また、日本側の説明によると、両首脳は会談で北朝鮮の完全な非核化に向け、日韓、日米韓で緊密に連携することを確認した。 一方、韓国大統領府関係者によると、李氏は「過去を直視しつつ、未来志向の協力を続けていくべきだ」と改めて指摘した。 首相は会談後、記者団に「シャトル外交が着実に実践されている。 日韓関係を安定的に発展させていく上で極めて有意義だ。」と強調した。 1 年に 1、2 回の往来ではなく、「もっと頻度を上げることが日韓の物理的距離の近さからいっても十分に可能だ。 シャトルの名にふさわしいものにしていきたい。」と述べた。

首相は実務訪問として招かれたが、韓国側は「国賓に準ずる礼遇(大統領府関係者)」で歓迎した。 二国間訪問で日本の首相がソウル以外の地方都市を訪問するのは、2004 年に当時の小泉純一郎首相が済州島で盧武鉉(ノムヒョン)大統領と会談して以来、21 年ぶり。 退陣を表明している首相にとって今回が最後の外国訪問となった。 (釜山・原田達矢、貝瀬秋彦、asahi = 9-30-25)


自動車関税 15% に引き下げ トランプ氏が大統領令署名、月内実現へ

トランプ米大統領は 4 日、日本から輸入する自動車に課している 27.5% の関税を、15% に引き下げる大統領令に署名した。 この大統領令が連邦官報に掲載されてから 7 日以内に、税率の引き下げに向けた手続きをとるよう、ラトニック商務長官に指示した。 訪米中の赤沢亮正経済再生相は、引き下げは 2 週間以内に実現するとの見方を示した。 大統領令では、相互関税の税率負担を軽くする特例措置についても、適用することを明示した。 企業側が納め過ぎた税金については、8 月 7 日にさかのぼって還付するという。 7 月下旬の日米合意で米側が税率を引き下げると約束していたが、これまで実施されていなかった。

日米関税合意で日本が約束した投資については、大統領令で「日本政府が 5,500 億ドル(約 80 兆円)を米国に投資することで合意した」と明記した。 投資は米国政府によって選ばれるとし、「何十万もの職を生み出し、国内の製造業を拡大し、何世代にもわたる米国の繁栄を確かなものにする」とした。 合意内容は、進捗を確認し、履行されなければ大統領令を修正するとした。

大統領令とは別に、日米両政府は共同声明も発表した。 声明では日本の「コミットメント(約束)」として、日本が無関税枠の「ミニマムアクセス」制度に基づき、米国産コメの調達の 75% 増加を「迅速に実施」と明記。 トウモロコシや大豆などの米国の農産品を年間 80 億ドル(約 1 兆円)追加購入するともした。

抱き合ったラトニック氏と赤沢経済再生相

また、米国産の液化天然ガス (LNG) などを年 70 億ドル追加で買う。 100 機の米ボーイング社製航空機も購入する。 米国の防衛装備品や半導体の年間調達額を数十億ドル規模で増やす。 米国車の日本への輸出拡大に向け、米国で安全が確認された車については、日本は追加の試験なしで受け入れるとした。 一方、声明で米国は、今後課す可能性がある半導体(半導体製造装置を含む)や医薬品への関税について、他国を上回る税率を日本製品にかけないことを約束した。

大統領令が出たあと、交渉にあたったラトニック氏と赤沢氏は米商務省で、日米間の投資の促進に向けた取り決めを盛った覚書に署名した。 2 人が抱き合う場面もあった。 日米関税交渉は 4 月 17 日(日本時間)に始まり、最初の交渉には、トランプ氏も出席した。 赤沢氏は 5 月下旬から 4 週連続で訪米。 当初は 6 月中旬にカナダであった主要 7 カ国首脳会議(G7 サミット)の際に、首脳間で合意する道筋を描いていたが、間に合わなかった。

その後も閣僚間で協議を続け、7 月 23 日(同)に赤沢氏がトランプ氏と再び会い、合意に至った。 米側が自動車関税と相互関税をそれぞれ 15% に引き下げるかわりに、日本は 5,500 億ドルの対米投資や米国製品の輸入拡大などを約束した。 だが、合意したはずの相互関税の税率負担を軽くする特例措置は適用されず、自動車関税も引き下げられないままだった。 赤沢氏は 8 月上旬に再び訪米し、特例措置の適用と自動車関税引き下げの大統領令が「適時」に発出されることを確認、実現に向けてその後も協議が続いていた。

石破首相「非常に有意義」

トランプ米大統領が日本から輸入する自動車に課す関税を引き下げる大統領令に署名したことを受け、石破茂首相は 5 日午前、首相官邸で記者団の取材に応じ、「米側の一日も早い関税引き下げの実現を最優先として調整を続け、その結果、大統領令が署名された」と成果を強調した。 首相は、訪米中の赤沢亮正経済再生相を通じて、トランプ氏を日本に招待する内容の親書を送ったと明らかにした。 親書には「日米関係の黄金時代をともに築いていきたい」といった内容を記したという。

また、関税交渉に関する日米間の合意内容を二つの文書にまとめたことについて「国民に丁寧に説明したいという観点からも非常に有意義なものだ」と述べた。 (ワシントン・榊原謙、asahi = 9-5-25)


相互関税の特例「日本も対象」 米政府が見解 時期は「まだ決定せず」

「相互関税」の税率負担を軽くする特例措置について、米ホワイトハウス当局者は 8 日、日本を対象に加える考えを示した。 朝日新聞の取材に答えた。 赤沢亮正経済再生相が 7 日に米閣僚の説明として記者団に明らかにしていた内容を、米政府側も認めた形だ。 この特例措置は、「米国がもともと 15% 以上の関税をかけている品目については、相互関税の対象としない」というもの。 7 日に発動した新しい相互関税で、15% の税率をかけた欧州連合 (EU) にのみ認めていた。 同じ 15% がかかる日本に対しても、米政府は特例の対象とする方針だ。

ただ、特例の適用のためには、相互関税の根拠となっている大統領令を修正する必要がある。 この当局者は「(修正の)具体的な日程はまだ決まっていない」と述べるにとどめた。 赤沢氏は「半年、1 年ということは当然あり得ない。 常識的な範囲で米側が対応すると理解している。」と言う。 特例措置が実施されれば、事業者が払いすぎた関税は米政府から還付される方向だ。 また、この修正と同じタイミングで、米側が約束している自動車関税の 27.5% から 15% への引き下げに関する大統領令についても、トランプ大統領が署名する方向だ。

赤沢氏は、高関税が日本の自動車業界の重荷になっているとして、「一日も早く、一刻も早く 15% 税率を実現してほしい」としている。 相互関税の特例措置をめぐっては、日本政府が日米関税合意で勝ち取ったと説明していた。 だが、合意後に発表された相互関税の大統領令には盛り込まれておらず、赤沢氏が訪米して、米閣僚に確認を求める事態になっていた。

また、トランプ氏は近く医薬品に 250%、半導体に 100% の高関税をかける考え。 日米合意では「他国に劣後しない」と確約を得ているため、米国と EU が合意した「15%」が日本にも適用される見込みだ。 9 日に帰国した赤沢氏は記者団に対し、この点についても米側に確認したものの、半導体製造装置については「含まれていると理解するが、明示的に議論していない」と話した。 (ワシントン・榊原謙、多鹿ちなみ、asahi = 8-9-25)


日本がボーイング機 100 機購入、防衛装備品の年間購入追加 米発表

日米関税交渉の合意をめぐり、米ホワイトハウスは 23 日、「日本が米国製の防衛装備品を年間、数十億ドル規模で追加購入する」と発表した。 これまで日本側は、合意について「防衛費に関する内容は含まれていない(赤沢亮正経済再生相)」と説明しており、詳細は明らかになっていない。 ホワイトハウスは日本が米ボーイング社製の航空機 100 機の購入を約束したとも述べた。

ホワイトハウスは、日本との貿易や投資をめぐる合意についての「ファクトシート」と題した文書で、日本による米国製の防衛装備品の購入について「インド太平洋地域における(日米の)相互運用性と同盟の安全保障を強化するため」とした。 発表に先立ち、トランプ大統領は自身の SNS への投稿で、日本が「数十億ドル規模の防衛装備品などを購入することで合意した」と明かしていた。

安保は「ディール対象にするつもりない」と語っていたが

米国防総省の報道担当者は 23 日、朝日新聞の取材に対し、「具体的な調達額や取引について国防総省からの発表はない」と述べるにとどめた。 トランプ政権は日本を含む同盟国に対し、防衛費をはじめ負担増を求める立場だ。 トランプ氏は当初、日本との関税交渉で「軍事支援の費用」も議題とするとの考えを示した。 だがその後、各国との関税交渉で安全保障問題を「取引(ディール)の対象にするつもりはない」と述べていた。

日本側は関税交渉と、防衛費や在日米軍の駐留経費といった安全保障をめぐる議論を切り離すことを目指してきた。 関税交渉のために訪米した赤沢氏は 22 日、ホワイトハウスで約 70 分にわたってトランプ氏と会談。 日本政府関係者は交渉後、「基本的に安全保障は議論の対象になっていない」と記者団に語っていた。 (ワシントン・清宮涼、asahi = 7-24-25)


自動車への関税は計 15% に 日米関税交渉、相互関税は 15% で合意

トランプ米大統領は22日、日本に対して 25% を課すとしていた「相互関税」を、15% に引き下げることで合意したと、自身の SNS で発表した。 石破茂首相によると、日本側が削減を求めてきた自動車関税は、現行の 25% が 12.5% に下がる。 自動車の基本関税 2.5% とあわせて日本車には計 15% が今後は課されることになる。 訪米中の赤沢亮正経済再生相とトランプ氏がこの日、ホワイトハウスで会談した。 トランプ氏は「我々は日本との大規模な取引を完了させた、おそらく史上最大の取引だ」と投稿した。

関税交渉が一定の合意に達したと米側が発表するのは、これで 5 カ国目。 交渉を通じて自動車関税の税率引き下げが実現するのは、英国に続いて 2 例目。 ただ英国のような数量制限は日本には課せられていない。 4 月に始まった日米関税交渉は、8 月 1 日の「交渉期限」を前に妥結した。 トランプ氏の投稿によると、日本は米国に対して 5,500 億ドル(約 80 兆円)を投資するとした。 投資は「自身の指示のもとで」行わせるとつづり、その利益の 9 割は米国が享受するとした。

さらに、日本は、自動車やトラック、コメなどの農産品について「貿易を開放する」という。 コメについては、無関税の輸入枠「ミニマム・アクセス (MA)」の枠内で、米国産のコメの受け入れを増やす。 一方、トランプ氏は、自動車関税の扱いについては言及しなかった。

トランプ氏は、これまで日本を含む各国・地域に、8 月 1 日に発効する新しい相互関税の税率を通告している。 今回日本が合意した 15% は、新税率の中では最も低い水準となる。 ただ、現在課されている 10% からは引き上げとなる。 それについて、石破首相は「対米黒字国では最も低い」と強調した。 一方、日本政府関係者によると、鉄鋼・アルミニウムへの 50% の関税は残ったままだという。

訪米中の赤沢氏「任務完了」 SNS に投稿

赤沢氏は 21 日に米ワシントンに到着。 同日夕方にはラトニック商務長官と会い、自動車関税の見直しなどを求めて 2 時間以上にわたって協議した。 22 日にはミラー大統領次席補佐官とも協議したとみられ、その後、トランプ氏と会談した。 トランプ氏は 8 月 1 日から「相互関税」を全面発動し、日本には25% を課すと通告していた。 赤沢氏はワシントン到着時、「8 月 1 日という一定の節目にむけて、日米双方の利益になるような合意を成立させるという思いは共通している」と語っていた。 トランプ氏との会談後、SNS に「米国ホワイトハウスに行きました。 任務完了しました。 全ての関係者に心から感謝です。」と投稿した。

一方、米メディアによると米側で協議を主導するベッセント財務長官は日米交渉について「非常に順調」と述べ、近く合意がまとまっても驚かないだろうと話していた。 20 日に投開票された参院選では自公が過半数を割り込み、自民党内からも石破茂首相に対して責任を問う声があがっている。 首相は続投する理由の一つとして、日米関税交渉を挙げていた。

首相「お互いに全力でギリギリの交渉した」

日米関税交渉が合意したことを受け、石破茂首相は 23 日午前、記者団の取材に応じ、自動車関税と相互関税が 15% となったことについて「対米貿易黒字を抱える国の中で、これまでで最も低い数字となる」と述べ、成果を強調した。 また、農産品など日本側の関税が引き下げられなかった点に触れ、「一貫して米国に対して主張し、働きかけを強力に続けてきた結果だ」と語った。 また、今後、トランプ氏と会談するかについては「必要に応じて電話会談、あるいは対面での会談を行う」と述べた。

首相は同日午後にも、麻生太郎、菅義偉両元首相、岸田文雄前首相の 3 氏と面会する方向で、首相の進退が協議されるとみられる。 首相はこの場で、日米関税交渉の合意についても説明する可能性がある。 関税交渉の合意に伴う自身の進退について首相は、「合意の結果を受けてどのように判断するかということになるが、合意の内容をよく精査しなければ申し上げることはできない」と記者団に語った。 (榊原謙・ワシントン、多鹿ちなみ、千葉卓朗、asahi = 7-23-25)

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赤沢氏、8 回目関税交渉へ 米側の譲歩に疑問視も

赤沢亮正経済再生担当相は 21 日、8 回目の対米関税交渉に臨むため米ワシントンに向けて出発した。 石破茂首相は 21 日の記者会見で「関税ではなく投資という考え方で、日米双方にとって利益となる合意を実現する」と強調。 ただ、参院選大敗で基盤が弱まった石破政権が、米側から譲歩を引き出せるのかどうか疑問視する声が上がる。 赤沢氏は、トランプ米政権が相互関税の上乗せ分を発動する 8 月 1 日を見据え、閣僚間での合意を目指す。 米国が関税引き下げを受け入れない場合でも、上乗せ分発動の再延期を認めさせられるかどうかが焦点となりそうだ。

赤沢氏は 24 日に帰国する予定だが、政府は具体的な協議日程は調整中と説明。 ベセント財務長官やラトニック商務長官らとの会談が想定される。 日本はこれまでの交渉で、基幹産業である自動車への追加関税の撤廃や引き下げを再三要求。 米側は否定的で、4 月からの協議では目立った進展がない。 (kyodo = 7-21-25)


「ファイブアイズ」と進む情報共有 日カナダが情報保護協定に署名

来日したカナダのアナンド外相と岩屋毅外相が東京都内で 8 日に署名した情報保護協定は、日本とカナダの二国間の機密情報の取り扱いを定めるものだ。 カナダも参加する「ファイブアイズ」や主要 7 カ国 (G7) との情報面での体制整備が進んでいる。 「協定によってカナダと日本は、インド太平洋地域の平和について共有する目標のため、防衛と安全保障のパートナーシップを強化することができる。」 アナンド外相は 8 日の共同記者発表でそう語った。 岩屋外相も「日カナダ間での安全保障分野の機密情報交換が、より円滑になる」と協定の意義を強調した。

情報保護協定は、二国間で安全保障に関する情報を交換する際、提供された機密情報を第三国に無断で提供することを禁止する「サードパーティールール」などを規定。 防衛装備品やテロに関する情報交換を想定し、慎重に機密を取り扱うことで二国間の情報共有を促進する狙いがある。 日本はかねて米英豪、ニュージーランド、カナダの英語圏 5 カ国が機密を共有する「ファイブアイズ」との連携を目指してきた。 米英豪とはすでに情報保護協定が発効し、ニュージーランドとも昨年、締結に向け大筋で合意している。

G7 は日本、米国、ドイツ、フランス、英国、イタリア、カナダの 7 カ国と欧州連合 (EU) が参加する。 カナダ以外の 5 カ国とは日本との情報保護協定が発効し、今回カナダとの署名にこぎ着けたことで、G7 のすべての国との間で協定を締結・発効する見通しとなった。 日本はインド、韓国、北大西洋条約機構 (NATO)、ウクライナなど 10 カ国・機関も含め協定が発効しており、カナダの署名は 11 番目。 カナダは 2022 年に中国を牽制する内容のインド太平洋戦略を発表しており、日本はカナダとの情報保護協定締結で同地域での連携強化を図る考えだ。

情報と安全保障に詳しい慶応大の土屋大洋教授(国際政治)は「一つの情報源に頼らず多様な安全保障上の情報を集め、突き合わせて総合的に判断することが重要」と指摘。 「たとえ同盟国であっても、裏切られないよう相互監視が必要な時代となり、『カナダが米国をどう見ているか』といった情報も有益だ」と話す。 (加藤あず佐、asahi = 7-9-25)


トランプ関税の書簡、石破首相が公表 … 「30% や 35% ではなく事実上協議の期限を延長するもの」

石破首相は 8 日午前、米国の関税措置を受けた政府の総合対策本部会合を首相官邸で開き、米政府から日本の全輸出品に 8 月 1 日以降 25% の関税を課すとした書簡を受け取ったと公表した。 首相は関税交渉を巡り、「日米双方が折り合えない点が残っており、合意に至っていない。 安易な妥協を避け、厳しい協議を続けてきたからだ」と述べた。 同時に「議論には進展もある」とも指摘し、「書簡にある税率はトランプ大統領が発信した 30% や 35% ではなく、事実上据え置きするもので、協議の期限を延長するものだ」との認識を示した。 (yomiuri = 7-8-25)


トランプ氏「日本との合意、疑わしい」 30 - 35% の関税課すと示唆

トランプ米大統領は 1 日、日米関税交渉について「合意できるか確信を持てない。 疑わしい。」と述べた。 交渉を打ち切り、30% の高関税を日本にかける可能性もあるとした。 各国・地域との交渉期限が 9 日に迫るなか、難航する対日交渉の優先度が下がっていることを強くにじませた。 トランプ氏はこの日、記者団に対して、日米間の自動車やコメをめぐる貿易上の不満を吐露。 「彼らはとても強硬だ。 彼らは非常に甘やかされてきた。」と批判した。 9 日に設定した期限の延長はせず、多くの国々に対して、書簡を通じて一方的に新たな関税の税率を伝える考えを示した。

日本については「我々が必要とすることをあなた方ができないのは分かっているので、30% か 35%、あるいは我々が決める数字を(関税として)支払ってもらう必要があると伝える。」と語った。 トランプ氏は 4 月、日本に 24% の「相互関税」を課すと発表し、うち 14% 分が期限の 9 日まで停止されている。 トランプ氏は日米同盟や石破茂首相を称賛しつつ、「巨額の貿易赤字を日本に抱えている」などと述べ、「不公平」という言葉を連発した。 交渉責任者のベッセント財務長官も 1 日、米メディアに「米国民にとって不公平な取引は受け入れるな、とトランプ大統領から指示されている」と明らかにした。

 

米政権がこれまでに一定の合意に達したのは英国のみ。 米高官は複数国との早期合意をめざしているとする。 インドなどが念頭にあるとみられる。 交渉期限を控え、決着できそうな相手に集中する考えとみられ、対日交渉が「後回し」になる可能性もある。 トランプ氏はこの数日、コメや自動車を引き合いに、日本を批判する発信をくり返した。

日本はこれまで、交渉役の赤沢亮正経済再生相が 7 回にわたって訪米し、ベッセント氏らと協議を重ねてきた。 日本は自動車関税の見直しを「本丸」に据えてきたが、米側は消極的とされ、6 月にあった日米首脳会談でも溝は埋まらなかった。 現時点で交渉は決着のめどが立っていない。 (ワシントン・榊原謙、asahi = 7-2-25)


トランプ氏「日本は米不足なのに米国産受け取らず」 相次ぐ日本批判

トランプ米大統領は 6 月 30 日、SNS への投稿で「日本は私たちの米を受け取ろうとしない。 深刻な米不足に直面しているというのに。」と主張した。 日本による米国産米の輸入が少ない、との不満を示したとみられる。  投稿では「各国がどれほど米国に甘やかされているか」を示す例として日本を名指しした。 「彼ら(日本)に書簡を送るだけだ」ともつづった。 トランプ氏は、貿易相手国・地域に書簡を送って関税率を一方的に通告する、という意向を繰り返し主張している。

トランプ氏は 29 日に放送された米 FOX ニュースのインタビューでも、日本との自動車貿易を「公平でない」と述べている。 日本など各国との関税交渉の期限が 7 月 9 日に迫っており、圧力をかける狙いがありそうだ。 トランプ政権はこれまでも、日本が米国産米に「700% の関税を課している」などと、不正確な数字を用いて批判してきた。 米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、日本は米国産米の輸出先として 2 番目に大きい市場となっている。

小泉農相「コメント控えたい」

小泉進次郎農林水産相は 1 日の閣議後の記者会見で、トランプ氏の米国産コメの扱いをめぐる発言について「米国政府関係者の発言の一つ一つにコメントすることは差し控えたい」と述べた。 そのうえで「日米間では米国の関税措置に関する協議が続けられているところ。 引き続きわが国にとって最大限のメリットを獲得するため、関係省庁と連携をして協議に対応していく」と語った。 (ワシントン・榊原謙、内藤尚志、asahi = 7-1-25)