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致死率ほぼ 100% 「アフリカ豚熱」 アジアの玄関口・福岡はピリピリムード
… 侵入許すと日本の畜産界に壊滅的な打撃も

現在、国内への侵入リスクが高まっているとして農林水産省が警戒を強めるアフリカ豚熱 (ASF)。 アフリカ豚熱は、ブタやイノシシが感染するウイルス性の伝染病だ。 ヒトに感染することはないが、有効な治療法やワクチンはなく、ブタなどの致死率は、ほぼ 100%。 感染力が非常に強く、冷凍肉の中では 1,000 日以上経っても残ることがあるといわれている。

日本への侵入リスク高まる

アフリカ豚熱はこれまでに日本での発生例はない。 しかし近年、日本と台湾を除く、アジアのほぼ全域で感染が相次いでいる。 坂本農水相は 2 日に会見を行い、「アフリカ豚熱の侵入リスクがかつてないほど高まっている。 一度、侵入を許すと我が国の畜産業に壊滅的な被害を生ずることになる。」と警鐘を鳴らした。 2019 年にアフリカ豚熱が確認された韓国。 以降、韓国内での感染は広がり続け、2023 年 12 月には、南部の都市、釜山で野生のイノシシから感染が確認された。

また 2024 年に入ってからは、福岡との定期航路もある釜山港近くでも感染が確認されている。 致死率ほぼ 100% のアフリカ豚熱は今、日本への侵入リスクがかつてないほど高まっているのだ。 福岡市博多区の博多港国際ターミナルでは、1 月下旬以降、靴底用の消毒マットの濃度を高めるなど水際対策を強化している。 取材したこの日は、検疫探知犬も出動し、釜山から到着した乗客の手荷物に肉製品が含まれていないか調べていた。

「違法畜産物を持ち込ませない。 あとは靴底の消毒。 ここで防がなければならないので、緊張感を持って対応している。(動物検疫所博多出張所・田上勝則所長)」

「豚舎に入るのが怖かった」

アフリカ豚熱の侵入リスクが高まる中、ブランド豚肉の生産地として知られる福岡の養豚業者は危機感を募らせている。 「噴水式の消毒は、外からの病気を絶対に持ち込まないため」と話すのは、糸島市の養豚場「井上ピッグファーム」の井上博幸さん。 車両が敷地に入る際は、必ず噴水式の消毒を行っている。 「井上ピッグファーム」では、安全な餌や飼育方法にこだわりながら約 8,000 頭の豚を育てているが、2023 年に隣の佐賀・唐津市で別の感染症が発生した際には、「糸島にも感染が広がらないか」と心配する日々が続いたという。

「見えてればいいがウイルスは見えない。 正直な話、唐津で出た時は、毎日、豚舎に入るのが怖かった。 ドアを開けて入ってブタを見ていく時に死んでないか、死んでないかと。(井上ピッグファーム・井上博幸さん)」

九州の養豚場 壊滅のおそれも

アフリカ豚熱は、2023 年の感染症よりもさらに強い感染力を持っている。 ワクチンもなく、一度、侵入してしまうと影響は計り知れず、井上さんは九州の養豚業そのものが壊滅してしまうと危惧している。

「福岡は玄関、福岡から入ってきたら宮崎、鹿児島。 養豚関係者は、福岡の数百倍いる。 その方に迷惑かけられない。 だから福岡が、水際対策を一番やってほしい。 (井上ピッグファーム・井上博幸さん)」

コロナ禍が明けて再び増えつつある海外との人の往来。 アフリカ豚熱は養豚業界だけでなく私たちの食卓にも大きく関わる問題だけに、改めてウイルス侵入防止の意識を高める必要がありそうだ。 (テレビ西日本 = 2-23-24)



豚熱対策に九州 7 県でワクチン接種へ 佐賀・唐津で殺処分が本格化

佐賀県唐津市の 2 カ所の養豚場で、家畜伝染病の豚熱が発生したことを受け、飼育されている 1 万頭超の豚の殺処分が本格化した。 30 日夜に始まった防疫作業は、県の災害派遣要請を受けた陸上自衛隊員も 31 日夜から加わり、24 時間態勢で行われている。 農林水産省は 1 日、専門家らによる対策委員会を開いた。 九州 7 県をワクチン接種推奨地域とし、リスクが高く飼養頭数の多い農場からワクチン接種を進めるよう各県に求める。

九州の豚の生産量は全国の 3 割を占め、飼育数は計約 290 万頭になる。 出席者からは「今回の佐賀の事例は、感染から発生確認までに長時間が経過しているとみられ、その間に他県にも広がっている恐れが高い」などと強い警戒感が示された。 (野上隆生、伊藤隆太郎、asahi = 9-1-23)

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佐賀県唐津市で "豚熱疑い" 福岡でも警戒

佐賀県唐津市の養豚場で複数の豚が死んでいるのが見つかり、豚やイノシシの感染症、豚熱の疑いがあると確認されました。 きっかけは 29 日午前、唐津市東山の養豚農家から入った、保健所への 1 本の通報です。 「子豚 12 頭のうち 6 頭が死に、ほか 6 頭も元気がない。」 佐賀県によりますと、その後の立ち入り検査で、豚熱の疑いがあることが確認されました。 検体は東京で検査中で、午後 7 時ごろに結果が判明する見通しです。 感染が確認された場合は、養豚場で飼育されている約 450 頭の殺処分を 30 日夜にも始める予定です。

農林水産省によりますと、豚熱は人に感染することはなく、感染した豚肉が市場に出回ることもありません。 また、仮に感染した肉を食べても、人体に影響はないと、呼びかけています。 佐賀県での発生を受け、福岡県でも午後、対策会議が開かれました。 現時点で県内 42 の養豚場の合わせて約 8 万頭の豚で豚熱が疑われる例は確認されていないということです。 福岡県は関係機関に対し、症状などが出た場合は、保健所へ速やかに連絡してほしいと呼びかけています。 (福岡・佐賀 KBC = 8-30-23)



宮城県の養豚場で豚熱、1 万 1,900 頭を殺処分へ 東北で 2 例目

宮城県は 12 日、大河原町の養豚場で、豚熱 (CSF) が発生したと発表した。 県は家畜伝染病予防法に基づき、この養豚場で飼育されている豚と、直近 10 日以内に出荷された豚計 1 万 1,900 頭を殺処分することを決め、同日夜から作業を始めた。 2018 年、国内では 26 年ぶりに CSF が確認されて以来、東北地方での感染確認は山形県に続いて 2 例目。

宮城県によると 11 日午前、養豚場から大河原家畜保健衛生所に「豚に異状がある」と通報があった。 生後約 3 カ月の子豚 7 頭に発育不良や血液循環不良による皮膚の青黒い変色(チアノーゼ)などの症状があり、うち 1 頭は死亡していた。 3 頭を検体として仙台家畜保健衛生所が PCR 検査を実施したところ、12 日未明に陽性と判明。 検体を東京都小平市にある国の専門研究機関に送り、農林水産省が同日夕、感染を確認した。

県内で飼育されている豚約 17 万頭はワクチン接種を受けており、今回の感染による移動・搬出制限は設けないという。 今回感染が判明した 3 頭も、11 月に接種を終えていた。 県によると、生後まもない子豚は、接種の時期によっては効き目が持続せず、ウイルスに対する免疫が低くなる可能性があるという。 遠藤信哉副知事は「発生を重く受け止め、速やかに処理を進めたい」と話した。

12 日の県の対策本部で村井嘉浩知事は「市場に出回る豚は全て安全ですので、安心していただきたい」と述べた。 CSF は豚やイノシシに特有の病気で人には感染しない。 また、感染した豚の肉を食べても人には感染しないという。 東北農政局は同日、消費者や生産者向けの相談窓口を設けた。 平日午前 9 時から午後 6 時まで。 電話 022・221・6093。 (近藤咲子、asahi = 12-12-21)


滋賀で豚 2 頭、豚熱で死ぬ 1,400 頭殺処分へ 県で 2019 年以来

滋賀県は 6 日、同県近江八幡市の養豚場で飼育していた豚から豚熱 (CSF) が確認されたと発表した。 県はこの養豚場の豚約 1,400 頭を殺処分する。 県によると、5 日午前 11 時 15 分ごろ、養豚場から「子豚 2 頭が死に、他の豚もやせ、元気がない」と県家畜保健衛生所に連絡があった。 県がこの 2 頭と周囲にいた 10 頭の計 12 頭を検査すると、死亡した 2 頭を含む 11 頭が陽性だった。 国の検査で豚熱と判定された。

殺処分は県職員を動員し、10 日までに終える予定。 豚は養豚場の隣接地に埋める。 滋賀県内の養豚場での豚熱発生は 2019 年 2 月に続いて 2 回目。 (奥平真也、asahi = 10-6-21)


相模原の養豚場で豚熱確認 4,300 頭を殺処分へ

神奈川県は 8 日、相模原市の養豚場で飼育されていた子豚 2 頭で豚熱 (CSF) が確認されたと発表した。 2 頭とも生後 50 - 60 日程度で、豚熱のワクチン接種前だったという。 同じ養豚場で管理されている約 4,300 頭を 8 日夜から殺処分する。 豚熱が 2018 年に岐阜県で確認された後、県内では豚全頭にワクチン接種を行ってきた。 県によると、18 年以降に県内の養豚場で豚熱が確認されたのは初めて。

7 日にワクチン接種のため家畜防疫員が養豚場を訪れたところ、養豚場主から豚に異常があるという申し出があり、子豚の死体と生体からそれぞれ陽性反応があったという。 県は 8 日午後、会議を開き今後の対応を議論した。 黒岩祐治知事は会議の中で「豚熱は人に感染することはなく、感染した豚肉が市場に出回ることはない」として人体への影響が無いと話した。 (asahi = 7-9-21)


栃木の養豚場で豚熱 国内で過去最多の 3 万 7 千頭殺処分

栃木県那須塩原市内の二つの養豚場で豚熱 (CFS) が見つかった。 2 養豚場を合わせた殺処分の対象は約 3 万 7 千頭に上り、国内で過去最多になる。 県内の飼育数の 1 割弱に当たり、県は防疫措置のため、24 億円の経費を専決処分した。 県は 17 日夜、緊急会見を開いた。 豚熱の警戒を続けてきた県幹部の表情にも緊張感がにじんだ。 殺処分は 1 養豚場が約 2 万 2 千頭、もう 1 養豚場が約 1 万 5 千頭になる。 2018 年に 26 年ぶりに岐阜県で国内感染が確認されて以来、1 養豚場の処分数としても最多。

県によると、子豚の死亡が増えているという報告が 2 養豚場から入ったのは 16 日。 県が計 29 頭の子豚を検査したところ、いずれも陽性の疑いが見つかり、17 日に国の研究機関で感染が確認された。 県によると、生まれたばかりの子豚はワクチンを打った親の免疫があるため、しばらくはワクチンを打つ必要がない。 県は今回、陽性になった子豚はワクチンをまだ打っていなかったり、打っても効果があらわれる前だったりした可能性があると見ている。 殺処分は 17 日夜から始まった。埋却処分作業まで含めて 27 日間ほどかかるとみている。 半径 10 キロ圏内にはほかに計 13 の養豚場があるが、異常の報告は出ていないという。

那須塩原市周辺では、これまでに 7 頭の野生イノシシから、豚熱が確認されていた。 県は野生イノシシが感染経路になった可能性があると見ている。 ワクチンを打っても、すべての豚に抗体ができるわけではなく、現状では完璧に防ぐことは難しいという。 福田富一知事は「豚熱は豚とイノシシの病気で、人には感染しない。 感染した豚肉も流通しない。 仮に食べたとしても人への影響はないので、国や県が発信する情報に基づいて、冷静に対応してほしい。」と呼びかけた。

那須塩原市も 17 日午後 6 時、豚熱対策本部を設置したと発表した。 市職員を配置して 24 時間態勢で対応する。 市民向けには、豚熱が人に感染することがなく、仮に食べても人体に影響はないことの情報提供をしていく。 (津布楽洋一、平賀拓史、小野智美、asahi = 4-18-21)


三重の養豚場で豚熱の疑い ワクチン摂取前の 8 頭死亡

三重県は 14 日、津市内の養豚場で飼われていた豚で豚熱 (CSF) が疑われる事例が確認されたと発表した。 国の検査機関に検査を依頼し、同日中に結果が確定する見通し。 感染が確定されれば、すぐに防疫作業を実施するという。

県によると、13 日に養豚場から県中央家畜保健衛生所に、同じ豚舎で飼育されていたワクチン接種前の子豚 8 頭の死亡が報告された。 8 頭のうち、県の検査を実施した 4 頭がいずれも陽性だった。 このほか、生存している子豚 3 頭からも陽性が確認され、陽性だった 7 頭分の検体を国に送っているという。 この養豚場の 10 キロ圏内では、昨年以降、野生イノシシの感染が断続的に確認されていた。県は、小動物などを通じて感染が広がったとみている。 国の検査で感染が確定した場合、この養豚場で飼育されている約 1 万頭の豚が殺処分になる可能性があるという。

県内では、昨年 12 月に伊賀市内の養豚場で豚熱が確認され、県がワクチン接種などの感染対策を進めていた。 (大滝哲彰、asahi = 4-14-21)



山形の養豚場で豚熱、1,300 頭殺処分へ 国内 10 県目

農林水産省は 25 日、山形県鶴岡市の養豚場で飼われていた豚で豚熱 (CFS) の感染が確認されたと発表した。 東北地方では福島県で野生のイノシシの感染が確認されていたが、養豚場での感染は初めて。 2018 年 9 月に 26 年ぶりに国内感染が確認されて以降、養豚場での発生は国内 10 県目。山形県は養豚場で飼育している約 1.300 頭を殺処分する。 養豚場から「死ぬ豚が増えた」と通報を受けた県が 24 日に遺伝子検査をしたところ陽性反応が出て、国の機関による精密検査で 25 日に感染が確定した。 (asahi = 12-25-20)


死んだ野生イノシシが豚熱 茨城県

茨城県は 27 日、取手市で死んだ野生イノシシ 1 頭が見つかり、家畜伝染病「豚熱 (CSF)」に感染していたことを確認したと発表した。 同県内で感染が確認されたのは初めて。 県畜産課によると、25 日午後、同市の利根川河川敷で発見され、遺伝子解析の結果、感染が判明した。 発見場所の半径 10 キロ以内には県内に養豚場はない。 県では 2 月から 5 月にかけ、県内の養豚場で飼育する約 31 万頭にワクチン接種を終えた。 その後生まれた豚などにも定期的に接種する。 (jiji = 6-27-20)


6 例目の豚熱発生 うるま市の養豚場 殺処分 1,039 頭

沖縄県は 25 日夜、うるま市の養豚場で県内 6 例目の豚熱 (CSF) 感染を確認したと発表した。 新たな感染場所は、今月 2 日に 5 例目が確認された沖縄市の養豚場から 3 キロ圏内にある。 農家への聞き取りでは 1,039 頭を飼育しているという。 県は 26 日から殺処分や埋却などの初期防疫措置を始める。

感染養豚場から 3 キロ以上 10 キロ圏内の搬出制限区域は、27 日にも解除の予定だったが、6 例目の確認により解除に向けた確認作業は振り出しに戻った。 県によると、3 キロ圏内で実施している清浄性確認検査で 24 日に疑いのある豚が見つかった。 精密検査をした結果、25 日夜になって疑似患畜と確定。 26 日午前 0 時に、玉城デニー知事を本部長とする県特定家畜伝染病防疫対策本部会議を県庁で緊急に開催した。 県はこれまでの発生農場との関連などについても調べている。 (琉球新報 = 2-26-20)

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豚熱感染再び確認 沖縄市で 5 例目 1,857 頭を殺処分へ

【東京】 農林水産省と沖縄県は 2 日、沖縄市の養豚農場で県内 5 例目となる豚熱(CSF、豚コレラ)の感染が確認されたと発表した。 1,857 頭が殺処分となる。 県内での発生確認は 1 月 15 日以来。 農場から豚が死亡しているとの通報を受け、検査していた。 農場は、これまで CSF が確認されていた、うるま市や沖縄市の農場の移動制限区域(半径 3 キロ)内にある。 発生拡大を受け、実施した検査では陰性だった。 農林水産省は、新たな発生を受け、再び疫学調査チームを現地に派遣する。 CSF は 1 月 15 日にうるま市で確認されたのを最後に、発生は収まっていた。 (沖縄タイムズ = 2-2-20)

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豚コレラ殺処分 6,683 頭 県全体の 3.2% 対象に  沖縄市でまた感染確認

沖縄県内で豚やイノシシの感染症、豚コレラ (CSF) の感染が発生している件で、県農林水産部は 11 日、うるま市での発生に関連して、沖縄市内の養豚場の豚から陽性反応が出たことを明らかにした。 隣接する養豚場と合わせて 1,897 頭が殺処分の対象となる。 沖縄市内での感染確認は 10 日に続いて 2 件目となった。 これで豚コレラ感染に関連して殺処分される豚は 6 養豚場で合計 6,683 頭となり、県全体の飼育数 20 万 6,828 頭(2018 年 12 月末現在)の 3.2% に上っている。

県内で 1986 年以来となる豚コレラの発生が確認されたうるま市の養豚場で飼育される豚 2,001 頭については、11 日までに殺処分と埋却などの初期防疫作業は 11 日に完了した。 一方で、10 日に感染が確認された沖縄市の農場では 2,785 頭の殺処分が始まったものの、埋却地が依然として確定せず、初動の防疫作業に支障を来している。 11 日に陽性を確認した沖縄市の養豚場は、8 日に 2 例目の感染が確認されたうるま市の養豚場と所有者が同じで、車両の行き来などがあったという。

うるま市での感染確認後、関連する養豚場も感染の疑いがあるとして、県は監視下において状況を調べていた。 9 日に沖縄市の養豚場から豚の異常について通報があり、検査で感染を確認した。 この養豚場に隣接する養豚場との間で道具の共同使用などがあったため、感染の疑いが強いとして二つの養豚場が殺処分の対象となった。 国と県は、人や物の行き来があるうるま市の養豚場と関連した感染と見なし、新たな発生事例としては計上していない。

県は 11 日午後 4 時から、対策本部会議を開いた。 玉城デニー知事は「豚やイノシシの病気であり、人に感染することはない」と冷静な対応を呼び掛けるとともに、豚コレラの感染拡大を防ぐワクチン接種については「周辺の養豚場の感染状況を確認した上で、農家の方々の意見も聞きながら検討する」と述べるにとどめた。 県は引き続きうるま市の発生場所から 10 キロ圏内で実施する家畜検査の状況を見ながら、ワクチン接種の是非を判断する。 11 日に豚コレラ感染が確認された二つの養豚場について県は 13 日までに殺処分を終えて、15 日までに埋却や豚舎の洗浄・消毒など防疫措置を完了する予定。 殺処分した死骸の埋却場所は、養豚場の敷地内になるとみられる。 (琉球新報 = 1-12-20)

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沖縄本島、全域消毒へ 豚コレラ感染拡大疑い
中部で 3 例目を確認中 殺処分豚の埋却続く

沖縄県うるま市の養豚場で飼育されていた豚が豚コレラ (CSF) に感染した問題で、新たに沖縄本島中部で感染が疑われる豚が見つかったことが 9 日、分かった。 複数の関係者が明らかにした。 感染が確認されれば、3 例目となる。 沖縄県は 10 日午前、玉城デニー知事を本部長とする県特定家畜伝染病防疫対策会議を開き、今後の対応を協議する予定。 玉城知事は感染拡大を防ぐため、9 日までに本島内全ての約 270 養豚農家に対し、施設の消毒を命じた。

CSF 感染が確認されたうるま市の養豚場では、9 日も獣医師や自衛隊員らによる殺処分の作業が続いた。 県によると 9 日午後 2 時までに、対象の 1,813 頭中、約 65% を占める 1,170 頭を殺処分した。 市内の別の処分地で、同 3 時までに約 400 頭が地中に埋められた。 県は殺処分を 10 日までに終え、地中に埋める作業や豚舎の消毒などの防疫措置を 11 日までに完了させたいとしている。 うるま市を中心に 8 カ所設置された消毒ポイントでも関係車両の消毒作業が続き、総勢約 450 人が作業に当たった。

本島の消毒命令は、最初の感染が確認された 8 日付の公報で告示した。 家畜伝染病予防法 30 条に基づき、県知事は感染拡大を防ぐために区域を限定し、家畜所有者に消毒を命じることができる。 実施期間は 9 日から「当分の間」とし、養豚施設の周囲や敷地内に消石灰を散布することなどを命じている。 県は必要な資材を調達し、農家へ配布する準備も進めている。

同日、農林水産省であった CSF・ASF 防疫対策本部の会合で江藤拓農相は「消毒資材などの経費は国が全面的に負担するので、県においてしっかりやってほしい」と語った。 CSF は豚やイノシシ特有の家畜伝染病で、発熱や食欲減退などの症状が現れる。 強い感染力と高い致死率が特長。 ただ、人にはうつらない。 県は「感染した肉を食べても人体に影響はない」と冷静な対応を呼び掛けている。 (沖縄タイムズ = 1-10-20)

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沖縄で豚コレラ感染確認、アグーなど 1,813 頭殺処分へ

沖縄県うるま市の農場で飼育されていた豚が、CFS (豚コレラ)に感染した。 農林水産省と県は 8 日、2 農家(3 農場)の計 1,813 頭の殺処分を始めた。 感染が確認された農場では年末年始に約 50 頭が死んだが、出荷を続けていたという。 8 日夕現在、ほかの農場で感染は確認されていない。 県畜産課によると、殺処分するのは感染が確認されたうるま市の農家(2 農場)の 825 頭と、感染の疑いが強い隣接農場の 988 頭。 沖縄のブランド豚「アグー」も含まれている。 8 日午後 4 時半までに 95 頭を処分。 9 日に市内で埋却を始め、11 日までに終える予定。 県は陸上自衛隊に災害派遣を要請し、陸自は約 390 人を派遣した。

県畜産課の説明では、感染が確認された農場では昨年 12 月 20 日から 1 月 6 日までの間、約 50 頭が死んでいた。 12 月 26 日も 25 頭を出荷。 解熱剤などを投与して様子を見ていたといい、県への通報は 6 日になってからだった。 県によると、この農場では餌を加熱していなかった。 餌の肉類にウイルスがあった場合、加熱が不十分だとウイルスが死なない可能性があるとしている。

遺伝子解析の結果、ウイルスが国内で確認された遺伝子型と似ていることや、発生農場への聞き取りで海外渡航歴がなく、餌も外国産でないことなどから、県は海外からの感染の可能性は低いとみる。 農水省は海外から持ち込まれた可能性も否定できないとして遺伝子を詳しく調べる。 県は 8 日、この農場から 3 キロ圏内を豚などの移動制限区域、10 キロ圏内を搬出制限区域に設定し、計 8 カ所に消毒ポイントを置いた。 10 キロ圏内には約 50 農家があり、防疫措置が終わるまでは出荷などができない。

江藤拓農水相は 8 日、那覇空港の検疫態勢を視察後、県庁で玉城デニー知事と面会し、ワクチン接種など感染拡大防止の対策について説明。 その後、記者団に「一番恐れていた遠隔地、しかも海で大きく離れている沖縄で発生したことは深刻な事態だ」と述べた。 (伊藤和行、藤原慎一、asahi = 1-8-20)


豚コレラ感染養豚場が破産 福井・越前の運営会社

7 月に豚コレラ (CSF) の感染が確認され、全約 300 頭が殺処分となった福井県越前市の養豚場を運営する食肉卸売会社なんえつミート(同市)が、福井地裁から破産手続きの開始決定を受けたことが 3 日、分かった。 帝国データバンク福井支店によると、11 月 27 日付で、負債額は約 1 億 1,000 万円。 豚コレラ発生が影響したとされ、昨年 9 月以降の一連の豚コレラで感染養豚場の運営会社が破産したのは初めてとみられる。 同社は昭和 60 年に設立。 自社ブランドの豚を主力商品にしていた。 今年 7 月に養豚場で豚コレラが発生し売り上げが急減、先行きの見通しが立たなくなったという。 (sankei = 12-3-19)


西尾の養豚場、1,000 頭殺処分開始 豚コレラ

愛知県西尾市の養豚場の豚が豚コレラ (CSF) に感染していた問題で、県は 20 日未明、この養豚場で飼育している約 1,000 頭すべての殺処分を開始した。 22 日中に完了する見込み。 国の防疫指針でワクチンを接種できない授乳中の子豚からのウイルス確認だが、全国で初めてワクチン接種を済ませた養豚場で豚コレラが発生したことに、地元関係者からは落胆の声が漏れた。

養豚場の経営者の家族によると、今年 6 月にすぐ近くの養豚団地で豚コレラが発生したこともあり、感染防止に特に注意していたという。 「ワクチンを打って大丈夫だと思っていただけに残念だ」と肩を落とした。 20 日午前には、県が地元の公民館で近隣住民を対象に説明会を開催。 集まった約 15 人にこれまでの経緯や殺処分の計画などを示して理解を求めた。 防疫措置が行われる間は周辺で交通規制なども実施される。 地元町内会役員の男性 (69) は「生産者が気の毒だ。 われわれも協力していく。 早く終息させてほしい。」と話した。 (中日新聞 = 11-20-19)


山梨県の養豚場で豚コレラ 全頭殺処分へ

山梨県は 16 日、韮崎市の養豚場の豚が豚コレラ (CSF) に感染していたと発表した。 同県内では、10 月 31 日に野生イノシシの感染が確認されたが、養豚場での飼育豚感染は初めて。 県はこの養豚場で飼育している全約 870 頭を殺処分する。 県によると、14 日に衰弱した豚が見つかり、県の遺伝子検査で 15 日に陽性と判明し、国による 16 日の検査で感染が確定した。 同養豚場近くで 12 日に捕獲した野生イノシシも感染が確認された。

同養豚場から 10 キロ圏内を搬出制限区域に設定。 区域内には同養豚場以外に豚の飼育施設が 1 カ所あり、ここを監視対象農場に指定した。 県内では 10 月末、北杜市で捕獲した野生イノシシの豚コレラ感染が初めて確認され、捕獲場所から半径 10 キロ圏内にある同養豚場も監視対象農場の一つに指定されていた。 (sankei = 11-16-19)


豚コレラは「CSF」に 風評被害対策、呼称変更 - 農水省

農林水産省は 11 日、家畜伝染病「豚コレラ」の呼び名を「CSF」に変更する方針を明らかにした。 「コレラのイメージが悪い」といった指摘を踏まえた措置で、豚へのワクチン接種により懸念される豚肉への風評被害を抑えるのが狙いだ。 江藤拓農水相が同日の豚コレラなどに関する対策本部で明らかにした。 CSF は英語名「クラシカル・スワイン・フィーバー」の頭文字を取った。 人が感染するコレラとは別の病気にもかかわらず、紛らわしいとして、自民党内で名称変更を求める声が上がっていた。 (jiji = 11-11-19)


埼玉で 5 例目の豚コレラ 県内最大の養豚地域、深谷

埼玉県は 9 日、深谷市の養豚場で豚コレラ感染を確認したと発表した。 飼育豚の感染は県内 5 例目。 この養豚場は 1,720 頭を飼育しており、9 日夜から全頭の殺処分を始めた。 深谷市は県内最大の養豚地域で、飼料や肥育法にこだわるブランド豚の生産に力を入れている。

県によると、今回の養豚場は、10 月 30 日に県内 4 例目の感染が確認された本庄市の養豚場から約 8.6 キロ。 11 月 7 日に県がワクチン接種のための事前検査を実施したところ、陽性の疑いがある豚 3 頭が判明。 3 頭を含む計 24 頭を 8 - 9 日に検査し、13 頭が陽性と確認された。 県はワクチン接種への影響はないとし、予定通り年度内に県内全域の約 13 万 5,000 頭への接種を終えるとしている。 (畠山嵩、mainichi = 11-9-19)


藤枝で豚コレラ 静岡県内 5 例目

静岡県は 2 日、藤枝市北方で見つかった死骸の野生イノシシ 1 頭が、豚コレラに感染していたと発表した。 県内での感染確認は 5 例目で、いずれも藤枝市内。 県によると、10 月 18 日に 1 頭目が発見された場所から南西約 4.7 キロの地点で発見されたという。 (静岡新聞 = 11-3-19)


山梨県でも豚コレラ確認 ワクチン接種推奨地域に指定

山梨県は 31 日、同県北杜市で捕獲した野生イノシシが豚コレラに感染していたことを確認したと発表した。 農林水産省は同日夜、山梨県を豚コレラのワクチン接種推奨地域に指定した。 指定は 12 県目。 山梨県畜産課によると、10 月 29 日に捕獲した雌のイノシシが、遺伝子検査で陽性だったという。 県は今後、県内の養豚農家を対象としたワクチン接種の準備を進める。 (asahi = 10-31-19)


本庄市の養豚場 3 例目の豚コレラ感染 埼玉

埼玉県は 11 日、本庄市の養豚場で豚コレラの感染が確認されたと発表した。 飼育豚の感染は、秩父市、小鹿野町に続き、県内 3 例目。 養豚場から 10 日、豚に異常があるとの通報を受けた県が立ち入り検査し、11 日に豚コレラと確認された。 本庄市では、死んでいるのが見つかった野生イノシシの感染が 10 日に確認されていた。 (sankei = 10-11-19)


群馬でイノシシ、豚コレラ感染疑い 養豚場の監視強化へ

群馬県は 3 日、同県藤岡市高山で 9 月 28 日に捕獲した野生イノシシについて、豚コレラへの感染の疑いがあると発表した。 県と国が詳しく調べる。 感染が確定すれば、県内での豚コレラ感染は 1969 年以来。 県によると、捕獲地点から半径 10 キロ圏内では養豚農場が 12 あり、約 7,800 頭を飼育。 このイノシシが県の遺伝子検査で陽性だった場合、監視対象農場として県家畜保健衛生所の立ち入り検査などが行われる。 群馬県は 2 月現在、212 戸で 62 万 9,600 頭の豚を飼育している。 隣県の長野県や埼玉県で豚コレラ陽性の豚が確認されたため、警戒態勢が続いていた。 (asahi = 10-3-19)


豚コレラでイノシシ用ワクチン散布 滋賀県が近畿初

滋賀県は 30 日、同県多賀町で豚コレラに感染した野生イノシシが確認されたことを受け、山林を中心にイノシシ向けの餌に発症を抑えるワクチンを混ぜた「経口ワクチン」の散布を始めたと発表した。 ウイルスの媒介となる野生イノシシからの感染を防ぐためで、県によると、近畿地方での豚コレラワクチンの散布は初めて。

県によると、10 月 4 日までの 5 日間、東近江市、彦根市、高島市、多賀町の 170 カ所で計 5,100 個の経口ワクチンを散布する。 県は散布 5 日後から採菜食されなかったワクチンの回収を開始する予定。 10 月中旬以降に散布エリアで捕獲した野生イノシシの検査を行い、ウイルスの抗体ができているかなどを調べ、ワクチンの効果を検証する。 滋賀県では 9 月、多賀町で死んだ状態で見つかった野生イノシシ 1 頭の豚コレラ感染が確認された。 野生イノシシへの感染はこれまでに岐阜や三重など 7 県で確認されており、滋賀は 8 県目で、近畿 2 府 4 県では初めて確認されている。 (sankei = 10-1-19)


恵那市の全養豚場で感染確認 … 8 千頭殺処分開始

岐阜県は 22 日、同県恵那市の養豚場で家畜伝染病「豚コレラ」の感染が新たに確認されたと発表した。 県は陸上自衛隊に災害派遣を要請し、飼育豚約 8,000 頭の殺処分を始めた。 農林水産省によると、岐阜市の養豚施設で昨年 9 月、豚コレラの感染が国内では 26 年ぶりに確認されて以降、1 府 7 県で計 45 例目。

県によると、恵那市の養豚場から 21 1日、「飼育している豚が 1 頭死んだ」と連絡があった。 遺伝子検査で 18 頭から陽性反応が確認され、県は国と協議し、豚コレラに感染したと判断した。 この養豚場からは 9 月 12 日、浜松市の食肉処理施設に 33 頭、13 日には名古屋市の食肉処理施設に 34 頭が出荷されたという。 恵那市内では養豚場全 6 施設で感染が確認されたことになる。 (yomiuri = 9-22-19)


豚コレラ、ワクチン接種へ 農水省発表 防疫指針見直し

豚やイノシシがかかる伝染病「豚コレラ」の感染拡大を防ぐため、農林水産省は 20 日、養豚場で飼われている豚にワクチンを接種する方針を決め、発表した。 都道府県知事の判断で接種が可能になるよう、国の防疫指針を見直す。 接種する地域は専門家らによる審議会の議論も踏まえて決める。 このため、実際に実施するまでには一定期間がかかるとみられる。 また、メーカーにはワクチンの増産を要請することも決めた。 (asahi = 9-20-19)


長野で 3 例目の豚コレラ感染 飼育中の 112 頭殺処分へ

長野県は 19 日、同県南部の高森町の養豚場で豚コレラの感染を確認したと発表した。 県内での発生は 3 例目。 県は 19 日朝、この養豚場で飼育されている計 112 頭の殺処分を始めた。 県によると、17 日に立ち入り検査をした際、30 頭中 8 頭の豚に 40 度以上の発熱があった。 県が遺伝子検査をしたところ、陽性と判明。 国が「豚コレラの疑似患畜が発生した」と認定した。 今回発生した養豚場は、長野県内の養豚農家の 2 割が集まる養豚業が盛んな地域にある。 阿部守一知事は「大変深刻な事態と受け止めている」と述べた。 (asahi = 9-19-19)


豚コレラ、埼玉で 2 例目確認 小鹿野の養豚場、殺処分へ

埼玉県は 17 日、同県小鹿野町の養豚場で、家畜伝染病「豚コレラ」に感染している豚が確認されたと発表した。 今後、養豚場内で殺処分や消毒を行う。 13 日に同県秩父市の養豚場で感染が判明して以来、豚コレラが確認されたのは 2 例目。 県畜産安全課によると、秩父市の養豚場で豚コレラが確認されたのを受け、県職員が 16 日、この養豚場から約 5.5 キロ離れた小鹿野町の養豚場を立ち入り検査をしたところ、豚に異状が見られた。 検査の結果、17 日に陽性と判定された。 同課によると、同養豚場では計 1,118 頭の豚が飼育されている。 (asahi = 9-17-19)


埼玉・秩父の養豚場で豚コレラ、殺処分へ 関東で初確認

農林水産省は 13 日、埼玉県秩父市の養豚場で豚(とん)コレラの発生を確認したと発表した。 昨年 9 月に岐阜市での発生がわかって以来、関東地方での確認は初めて。 農水省によると、12 日に山梨県の食肉処理場から「出荷された豚に異常がある」と家畜保健衛生所に通報があった。 この豚や、出荷元の秩父市の飼育豚について調べたところ、豚コレラに感染していることがわかった。 出荷元の約 680 頭については、すみやかに殺処分される見込み。 (asahi = 9-13-19)


豚コレラ 1 年で 13 万頭処分 ワクチン使えば格下げ?

家畜伝染病「豚(とん)コレラ」が国内で 26 年ぶりに確認されてから、9 日で 1 年になる。 養豚施設の感染は岐阜県から 6 府県に広がり、防疫のために殺処分された豚は 13 万頭を超えた。 なぜ食い止めることができないのか。

昨年 9 月初め、岐阜市郊外の養豚場で豚が相次いで死に、1992 年に熊本県で確認されて以来の豚コレラと確認された。 数日後に同市内で発見された野生イノシシの死体からもウイルスが検出され、次第に周辺自治体へと広がった。 ウイルスの遺伝子型から海外から持ち込まれたとみられるが、どのようにして入ったのかはわかっていない。 野生イノシシの感染は昨年 12 月に隣の愛知県に広がり、今年 2 月には同県豊田市の養豚場の豚で確認された。

豚コレラは致死率が高いとされていたが、この養豚場でみられたのは食欲不振だった。 経営者の男性 (49) は県の家畜保健衛生所の職員と相談した上で子豚を長野県や滋賀県、大阪府などに出荷したが、結果として出荷先にも感染を広げることになった。 「死んだ豚はいなかったので、まさか、という思いだった」と経営者は悔やむ。 農林水産省の畜産統計(2018 年)によると、愛知県内の豚の飼育頭数は約 33 万頭、岐阜県は約 11 万頭。 岐阜県では全飼育頭数の半数超が殺処分された計算で、その中には県が約 10 年かけて開発したブランド豚「ボーノポーク」の種豚も含まれる。

国内の養豚業は九州や関東が中心で、今のところ全国の豚肉の流通に大きな影響は出ていない。 だが発生地域では飼料の需要が落ち込んだり、食肉処理場の稼働日が減ったりするなど、深刻な打撃を受けている。 愛知県の畜産関係団体の代表者らは 8 月 29 日、大村秀章知事に口々に訴えた。 「収入を断たれ、生活に対する不安が増すばかり。経営再建計画を立てることもままならない。」(山野拓郎、松浦祥子、小山裕一)

終息には 10 年単位の時間が必要?

感染拡大の「主犯」と目されているのが野生イノシシだ。 これまで 7 県でイノシシの感染が確認され、岐阜県では 800 頭を超えている。 農水省幹部も「(豚への感染は)基本的にイノシシの感染エリアでしか起きていない」と指摘する。 今回の豚コレラは感染してもすぐには死なないことが多く、イノシシの感染を拡大させたとみられる。 岐阜県は発生 3 カ月後の昨年 12 月からイノシシの移動を防ぐ防護柵を本格的に作り始めたが、手遅れだった。

そこで農水省は今年 3 月、愛知、岐阜両県で国内初となる「えさ型ワクチン」の散布に踏み切った。 トウモロコシ粉でワクチンを包んで山中に埋め、イノシシに食べさせる。 愛知県が散布地域で捕獲したイノシシ 42 頭を調べたところ、74% にあたる 31 頭で豚コレラへの免疫ができていた。 同県の担当者は「すべての抗体がワクチンによるものかどうかは分からないが、有益性はあると考えられる」と話し、両県に隣接する 7 県でも散布が始まった。

えさ型ワクチンを製造するドイツは、イノシシの豚コレラ撲滅に成功している。 同国では平野に点在する山林を柵で囲い込んでワクチンをくまなく散布したが、険しい山地がある日本ではこの方法をとれない。 ある農水省幹部は「今の日本の野生イノシシへの感染は、世界でも前例のない事態」とした上で、「豚コレラのウイルスがなくなるまで持っていくには、10 年単位の時間がかかるのではないか」と話す。

愛知、岐阜両県では、感染の恐れがある地域の豚をすべて出荷して豚舎を空にし、消毒などの衛生管理を徹底する「早期出荷」にも取り組む。 だが 8 月 9 日に愛知県農業総合試験場(長久手市)で豚コレラ感染がわかった。 県産のブランド豚の品種改良をする施設で、防護柵や消毒、出入りする職員らの着替えを徹底するなど「最高レベルの防疫態勢」だっただけに衝撃が大きかった。 大村知事は「今まで想定していない感染経路もあるのではないか」と焦燥感を募らせる。(岩尾真宏)

「非清浄国」格下げのリスク

養豚関係者が「切り札」と期待するのが、飼育する豚へのワクチン接種だ。 岐阜、長野、三重、静岡の養豚協会長らは 8 月 2 日、名古屋市で集会を開き、国に豚へのワクチン接種を認めるよう求める決議書を採択した。 中嶋克己・静岡県養豚協会長は、「ここまで感染拡大を許した国の責任は大きい。 国は生産者を守らずに、一体何を守ろうとしているのか。」と述べた。 だが今回、農水省はワクチン接種をまだ認めていない。

ワクチン接種を再開すると、家畜伝染病対策の国際組織「国際獣疫事務局 (OIE)」に「非清浄国」に格下げされる恐れがある。 国内では明治時代以降、100 年以上にわたり豚コレラがはびこっていたが、ワクチン接種によって 07 年に「清浄国」を宣言した経緯がある。 OIE の認定は各国が参考にするため、格下げされれば、日本から米英仏独などの「清浄国」に輸出できなくなったり、日本がほかの「非清浄国」から安い豚肉の輸入を求められたりする可能性が高い。

国内最大の養豚地帯の鹿児島県は、豚肉輸出に力を入れている。 自民党の農林族の実力者、森山裕・党国会対策委員長、野村哲郎・党農林部会長は鹿児島県選出だ。 安倍政権を支える菅義偉官房長官も「人口減少対策」として農林水産物の輸出拡大の旗を振っている。 東海地方選出のある自民党議員は「何を言っても聞いてくれない」とこぼす。

だが収束の見通しが立たない中、農水省は地域限定でワクチン接種を認めることの検討を始めた。 ワクチン接種した豚の肉の流通を地域内にとどめ、「非清浄国」にならずに済む方法を模索するが、「豚肉の流通を県内だけにとどめることはあり得ず、業者の同意も得られない(大村・愛知県知事)」と反発がある。 ワクチンで豚の感染が止まったとしても、野生イノシシの感染は止められない。 このため農水省は、「ワクチンは根本的な対策にはならない」とする。

豚コレラの感染拡大には、「地方分権」が裏目に出た一面もある。 もともと家畜の伝染病対策は国が責任を持っていたが、00 年の地方分権一括法で、国の責任は家畜の殺処分や移動制限などに限り、ほかは自治体に委ねられた。 えさ型ワクチンの散布など多くの対策は、国の判断だけでは実施できない。 国と都道府県の責任分担があいまいになり、「家畜の伝染病対策は、国レベルの食の安全の問題で国の責任のはずだ(岐阜県)」、「法律上は都道府県の権限だ(農水省)」と互いに責任を押し付ける発言も出ている。

企業のグローバル化や訪日観光客の増加で、海外から感染症が持ち込まれるリスクは高まっている。 ある農水省幹部は、豚コレラの短期的な封じ込めに失敗して収束には長期間かかることを認めた上で、「今の法律で迅速な対策が取れなかった反省を生かし、家畜伝染病予防法などの改正を検討する」と話した。 (大日向寛文、asahi = 9-3-19)

豚コレラ〉 豚やイノシシ特有の伝染病。 ウイルスの感染力が強く、一般的に致死率が高いが、人には感染しない。 内閣府の食品安全委員会は、仮に感染した豚やイノシシの肉や内臓を食べても人体への影響はないとしている。 国内では 1888 年、米国から北海道への輸入豚で初めて発生が報告された。

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