死なないがん細胞を食べて除去 京大が新手法開発、マウスで効果確認 不要なのに体から除去されない細胞を貪食(どんしょく)細胞に食べさせて取り除く新たな仕組みを、京都大学の研究チームが開発した。 皮膚がんのマウスで効果を確かめたところ、がん細胞だけを取り除くことに成功したという。 今後ヒトを対象にした臨床研究で、安全性や効果を確かめる。 人間の体内では毎日 100 億個を超える不要になった細胞が死に、マクロファージなどの貪食細胞が食べることで取り除かれている。 しかし、年をとるにつれて不要な細胞が死ななくなり、がん細胞などとして体内に残ったままになってしまう。 これまでは、こうした細胞を薬などで意図的に殺して、貪食細胞に食べさせることによる治療法がとられていた。 研究チームは、貪食細胞が食べる標的となる合成たんぱく質「クランチ」を開発。 不要になって除去したい細胞にくっつけることで、貪食細胞が、生きたままの状態の不要な細胞を認識して食べて取り除く方法を編み出した。 皮膚がんの悪性黒色腫(メラノーマ)を移植したマウスにクランチを注入したところ、がん細胞だけを取り除くことができたという。 また、正常な細胞も攻撃してしまう自己免疫疾患のマウスにクランチを注入したところ、異常な免疫細胞が減っていることも確認した。 研究チームは今後、バイオ技術開発を目的としたスタートアップを設立し、がん治療などに役立てるための準備を進める予定という。 研究チームの鈴木淳・京大教授(細胞膜生物学)は「がんに限らず、不要な細胞が蓄積することでさまざまな病気を引き起こす。 クランチは狙った細胞を思いのまま除去でき、さまざまな病気の治療に役立てられる。」と話した。 研究成果は 3 日付の科学誌「ネイチャー・バイオメディカル・エンジニアリング」に掲載される。 (坪谷英紀、asahi = 9-3-25) 方向教える靴、コード化点字ブロック 視覚障害者の外出を技術で支援 視覚障害がある人の歩行を振動や音声でサポートするナビ技術の開発が進んでいる。 目が不自由な人にも、自由に、安全に出歩いてもらうのが目的だ。 将来的には、障害の有無にかかわらず、誰もが使えるような改良も視野に入りつつある。 6 月中旬、仙台市障害者総合支援センター(泉区)近くの歩道で、最新技術を使った視覚障害者向けの歩行支援グッズ「あしらせ」などの体験会があった。 白杖を持った視覚障害者 9 人が参加した。 「ブルッ、ブルッ。」 参加者の靴が振動する。 スマホアプリに目的地を入れると、位置情報に応じて靴の中に装着したモーターが震える。 左に曲がるときは、左足の甲部分が、曲がり角に近づくほど小刻みに振動する。 進行方向が間違っていると、両足のかかとが震えて教えてくれる仕組みだ。 視覚障害者の中には、方向感覚が分からなくなる不安から、外出を控える人もいる。 持病で徐々に視力を失った舞石(もういし)幸江さん (47) = 仙台市青葉区 = も、その一人だ。 「娘を保育園に迎えに行く道中で、どこを向いているのか分からなくなり、その場でぐるぐる回ってしまった」と舞石さん。 体験後に「もしもあの時、あしらせをつけていたら、進行方向が分かって助かったはず」と振り返った。 不足する支援 宮城県内には視覚障害者が約 4,800 人いるとされる。 歩行の補助をするヘルパーが所属する施設は 88 カ所あるが、そのうち 57 カ所が仙台市内に集中している(2025 年 3 月時点)。 ヘルパーの数や補助できる時間には限りがあるため、自由に好きな時間に外出することは難しい。 参加者は、センター内の特殊な「コード化点字ブロック」も試した。 丸や三角のマークがついた点字ブロックにスマホアプリをかざすと「前方は出口方向です。 左は突き当たりです。」といった具合にナビ音声が流れる。 前後左右どの方向から読み取るかで、音声の内容も変わる。 東北ではこの場所が初めての敷設だった。 「技術がどこまで進んでも、それだけを頼ってはいけない。」 体験会を主催した日本盲導犬協会仙台訓練センター(仙台市青葉区)の大谷孝典さん (39) は、そう訴える。 最終的な安全は、自分で確認する必要があるからだ。 あしらせの体験者の中には、道路脇の雑草に足を取られたり、路肩の車に気付けずにぶつかりそうになったりする人もいた。 「立ち止まらないと、うまく点字ブロックは読み取れなかった」、「振動で曲がり角の近さを判断するのはまだできない」といった声も出ていた。 「目の不自由な人にとって、難易度が高いのは 1 人で外出すること。 その機会を、ナビ技術を通じて少しでも増やしてほしい」と大谷さん。 「点字ブロックを必要とする人と、必要としていない人で意識がまったく異なる。」 こう語るのは、コード化点字ブロックを開発した金沢工業大(石川県野々市市)の松井くにお教授 (68) だ。 松井教授は石川県内の公共施設でも点字ブロック上に案内板が置かれたり、自転車がとめられたりしていることに驚いたという。 「目の見える人は点字ブロックの重要性が分かりにくい。 ならば、障害の有無にかかわらず活用できるものに。」と考案したのがコード化点字ブロック。 事前に音声データを登録しておくことで、外国語での音声案内もできる。 災害時には避難情報へと切り替えることも可能だという。 一方で、数が不十分で、管理も不可欠という設備面の課題のほか、白杖とスマホを持つと両手がふさがるという問題もある。 ただ、今後、技術開発が進めば、位置情報から半自動で音声案内をすることも実現できそうだという。 松井教授は「同じ物を多様な形で使用できる。 それこそが私たちが目指すダイバーシティーだ。」と語った。 「制度の大幅な変化を」 日本視覚障害者団体連合の吉泉豊晴・総合相談室長 (67) は「『歩行をサポートするアプリがある』と言われても、そのもっと前の段階で止まっている人が多い」と話す。 厚生労働省が 2022 年に実施した「生活のしづらさなどに関する調査」では視覚障害者のうち、電話(携帯電話・スマートフォン)で日常的に情報を入手すると回答したのは 3 割程度にとどまる。 背景には視覚障害者のうち、高齢者の占める割合が高いことがある。 元々スマホを使っていない人も多く、視覚障害者用のスマホの使い方を教えてくれる場も少ない。 地方では公共交通機関の廃線が相次いでいるほか、ヘルパーの不足も深刻だ。 ヘルパーは支援先に車で向かう際の報酬については請求できないため、遠方の地方まで支援に出向くことをさらに難しくしている。 吉泉室長は、行政側が視覚障害者の使う有料アプリの料金を補助したり、ヘルパーが支援先に向かっている間も報酬を請求可能にしたりするなど「視覚障害者を支援するためには、制度を大幅に変化させる必要がある」と訴えている。 (三村悠、asahi = 8-30-25) 匿名でも OK、妊産婦のオンライン相談窓口を開設へ 大阪府泉佐野市 望まぬ妊娠に悩む女性が医療機関の担当者のみに身元を明かす「内密出産」と、育てられない新生児を匿名で預かる「赤ちゃんポスト」設置へ準備を進める大阪府泉佐野市は 26 日、妊産婦の不安が高まる夜間などに匿名でも相談できるオンライン窓口を設置すると発表した。 市によると、相談員が LINE などのチャットツールでリアルタイムで対応。 内容に応じて適切な支援につなぐなどする。 11 - 12 月の開始を予定。 窓口の設置費用 444 万 2 千円を盛り込んだ補正予算案を 9 月定例市議会に提出する。 千代松大耕市長は「気軽に相談できる窓口としたい」と話した。 市は「りんくう総合医療センター」と連携し、来年度中に内密出産の開始と赤ちゃんポストの設置を目指している。 今秋には、先行する熊本市の慈恵病院、東京都墨田区の賛育会病院を視察する。 (西江拓矢、asahi = 8-27-25) ◇ ◇ ◇ 「赤ちゃんポスト」設置へ向け関連予算案を可決 大阪・泉佐野市議会 大阪府の泉佐野市議会は 25 日、市が取り組む方針の「内密出産」や「赤ちゃんポスト」の関連予算を含む一般会計補正予算案を可決した。 市は近く連携する医療機関を明らかにし、早ければ来年度から導入するとしている。 望まない妊娠に悩む女性が病院の担当者にのみ身元を明かして出産する「内密出産」や、育てられない新生児を匿名で預かる「赤ちゃんポスト」には、熊本市の慈恵病院と東京都墨田区の賛育会病院が取り組んでいる。 泉佐野市で導入されれば全国 3 例目となる。 可決された予算は、市による両病院への視察費など約 800 万円。 市は今後、連携する病院に必要な設備の費用などを負担する方針だ。 ふるさと納税を原資とする基金をあてる。 可決後に報道陣の取材に応じた千代松大耕市長は、行政主導で取り組むことで、病院と行政機関との調整が「スムーズにいくのではないか」と述べた。 (西江拓矢、asahi = 6-25-25) 前 報 (6-12-25) 新型コロナ感染者、全国平均で 9 週続けて増加 例年夏に流行 厚労省
記事コピー (1-16-20 〜8-22-25) iPS 細胞での網膜治療法、「先進医療」に適合せず 厚労省専門部会
記事コピー (4-24-09〜8-21-25) マダニ感染症患者、過去最多の 135 人 草むらでは長袖、長ズボン マダニが媒介するウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群 (SFTS)」について、国立健康危機管理研究機構は 19 日、今年の患者数が 135 人(速報値)になったと発表した。 2023 年の 134 人を上回り、過去最多になった。 国内では 13 年 1 月、初めて患者が確認された。 20 年まで毎年 60 - 100 人程度の患者が報告され、21 年以降は毎年 100 人以上の報告が続いている。 西日本を中心に報告されていたが、今年は関東や北海道などでも報告されている。 厚生労働省によると、SFTS は、SFTS ウイルスを保有するマダニに刺されることで感染する。 SFTS を発症しているネコやイヌなど動物の血液などの体液に直接触れた場合に感染する可能性もある。 発熱のほか、嘔吐(おうと)や腹痛などの症状が出る。 高齢者は重症化しやすいとされ、致死率は 10 - 30% 程度。 春から秋にかけてマダニの活動が盛んになるため、草むらに入るときには長袖、長ズボンを着用するなど肌の露出を少なくすることが重要という。 (武田耕太、asahi = 8-19-25) ◇ ◇ ◇ ネコ治療した獣医師死亡、マダニ感染症疑い 獣医師会が注意呼びかけ マダニを通じてウイルスが哺乳類に感染する重症熱性血小板減少症候群 (SFTS) について、感染したネコの治療にあたっていた獣医師が死亡していたことが、わかった。 獣医師も感染していた疑いがあるという。 関係者によると、亡くなったのは三重県内で動物病院を開業している獣医師。 検査で SFTS と確認されたネコの入院治療にあたった後、5 月に呼吸困難など SFTS の症状がみられ、病院に搬送。 数日後に亡くなった。 マダニに刺された形跡はなかった。 ほかの動物病院関係者や飼い主らに症状はないという。 日本獣医師会は三重県獣医師会からの報告を受けて事案を把握。 6 月 12 日付で、各都道府県の獣医師会に対し、診療時の留意事項などについて注意喚起するメールを送ったという。 SFTS は、森林や草むらのマダニが媒介する。 マダニにかまれるほかに、感染したネコやイヌを通じてヒトに感染する。 6 - 14 日の潜伏期間の後、嘔吐や下血、発熱が起きる。 ヒトでの致死率は最大 3 割、ネコでは 6 割が死ぬとされる。 飼い主に感染するリスク 日本では 2013 年にヒトへの感染が初めて確認された。 国立健康危機管理研究機構のまとめでは、25 年 4 月末までに 1,071 例の患者が報告され、117 人が死亡した。 21 - 24 年は毎年 100 例以上、23 年には過去最多の 134 例の患者報告があった。 SFTS により獣医師が死亡したと確認されれば、初めての例になるとみられる。 獣医療をめぐる SFTS 感染に詳しい岡林環樹・宮崎大学教授(動物感染症学)は「SFTS が確認されている地域では、野外に出たことがあるネコやイヌが感染し、獣医師や飼い主に感染するリスクはどこでもありうる」と話す。 これまで SFTS が確認されたネコやイヌも、病院に連れられた段階では「発熱」、「元気がない」、「黄疸」といった、ありふれた症状が多いという。 「SFTS 発生地域の獣医師は、こうした症状でも SFTS の可能性を考慮に入れて、最初の診療行為から防護着やマスク、手袋などの対策が必要になる」と指摘する。 飼い主を含む一般の人も「屋外で体調の悪いネコにはできる限り接触を避け、もし触る場合には手袋やエプロンをすることも考えてほしい。 触ったあとには必ず手指消毒を」と呼びかける。 国立健康危機管理研究機構のまとめでは、18 年から今年 4 月までに、動物の診療などで SFTS に感染した獣医療関係者は 11 例にのぼる。 獣医療者向けの感染防御策や、飼い主へのリスクの伝え方をまとめた マニュアル も公開している。 (野中良祐、竹野内崇宏、杉浦奈実、asahi = 6-13-25) 新型コロナワクチン接種、都議会 4 会派が助成要望 感染者は増加傾向
記事コピー (12-31-19〜8-18-25) 早期のアルツハイマー病、徹底的な生活習慣の変更で維持・改善が可能 新研究 食事や運動、ストレスレベル、社会との交流を抜本的に変えることで早期のアルツハイマー病を改善することがこれまでの研究で判明していた。 今回、試験期間を延ばした新たな研究で、さらに認知能力に維持・改善がみられることが明らかになった。 タミー・マイダさん (68) は 50 代後半のとき、アルツハイマー病の影響で記憶力が衰え、生活上の手がかりを見失い始めた。 車の鍵、眼鏡、財布が日に何度も消え、読んでいた小説の登場人物を忘れてしまった。 食料品をガレージに置き忘れ、自営業の帳簿をつけることもできなくなってしまった。 「正直、正気を失ってしまうのではないかと思ったし、その恐怖はおそろしいものだった」と、マイダさんは 2024 年に放送された CNN のドキュメンタリー番組で語っている。 食事、運動、ストレスレベル、社会との交流を抜本的に変えることを目的とした無作為化臨床試験に 20 週間参加したところ、マイダさんの認知能力は改善した。 小説を読み、内容を思い出せるようになったうえ、帳簿も正しくつけられるようになった。 24 年 6 月に発表された研究によると、血液検査では、アルツハイマー病の特徴であるアミロイドの脳内濃度が低下していることが判明した。 合計 40 週間にわたり徹底的に生活習慣を変えたところ、マイダさんの認知機能はさらに改善したという。 カリフォルニア大学サンフランシスコ校の臨床医学教授ディーン・オーニッシュ氏が明らかにした。 オーニッシュ氏は 29 日、カナダ・トロントで開催されたアルツハイマー病協会の年次国際会議でこの研究の最新情報を発表した。 介入を受けたグループの 26 人全員に利点があったわけではないものの、46% の被験者が四つの標準検査のうち三つで改善を示したという。 検査には、記憶力、判断力、問題解決能力に加え、家庭生活や趣味の活動、身体の衛生維持の能力における変化を測定するものも含まれていた。 「さらに 37.5% の被験者は、40 週間の介入期間中に認知機能の低下がみられなかった」とオーニッシュ氏は述べた。 「つまり、83% 以上の被験者が 5 カ月間のプログラム期間中に認知機能が改善または維持されたことになる。」 オーニッシュ氏によれば、こうした改善は長期間にわたって持続することが多い。 また、オーニッシュ氏は、既存のアルツハイマー病の治療薬とは異なり、生活習慣の改善には、最新型の薬で起こりうる脳出血や脳浮腫などの副作用がないと言い添えた。 介入が行われたグループは厳格なビーガン食を摂取し、毎日有酸素運動を行い、ストレス軽減策を実践。 オンラインのサポートグループにも参加した。 残りの参加者は対照群となり、日常生活に一切の変化を加えないよう指示された。 セラピストは週 3 回、1 時間のグループセッションを実施。 参加者は自分の気持ちを共有し、サポートを求めるよう促された。 瞑想や深呼吸、ヨガなど、ストレスを軽減するための活動に毎日 1 時間費やし、良質な睡眠を優先することも奨励された。 さらに介入群の全員には、マルチビタミン、クルクミン配合のオメガ 3 脂肪酸、コエンザイム Q10、ビタミン C とビタミン B12、マグネシウム、プロバイオティクス、ヤマブシタケなどのサプリメントが提供されたという。 食事の大部分は、全粒穀物、野菜、果物、豆腐、ナッツ、種子に含まれる複合炭水化物が占めていた。 砂糖、アルコール、加工食品や超加工食品に含まれる精製炭水化物は禁止。 カロリー制限は設けられなかったが、たんぱく質と総脂肪は 1 日の摂取カロリーの約 18% に抑えられていた。 これは平均的な米国人のたんぱく質摂取量よりもはるかに少ないという。 オーニッシュ氏によれば、介入群の中で、生活習慣を変える努力を熱心にした人ほど認知機能の改善も顕著だった。 「私たちの新たな研究結果は、早期のアルツハイマー病患者に、こうした徹底的な生活習慣の改善を行い、それを維持すれば、病気の進行を遅らせ、多くの場合は改善さえも期待できるということを知らしめ、力づけるものだ。(オーニッシュ氏)」 (CNN = 8-6-25) がんウイルス療法の新薬、皮膚がんで効果確認 東大チームが治験 ウイルスを使ってがん細胞を破壊するウイルス療法。 従来の薬を改良した新薬が、皮膚がんの一種、悪性黒色腫(メラノーマ)の患者に対して高い有効性を示すことが確認できたと、東京大と信州大の研究チームが 7 月 31 日、発表した。 今後、企業の参画を得て承認申請をめざしたいという。 ウイルス療法は、遺伝子を改変し、がん細胞だけで増えるように設計したウイルスをがんに感染させ、破壊する治療法だ。 ウイルスは一定程度まで増えると免疫によって排除されるが、その際に免疫ががん細胞を認識し、体内の別の部位にあるがんに対しても免疫を発揮する効果が期待できる。 東大医科学研究所の藤堂具紀(とうどうともき)教授らはこれまでに、「単純ヘルペスウイルス I 型」に遺伝子改変を施したウイルス「G47Δ(デルタ)」を開発。 ウイルス療法薬「テセルパツレブ(商品名デリタクト注)」として、2021 年に脳腫瘍(しゅよう)の一つである悪性神経膠腫(こうしゅ)に対して条件付きで承認、販売されている。 今回は、G47Δ に、免疫反応を刺激する IL-12 遺伝子を組み込み、がんへの免疫効果を改良した「T-h IL12」を開発。 難治性の希少がんである悪性黒色腫で、手術ができない、または転移した患者への治療効果を治験で調べている。 9 人を対象にした中間解析では、標準治療で使われる免疫チェックポイント阻害剤に加え、T-h IL12 を併用して治療したところ、治療が効いた割合は 77.8% だった。 免疫チェックポイント阻害剤のみによる治療では 34.8% とされている。 新しい薬を併用することで、治療の効果を高めていることが確認できたという。 今後、さらに治験を続けていくという。 信州大の奥山隆平教授は「乳がんや頭頸部(けいぶ)がんなど、ほかのがんでも有効性を示せると考えている」と話す。 (松本千聖、asahi = 8-2-25) 感染症チクングニア熱が中国で流行、米 CDC が渡航情報発出を準備 米疾病対策センター (CDC) は中国でチクングニア熱の感染例が増えていることを受け、中国への渡航に関する注意情報を発出する準備を進めている。 同センターの報道官がブルームバーグ・ニュースに明らかにした。 中国では 7 月上旬に 1 件だった感染例が、現在では 5,000 件近くに増えている。 香港に近い広東省では、この 1 週間で 3,000 件近い感染が記録された。 CDC の報道官は「当センターでは中国広東省でのチクングニア熱流行を認識しており、現在はその規模と影響範囲を評価中だ」との声明を出した。 米 CDC は特定の感染症流行や自然災害に伴い、そのリスクを周知し、利用可能なワクチンを含む予防行動を促す目的で、渡航健康注意情報を発出する。 CDC によれば、チクングニア熱は蚊を媒体に感染し、突然の高熱と、手足など関節の痛みを起こすことがある。 (Jessica Nix、Bloomberg = 7-31-25) 百日せき 4週連続過去最多で勢い止まらず 全国の感染者数 3,682 人 今月 13 日までの 1 週間の全国の百日せきの感染者数は 3,682 人となり 4 週連続で過去最多を更新しました。 国立健康危機管理研究機構によりますと、今月 13 日までの 1 週間に全国の医療機関から報告された百日せきの感染者数は 3,682 人となりました。 前週の 3,578 人から微増し、4 週連続で過去最多を記録しています。 今年 1 月からの感染者数の合計は 4 万 8,073 人となりました。 百日せきは、子どもを中心に激しいせきが続く感染症で、多くは抗菌薬などで治癒しますが、乳児では重症化しやすく、まれに死に至ることもあります。 厚労省は、ワクチンの接種のほか、手指衛生やせきエチケットなど基本的な感染防止対策を呼びかけています。 (日テレ = 7-22-25) ◇ ◇ ◇ 流行続く百日せき、治療薬効きにくい耐性菌増える 赤ちゃん死亡例も 症状が 2 - 3 カ月続く「百日せき」の流行が収まらない。 今の調査方法となった 2018 年以降、最多になりそうな勢いで患者数が増えており、東京都内では、赤ちゃんが亡くなった。 これまで使われていた治療薬が効きにくい耐性菌に感染した患者も増えている。 専門家はワクチン接種などの対策を強く呼びかけている。 今年 3 月、東京都立小児総合医療センター(東京都府中市)に百日せきが重症化した生後 1 カ月の女の子が運ばれてきた。 女の子は呼吸状態が悪くなり別の医療機関に入院して抗菌薬による治療を受けたが、呼吸不全を起こし、センターに転院した。 センターでは百日せきの耐性菌の感染を疑い、人工呼吸器をつけたうえで、耐性菌に効果があるとされる別の抗菌薬を投与した。 それでも肺炎が悪化して、呼吸不全や肺高血圧症、腎不全などを起こし、体外式膜型人工肺(エクモ)や人工透析などの治療を受けたが、転院から 5 日目に亡くなった。 女の子に基礎疾患はなく、ワクチンは接種前だった。 治療にあたった感染症科の堀越裕歩部長は、「重症化のリスクが高く、ワクチン未接種の小さい赤ちゃんは症状の進行が早い。 百日せき菌によって肺がダメージを受けたことで、様々な臓器にも障害が出て、救命は難しかった。」と話す。 国立健康危機管理研究機構の 20 日の発表によると、百日せきの今年の患者数は 11 日までで 1 万 6,475 人。 今の調査方法で最多となっている 19 年の 1 万 6,850 人を超えるペースで増えている。 特に注意が必要なのが、免疫のない生後数カ月の赤ちゃんだ。 重症化しやすく、脳症や肺炎になることがあるほか、息を止めるような「無呼吸発作」や、けいれん、呼吸停止などを起こし、亡くなる恐れもある。 治療にはマクロライド系の抗菌薬が使われる。 最近ではこの抗菌薬が効きにくい耐性菌の報告も増えてきている。 センターでは、亡くなった女の子を含め、24 年 11 月 - 25 年 3 月に計 5 人の百日せき患者から耐性菌が検出された。 堀越さんは「患者の地域はバラバラで、都内では耐性菌が広がっていると推測される。 重症化しやすい赤ちゃんの場合は、早い段階から耐性菌に効くとされる薬を投与するなどの対策が求められる」と指摘する。 このほか、昨年以降、沖縄県や大阪府、鳥取県でも耐性菌に感染した患者が報告されている。 予防には耐性菌を含めてワクチンが有効だ。 定期接種化されており、生後 2 カ月から 1 歳半までの間に計 4 回の接種が勧められている。 効果は次第に弱まり、接種を受けていても感染することがある。 このため、日本小児科学会は小学校入学前や 11 - 12 歳のときに追加で、百日せきワクチンの入った 3 種混合ワクチンを接種することを推奨している。 任意接種のため費用は自己負担で、5 千 - 6 千円ほどという。 堀越さんは「生後 2 カ月になったらすみやかに定期接種を受けてほしい」と強調。 「今の流行の主体は小学生から 10 代の子ども。 小さい赤ちゃんがいたり、生まれる予定だったりする家庭では、赤ちゃんを守るためにもきょうだいへのワクチン接種も検討してほしい。」と話している。 (土肥修一、asahi = 5-20-25) ◇ ◇ ◇ 百日せき患者急増、3 カ月で昨年 1 年上回る 赤ちゃんは重症化の恐れ 激しいせきが特徴で、症状が 2 - 3 カ月続く「百日せき」の患者が増えている。 国立健康危機管理研究機構によると、今年の患者数は 3 月 30 日までで 4,771 人。 4,054 人だった昨年 1 年間の患者数をすでに上回っている。 赤ちゃんが感染すると重症化する恐れがあり、専門家は注意を呼びかけている。 都道府県別では、大阪が最も多く 375 人。 次いで新潟 357 人、東京 330 人、沖縄 289 人、兵庫 274 人、福岡 257 人、宮崎 239 人と続く。 患者数は 2018 年、19 年はそれぞれ 1 万人超が報告されていた。 20 年の新型コロナウイルス感染拡大以降は、感染対策や人流が減ったこともあってか、少ない状態が続いていたが、コロナ以前の水準に戻りつつあるようだ。 百日せきは、百日せき菌が引き起こす感染症。 くしゃみやせきのしぶきなどを通して感染する。 はじめは軽いかぜのようだが、1 - 2 週間するとせきがひどくなる。 短く激しいせきが連続的に続く症状が 2 - 3 週間続き、その後 2 - 3 週間で次第に回復する。 赤ちゃんは激しいせきをしないことも 予防にはワクチンが有効で、定期接種化されており、生後 2 カ月から 1 歳半までの間に計 4 回の接種が勧められている。 効果は次第に弱まり、接種を受けていても感染することがある。 免疫がない生後数カ月の赤ちゃんは重症化しやすく、脳症や肺炎になることがある。 赤ちゃんの場合、激しいせきをしないこともあり、息を止めるような「無呼吸発作」や、けいれん、呼吸停止などを起こし、亡くなる恐れもある。 治療にはマクロライド系の抗菌薬が使われる。 せきが激しくなる前にのめば、症状は改善する。 せきがひどくなった後だと症状はあまり改善しないが、菌を排出する量が減り、ほかの人にうつすリスクが減る。 最近ではこの抗菌薬が効きにくい耐性菌の報告も増えてきているという。 耐性菌も増加 「今後も感染拡大の恐れ」 感染症に詳しい千葉大学真菌医学研究センターの石和田稔彦教授は「ここ数年流行がなく、免疫が落ちて感染しやすくなっている人が多く、耐性菌も増えていることから、今後も感染が拡大する恐れがある。 感染者が増えると、重症化する赤ちゃんも増える可能性があり、危機感を持っている」と指摘する。 石和田さんは手洗いやマスクの着用、せきエチケットなどの対策が大切としたうえで、「せきが長く続いたり、普段と違う激しいせきが出たりする場合は医療機関を受診してほしい。 赤ちゃんがいる家庭では、生後 2 カ月になったら予防接種を受けるほか、せきをしている家族がいるときは赤ちゃんとの接触を避けてほしい」と話している。 (土肥修一、asahi = 4-8-25) インスリン注射なしの 1 型糖尿病治療へ 徳島大が独自に再生医療 1 型糖尿病の患者に不可欠だったインスリン注射を使わない治療法の治験に徳島大学が乗り出す。 徳島大病院(徳島市)が 15 日、実用化に向けてクラウドファンディング (CF) で 2 千万円を目標に集めると発表した。 患者本人の細胞を使う独自の再生医療技術の確立をめざす。 1 型糖尿病は、血糖値を一定に保つインスリンを出す膵臓の細胞が、過剰な免疫反応で壊されてしまう病気。 インスリン注射を毎日、生涯続ける必要がある。 国内に 10 万 - 14 万人ほどの患者がいるとみられる。 徳島大病院消化器・移植外科の池本哲也教授らの研究チームは、患者から取り出した幹細胞をもとにインスリンを分泌する新たな細胞を作り出す方法を開発した。 この細胞をマウスに移植した動物実験では、長期にわたって血糖値が正常になる効果を確認した。 今年 3 月、患者に移植して効果や安全性を確かめる治験計画届を独立行政法人「医薬品医療機器総合機構 (PMDA)」に提出した。 今秋にも治験を始めるという。 池本教授は「患者の幹細胞から作った細胞を移植するため、拒絶反応はなく、ほかの再生医療に比べて安全性などの面で利点が多い」と話す。 移植した細胞が免疫反応によって再び壊される可能性はある一方で、壊されない移植細胞が一定の割合で残れば、生涯にわたって血糖値を正常化する効果も期待できるとしている。 集めた資金は、多くの患者を対象に治験を実施して有効性を確かめたり、機械で自動的に細胞を培養する方法を開発したりすることに活用するという。 大学が設立した一般社団法人「大学支援機構」の CF サイト「Otsucle(おつくる)」で 11 月末まで寄付を受け付ける。 (吉田博行、asahi = 7-15-25) |