パーキンソン病の早期発見、血液検査で可能かも? 順天堂大など新手法

神経の難病「パーキンソン病」について、順天堂大などの研究チームは、血液で調べる手法を開発したと発表した。 現在は、症状が表れてから CT 検査などで診断するが、より簡単に検査でき、発症リスクが高い人の早期発見につながることが期待されるという。 研究の成果は 5 月 29 日付で、医学誌「ネイチャー・メディシン」で発表された。 https://doi.org/10.1038/s41591-023-02358-9

パーキンソン病は、神経細胞が減って、手足がふるえたり体がこわばったりする難病。 患者の脳には、「αシヌクレイン」というたんぱく質がたまることが知られている。 このたんぱく質の一部はバネのような形をしていて、この部分が何かの原因で伸びると、元に戻らない「異常型」となる。 これが少量でもつくられると、周囲の正常なαシヌクレインの構造も変わっていき、「異常型」がどんどん塊になっていく。

チームは、患者の血液にも、ごく微量に「異常型」が漏れ出す可能性に注目した。 「異常型」が増殖していく性質を利用して、対象者の血液成分を 5 日間かけて処理することで、血中に少量でも「異常型」があれば何百倍にも増やして検出できる手法を開発した。 症状などからパーキンソン病と診断された患者の 95% (221 人中 210 人)が、この手法で陽性となった。 一方、健康な人では陽性は 8.5% %(128 人中 11 人)だった。

将来、人間ドックで検査できるかも?

これまで、同様の手法で、髄液(脳や脊髄の周りの液体)から「異常型」を検出した報告はあったが、麻酔が必要で、頭痛も起きることもあるなど、簡単ではなかった。 今回の手法は、採血だけで検査ができる。 順天堂大の服部信孝教授は「人間ドックなど、どこでも検査できる時代を迎えるかもしれない」と話す。 パーキンソン病は、米映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主演マイケル・J・フォックスさんが診断されたことでも有名だ。

順天堂大のチームは、フォックスさんが立ち上げた財団から支援を受ける米国のグループとの共同研究を予定していて、今回の検査手法と、将来の発症リスクとの関連をさらに詳細に研究するという。 また、現状では、パーキンソン病だと早期に診断できても、投薬などでの対症療法しか治療法はない。 チームは、「異常型」のαシヌクレインを取り除くような薬の開発もめざしているという。 (野口憲太、asahi = 6-3-23)


47 人のゲノムを解読し「標準配列」に 病気との関連に新たな光も?

世界のさまざまな地域の 47 人分のゲノム(全遺伝情報)が高精度で解読され、医学研究などの基盤として使われる「標準配列」の概要版として公開された。 米国立ヒトゲノム研究所が率いる国際研究チームが発表した。 これまで分析が難しかった、ゲノムと病気の関連に、新たな光があたるかもしれない。 国際研究チーム「ヒューマン・パンゲノム・リファレンス・コンソーシアム」が 5 月 11 日、科学誌「ネイチャー」に関連論文 3 本を載せた。

ヒトのゲノムの長さは約 30 億塩基対ある。 個人間では 99% 以上、DNA 配列が一致するが、残りのごくわずかな配列の違いが、ヒトの多様性を生んでいる。 ゲノムの全長は一度に読めない。 医学研究などでは、細切れにした断片を読み、それをヒトゲノムの「標準配列」と見比べて、病気との関連の分析などに使う。 これまでの標準配列は、2003 年に完了した「ヒトゲノム計画」でつくられ、その後も更新されてきた。 ただ、配列の大部分は 1 人分のゲノムで、ヒトの多様性を十分に反映できていなかった。 また、最新の標準配列でも、ゲノム全体の 6.7% は読めていなかった。

研究チームは、一度に長く、正確に読める「ロングリード」という技術で、世界中の 47 人分のゲノムを解読し、概要版の「標準配列」として使えるようにした。 47 人の遺伝的ルーツのうちわけは、アフリカが 51% で最も多く、アメリカ大陸 34%、アジア 13%、ヨーロッパ 2% だった。 日本人は含まれない。 これまでの標準配列で欠けていた約1億塩基対を明らかにし、ゲノムと病気の関連を調べる分析の精度が高まったという。

24 年半ばまでに、計 350 人分への拡張を計画しているという。 東京大大学院新領域創成科学研究科の森下真一教授によると、このうち 10 人分として、今後、日本人のゲノム情報を提供する予定だという。 「標準配列はゲノムを調べる『ものさし』のようなもの。 いままで 1 本だけしかなかったが、種類が増え、調べる人にあったものを選べるようになる」と話した。

これまでの、ほぼ 1 人分の標準配列では、「構造多型」という 50 塩基対以上の大きな変異を調べることが難しく、構造多型と病気との関連を解析することも困難だった。 理化学研究所生命医科学研究センターの桃沢幸秀チームリーダーは「将来的に、これまで原因がわからなかった遺伝病の診断につながり、病気の原因の研究や治療法の開発など、応用が広がるかもしれない」と話した。 (野口憲太、asahi = 5-21-23)


体育祭後に 500 人感染 … 季節外れのインフル流行、コロナ対策影響か

インフルエンザの大規模感染が全国各地の学校で相次いでいる。 インフルエンザはそろそろ終息する季節のはずだが、500 人規模の集団感染が分かった学校もあり、異例の事態だ。 専門家は、新型コロナウイルスの感染対策が緩和された影響を指摘する。 4 月下旬、熊本県内の高校でインフルエンザによる欠席者が増え始めた。 体育大会に向け、生徒たちが練習に励んでいたころだ。 4 月最後の週末には、感染者が急増。 5 月 1 日朝には 84 人が欠席し、急きょ 2 日までの休校を決めた。 体育大会も大型連休明けに延期。 学校によると、感染者は最終的に 100 人を超えたとみられるという。

全校生徒 2 千人で応援合戦した学校も

感染が急拡大した理由ははっきりしないが、学校は「屋内で、体育大会前の声出し応援の練習をしたクラスがあった。 今後は気をつけなければいけないと話している。」と説明する。 宮崎市内の高校でも、体育祭をはさんで感染が拡大した。 宮崎市によると、5 月 9 日に最初の感染者を確認。 じわじわと増え、週末の体育祭後の 15 日に 394 人、16 日には 491 人にのぼった。 学校は 15 日から 22 日までの休校を決めた。 市によると体育祭で、優勝を喜ぶ生徒たちが集まって声を出す場面があったという。

大分市内の高校では、体育祭の 2 日後の 5 月 11 日、47 人がインフルエンザを理由に欠席した。 週明けの 15 日には欠席者が 403 人に急増し、16 日まで休校した。 学校によると、綱引きや障害物リレーなどの種目のほか、全校生徒約 2 千人が 4 チームに分かれて応援合戦を展開。 「屋外で同じ方向を向いて声を出しており、感染拡大の理由になったかは分からない」と説明する。

全国の学校では今年度から、新型コロナの感染対策が緩和され、マスクの着用は個人の判断となった。 大分の高校でも対策を緩和したが、インフルエンザの感染者急増を受け、新型コロナの感染拡大時と同じようにマスク着用を促し、換気も徹底。 二酸化炭素 (CO2) 濃度を測る機器など、新型コロナを想定した感染対策グッズを活用したという。 東京都調布市内の学校でも生徒と職員計 104 人のインフルエンザの感染が確認され、都が 18 日に発表している。

厚生労働省がまとめたインフルエンザの発生状況によると、5 月 8 - 14 日の感染者数は定点医療機関あたり 1.36 人で、前週の 1.70 人より少なくなった。 ただ、この時期に 1 人を超えるのはコロナ禍前と比べても多いという。 新型コロナの感染が拡大していた 2020 - 21 年と 21 - 22 年のシーズンは、感染対策が徹底された結果、インフルエンザの感染は抑えられていた。

マスク着用や換気、手指消毒が有効

日本感染症学会インフルエンザ委員会委員の青木洋介・佐賀大学医学部教授は「この 3 年間ほどインフルエンザのウイルスにさらされる機会が減ったことで、とくにインフルエンザへの免疫が少ない若い世代で感染が広がりやすくなっている可能性がある」という。 通常、インフルエンザの流行は 3 月ごろまで。 「新型コロナとインフルエンザの感染対策は同じなので、コロナへのガードがゆるめば、インフルエンザへのガードも落ちる」と指摘する。

対策としては新型コロナと同様にマスク着用や換気、手指の消毒が有効だという。 ただし、「インフルエンザにはよく効く薬があり、新型コロナの感染拡大時のような厳しい感染対策に戻す必要はない」とも話している。 (渕沢貴子、asahi = 5-19-23)


「飲む中絶薬」販売開始、厳しく流通管理 使える医療機関リスト化へ

英製薬会社ラインファーマは 16 日、経口中絶薬「メフィーゴパック」の販売を開始したと明らかにした。 医療機関の登録などに時間がかかり、月内の使用開始を見込んでいるという。 人工中絶のための飲み薬で、国内では 4 月に初めて承認された。 母体保護法の指定医師のみが処方できる。 承認後も、適切な体制ができるまでの「当分の間」は、入院設備がある一部の医療機関のみで使うことができる。

一方、これまで吸引法など手術による中絶の大部分は、入院設備のないクリニックなどで行われているとされる。 転売防止などのため、厳格な流通管理が承認条件とされ、同社は、処方を希望する医療機関に事前の登録と研修受講を求めている。 16 日時点で 80 以上の医療機関が登録しているという。 手続きが完了した医療機関は今後、同社サイト(https://www.linepharma.co.jp/search_u.php)で検索できるようにするとしている。 (野口憲太、asahi = 5-16-23)

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「飲む中絶薬」承認へ、それでも残る課題 ネット上には未承認の薬も

これまで手術しかなかった初期の人工妊娠中絶の方法として、口から飲む中絶薬が新たに使えるようになる。 ただ、中絶が長くタブー視された日本では、薬だけではない中絶をめぐる様々な課題も残されている。(後藤一也)

今回承認される薬は、1988 年に世界で初めて使われるようになった。 米国では 2000 年に承認され、19 年には価格の安いジェネリックの販売も始まった。 世界保健機関 (WHO) は、初期中絶の安全な方法として推奨している。 1 剤目を飲んでから 36 - 48 時間後に 2 剤目を飲む。多くの人は数時間以内に中絶が完了し、国内の臨床試験では、妊娠 9 週 0 日までなら 2 剤目を飲んでから 24 時間以内に 93.3% の人が中絶に至った。

薬による中絶も、体への負担は少なくない。 薬による副作用として、多くの人でおなかの痛みがあり、嘔吐や頭痛などが起きる場合もある。 重い月経より多い出血があるとされる。 まれに、コントロールできないほどの痛みや、長く多量の出血が続く可能性がある。 自宅で 2 剤目を飲んだ場合、こうした症状が夜間や休日に出ることも想定される。 だが、日本の場合は初期中絶の大半は、入院設備のないクリニックで実施されているため、夜間や休日の態勢は手薄になる。

まずは慎重に始めるため、厚労省は日本産婦人科医会と協議して、緊急時などの医療体制が整うまで、当面の間は、入院できるベッドのある医療機関でのみ薬が使えるようにする案を検討し、市民に意見を募るパブリックコメント(パブコメ)を実施した。 過去のパブコメは多くても 1 千件程度だったが、今回は 1 カ月で 1 万 2 千件と異例の数が寄せられた。 中絶そのものに反対する声もあったが、薬の承認には賛成が多く、さらに厳密に管理されれば使いにくくなるとして、より柔軟な対応を求める声も多くあった。 英国では妊娠 9 週 6 日までなら、遠隔診療を受けたうえで自宅で薬を飲める。

だが、分科会では「国内での使用経験がない」などの理由で、適切な医療体制が整うまでは、医療機関で 1 剤目を飲んだ後は帰宅できるが、2 剤目を飲んでから中絶を完了するまでは、院内待機が必須と判断した。 費用は自由診療となるため、医療機関によって異なるが、手術と同じ 10 万円程度かかるとの見方もある。

一方、医療体制が整った後は院内待機が必須ではなくなるが、分科会では中絶後に排出される胎のうの扱いについて議論があり、「自宅で排出されたときにどうするか、ルールを決める必要がある」などの指摘があったという。 厳格に管理するため、薬局で買える薬ではない。 メーカーには販売数量を、各医療機関には中絶件数をそれぞれ都道府県の医師会に報告させる。

米国などでは、医療機関を介さずに、飲む中絶薬をネット購入することがないよう呼びかけている。 日本でも 2018 年、インド製の薬をネットで個人輸入して使った 20 代の女性が、多量の出血やけいれんなどを訴えて入院した事例があった。 同じ成分でも、承認されていない薬の安全性や効果は保証されていない。 今回承認予定のもの以外の薬もネット上では売られているため、厚労省は、個人輸入しないよう引き続き呼びかける。 (asahi = 4-21-23)

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「飲む中絶薬」 21 日に承認の可否審議 認められれば国内初 厚労省

厚生労働省は 17 日、人工妊娠中絶のための飲み薬について、21 日の専門家分科会で承認の可否を審議すると発表した。 3 月に審議が予定されていたが、多くのパブリックコメント(パブコメ)が寄せられ、分析が間に合わず審議が見送られていた。 承認されれば、国内初の経口中絶薬となる。 審議されるのは、飲む中絶薬「メフィーゴパック」。 2 種類の薬を組み合わせて使う。 妊娠を続けるために必要な黄体ホルモンのはたらきを抑える「ミフェプリストン」を飲んだ 36 - 48 時間後に、子宮を収縮させるはたらきがある「ミソプロストール」を使う。 妊娠 9 週までの妊婦が対象。

1 月の別の専門家部会の審議では「承認して差し支えない」とされたが、厚労省は「社会的な関心が極めて高い」として、パブコメを経た上で、最終的な結論を出すとしていた。 当初は 3 月 24 日に審議が予定されていたが、寄せられた意見約 1 万 2 千件の分析が間に合わず、当日に急きょ審議が見送られた。 厚労省によると、通常の 100 倍以上にあたるという。

厚労省は 4 月 17 日、「パブコメの分析や対応の整理がおおむね終了した」として、21 日に審議すると発表した。 国内の臨床試験では、妊娠 9 週までの 18 - 45 歳の中絶を希望する女性 120 人が参加。 薬の投与後 24 時間で人工妊娠中絶に至った割合は 93.3% だった。 主な副作用として、下腹部痛 (30.0%)、嘔吐 (20.8%) が報告された。 いずれも回復し、大半が軽度か中等度だった。 (神宮司実玲、asahi = 4-17-23)

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飲む中絶薬を「了承」 妊娠 9 週 0 日まで対象、厚労省専門家会議

人工妊娠中絶のための飲み薬について、厚生労働省の専門家部会が 27 日、「薬事承認して差し支えない」と判断し、承認を了承した。 社会的な関心も高いことから、今後パブリックコメントを実施し、正式に決める。 国内では現在、妊娠初期の中絶方法は手術に限られているが、飲み薬が承認されれば、選択肢が増えることになる。 製品名は「メフィーゴパック」。 妊娠を続けるために必要な黄体ホルモンのはたらきを抑える薬「ミフェプリストン」と、子宮を収縮させるはたらきがある薬「ミソプロストール」を組み合わせて使う。 対象は妊娠 9 週までの妊婦。 英国の製薬会社ラインファーマが 2021 年 12 月に厚労省に承認申請していた。

国内の治験には、妊娠 9 週までの 18 - 45 歳の中絶を希望する女性 120 人が参加。 112 人 (93.3%) が、24 時間以内に中絶に至った。 71 人 (59.2%) は治験中に有害事象(接種後に起こるあらゆる好ましくないできごと)が確認され、このうち 45 人 (37.5%) は薬と因果関係がある副作用とされた。 いずれも回復し、9 割以上が軽度か中等度だった。 下腹部痛 (30.0%) や嘔吐 (20.8%) などだった。

飲む中絶薬は、1988 年に世界で初めて承認され、現在は 80 カ所以上の国・地域で使われている。 今回の製品はカナダとオーストラリアで承認されている。 日本でも薬の早期の承認を求める声は高まっていた。 世界保健機関 (WHO) は 12 年に発表したガイドラインで、妊娠中絶の「安全で効果的」な方法として、吸引法か中絶薬を推奨している。 (市野塊、後藤一也、asahi = 1-27-23)

初 報 (12-22-21)


新幹線に乗り合わせた男女 2 人はしか感染、東京都で 3 年ぶり確認

東京都は 12 日、都内に住む 30 歳代の女性と 40 歳代の男性が麻疹(はしか)にかかったと発表した。 麻疹は強い感染力を持つことで知られる。 都内で感染が確認されるのは 2020 年 2 月以来、約 3 年ぶりという。 都によると 2 人は 4 月 23 日に同じ新幹線の車両に乗っていたという。 すでに感染が判明している茨城県の男性も乗車しており、都はこの男性から広がったとみている。 2 人は 5 月 3 日に熱とせきが出始め、医療機関で麻疹と診断された。 いずれも容体は安定しているという。 (asahi = 5-13-23)


国内にも迫るサイレントパンデミック 「健康への最大の脅威の一つ」

抗菌薬(抗生物質)が効かない薬剤耐性菌。 有効な治療が限られ、感染拡大防止策も必要だ。 新型コロナウイルス感染症の波の中で難しい対応を迫られた医療機関もある。 水際対策などの規制が緩む中、コロナに加えて「サイレントパンデミック」と呼ばれる耐性菌の脅威への備えが再び急務になっている。

2022 年の年始から始まった新型コロナウイルス感染症の第 6 波のさなか、大阪公立大学医学部付属病院(大阪市阿倍野区)に、ある患者が腸管穿孔(せんこう)で救急搬送されてきた。

「耐性菌に感染しているかもしれない。」

通常は無菌であるはずの腹水から、何らかの微生物が見つかったのだという。 電話連絡を受けた感染制御部では、室内にいたスタッフ全員が「臨戦態勢」をとった。 詳しく検査すると、正体は「バンコマイシン耐性腸球菌 (VRE)」という細菌だと判明した。 腸球菌自体は、ヒトの腸内に常在するありふれた細菌。 しかし VRE は、治療法が少ない極めて厄介な病原体だ。

耐性菌とは、感染症の治療で使われる抗菌薬が効かなくなったり、効きにくくなったりした細菌のことだ。 病院には他にも抵抗力の弱った患者がたくさんいる。 そうした人たちにまで広がらないよう、院内感染を防ぐ手立てをすぐに講じなければならなかった。 通常なら、耐性菌への感染が確認された患者はただちに個室に移され、感染制御部の指導のもと、治療に使う機器や個室内を徹底的に消毒するなどの対策をとる。 こうした対策のかいもあり、国内で報告が多い別の耐性菌については、21 年までの 5 年間で、同院内での感染を 3 分の 1 に減らしたという実績もあった。

しかし、新型コロナウイルスの感染爆発が、それをはばんだ。 当時病院には新型コロナ患者があふれ、隔離のために使える個室はなかった。 さらに、職員は終日新型コロナの対応に追われ、感染制御部が VRE の感染対策を直接見る時間がとれず、口頭での指示にとどまった。 3 日後、新たな VRE 感染が発覚した。 最初に搬送されてきた患者の隣のベッドに、一時的にいたことがあった人だった。

感染制御を専門で担う看護師の岡田恵代さんは、「患者だけでなく、職員にもすごい数のコロナ感染者が出ていて、耐性菌の対策が出遅れてしまった」と悔やむ。 「細かい作業が忙しくでできない状況。 医療者が自分を(細菌から)守る対策をしていても、それが患者を守る感染対策にはなっていなかったかもしれない …。」 病院は、救急の新規受け入れを一時的に停止する判断を下した。

一方、感染者が出た病棟では、医師や看護師らが、消毒の手順などのお手本を動画に撮影し、指導がなくても自ら手順を徹底できるようにした。 感染制御部も現場に出向き、感染対策を強化した。 その後、3 人目の感染者も出たが、治療は成功。 対策のかいもあり、以降は新たな感染者もなく、3 週間後、救急の受け入れを再開できた。

静かに広がる耐性菌 1 千万人死亡の予測も

薬剤耐性菌をめぐっては、世界での死者が 50 年までに年 1 千万人に達するとの予測を、14 年に英政府が発表。 19 年には世界で 127 万人が死んだという推計が、米国の大学から出ている。 世界保健機関 (WHO) は「健康に対する最大の脅威の一つ」と位置づけている。 耐性菌の感染力や病原性は、変異する前の細菌と変わらない。 実際に、健康な人が感染しても、すぐに症状が出ることはあまりない。 だが、免疫が下がった時などに、ひとたび発症すれば、治療する手立てが限られる。 「多剤耐性菌」といういくつもの抗菌薬に対して耐性を持つ細菌も続々と出現している。

新型コロナは発症する人数が多く、感染の拡大が目に見えやすかった。 一方、耐性菌は、大阪公立大学医学部付属病院に救急搬送されてきた患者のように、いざ具合が悪くなった時などでなければ、自分が感染しているかどうかが分からない。 こうして静かに忍び寄る耐性菌の拡大は、「サイレントパンデミック」と呼ばれる。 患者を受け入れる病院にも、大きな負担を強いる。 「目に見えない脅威は、確実にあります。」 日々対策を練る岡田さんには、その実感がある。

国は16 年から、抗菌薬をむやみに使わないようにするなど、薬剤耐性菌問題に取り組んできた。 21 年までに 13 年と比べて使用量を約 33% 減らした。 世界での増加傾向に反して、細菌の耐性率も比較的押さえ込めている。 ただ、中には改善が見られず、耐性率が上昇傾向で、今後感染が拡大しそうな細菌もある。 入国制限の緩和などもあり、今後海外からの持ち込みも含めたリスクに備える必要がある。

国は 4 月、薬剤耐性菌対応の新しい計画を公表、さらなる普及啓発や、抗菌薬の使用量削減、耐性菌発生の監視体制の強化を行うとしている。 抗菌薬がウイルスには効かないと知らない人や、風邪を引いたときなどに家にある抗菌薬を自己判断で飲んでしまう人も少なくない。 問題が市民に広く共有されていないことが、意識調査で分かっている。 国立国際医療研究センターの大曲貴夫医師は、規模の大きい病院だけでなく、地域の診療所や高齢者施設、市中でも耐性菌は広がっているとして、「感染して危ない目にあうのは高齢者や子ども。 抗菌薬との付き合い方を市民にももっと知ってもらう必要がある」と話す。 (吉備彩日、asahi = 5-3-23)


スーダンでバイオハザード発生の恐れと WHO、首都の公衆衛生研究所占拠

軍と準軍事組織との間で戦闘が続くアフリカのスーダンで、紛争当事者の一部が首都ハルツームにある国立公衆衛生研究所を占拠した模様だ。 この研究所には、はしかやコレラの病原体、その他の危険物質が保管されており、世界保健機関 (WHO) の現地当局者は、生物学的災害(バイオハザード)の危険性が高いと警告している。

「電気が止まり、これらを管理する技術者がいないハルツームでは、紛争当事者の一部が研究所を占拠したため生物学的災害のリスクが高くなっている。 どの当事者か述べる必要はないだろう。 (WHO スーダン代表 ニマ・サイード・アビド博士)」

スーダンでは、軍と準軍事組織 RSF との戦闘により数百人が死亡し、数千人が負傷している。 また病院などの公共サービスも麻痺状態だ。 多くの市民が、食料や水もないまま自宅から動けずにいる。

「昨日は、人道物資や倉庫が略奪されたとの報告があった。」

国連人道問題調整事務所のイエンス・レルケ広報官は 25 日、激しい戦闘のため、一部の活動停止を余儀なくされたと述べた。 だがレルケ広報官によると、人道支援活動の拠点をハルツームからポートスーダンに移し、引き続きスーダン国民の支援活動を行うという。 (Reuters = 4-26-23)


サル痘の感染増加、今年 87 人感染 厚労省「疑う症状は相談を」

天然痘に似た感染症「サル痘(エムポックス)」の感染者が増えている。 昨年は 8 人が確認されたが、今年は今月 4 日までに 87 人の感染が報告されている。 厚生労働省は 6 日、「国内で感染が拡大している状況と考えられる」として、疑う症状があれば最寄りの医療機関に相談をすることを呼びかけた。 サル痘はウイルスをもつ動物との接触で感染し、ヒトからヒトへの感染はまれとされるが、患者の体液や血液からも感染する。 発疹や水ぶくれ、発熱などの症状がみられる。

昨年 5 月以降、欧米を中心に感染が広がった。 発熱がみられず、病変が肛門周囲や口腔など局所に集中しているなど、これまでと異なる報告も複数ある。 感染者の多くは軽症で 2 - 4 週間で自然に治るが、海外ではまれに重症化する例もある。

国内では昨年 7 月に初めて感染者が確認され、昨年は計 8 人の感染が公表された。 海外では現在感染者が減っているが、国内で公表された感染者は 1 月に 7 人、2 月に 12 人、3 月に 55 人、4 月(4 日時点)に 13 人と増えている。 誰でも感染する可能性はあるが、厚労省によると、国際的に男性同性間の性的接触での感染報告が多いという。 国内で確認されている患者は全員男性で、9 割以上は海外渡航歴がない。

国立国際医療研究センターの石金正裕医師は「性的接触で感染する可能性が海外で報告されているので、一般的には性行為をする場合に互いの症状や体調を確認することも大切。 ほかの性感染症の予防も含めて、コンドームは一つの予防方法となる。」と話す。 サル痘は、狂犬病などと同じ感染症法上の 4 類感染症に指定されており、診断した医師は患者の発生を保健所に届け出る。 厚労省はサル痘の名称をエムポックスに変更するため、政令改正の手続きを進めている。 (神宮司実玲、asahi = 4-6-23)

前 報 (7-25-22)


年 20 万人超死亡、耐性菌から赤ちゃん救え 薬の国際臨床試験が開始

抗菌薬(抗生物質)が効かない「薬剤耐性菌」による感染症にかかった赤ちゃんに対する国際臨床試験が今月、始まった。 途上国を中心に年間 20 万人を超える新生児が死亡しているとの推計もある一方、使える薬が大人に比べてずっと少ない。 新しい適切な治療法が見つかれば、たくさんの赤ちゃんを救える可能性がある。 試験を始めたのは、世界保健機関 (WHO) などが設立し、耐性菌対策に取り組む国際非営利組織「GARDP (ガードピー/本部・スイス)」。 日本からは、塩野義製薬と国立国際医療研究センター (NCGM) が参加している。

耐性菌は 2019 年に世界で 127 万人が死んだという報告があり、世界的な課題となっている。 WHO が勧める最適な薬も通じない耐性菌が拡大し、有効な治療法が求められていた。 中でも深刻なのが、小さな子どもたちへの感染だ。 抵抗力の弱い赤ちゃんらは、健康な人なら問題にならないような感染症でも重症化し、ショック症状や多臓器不全などを引き起こす敗血症に至ることがある。 先進国と比べて安全な医療が行き届いていない途上国では、重症化したり、死亡したりする例が多い。

GARDP によると、世界で年間約 21 万人の新生児が、耐性菌による感染症で亡くなっているという推計がある。 また、年間 300 万人の新生児が耐性菌によって、敗血症の恐れがある感染症にかかっているとの報告もある。 一方、新しい薬は、動物実験などを経て開発され、まずは成人が対象になる。 00 年以降に開発され大人には使える抗菌薬のうち、小さな子どもにも使えるのは 1 割にとどまるという。 これから新しい薬を作っても、子どもや赤ちゃんに使えるようになるには数十年かかる可能性がある。 今ある薬をうまく使って、救える命を増やせないか探るのが今回の試みだ。

試験では、敗血症になった新生児 3 千人を対象に、塩野義が提供する抗菌薬「フロモキセフ」など 3 種の薬を二つずつ組み合わせて効果をみる。 フロモキセフは 1988 年の発売以降、日本、中国、台湾、韓国で使用されてきた。 新生児にも投与できる安全性や、事前の調査で耐性菌にも効果があることが評価されたという。 はじめに南アフリカとケニアで、適切な投与方法や安全性を見極めた後、対象国を約 10 カ国に拡大する。 候補地となっているフィリピンやインドネシアなどでは、アジア各国とのパイプがある NCGM が、各国の治療現場に技術的な支援をするという。

GARDP の国際研究開発リーダーを務めるシーマス・オブライアン氏は、「今ある薬で有効な治療法を探すことは喫緊の課題だ」と話す。 試験で従来の治療法と比べて有効であると確認されれば、WHO に標準治療薬の改訂を働きかけたいという。 (吉備彩日、asahi = 3-19-23)


「精子の受精能力を上昇」化合物を発見、従来と違うしくみ 熊本大

体外受精でマウスの精子の受精能力を上げる新たな物質を、熊本大などのチームが見つけた。 受精能力を上げることが知られているほかの物質とは違うメカニズムではたらくことも明らかにした。 新しい体外受精技術の開発や、不妊治療などに応用できる可能性がある。 哺乳類の精子は射出された直後は受精できず、メスの体内で活性化されることで受精できるようになる。 体外受精では、精子を特定の化合物で処理することで受精能力を持たせている。

チームはオリゴ糖が輪っか状になった「シクロデキストリン」に注目。 シクロデキストリンは輪っかの中にほかの物質を取り込む性質があり、スプレー消臭剤などの主成分になっている。 この一種で、糖が六つ連なった「DMACD」を使い、マウスから採取した精子を処理した。 卵子にかけると 8 割ほどが受精し、処理によって受精能力が上がったことがわかった。 処理しない場合は2割以下だった。

どんなしくみで受精能力を得ているのかも調べた。 受精能力を上げると知られている従来の物質は、精子の表面を覆う膜にあるコレステロールを取り除く効果がある。 一方、DMACD はコレステロールではなく、リン脂質を取り除いていた。 これによって、膜の流動性が上がるなど、受精能力を獲得するのに必要な反応が起こっていた。 DMACD で処理した精子を使った受精卵が、正常に育つことも確認した。

熊本大の中尾聡宏研究員は「DMACD がリン脂質を取り除くことで精子が受精能力を獲得する詳しいしくみや、ほかの動物に応用できるかなどを調べていきたい」と話した。 論文は米科学誌「Biology of Reproduction」(https://doi.org/10.1093/biolre/ioad013) に掲載された。 (杉浦奈実、asahi = 3-1-23)


赤道ギニアでマールブルグ病を初確認、9 人死亡か 致死率最大 88%

致死率の高い「マールブルグ病」が、アフリカ中部の赤道ギニアで初めて確認された。 世界保健機関 (WHO) が 13 日に発表した。 似た症状で 9 人が死亡し、うち 1 人が陽性だったという。 感染疑いのある人も 16 人いるとされ、拡大が懸念されている。 WHO などによると、マールブルグ病は、突然の高熱や頭痛、倦怠感のほか、5 - 7 日後に出血などが起こる。 致死率は最大 88% とされる。 エボラ出血熱と同じウイルス性出血熱の一種で、ワクチンや治療薬で承認されたものはない。 感染経路にコウモリが疑われているが不明。 感染した人からは血液や体液に触れることでうつるという。

日本ではこれまでに患者は確認されていない。 感染症法では最も危険度の高い「1 類感染症」に指定されている。 発生を受け、厚生労働省は 14 日、渡航者への注意を呼びかけたり、患者の搬送体制を確認したりするよう求める通知を都道府県などに出した。 厚労省結核感染症課は「引き続き海外の感染状況や知見の収集、専門家の意見を伺いながら適切に対応したい」と述べた。

旧西ドイツと旧ユーゴスラビアで 1967 年、アフリカから輸入されたサルの解剖をしていた作業員が初めて感染した。 その後アフリカを中心に発生し、米国とオランダではアフリカに渡航歴がある人が帰国後に発症している。 昨年はガーナで 3 人が感染し、2 人が死亡した。 WHO のテドロス事務局長は 15 日の会見で赤道ギニア政府への支援を表明している。 (米田悠一郎、asahi = 2-16-23)


アルツハイマー病のマウス、ナノマシンで治療 脳に届く工夫は「糖」

アルツハイマー病にしたマウスの脳から、異常に蓄積したたんぱく質「アミロイドβ(Aβ)」を効率よく除去できたと、東京医科歯科大やナノ医療イノベーションセンターなどのグループが発表した。 脳に薬を届けやすくした「ナノマシン」と断片化した抗体薬を組み合わせた。 新たな治療法開発につなげたいとしている。 Aβの蓄積はアルツハイマー病の引き金とされる。 グループは、異常に Aβが蓄積するアルツハイマー病のマウスに、毎週 1 回、10 週続けてナノマシンを注射した。

断片化した抗体だけの場合に比べて、ナノマシンに組み込むと約 80 倍の抗体が脳に入ることを確かめた。 この治療で Aβのかたまりが除去できること、Aβが集まりにくくなることも確認できた。 Aβにくっついて脳から除く抗体薬を開発する際の課題の一つが、脳に届く抗体が少ないことだ。 血管から入る物質を選択して脳を保護する「血液脳関門」と呼ばれる仕組みがあり、投与したものの一部しか脳に届かない。

しかし、脳は、必要なもの、特に糖は大量に取り込むことにグループは注目。 高分子でできた粒子に薬を組み込んだナノマシンに糖をつけたものの開発に取り組んできた。 糖をつけたナノマシンは、もともと脳に備わっている糖を取り込む仕組みによって、脳に達することができる。 ナノマシンに組み込む薬にも工夫を凝らした。 Aβが複数くっついたものを認識する抗体を選んだが、通常の抗体は大きすぎてナノマシンに少ししか組み込めない。 そのため、抗体を断片化して使うことにした。

それによって新たな期待も生まれた。 アルツハイマー病の抗体薬では、炎症反応で脳のはれなどが起こる副作用が知られている。 断片化した抗体には、通常の抗体の炎症反応にかかわる部分がないため、この副作用を避けられる可能性もあるとグループはみている。 グループの横田隆徳教授は、「これまでの抗体治療より安全で効率的な治療法の開発につなげたい」と話している。 論文は、1 月 31 日国際専門誌ジャーナル・オブ・ナノバイオテクノロジー (https://doi.org/10.1186/s12951-023-01772-y) で発表した。 (瀬川茂子、asahi = 2-5-23)


脳の認知機能低下「隙間」がカギ? 高齢者千人超の画像を解析すると

認知機能の低下には、脳の周りの「隙間」が関係していると、熊本大や近畿大、大阪大などのチームが明らかにした。 脳そのものの変化だけでなく、その周りの変化も併せて見ることが、老化による脳機能の低下を予防する方法の開発につながる可能性がある。 論文が米国の専門誌「Fluids and Barriers of the CNS」に掲載された。(https://doi.org/10.1186/s12987-022-00381-5)

チームは、熊本県荒尾市内の 65 歳以上で、認知症ではない 1,356 人の脳の MRI 画像を解析。 脳の周りや隙間を満たす「脳脊髄(せきずい)液」がある場所の体積を測るとともに、認知機能との関連も調べた。 すると、大多数の人では加齢に伴って、脳のてっぺんからやや後ろにある「高位円蓋(えんがい)部・正中部くも膜下腔」と呼ばれる隙間が狭くなっていくことがわかった。 脳の内側にある「脳室」は広くなっていた。

熊本大病院神経精神科の日高洋介特任助教によると、隙間が狭くなるという変化は意外だった。 一般に、年齢が上がると脳が縮むことが知られており、その分隙間は広くなっていくと思われていたからだ。 共同研究者の認知症の専門医も当初は「本当に?」と信じていない様子だったというが、データを見て納得したという。

こうした脳の変化は、認知機能の低下などをもたらす「特発性正常圧水頭症」という病気でみられる変化と同じだった。 今回の研究では、記憶力、注意力、言語能力などの程度を示すスコア(点数)が、こうした変化のある人では変化のない人に比べて統計学的に意味のある差で下がるなど、変化の度合いと認知機能の低下に相関がみられることも明らかになった。

脳脊髄液の流れが悪くなることで隙間が狭くなり、認知機能の低下につながっていると考えられるという。 チームは、脳の萎縮と、髄液の流れがお互いに影響しあい、認知機能のカギを握るのではないかと見ている。 日高さんは「これまでは脳自体に注目した研究が多かったが、その周りの変化についても調べることで認知症予防の治療開発につながる可能性がある」と話す。 チームは、隙間の大きさと認知症発症との関連性などについて追跡調査を進める予定だ。 (杉浦奈実、asahi = 1-27-23)


季節性インフル、3 年ぶり全国で流行期入り 厚労省、注意呼びかけ

厚生労働省は 28 日、全国的に季節性インフルエンザの流行期に入ったと発表した。 新型コロナウイルスが発生してからは季節性インフルの流行はなかったため、3 年ぶりの流行となる。 新型コロナも拡大しており、今後の同時流行の影響が懸念される。 厚労省はマスクの着用や手洗いなどの感染対策を呼びかけている。 全国約 5 千カ所の定点医療機関から報告された最新の 1 週間(12 月 19 - 25 日)の患者数が、1 医療機関あたり「1.24 人(速報値)」となり、流行開始の目安となる「1 人」を超えた。

国立感染症研究所などによると、例年 1 千万人がかかるとされ、2019 - 20 年シーズンは推定 729 万人。新型コロナがパンデミックになって以降、20 - 21 年シーズンは同 1.4 万人、21 - 22 年シーズンは同 3 千人と激減した。 新型コロナの拡大で海外との行き来が大きく減ったこと、感染対策が広がったことなどが影響したとの指摘もある。 海外からの渡航客の受け入れなど、昨年からコロナ対策を緩和し、今季のインフルの流行が懸念されていた。

今年は先に流行期を迎えた南半球の豪州でも流行。 米国では 10 月から感染が広がり、米疾病対策センター (CDC) によると、この時期としては過去 10 年で最もインフルによる入院者が多くなっており、すでに 9 千人以上の死者が出ていると推定されている。 (米田悠一郎、asahi = 12-28-22)