日本時代に建設、世界遺産登録へ再出発 阿里山林業鉄道

【嘉義 = 西見由章】 台湾南部で日本統治時代に建設された「阿里山森林鉄道(阿里山林業鉄道)」が 6 日、15 年ぶりに全線開通した。 2009 年と 15 年の台風被害で寸断されたが、新たなトンネルを建設し、安全性も高めた。 「世界文化遺産」登録という目標に向けて再出発する。 6 日午前、ふもとにある始発の嘉義駅(標高 30 メートル)と、本線終点の阿里山駅(同 2,216 メートル)から上り・下りの第 1 便がそれぞれ発車した。 下り便ではディーゼル機関車に牽引された 4 両の客車が、ヒノキの原生林など 71.6 キロの道程を約 4 時間かけ走り抜けた。

家族旅行中の会社員、陳治緯さん (45) は「高速鉄道とは違った味わいがある。 台湾は海岸沿いのローカル線も山岳鉄道も楽しめる」と話した。 全線開通のネックとなっていたのは標高 1,500 メートル超の山腹にある「42 号トンネル」。 15 年の台風で崩壊し、近くの場所に延長約 1,100 メートルの新たなトンネルを 3 年余りかけて建設した。 農業部(農林水産省に相当)阿里山林業鉄道・文化資産管理処の黄妙修処長によると、新トンネル建設は標高が高く出水も多い山間部に機材を運び込む難工事だった。 しかもロシアによるウクライナ侵略の影響で「必要な爆薬が不足する事態にも直面した」という。

全線開通にあたっては沿線に光ファイバーを敷設して落石の監視システムを強化するなどし、安全性の強化も図った。 阿里山鉄道は日本統治時代にヒノキなどの木材運搬を目的に建設され、大正 3 (1914) 年に本線が開通。 戦後は登山客のための観光鉄道として利用されてきた。 1986 年に日本の大井川鉄道(静岡県)と、2013 年には黒部峡谷鉄道(富山県)と姉妹提携しており、黄処長は「日本側は安全面などで多くの技術を提供してくれた」と謝意を示す。

台湾当局は、日本が礎を築き台湾が発展させてきた阿里山の林業と鉄道を「世界文化遺産」に登録する目標を掲げる。 台湾は国連教育科学文化機関(ユネスコ)に非加盟で、中国の妨害により申請には大きなハードルがあるが、黄処長は「大事なのは準備を進めること。 申請の時機は必ず到来する」と前向きだ。 (sankei = 7-6-24)


山口県縦断の美祢線、全線運休 1 年 … JR 西日本「単独での復旧とその後の運行は難しい」

ローカル鉄道の存在意義

記事コピー (6-30-24)


踏み間違い防止機能、車載を義務化へ 来年 6 月にも 国交省検討

国土交通省が車のアクセルとブレーキの踏み間違い防止装置搭載の義務化の検討に入ったことが 27 日、国交省関係者への取材でわかった。 早ければ来年 6 月にも道路運送車両法に基づく省令を改正して、新車を対象に義務化する見通し。

国交省関係者によると、25 日に開かれた自動車の安全や環境基準を検討する国連の「自動車基準調和世界フォーラム (WP29)」の作業部会で、踏み間違い防止装置の性能基準が決まった。 日本車は海外でも安全性を高く評価されており、今回の WP29 でも日本が基準を提案するなど、議論を主導した。 今年 11 月の各国の採決を経て正式に承認される。 義務化の対象となる新車の販売時期などについては、国交省が今後検討していく。 (asahi = 6-28-24)


重たい EV 時代にはそぐわない日本の 1,100 キロ基準

車体の重い EV が急速に普及する時代に、日本の基準は対応できていないのでは

日本の各自動車メーカーが日本で型式指定を受ける際に提出したデータが「不正」だった問題が連日報道されています。 このニュースについては、現時点では、基準より厳しい試験を行ったので、安全性には問題はないというメーカー側と、あくまで日本の法令に照らせば違法だという国交省が「綱引き」をしている格好です。 双方ともに、公式の説明はしていませんが、このまま推移すると、国交省は 1 年から 1 年半をかけて「現行車の安全性の確認試験」を行い、その結果として、改めて罰則を決めるというような、時間のかかる話になりそうです。 これは大変なことだと思います。

1 年半という長期にわたって、メーカーが暗に主張している「より厳しい試験だからいいじゃないか」、「監督官庁は形式主義だ」という考え方と、あくまで法令に則って規制をする国交省が、長い時間をかけて対立するようでは、法の信頼性が揺らぐことになるからです。 今回のメーカーと国交省の議論ですが、一つ、その中にある「規定と異なる台車重量」というのがとても気になっています。 この問題は、トヨタが衝突試験の際に、日本基準の 1,100 キロより重たい 1,800 キロの評価用台車を使用したという問題です。

後方から台車を衝突させて、その際に燃料漏れなどを起こさないかどうかを確認するという試験における「ぶつける台車」の重量が問題になっている点です。 トヨタの主張によれば、1,800 キロの台車をぶつけた場合には、より大きな衝撃で評価したわけで、当然、1,800 キロのもののほうが、より安全性が確認できたはず、そうした見解だと理解できます。 ですが、日本のルールには違反したことになります。

EV 時代の基準はどうするべき?

この問題ですが、私もそうなのですが、第一印象としては北米など「もっと大きなクルマが走っている市場」を前提にして試験がされたというイメージでとらえた方は多かったのではないかと思います。 大型の SUV やピックアップトラック、あるいは巨大なエンジンを積んだいわゆる「アメ車」など、重たいクルマの走っている欧米向けのデータがあり、これをクルマの平均的なサイズが小さい日本に流用したのは、安易な判断、そんな印象です。 実際はそうかも知れません。 また、そのために国交省は法の権威を守るために強硬であるとも考えられます。

けれども、この問題に関しては全く別の見方もできます。 それは EV (電気自動車)が本格的に普及している時代という問題です。 現在、欧米でも中国でも、急速に EV 車の比率が高まっています。 日本でも徐々に普及が始まっています。 そして、EV というのは車重が重いのです。 大容量の電池を搭載しているので重いのです。 具体的には、

▽ テスラ「モデル 3」、「モデル S」の場合は、1,600 - 2,200 キロ
▽ テスラの高級版「モデル X」の場合は,、2,350 - 2,450 キロ
▽ トヨタ「bz4x (スバルの「ソルテラ」とほぼ同一)」の場合は空の重量で 1,900 キロ

となっています。 世界中に廉価な販売攻勢をかけている中国の BYD もそうで、「ダイナスティ」という車種は 2,360 - 2,560 キロと、やはり重いのです。 つまり、世界中で 2 トン前後の EV がかなりの勢いで増えているわけです。 ということは、どう考えてもガソリン車を含む自動車の型式認定の際には、1,100 キロの台車を衝突させた実験ではなく、1,800 キロの方が現実的と言えます。 もしかしたら、1,800 キロでも軽すぎるかもしれません。

後方衝突試験、つまり追突されても燃料漏れなどの重大な事故にならないような強度を確保する試験の場合、確かに EV 時代の前であれば 1,100 キロという数字にも妥当性があったかもしれません。 ですが、今は、1,800 キロから 2,000 キロというのは必要ではないかと思うのです。 普通のサイズのセダンタイプのテスラが、後方から追突してきたら、簡単に車両の後部が壊れてしまい、燃料漏れなど重大な問題を起こすのであれば、それはやはり問題だからです。

もちろん、日本の場合は軽四輪があるなど、特殊事情もあると思います。 ですが、軽四だからテスラに追突されて潰れたり炎上したとしても仕方がないとは絶対に言えないと思います。 とにかく、この問題に関しては、国交省も 1,100 キロにこだわることなく、EV 時代にふさわしい後方衝突試験の基準をメーカーなどと一緒に考えていって欲しいと思うのです。 (NewsWeek = 6-26-24)


「原チャリ」の時代に幕 ホンダが 50cc 以下のバイク生産を終了へ

原付き免許で運転できる総排気量 50cc 以下の原付きバイク(原動機付き自転車)について、ホンダが生産を終了する。 販売が低迷していることや、来年導入される排ガス規制で生産ができなくなることが背景にある。 原付きバイクは総排気量 50cc 以下の一種、同 51 - 125cc 以下の二種がある。 一種は原付き免許で運転でき、通勤や通学などの足として国内で人気を博した。 1982 年のピーク時に生産台数は 278 万台を記録した。

だが、電動アシスト付き自転車や電動キックボードの普及もあり、販売が低迷。 日本自動車工業会によると、50cc 以下の原付きバイクの生産台数は、2022 年で 15 万台。 ピーク時の 5% にとどまった。 さらに来年 11 月から国内で始まる新たな排ガス規制で、原付きバイクは基準を満たさず、生産できなくなる。 改良にはコストがかさむため、メーカーの業界団体は原付きの区分の見直しを国に要望。 警察庁は、原付き免許で最高出力を抑えた 125cc 以下の小型バイクを運転できるように法改正を検討している。

ホンダは 1958 年から続く人気の「スーパーカブ」シリーズなど、原付きバイクの市場をリードしてきた。 総排気量 50cc 以下の原付きバイクの生産はやめるが、スーパーカブを含めた 110cc や 125cc の原付きバイクの生産や販売は続ける方針だ。 (西山明宏asahi = 6-22-24)


半世紀「塩漬け」状態だった四国新幹線 瀬戸大橋経由で一致した「岡山ルート」の行方

基本計画策定から半世紀以上実現していない「四国新幹線」の誘致に向けた取り組みが、ここにきて熱を帯びている。 昨年、四国 4 県が岡山から各県に線路をつなげる整備ルートで方針が一致したことで議論が活発化。 今年 6 月には四国の官民で作る「四国新幹線整備促進期成会」が 4 県の知事とともに記者会見を開き、早期実現に向けた署名活動の実施を表明した。 各地で整備が進み、今や「唯一の新幹線空白地帯」となった四国。 『夢の超特急』の実現なるか!

次は四国だ

「四国が一つとなった今、次(の新幹線整備)は四国だという熱い思いを形にして国にしっかりアピールしたい。」 今月、高知県本山町で開かれた記者会見。 四国の行政、議会、経済団体など 46 団体で構成する期成会の佐伯勇人会長(四国電力会長)は四国新幹線誘致の署名活動についてこう意気込みを語った。 期成会の副会長でもある各県知事のほか、各県の経済団体の代表も出席。 会見に先立ち開かれた 4 県知事会議では四国新幹線の早期実現と在来線維持を国に強く求める緊急提言を全員一致で採択。 四国が一丸となって新幹線誘致に取り組むことを力強くアピールした。

4 県が一丸で

四国の新幹線整備構想は昭和 48 年にさかのぼる。 当時、岡山から瀬戸大橋を経由して高知に至るルートと、大阪から淡路島を経て徳島と大分を結ぶルートの 2 つが国の「基本計画路線」に策定された。 しかしその後、景気低迷などで国のインフラ投資が鈍化。 すでに整備計画に格上げされた北陸や九州の新幹線は工事が進められたものの、基本計画段階の四国新幹線は事実上「塩漬け」状態に。 さらに、香川、愛媛、高知の 3 県は岡山ルートを、徳島は大阪ルートを主張しており、四国内でも足並みがそろわない状況が続いていた。

転機となったのは昨年 4 月の徳島知事選だ。 現職を破り初当選した後藤田正純知事が、整備計画への格上げが先延ばしにされている現状を踏まえ「まずは四国 4 県が一致できる岡山ルートで打開策を見いだし、四国新幹線実現に向けた動きをつくり出したい」とこれまでの方針を転換した。 これに呼応するように、同年 6 月に政府が示した「骨太の方針」では、基本計画路線について「今後の方向性について調査検討を行う」と明記された。 後藤田知事は「新幹線の実現を通して在来線の維持や街づくりを進めていく。 それを四国 4 県が一丸でやるという意思表示をすることで国の受け止めも全く違ってくる。」と強調する。

新幹線という武器を

ようやく地元の方向性が一致した四国新幹線。 誘致が実現すれば、どのような効果がもたらされるのだろうか。 期成会の前身ともいえる「四国の鉄道高速化検討準備会」が平成 26 年に取りまとめた調査報告書によると、各県庁所在地から新大阪までの所要時間は徳島 1 時間 35 分(1 時間 18 分短縮)、高松 1 時間 15 分(29 分短縮)、松山 1 時 38 分(1 時間 52 分短縮)、高知 1 時間 31 分(1 時間 44 分短縮)。 四国の都市間移動も大幅に改善され、3 時間以内で中京圏や九州へ行くことも可能になる。

沿線の経済波及効果は試算で最大年間 169 億円。 実際に九州新幹線博多 - 鹿児島間は平成 23 年の開業後、観光客の呼び込みなどに成功し、開業前と比べ区間内の輸送人数も増加。 主要駅周辺では再開発が進み、地価も上昇している。 事業費は 1 兆 5,700 億円を見積もる。 ただ、その多くは国費により賄われ、実質の地元負担は 2 割以下にとどまるという。

「四国だけが新幹線という武器なしで地域活性化などに取り組まざるを得ない状況(浜田省司・高知知事)」、「既存路線の維持存続のためにも収益事業たる新幹線がないと四国の鉄道は将来像が見えない(中村時広・愛媛県知事)」、「北海道、北陸、九州の整備が終盤に入り、いよいよ着手する段階だ(池田豊人・香川県知事」)と各県の知事もその必要性を強調する。 佐伯会長は「基本計画から昨年で 50 年。 各県の足並みがそろい、政府は骨太の方針で一歩踏み込んだ表現をしたこの時期に一気に進めたい。 地域の人々の大きな盛り上がりを国に伝えたい」と話した。 (前川康二、sankei = 6-11-24)

署名活動は期成会や各県のイベントなどで実施。 期成会のホームページでも受け付ける。 期成会では来年夏に予定している決起大会で取りまとめ、国に提出するとしている。


LRT 純利益 5,697 万円 初年度は計画の 3 倍

宇都宮市 - 栃木県芳賀町間を結ぶ次世代型路面電車 (LRT) を運行する宇都宮ライトレールは、2023 年度の決算(概要)を発表した。 法人税などを引いた最終的なもうけを示す純利益は 5,697 万円で、当初計画(約 1,900 万円)を上回った。 鉄道事業営業収益は 7 億 3,916 万円(当初計画約 5 億 600 万円)だった。 5 日の発表によると、鉄道事業営業収益は定期券や 1 日乗車券の運賃収入で、広告収入やグッズ販売の「その他事業」の営業収益は 5,534 万円。人件費などの支出を引いた経常利益は 8,361 万円だった。

開業延期に伴い人件費など開業前費用にあてる市、町からの 23 年度分負担金収入(予算時点)は 1 億 7,700 万円だった。 22 年度は約 4 億 2 千万円で、開業年度の 23 年度が最後となる。 開業から 24 年 3 月末までの利用者は約 271 万人で、初年度予測の約 220 万人を上回った。 4 月の月間利用者は開業以来最高となる 42 万 1,613 人を記録している。 1 日あたりの利用者(5 月)は平日約 1 万 5 千 - 1 万 6 千人、土日祝日が約 1 万人となっている。 4 月からはダイヤ改定で快速運転も始まり、乗車時間が短縮された。 従来の全区間乗車時間約 48 分が快速で約 42 分、普通でも約 44 分となった。 (石原剛文、asahi = 6-9-24)

前 報 (8-26-23)


夜行の臨時特急「アルプス」 6 年ぶり運行へ 7 - 9 月新宿発 - 白馬着

JR 東日本は 7 - 9 月に、新宿駅から白馬駅(長野県白馬村)に向かう夜行の臨時特急「アルプス」を走らせる。 首都圏と松本・白馬方面を結ぶ夜行列車の運行は 6 年ぶり。 早朝から登山をしたい乗客の需要にこたえたという。 「アルプス」は 9 両編成で、全車指定席。 現在は首都圏と伊豆半島を結ぶ特急「踊り子」の車両を使う。

運転日は、出発日ベースで 7 月 12 日と 8 月 9 日、9 月 13、20 日。 祝日や振り替え休日で 3 連休になる直前の金曜日に設定した。 新宿駅を午後 11 時 58 分に出発し、白馬駅に翌日の午前 6 時 22 分に到着する。 JR 東日本長野支社によると、首都圏から松本・白馬方面に行く夜行列車はかつて、急行「アルプス」が2002 年まで、その後は快速「ムーンライト信州」が 18 年まで走っていた。 今回、臨時で夜行の特急を運行するのは、夏の信州に観光客を呼び込むキャンペーンの一環という。 (小山裕一、asahi = 5-27-24)


巨大な「帆」の性能は想定通り! 1 航海あたりの燃料節減効果は?

竣工前の想定通り

2024 年 5 月 15 日、商船三井は、同社が保有・運航する世界初のウインドチャレンジャー(硬翼帆式風力推進装置)搭載石炭輸送船「松風丸」の性能検証で、1 日最大 17%、1 航海平均では 5 - 8% の燃料節減効果があることを確認したと発表しました。

同船は、商船三井が大島造船所と共同開発した、高さ最大約 53m(4 段式)、幅約 15m という巨大な繊維強化プラスチック製の「帆」を搭載した石炭輸送船。 2022 年 10 月の竣工時から約 18 か月、東北電力向けの専用船として、主にオーストラリアやインドネシア、北米等から日本向けの往復計 7 航海の石炭輸送に従事してきました。 それらの実航海において、稼働中のウインドチャレンジャーの性能検証を行い、竣工前の想定通りの燃料節減効果を得られたということです。

同社は「商船三井グループ 環境ビジョン 2.2」で、2050 年までのネットゼロ・エミッション達成を目標とし、主要戦略アクションの 1 つである「さらなる省エネ技術の導入」の取り組みとして、ウインドチャレンジャー搭載船を 2030 年までに 25 隻、2035 年までに 80 隻投入する計画です。 (乗りものニュース = 5-18-24)


コンテナ船の新定期航路就航 北海道十勝と首都圏 農業関係者ら期待

北海道十勝地方と首都圏を結ぶ、コンテナ船の新しい定期航路が就航した。 17日、広尾町の十勝港で初接岸した船を前に、セレモニーが開かれた。 トラックの運転手不足や北海道新幹線延伸に伴う並行在来線貨物への影響が懸念される中、新しい物流ルートに農業関係者から期待の声があがった。 十勝港への定期航路は 2006 年以来。 航路は内航海運大手の井本商運(神戸市)と、世界の主要港への航路を持つ香港の大手物流会社「オリエント・オーバーシーズ・コンテナ・ライン (OOCL)」が共同で開設。 週 1 便、十勝港から釧路港経由で京浜港(東京・神奈川)を結ぶ。

この日のセレモニーで、OOCL 日本支社の藤江成宏・日本代表は、今回の定期航路が同社のネットワークの一部として国内だけでなく世界中の港とつながっているとし、「北海道の物流に貢献できるような提案をさせていただきたい」と述べた。

十勝地区農協組合長会の有塚利宣会長は取材に、物流の「2024 年問題」によるドライバー不足や新幹線延伸にともなう並行在来線貨物の存廃問題など農産物輸送が抱える問題を挙げ、「新しい物流ルートができ、国内有数の食料生産地の生産者たちが安心して農業を進めることができる。 また、ナガイモなど十勝の産品がさらに世界に運び出しやすくなる。 生産者にとって大きな励みだ。」と話した。 (中沢滋人、asahi = 5-17-24)


スズキの売上高、初めて 5 兆円超える 24 年 3 月期、利益も最高

スズキが 13 日に発表した 2024 年 3 月期決算は、売上高が初めて 5 兆円を超え、本業のもうけ(営業利益)も過去最高となった。 インドや日本で、比較的高価格の車種が売れていて、値上げも受け入れられている。 25 年 3 月期も好調が続くとみている。 24 年 3 月期の売上高は前年比 15.8% 増の 5 兆 3,742 億円だった。 四輪車は世界全体での販売が 5.6% 伸びた。 コロナ禍の半導体不足が年度前半に解消し、生産が安定したのが大きい。

営業利益は 32.8% 増の 4,655 億円と大きく伸びた。 円安が進んだことで 828 億円の増益効果が出たほか、利益率の高い車種がよく売れた。 国内では年度後半に新型車を投入した「スペーシア」や「スイフト」が人気となり、インドでは SUV (スポーツ用多目的車)の販売が大きく伸びた。 純利益も 2,677 億円(21.1% 増)で過去最高となった。

電気自動車の投入は …

鈴木俊宏社長は「販売価格も(原材料価格高騰分を反映した)適正なレベルにした。 市場の声を聞いて、適切な商品開発ができた。」と胸を張った。 25 年 3 月期は労務費などの増加を見込むが、販売は好調が続くとみている。 国際会計基準に移行するため単純比較はできないが、営業利益 4,800 億円、純利益 3,100 億円とも、実質的には過去最高となる。 一方で鈴木社長は、25 年 3 月期中に投入を予定している電気自動車については、「まだまだ普及期に入っていない。 インフラが整わない中で出しても受け入れられない。」と慎重な言い回しに終始した。 (大平要、asahi = 5-13-24)


電動キックボード、酒気帯び運転容疑 自称・市職員を現行犯逮捕

電動キックボードを飲酒運転したとして、福岡県警は 5 日、自称・同県春日市職員の女 (24) を道路交通法違反(酒気帯び運転)の容疑で現行犯逮捕し、発表した。 女は「電動キックボードを飲酒運転してはいけないとは知らなかった」などの趣旨を供述しているという。 県警南署によると、女は 5 日午前3時ごろ、福岡市南区横手2丁目の県道で、電動キックボードを酒気を帯びて運転した疑いがある。

パトロール中の警察官が、ふらつきながら運転する女を呼び止め、基準値の 4 倍近いアルコールを検出したという。 乗っていた電動キックボードは道交法上「特定小型原動機付き自転車」に分類され、飲酒運転は禁じられている。 女がレンタルしたものだという。 春日市は事実関係を確認中とした上で、「事実であれば市職員として決して許されないことであり、市として大変申し訳なく思っている」とコメントした。 (asahi = 5-5-24)


札幌、仙台など 8 区域、ライドシェア運行時間決定 5 月に運行見通し

一般の人が自家用車を使って客を運ぶライドシェアについて、国土交通省は 26 日、札幌や仙台など 8 区域の運行時間を決定し、発表した。 5 月中には各区域で運行が始まる見込みだ。 (大和田武士、aahi = 4-26-24)

八つの営業区域の運行時間は、
▽ 札幌(札幌市、江別市、北広島市等) = 土日曜午前 1 時台 - 4 時台
▽ 仙台市 = 金曜午後 4 時台 - 7 時台、土曜午前 0 時台 - 3時台
▽ 県南中央(さいたま市、川口市など) = 火 - 金曜午前 0 時台 - 5 時台、金土日曜午後 5 時台 - 翌午前 6 時台
▽ 千葉(千葉市、四街道市) = 土日曜午前 0 時台 - 3 時台
▽ 大阪市域(大阪市、豊中市、東大阪市等) = 土曜午前 0 時台 - 3 時台、金土曜午後 4 時台 - 7 時台
▽ 神戸市域(神戸市、尼崎市、西宮市等) = 水曜金曜午前 0 時台 - 3 時台、金土曜午後 5 時台 - 翌午前 5 時台
▽ 広島(広島市、廿日市市等) = 月 - 木曜午後 4 時台 - 7 時台、金土曜午後4時台 - 翌午前 3 時台、日曜午後 4 時台 - 8 時台
▽ 福岡(福岡市、春日市、大野城市等) = 月 - 木曜午後 4 時台 - 9 時台、金土曜午後 4 時台 - 翌午前 5 時台、日曜午後 3 時台 - 9 時台

◇ ◇ ◇

「乗客 9 割は外国人」の声も ライドシェア 2 週間、90 社が参入

自家用車を使って客を有償で運ぶ「ライドシェア」が、東京と京都で始まり 2 週間が経った。 国は 22 日までに、タクシー事業者少なくとも 90 社の運行を認可。 「利用者の大半は外国人」との声もあり、国内の認知度に課題はあるが、ドライバー確保に向けた新たな動きも出始めている。 19 日夕、京都市のタクシー大手「エムケイ」に、配車アプリ「Uber (ウーバー)」からライドシェアの予約が入った。 依頼はベトナムの観光客から。 清水寺から京都御所に近い宿泊先までの利用だった。

同社は制度が動き出した 8 日から参入。 20 台で対応した 15 日には、この日認められている午後 4 時からの 4 時間で計 110 組の予約が入った。 利用者はこれまで「9 割が外国人」で、ライドシェアをすでに導入した国・地域で慣れ親しんでいる人が多いとみる。 同社は「日本人の認知度はまだ低い」と話す。 国内のライドシェアは、タクシーが足りない地域や時間帯に限って認められた補完的なサービスだ。 海外ではタクシーより安い場所もあるが、国内は同水準。 タクシー運転手に必要な 2 種免許は求められず、原則として車に「社名表示灯(あんどん)」やメーターは無い。

国土交通省によると、アプリで配車を依頼したあとにライドシェアの車が割り当てられ、キャンセルしたケースもあった。 ライドシェアを利用するメリットや安心感を感じにくい人もいたとみられる。 一方で、制度の広がりを見据えた動きも出始めた。 エムケイは当初、需要が正確に読み切れないとして新たなドライバーを雇わず、管理職がライドシェア対象車両のハンドルを握っていた。 しかし、開始 1 週間ほどの利用状況などをみて、「ライドシェアの波は止められない。 タクシー事業者として対応せざるを得ない」と判断。 18 日からドライバーの募集を始めた。

系列のボウリング場に採用ポスターを出し、「90% 以上が外国人利用者! あなたの語学力を試すチャンス!」と、学生を想定した呼びかけを始めた。 時給は 1,300 円とし、社会人を含め 30 人以上の採用を目指す。 配車アプリ最大手「GO」は、ライドシェアの運転手を志望する人を、タクシー事業者に紹介するサービスを始めた。 1 日数百人単位で運転手への応募者がいるという。 紹介前に電話面談を行った人のうち、9 割は男性。 タクシーやバスなどの運転手を経験した人が半分を占めたが、自営業者などもいたという。 (北村有樹子、中村建太、野口陽、asahi = 4-25-24)

◇ ◇ ◇

ライドシェア、4 月から東京・京都など 4 区域で 台数・時間帯を公表

一般の人が自家用車を使って客を運ぶライドシェアについて、国土交通省は 13 日、4 月から東京、横浜、名古屋、京都の 4 区域で運行を認めると発表した。 区域ごとのタクシーの不足数が確定したためで、他の区域も調査が終わり次第、順次認めていく。 4 区域は、▽ 東京(23 区と武蔵野、三鷹両市)、▽ 京浜(横浜、川崎両市など神奈川県 4 市)、▽ 名古屋(名古屋市など愛知県 12 市 3 郡)、▽ 京都市域(京都市など京都府 8 市 4 郡)。

国交省はタクシーの配車アプリのデータをもとに、区域ごとの不足数を調査。 この数を上限に、ライドシェアに参入するタクシー会社ごとに運行台数を割り当てる。 不足数の最多は東京の土曜午前 0 - 4 時台の 2,540 台で、最少は名古屋の金曜午後 4 - 7 時台の 90 台。 曜日や時間帯で台数が細かく分けられている。 今後、参入を希望する会社が運輸局に許可を申請する。 運転手の採用や利用する車両の点検をする。 そのため、制度上は 4 月 1 日から運行できるが、実際に走り始めるのは 4 月中旬以降になりそうだ。

国交省は 4 区域以外でも、大阪や札幌、福岡など大都市を優先してタクシーの不足数を調べている。 配車アプリが普及していない地域についても、ライドシェアが運行できる方策を検討する。 (平林大輔、asahi = 3-13-24)


飛び立つ「クロネコ」、ANA はトラック並み運賃に 空の物流に脚光

貨物航空機やドローンといった「空の物流」が脚光を浴びている。荷物を速く、効率的に運べるだけでなく、残業規制で輸送力不足が懸念されるトラック輸送を補う役割が期待されている。 今月 11 日の早朝、成田空港から 1 機の貨物専用機が離陸した。 機体にはトラックで見慣れたクロネコのマーク。 宅配大手のヤマトグループが初めて導入した航空機だ。 3 機をリースし、日本航空 (JAL) 子会社の格安航空会社 (LCC) スプリング・ジャパンに運航を委託する。 成田、羽田や新千歳、北九州、那覇の各空港を結ぶ。

貨物航空機の事業を担当するヤマト運輸の下簗(しもやな)亮一氏は「宅配便は航空機輸送を併用するのが世界で一般的になっている」と話す。 今年度から始まったトラック運転手の残業規制によって、陸運では配送時間に余裕を持たせる動きがある。 一方、根強い速達ニーズに応えるため、2019 年から検討を続けてきた。 背景にあるのは、ネット通販による需要増だけではない。 九州や北海道で生産が伸びる半導体関連製品のように、小さくて軽く、付加価値が高いものは航空輸送に適している。 ヤマト運輸は 900 キロを超える長距離の輸送を航空機に置き換えていき、トラック輸送は近距離に注力させる構想を掲げる。

課題はコストの高さだ。 そこで全日本空輸 (ANA) は昼間限定で運賃を大幅に引き下げ、貨物輸送の利用増を狙う。 4 月から羽田発着で新千歳、大阪(伊丹)、福岡を結ぶ便でコンテナの特別運賃を設定した。 単価が従来の 10 分の 1 の区間もあり、「トラック並み」の水準になる。 航空貨物は夜間と早朝の輸送が多く、昼間の旅客便の床下は大半が使われていなかった。 同社は空きスペースの活用を進めれば、年間で約 100 万トンの荷物を追加で運べると試算する。

過疎地で少量の荷物を運ぶ場面では、ドローンに期待が集まる。 物流用ドローンを開発・製造するエアロネクストは、配送事業を手がける子会社が 21 年の山梨県小菅(こすげ)村を皮切りに、北海道上士幌(かみしほろ)町や福井県敦賀市など 8 市町村でサービスを始めている。 飲食店の出前のほか医薬品や新聞などを運ぶ。 トラックや軽バンとドローンを組み合わせ、最適な配送手段とルートを導き出すシステムを、物流大手のセイノーホールディングスなどと構築した。 一部の地域ではトラック運転手をドローンの操縦士に育て上げる取り組みにも乗り出した。

地域の物流会社と協業するなどし、サービスを展開する市町村を毎年 5 - 10 ずつ増やしていく考え。 田路(とうじ)圭輔社長は「最終的には過疎地域がある自治体全部でやるのが目標」と語る。 ドローンの技術進化に伴い規制緩和も進む。 有人地帯でも補助者なしでの遠隔操縦ができる「レベル 4」の飛行が22 年の法改正で認められるようになると、昨年には日本郵便、ANA、KDDI スマートドローンが相次いで荷物配送の実証運航をした。 ただ、現段階では無人地帯であれば遠隔操縦できる「レベル 3」が主流だ。 道路や線路をまたぐ際には補助者による見張りが必要で、コストがかかり事業化の妨げになっていた。

国土交通省は昨年末、一定条件で補助者がいなくてもよいとする「レベル 3.5」の資格を新設した。 同省の担当者は「まずは中山間地域からだが、将来的には都市部でもドローン物流がさらに広がることに期待している」と話す。 (高橋豪、asahi = 4-22-24)


自動物流道路、ルート選定を首相指示 高速道路地下などに専用レーン

高速道路を活用し、荷物を自動運搬する「自動物流道路」の導入に向けて、岸田文雄首相は 22 日、デジタル行財政改革会議で、関係閣僚に夏までに想定ルートを選定するよう指示した。 自動物流道路は、道路空間を活用した人手によらない新たな物流システム。 高速道路の地下や中央分離帯、路肩などに専用レーンを整備し、自動輸送のカートで荷物を運ぶことを想定する。

トラックの運転手不足が懸念される「2024 年問題」や、増大する物流需要に対応するほか、温室効果ガスの削減効果も期待されている。 また、高速道路の渋滞緩和も見込めるという。 国土交通省は、自動物流道路の構築に向けた検討会を今年 2 月に設置しており、夏ごろに中間とりまとめを出す予定だ。 先行事例が欧州にあり、スイスでは主要都市間を地下トンネルで結び、自動運転カートを走行させるシステムを、英国では低コストの完全自動運転のリニアモーターカーによる物流システムを計画しているという。 (大和田武士、asahi = 4-22-24)


名古屋 - 福井の高速バス、なぜ利用者増? 新幹線延びて「一手間」発生

北陸新幹線の金沢 - 敦賀間が延伸開業して 16 日で 1 カ月、その影響は名古屋にも及ぶ。 名古屋市と福井市を結ぶ高速バスの路線で利用者が増え、3 月は前年比で 1.4 倍に増えた。 その要因の一つとして、新幹線延伸によって鉄道での移動に「乗り換え」が必須になった影響があるようだ。 16 日、名古屋駅近くの名鉄バスセンターで福井県坂井市の主婦 (52) が福井駅行きの高速バスを待っていた。

昨年から愛知県内の大学に通う息子に会うため、行き来をするようになった。 高速バスを使う理由は、「一番は値段。 新幹線は東京へ行くのに便利だと思うけど、名古屋ならバスでいい。」 この日もリュックサックを背負い、左右の肩にはトートバッグ。 日用品などを持ち歩くといい、「荷物が多いので、乗り換えがないのがいい」と話し、正午発のバスに乗り込んだ。

延伸前から上がっていた疑問の声

3 月のダイヤ改定では、JR 特急「しらさぎ」の運行区間が短縮された。 それまで名古屋 - 金沢間を走っていたが、同月 16 日の北陸新幹線延伸に伴い、しらさぎの運行区間が金沢、福井の手前にある敦賀(福井県)までとなった。 このため、名古屋から最速で福井を目指すと、東海道新幹線で米原(滋賀県)を経由して特急しらさぎ、北陸新幹線への乗り換えが生じる。

新たな乗り換え場となった敦賀駅では 1 階の特急ホームから 3 階の新幹線乗り場まで移動に標準 8 分かかるという。 この行程の所要時間は平均 1 時間 42 分で 8,260 円(普通車指定席利用)。 北陸新幹線延伸前と比べて短縮時間はわずか 2 分にとどまり、料金は 2,030 円高くなった。 一方、高速バスなら名古屋 - 福井の所要時間は 2 時間 50 分。 鉄道より時間はかかるものの、乗り換えもなく、料金は 3,600 円と新幹線を利用した鉄路の半額以下に抑えられる。 鉄道の乗り換えの負担感や費用対効果を疑問視する声は延伸前から上がっていたという。

名鉄社長「高速バスの増強図っていく」

「新幹線の延伸も見据え、バスを認知してもらう目的もあって 12 月に増便した。」 こう語るのは、名鉄バスの担当者だ。 名古屋 - 福井間の高速バスは名鉄バス、ジェイアール東海バス(ともに名古屋市)と、福井県が拠点の京福バス、福井鉄道の計 4 社が共同運行している。 昨年 12 月、その運行本数を 1 日 8 往復から 10 往復に増やした。 鉄道側のダイヤ改定の影響は顕著で、高速バスの 3 月の利用者は 1 万人強となり、前年比で 1.4 倍となった。

増便を機に経路も一部変更。 北陸新幹線の越前たけふ駅(福井県越前市)を経由するようにして、利便性を重視した。 名古屋鉄道の高崎裕樹社長は 3 月の記者会見で、北陸新幹線の延伸について「中京経済圏と北陸の結び付きという点ではあまりプラスにならない。 我々は直行できる利便性の高い交通機関として、高速バスの増強を図っていく」と話した。

課題は乗務員不足

より勢いづいているのは福井側だ。 京福バスの担当者は人の流れの変化を感じているという。 「名古屋から福井への利用者が増えつつある。」 高速バスの需要増については「新幹線によって北陸がクローズアップされている。 一過性のものか動向を見つつ、持続できるように多方面での連携をしていきたい」と話す。 北陸新幹線は今後、敦賀から新大阪まで延ばす構想がある。 現行では福井県小浜市や京都府を経由して大阪へつなぐ計画だが、滋賀県内を通る「米原ルート」を求める声も出ており、着工の見通しは立っていない。

名古屋から北陸へ向かう交通手段は今後、しばらく大きな変化がなさそうだ。 だが高速バスに課題がないわけではない。 名鉄バスの担当者は「乗務員不足が厳しい状況にある。増便できるかどうかは、需要をしっかり見極める必要がある。」としている。 (辻健治、asahi = 4-17-24)


豪雨被災の JR 肥薩線、鉄道で復旧へ 熊本県「日常の利用増やす」

ローカル鉄道の存在意義

記事コピー (4-4-24)


リニア開業、早くても 10 年後 25km 最難関トンネルの着工できず

JR 東海は 29 日、リニア中央新幹線の東京・品川 - 名古屋間について、目標としていた 2027 年の開業を断念する方針を示した。 最難関工区とされる南アルプストンネル(全長 25 キロ)のうち、静岡県内での工事を同県が認めず、着工できていないのが理由。 同工区の工事は約 10 年かかると見込まれており、開業は早くても 34 年以降にずれ込む見通しだ。

この日、静岡工区の水資源や環境対策をテーマに国土交通省で開かれた専門家による会議で、JR 東海の丹羽俊介社長が明らかにした。 丹羽社長は「(着工できない)静岡工区が名古屋までの開業の遅れに直結している」としたうえで、「残念ながら、2027 年の名古屋までの開業は実現できる状況にはない」と述べた。 リニア工事は 14 年 12 月に着工。 南アルプストンネルは山梨、静岡、長野 3 県にまたがり、3 工区に分かれている。静岡工区(8.9 キロ)は 17 年 11 月に工事契約を締結し、着工から開業まで約 10 年間を見込んでいたが、静岡県が大井川の水資源や自然環境への影響に懸念があると表明した。

国は有識者会議を立ち上げて影響を検討し、JR 東海の環境保全対策などをおおむね了承する報告書を 23 年 12 月にまとめたが、静岡県が「未解決の項目がある」として着工を認めないままの状況が続いている。 国はさらに今年 2 月、JR 東海の取り組みを監視・評価する有識者会議を新たに発足させた。

この日の会議で、担当の沢田尚夫常務は「仮に 24 年 4 月から工事に着手できたとしても、スタートは 6 年 4 カ月遅れるということになる」と発言。 「トンネルの掘削期間が計画より短くなる可能性はないわけではない」と述べる一方で、着工済みの山梨、長野両工区の掘削実績からは「工期が短くなる材料は見当たらず、さらに工期が延びる可能性は十分にある」と説明し、すぐに着工できたとしても、開業は 34 年以降になる可能性が高いことを示唆した。

新たな開業時期について、丹羽社長は「静岡工区のトンネル工事にいまだに着手する見込みがたたないことから、見通すことができない」と述べ、明確にしなかった。 開業時期をめぐり、JR 東海は 23 年 12 月、国交省への追加工事計画の申請にあわせ、「27 年」としていた工事の完了時期を「27 年以降」に変更。 事実上、開業目標を先送りしていた。 (細沢礼輝、asahi = 3-29-24)