香港・民主活動家の周庭さんが釈放 今後も聴取の可能性

香港で政府に抗議する未許可デモを組織するなどした罪で禁錮 10 カ月の実刑判決を受けた民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)さん (24) が 12 日午前、刑期を終えて香港北西部の新界地区にある女性刑務所から釈放された。 周さんは事件の容疑者を中国本土に移送できる 2019 年の逃亡犯条例改正案に反対するデモをめぐり、警察の取り締まりに抗議して警察本部を数万人で包囲するデモを組織し、参加者を扇動した公安条例違反の疑いで逮捕・起訴。 昨年 12 月に実刑判決を受けた。 周さんの弁護士によると、刑務所での態度が模範的だったことなどから刑期が短縮されたという。

周さんは 15 歳で社会運動を始め、普通選挙の導入を求めた 14 年の反政府デモ「雨傘運動」では広報担当として外国メディアとも接した。 その後、16 年に設立された若者を中心とした民主派の政治団体「香港衆志(デモシスト、昨年 6 月末に解散)」の創設メンバーの一人として活動。 昨年 11 月には英 BBC が選んだ「2020 年の女性 100 人」の一人にも選ばれた。

日本のアニメやアイドルが好きで、日本語を独学で習得。 ユーチューブやツイッターなどを通じ、香港の民主運動や活動家らが逮捕される現状などについて流暢な日本語で発信を続けた。 19 年には朝日新聞の取材に、「私にとって香港は家。 香港人という責任感や誇りをもって、民主化運動を続けていきたい。」などと語っていた。 19 年には来日して日本記者クラブで会見し、「逃亡犯条例が改正されれば香港は中国になってしまう」と訴えていた。

周さんは今後、国安法違反容疑でも聴取される可能性がある。 香港紙「リンゴ日報」創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏は、SNS やメディアを通じて民主化への支持を訴えたことが「外国勢力との結託」の罪にあたるとして国安法で起訴されており、周氏はさらなる訴追を避けるためにも沈黙しなければならないのが現状だ。 (香港=奥寺淳、asahi = 6-12-21)

「弾圧されることは怖いけど、自由を失うことはもっと怖い」

周庭さんの日本語ツイートの一部(本人のツイッターから)
2019年7月2日私たちは人として生まれた以上、基本的な尊厳を与えられるべきです。 香港人は、この尊厳のために戦っているのです。
8月31日昨日警察が自宅に来て、私は逮捕され、即日起訴されました。 私だけではなく、ジョシュアと 3 名の立法会議員、そして 1,000 名近い抗議者がこの運動の中で逮捕されています。 逮捕と暴力、法制度の歪曲によって抗議運動を鎮圧しようとしながら、市民の訴えには耳を貸そうともしない、これが香港政府です。
9月28日5 年前、香港警察が 87 発の催涙弾を発射して、雨傘運動が始まりました。 5 年前の私は、将来警察が銃で人を殺そうとするなんて想像できませんでした。 でも、香港人も成長しました。 私たちは以前より団結し、独裁政権に抵抗し続けています。 戦いはまだまだ続きます。 私たちは諦めません。
10月 1日今日は 10 月 1 日。 国慶節? いいえ、今日はお祝いする日ではありません。 中国共産党の独裁政権があるから、多くの人が苦しんでいます。 弾圧されることは怖いけど、自由を失うことはもっと怖いです。 私たち香港人には、逃げ道がありません。
2020年6月30日(国安法施行日) 私、周庭は、本日をもって、政治団体デモシストから脱退致します。 これは重く、しかし、もう避けることができない決定です。 絶望の中にあっても、いつもお互いのことを想い、私たちはもっと強く生きなければなりません。 生きてさえいれば、希望があります。
10月19日(ツイッターを発信しないのは、)言いたいけど言えないことが多いからです。 批判的意見を言えば犯罪になるんじゃないかなとか、外国語で発信すれば「外国勢力との結託」で逮捕されるんじゃないかなとか。
12月 3日社会運動に参加できて光栄だと何度も言いました。 恐怖が充満している現在の社会環境下で、これからの私たちにはもっと多くの苦痛と犠牲が待ち構えていることでしょう。
2021年2月16日刑務所での生活は心身ともにつらいので、6 月に刑務所を出たら、少し身体を休ませたいと思っています。

周庭氏「日本メディアに弾圧も」 国安法違反の証拠に日経新聞への意見広告

【香港 = 藤本欣也】 香港国家安全維持法(国安法)違反の疑いで逮捕され、保釈中の民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)氏 (23) が 1 日、警察に出頭し取り調べを受けた。 終了後、保釈を継続された周氏は記者会見を行い、警察のこれまでの捜査で「日本経済新聞に昨年掲載した香港民主化運動に関する広告を証拠として示された」と明かし、「どうしてあの広告が国安法違反の犯罪証拠なのか警察の説明はまだない」と話した。

周氏は、香港の日経新聞も捜査を受けたことに言及し、これからも「香港メディアだけでなく、日本のメディアや国際メディアにも弾圧や捜査があるかもしれない。 国際メディアにとっても報道の自由への脅威だと思う。」と指摘。 国安法施行後、「香港政府はまるで鎖国のように、香港の情報を外に出さないようにしている」と述べ、外国メディアに香港への関心を持ち続けてほしいと語った。 次の警察への出頭日は 12 月 2 日で、24 歳の誕生日の前日という。 国安法の罪で起訴されたら保釈が認められない可能性が高いとした上で、「小さな願いだが、12 月 3 日は(拘置施設の)外で誕生日を過ごしたい」と述べた。 (sankei = 9-1-20)

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日経新聞の香港支局に警察、抗議デモ支援の広告が関係か

香港の民主活動家・周庭氏らが国家安全法違反の疑いで逮捕された今月 10 日、日本経済新聞の香港支局に現地警察が訪れていたと香港メディアが報じました。 香港紙「リンゴ日報」などは、AFP 通信の報道を引用する形で、今月 10 日に現地の警察官 3 人が裁判所の令状を示して日経新聞香港支局を訪れたと報じました。

1 年前に香港の民主派団体「デモシスト」が、国際社会に抗議デモへの支援を呼びかける意見広告を日経新聞に出したことが関係しているということです。 香港警察が訪れたとされる今月 10 日には、デモシストに所属していた民主活動家の周庭氏や「リンゴ日報」創業者の黎智英氏らが国家安全維持法違反で逮捕されましたが、この事件と関連しているかは不明です。 (TBS = 8-29-20)


「日本オタク」周庭氏の戦略眼 いじめ経験から活動家へ

香港国家安全維持法(国安法)違反容疑で逮捕、保釈された香港の民主活動家、周庭(アグネス・チョウ)氏。 23 歳の若者が国境を越えてその声を届け、広い支持を集めるのはなぜなのか。 「(拘束中に)弁護士から『日本の皆さんがアグネスを応援しているよ』というメッセージが届いたので、本当に、本当にありがとうございました。」 11 日深夜に保釈された周氏は、13 日未明までにユーチューブで動画を公開。 滑らかな日本語で、日本の支援者に感謝の思いを伝えた。

民主活動家としての周氏の特徴の一つは、SNS を駆使した巧みな情報発信だ。 ユーチューブの登録者数は 22 万人超。 今回も保釈から間をおかずに元気な姿を動画で伝え、多くのメディアに取り上げられた。 4 年前から、周氏を取材してきて感じるのは、何を伝えれば相手の心に響くか、しっかり考えて取材に臨む戦略的な目を持っているということだ。 周氏が保釈直後、広東語と英語で記者団の質問に応じた後、日本メディア向けに日本語で、拘束中、日本のアイドルグループ欅坂 46 のヒット曲の歌詞が頭の中に浮かんだと話したのもその典型例だ。

周氏は香港返還 1 年前の 1996 年に生まれた。 地元メディアに語ったところによると、小学校時代は外向的な性格だったが、中学校に入って同級生のいじめに遭ったという。 孤独を感じていた周氏がエネルギーを注いだのが、社会運動だった。 高校 1 年生だった 2012 年、学生団体「学民思潮」のデモの写真をたまたま見たのをきっかけにその活動に参加。 中国への愛国心を育てる「国民教育科」の必修化への反対運動は社会の支持を集め、香港政府を断念に追い込んだ。

学民思潮は 14 年に起きた民主化要求デモ「雨傘運動」でも積極的に活動した。 周氏は学民思潮の広報担当に就任し、世界中のメディアと接するようになった。 しかし、このころはその仕事をめぐって摩擦が増えたり、社会運動にのめり込むことを心配した両親との衝突もあったりしたという。 しかし、民主化運動への熱意は冷めず、18 年の立法会(議会)補欠選挙に出馬。 立候補のために、両親が幼いころに申請して取得していた英国籍を悩んだ末に放棄したが、当局は立候補を受理しなかった。

決めたことをやり抜こうとするこうした芯の強さが周氏の特徴でもあるが、素顔とのギャップは大きい。 趣味は日本のアニメ。 小学生時代、パソコンの授業中に教師の目を盗み、日本のアニメを見ていたという。 アイドルグループの「嵐」のファンで、自らを「オタク」と称する。 日本語も、日本好きが高じて独学でマスターしたものだ。 骨太の活動家としての顔と、「日本オタク」としての顔は、世界の情報とつながりながら、香港の未来を憂い政治意識を強める最近の香港の若い世代を象徴しているとも言えそうだ。

国安法の施行を受け、香港では外国への移住を考える人が増えている。 それでも周氏は「自分の家を守る」ために、香港を離れるつもりはないと断言する。 保釈後も「民主主義と自由を守る活動を続ける」と宣言したが、国安法違反の疑いで捜査は続いており、緊張が解けない状況が続く。 (香港 = 益満雄一郎、asahi = 8-13-20)

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周庭氏と香港紙創業者が釈放 「欅坂 46 が頭の中に …」

香港警察は 12 日未明、香港国家安全維持法違反容疑で逮捕した香港紙「リンゴ日報」創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏を保釈した。 同じ容疑で逮捕した民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)氏も 11 日深夜に保釈した。 両氏は外国勢力と結託し国家の安全に危害を加えた疑いがあるとして 10 日に逮捕されていた。 周氏は保釈後、朝日新聞などの報道陣に警察から証拠の提示がなく、「なぜ逮捕されたのか分からない」と指摘。 「(警察は)まさに政治的弾圧のために国安法を利用した」と批判した。 パスポートを押収されたことも明らかにした。

疲れた表情で取り調べが非常に怖かったと漏らす一方、日本の SNS 上で支援の動きが広がったことに感謝すると表明した。 また拘束中、自分の信念を貫き、抵抗する強い意志を歌い上げた欅坂 46 のヒット曲「不協和音」の歌詞が頭の中に浮かんだという。 今後については国際社会と連携する活動には参加できないとし、個人の立場から「香港の民主主義のために戦いたい」と語った。 (香港 = 益満雄一郎、asahi = 8-12-20)

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「雨傘」リーダー、周庭氏を逮捕 国安法違反、香港メディア報道

【香港 = 藤本欣也】 香港メディアによると、2014 年の香港民主化運動「雨傘運動」のリーダーだった周庭(アグネス・チョウ)氏 (23) が 10 日夜、香港国家安全維持法(国安法)違反容疑で逮捕された。 また香港警察は同日、外国勢力と結託して国家の安全に危害を加えたなどとして、香港紙、蘋果(ひんか)日報の創業者、黎智英(ジミー・ライ)氏 (71) や同紙社長ら少なくとも 9 人を同法違反などの容疑で逮捕した。

6 月 30 日に施行された国安法の違反容疑で民主化運動の主要人物が逮捕されたのは初めて。 主要メンバーの逮捕が相次ぐ可能性がある。 周氏の詳しい容疑は明らかになっていない。周氏は流暢な日本語を使い、香港民主化運動の理解を求める講演を日本で行ってきた。 また、黎氏が創業した蘋果日報は香港政府や中国共産党への批判的な論調で知られる。 警察は同日、同紙を発行する壱伝媒(ネクスト・デジタル)本社を家宅捜索した。 黎氏の息子 2 人も逮捕された。 この日の捜査は香港警察内に設けられた国安法部門が指揮した。

実業家の黎氏は香港民主化運動の有力な支援者。 黎氏は昨年、米国でペンス副大統領やポンペオ国務長官らと面会。 中国当局は反政府デモの「黒幕」、「民族のくず」、「米英の走狗」などと非難していた。 黎氏は国安法施行前の 6 月下旬、産経新聞のインタビューに「国安法により一国二制度の香港は死に至る」と述べ、「私は(同法違反容疑で)逮捕、収監されるだろう。 (公判では)法治と自由の重要性を訴えていく。」と語っていた。 黎氏は今年 2 月と 4 月にも、違法集会に参加したなどとして逮捕・起訴され、保釈中だった。 (sankei = 8-10-20)

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香港警察、中国批判のメディア創業者や幹部を逮捕

香港警察は 10 日、中国に批判的な論調で知られる香港紙「リンゴ日報」創業者の黎智英(ジミー・ライ)元会長を香港国家安全維持法違反容疑で逮捕した。 同社など香港メディアが一斉に伝えた。 6 月末の国安法施行後、メディア関係者が逮捕されるのは初めて。

香港警察によると、10 日朝、39 - 72 歳の男性 7 人を逮捕した。 容疑は、外国勢力と結託し国家の安全に危害を加えたなどとしているが、具体的にどのような行為が容疑になったのかは不明。 警察は逮捕した 7 人の名前を公表していないが、リンゴ日報は黎氏のほか、その息子や同社幹部だと報じている。 また警察は同社の家宅捜索を進めているという。 黎氏は民主派の支持者として知られる。 昨年 7 月には米国のペンス副大統領、ポンペオ国務長官と相次いで会談し、「逃亡犯条例」改正案の撤回に向けて支援を要請した。 (香港 = 益満雄一郎、asahi = 8-10-20)


香港の周庭氏に有罪「自由と民主主義のため戦い続ける」

香港の西九竜裁判所は 5 日、警察本部を包囲するデモに参加し、デモ参加者を扇動した罪などに問われた民主活動家、周庭(アグネス・チョウ)氏を有罪と認定した。 量刑は 12 月にも言い渡される。 民主派への政治的な締めつけが強まっている。 周氏は昨年 6 月、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏らと共に「逃亡犯条例」改正案に抗議するデモに参加し、数万人とみられる市民と共に警察本部を包囲した。 周氏は昨年 8 月に逮捕され、起訴内容を大筋で認めていた。

香港警察によると、昨年 6 月に大規模化した一連の抗議活動で 9 千人超が逮捕された。 すでに多くの裁判が進められており、禁錮 4 年の実刑判決が確定した人もいる。 周氏は 5 日、同裁判所で記者会見を開き、「香港国家安全維持法(国安法)のもと、とんでもない恐怖感が今、香港にあるが、自由と民主主義のために戦い続ける」と日本語で訴えた。 また、9 月の立法会(議会)選挙が「新型コロナウイルスの感染対策」を理由に 1 年延期されたことについて、「(香港政府は)親中派が不利だから延期を決めた」と批判した。

周氏は 2014 年の民主化デモ「雨傘運動」で積極的に活動し、「民主の女神」と呼ばれた。 日本語が堪能で、SNS を利用して香港の民主化を訴えてきたが、国安法施行後は事実上、活動を休止している。 (香港 = 益満雄一郎、asahi = 8-5-20)


香港大、雨傘運動提唱した副教授を解雇 中国の統制強化

香港大学は 28 日、2014 年の民主化デモ「雨傘運動」を提唱した一人で同大法学部副教授の戴耀廷(ベニー・タイ)氏 (56) を懲戒解雇処分とした。 戴氏がフェイスブックで明らかにした。 香港での反体制的な言動を取り締まる香港国家安全維持法(国安法)の施行により、中国の統制が、「学問の自由」が保障された大学の自治にも及んだ形で、民主派の反発は必至だ。

処分の理由は明らかにされていないが、戴氏は昨年 4 月、雨傘運動で参加者を扇動した罪などで禁錮 1 年 4 カ月の実刑判決を受け、昨年 8 月に仮釈放された。 大学側はこうした戴氏の行動を問題視し、懲戒解雇を決めたとみられる。 香港メディアによると、戴氏の処分を審議した委員会は 18 対 2 の賛成多数で解雇を決定したという。

戴氏は民主派をリードしてきた法学者で、9 月の立法会(議会)選挙に向けた民主派の予備選挙の運営で中心的な役割を果たした。 これについて、中国政府の香港政策担当機関は、立法会選の公平性をゆがめ、国安法を挑発したとして、戴氏を名指しで非難するなど圧力を強めていた。 香港では一般的に副教授以上の大学教員の身分は定年まで保障されており、懲戒解雇は異例だ。 戴氏はフェイスブックで「香港の学問の自由の終わりを象徴するものだ」と批判した。 (香港 = 益満雄一郎、asahi = 7-28-20)


トランプ氏「香港は今後、中国と同じ」 優遇措置を撤廃

トランプ米大統領は 14 日、香港に対する優遇措置を撤廃する大統領令に署名した。 香港の自治侵害に関与した当局者への制裁を盛り込んだ「香港自治法案」にも署名、同法が成立した。 トランプ氏は会見で「我々は香港に対する優遇措置を終わらせる。 今後は中国と同じように扱う。」と述べた。 米国は中国の「一国二制度」に基づいて、関税やビザの発給などで香港を中国本土と別に扱う優遇措置を取ってきた。 しかし、香港での反体制的な言動を取り締まる「香港国家安全維持法(国安法)」施行の動きを受けて、トランプ政権は 5 月に優遇措置撤廃の方針を表明していた。

また、トランプ氏が署名し、新たに成立した香港自治法は、国安法の制定や香港での抗議デモ弾圧に関与した政府当局者に対して、資産凍結や米国への入国制限といった制裁を科す内容。 こうした当局者と多額の取引がある金融機関も制裁対象となる。 トランプ政権はすでに、国安法制定に関与した当局者へのビザ発給制限のほか、防衛関連製品や軍事転用可能な先端技術の香港への輸出停止といった対抗措置を取っている。

これに対し、中国外務省は 15 日、「国安法の実施を妨害する米国の試みは永遠に成功しない。 米国が押し通そうとするなら、中国は必ず反撃する。」と報復措置を示唆する声明を出した。 (ワシントン = 大島隆、北京 = 冨名腰隆、asahi = 7-15-20)


香港、デモ実施されず 英米豪、受け入れの動き

反体制活動を取り締まる香港国家安全維持法(国安法)が施行されて最初の週末となった 4 日、香港で抗議デモは起きなかった。 香港警察は違反行為に厳しく対処する姿勢を示しており、市民は不安と恐怖から口を閉ざし始めている。 SNS 上では 4 日、米国の独立記念日を祝うという名目で集まる抗議デモが呼びかけられていた。 しかし、集合場所の米国総領事館前に集まった市民は数人にとどまった。 国安法では外国勢力と結託し、国家の安全に危害を加える行為が禁止されており、参加を見送った市民は逮捕されるリスクがあると判断したとみられる。

警察官が監視するなか、米国国旗が印刷されたビラを領事館前で掲げた男性 (57) は報道陣に「ハイキングの途中に通りかかっただけだ」と言い、抗議デモに参加する意思はないと強調した。 男性は逮捕されていない。 昨年来の反政府デモの代表的スローガン「光復香港 時代革命(香港を取り戻せ 我らの時代の革命だ)」について、香港政府が国安法に違反するとの認識を示したのを受け、デモを支持してきた飲食店などで動揺が拡大。 スローガンが書かれたポスターや付箋(ふせん)を撤去する動きが相次いでいる。

一方、英米などでは、中国による統制の強化から逃れ、海外移住を希望する香港市民が増えるとみて、受け入れを拡大する動きが加速している。 旧宗主国の英国は香港返還前に生まれた約 290 万人の「英国海外市民」について、これまで 6 カ月とされた英国滞在期間を 5 年間に延長し、就労も可能にする。 米議会は 2 日、香港の自治侵害に関与した当局者や取引がある金融機関への制裁を盛り込んだ「香港自治法案」を可決した。 トランプ大統領が署名すれば成立する。 米議会では迫害の恐れがある香港の人々を難民として受け入れる法案も、超党派の議員によって準備されている。

オーストラリアも香港市民を特別に受け入れることを検討している。 モリソン首相は 2 日、香港住民に安全な避難地を提供するか、と問われ、「とても前向きに検討している」と答えた。 条件や規模など受け入れの具体的な内容については触れなかった。 (香港 = 益満雄一郎、ロンドン = 下司佳代子、ワシントン = 大島隆、シドニー = 小暮哲夫、asahi = 7-5-20)

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違反外国人、香港で逮捕の恐れ 国際金融センターの地位に影 - 国家安全法

【香港】 中国政府による香港統制を強化する「香港国家安全維持法」は、外国人や香港以外での行為も対象としている。 中国外からの香港民主派支援や中国共産党を批判する言動も同法に抵触する恐れがあり、2 日付の香港紙・明報は「外国人が海外で違反行為をした場合、香港を訪れた際に逮捕される可能性がある」と報じた。 国家安全法第 38 条は「香港特別行政区の永住権を持たない者も香港以外で規定の罪を犯した場合、本法が適用される」と明記。 香港の司法関係者は「全世界 80 億人が対象だ」と困惑する。

会計業界選出の立法会(議会)議員、梁継昌氏はメディアに対し「中国本土の金融政策を批判した海外のビジネス関係者が香港で摘発されるかもしれない。 国際金融センターとしての地位に影響する」と指摘した。 中国外への法適用は実際には相当の困難が伴う。 海外を拠点に香港や台湾の独立を主張する勢力や、中国への制裁を進める米国に対する「警告」の意味合いが強いとみられる。

また、国家安全法は国家分裂や政権転覆、外国勢力と結託して国の安全を危うくする行為などを禁じているが、違法行為の内容については幅広い解釈が可能だ。 香港で 1 日に行われたデモで逮捕された 10 人のほとんどは、「香港独立」と書かれた旗の所持などささいな行動を問題視された。 香港では軽微な罪であれば逮捕当日に保釈されることが多いものの、同法違反者に関しては、裁判官が相当と認めなければ保釈が許されない。 1 日は同法施行直後だったこともあり、逮捕には「見せしめ」の狙いもあったとみられる。

国務院香港マカオ事務弁公室の張暁明副主任は 1 日の記者会見で「(昨年香港で出回ったような)『警察がデモ隊を殺した』などといううわさを流した場合も、法律違反とみなされ得る」と述べた。 同法に定める「中央や香港政府への憎悪を引き起こす行為」に該当するという。 国家安全法にはこのほか、香港における報道機関やインターネット、学校に対する管理強化も盛り込まれている。 捜査に必要と認められれば通信傍受や監視も可能で、容疑者に関しては、捜査当局に共犯者の情報などを提供することで罪の軽減が考慮されるという。

2 日の香港では目立った抗議活動や混乱は起きていないが、市民は水面下で過去のフェイスブック投稿を削除したり、移民手続きを進めたりといった防衛策を講じている。 多くの市民が中国本土と同様に言論や表現の自由を封じられる事態を恐れており、香港社会の閉塞感は増す一方だ。 (jiji = 7-3-20)

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香港国家安全法、スピード可決 一国二制度の形骸化懸念

香港メディアは30日、中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会が同日午前、香港での反体制的な言動を取り締まる「香港国家安全維持法」を可決したと一斉に報じた。7月1日にも施行される見通し。香港に高度な自治を認める「一国二制度」の形骸化が進み、香港の自由が後退しそうだ。

法案は18〜20日の常務委員会に提出され、28日から2回目の審議が続いていた。1週間余りの間隔で常務委を2度招集するなど、中国側は異例のスピード成立を図った。 習近平(シーチンピン)国家主席が30日中に主席令に署名し、同法を香港基本法の付属文書に加え香港政府が公布することで施行される。香港では中国への返還記念日の7月1日に施行されるとの観測が出ている。

法案の全容は明らかにされていないが、6章66条で構成。国家分裂や政権転覆、テロ活動、外国勢力との結託・海外勢力による国家の安全への危害などを犯罪行為とし、処罰する。中国政府が香港に「国家安全維持公署」を新設し香港当局の取り締まりを監督・指導するほか、自ら情報を収集し事件を処理することも可能になる。 また、香港に設置する「国家安全維持委員会」には、中国政府から顧問を派遣し指導を強める。事件を裁く裁判官は「香港行政長官が指名する」と規定したが、現長官の林鄭月娥(キャリー・ラム)氏は23日の会見で「司法機関の助言に基づく」とし、恣意(しい)的な運用はないと強調した。

香港は1997年に英国から中国に返還された後も、「一国二制度」の下で独自の行政管理権や立法権、独立性の高い司法が認められてきた。新法は香港の政治・社会活動に対する中国の直接介入に道を開くもので、日米欧などから強い批判と懸念が出ている。 (北京 = 冨名腰隆、asahi = 6-30-20)

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香港法案 30 日に成立か 刑事罰、最高で終身刑の情報も

中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会が 28 日始まり、反体制的な言動を取り締まる「香港国家安全維持法案」の審議を再開した。 最終日の 30 日に可決・成立させ、香港返還記念日の 7 月 1 日に施行する可能性が高まっている。 国営新華社通信によると、161 人が出席した 28 日の常務委員会では、分科会での法案審議について報告があった。 共産党機関紙・人民日報系の環球時報は出席した全人代香港代表の話として「法案がおおむね合意に達した」と報じた。 法案審議は、18 - 20 日の常務委員会に続く 2 回目。 通常は 2 カ月ごとに開かれる常務委を 1 週間余りで再招集するのは異例で、成立を急ぐ共産党政権の狙いは明らかだ。

規定では、常務委で意見が一致している場合は 2 回目の審議で採決が可能。 香港メディアは委員会最終日の 30 日に採決され、可決する見通しと伝えた。 全人代は前回の審議終了後に法案の概要を発表。 反体制活動を中国が直接取り締まるための国家安全維持公署の新設や、関連の事件を裁く裁判官を香港政府が選任することなどが明らかになった。 香港で実施されてきた「一国二制度」の根幹を揺るがす内容だとして国際社会に懸念が広がり、米国は「香港の高度な自治」の侵害に関わった中国当局者へのビザ(査証)制限を発表するなど牽制している。

まだ法案全文は公表されておらず、同法が定める刑事罰の量刑なども焦点として残る。 常務委メンバーの譚耀宗氏は「禁錮 3 - 10 年になる」とするが、最高刑が終身刑に引き上げられたとの情報もある。 昨年のデモへの参加など法成立前の行為は適用外となる見通しだ。 香港では 28 日、約 100 人の市民が警察の許可がないまま、法案に反対するデモ行進をした。 警察はすぐにデモ隊を取り囲んで行進を中止させた。 買い物客でにぎわう週末の繁華街が一時、騒然となった。

デモに参加した女性 (56) は「香港の言論の自由を守る最後の機会だ。 警察に逮捕されても構わない。」と語った。 最新の世論調査では、法案に反対する意見が多数を占める。 デモ現場の近くに住む男性 (58) は「法案には反対だが、中国には何を言っても無駄だ。 もう、あきらめた。」と漏らした。 (北京 = 冨名腰隆、香港 = 益満雄一郎、asahi = 6-28-20)

香港国家安全維持法と香港を巡る政治日程
6月30日国家安全維持法成立?
7月1日香港返還記念日
国家安全維持法施行?
11-12日立法会選挙に向けた民主派の予備選
18-31日立法会選挙の立候補受け付け
9月6日立法会選挙
11月3日米大統領選挙


米国、中国共産党幹部のビザ規制 - 香港国家安全法制巡り

米国務省は 26 日、香港市民の自由侵害への関与が疑われる中国共産党幹部のビザ(査証)制限を発表した。 ポンペオ米国務長官は声明で、「香港の高度な自治を脅かすことに関与したと考えられる現職および元中国共産党幹部の米国への渡航を制限する」とした。 その家族も影響を受ける可能性があるとしたものの、具体的な氏名は挙げなかった。

今回のビザの動きは象徴的な面が強い。 ただ国務省の高官は匿名を条件に、これは中国の香港政策への対抗措置として米国が計画するうちの第一歩だと語った。 中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は 28 日からの常務委員会で香港の国家安全法制を審議・採決するとみられており、今回のタイミングは米国からのメッセージを送る狙いもあるという。 (Nick Wadhams、Bloomberg = 6-27-20)


中国、米下院のウイグル法案可決に報復措置を = 政府系メディア

上海] 中国の政府系メディアは 5 日、米下院によるウイグル人権法案可決を受け、米国を非難し、強力な報復措置を呼び掛ける論説を掲載した。 同法案は中国政府が新疆ウイグル自治区で少数民族ウイグル族などイスラム教徒を弾圧しているとして、トランプ政権に強硬な対応を求める内容。 中国外務省は法案の下院通過を受け、重要分野における米中の協力に影響を及ぼすと指摘した。

法案は上院での承認とトランプ氏の署名を経て成立するが、ホワイトハウスはトランプ氏が署名するか、拒否権を発動するか明らかにしていない。 中国共産党機関紙、人民日報は 1 面に掲載した論説で、同法案の下院通過は「悪意を感じるもので、極めて悪質」だと批判。 「中国の人々の強い意思を見くびるのは誤りだとそのうち分かるはずだ」とした。 英字紙チャイナ・デーリーは、既に不安定な米中関係の安定化に向けた中国政府の取り組みを踏まえれば、同法案は「裏切り行為」だと非難。 法案が成立した場合はさらなる制裁措置が見込まれるとした。 人民日報系の環球時報の英語版は、中国は「米国との長期戦」に備えるべきだと論じた。

中国外務省の華春瑩報道官は 4 日の会見で中国の利益を損ねる者は「相応の代償」を払うことになると述べており、政府系メディアの論説はこの公式見解に沿っている。 (Reuters = 12-5-19)


中国、米香港人権法で対抗措置 軍艦の寄港拒否や NGO 制裁

[北京] 中国外務省は 2 日、米国で香港人権・民主主義法(香港人権法)が成立したことへの対抗措置を発表した。 米軍機・艦艇の香港立ち寄りを禁止する。 また、香港での暴力的な活動を支援したとして、米国に本部を置く複数の非政府組織 (NGO) に制裁を科すとした。 香港人権法は、中国が香港に高度な自治を保障する「一国二制度」を守っているか、米政府に毎年検証を求めるもので、前週、トランプ米大統領が署名し成立した。 中国は、これに反発し、対抗措置を講じると警告していた。

中国外務省は、米軍の立ち寄り申請の受け付けを無期限で停止したとし、さらなる措置を講じると警告。 華春瑩報道局長は会見で「米国には、誤りを正し、わが国の国内問題への干渉を止めるよう求める。 中国は、香港の安定と繁栄、中国の主権を守るために必要ならさらなる措置を講じる。」と述べた。 ヒューマン・ライツ・ウォッチやフリーダム・ハウスなどの NGO が制裁対象となった。 華報道局長は「香港の混乱の責任の一部はこれら (NGO) にあり、制裁を受け代償を払うべきだ」と述べた。

米艦艇の香港寄港は、英植民地時代以来の伝統行事で中国返還後も中国政府が認めている。 ただ、米中関係が悪化してからは寄港が拒否される事例も出ている。 直近では米海軍第 7 艦隊の旗艦「ブルーリッジ」が 4 月に寄港している。 ある米国防総省の当局者は、今回の措置で米軍のオペレーションに支障が生じることはないと指摘した。 国務省からのコメントは得られていない。 (Reuters = 12-2-19)


香港人権法「断固反対」 中国、「内政干渉」に報復確実

【北京】 中国外務省は 28 日、トランプ米大統領が「香港人権・民主主義法案」に署名、成立させたことを受け「断固反対する」と非難する声明を出した。 中国は法が成立すれば「断固反撃する」と繰り返してきた。 何らかの報復措置を取るのは確実とみられる。 声明は、法成立について「香港の事務や中国の内政に著しく干渉しており、赤裸々な覇権行為だ」と抗議。 「米国は独断専行してはならないと忠告する。 さもなければ中国は必ず断固反撃を加え、それで生じる一切の結果は米国が負わなければならない。」と強い言葉で反発した。 (jiji = 11-28-19)


香港区議選、投票率最高 民主派躍進、初の過半数獲得か

政府への抗議デモが続く香港で 24 日、4 年に 1 度の区議会選挙が実施された。 デモが本格化して最初の選挙は、政府への信認を問う「事実上の住民投票」とも言われた。 記録的な投票率となっており、結果が示す民意は今後の香港情勢にも影響を与えそうだ。 投票率は午後 6 時半(日本時間同 7 時半)時点で 60.36% に達し、1997 年の中国返還後、最高だった前回選挙の最終的な投票率を 13 ポイント余り上回った。 記録的な投票率の上昇を受け、現在約 3 割の議席にとどまる民主派が大幅に伸長するとの見方が強まっている。

国家分裂の動きを禁じる「国家安全条例」に反発して大規模なデモが起きた 2003 年の区議選でも民主派が躍進したが、過半数には至らなかった。 今回、民主派は初の過半数をうかがう勢いを見せている。 投票率を押し上げたのは、市民やデモ隊の要求を拒み続ける香港政府への不信や政治変革を求める機運の高まりとみられる。 一方で、社会の安定を優先するため、「与党」に当たる親中国派の議員を支持する声も根強い。

区議選は 18 区議会の全 452 議席を、1 人 1 票の直接選挙で争う。 政府トップの行政長官の選挙などのように親中派に有利な仕組みがないため、香港で最も民意を反映しやすい選挙とされている。 投票は同日午後 10 時半(日本時間同 11 時半)まで行われ、大勢は 25 日未明に判明する見込み。 (香港 = 益満雄一郎、asahi = 11-24-19)


米議会の香港人権民主法案可決に中国外務省が反発

【北京 = 三塚聖平】 米上院が「香港人権民主法案」を可決したことを受け、中国外務省は 20 日、「極めて強い非難と断固とした反対を表明する」とした報道官談話を発表した。 中国側は「中国の内政への干渉だ」と強く反発。 米側が同法案を成立させれば対抗措置を取るとの方針を示した。

同談話は「香港が直面しているのはいわゆる人権や民主の問題ではない。 できるだけ早く暴力を止め動乱を制し、法制度を守り、秩序を回復するという問題だ。」との認識を示した。 その上で「中国中央政府は、香港政府の法に照らした施政や、香港警察の厳正な法執行、香港司法機関の法に照らした暴力犯罪分子の処罰を引き続き固く支持する。」と強調した。 また、香港に関する米側の動きについて「香港は中国の香港で、香港に関する業務は中国の内政そのものだ」と介入を強く拒絶した。 (sankei = 11-20-19)


香港、重傷者続出で小中高が休校に 名門 2 大は年内休講

警察とデモ隊の衝突激化を受け、香港大学と香港中文大学は 14 日までに年末までの授業を全て休講とすることを決めた。 政府は全ての幼稚園と小中高校を 17 日まで臨時休校とすると発表。 衝突で重体に陥る人が相次ぐほど局面が悪化し、教育現場に深刻な影響が及んだ。 今週に入り、警察隊が大学キャンパスに催涙弾を撃ったり、突入したりするようになり、各大学で激しい衝突が起きている。 今学期の繰り上げ終了を決めた香港大学や香港中文大学のほか、教室での授業をやめインターネットでの授業に切り替える大学も出ている。

14 日に始まった幼稚園と小中高の臨時休校について、政府は「登下校時の安全を確保できないため」としている。 約 90 万人の子どもが影響を受ける。 警察とデモ隊の衝突が激しさを増し、重篤な状態に陥る人が相次いでいる。 13 日も 15 歳の少年が重体となり、催涙弾が頭に当たったとみられている。 デモ隊と住民の乱闘に巻き込まれた 70 歳の男性も重体だ。 林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は 13 日夜、公邸で政府高官による緊急会議を開催。 深まる混乱への対応が話し合われたとみられ、新たな対策が今後、発表される可能性がある。 (広州 = 益満雄一郎、asahi = 11-14-19)