楽しさや喜びを重視する米国の選挙 マムダニ氏当選が示した希望

ニューヨーク市長選に当選した 34 歳のゾーラン・マムダニは、同市最年少当選で、初のイスラム教徒かつ南アジア系であり、「民主社会主義」を唱える初の大都市市長だ。 ウガンダで生まれ、7 歳でアメリカに移住し、2018 年に帰化した二重国籍者である。 元ラッパーで州議会議員 4 年の政治経験しかないとの批判もあったが、15 年以降四つの地方選挙でボランティアから選挙運動責任者までつとめ選挙経験を積んできた。

家賃凍結や市バス無料化、富裕層への増税などの公約が、生活環境の悪化に苦しむ若年層や労働者層から支持を得て、ニューヨーク市の投票率は半世紀ぶりの高水準を達成した。 選挙戦ではマムダニ陣営による SNS 活用も話題になったが、なにより有権者の声に真摯に耳を傾け続けるマムダニの「聞く力」に注目が集まった。 しかし、500 万人を超える登録有権者の声を、候補者本人が聞きに行けるわけもない。 実際に耳となり足となったのは 10 万人ものボランティアたちだった。

マムダニ陣営による戸別訪問には、全米からボランティアが殺到した。 参加者は、訪問先のすべての人に敬意を払い、偏見を持たずに対話し、自身の経験や意見を述べるよう奨励された。 選挙運動では、有給スタッフが意思決定を行って指示し、ボランティアが雑用をこなすのが一般的だが、マムダニ陣営はボランティアにアイデアを出すよう奨励し、その多くを現場の責任ある役職に就けた。

楽しさや喜びを重視するアプローチも話題になった。 ボランティアは戸別訪問するたびにカードにスタンプがもらえ、いっぱいになるとマムダニのポスターかTシャツが無料でもらえた。 夜はバーで和気あいあい報告しあった。 こんな選挙運動を経験すると何が起こるだろうか?

予備選でマムダニが勝利したあと、若い世代の立候補を支援する進歩的な政治団体「ランフォーサムシング(何かに立候補しよう、以下 RFS)」に 1 万人以上が登録した。 17 年設立の同団体は、オンライン訓練プログラムを提供し、地域スタッフが個別にサポートしながら州や地方の公職選挙当日まで支援する。 これまで 20 万人以上が登録し、全 50 州から計 3,700 人以上の候補者が推薦を受け(女性またはノンバイナリーが半数超、30% は性的マイノリティー、55% は非白人、全員が 40 歳以下)、ほぼ全州で計約 1,500 人が当選した。

RFS に登録した者の約 1 割が 1 年弱で選挙に出る。 26 年中間選挙の地方選は若い候補者であふれるかもしれない。 28 年の大統領選、30 年の国勢調査、32 年の選挙区再編を見据える RFS は、早く立候補しよう、立候補を勧めよう、ボランティアしよう、寄付しようと呼びかける。 怒りは人を動かすが、希望もまた人を動かす。 その受け皿を準備する重要性を実感する。 (庄司香・学習院大学教授、asahi = 11-27-25)

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NY 市長選、34 歳マムダニ氏が当選確実 イスラム教徒で初 米報道

米国の最大都市ニューヨーク (NY) で 4 日、市長選の投開票があり、「民主社会主義者」を自称し、急進的な政策を訴えてきた民主党のゾーラン・マムダニ NY 州議会議員 (34) が、同じく民主党所属で選挙には無所属で出た著名政治家のアンドリュー・クオモ前 NY 州知事らを破り、当選を確実にした。 AP通信や CNN などの米メディアが報じた。

6 月に「大番狂わせ」

マムダニ氏は東アフリカのウガンダ生まれの移民で、インド系のイスラム教徒。 米メディアによると、イスラム教徒が NY 市長に就くのは初めて。 2026 年 1 月に就任予定で、任期は 4 年間。 全国的にはほぼ無名の政治家だったが、6 月にあった民主党候補を選ぶ予備選終盤で急速に支持を伸ばし、本命だったクオモ氏に勝利。 昨年の大統領選での敗北以降、リーダー的存在がいない民主党内で起きた「大番狂わせ」が話題になった。

マムダニ氏は、全米でも屈指の生活費高騰が続く NY でその軽減を徹底的に訴え、草の根で支持を広げた。 終盤にかけては、▽ 公営バスの無料化と遅延の改善、▽ 家賃上昇の凍結、▽ 保育料の無償化といった政策を特にアピール。 店側が利益分を上乗せしない市営のスーパーマーケットの設置や、財源として大企業や富裕層への増税なども掲げた。

マムダニ氏は勝利宣言「あらゆる予想に反した」

マムダニ氏は 4 日夜、支持者を前に「あらゆる予想に反して我々は(勝利を)つかみ取った。 未来は我々の手の中にある。」と述べた。 そのうえで「働く人々がこの街を再び愛し、そして住めるようにする」と宣言した。 また、「ドナルド・トランプ(大統領)に裏切られた国民に、彼を倒す方法を示せるのは、彼を生み出したこの街だ」とも語り、NY 出身のトランプ氏への対抗姿勢も強調した。

トランプ大統領は敵視 「マムダニが勝利すれば …」

マムダニ氏の選挙戦は、同じく自らを民主社会主義者と語り、16、20 年の大統領選での民主候補争いで若い世代の支持を得た急進左派の重鎮、バーニー・サンダース上院議員 (84) や、地元選出で若者に人気がある、アレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員 (36) らが支えた。

左派や民主党を敵視するトランプ大統領はマムダニ氏を「共産主義者」と繰り返し呼んできた。 投開票前日には、SNS に「マムダニが勝利すれば、必要最低限以外の連邦資金を出さない可能性が高いだろう」などと投稿。 「選択肢はない。 彼(クオモ氏)に投票しなければならない」とも記し、無所属での出馬とはいえかつて民主党知事として対立することもあったクオモ氏への投票を呼びかける異例の行動に出た。

多様な人種の人たちが暮らし、リベラル色が濃い NY 市は、伝統的に民主党が強い。 トランプ大統領が勝利した昨年の大統領選でも、民主党のハリス前副大統領が多く得票した。 トランプ政権は、NY 以外のこうした都市に対しては、治安対策の名目で地元の反発を押し切って州兵の派遣方針を打ち出すなど、圧力を強めている。 今後、最大都市 NY に対する政権の出方次第ではマムダニ氏との対立が先鋭化し、米国内の分断がより深まるおそれもある。

クオモ氏、終始リードを許したまま敗北

一方、クオモ氏は予備選で敗れた後も、経済界の支援も得て無所属で選挙運動を展開。 マムダニ氏の急進的な政策を警戒する経済界や、民主支持層のなかでも保守的な有権者の受け皿となった。 しかし、終始リードを許したまま敗北した。 州知事をセクハラ問題で辞任した経緯や、トランプ氏の再選を支えた経済界の大口献金者らから支援を受けていることなどが響いたとみられる。 クオモ氏は 4 日夜、支持者の前に姿を見せて敗北を認めた。 「今回の選挙運動は(市民が)危険な道を進んでいると警告するのに必要だった」とした一方で、新たなマムダニ市政の始まりに向け「我々は可能な限り助ける」と語った。

現職は撤退、トランプ政権が引き換え提示か

4 年前の前回選挙で民主候補として勝利した現職のエリック・アダムス市長も、当初は再選を目指した。 だが昨年に収賄罪で起訴され、その後に大統領選中のトランプ氏に接近し、起訴取り下げに至った経緯などがあり支持は低迷。 無所属で戦う方針をとっていたが、9 月に立候補を取り下げた。 米政治サイト「ポリティコ」は、関係者の話として、トランプ政権が選挙戦撤退と引き換えに、住宅都市開発省での役職をアダムス氏にオファーしたと伝えた。 クオモ氏の当選可能性を高めるためだったという。 アダムス氏は 10 月、クオモ氏を支持すると表明した。

このほか、ボランティアの自警団「ガーディアン・エンジェルス」の創設者として知られるカーティス・スリワ氏も、共和党候補として立候補していた。 NY 市での民主党支持層の厚さから、当初から当選可能性は低いとみられていた。

民主党内には「及び腰」姿勢も

1 年前の大統領選以降、下野している民主党で、マムダニ氏がリーダー的存在になれるかは不透明だ。 クオモ氏が選挙戦を続けたことに象徴されるように、党内ではマムダニ氏と距離を置く政治家が目立つ。 支持を打ち出した地元のホークル NY 州知事や下院トップのジェフリーズ院内総務も、表明は投開票が近づいてから。ジェフリーズ氏は 2 日、米 CNN の番組で「マムダニ氏は民主党の未来か」と問われ、「違う」と答えた。 上院トップのシューマー院内総務は最後まで支持を明らかにしなかった。 (ニューヨーク・田中恭太、asahi = 11-5-25)

マムダニ氏が訴えた主な政策 (公式ウェブサイトやメディア報道などから)

  • 家賃の「凍結」 : NY 市内では、賃貸アパートの半数近くにあたる約 100 万戸が家賃規制制度の対象となる。 家賃の上昇幅を決める委員会の委員に、自身と同調する委員を任命して実現する。
  • 公営バスの無料化と高速化 : 基本的に 1 乗車 2.9 ドル(約 440 円)で、遅延も頻発し、批判が根強い
  • 全ての人を対象にした保育の無償化 : 市内は保育園の年間利用料が、乳児クラスで 2 万 6 千ドル(約 400 万円)に上るなど高騰。 無償保育制度の適用開始年齢を現在の「3 歳」から「生後 6 週間」に引き下げ、かつ、すべての希望者を対象にする
  • 市営のスーパーマーケットを設立 : 商品を卸価格で販売し、家計負担を軽減させる
  • 大企業や富裕層への増税 : 大企業に対する州の法人税を 7.25% から隣のニュージャージー州と同じ 11.5% に引き上げ、年収 100 万ドル(約 1 億 5 千万円)以上の住民の所得税も 2% 上げる。 ただし、州議会と州知事の承認が必要。

保護主義に対抗、日本への期待も CPTPP、加盟交渉や連携が加速

日本の外交

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フィリピン、台風で 85 人死亡 地震で被災のセブで洪水、ヘリ墜落も

フィリピン中部に上陸した台風 25 号に伴う豪雨や洪水の影響で、85 人が死亡したと、フィリピン防災当局が 5 日に発表した。 なお 75 人が行方不明という。 死者の大半は、9 月末にマグニチュード 6.9 の地震で被災したセブ州で確認された。 住民は多重災害に見舞われている。

また、フィリピン軍は 5 日、救助活動に当たっていた軍のヘリコプターが南部ミンダナオ島内で墜落し、乗組員とみられる 6 人の遺体が発見されたと明らかにした。 軍が原因を調べている。 防災当局によると、セブ州の広い範囲で洪水が発生し、約40万人が避難を余儀なくされている。 9 月の地震では、州北部ボゴ市やその周辺で計 79 人が死亡し、2 万人以上が避難生活を続けていた。 (マニラ・大部俊哉、asahi = 11-5-25)

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フィリピン南部沖で M7.4 地震 2 人死亡、30 センチの海面上昇も

米地質調査所 (USGS) によると、フィリピン南部ミンダナオ島沖で 10 日午前 9 時 45 分(日本時間同 10 時 45 分)ごろ、マグニチュード (M) 7.4 の地震が発生した。 フィリピン災害対策当局は、建物の崩落などが原因で、少なくとも 2 人が死亡したと発表した。 USGS によると、震源の深さは 58.1 キロ。 フィリピン火山地震研究所は津波警報を出したが、同日午後に解除した。 ミンダナオ島北東部で約 30 センチメートルの海面上昇が観測されたという。 フィリピンでは、9 月末にも中部セブ島沖で M6.9 の地震があり、災害対策当局は今月 9 日、死者が 74 人、負傷者は 559 人に上ったと発表した。 (マニラ・大部俊哉、asahi = 10-10-25)

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教会や住宅が多数倒壊 フィリピン・セブ地震、死者 69 人に

フィリピン中部セブ島の北部沖で 9 月 30 日午後 10 時(日本時間同午後 11 時)ごろ、マグニチュード 6.9 の地震があった。 現地の災害対策当局は 10 月 1 日、北部ボゴ市などで子どもを含む 69 人の死亡が確認されたと発表した。 古い教会や住宅の倒壊が相次ぎ、多くの人が下敷きになったという。 米地質調査所 (USGS) によると、震源はボゴ市の約 20 キロ沖で、震源の深さは 10 キロ。 災害対策当局によると、ボゴ市と、西に接するサンレミジオの二つの地域で特に死傷者が多いという。 建物内に取り残された人がいないか捜索し、1 日夕に完了したと発表した。

地震発生から一夜明けた 1 日、地元メディアや SNS には、教会が崩壊した様子や、内壁が崩れた建物の中を避難する住民の姿を写した写真や動画が多数アップされた。 地元放送局などは、震源地に近いバンタヤン島の教会付近で撮影された動画を報じた。 激しい揺れとともに教会の外壁の一部が崩れ落ち、周りの人が悲鳴を上げて逃げる様子をとらえている。

バンタヤンに住むマルタム・パシランさん (25) は AFP 通信の取材に、「教会の方向から大きな音が聞こえ、その後、建物から物が落ちてくるのを見た。 ショックでパニックになり、体が動かず、ただ揺れがやむのを待っていた。」と話した。

日系企業 100 社以上が進出

外務省などによると、セブ州には約 2,500 人の日本人が暮らし、日系企業 100 社以上が進出している。 ビーチリゾートやビジネス、留学の拠点として日本人らに人気の州都セブ市やマクタン島は、震源地から約 100 キロ南にある。 現地当局によれば、セブ市周辺では死傷者や大規模な建物の倒壊は確認されていない。 玄関口のマクタン・セブ国際空港にも目立った損傷はなく、通常通り稼働している、としている。

セブ日本人会の藤岡頼光会長は「セブで 10 年以上、これほど大きな地震は経験したことがない」と話す。 藤岡さんによると、セブ市とマクタン島では、地震発生から 1 - 2 時間の停電があった。 一部の建物で外壁に亀裂が入ったり、マンションの屋上プールから水がこぼれたりしたという。 経営する英語学校の二つの校舎は、安全性が確認されたため、通常通り授業を続けている。 周囲の飲食店なども営業を再開したが、1 日も余震が断続的に続いているといい、警戒を続けている。

在フィリピン日本大使館は 1 日現在、「日本人の被害に関する情報には接していない」としたうえで、余震や海面変化への注意を呼びかけている。 (大部俊哉、asahi = 10-1-25)


スーダンの病院で 460 人殺害か 内戦のダルフール地方で相次ぐ犠牲

世界保健機関 (WHO) は 10 月 29 日、紛争が激化するスーダン西部ダルフールの主要都市ファシルの産科病院で、460 人以上の患者やその家族らが殺害されたとの報告を受けたと明らかにした。 ファシルでは国軍と対立する準軍事組織「即応支援部隊 (RSF)」が猛攻を続けており、民間人の犠牲が相次いでいる。

スーダン紛争、準軍事組織が西部の拠点掌握 国土二分の恐れ高まる

WHO によると、攻撃された病院は地域で唯一機能していたが、過去 1 カ月で 5 度の攻撃を受けた。 28 日には銃撃によって院内で患者らが殺害されたほか、医師ら 6 人が連れ去られた。 2023 年 4 月に紛争が始まってから、ファシルでは計 46 人の医療従事者が殺害されているという。

避難試みた 3 万 6 千人、たどり着いたのは数千人のみ

ダルフール地方は現在、ほぼ全域が RSF に支配されている。 国軍は 27 日に同地方で唯一残っていたファシルの軍事拠点から撤退した。 この結果、RSF から逃れ、ファシルに身を寄せていた避難民が行き場を失っているという。 国際移住機関 (IOM) によると、26 - 29 日にファシルから 3 万 6 千人以上が避難を強いられた。 衛星画像などから現地情勢を分析する米エール大学公衆衛生大学院の人道研究室は、RSF に支配されたファシルを「キルボックス(死の箱)だ」と AP 通信に説明。 銃撃が続くなかで避難は困難を極めており、避難先の周辺都市には数千人しかたどり着いていないという。 (今泉奏、asahi = 10-31-25)


ルーブル窃盗事件、実行犯? 含む 5 人を新たに拘束 宝飾品見つからず

フランスの検察幹部は 30 日、パリのルーブル美術館から宝飾品が盗み出された事件で、新たに容疑者 5 人を拘束した、と仏メディアに明らかにした。 そのうちの 1 人は事件現場にいた実行犯とみられるという。 宝飾品はまだ見つかっていない。 ラジオ局 RTL に出演した検察幹部によると、捜査当局は 29 日夜、事件に関わった疑いのある 5 人をパリ市内やパリ近郊で拘束した。 1 人は事件現場に残された DNA から特定したという。 関係先を捜索したものの、盗まれた宝飾品は見つからなかった。 容疑内容などは明らかにしていない。

事件は 19 日午前に発生。 検察によると、犯行グループは少なくとも 4 人おり、そのうちの 2 人が窓ガラスを割って館内に侵入し、宝飾品 9 点を盗み出した。 捜査当局は 25 日、事件に関わった疑いのある男 2 人を拘束していた。 盗まれた宝飾品のうち、王冠 1 点は事件直後に現場近くで見つかったものの、約 2 千個のダイヤモンドがついたティアラなど 8 点が見つかっていない。 検察は被害総額は 8,800 万ユーロ(約 155 億円)にのぼるとしている。 (坂本進、asahi = 10-30-25)

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ルーブル美術館の盗難、検察当局が容疑者を空港で拘束 仏紙報道

パリのルーブル美術館から宝飾品が盗まれた事件で、フランスの捜査当局は 26 日、容疑者を拘束したと発表した。 仏紙ルモンドなどが報じた。 ルモンドによると、検察当局は、パリ郊外のシャルル・ドゴール空港で出国しようとしていた男 1 人を 25 日夜に拘束したと発表した。 複数の仏メディアは、男 2 人が拘束されたが検察は逮捕者の数を明らかにしなかったと報じた。 AFP 通信は情報筋の話として、シャルル・ドゴール空港で拘束された男はアルジェリア行きの飛行機に搭乗しようとしていたと伝えた。

ルーブル美術館の窃盗事件は 19 日に発生。 仏文化省などによると、覆面姿の 2 人が美術館の 2 階の窓ガラスを割って侵入し、ティアラやイヤリングなど宝飾品 9 点を盗んだ。 地元メディアは、犯人グループは少なくとも 4 人とみられると伝えていた。 仏検察当局は地元メディアに被害総額は 8,800 万ユーロ(約 155 億円)にのぼると明らかにした。 (ブリュッセル・森岡みづほ,、asahi = 10-26-25)

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犯行 7 分、ダイヤ 2 千個ブローチ被害 ルーブル美術館で白昼の強盗劇

パリのルーブル美術館で 19 日、展示中の宝飾品が盗まれる事件が起きた。 盗み出されたのはダイヤモンドが 2 千個以上ついたブローチや 45 カラットのエメラルドがついたイヤリングなど 9 点。 4 人組による10分にも満たない犯行だった。

はしご車を使って 2 階バルコニーへ

仏紙パリジャンなどによると、事件は美術館が開館して 30 分ほどが過ぎた午前 9 時半に起きた。 館内にはすでに来館者がいたという。 犯行グループは 4 人とされ、いずれも覆面姿だった。 2 人がそれぞれ大型バイクに乗り、もう 2 人は引っ越しなどで使われる荷物の搬出入用のはしご車に乗って、セーヌ川に面する美術館の外壁沿いの道路に現れた。 2 人がはしご車を使って 2 階バルコニーに上がり、電動工具で窓を割って「アポロン・ギャラリー」に侵入。 地元テレビに出演した検察幹部によると、犯人グループは警備員を「脅迫して(作動していた)警報装置を無効にした。」

犯人グループはギャラリー内の二つの展示ケースから宝飾品 9 点を強奪。 再びバルコニーからはしご車を伝って路上に降り、大型バイクで逃走したという。 地元テレビに出演したヌニェス内相によると、犯行時間はおよそ 7 分。 午前 9 時 38 分には逃走したという。 ヌニェス氏は「あっという間だった。」と語った。

パール 212 個・ダイヤモンド 1,998 個のティアラなど被害

犯人が侵入したアポロン・ギャラリーには 18 世紀や 19 世紀の宝飾品 23 点が展示されていた。 そのうち、盗まれたとされるのは以下の 9 点(カッコ内は製造年、説明はルーブル美術館ホームページから)。

  • 24 個のサファイアと 1,083 個のダイヤモンドで装飾されたフランス王ルイ・フィリップの王妃マリーアメリーとナポレオン 3 世の母オルタンスのティアラ (1800 - 1825)
  • 大小 8 個のサファイアと 631 個のダイヤモンドで装飾された王妃マリーアメリーとオルタンスのネックレス (1800 - 1835)
  • サファイアや 59 個のダイヤモンドで装飾された王妃マリーアメリーとオルタンスのイヤリング (1800 - 1835)
  • 32 個のエメラルドと 1,138 個のダイヤモンドで装飾された皇帝ナポレオンの 2 番目の妻であるマリールイーズのネックレス (1810)
  • 45.2 カラットのエメラルドや 108 個のダイヤモンドで装飾された皇后マリールイーズのイヤリング (1810)
  • 94 個のダイヤモンドなどで装飾された聖遺物のブローチ (1855)
  • 212 個のパールや 1,998 個のダイヤモンドで装飾された皇帝ナポレオン 3 世の皇后ウジェニーのティアラ (1853)
  • 2,438 個のダイヤモンドなどで装飾された皇后ウジェニーのブローチ (1855)
  • 1,354 個のダイヤモンドや 56 個のエメラルドで装飾された皇后ウジェニーの王冠 (1855)

このうち、9 点目の皇后ウジェニーの王冠は、美術館近くの路上で破損した状態で見つかった。 一方、ギャラリー内に展示していた 140 カラットのダイヤモンド「レジャン」は無事だったという。 事件を受け、マクロン仏大統領は「作品を見つけ出し、犯人は裁判にかけられる」と SNS に投稿。 捜査当局が 4 人の行方を追っている。 (パリ・坂本進、asahi = 10-20-25)


マダガスカル、軍大佐が大統領就任 若者の抗議拡大からクーデター

アフリカ南東部マダガスカルの首都アンタナナリボの憲法裁判所で 17 日、大統領の就任式が開かれ、軍エリート部隊司令官のランジリアニリナ大佐が就任の宣誓をした。 若者を中心とする抗議運動の拡大を受け、13 日までにラジョエリナ前大統領がアンタナナリボから姿を消した後、軍のエリート部隊が権力を掌握していた。 AFP 通信によると、ランジリアニリナ氏は就任演説で「きょうは我々の国にとって、歴史的な転換点となる日だ」と強調。 「変革への渇望と、祖国への深い愛が生みだす熱気にあふれる国民とともに、国家の新たな章を始める」と語った。

ランジリアニリナ氏が所属するエリート部隊 CAPSAT は、軍の行政権や人事権を握る中枢組織で、2009 年に発生した前回のクーデターでも主導的な役割を担った。 今回は 9 月 25 日から抗議運動が本格化すると、10 月 11 日には CAPSAT の部隊がデモ隊と同調し、ラジョエリナ氏の辞任を求めた。

英 BBC によると、ランジリアニリナ氏は 2016 - 18 年、同国最南部の州知事を務めた後、22 年まで地方で軍の指揮官を担った。 23 年 11 月には、ラジョエリナ氏への批判的な言動のため、反乱を扇動しクーデターを計画した罪に問われ、裁判がなされないまま投獄された。 翌 24 年 2 月に、学生団体や一部の兵士、政治家の抗議で釈放されたという。 (アンタナナリボ・今泉奏、asahi = 10-17-25)


ハマス、イスラエルの人質解放 戦闘 2 年、生存の 20 人全員引き渡し

ガザ住民の運命は

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台湾東部、台風で市街地に水や土砂 17 人死亡、17 人行方不明

台湾東部の花蓮県で 23 日、台風 18 号の接近に伴う大雨の影響で土砂ダムがあふれ、水や土砂が周辺の市街地に流れ込んだ。 台湾の消防当局によると、24 日午後 4 時(日本時間同 5 時)までに 17 人が死亡し、17 人が行方不明になっているという。 このほか 32 人がけがを負った。

台湾の中央通信社などによると、23 日午後 2 時 30 分(同午後 3 時 30 分)ごろ、同県中部にある、今年 7 月の台風被害でできた土砂ダムの水があふれた。 河川の下流にかかる橋が流されたほか、市街地でも建物の 1 階部分が冠水するなどした。 軍のトラックを含む多数の車両が流される被害も出ているという。 土砂ダムからは計 6 千万トンの水が流出したとみられている。 同県の消防当局は中央通信社に対し、被害者の多くは高齢者で、建物の 1 階にいたと説明した。 市街地からすでに水はひいており、救助隊が捜索を続けているという。

消防当局によると、現地の 22 - 25 日の降水量は 700 - 800 ミリに達する見通し。 SNS 上には、黒ずんだ濁流が街に押し寄せ、柱にしがみついて助けを待つ人を映した動画なども流れている。

中国本土では 189 万人が避難

中国大陸南部でも台風 18 号接近への警戒が高まっている。 国営中央テレビ (CCTV) が伝えた広東省気象台の予測によると、台風は南シナ海を西に向かって進んでおり、24 日昼から夜にかけて南部広東省の沿岸に上陸する予定という。 同省政府によると 23 日夜の時点で、約 189 万人が避難している。 同テレビによると、同省では学校や公共交通機関、会社、工場、店舗などの運営を停止する措置を実施。 「最高基準で最も厳格な措置で、台風に備えている」とする同省の対応を伝えた。 (台北・高田正幸、asahi = 9-24-25)


国連が統合・廃止を検討している機関を公表 「組織改革」で中間報告

組織改革を進めている国連は 18 日、関係する機関の統廃合に向けた検討の中間報告書を公表した。 途上国などに人口分野の支援をする国連人口基金 (UNFPA) とジェンダー平等などに取り組む国連女性機関 (UN Women) とを統合する可能性などを盛り込んだ。 エイズウイルス (HIV) 対策を率いてきた国連合同エイズ計画 (UNAIDS) は廃止し、他の機関で対応する計画だとしている。

各機関や部署で重複している活動内容を整理するのが狙い。 他に、国連開発計画 (UNDP) とインフラ整備などを行う国連プロジェクト・サービス機関 (UNOPS) との統合を検討していることや、調査研究や政策分析をする国連社会開発研究所 (UNRISD) を東京に本部を置く国連大学に統合する可能性なども示した。 国連憲章が掲げる目的の達成や、加盟国に対する支援機能の強化、効率性の向上などが前提で、「(最終的な)判断は加盟国が行う」としている。

国連は 3 月から組織の合理化や経費削減などの検討を始めている。 国際機関への資金拠出に否定的なトランプ米大統領の復権を受けた動きだとみられている。 今月 15 日には、国連本体の来年の通常予算を前年予算から 15% 削減するなどの内容をまとめた。 この予算削減とは別に、国連の関連機関の統廃合についても検討を進めていた。 (ニューヨーク・田中恭太、asahi = 9-19-25)