梅毒患者、最多の前年上回るペース 都が日曜検査や女性専用日設置へ

梅毒患者の増加を受け、東京都は検査態勢を拡充させる。 新たに女性対象の検査日を新宿区内で設けるほか、立川市内で日曜日の検査を始める。 都内の梅毒患者の報告数は 2 年連続で過去最多を更新しており、早期発見で感染拡大を食い止めたい考えだ。 都保健医療局によると、2021、22 年の梅毒患者の報告数は 1999 年の調査開始以降、2 年連続で過去最多だった。 今年も 7 月 23 日時点で 2,087 件の患者報告があり、昨年同時期の約 1.1 倍。 男性は 20 - 50 代、女性は 20 代が多い。

8 月 13 日以降、土曜日のみ検査を受け付けている多摩地域検査・相談室(立川市)で日曜日の検査を開始。 新宿東口検査・相談室(新宿区)は祝日以外は毎日検査を受け付けているが、9 月以降は月 1 回祝日に、女性向けの検査日を設ける。 いずれも匿名・無料での受検ができ、HIV 検査とセットで受けてもらう。 事前予約が必要で、7 日に検査予約センター (050・3801・5309) を開設する。 年末年始を除き、土日祝日も含めて午前 10 時 - 午後 8 時。 (本多由佳、asahi = 8-2-23)


セアカゴケグモ? 小3 男児をかむ 筋肉まひの恐れもあるクモ 4 匹駆除

北九州市は 25 日、同市若松区の響灘緑地グリーンパークで、市内の小学 3 年の男児が特定外来生物のセアカゴケグモにかまれた疑いがあると発表した。 男児は 24 日午後、敷地内のブランコ近くにあるトンネル内で、右手の中指を何かにかまれ、翌 25 日に保護者が届け出た。 保健所職員らが調べたところ、トンネル内や周辺でセアカゴケグモの雄 1 匹と雌 3 匹が見つかり、駆除した。 市によると、男児はかまれて 2、3 時間ほどは痛みやしびれがあったが快復し、体調に問題はないという。 セアカゴケグモにかまれて重症化すると、脱力や不眠などの全身症状が数週間続き、進行性の筋肉まひになることもある。 (asahi = 7-26-23)


ALS の新解析法を人工知能で 「せりか基金」の助成受けた畠野さん

神経細胞が徐々に失われていく筋萎縮性側索硬化症 (ALS) にかかわる遺伝子が病気にどう影響しているか、人工知能の技術を用いて予測する新たな方法を、新潟大脳研究所の非常勤講師・畠野雄也さんらが開発し、論文発表した。 人気漫画「宇宙兄弟」をきっかけに、ALS への研究を支援するために設立された「せりか基金」から助成を受け、この研究を進めたという。

ALS には多数の遺伝子がかかわっていて、まだ存在が知られていないものや、機能が分かっていないものも多く、解析が進められている。 ただ、病気に関係するとみられる遺伝子が見つかっても、その遺伝子の配列が通常と異なる「バリアント」であることでどれほど病気の進行に影響しているか、不明なことが多い。 影響の度合いは「病原性」とも呼ばれ、病原性の高いバリアントほど研究すべき優先度が高くなる。 しかし、それを調べるには細胞や動物を用いた実験が必要で、手間や時間がかかる。

このため、最近はコンピューターを用いて病原性を予測する研究が盛んになっている。 畠野さんたちは、ALS に関係して病原性がすでにわかっている 12 の遺伝子のバリアントを対象に、新たに開発した人工知能技術による予測法「MOVA」がどの程度、病原性の有無を正確に示すことができるか、すでに存在する五つの予測法と比べる形でその精度を調べた。 MOVA では、たんぱく質の立体構造上の中で、対象とするバリアントがどの位置に存在するかを重視しているのが特徴だ。

その結果、MOVA の精度は対象とする遺伝子によっても違いがあったが、全体として 2 番目に高い精度を示した。 また、ほかの解析法と組み合わせることで、最も高い精度を示すことができたという。 畠野さんは「MOVA にさらに改良を加えて、治療法の開発に役立つような遺伝子研究をより効率的に進められるようにしたい」と話す。 成果は 科学誌に論文 として掲載された。 (田村建二、asahi = 7-25-23)


アルツハイマー新薬の投与、「血液検査」で見極め 各社が研究進める

アルツハイマー病の新たな治療薬として今月、米国で正式承認されたエーザイの「レカネマブ」。 国内承認への期待が高まる一方、普及への課題となるのが、対象患者かどうかを見極める検査だ。 体への負担が重かったり、費用が高額だったりするいまのやり方に代わる、手軽な「血液検査」に向けて各社が研究を進めている。 レカネマブは日本でも承認申請されており、9 月末までに結論が出る見込み。 脳内にたまるアルツハイマー病の原因物質「アミロイドβ(Aβ)」を除去することで、病気の進行を遅らせる新しいタイプの薬で、患者や家族の期待が高まっている。

この薬の投与を医師が判断する際、欠かせないのが標的となる「アミロイドβ」が脳内にたまっているかどうかを調べる検査だ。 いまは脳脊髄液を使ったものや、陽電子放射断層撮影 (PET) がある。 ただ、腰骨(腰椎)の間に針を刺す脳脊髄液検査は、患者の身体的な負担が大きく、そう何度もできない。 大型の機器が必要なPETは検査できる施設が限られ、数十万円という費用の負担も課題となっている。 一方、血液中にわずかに含まれる Aβ などを測定できれば体への負担は比較的軽く、費用も安価で済む。 そのため、国内外のメーカーが血液検査の開発を急いでいる。

米ミズーリ州セントルイスの「C2N ダイアグノスティクス」は、質量分析という技術を使い、Aβ などの状態を調べることができる検査技術を開発中だ。 微量の血液でも検査でき、10 日以内に結果がわかるという。 ジョエル・ブラウンスタイン最高経営責任者 (CEO) は「医師の正確な診断に貢献したい」と話す。 近く、米国で商用の使用を始め、将来は米当局への承認申請を予定している。

国内企業では、臨床検査薬大手の富士レビオ・ホールディングス(HD、東京)が血液検査向けの試薬を開発している。 Aβ などアルツハイマー病の原因となる物質にくっつく「抗体」を多く持つのが強みという。石川剛生社長は「抗体の有効な組み合わせで血液検査ができるようにし、新たな道を切り開きたい。」 2023 年内に米当局への薬事申請をめざす。 手続きが順調に進めば、24 年中にも米国で血液検査ができるようになるという。 検査・試薬メーカーのシスメックス(兵庫)も日本国内で血液検査用のキットを発売済み。 Aβ の蓄積状態を調べる補助検査で、現在、保険適用に向けて厚生労働省と協議中という。

島津製作所(京都)は質量分析技術を使って血液検査のできる機械装置を開発している。 レカネマブ承認後、病院や検査会社からの依頼があれば、対応できる構えはできているという。 レカネマブを開発したエーザイの内藤晴夫最高経営責任者 (CEO) は「血液検査が技術的に急速に進歩してきている。 普及すれば、薬の対象になる患者は拡大していくと考えられる。」と血液検査の広がりに期待している。 (宮崎健、ニューヨーク = 真海喬生、asahi = 7-20-23)

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レカネマブの米正式承認 7 月にも エーザイ CEO は「圧倒的な自信」

エーザイが開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」について、同社の内藤晴夫・最高経営責任者 (CEO) は 9 日、7 月上旬にも米国で正式承認される可能性があることを報道各社の取材に明らかにした。 レカネマブの世界全体の売上高が 2030 年度に「1 兆円レベル」になるとする予測も新たに示した。 エーザイは 1 月 6 日、米食品医薬品局 (FDA) からレカネマブの迅速承認を受け、即日、正式承認の申請をした。 同社によると、FDA はこの申請を優先審査とし、審査終了目標日が 7 月 6 日に設定されたといい、内藤氏は承認の可否について「不安は持っていない。 圧倒的な自信を持っている。」と語った。

米国ではレカネマブの価格を患者 1 人当たり年間 2 万 6,500 ドル(約 360 万円、体重 75 キロの場合)に設定し、「レケンビ」の商品名で発売した。 ただ、広く普及させるには、現時点では対象外の高齢者向けの保険適用を認めてもらい、患者の負担を軽減する必要がある。 このため、エーザイは正式承認の取得を急いでいる。 また、1 月 16 日に承認申請した日本でも優先審査品目に指定され、9 月までに審査結果が出るという見通しを示した。

レカネマブはエーザイが米バイオジェンと共同開発した新薬。 アルツハイマー病の原因とされ、脳内にたまるたんぱく質「アミロイドβ(ベータ)」の凝集体を除去して症状の悪化を防ぐことをねらう。 エーザイは同タイプの薬の投与対象となる患者数が 30 年には世界全体で約 250 万人となると推定。 保険適用が広く認められることなどを条件に、その時点の売上高を「1 兆円レベル」と推定した。 他の製薬会社も開発に取り組むが、内藤氏は「圧倒的に市場占有率を得られるのではないか」と自信を示した。 (江口悟、asahi = 3-9-23)

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アルツハイマー病新薬「レカネマブ」 エーザイが厚労省に承認申請

エーザイは 16 日、アルツハイマー病治療の新薬「レカネマブ」の国内での製造販売に向けた承認を厚生労働省に申請したと発表した。 今年中の承認をめざすという。 レカネマブは、アルツハイマー病の原因とされる物質「アミロイドβ」の除去を狙った新しいタイプの薬。 米バイオジェンとの共同開発で、症状の軽い患者の認知機能の低下を長期間抑えることをめざす。 昨年秋に発表した治験のデータでは、約 1,800 人に 18 カ月間投与した結果、認知症の程度を評価するスコアの悪化が 27% 抑えられたとしている。

米国では今月 6 日に米食品医薬品局 (FDA) から迅速承認を受け、今月中に発売予定。 価格は年間 2 万 6,500 ドル(約 350 万円、体重 75 キロの場合)に設定し、正式な承認に向けた申請も提出した。 欧州でも 9 日に欧州医薬品庁 (EMA) に承認申請をしたほか、中国でも承認に向けたデータ提出を進めている。 (江口悟、asahi = 1-16-23)

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エーザイの新たな認知症治療薬、試験で効果確認
日米欧で 23 年中のフル承認目指す

[東京] エーザイは 28 日、米製薬大手バイオジェンと共同開発しているアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」について、早期アルツハイマー病患者を対象とした第 3 相の臨床試験で、症状の悪化抑制を示し、主要評価項目を達成したと発表した。 エーザイの内藤晴夫最高経営責任者 (CEO) は午後の説明会で、日米欧でそれぞれ「23 年中のフル承認を目指す」と語った。

第 3 相臨床試験は、規制当局へ承認申請する前に行う最終段階の試験。 今回の試験は、1,795 人を対象に実施。 主要項目のほか、全ての重要な副次評価項目についても、統計学的に有意な結果が得られたという。 レカネマブ投与群が偽薬(プラセボ)投与群と比較して 27% の悪化抑制を示した。

メイヨークリニック・アルツハイマー病研究センター(ミネソタ州ロチェスター)のディレクター、ロナルド・ピーターセン氏は「大きな効果ではないが、前向きな効果だ」と指摘。 ネバダ大学ラスベガス校トランスフォーマティブ神経科学チャンバーズグランディセンターのディレクター、ジェフ・カミングス博士は「病気の進行を約 30% 遅らせることができれば、素晴らしいことだ」と語った。

エーザイは、2022 年度中の米国でのフル承認申請や、日本、欧州での販売承認申請を目指し、各国当局と協議を行うとしている。 同剤は米 FDA (食品医薬品局)から優先審査指定を受けており、審査終了目標日は 23 年 1 月 6 日に設定されている。 23 年 3 月期の業績予想への影響は軽微で、6 月 8 日に発表した業績予想に変更はないという。

内藤 CEO は「(自社の)財務的に大きく貢献する商品になるのはもちろんだが、社会的インパクトも非常に大きなものがある。 エーザイはレカネマブを契機に大きく変わる。」と述べた。 売り上げなどへの影響について、新薬の価格は慎重に検討していかなければならず、インパクトを語るのは難しいとした。 ジェフリーズのアナリスト、マイケル・イー氏はリサーチノートでレカネマブのデータについて「潜在的に数十億ドル規模の新しいフランチャイズ」を示唆していると指摘した。 東京株式市場でエーザイ株は 28 日、同発表を材料に朝方から買いが集まり、ストップ高比例配分で終了した。 (Reuters = 9-28-22)


小児用医薬品のドラッグ・ラグ解消へ 開発の企業に優遇措置、厚労省

欧米では使えるのに、国内では使えない小児用医薬品の「ドラッグ・ラグ」解消に向け、厚生労働省が 10 日、企業に薬の開発を促す具体策を示した。 成人用の薬と同時に、小児用の薬の開発に着手することで、企業が優遇措置を受けられるようにする。 企業の判断で小児用の開発計画を策定できる仕組みを導入していく。 この日開かれた厚労省の「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」の初会合で示され、おおむね了承された。 2023 年 3 月時点で、欧米で承認されているのに、国内で未承認の薬は 143 品目。 その 6 割にあたる 86 品目は国内での開発は未着手となっている。

国内開発が未着手の薬の多くは、希少疾病や小児用の医薬品。 海外ベンチャーでの治験対象に、日本が含まれなくなっていることが大きく影響している。 これらの病気は患者数が少なく、日本での治験に追加コストをかけるまでもなく、欧米市場でコストを回収できるためだ。 このままでは、欧米に遅れて認められる「ドラッグ・ラグ」どころか、薬が永遠に日本では使えない「ドラッグ・ロス」となる懸念が高まっていた。 今年 6 月、厚労省の有識者検討会は、薬の安定供給やドラッグ・ラグの解消に向けた課題をまとめ、国に対して、成人用と小児用をほぼ同時に開発するための企業への優遇措置の導入や、国際 共同治験に積極的に参加するためのデータ整理などを求めた。

6 月に政府が閣議決定した「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)」にも、「小児がんなどの治療薬へのアクセス改善」が盛り込まれた。 10 日に示された厚労省案では、成人用の新薬開発の際、企業が自らの判断で小児用の開発計画も策定、規制当局の確認後に治験を始める制度を設ける。 その際、企業に小児用の計画策定を促す優遇措置を検討する。 米国では 17 年にできた法律で、特定の分子を狙ったがんの薬を開発する場合、小児用の開発を企業に義務づけた。 その結果、一気に小児がんの薬の開発が進み、承認された。

今後、国内の成人向け抗がん剤の開発では、種類が異なる小児がんでも、メカニズムなどの共通性があり、薬の効果が期待できる場合は、企業の開発を促す仕組みの対象とすることが検討されている。 一方、米国のように開発を義務づけると、成人用も含めた薬の開発が滞る可能性も指摘されており、優遇措置を設け企業の判断に任せることにした。 具体的な優遇内容については、今後の検討としており、欧米の上市から一定期間内の国内上市について、薬価で評価することや治験環境の整備などが考えられている。

また、薬の治験計画が増えても、患者数が少ないために実際に治験ができない可能性もあるため、関係学会などの要望をふまえ、開発の優先度を明確化することも検討されている。 すでに成人用で認められている薬を小児用でも開発する場合は、現在の「特定用途医薬品等指定制度」を活用し、研究や開発を支援していく。 (後藤一也、asahi = 7-11-23)


エムポックス患者の発生について

都内の医療機関を受診していた以下の方について、検査の結果、エムポックスの陽性が確定しました。

患者の概要

エムポックスとは

  • エムポックスは、エムポックスウイルスによる感染症で、中央アフリカから西アフリカにかけて流行しています。 日本では感染症法上の四類感染症に指定されています。 また、2022 年 5 月以降、欧州や米国等で市中感染の拡大が確認されています。
  • エムポックスの潜伏期間は 6 - 13 日(最大 5 - 21 日)とされており、潜伏期間の後、発熱、頭痛、リンパ節腫脹、筋肉痛などの症状が 0 - 5 日続き、発熱 1 - 3 日後に発疹が出現、発症から 2 - 4 週間で治癒するとされています。
  • エムポックスの流行地では、げっ歯類やサル・ウサギなどの動物との接触や、感染が疑われる人の飛沫・体液等を避ける、手指衛生を行うなど、感染予防対策を心がけ、感染が疑われる場合には、直ちに医師の診察を受けてください。 (東京都福祉保健局 = 6-27-23)

マダニ媒介の「オズウイルス」感染で初の死者 茨城県の 70 代女性

厚生労働省は 23 日、マダニが媒介したとみられる「オズウイルス」に感染した茨城県の 70 代女性がウイルス性心筋炎で死亡したと明らかにした。 オズウイルス感染症による発症と死亡は世界で初めてという。 厚労省によると、女性は 2022 年初夏に倦怠感や食欲低下、嘔吐、関節痛、39 度の発熱が確認された。 新型コロナウイルスの検査は陰性で、肺炎の疑いで抗生剤を処方されて在宅で経過を観察したが、症状が悪化し再受診、転院して入院した。

右太ももの付け根に血を吸ったマダニの咬着(こうちゃく)があった。 その後、マダニが媒介する様々な感染症の検査をしたが、いずれも陰性だった。 女性は入院して 26 日目に心室細動がおこって亡くなった。 心筋の細胞でオズウイルスの遺伝子が確認され、オズウイルス感染症で亡くなったと診断された。 厚労省によると、これまで国内ではオズウイルスの抗体を持った人は狩猟者の検査で確認されているが、実際に発症した人はいなかった。 今回、初めて発症が確認されたことになる。

ただ、国立感染症研究所によると、実際にかんだマダニがウイルスを持っていたかどうかはわからないため、感染経路は明らかになっていないという。 オズウイルスが初めて見つかったのは 18 年。 国内のタカサゴキララマダニから分離され、世界的にヒトでの発症は確認されていなかった。 現時点では有効な治療薬に関する知見はなく、対症療法のみとなる。 国立感染症研究所の鈴木忠樹感染病理部部長は「ダニが媒介するウイルス感染症で、心筋炎を起こすことは従来あまり知られていなかった。 ウイルスの危険性を理解するためにも、幅広く検査をして研究をしていく必要がある。」と話した。

マダニが媒介する感染症は複数ある。 重症熱性血小板減少症候群 (SFTS) は致死率が 6 - 30% で、13 - 23 年 1 月末に国内で 96 人の死亡が報告された。 マダニは春から秋にかけて活動が盛んになる。 厚労省は、草むらややぶなど、マダニが多く生息する場所に入る場合は、長袖と長ズボンで肌の露出を少なくするよう呼びかけている。 (神宮司実玲、asahi = 6-23-23)


肥満症の薬、30 年ぶり国内登場へ 米国では美容目的の利用も横行

国内で約 30 年ぶりとなる肥満症の薬が、近く保険で使えるようになる。 米国では同じ成分の糖尿病薬も含めて急速に普及が進んでおり、美容目的で使う人も多いとされる。 副作用の懸念があるため、米当局や製薬企業が注意を呼びかけているが、今後は日本でも適正使用の徹底が課題となりそうだ。 (真海喬生 = ニューヨーク、姫野直行)

「幼いころからずっと肥満に悩み、病気の不安も抱えて生きてきたが、薬を使い始めて体重が 30% 以上減った。 血糖値や血圧などの数値も改善し、なにより出かける機会が増えた。 こんなに人生が楽しいのは初めてだ。」

米ニュージャージー州に住むケイリー・スベンソンさん (39) は、米イーライリリーの「マンジャロ」を使う。 自宅の冷蔵庫に保存しており、週に 1 回、自ら腕や腹部に注射する。 マンジャロは米当局が承認した糖尿病の治療薬。 成分は、体にもともと存在する「GLP-1」というホルモンに似せたもので血糖値を下げたり、満腹感を感じやすくさせたりする働きがある。 体重を減らす効果が期待され、減量を目的に使われている。

スベンソンさんは、このままでは糖尿病になる可能性があるとして、医師の判断で使い始めた。 225 ポンド(約 102 キロ)あった体重は昨年 7 月からの 10 カ月で 150 ポンド(約 68 キロ)まで減ったという。 スベンソンさんは「この薬を使う前は、ずっと食べ物のことを考えていた。 例えば夕飯にパスタとステーキ、さらにクッキーを食べていた。 いまはパスタだけで満足する。自分でも驚きだ。」と話す。

同じタイプの薬で、2021 年に肥満症の治療を目的に承認されたのがノボノルディスク(デンマーク)の「ウゴービ」だ。 臨床試験の一つでは、BMI が 27 以上で高血圧疾患を抱える人などを対象にカロリー制限や運動と並行して 68 週間使うと、体重が平均 15.6% 減った。 5% 以上減った人の割合も 86% に及んだ。 肥満はがんや心臓病、関節痛など、さまざまな慢性疾患のリスクを高める。 成人の肥満率が 40% を超える米国では、臨床経済評価研究所によると肥満に関連する医療費が年 2,600 億ドル(約 36 兆円)にのぼる。 新型コロナ禍で死者数が 110 万人を超え、世界最多だったのも肥満率の高さが理由の一つとされている。

ウゴービの米国での定価は 4 週間分で約 1,350 ドル(18.9 万円)と安くはない。 ただ、肥満症薬が普及すれば、米国のように肥満が多い国の医療費が大きく削減できる可能性がある。 このウゴービは日本でも今年 3 月に承認されており、近く公的医療保険の対象になる見込み(薬価は未定)だ。 日本で肥満症薬が発売されれば、1992 年に承認された「マジンドール」以来となる。 マジンドールは食欲を抑える向精神薬で、依存性への懸念から使用期間は 3 カ月が上限だった。 慢性疾患の肥満症治療に使える薬として、ウゴービへの期待は高い。

「やせ薬」目的の使用も問題視

薬の普及とともに、安易な「痩せ薬」としての使用も問題視されるようになっている。 先行する米国では美容目的での使用が横行しており、今年の初めには一時的な品不足が発生。 重度の糖尿病や肥満症など、本来必要な人が入手しにくい事態も起きたという。 イーロン・マスク氏が昨秋、自身の体形についてツイッターで「秘密は?」と問われ「ウゴービ」と答えて注目を集めるなど、著名人の SNS での紹介も事態に拍車をかけている。 駅などの看板やテレビ CM でも「痩せ薬」としての宣伝が目立つ。

こうした事態に、ノボノルディスクは「承認された適応症以外で使用するべきではない」と警告する。 米当局も以前から適用外での使用に「その薬が未承認の用途で、安全かつ有効であると FDA は判断していないことを留意」するよう注意を呼びかけている。 一方、日本ではウゴービが処方される人は限定的となりそうだ。 対象は高血圧か脂質異常症、2 型糖尿病のいずれかの病気があり、かつ BMI が 35 以上か BMI 27 以上で肥満に関連する健康障害が二つ以上ある人とされているからだ。 BMI が 35 を超える高度肥満は日本人には少ない。

しかし、日本でも自費診療や外国からの個人輸入で、肥満症薬や糖尿病薬を使う人が増えている。 「メディカルダイエット」や「GLP-1 ダイエット」などと称し、美容目的で紹介する医療機関もある。 ネットの広告などには、痩せたい気持ちをあおるものも多い。 自費診療などで使うことは法律に違反するわけではないが、薬の副作用には急性膵炎(すいえん)などの重いものもあるだけに厚生労働省と消費者庁、国民生活センターは注意を呼びかけている。

日本肥満学会の横手幸太郎理事長は「例えば、BMI が 18.5 未満は痩せすぎで、そういう人が使うと骨粗鬆症(こつそしょうしょう)や不妊、低体重児を出産するリスクが増える。 適正使用が大切だ。」と指摘。 ウゴービの保険適用に合わせ、学会から適正使用を呼びかける文書を出すことを検討しているという。 (asahi = 6-22-23)


がんと闘わず、生き続ける治療に一歩 「悪液質」抑える手がかり発見

進行したがんの患者の体重が大きく減る状態で、死亡にも深くかかわっているとされる「がん悪液質」を抑える手がかりを、理化学研究所などのグループが見つけた。 研究がうまく発展すれば、将来的には抗がん剤とは別の、患者の生存期間を延ばす新しい治療につながるかもしれない。 がん悪液質は、食事量を減らしているわけでもないのに全身の筋肉が減り続け、通常の栄養サポートでは回復できないといった場合をさす。

がんの種類によっても起こるリスクは異なるものの、進行したがん患者の約 5 - 8 割にみられるといった報告がある。 体重が大きく減ることを通して、亡くなることにもつながりやすい。 がんが生じたり、転移したりしている臓器の機能が損なわれるのとは別に、がんがあることで何らかの作用が生じ、筋肉の分解などが進んでいると考えられているが、わからないことも多い。

生存率が 10 倍に

理研生命機能科学研究センターの岡田守弘研究員(生理遺伝学)たちは、がん組織から何らかの全身を衰弱させる物質が出ているのではないかと考えた。 そこでショウジョウバエの幼虫段階で、将来目になる組織だけで、がん遺伝子を発現させた。 発生したがんは転移したり大量に増えたりはせず、目にとどまっていたが、80% 以上の幼虫は成虫に育つことなく死んだ。 このがん細胞からどんな物質が分泌されているのか、遺伝子の発現を網羅的に分析すると、20 種類のたんぱく質が見つかった。

このたんぱく質ががん細胞でつくられないように、一つずつ操作して調べると、「ネトリン」というたんぱく質を抑えたときに、抑えないときと比べてショウジョウバエが成虫にまで育つ確率が約 10 倍に高まった。 がん細胞そのものの増殖には影響がなかった。 抗がん作用とは無関係に、ネトリンを抑えることでショウジョウバエの生存率を高めたことになる。

からだの中でどう作用

ネトリンは人間にもあり、神経の形成に関係しているといわれてきた。 ホルモンのように、ネトリンが分泌された場所から遠く離れた組織に作用していることが今回初めて分かったという。 ネトリンのがんでの働きをさらに調べたところ、がん細胞でつくられたネトリンは、カルニチンという物質がつくられるのを邪魔していた。 カルニチンはエネルギーをつくるのに欠かせない物質で、ネトリンのせいでカルニチンの産生が減り、体全体がエネルギー不足に陥っていることが推測された。 ネトリンによる作用を受けなくなるよう操作すると、やはり生存率は 10 倍前後に高くなった。 このときも、がん細胞の増殖などには変化がなかった。

人間の場合も、がん患者ではネトリンの量が増え、カルニチン量が低下しているといった報告がある。 同様の仕組みが哺乳類でもあるのかどうか、マウスなどでも調べる方針という。 たとえ、がんが存在したとしても、悪液質をコントロールすることで患者の生存率を改善できる方法につながる可能性があり、グループのユ・サガン・理研チームリーダーは「ほかの領域の専門家とも連携して研究を前に進めたい」と話している。

研究結果は 分子生物学の専門誌 で掲 された。 がん悪液質に対しては、約 2 年前に「エドルミズ」という薬が国内で承認され使われている。 ホルモンの仕組みに働きかけて、患者の体重や筋肉量の増加、食欲が増すなどの効果が認められている。 がん患者の生存期間については、早期からの緩和ケアを治療に加えたほうが、治療のみの場合よりも長くなるといった報告が知られている。 (田村建二、asahi = 6-8-23)


東京・多摩住民の PFAS 血中濃度、国調査の 2.4 倍 市民団体調査

健康への影響が懸念されている有機フッ素化合物(総称 PFAS = ピーファス)について、東京・多摩地域の住民の血中濃度を独自に調べていた市民団体が 8 日、最終結果を公表した。 代表的な物質 PFOS (ピーフォス)と PFOA (ピーフォア)の合計値では、27 区市町村 650 人の平均値が国が調べた全国平均の約 2.4 倍にあたる、と明らかにした。 多摩では東京都の調査で 2019 年、国分寺市の浄水所から、後に国が定めた水道水の暫定目標値の 2 倍以上にあたる PFOS と PFOA を検出。 浄化した地下水を一部、水道に使っている地域であり、都は高濃度の PFAS が検出された 7 市の井戸 40 カ所で取水を停止している。

こうした状況を受け、団体は 22 年、多摩広域で血液調査の希望者を募り、19 - 92 歳の男女 650 人が採血に応じた。 京都大大学院の原田浩二准教授(環境衛生学)に調査を委託し、血液中の PFAS 濃度を測定した。 団体によると、血液 1 ミリリットル中に含まれる PFOS と PFOA の合計値は、平均 14.6 ナノグラム(ナノは 10 億分の 1)。 個人でみると 0.1 - 54.4 ナノグラムと差があった。 調査手法が異なる可能性があるが、環境省が 21 年に全国 119 人を対象として調べた際は平均 6.1 ナノグラムだった。

PFAS がどの程度健康に影響があるかはまだ明らかではないが、原田准教授によると、ドイツには健康リスクの目安としてPFOS の血中濃度が 1 ミリリットルあたり 20 ナノグラムなどと考える基準がある。 今回調査した 650 人のうち 55 人がこの目安を超えていた。 原田准教授は「水道水が主な原因だ」と指摘。 汚染源は地下水の上流域にある米軍横田基地などが考えられる、とした。 団体は今回の結果を受けて、国や都に健康影響や汚染源の特定に向けた調査を求めていくとしている。

PFAS は国内各地で検出が相次いでいる。 その多くが米軍基地や工場周辺だ。 沖縄県では昨年、市民団体が米軍基地周辺の住民ら6市町村 387 人の血中濃度を調べたところ、PFOS と PFOA が全国平均の 0.8 - 3.1 倍という値を示した。 県内で問題が表面化したのは 16 年。 県の調査により、米軍嘉手納基地の近くに水源がある浄水場で 1 リットルあたり平均 30 ナノグラム、最大 80 ナノグラムの PFOS が検出されたことがきっかけだった。

県や市民団体は米軍基地が汚染源になっている可能性が高いとして、基地への立ち入り調査を求めてきたが、米側は一貫して拒否。 日米地位協定で基地の管理権は米側にあると定められているためだ。 玉城デニー知事は 8 日の記者会見で、東京の市民団体の活動について、「全国でもこの問題が重要視され、広がってきている」と述べた。 各地の動きと連携し、米軍基地への立ち入り調査を実現させるよう国に働きかけていく考えを示した。

神奈川県では昨秋、厚木基地から PFOS を含む泡消火薬剤が川に流出。 大阪府にある大手メーカーの製作所近くの地下水からも、高濃度の PFOA が検出されたことが府の調査で明らかになっている。 (藤田大道、小野太郎、asahi = 6-8-23)

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国立・府中市民からも PFAS 高濃度検出 市民団体が調査、中間報告

国が対策を強化する方針の有機フッ素化合物 (PFAS) について、東京・多摩地域の住民の血中濃度を独自に調べている市民団体は 14 日、3 度目となる中間報告を公表した。 すでに公表した国分寺や立川の住民のほか、国立や府中など多摩各地の住民からも高い濃度が確認された、としている。 市民団体は「多摩地域の有機フッ素化合物汚染を明らかにする会」。 これまでの中間報告で公表した 273 人に、新たに 278 人の結果を加え、計 551 人分の調査結果を公開した。

調査を実施している京都大大学院の原田浩二准教授(環境衛生学)によると、PFAS の中でも代表的な物質である PFOS が血液 1 ミリリットルに含まれる量で、調査に応じた国分寺、立川の各市民の平均が 15 ナノグラム前後と特に高い傾向を示した。 国立や府中、調布、あきる野の住民でも平均が約 10 - 11 ナノグラムだったという。

2021 年に環境省が行った全国 119 人を対象にした調査の平均は、3.9 ナノグラムだった。 今回の調査とは方法が異なる可能性があるが、市民団体は全国平均の 2 倍以上にあたる可能性がある、とした上で、「PFAS が多く含まれた水道水を飲んだ結果ではないか」と指摘している。 市民団体は計 650 人分の最終結果を今月下旬にも報告する予定だ。 (藤田大道、asahi = 5-15-23)

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飲み水の PFAS 規制値案を初公表 米政府、勧告値より大幅に厳しく

米環境保護局 (EPA) は 14 日、体内に取り込まれると健康への影響があると懸念されている有機フッ素化合物(総称 PFAS)について、初めて飲み水の規制値案を発表した。 これまであった勧告値よりも大幅に厳しい内容で、連邦政府がこの問題に積極的に取り組んでいく姿勢を示した。 PFAS は自然界でほとんど分解されず、人体に取り込まれれば体内に長く残るため「永遠の化学物質」とも呼ばれる。 米疾病対策センター (CDC) によると、体内で高濃度になると、腎臓がんや精巣がんのリスクの増加、コレステロール値の上昇、肝臓の酵素の変化など、健康への影響がある可能性が分かっている。

数千種類が存在するとされているが、代表的なペルフルオロオクタンスルホン酸 (PFOS) とペルフルオロオクタン酸 (PFOA) などは、2019 年までにストックホルム条約会議で製造・使用が原則禁止されている。 EPA は 16 年に、飲料水の「生涯健康勧告値」を 1 リットルあたり PFOS と PFOA の合計で 70 ナノグラムと設定していた。 今回提案された規制値案では、それぞれ 1 リットルあたり 4 ナノグラムと大幅に厳しくなった。 ほかの 4 種類の化合物についても、合計値で潜在的なリスクをもたらすかを判断する規制をもうける提案をしている。

「数千人の死亡を防ぐ」

パブリックコメントを募り、年内にも規制値案を正式に採用するかどうかを決める。 採用されればモニタリングが義務づけられ、基準値を超えた場合は市民に通知し、汚染の低減策をとらなければならなくなる。 PFAS は水や油をはじく性質があり、フライパンなどのコーティングや泡消火剤などの用途で広く使われてきた。 CDC の調査では米国人の 97% の血液中にPFAS が確認されている。

日本でも米軍基地や工場周辺など各地で PFAS の検出が続く。 日本は、米国などの議論を参考に、20 年に毎日 2 リットルの水を飲んでも健康に影響が生じないレベルとして、水質管理の暫定目標値(PFOS と PFOA 合計で 1 リットルあたり 50 ナノグラム)を定めている。 米国の規制値案は、日本での規制強化の議論に影響をあたえる可能性がある。 EPA のマイケル・レーガン長官は会見で「この規制が完全に実施されれば、数千人の死亡を防ぎ、数万人の PFAS に関連した深刻な病気を減らすことができると予想している」と語った。

米国ではこれまで PFAS をめぐり、化学工場周辺で健康被害を訴えた住民が起こした訴訟でメーカー側が多額の費用を支払うことで和解が成立したり、米軍基地内や周辺での汚染が多数確認されたりしている。 環境衛生問題に取り組む団体でつくる組織「Safer States」は 14 日、「これらの案は前向きな一歩であり、政府の機関が PFAS の危機に対処する必要性を強めるものだ。 連邦政府には、汚染物質を出した側の責任も追及するよう強く求める」などとする声明を出した。 (ワシントン = 合田禄、asahi = 3-15-23)

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有害性指摘の PFAS 血液検査で国調査の 3 倍余検出 国は対策検討

有害性が指摘されている有機フッ素化合物 PFOS (ピーフォス)などをめぐり、専門家が市民団体と行った東京・多摩地域の住民を対象にした血液検査で、国が行った調査の 3 倍余りの血中濃度の PFOS などが検出されたとする結果が公表されました。 「PFOS」などを含む化学物質の「PFAS (ピーファス)」について、国は対応策とその情報発信のあり方について方向性をとりまとめる方針です。

PFAS の検出相次ぐ 米軍基地周辺や都内各地など

「PFAS」には 4,700 種類余りが存在するとされ、有害性が指摘されている有機フッ素化合物の「PFOS」や「PFOA (ピーフォア)」は、沖縄県や神奈川県などのアメリカ軍基地周辺の河川や地下水などから、国の暫定的な目標値を超える値が相次いで検出されていて、都内各地の井戸水や地下水からも暫定的な目標値を超える値が検出されています。 ただ、「PFAS」全体の有害性などはいまだ解明されていません。

京都大学の原田浩二准教授らは、市民団体と共同で、アメリカ軍横田基地のある多摩地域の住民を対象にした血液検査を行っていて、これまでに検査を受けたおよそ 280 人のうち、87 人の結果を 30 日に公表しました。 その結果、国が 2021 年に全国の 3 地点で行った調査の平均値の 3 倍余りの血中濃度の「PFOS」と「PFOA」が検出されたということです。 原田准教授は「直ちに健康に影響があるわけではないが、今後の影響の調査や、汚染源の特定、対策の効果の検証なども含め国や自治体がしっかり対応するべきだ」と指摘しました。 市民団体は、ことし 3 月末まで血液検査を続けて、最終的には 600 人ほどの調査結果を分析したいとしています。

環境省は対応策を検討 情報発信へ

「PFOS」などについて、アメリカは飲料水にわずかでも検出されないような厳しい指針を示す一方、日本は暫定的な目標値しかなく、環境省は 30 日、最新の科学的な知見や国内の検出状況を把握し総合的な対策を進めるための専門家による初めての会合を開きました。 会合では、WHO = 世界保健機関が飲料水に含まれる PFAS の量を測定する新たな方法を提案しているなど国際的な動向が報告されました。 会議では科学的根拠に基づいた対応策とその情報発信のあり方について方向性をとりまとめる方針です。 (NHK = 1-30-23)


糖尿病は「不治の病」ではなかった 年に 100 人に1人が「寛解」

糖尿病はいったん発症すると治らないと思われてきたが、年間 100 人に 1 人ぐらいは血糖値が下がり薬が必要なくなる「寛解」になっていたと、新潟大や全国の糖尿病専門医でつくる研究会 (JDDM) などのチームが明らかにした。 糖尿病と診断されてからの期間が短く、血糖値がそれほど高くない肥満の人が大幅に減量すると、寛解しやすいという。 新潟大の曽根博仁教授(血液・内分泌・代謝内科)は「糖尿病は決して治らない病気ではないことを示せた。 健康診断などで糖尿病と診断されたら放置せず、専門医に相談し早期に対応してほしい。」と話す。

研究チームは、1989 - 2022 年に全国の糖尿病専門施設に通院していた 18 歳以上の 2 型糖尿病患者約 4 万 8 千人の診療データを分析。 5.3 年(中央値)追跡した結果、3,677 人が寛解していた。 1 年あたりでみると約 1% が寛解する計算で、英国の研究と同程度の水準だという。 寛解しやすい患者の特徴は、▽ 女性より男性、▽ 診断から 1 年未満、▽ 血糖値の目安となる「HbA1c」値が 7 未満と患者としては高くない、▽ 肥満 - - など。 1 年後に 5 - 9.9% の減量をすると、減量が 5% 未満の人に比べ寛解する割合が 2.2 倍、10% 以上の減量だと 4.7 倍高まった。

肥満の患者は、脂肪細胞から出る物質が、血糖値を下げるインスリンの効きを悪くする「インスリン抵抗性」が生じていて、減量で改善しやすい。 一方、やせていて発症した人はインスリンを分泌する力が低いことが多く、改善が難しい。 とりわけ高齢者の患者は、心身の機能が低下する「フレイル」を防ぐためにも、過度の減量には注意が必要だ。 ただ、寛解した 3,677 人も 1 年間維持できたのは 1,187 人にとどまり、2,490 人が再発した。 糖尿病と診断されてからの、▽ 期間が長い、▽ 肥満度が低い - - といった患者が再発しやすかった。

藤原和哉・新潟大特任准教授は「条件がそろう人が、早期から食事や運動など生活習慣の改善に取り組み大きく減量すれば、寛解の割合をさらに高めることができる。 寛解に至った場合も再発を防ぐため、体重を適正に管理し、定期的に診察を受けることが重要」と指摘している。 研究成果は国際専門誌 (https://doi.org/10.1111/dom.15100) に掲載された。 (桜井林太郎、asahi = 6-4-23)