これぞ温泉の恵み? 別府の湯で善玉の腸内細菌が増加、泉質により差 習慣的に温泉につかっていると、腸内細菌の集団が泉質によって異なる変化をし、体によいとされるビフィズス菌の増加などが期待できると、九州大のグループが大分県の別府温泉で調べた結果を論文発表した。 ふつうのお湯への入浴やサウナにとどまらない「温泉そのもの」の健康効果を、泉質ごとに解明することにもつながりそうだ。 温泉に入浴することは、睡眠の質をよくしたり、高血圧を改善したりするのに役立つなどとする研究結果が、これまでに報告されている。 ただ、温泉による健康効果や、その泉質による違いなどについては、まだ分かっていないことが多い。 研究に取り組んだ九大工学研究院の馬奈木(まなぎ)俊介・主幹教授たちは、以前、納豆のサプリメントを使い、腸内での細菌集団全体をさす「腸内細菌叢(そう)」の変化を調べたことがあった。 泉質多く存在、比較に有利 腸内細菌叢を通してなら、比較的短い期間に体内で起きる細かな変化をキャッチでき、泉質ごとの違いも比べやすい。 そこで、連続して温泉に入浴する前と後の腸内細菌の様子を比べることにした。 別府市温泉課によると、別府温泉には世界で 10 種類に大別される泉質のうち、7 種類が存在する。 このため、泉質による違いを調べるのに有利だ。 馬奈木さんたちの研究には市や旅館などの組合も協力した。 コロナ禍で来訪客が大幅に減っていた時期でもあり、健康効果が確認されれば国内外にアピールできると考えた。 2021 年 6 月から 22 年 7 月にかけて、九州に住む 18 歳以上 65 歳以下の、慢性的な病気にかかっていない男女 136 人に協力してもらった。 結果に影響が出るのを避けるため、実験を始める 14 日前から、温泉に入らないようにしてもらった。 参加者を五つのグループに分け、通常の食生活を続けてもらいつつ、別府温泉のそれぞれ異なる泉質のお湯に毎日 20 分間以上、7 日間連続で入ってもらった。 実験開始前と終了後に便を採取して、遺伝子分析によって腸内細菌叢の変化を調べた。 その結果、泉質によって異なる腸内細菌叢の変化がみられた。 中でも最も大きく変化したのは、炭酸水素塩泉という泉質のお湯につかった人たちでのビフィズス菌の一種「ビフィドバクテリウム・ビフィダム」の増加。 7 日間の温泉入浴が終わったあと、腸内での割合が、始める前と比べて 2 倍程度に高まっていた。 この細菌はいわゆる善玉菌と呼ばれ、おなかの調子を整えるなどの健康効果が期待されるという。 単純泉と硫黄泉でも、それぞれ善玉菌の増加などが確認された。 効果の違い、なぜ? 泉質によってなぜ違いが出たのか、詳しい解明はこれからだが、馬奈木さんは「体積あたりの重さが泉質ごとに異なり、肌への圧迫度合いが違うことが関係しているのではないか」と推定。 さらに研究を進めるという。 入浴に関しては過去、日常生活において「浴槽に毎日つかって入浴している人は、うつを発症する割合が低い」などの調査結果が別のグループから発表されていた。 ここで推定されたメカニズムの一つは、お湯であったまることによる効果だった。 一方、今回の腸内細菌叢の変化にも、入浴による温熱効果が影響している可能性が考えられている。 今後、浴槽入浴をあまりしない人たちや、ふつうのお湯やサウナに入った人たちと、温泉に入った人たちとの腸内細菌叢の違いを比べるなどすれば、「温泉そのもの」による効果がよりはっきりしてきそうだ。 馬奈木さんたちの研究結果は 科学誌に掲載 された。 (田村建二、asahi = 4-20-24) 難病の赤ちゃん 生まれる前におなかの中で手術 大阪大など 母親の胎内にいる赤ちゃんの神経障害が進む病気に対して、大阪大や国立成育医療研究センターのグループは 15 日、これまで 6 人に「胎児手術」をしたと発表した。 先行する米国と同等の成績で、治療の選択肢として期待できるとしている。 グループは「脊髄髄膜瘤(せきずいずいまくりゅう)」という、脊椎の中にある脊髄がむきだしになる病気に対する胎児手術の安全性や有効性を調べる研究を進めている。 妊娠初期に、胎児の脳や脊髄のもとになる神経管という本来閉じる部位が開いたままになり、生まれた後、歩行障害や排尿障害のほか、脳に水がたまる水頭症になることもある。 生後の治療では改善が難しく、海外の主要な施設では、胎児のうちに手術することが選択肢になっている。 しかし、高い技術や、産科婦人科、小児科、脳神経外科などのチーム医療が必要で、国内では実施され てこなかった。 グループは、米国で安全性や有効性が認められた方法にならい、子宮の一部を切り、胎児の脊髄を戻して皮膚や骨を閉じる手術をして、妊娠が継続できるようにした。 2021 年から今年 4 月までに、6 人が胎児手術を受けた。 1 人は手術後感染症になり、生後 3.5 カ月で死亡した。 4 人は安定した状態で生まれて成長している。 1 人はまだ妊娠中。 足の運動機能も 5 人中 4 人が改善するなど、これまでのところ、米国と同じような成績だという。 グループは今後、臨床研究を続けながら、先進医療に申請する。クラウドファンディングで患者と家族を支援する体制もつくっていく予定だという。 「海外では有効性が認められている治療なので、日本でも、この治療が新たな選択肢となることを希望している」と阪大病院胎児診断治療センター副センター長の遠藤誠之教授は話している。 (瀬川茂子、asahi = 4-15-24) 劇症型の感染症増加でも「日本への渡航取りやめる必要ない」 厚労省 致死率が高い「劇症型溶血性レンサ球菌感染症 (STSS)」の患者が国内で増えているなか、厚生労働省は、日本への渡航を予定する人に「流行を理由に旅行を取りやめる必要はない」と呼びかけている。 STSS の患者報告数は過去最多のペースだが、担当者は「基本的な感染対策をしてもらえれば、それほど心配はない」としている。 国内の STSS をめぐっては、3 月に入り、欧州のメディアが「危険な感染症が日本で記録的な速度で増加している」などと報道。 北朝鮮が平壌で開催予定だったサッカーの 2026 年ワールドカップのアジア予選を、「日本で広がっている伝染病への疫病予防」を理由に中止した一幕もあった。 このため、渡航に関する問い合わせが増えているという。 STSS は、主に小児の急性咽頭炎などの原因となる「溶血性レンサ球菌(溶連菌)」による感染症が、まれに劇症化したもの。 新学期が始まる 4、5 月に感染者が増える傾向がある。 発症後、急速に筋肉周辺の組織の壊死や多臓器不全を引き起こす。 発症は 30 歳以上で多く、致死率は 3 割ほどとされる。 国立感染症研究所によると、23 年の国内の患者報告は過去最多の 941 人(速報値)。 今年も 3 月 24 日時点で、すでに 556 人が報告されている。 23 年後半から関東を中心に、感染力が比較的高く、欧米などで流行している株の患者が増加しているという。 今回の呼びかけについて、厚労省の担当者は「22 年には欧州で STSS が増加したが、このとき世界保健機関 (WHO) の報告書では、流行している国への渡航制限は推奨しないとしている」と説明する。 STSS は、手洗いやマスク着用、傷口を清潔に保つなどの基本的な感染対策が有効で、感染研の担当者は「それほど心配する必要はないと考えていただいていい」と話す。 (足立菜摘、asahi = 4-4-24) はしか感染、今年 20 人に ワクチン定期接種呼びかけ 厚労省 厚生労働省は 26 日、今年に入ってはしか(麻疹)の感染者が計 20 人になったと発表した。 すでに昨年 1 年間の 7 割に達している。 はしかは感染力が非常に強く、厚労省は子どものワクチンの定期接種を呼びかけている。 はしかは発熱やせきなどが続いた後、高熱と発疹が出る。 1 千人に 1 人の割合で脳炎となり、亡くなることもある。 空気感染し、手洗いやマスクでは十分に予防できない。 予防にはワクチン接種が有効で、2 回の接種で95%以上の人が免疫を獲得できるとされる。 厚労省によると、今年に入って昨年の 7 割となる 20 人の感染者が報告された(24 日時点)。 うち 14 人が、2 月下旬にアラブ首長国連邦 (UAE) からの帰国便で、感染が確認された男性と関連する可能性があるという。 2019 年には 744 人の感染者がいたが、新型コロナ下の 20 〜 22 年は年間 10 人以下となり、23 年は 28 人だった。 ワクチンの定期接種は、1 歳と年長児相当の計 2 回。 感染者が相次いだことで、ワクチンの需要が高まっており、厚労省は定期接種をする医療機関への供給を優先するよう自治体などに求めている。 武見敬三厚労相は 26 日の閣議後会見で「製造販売業者から全国的には大きな不足は生じていないと 22 日時点で報告を受けている」と話し、「定期接種の対象の子どもは確実に接種を受けてほしい。 疑う症状がある場合は、医療機関に電話などで伝えて、指示に従ってほしい」と呼びかけた。 (神宮司実玲、asahi = 3-26-24) ◇ ◇ ◇ 都内在住の 20 代男性「はしか」感染 2024 年 4 人目 「はしか」への感染確認が相次ぐ中、東京都内に住む 20 代男性の感染が新たに確認された。 都内では、2024 年に入り 4 人目となる。 東京都によると、男性は当初「はしか」とは診断されなかったが、症状が続いたため再度医療機関を受診し、18 日に感染が確認された。 自宅で療養していて、快方に向かっているという。 2 月下旬に東南アジアから帰国していた。 都は「はしかの疑いがある症状が表れたら、必ず事前に医療機関に連絡してほしい」と呼びかけている。 (FNN = 3-19-24) ◇ ◇ ◇ 東京都内で 20 代女性がはしか発症 今年 2 例目 東京都は 11 日、都内で大阪市の 20 代女性がはしかに感染したと発表した。 女性は入院中だが、快方に向かっているという。 昨年の都内での発生は 10 件で、今年に入ってからは 2例目。 都保健医療局によると、女性は今月 7 日、大阪府の新大阪駅午後 1 時 45 分発の東海道新幹線のぞみ 24 号の 6 号車に乗車し、品川駅まで移動した。 午後 9 時 - 午後 11 時には「オストレア oysterbar & restaurant 銀座コリドー通り店(中央区)」に滞在した。 8 日に医療機関を受診し、はしかと診断された。 都は、はしかを疑う症状が出た場合は最寄りの保健所への相談を呼びかけている。 (asahi = 3-11-24) マダニ媒介の感染症 SFTS 人から人への感染を国内で初確認 マダニを通じて感染する重症熱性血小板減少症候群 (SFTS) が人から人へ感染したケースを国内で初めて確認した、と国立感染症研究所が 19 日発表した。 発表によると、人から感染したのは 20 代の男性医師。 2023 年 4 月に SFTS と診断された 90 代男性の診療を担当し、この患者が死亡後にカテーテルを外すなどの処置をした。 男性医師は、90 代男性と初めて接触してから 11 日後に 38 度の発熱や頭痛などの症状が出て、PCR 検査で SFTS と確定診断された。 ウイルスの遺伝子を調べたところ、死亡した 90 代男性と同一と考えられたため、90 代男性から男性医師への人・人感染と判断した。 男性医師は症状が軽快したという。 ほかの医療従事者や 90 代男性の家族、葬儀関係者らへの感染は確認されていない。 SFTSの人・人感染は中国や韓国では報告されているという。 (asahi = 3-20-24) 世界初の生体肺肝同時移植手術に成功 … 京都大病院で 10 歳未満の男児に親族 3 人から 京都大病院は 4 日、遺伝性疾患「先天性角化(かくか)不全症」の 10 歳未満の男児に、親族 3 人の肺と肝臓の一部を移植する世界初の生体肺肝同時移植手術に成功したと発表した。 手術は昨年 11 月に行われ、男児は順調に回復し、今月 1 日に無事退院したという。 先天性角化不全症は、生まれつき皮膚や臓器などに異常が生じる希少疾患。 根治療法はなく、国内の重症患者数は約 200 人とされる。 発表によると、男児は関東在住で、40 歳代の両親と 60 歳代の祖父の計 3 人から臓器の提供を受けた。 昨年 11 月 15 日に行われた手術では、父親の右肺、母親の左肺、祖父の肝臓の一部が移植され、手術時間は 18 時間以上に及んだ。 日本移植学会や日本臓器移植ネットワークによると、脳死ドナー(提供者)からの肺肝同時移植は、海外での実施例はあるが、国内の現行基準には盛り込まれておらず、これまで行われていない。 男児の両親は病院を通じ、「当初はもう打つ手はないものと絶望的な気持ちで、(移植手術は)唯一の希望でした。 今回の移植を機に、諦めるしかなかった患者さんや親族の方の一筋の光になればうれしい。」とコメントした。 (yomiuri = 3-4-24) 肥満改善助ける市販薬「アライ」発売へ 国内初、大正製薬が 4 月から 大正製薬は 4 日、脂肪の吸収を抑えて肥満の改善を助ける「アライ(一般名オルリスタット)」を 4 月 8 日に売り出すと発表した。 医師の処方箋なしに薬局で買える。 漢方系以外で、内臓脂肪や腹囲の減少が期待できる国内初の薬という。 日本肥満学会は、体格指数 (BMI) 25 以上を「肥満」と定め、高血圧などの健康障害を患い、減量が必要な状態を「肥満症」として区別している。 アライは「肥満」の段階で飲む薬。 対象は 18 歳以上で、腹囲が男性 85 センチ以上、女性 90 センチ以上などの条件がある。 価格は 6 日分が税込み価格 2,530 円、30 日分が同 8,800 円。 薬局では、研修を受けた薬剤師がチェックシートをもとに対象者かどうかを確認。 購入後は 1 日 3 回、食事中か食後 1 時間以内に 1 カプセルを服用し、スマートフォンの専用アプリなどから生活習慣記録を週 1 回以上、報告する必要がある。 アライは脂質を分解する酵素の働きを妨げるため、食べた脂肪の約 25% を便と一緒に排出することが期待できるという。 一方、軟便になったり、油や便が漏れやすくなったりするなどの副作用の可能性がある。 薬の有効成分オルリスタットは、すでに欧米など 70 カ国以上で市販薬として承認されている。 大正製薬が英製薬大手グラクソ・スミスクラインと導入契約を結び、日本向けに開発してきた。 (宮崎健、asahi = 3-4-24) アルツハイマー病新薬、都内 24 病院が「投与可能」 都、体制整備へ 昨年 12 月から公的医療保険の対象となったアルツハイマー病の新たな治療薬「レカネマブ」について、東京都は 27日、都内の医療機関の対応を調査したところ、都立を含む 24 の病院で「投与可能」と回答があったことを明らかにした。 都は新年度、医師向けの相談窓口を設置するほか、認知症の人の支援にあたる地域の医療従事者向けの研修も始める方針で、新年度予算案に 4,400 万円を計上。 27 日にあった都議会代表質問で菅野弘一議員(自民)の質疑に対し、佐藤智秀・福祉局長は「希望する方が身近な地域で治療を受けられるよう、医療提供体制の整備を進めていく」と述べた。 レカネマブは、脳内にたまったアルツハイマー病の原因物質「アミロイドβ(Aβ)」の除去を狙った国内初の薬で、症状の進行をゆるやかにする効果がある。 軽度認知障害や軽度の認知症の人が対象で、2 週に 1 度点滴する。 副作用が起きていないかなどを定期的な検査で確認するため、投与できるのは一部の医療機関に限られている。 (太田原奈都乃、asahi = 2-27-24) 前 報 (7-20-23) ウエルシアとツルハが統合検討 2 兆円規模のドラッグストア誕生か ドラッグストア首位のウエルシアホールディングス(HD・東京都)と 2 位のツルハ HD (札幌市)が経営統合に向けて調整に入ったことがわかった。 関係者が 24 日、明らかにした。 実現すれば、ウエルシア HD の親会社であるイオンが主導する形で、売上高 2 兆円規模の巨大連合が誕生することになる。 イオンはツルハ株を 13.59% 保有しており、さらにツルハ株を 13% 程度保有する投資ファンドのオアシス・マネジメントから株を取得する方向で最終調整している。 株取得後の経営統合についての具体策についても検討している。 売上高 1 兆 1,442 億円(23 年 2 月期)のウエルシア HD と、9,700 億円(23 年 5 月期)のツルハ HD の統合が実現すれば、2 兆円を超える巨大連合となる。 関係者によると統合後は、廃業が増えている調剤薬局のサポートなど医療分野の課題解決にも取り組む方針だという。 イオンとツルハ HD は 1995 年から業務資本提携しており、もともと結びつきは深い。 ツルハ HD はイオンと資本関係のある全国のドラッグストア十数社でつくる連合体「ハピコム」のメンバーで、プライベートブランド商品の開発や薬剤師、登録販売者の教育などで協力もしている。 (asahi = 2-24-24) 「病院運営の適正欠く」徳洲会へ異例の命令 偶然の発見が体質暴いた 「病院の運営が著しく適正を欠く。」 神戸徳洲会病院(神戸市垂水区)を運営する医療法人徳洲会に対し、神戸市はこう指摘して異例の改善命令に踏み切った。 患者が相次いで死亡しながら安全管理の不備が続いたうえ、院長が市の調査に「問題ない」と取り繕っていたことも判明。 隠蔽と受け止められかねない体質が浮き彫りになった。 市によると、徳洲会に対して 20 日に出された改善命令は、@ 患者の安全を最優先に考えた医療安全管理体制の実現のために必要な措置を抜本的に講じる、A 医療事故などが起きた場合の対策を実施する、B カルテの未記載を防止する対策を講じる、などの内容。 市は 3 月 5 日までに改善措置計画書の提出を求め、従わない場合は業務停止を命じることができる。 医療法に基づく改善命令は兵庫県内では初めてという。 問題の一つが、市が「偶然」発見した、昨年 9 月の死亡事例だ。 新型コロナで入院した 70 代患者が糖尿病であることを主治医の院長が見落とし、インスリン投与などの治療をしなかった。 死亡当日、極度の高血糖であることがわかったが、主治医へ伝わるまで時間がかかったという。 病院側は、遺族に肺炎が死因だと説明。 糖尿病の治療が中断されていたことは伝えていなかった。 病院では昨年 6 月ごろ、カテーテル治療を受けた複数の患者が死亡していたことが表面化。 市は 8 月に検証の遅れなどを行政指導した。 病院から是正計画書が提出され、市は改善状況をみるため 11 月 6 日に立ち入り検査し、資料を確認するなかで、9 月の死亡事例をたまたま見つけた。 これに対し院長は市に「対応を終了し、問題ない事例」と説明したという。 実際には、対応を検証する院内の医療安全調査委員会を 1 度開いて「さらなる調査が必要」となったのに、その後調査はされていなかった。 さらに病院は、11 月 15 日にあった次の立ち入りまでの間に、遺族へ連絡して「糖尿病の血糖値コントロールができなかったことが死亡につながった可能性がある」とこれまでの説明を翻した。 医療安全調査委員会も再開させたという。 市に「問題ない事例」と説明した点について、市の担当者は「隠そうとしたと捉えられても仕方ないのではないか」とみる。 病院は当時の対応について、取材に「是正計画書通りに対応を進められていなかった。 市の指導を受け、病院として家族への説明をきちんとして調査も進めよう、となった」と話した。 20 日の会見で市は、これ以外にも二つの死亡事例を明らかにした。 昨年 10 月、吐血のような症状の出た 80 代の入院患者に気管支鏡検査を試みた後、呼吸が悪化し、数時間後に死亡した。 院内で検証の必要性が指摘されたが、検証しなかった。 今年 1 月には、回復の望めない 90 代の入院患者に続けていた薬剤の注入が途絶え、まもなく死亡した。 職員間の連携が不十分だったという。 昨年 9 - 10 月の他の死亡事例ではカルテの未記載も複数見つかった。 市は、カテーテル治療の件で行政指導を受けている最中にもかかわらず、繰り返し安全管理体制に重大な不備を招いたことを重視。 「同院の運営が著しく適正を欠くものと認められる」との判断に至った。 一方で市は、現在は徳洲会の理事が病院に常駐し、調査や市への報告など、改善が進められていると聞いている、という。 病院は取材に「(改善命令を)真摯に受け止め、対応していく」としている。 (熊谷姿慧、asahi = 2-23-24) 致死率ほぼ 100% 「アフリカ豚熱」 アジアの玄関口・福岡はピリピリムード
記事コピー (9-9-18 〜 2-23-24) 小児科「悲願」のワクチン RS ウイルス、妊婦に接種し赤ちゃん守る 乳幼児に肺炎を引き起こす RS ウイルスのワクチンが 18 日、承認された。 接種が広がれば、国内で年間数万人と推計される、入院する子どもが減ると期待される。 妊婦に接種し、生まれてくる赤ちゃんへの発症や重症化を防ぐ珍しいタイプで、専門家は「病気の特徴やワクチンの効果、副反応への理解促進が大切」と指摘する。 RS ウイルスはありふれたかぜのウイルスで、せきやくしゃみのしぶきを通して感染する。 2 歳までにほぼすべての子どもが感染。 最初に感染したときに重症化しやすく、乳幼児は気管支炎や肺炎になりやすい。 2 回目以降は軽くなり、大人は鼻かぜですむことが多い。 国内では、2 歳未満の子どものうち、年間約 12 万 - 14 万人が診断され、その 4 分の 1 ほどが入院すると推定されている。 治療薬はなく、酸素や輸液の投与といった対症療法しかない。 RS ウイルスに詳しい楠田聡・新生児臨床研究ネットワーク理事長は「呼吸が苦しくなるので、子どもが食べられない、ミルクが飲めないと病院にくるケースが多い。 人工呼吸器が必要になることもある。 打つ手が少なく、医師にとっても、やっかいな病気。」と話す。 心臓などに持病がある場合や、早産で生まれた子は重症化しやすい。 こうしたリスクの高い子どもには予防のための抗体薬があるが、月 1 回の注射を繰り返す必要がある。 今回のワクチンは米ファイザー社製で、妊娠 24 - 36 週の妊婦に 1 回接種する。 接種後にできた抗体が母体から胎児に移行することで、生まれてきた子どもの発症や重症化を防ぐ。 治験では、日本や米国など 18 カ国の妊婦 7 千人超を対象に、ワクチン接種したグループと、有効成分が含まれていない偽薬を接種した使ったグループに分け、生まれてきた赤ちゃんの予防効果をみた。 その結果、発症を予防する効果は生後 3 カ月以内で 57.1% (重症を予防する効果は 81.8%)、半年以内で 51.3% (同 69.4%)だった。 ささやかれていた「できないのでは …」 RS ウイルスワクチンの開発の歴史は長い。 1960 年代に初めてワクチンがつくられたが、臨床試験で接種しなかった子どもよりも接種したほうが症状が悪化し、死者も出た。 その後も製薬会社が開発をめざしたが、効果の高いワクチンはつくれなかった。 2013 年、米国立衛生研究所の研究で、RS ウイルスの表面にあり、人の細胞に感染するのに重要な役割を果たすたんぱくの構造が初めてわかった。 ウイルスのどの部分に対する抗体をつくれば感染を防げるかが理論的にわかり、ワクチン開発が進んだ。 米国では昨年 8 月、ひと足早く今回のワクチンが承認された。 国内では英グラクソ・スミスクライン社の 60 歳以上向けのワクチンが昨年 9 月に承認されている。 「国内では亡くなる子どもは少ないが、医療体制が乏しいアフリカや東南アジアの国々では多い」と楠田さんは指摘する。 2015 年の推計によると、世界で 5 歳未満の合計 11 万 8,200 人が亡くなっている。 楠田さんは「『できないのでは』と言われていたので、小児科にとっては悲願のワクチン。 世界的にみると、かなりインパクトが大きい。」と指摘。 「日本でも重症化して入院が必要になる子は少なくなく、本人や家族の負担は大きい。 ワクチンが広がれば小児科医療の負担軽減にもつながる。 できるだけ多くの人が接種してもらえたら。」と話す。 産婦人科で接種 「妊婦に丁寧な説明を」 今回のワクチンは、妊婦に接種しておなかの赤ちゃんに抗体を移すという国内では珍しいタイプだ。 安全性はどうなのか。 治験の結果では、妊婦への副反応は、接種した接種部位の痛みや頭痛、筋肉痛などがみられた。 赤ちゃんへの影響は、ワクチンをうったグループで黄疸 7.2% (偽薬をうったグループ 6.7%)、2,500 グラム以下の低出生体重 5.1% (同 4.4%)、37 週未満の早産 5.7% (同 4.7%)とやや多い傾向があったが、統計的に意味のある差はなかった。 ワクチンに詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は「今のところ、このワクチンによって母親の状態が特別悪くなることはなく、おなかの赤ちゃんに与える影響はないとされている」と説明する。 産婦人科で接種できるようになるが、岡部さんは「妊婦さんたちが、RS ウイルスの特徴やワクチン接種の必要性、副反応などについて十分理解したうえでうつことが大切。 接種すべきか冷静に判断するためにも、有効性と安全性に関する情報の周知と丁寧な説明が求められる。」と話す。 日本では妊婦へのワクチン接種はあまり広がっていなかったが、2009 年の新型インフルエンザ、20 年からの新型コロナウイルスの流行で、ワクチン接種の機会も増えてきている。 岡部さんは産婦人科医が RS ウイルスの患者を診る経験はあまりないとし、「妊婦やその家族だけでなく、医療者側もこの病気やワクチンについて理解を深めることが重要だ」と指摘する。 (土肥修一、asahi = 1-18-24) 避難所でインフル・コロナ・ノロの流行懸念 いずれも手洗いが重要 能登半島地震では、被災した多くの人たちが避難所での生活を強いられている。 道路が寸断され、医療物資が不足する被災地では、感染症で体調が悪化しても必要な治療を受けられない恐れがある。 日本環境感染学会の災害時感染制御支援チームの菅原えりさ東京医療保健大教授によると、避難所で特にいま感染拡大が懸念されるのは、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症の呼吸器感染症と、ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎だ。 いずれも手洗いが最も重要な対策になる。 食事や調理の前、トイレ使用後の手洗いは欠かせない。 流水とせっけんが望ましいが、アルコール消毒薬で代用してもいい。 手の甲や指の間で洗い残しが生じやすいので注意する。 呼吸器感染症はせきやくしゃみのしぶきから感染が広がる。マスクをきちんと着用し、マスクがなければ、せきやくしゃみが出る際にティッシュや二の腕で口と鼻を覆ってしぶきが飛び散らないようにする。 ノロウイルスなどの感染性胃腸炎は、嘔吐物や排泄物から広がる。 吐いたものをかたづける人は、使い捨てのマスクや手袋を着用し、ペーパータオルなどで静かに拭き取り、塩素消毒して水拭きする。 トイレで汚れた履物によって感染が広がらないよう、居住区域は土足厳禁を徹底する。 感染を広げないためにも、「体調が悪くなったら必ず避難所の管理者に申し出ることが大切だ」と菅原さんは呼びかける。 「避難所ではマスクを着けていない人もいるが、せきが出たら必ず着けて欲しい。」 塩素の消毒薬は「ハイター」や「ブリーチ」といった塩素系漂白剤などを希釈してつくことができる。 嘔吐物や排泄物の処理では濃度が約 0.1% のものを使う。 原液の濃度が 5% なら、500 ミリリットルのペットボトル 1 本の水に、原液 10 ミリリットル(ペットボトルのキャップ 2 杯)が目安だ。 調理器具やトイレのドアノブ、便座などの消毒には濃度約 0.02% のものを使う。 原液の濃度が 5% なら、2 リットルのペットボトル 1 本の水に原液 10 ミリリットルが目安だ。 時間がたつと効果が落ちるため、なるべく早く使い切る。 誤飲しないよう容器に名前や濃度、つくった日を書いておく。 東京都のウェブサイト で作り方を紹介している。 (阿部彰芳 = 1-8-23) ゲノム編集治療、いよいよ実用化 ノーベル賞技術を駆使、日本では … 狙った遺伝子を改変する「ゲノム編集」技術を応用した世界初の遺伝子治療が、英国と米国で相次いで承認された。 対象は血液の遺伝性疾患で、1 度の治療で生涯効果が続くとされている。 一方、対象となる病気のひとつは、世界的にはアフリカ大陸のサハラ砂漠以南に患者が多いとされるが、米国では患者 1 人あたり約 3 億円と高額になっていて、必要とされる患者に届けられるか課題となっている。 この遺伝子治療は、「CASGEVY (一般名 = Exa-cel)」。 米企業「バーテックス・ファーマシューティカルズ」とスイスの「クリスパー・セラピューティクス」が共同開発した。 英国では 11 月 16 日、米国では 12 月 8 日、それぞれの規制当局から承認された。 画期的なのは、2020 年にノーベル化学賞が贈られた「CRISPR/Cas9」というゲノム編集の技術を使っていることだ。 この技術は従来よりも簡単に、特定の遺伝子の機能を壊したり、逆に、遺伝子を修復して機能するようにしたりできる。 遺伝子が原因の病気に対する、根本的な治療法につながることが期待されていた。 CASGEVY は、世界で初めてこの技術を医療に応用したものとなった。 英国で承認された対象は、「鎌状赤血球症」と「βサラセミア」の二つの病気だ。 どちらも、赤血球に含まれて酸素を運ぶたんぱく質「ヘモグロビン」に異常が出る。 重度の貧血や、手足などの強い痛み、臓器不全などの症状が出る。 それぞれアフリカなどや、地中海周辺や中東、東南アジアなどにルーツを持つ人に多いとされる。 米国では鎌状赤血球症について承認され、今後、βサラセミアについても承認の可否が判断されることになる。 治療の流れはまず、赤血球をつくる「造血幹細胞」を患者の骨髄からとり出す。 次に、体外でゲノム編集をほどこして、特定の遺伝子がはたらかないようにする。 すると、患者の造血幹細胞が特殊な赤血球をつくれるようになる。 これを注射で体内に戻す。 臨床試験では、鎌状赤血球症の患者 29 人のうち 28 人が、治療後少なくとも 1 年、重度の痛みから解放された。 βサラセミアでは、患者 42 人のうち、39 人が治療後少なくとも 1 年、輸血が必要なくなった。 これまで根治のための唯一の方法は、健康な他人の造血幹細胞を移植する「骨髄移植」だった。 しかし、適合するドナーが見つかりにくいことや、合併症が起こりうることが問題だった。 ゲノム編集されるのは造血幹細胞だけで、精子や卵子の遺伝子は改変されない。 そのため、ゲノム編集の影響が次世代に受け継がれることはないとされている。 遺伝子治療の「最初のゴール」 造血幹細胞の遺伝子治療が専門の、米国立心肺血液研究所 (NHLBI) の内田直也医師によると、治療対象の二つの病気は遺伝性疾患のなかでは患者数が多い。 研究の歴史も長く、「この病気に対する治療法を開発することが、遺伝子治療の『最初のゴール』と考えられてきた」と話す。 米国では今回、ゲノム編集技術を使わない、鎌状赤血球症に対する別の遺伝子治療も承認された。 いずれも、患者自身の造血幹細胞を使うため、治療効果は生涯続くと考えられているという。 新しい治療法ゆえに注意が必要なことはある。 とくに、CRISPR/Cas9 を使ったゲノム編集では、目的と違う遺伝子を誤って改変してしまう「オフタゲット作用」が、理論上の懸念として挙げられる。 目的外の遺伝子編集によるがん化など予想外の副作用が起きていないか、注意深くみていく必要がある。 臨床試験では懸念はみられず、バーテックス社は米国で、治療後 15 年間の患者の追跡調査をすることにしている。 10 月に開かれた米国の専門家委員会では議論の末、「治療を差し控える理由は見当たらない」と評価されていた。 必要な患者に届けられるか? 費用は高額だ。 米国では患者 1 人あたり 200 万ドル(約 3 億円)ほどになるとされ、どれほどの患者が治療を受けられるのか注目される。 鎌状赤血球症の患者が多いのはアフリカのサハラ砂漠以南の地域とされ、所得の低い国も多い。 世界的に、本当に必要な患者へこの治療を届けられるのかは今後の課題だという。 内田さんは「いかにコストを抑えられるかが、遺伝子治療の研究の一つのポイントになっていく」とみる。 鎌状赤血球症やβサラセミアは、日本に患者が少なく、新たな治療の登場による国内への影響はそれほど大きくないと考えられる。 ただ、ゲノム編集を治療に応用しようという動きは日本にもある。 まだ人に試す段階ではないものの、目の病気やがんなどの分野で、研究開発が進められている。 遺伝子治療に詳しい自治医科大の大森司教授は「今回承認されたのは、目的の遺伝子をはたらかなくしたうえで体内に戻し、治療効果を得るものだ。 今後は、体内で直接作用するものや、病気の原因の遺伝子を『修復』して正常に機能させるようなものなども、実用化が進むだろう。 これまで治せなかった難病にも治療の道が開かれる可能性がある」と話した。 (野口憲太、asahi = 12-30-23) 大麻の類似成分含む 38 製品、製造・販売を全国一律禁止 健康被害も 「大麻グミ」などによる健康被害が相次いだ問題で、厚生労働省は 21 日、規制対象外の大麻類似成分を含む 38 製品を危険ドラッグとして、インターネットを含め全国一律で製造や販売、広告を禁止したと発表した。 12 月から大麻に似た有害成分を含む製品の販売などが禁止されたが、別の類似成分が出回っていた。 同日、規制対象外の 5 成分を含む電子たばこのリキッドや、グミ、クッキーなど 38 製品を医薬品医療機器法(薬機法)の広域規制の対象として官報に告示した。 広域規制の適用は 2015 年 3 月以来。 厚労省は大麻グミに含まれていた有害成分「ヘキサヒドロカンナビヘキソール (HHCH)」を薬機法の指定薬物に追加、12 月からこの成分を含む製品の製造・販売を禁止した。 だが、規制対象外の「ヘキサヒドロカンナビフォロール (HHCP)」や「テトラヒドロカンナビフォロールアセテート (THCPO)」を含む製品が出回り、厚労省によると、使用後に体調を不良を訴えた人が 11 月だけで全国で 6 人確認された。 リキッドを使い救急搬送されたり、クッキーを食べ意識がもうろうとなったりしたという。 厚労省は 12 月 6 - 8 日に、これらの製品を販売した疑いがある店舗や事業所など 40 カ所に立ち入り検査を実施。 うち 25 カ所にあった 140 製品の販売停止を命令した。 検査の結果、HHCP やTHCPO など規制対象外の 5 成分が検出されたため、広域規制の対象とした。 厚労省は年明け以降、この 5 成分を含む HHCH に類似した有害成分を指定薬物として包括規制することを検討している。 (藤谷和広、後藤一也、asahi = 12-21-23) 東大病院の研修医 2 人、病気装って糖尿病薬を入手 「やせ薬」と話題 東京大学医学部付属病院で、臨床研修医 2 人が病気でもないのに医師の立場を利用して処方箋を発行し、薬を入手していたことが、東大病院などへの取材でわかった。 2 人は、処方箋発行の電子カルテの痕跡を削除していた。 この薬はインターネット上で「やせ薬」として紹介され、糖尿病以外での使用について注意が呼びかけられている。 医師法では、医師国家試験に合格した後、診療行為をするために 2 年以上の病院での研修が義務づけられている。 その研修中の医師を臨床研修医という。 東大病院によると、今年 5 月ごろ、臨床研修医 2 人が病気でもないのに互いに依頼する形で糖尿病薬の処方箋を発行していたことが発覚したという。 薬は 2 型糖尿病患者向けの治療薬「GLP-1 受容体作動薬」。 食欲を抑える効果があるとされる。 研修医は、その処方箋を使い院外薬局で薬を入手。 さらに、電子カルテ上で処方箋を発行した痕跡を削除していた。 (asahi = 12-15-23) ◇ ◇ ◇ 肥満症治療薬「ウゴービ」、22 日から保険適用に 厚労省 製造販売が 3 月に承認された肥満症の治療薬「ウゴービ(ノボノルディスクファーマ社)」について、厚生労働省は 15 日、公的医療保険の適用対象にすると決めた。 22 日から適用される。 15 日の中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)で了承された。 公定価格の薬価は、量によって 5 段階が設定され、1 回あたり 1,876 円、3,201 円、5,912 円、7,903 円、1 万 740 円となった。 対象は高血圧、脂質異常症、2 型糖尿病のいずれかの病気があり、肥満度を測る指標の BMI が 35 以上か、27 以上で肥満に関する健康障害が二つ以上あるといった条件を満たす患者。 週 1 回注射する。 医療機関側にも一定の要件が設けられた。 国内では、同じ成分の薬が糖尿病治療薬として保険適用となっていたが、肥満症治療には適用されていなかった。 ウゴービは先に米国で肥満症治療に使われ始めたが、美容目的の利用も拡大。 同種の薬は世界的な供給不足となっており、国内でも糖尿病治療に必要な人に行き渡らなくなるおそれが懸念されている。 (吉備彩日、asahi = 11-15-23) 前 報 (6-22-23) エムポックス患者が死亡 国内初 埼玉県の 30 代男性 厚生労働省は 13 日、ウイルス性の感染症「エムポックス」に感染した埼玉県の 30 代男性が死亡したと発表した。 国内で患者の死亡が確認されたのは初めて。 エムポックスは主に、感染した人や動物の体液や血液に触れた場合などに感染する。 6 - 13 日の潜伏期間の後、発熱や頭痛などの症状が出て、発熱から 1 - 3 日後に発疹が出る。 多くは自然に治るが、小児や妊婦、免疫不全者で重症となる場合がある。 厚労省によると、死亡した男性は、HIV (ヒト免疫不全ウイルス)感染による免疫不全の状態だったという。 9 月にエムポックスと診断され、11 月に死亡した。 海外渡航歴はなかった。 エムポックスは、アフリカ中部や西部で時々流行する感染症だったが、昨年 5 月以降、欧米を中心に感染が拡大。 流行はピークを越えたが、世界的に感染者の報告が続いている。 厚労省によると、国内では昨年 7 月に初めての患者が報告された。 今年 12 月 3 日時点で報告数は 227 人。 厚労省は 5 月、世界保健機関 (WHO) の変更に伴い、感染症の名称を「サル痘」からエムポックスに変更した。 (神宮司実玲、asahi = 12-13-23) 前立腺肥大症、体への負担少ない手術登場 高齢、持病があっても可能 水蒸気を使った前立腺肥大症の手術 前立腺肥大症は、男性に起きる病気。 加齢とともに進行し、患者は 60 代の 6%、70 代の 12% にいるとする報告もある。 前立腺は男性にだけにある臓器で、膀胱の下で尿道を取り囲んでいる。その前立腺が大きくなって尿道を圧迫し、尿が出にくくなったり、頻尿になったりする排尿障害を起こすのが前立腺肥大症だ。 原因はホルモンバランスの崩れなどが指摘されているが、はっきりとはわかっていない。 診察では、尿の勢いや排尿後に膀胱に残る尿の量、前立腺の大きさなどを測る。 1 カ月のうちに、尿が残っている感じや、排尿後 2 時間以内に再びしなければならなかったことなどが起こる頻度についてそれぞれ 0 - 5 点で点数化し、合計で重症度を調べる。 治療は、食事や運動などの行動療法のほか、尿道を広げる薬や前立腺を小さくする薬を使う。 患者の半数ほどが過活動膀胱にもなっているとされ、その場合は膀胱をゆるませて尿をためられるようにする薬や膀胱の収縮を抑える薬も使われる。 薬で改善しないときには手術が検討される。 電気メスやレーザーで前立腺を削ったり、くりぬいたりするこれまでの手術に加え、昨年、医療用の糸などで前立腺を縛り上げて尿道を広げる手術と、水蒸気の熱で前立腺の一部を壊死させる二つの手術が公的医療保険の適用となった。 いずれも内視鏡を使った手術で時間は 10 - 15 分ほどで済む。 出血も少ないため、体への負担が小さい。 脳梗)などの持病がある人や、高齢で従来の手術をするにはリスクの高かった患者が対象となる。 日大板橋病院泌尿器科の大日方大亮(おびなただいすけ)医師は「これまでは薬で様子をみるしかなかった人たちにも治療の選択肢が広がった」と話す。 頻尿がひどくなると、外出先にトイレはあるか、漏らしてしまわないかと心配し、外出を控えて体力が落ちる恐れもある。 同病院長の高橋悟(たかはしさとる)教授(泌尿器科)は「排尿のトラブルによって生活に支障がある場合は、年のせいとあきらめず、泌尿器科を受診してほしい」と語る。 (asahi = 11-30-23) |