高市首相へ「外交の時に播州織着て」 兵庫・西脇の事業者らが贈る

兵庫県の北播磨地域で江戸時代から生産されている播州織。 その中心地、西脇市の事業者が、播州織のシャツやストールを高市早苗首相に贈った。 播州織は、糸を先に染めて織り上げる先染め織の技法で、豊かな色彩や自然な風合いが特徴だ。 11 月の参院予算委員会で、高市首相の外交時のファッションについての質疑応答があり、高品質な国産の播州織で外交に臨んでもらおうと、事業者らが企画した。

西脇市によると、高市首相が就任時に着用したブルー系のジャケットなどが話題になったことから、ブルーを基調とした播州織のシャツやストール、ハンカチも選んだという。 片山象三市長や西脇商工会議所の矢納利夫会頭らが 11 月 28 日、衆院議員会館で高市首相の事務所関係者に手渡した。 外交の厳しい課題は山積しているが、市商工観光課の担当者は「肌触りがやさしいので、首相もリラックスして外交で活躍してほしい」と成果に期待を寄せている。 (大久保直樹、asahi = 12-13-25)<


なぜ? アパレル業界の倒産・閉店、止まらない連鎖 業績明暗くっきり 変わる業界地図

華やかなイメージのあるファッション業界に逆風が吹き付けている。 アパレル企業の倒産や閉店、ブランド休止は件数の高止まりが続く。 ファーストリテイリング傘下の「ユニクロ」、「GU」が圧倒的な高業績で需要を吸い上げ、中小アパレルのパイは減った。 中国発衣料品ネット通販の「SHEIN (シーイン)」に低価格帯のニーズを奪われている。 一方で古着市場が膨らんだ。 アパレル業界の見取り図を書き換える倒産・閉店の連鎖は、中堅以上の企業にもファッション依存からの「衣替え」を迫る。

業界では名前の知られた中堅アパレルの倒産相次ぐ

信用調査会社の帝国データバンクが「倒産速報」で報じたアパレル関連企業の事例は 2025 年下半期だけでもスタイル(東京・墨田)、R1000 (福島県喜多方市)などが相次いだ。 いずれも業界ではそれなりに名前の知られた中堅企業だ。 企業体の倒産ではないものの、ビジネスの終わりを意味する閉店や撤退、ブランド休止・売却も後を絶たない。

例えば、米国のカジュアルウエアブランド「フォーエバー 21」。 仕入れ調達型ファストファッションの代名詞的ブランドとして一世を風靡した。 しかし、2023 年に 3 目の上陸を果たしながら、わずか 2 年足らずで撤退が決まった。 外資系では「ZARA」や「H & M」に次ぐ知名度を持つファストファッションの雄だったが、日本市場に根付かなかった。

だが、アパレル業界全体が不況かといえば、そうではない。 トップのファーストリテイリングをはじめ、売上高の上位企業は総じて好調が続く。 国内ユニクロ事業の売上高は 2025 年 8 月期にアパレル企業では初めて国内売上高が 1 兆円を超えた。 帝国データバンクの情報統括部情報取材課の阿部成伸課長は「倒産や廃業は比較的小規模な事業者に目立つ」とみる。 つまり、業績の二極化が進んで、しわ寄せを受けた下位企業が退場を強いられている構図と映る。

「服が売れない時代」といわれて久しい。 そうした流れを象徴するのが女性ファッション誌の廃刊・休刊ラッシュだ。 集英社は 2025 年 9 月、「MORE (モア)」の休刊を発表した。 近年は「JJ」や「steady.」、「Popteen」、「with」、「セブンティーン」、「ミセス」などが紙版の定期刊行を終えた。 男性誌でも「メンズクラブ」が不定期刊行に変わった。

衰えたファッション雑誌の「神通力」

かつては「雑誌から抜け出てきたような」というおしゃれの褒め言葉があった。 トレンドを打ち出し、購買欲を刺激するファッション雑誌はアパレルビジネスのエンジン役を務めた。 雑誌に載れば、服が売れた時代があった。 しかし、自分流の着こなしが広がり、雑誌の「神通力」は衰えた。 シーズンごとに服を買い足す人は減り、百貨店のセールも集客力がダウン。 「そんなにたくさんの服はいらない」、「賢い着回し術でカバーしたい」といった意識が浸透して、家計に占めるファッションへの支出の割合は下がっていった。

ファッションとの向き合い方も変わってきた。 一昔前は「服の力」を借りて背伸びするような着方が意識されていたが、今では気取りや飾り気を控えた等身大の装いが支持を広げている。 経済的な身の丈になじまない高額の買い物を避ける消費者が増え、アパレル商品はベーシック化やカジュアル化が進んだ。

決済手段の変化は「日銭商売」だったアパレルビジネスにキャッシュフローの変化を迫る。 キャッシュレス決済は実際の入金までにタイムラグがある上に、手数料の負担も生じる。 決済システムへの投資が必要で、事業者側の負担は小さくない。 従業員のスキル管理も必須だ。 昭和のおしゃれを地域で支えた「街の洋品店」は生き残りが難しくなってきた。 閉店や廃業などの「静かな退場」は「統計に表れている数字よりも多いと見込まれる(阿部氏」)という。

機能と価格のバランス感で従来のメーカーとは立ち位置の異なる新顔プレーヤーの出現は中低価格帯のアパレル業者にとっての脅威となっている。 代表例が「ワークマン」だ。 1,000 - 3,000 円程度の価格帯で、高機能を備えたウエアを送り出す戦略は消費者のニーズをつかんだ。 ディスカウント店「ドン・キホーテ」もお手ごろな価格でファンを呼び込んでいる。 これらの新顔プレーヤーに、発信力や集客力の面で中小アパレル事業者は太刀打ちできない。

シーイン・100 均・古着店との価格競争で劣勢

2025 年型倒産の 3 大要因が響いている点では、アパレル業界も例外ではない。 「人手不足」、「コスト上昇」、「価格転嫁難」がその三つだ。 価格競争が続く事情から、「価格転嫁が難しい点でアパレル企業には負担増加につながっている。(阿部氏)」 リアル店舗に常時、販売スタッフを配置しておく必要に迫られる点でアパレルビジネスは人手不足のあおりを受けやすい。

コスト上昇は原材料に加え、リアル店舗の家賃や光熱費、人件費が重い。 衣服は素材の風合いや着用感、サイズなどを店頭で確かめたいと考える購入者が多く、リアル店舗を減らしにくい。 顧客とのコンタクトポイント、ブランドイメージの発信といった意味からもリアル店舗を重んじるアパレル経営者は少なくない。

価格転嫁は容易ではない。 中国発の衣料品ネット通販企業が日本でも低価格を強みに支持を広げる流れにあり、消費者は価格差に敏感だ。 よそにはないデザインや、特殊な機能、ブランドのイメージなどが伴わない場合、消費者は価格を優先して購入アイテムを決めやすい。 コスト高のダイレクトな転嫁は客離れを招きかねない。 物価上昇が止まらない中、消費者はファッションへの支出を絞る傾向を強めている。

長く続いている円安はボディーブローのように中小アパレルの体力をそぐ。 中低価格帯では国産品は少なく、ほとんどはアジア、とりわけ中国製が大半を占める。 「円安に伴う輸入コスト増加は無視できない。(阿部氏)」 アジア圏で生産コストの上昇傾向が続いていることも仕入れ価格を押し上げる。 大手企業は中国以外へのシフトを加速しつつあるが、中小には容易ではないようだ。

「シーイン」に代表される中国発衣料品ネット通販は価格面で手ごわい競争相手だ。 微妙なサイズ感や細部の仕上がりなどをあまり問われない消耗品タイプの場合、消費者は価格差に目を向けやすい。労働環境や競争条件などの面で不透明な事情に心理的な引っかかりを覚えながらも、安さに引かれる形で中国発衣料品ネット通販を選ぶ「隠れシーイン派」は少なくないようだ。

「悪目立ち」を避ける意識 堅実な消費広がる

そもそもアパレル店舗へ足を運ぶのが面倒という消費者は珍しくない。 コンビニエンスストア大手の「ファミリーマート」は実力派ファッションデザイナーの落合宏理氏と組んで「コンビニエンスウェア」をヒットさせた。 手頃な価格帯で上質なデザインの商品群は手軽に買えるファッションを求めていた潜在ニーズを掘り起こした。 タイムパフォーマンスを重んじる Z 世代にとってショップ巡りはもはや「面倒くさい」と見られ始めているようだ。

アパレルビジネスを取り巻く状況は 1980 - 90 年代に比べて様変わりした感がある。 かつてファッション業界は憧れの世界であり、ショップスタッフから「カリスマ店員」が相次いで生まれた。 食費を削って、クレジットカードのリボルビング払いでハイブランド品を買うおしゃれフリークが百貨店やファッションビルをにぎわせた。

しかし、今では「悪目立ち」を避ける意識が広がり、背伸び志向のファッションを好む人は減っている。 堅実な消費が広がり、多彩に着回しやすく出番の多い服が求められるようになった。 このテイストに強みを持つユニクロ、GU に需要が集まり、「多くの中小アパレル事業者が割を食う格好になっている。(阿部氏)」 中小事業者の経営体力がじりじりと奪われ、退場が現実味を帯びていく構図だ。

価格の成り立ちに向ける、消費者のまなざしが厳しさを増していったのも、アパレルビジネスの根幹を揺るがせた一因だ。 ファストファッションの台頭をきっかけに、値付けの妥当さを吟味する傾向が強まり、リーズナブル価格帯での購入が広まった。 消耗品であれば、ノーブランドで構わないという割り切りが浸透。 いわゆる「100 円ショップ」で衣料品を買い求める消費者も増えた。

特別なブランドパワーを持たないアパレル企業は価格の下振れトレンドに飲み込まれ、一段と利幅の狭い価格帯での消耗戦を迫られつつある。 「シーイン」や「100 均」との価格競争は旧来のアパレル業界とは別物の厳しさを伴う。 先の見通しにくい競争環境は「あきらめ型倒産」につながりやすい。

揺らいだブランド価値 コロナ禍・猛暑で客足遠のく

人手不足に関しては、アパレル業界特有の風土が若い働き手を遠ざけているところがある。 来店客を迎える仕事だけに、売り場では立ち仕事が多い。 初対面の相手に商品を売り込む接客は、職場で電話を受けることにすら、おじけてしまう若い働き手には心理的負担が小さくないだろう。 給与面での待遇は労働環境との見合いで割に合わないと映りやすい。

来店が多くなる週末や祝日に休みを取りにくいのも働き手側から敬遠されがちな理由だ。 仕事での成功以上にプライベートの充実を重んじる気質があるとされる今の働き手にとって、友人・知人と一緒の時間を楽しみにくい勤務体系は魅力が乏しく感じられそうだ。 販売スタッフが育たないと、顧客とのつながりが弱まる。 従来の有力ショップには大勢の上顧客を抱えるスタッフがいて、売り上げを支えた。 個人的なスタイリストのような信頼感を得て、「この人から買いたい」といった購買マインドを引き出していた。 そうした人的引力を持たないスタッフが増えれば、リアル店舗の収益性は下がりかねない。

値付けへの信頼感が揺らいだのは、静かな地殻変動だ。 セール時期に半額へマークダウン(値下げ)するような売り方は長年、アパレル業界の慣行だったが、プロパー(正規)価格への疑念を抱かせた。 割安価格が売り物のアウトレットの広がりもプロパー価格での購入をためらわせる一因になったようだ。 価格の裏付けとなるブランド価値そのものへの疑いが広がって、低価格のノーブランド品が相対的にコストパフォーマンス面での魅力を高めた。

服の力で自分を魅力的に見せようという、かつてのおしゃれマインドは変質しつつある。 自分好みの着こなしが共感を得るようになって、シーズンごとに打ち出される「作られたトレンド」に乗る必要はないと考える消費者が増えてきた。 新品主体のアパレルには逆風だ。 愛着を持って長く着るというサステナビリティー志向のスタイリングが浸透してきたことも大きい。 大量消費・大量廃棄を嫌って、事実上の買い控えも起きた。 古着店が増えて、ニーズの受け皿も整った。 新品の服を買うには、特別な理由が必要な時代となりつつある。

約 3 年間にわたった新型コロナウイルス禍はリアル店舗から消費者を遠ざけた。 感染リスクが下がった今でもかつてのように、複数の店舗を巡る「買い回り」の勢いは戻っていない。 暑くて長い夏は「リアル店舗を巡る意欲を鈍らせた。(阿部氏)」 パーティーシーンの減少に伴い、着飾るマインドそのものも鈍ったきらいがある。

スーツ着用を控えるビジネスパーソン 「経営者でもノーネクタイ」

1 年の半分が夏と呼べそうな気候変動はアパレルビジネスに変革を迫る。 以前はコートに代表される、秋冬の重衣料がアパレル企業の稼ぎ頭だった。 春夏は素材が薄手になり、価格も秋冬よりは下がる。 秋冬は収益面での柱だったが、近年はコートを着る期間が短くなり、重衣料のニーズが落ち込んでいる。 反対に、春夏の薄着アイテムは出番が長くなり、企業収益は押し下げられがちだ。

クールビズが広がって、スーツ着用を控えるビジネスパーソンはじわりと増えている。 「経営者でもノーネクタイ姿が増えてきた。(阿部氏)」 IT (情報技術)系企業やスタートアップではそもそもスーツを着ない人が多数派を占めるケースが珍しくない。 スーツのように見えて実はニット仕立てといった、暑さをしのぎやすいウエアも現れた。

店舗スタッフにもオンライン接客のスキルが欠かせず

百貨店業界から広がった新語「二季」は、春や秋の期間が短くなることで夏物をほぼ通年で着続けるようになること。 衣替えをしない家庭が増え、季節の変わり目で衣服を購入する慣例も失われ始めた。 従来の商法が通用しないダイナミックな「夏シフト」は中小事業者にはハードルが高い。 年間を通したキャッシュフロー面での手当てや調達先の見直しなどが必要になり、ビジネス環境を揺さぶる。

ファッション商品のマーケティングで SNS の役割が一段と大きくなってきた。 新入荷の告知にとどまらず、ショップスタッフのセルフコーディネートやおすすめポイントのレクチャーなど、多彩な発信が求められている。 大手企業では社内研修や外部セミナーなどでスキルアップを促しているが、中小ではままならない。 発信力格差は売り上げを左右する決め手になりつつある。 リスキリング投資に費やせる資金力の差は中小を追い込む一因となっている。

SNS で発信・拡散して、オンラインで販売するという連携は今の消費者に届きやすいマーケティング手法といわれる。 「ポイント付与や値下げアラートなどの機能が購買に誘う。(阿部氏)」 実現にあたっては、タイミングを逃さないコンテンツ投入や在庫管理、システム運営が求められる。 全体をコントロールするノウハウが欠かせないが、中小事業者はそうしたリソースを確保しにくい。

もはや商品を店頭にそろえておけば済む時代ではなくなっていて、接客の意味が変容し始めている。 店舗スタッフにもオンライン接客のスキルが欠かせない。 SNS とオンラインショプにまたがって業務を仕切るプロが求められるが、報酬・待遇面で中小アパレルには獲得が難しい。

もともと事業者や店舗、商品が実需に比べて多すぎる「オーバーストア」の状況が指摘されてきた。 ビッグプレーヤーに売り上げが偏る流れが加速した結果、中小事業者は残ったパイを奪い合う状況に。 「エアコンが効いていて、快適な買い物環境のショッピングセンターに買い物客が集まる傾向が進んだ(阿部氏)」という事情もあって、中小事業者は一段と割を食う立場になりつつある。 市場からの退場に伴う、事業者や店舗の減少は適正規模への調整プロセスとも映る。

レナウンが 2020 年に東京地裁から破産開始の決定を受けたことはアパレルビジネスの落日を印象づける出来事として関心を集めた。 「ダーバン」ブランドで知られ、「イエイエ」のテレビ CM でも有名だったレナウンの行き詰まりは「ブランドが通用しない時代」の到来をうかがわせる。 その後の 5 年間でアパレルビジネスを取り巻く経営環境はさらに厳しさを増した。 勝ち組企業が突き抜けた業績を上げる一方、中小にとっては生き残りをかけたハードルがさらに上がる 2026 年となりそうだ。 (日経 BizGate = 12-10-25)


アパレル会社が中国通販「シーイン」を提訴、ブランド模倣品の販売巡り損害賠償求め

人気ブランド「X-girl (エックスガール)」などの衣料品を販売するアパレル会社「ビーズインターナショナル(東京)」は 2 日、模倣品の販売で商標権を侵害されたとして、中国発の通販サイト「SHEIN (シーイン)」の日本法人(東京)などを相手取り、販売差し止めと計約 1 億 1,000 万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしたと発表した。 提訴は 11 月 28 日付。

ビーズ社によると、シーインでは遅くとも今年 5 月以降、ビーズ社が商標権を持つ 4 ブランドのロゴが付いた模倣品の T シャツが販売されていたという。 シーイン側に模倣品の販売停止を繰り返し求めたが、十分な対応がなされなかったため、提訴に踏み切ったという。 (yomiuri = 12-2-25)


帝人と旭化成、繊維子会社を統合へ 来年 10 月、帝人側が 80% 出資

帝人と旭化成は 1 日、繊維事業を担っているそれぞれの子会社が、2026 年 10 月に経営統合すると発表した。 帝人の子会社が旭化成の子会社を吸収合併する。 統合後の出資比率は帝人が 80%、旭化成が 20% とする。 統合する子会社は、帝人フロンティア(大阪市北区)と旭化成アドバンス(東京都港区)。 統合後の社名や所在地は未定。 両子会社の社長が 2 日に東京都内で会見を開く。

両社が扱う繊維は、衣料品向けが中心。統合によって販売網や取り扱い製品の補完、調達コストの削減を目指す。 帝人フロンティアは、材料の調達から縫製まで幅広く手がけている。 旭化成アドバンスは、スーツの裏地などに使われるキュプラ繊維「ベンベルグ」などを手がけている。 今回の統合では、航空機や自動車などに用いられる炭素繊維などは対象に含まれない。 (友田雄大、asahi = 12-1-25)


百貨店の免税売上高、10 月は 8 カ月ぶり前年超え 懸念は日中関係

百貨店の動向

記事コピー (7-18-16〜11-25-25)


繊維産地・石川の工場、観光客の心つかむ 見学だけではない仕掛け

北陸は繊維の一大産地。 そう体感できる施設が石川県かほく市にある。 繊維製造のカジグループ(金沢市)が 4 月に開設した「カジファクトリーパーク」だ。 工場を一般公開し、生地の魅力を発信する。 産業と観光を結びつけ、繊維業界の活路を開こうとしている。 金沢市内から車で 40 分ほど。 郊外の風景の中に、まるで美術館のような洗練された建物が現れた。 周辺の緑地などを含めた総面積は約 4 万 3 千平方メートル。 2 階建ての建物の延べ床面積は約 1 万 1 千平方メートル。 約 70 億円をかけて整備した。

館内でまず飛び込んでくるのが、「クリール」と呼ばれる糸掛けスタンド。 生地を織る前のタテ糸の準備工程に使う。 2 階に上がり、扉の先にある工場の見学エリアへ。 最新鋭の織機 160 台が動く様子が眼下に広がり、機械音が響く。 水の力でヨコ糸を時速 180 キロのスピードで飛ばして織り上げているという。 工場は 24 時間稼働し、3 交代で働いているという。

展示の一角には、カラフルな生地が天井からつるされたコーナーがある。 人が透けて見えるほど薄い。 「KAJIF (カジフ)」と名づけた同グループのブランドの生地の一つだ。 髪の毛の 3 分の 1 ほどの超極細のナイロン糸を使い、1 平方メートル当たりの重さはたった 23 グラムとの説明に驚いた。

なぜこんな施設をつくったのか - -。 同パークプロジェクト長の砂山徹也さん (41) によると、2017 年ごろから工場を新たに建てる話があったが、コロナ禍で受注が激減。 「北陸 3 県で国内の(ナイロンやポリエステルなどの)合成繊維の約 9 割を作っているが、産地全体が下請けの仕組み」と言い、下請け率を下げ、自社生地の一層の販売強化を目指すことに。 そこで自分たちの製品の価値を消費者に直接、知ってもらおうと、産業観光に着目したという。

来訪者に楽しんでもらうため、自社製品の雑貨や洋服を売る店、地元の食材を使ったレストランを併設。 端材を使ったワークショップも開く。 入場は無料だ。 施設の前の庭には木々を植え、遊具を備えた公園は家族連れにも好評という。 「どんなきっかけでもいいので、来てもらいたくて、コンテンツをいっぱいそろえた」と砂山さん。

ゴールデンウィークや夏休みには、バレーボール SV リーグの「PFU ブルーキャッツ 石川かほく」の選手との交流や、縁日などの催しを企画。 家族連れやカップル、繊維会社の視察など開館から半年で約 4 万人が来場した。 名古屋や関西から足を運ぶ人もいる。 これまでは募集をかけても人がなかなか来なかったが、面接希望が増えるなど効果は人材確保にもつながっているという。 (永井啓子、asahi = 11-15-25)


中国の国慶節、爆買いから身の丈消費へ ペット用衣料など日用品好調

中国の国慶節(建国記念日)に伴う 10 月 1 - 8 日の大型連休では多くの中国客が訪れた。 かつての富裕層による爆買いや高額消費は目立たず、日用品などを必要な分だけ買う「身の丈消費」にシフトしつつある。 ビックカメラはキャラクター関連の商品が好調が続く。 各社は割引策など需要喚起に知恵を絞った。

ビックカメラの 10 月 1 - 8 日の免税売上高は前年同期から 2 割増、客数も 3 割増と好調だった。 ハローキティなど知的財産 (IP) 関連の商品が伸びたほか、美顔器や電気シェーバーを自分用のお土産として買っていく消費者も目立った。 秋葉原や渋谷の店舗では夕食後でもゆっくり買い物できるように今年から閉店時間を 1 時間遅らせ、午後 10 時まで営業することで多くの訪日客を取り込んだ。

同社では 25 年 1 - 2 月の春節(旧正月)に伴う大型連休以降、中国人による爆買いは収束している。 同社の細山祐一グループインバウンド室長は「最近は SNS で事前に欲しいものを調べてから、買いに来る人が増えている」と話す。 新型コロナウイルス禍の収束直後は自由に観光できない状況は変わらず、爆買いが盛んだった。足元では個人消費が主流になった。

旅行予約サイト中国最大手の携程集団(トリップドットコムグループ)によると、今回の連休中の海外旅行先としては日本が最も人気だった。 アリババ集団傘下の金融会社、アント・グループの決済サービス「支付宝(アリペイ)」では、10 月 1 - 3 日の中国人海外旅行客の決済額で日本が首位だった。 日本政府観光局 (JNTO) が公表した 9 月の訪日客数は 326 万 6,800 人で、同月として過去最多だった。 1 月から 9 月までの累計は 3,165 万 0,500 人で、過去最速で累計 3,000 万人を突破した。

中でも中国客の勢いは増すばかりだ。 9 月の客数を国・地域別にみると、最多は前年同月から 18.9% 増えた中国の 77 万 5,500 人だった。 客数は増えているものの、1 人当たりの支出は伸び悩んでいる。 家族や友人の分までまとめて購入するのではなく、日用品や雑貨を必要な分購入する需要が高まっている。

ペット用品の「ペットパラダイス」の免税売上高(10 月 1 - 8 日)は前年同期と比べて 22% 増えた。 大阪・心斎橋や東京・渋谷の店舗では日本ならではの着物や獅子舞などを模したペット向け衣料が好調だった。 「インバウンドから要望が多い大型犬向けの商品を増やして対応している」と担当者は話す。 シチズン時計では 10 万円以下のモデルが前年を上回った。 担当者は「以前は 20 万 - 30 万円のモデルが人気だった」といい、高額品の需要は落ち着いたとみられる。

百貨店では足元の円高傾向で免税売上高は減少を続けている。 日本百貨店協会(東京・中央)の発表によると、足元の売上高は高額品が減収なのに対し、化粧品や食料品などの消耗品が増収だった。客単価は2月から前年割れが続く。 インバウンド消費の中心である中国人客の消費は変化しつつある。 足元ではヒンズー教の祝祭「ディワリ」に合わせたインドの大型連休(10 月下旬 - 11 月上旬)に合わせた新たなサービスも出てきた。 中国人客に限らず訪日客全体の動きを読み、新たな需要を掘り起こせるかが課題になる。 (宮月子、佐藤諒、兼谷将平、子玉朋佳、nikkei = 11-14-25)


中国「SHEIN」パリ常設店舗に行列と抗議
… ウルトラファストファッションに警戒感 幼女の人形・メリケンサックの販売も確認

中国の衣料通販大手「SHEIN」が、世界初の常設店舗をフランス・パリにオープンしました。 パリの老舗百貨店に 5 日、SHEIN が店舗を開業しました。 オンラインではなく、その場で服を買うことができる SHEIN の常設店舗は世界初で、今後フランス国内の複数の都市にも出店が予定されています。 訪れた人は「格安だから来ました。 経済的に余裕がないからここで買います。」と話しました。

ヨーロッパでは、SHEIN をはじめとした大量生産・大量消費を続ける、いわゆる「ウルトラファストファッション」への警戒感が広がっていて、フランス議会では、EU (ヨーロッパ連合)のエリア外からフランスに郵送される小包に課税する法案が審議されています。 出店に反対する人は「誰もが高級品を買えるわけではないが、商品はきちんと選ぶべき」と話しました。 この百貨店に入店していた複数のブランドが、SHEIN のビジネスモデルに抗議する意思を示して撤退するなど影響が広がっています。

世界初の常設店舗のオープンで行列ができている一方、その前で抗議活動が起きているという状況です。 なぜなのか詳しく見ていきます。 日本のみならず世界で人気が拡大している「SHEIN」ですが、実際にはさまざまな問題も起きています。 2023 年 12 月にユニクロが「SHEIN のバッグが自社の商品を模倣した商品だ」として、SHEIN を展開する 3 つの会社を提訴し、模倣商品の販売停止を求めました。 また 2025 年 7 月、フランス当局は通販サイトが虚偽の安売り表示をしているとして、罰金約 68 億円を課すと発表しています。

また、今回オープンを前に 11 月 1 日、フランスの規制当局は SHEIN が販売していた商品の中に規制対象となる幼女の人形を確認したと発表。 児童ポルノにあたることは疑いの余地なしとして、サイトを一時的に停止する手続きを開始しました。 その他にも海外メディアによりますと、メリケンサックなど大量の武器も販売されていることも確認されたということです。 問題視されていることも多々ありますが、実際どれだけ人気があるのかデータもあります。

欧米ではもちろん、日本でも多くの利用者がいる SHEIN ですが、イギリスの調査会社によると、2024 年の世界のアパレル市場のシェアでは NIKE、アディダスに次いで SHEIN が 3 位ということで、ヨーロッパでも本当に人気が高いことが分かります。

- - ヨーロッパでは大量生産・大量消費のウルトラファストファッションに対して批判を受けているが、日本はどうするのか?

「日本もひとごとではないと思います。 いずれにしても、こういうものは社会が受け入れるかどうかというところなので、社会になじまなければ淘汰されるし、逆に受け入れられればもっと拡散していくと思います。 (SP キャスター・柳沢秀夫さん)」

今、出てきたばかりでかなりのスピード感もあるので、そういった整備も課題になってくるとみられます。 (FNN = 11-6-25)


防刃服、クマ対策に効く? 問い合わせ増え、メーカーに開発の動き

神戸市の新興企業が、クマ対策用の防護服の開発を始めた。 普段は防刃服の開発や販売を手がけるが、全国各地でクマによる殺傷事件が起き、クマ対策の問い合わせが相次いだことが背景にある。 2026 年度中の製品化をめざすが、開発に必要なクマのデータなどが足りておらず、研究機関や猟師などにも協力を呼びかけている。

「この防刃服、クマにも使えますか?」

21 年創業の「SYCO (サイコ)」の笹田直輝社長 (47) のもとには、この 1 カ月でこうした問い合わせが約 10 件寄せられた。 刃物を使った殺傷事件があれば、防刃服の問い合わせや注文が増える傾向はある。 だが、クマ対策を念頭に置いた問い合わせが相次ぐのは、初めてだ。 アラミド繊維や炭素繊維強化プラスチックを使った同社の防刃服は、成人男性が包丁で刺してきても、突き抜けない基準(24 ジュールの力)を持つ。 だが、クマの力は成人男性より強い。 既存品でどれほど防げるのかは「正確には誰も分からない」という。 データを集めて、基準から考える必要がある。

また、防刃服は、胸や胴体まわりを刺されることを想定してつくっている。 秋田大学高度救命救急センターの調査では、クマの攻撃を受けた被害者の 9 割が顔に傷を負っていたとされる。 頭のまわりの対策も必要になりそうだという。 これまでの防刃服の開発では、クラウドファンディングなどを使いつつ、利用者の意見を採り入れてきた。 今回も、自社の知見だけでは限界があるとみて、10 月 28 日に「熊対策用防護服」の開発を始めることを発表。 数日の間に、猟師や山中でインフラ整備や工事をする企業などから連絡があったという。

笹田さんは「クマと遭遇する可能性があっても、仕事で山に行かなければいけない人もいる。 少しでも被害を軽減できるものができないかを探ってみたい。」と話す。 (福岡龍一郎、asahi = 11-3-25)


ユニクロ、新機能衣料「パフテック」のイベント 着回しの良さを訴求

ユニクロの世界戦略

記事コピー (11-28-08 〜 10-30-25)