「肥満の改善を助ける薬」の承認了承、来春にも薬局で販売へ 厚労省 厚生労働省の専門家部会は 28 日、大正製薬(東京都)が申請していた肥満の改善を助ける飲み薬について、国内での製造販売の承認を了承した。 腸で脂肪の吸収を減らすとされる。 3 月に正式に承認される見込みで、それ以降に一般販売される。 薬剤師がいる薬局で販売できる、肥満を対象とした初めての薬になる。 この薬は「アライ(一般名・オルリスタット)」。 有効成分が腸内の酵素に作用することで、食事によって得る脂肪を吸収しにくくする効果があるとされる。 1 日 3 回食中 - 後に服用。 運動や低カロリーな食事と組み合わせて使う。 欧米ではすでに承認されており、英グラクソ・スミスクライン社が販売。 国内では大正製薬が販売を担う。 対象は 18 歳以上。 肥満症にいたる前の段階での使用を想定しており、男性は腹囲が男性で 85 センチ以上、女性で 90 センチ以上の人が使用対象になる。 脂質異常症や高血圧などの基礎疾患がある人や妊婦らは使えない。 約 1,400 人が参加した海外の臨床試験によると、有効成分が入っていない偽薬を使った参加者が 1 年後に平均 2.3 キロ減量したのに対し、アライを使った参加者は平均 4.8 キロだった。 脂肪分を消化せずに便として排出するため、副作用もある。 軟便になり、便や油が漏れやすくなるほか、油にとけやすい「脂溶性ビタミン」が不足しやすくなるとされる。 承認されれば、国内では薬局で薬剤師がチェックシートで対象者を確認し、使い方も説明した上で販売することが想定されている。 (市野塊、asahi = 11-28-22) がんの免疫療法「新たな抗加齢療法になる可能性」 老化細胞除減らす 加齢とともにさまざまな病気とかかわる「老化細胞」が増える。 東京大の中西真教授らのグループは、がんの免疫療法と同じ方法で、老化細胞が蓄積したマウスの肝臓からこの細胞を取り除き、肝機能を改善させることができたと英科学誌ネイチャーに発表した。 老化細胞は DNA が傷つくなどで、増えなくなった細胞だ。 炎症を起こす物質を周辺にまき散らすため、蓄積すると、糖尿病やがん、動脈硬化などさまざまな病気の引き金になるとされる。 そのため老化細胞を除く研究が進んでいる。 一方で、正常な免疫が働いていれば、老化細胞の目印のようなものが認識されて排除される。 がん細胞が免疫で除かれるのと同じ仕組みだ。 グループが老化細胞を詳しく調べたところ、一部に、免疫にブレーキをかける分子が発現していることを見つけた。 がん細胞が免疫を逃れる武器に使っているのと同じ分子だった。 この分子が働いている老化細胞は、炎症を起こす物質をたくさんまき散らしていることもわかった。 一方で、この分子は、免疫のブレーキを解除し、様々ながんの治療に使われる「免疫チェックポイント阻害剤」のターゲットでもある。 そのため、チームは免疫チェックポイント阻害剤で、炎症を起こす老化細胞を除くことができるはずだと推定した。 年をとったマウスで使ってみると、実際に老化細胞を減らすことに成功。 さらに、老化細胞が蓄積している非アルコール性脂肪肝炎のマウスで、免疫チェックポイント阻害剤を与えると、老化細胞が除かれ、脂肪が付いたり、肝臓が硬くなったりすることが抑えられ、肝臓の機能が改善されたという。 中西教授は「新たな抗加齢療法になる可能性がある」と話している。 論文はサイト (https://doi.org/10.1038/s41586-022-05388-4) で読める。 (瀬川茂子、asahi = 11-19-22) 脊髄損傷、患者が多いのは若者ではなく 70 代 「平地で転倒」が 4 割 脳からつながる神経の束である「脊髄(せきずい)」が傷つくと、傷ついた部位より下には脳からの指令が伝わらず、体の感覚も脳に伝わらなくなってしまう。 どの程度のまひが残るかは、損傷の位置や程度によって一人一人異なる。 関口和正さん (57) は足が動かず、感覚も失う「完全まひ」となった。 歩けないだけでなく、排泄(はいせつ)の障害など外からは見えにくい障害も残った。 本格的なリハビリは、全国に約 2 千ある「回復期リハビリテーション病棟」で行う。 脊髄損傷では、診療報酬のルールで入院期間が最大 150 日(首の位置での損傷では 180 日)だ。 1 日にリハビリができる上限は 3 時間までになっている。 受傷から時間がたつと、戻らない機能と残された機能がはっきりする。 リハビリも、損なわれた機能の回復から、残された機能で生活する訓練へと重点が移る。 東京大学病院リハビリテーション科の緒方徹(おがたとおる)教授は、退院後に自立して生活できるようになるためには、機能回復から生活訓練へいつ移るかが重要だという。 「リハビリの開始時から、患者さんとのゴールの共有が大事」と話す。 退院後も、尿路感染や、座っている部分の血流がとどこおって皮膚がただれたり傷ができたりする「褥瘡(じょくそう)」を起こしやすい。 関口さんの主治医で筑波大の清水如代(ゆきよ)准教授は「患者さんと並走しながら、医学的に生活をサポートすることが、リハビリに関わる医師の大事な役割」と話す。 この 30 年ほどで、脊髄損傷の年齢構成や原因は大きく変わった。 日本脊髄障害医学会の 1990 年代の調査では、20 歳前後と 60 歳前後の患者が多かった。 主な原因は、▽ 交通事故(約 44%)、▽ 転落(約 29%)、▽ 転倒 (13%) だった。 一方、2018 年の調査では、70 代に一つだけピークがある形に変わった。 主な原因も、平地での転倒がもっとも多く約 39% を占め、交通事故は約 20% に減った。 年齢別に原因を見ると、交通事故は 20 代で約 4 割を占めるが年齢が上がると減った。 平地での転倒は年齢が上がるにつれて増え、70 代では約 4 割、80 代では 5 割超を占める。 10 代ではスポーツが約 4 割で最多だった。 18 年の調査結果からは、年間に人口 100 万人あたり 49 人が脊髄損傷になると推定されている。 東大病院の緒方教授は、「今後、中高年の転倒による脊髄損傷の予防やリハビリが重要」と話す。 一方、回復期病棟の中で若い患者が少なくなり、年齢が近い「先輩格」の患者が周囲にいないケースも増えると予測する。 「専門性を高めるなどの工夫が、今後は必要になるかもしれない」と指摘する。 (野口憲太、asahi = 10-23-22) 梅毒感染者が過去最悪の 8,000 人台に 若い女性に急増 ペニシリンの発明によって克服されたはずの梅毒の感染者数が 9 月、現在の方法で統計を取り始めた 1999 年以来最多を記録したと国立感染症研究所の集計でわかりました。 約 10 年間 500 人から 700 人で推移していたところ 13 年に 1,000 人台を突破してからは一瀉千里で 15 年に 2,000 人、16 年 4,000 人、17 年 5,000 人、18 年 7,000 人の大台を次々と突破して今年ついに 8,000 人台を記録してしまいました。 何が起きているのでしょうか。 増えた = ヤバいという単純な話ではないが … ここでの感染者数とは医療機関からの報告数です。 「近年増えている」との報道は広くなされており、無料・匿名の検査も受けられるため、疑いを持った方の訪問数も増加したとか、最近の傾向で以前ならば見逃していた医師が一層注意深く診断し始めた結果という可能性もあるため、増えた = ヤバいという単純な話ではなさそう。 だからといって急激な増加傾向にあるという事実を軽くみていいはずがないのもまた、いうまでもありません。 ワクチンはなく最悪死に至る依然として恐ろしい病 病因は明らかです。 梅毒トレポネーマという細菌による感染症で膣に陰茎を挿入する性交渉そのものばかりかオーラルセックスやキスでも移り得ます。 症状はまず 3 週間後に潰瘍やリンパ節の腫れが確認され 2 - 3 カ月を過ぎると前身に赤い発疹がみられます。 楊梅(ヤマモモ)に似ているのが病名の語源。 ペニシリンの出現で初期段階ならば完治するようになって久しいため軽視されがちでしたが実はワクチンがないので事前予防が難しい。 最終段階に至ると血管破裂(心血管梅毒)や神経のまひおよび知能の衰え(神経梅毒)が出現して最悪死に至る、依然として恐ろしい病なのです。 「相手がごく普通の人」という前提にリスクが潜む では近年の感染者数激増の原因は何でしょうか。 実は「これだ!」と明確に因果関係が証明された原因は特定されていません。 とはいえ病気の特長からいくつかを推し量るのは可能です。 1 つ目は性感染症であるので「身に覚えがない」というケース。 確かに文字通りの「禁欲」を貫いていれば罹りませんが問題となるのは性的な接触はあったものの相手がごく普通の人で自らも風俗店で働くなどの過去を持たないといった場合です。 しかし前述のようにキスでも感染する危険性を排除できないわけで、一定の年齢以上だと、それさえ未経験というのもまた「普通」ではなさそう。 素敵な相手に巡り会って恋愛モードが高まった際に過去の性体験を根掘り葉掘り聞き出そうとはしないし「交際するならば 2 人でまず血液検査(梅毒血清反応検査)を受けましょう」と言い出すなど考えも及びますまい。 要するに「相手がごく普通の人」という前提にリスクが潜んでいるわけです。 同時に症状がないまま自身が保菌者になっていて他者へ移す「加害者」にすらなり得る危険性まで合わせ持つから安心は禁物です。 治癒どころか潜伏期に過ぎなかったと 2 つ目は梅毒の特性によって「治った」、「罹っていない」と勘違いするケース。 いったん症状が出てもまもなく治まってしまったり症状すら出ないケースも珍しくない病気で実際には治癒どころか潜伏期に過ぎなかったと。 最終段階は感染から 10 年もの間潜んでいて訪れ、深刻な段階へ進むのです。 このケースは医療機関で感染がわかり飲み薬を処方されても錯誤の理由となり得ます。 何しろ消えてしまうので自己判断で止めてしまうのです。 ネット社会は便利ですが、梅毒を検索すると病状の特徴をよく表わしている画像などが目を引きます。 自分はそこまでではないという安心感を持ちかねません。 再感染する病でもあるのです。 梅毒トレポネーマに若気の至りも忍ぶ恋も関係ない 3 つ目は性感染症ゆえに疑惑を抱いても「性病持ちなんて恥ずかしい」と思い検査をためらわせるという可能性。 政府や自治体がいくら検査で無料で受けられると広報し、診療機関までしきりに訴えていても恥ずかしいには違いません。 特に軽い気持ちの恋愛や、反対に不倫など隠しておきたい付き合いであれば一層気後れしそう。 しかし梅毒トレポネーマに若気の至りも忍ぶ恋も関係ないのです。 ただここまでの推測は、いつの世にもあてはまるから、急増の原因とするにはエビデンスとして弱いともいえましょう。 若い女性に特異に増加傾向が見られる理由は そこで 4 つ目です。 元来、梅毒感染者は圧倒的に男性の方が多かったという状況に変化が見られる点を注目しましょう。 男性が多かった理由は男性同士の性行為や風俗店通いなど不特定多数の相手を求める一部が罹患してきたと想像できそうです。 したがって女性は主に移される側で、風俗産業勤務者などを除けば基本的に警戒すべき側にありました。 ここが大きく変容しているのです。 現状では感染者の 3 割が女性で、20 代など若い世代に集中していて幅広い年齢層で増加している男性と対照的な傾向を示しています。 ただし風俗営業法に指定されている店や女性従事者が有意に増えているとの統計はなく、コロナ禍は抑制の方向へ働くはず。 だとしたら「怪しい」のはマッチングアプリや SNS などネットの交流サイトや恋愛サービスの使用増。 手軽な出会い手段が若い女性への感染を急増させていると。 ただこうしたネット上の機会と女性の感染にはかろうじて相関関係を見出せても因果関係までは特定できません。 1 回で住む筋肉注射が今年から保険承認 以上の推測から今後、心しておきたい点を確認しておきます。 たとえ身に覚えがなくとも、結婚や出産を控えた方は男女問わず検査を受けるのが望ましいはずです。 なぜならば妊娠中の感染で子どもへ先天性の障害が伝播するおそれがあるから。 医療体制の再構築も急務です。 近年の感染増で皮膚科の医師が経験不足から症状を他の病と誤って診断していまうという「すり抜け」は減ってきましたが、検査を受けなければどうしようもありません。 また海外では標準治療となっている持続性ペニシリン系の筋肉注射(1 回)が副作用の不安から日本で使用不可となっていたのを政府は見直して今年から保険承認されました。 飲み薬と異なって 1 回で済むので「2 つ目」で紹介した自己判断による服薬中止による治癒未完から大きく前進したのです。 なにより大切なのは梅毒急増の真因がわからないがゆえにネット上であふれている陰謀論を信じ込むような愚行を犯さないよう冷静に判断したいものです。 「外国人が持ち込んだ」、「筋肉注射は危険だ」、「放っておいても治る」などなど。陰謀論は何もかも荒唐無稽ではなく、わずかながら事実も含まれている(ようにみえる)のが厄介。 後ろめたさを感じやすい感染症だからなおさら引き込まれる危険があるのです。 (坂東太郎、Yahoo! = 10-11-22) ビル・ゲイツ氏が日本の医療関連企業に賛辞 「誰もが必要な医療にアクセスでき、世界中の人々が健康な未来をつくる。」 世界の保健医療水準の向上を目指す NEC やエーザイ、塩野義製薬などのビジネスリーダー有志一同は、ビル & メリンダ・ゲイツ財団のビル・ゲイツ共同議長をゲストに招き、日本でイベント「グローバルヘルス・アクションジャパン」を開いた。 27 日からチュニジアでアフリカ開発会議「TICAD8」が開かれることに先立ち、参加企業 11 社は、アフリカやアジアの途上国の感染症対策などに対して支援活動を行うゲイツ氏に取り組みを説明。 塩野義は手代木功社長が開発中の新型コロナウイルス治療薬などについて、富士フイルムは後藤禎一社長が携帯型 X 線撮影装置を使った結核撲滅への挑戦について語った。 ゲイツ氏は各社の取り組みにそれぞれ賛辞を贈り、「ヘルスや医療は世界で最も重要な課題。 ワクチンや治療薬の開発だけでなく、物流や金融、人工知能 (AI) の活用など多様なアプローチがある。 こうしたビジネスリーダーの声を広げ、次の展開につなげたい。」と述べた。 ゲイツ氏の来日は約 4 年ぶり。 (NewSwitch = 8-23-22) 中国で新たなウイルス 35 人感染 ネズミから? 中国で、動物由来とみられる新たなウイルスが見つかった。 アメリカの医学誌で、中国などの研究者が明らかにしたもので、「ランヤへニパウイルス」と名づけられ、これまでに山東省や河南省で、35 人の感染が確認されている。 中国メディアなどによると、トガリネズミに由来するとみられ、発熱や吐き気、頭痛などの症状があるという。 現時点では、ワクチンや治療薬はなく、ヒトからヒトへの感染は確認されていない。 (FNN = 8-12-22) ビタミン K に細胞死防ぐ効果 血液凝固の「なぞ」も思いがけず解明 血液凝固の作用があるビタミン K に、細胞死の一つを防ぐ効果があることを、東北大などの研究チームが明らかにした。 「フェロトーシス」と呼ばれるこの細胞死は、アルツハイマー病などへの関与が報告されていて、新たな治療法の糸口となる可能性があるという。 成果は 3 日付で、科学誌 ネイチャー で発表された。 フェロトーシスは、2012 年に提唱された新しいタイプの細胞死。 細胞内に過剰に酸化された脂質がたまることで引き起こされ、病気への関与も報告されている。 抗酸化作用のあるビタミン E などに、この細胞死を防ぐ効果があることが知られていたが、そのほかのビタミンにも同じような効果があるかは分かっていなかった。 独ヘルムホルツ研究センターの三島英換(えいかん)・客員研究員(東北大非常勤講師)らのチームは、複数のビタミンを細胞実験で調べたところ、緑色の野菜や納豆、肉や卵に含まれるビタミン K にも、この細胞死を防ぐ強い作用があることを発見した。 ビタミン K は通常「酸化型」という状態で食べ物などに含まれていて、ビタミン E のような抗酸化作用はない。 そこで、ビタミン K が細胞死を防ぐ仕組みを詳しく調べた。 すると、細胞内でつくられる「FSP1」という酵素が、ビタミン K を、@ 酸化型から、A 還元型と呼ばれる状態に変化させることで細胞内の脂質の酸化を防ぎ、結果として細胞死を防いでいることがわかった。 これまでに、アルツハイマー病などの神経変性疾患や、腎臓の疾患にも、フェロトーシスが関与していると報告がある。 三島さんによると、実験で細胞死を防ぐのに必要だったビタミン K の量は、食事から摂取できる量よりもはるかに多い。 そのため、現時点でビタミン K が豊富な食品に病気の予防効果があるなどのことは言えないという。 一方で、ビタミン K や FSP1 が関わる細胞内の仕組みをさらに研究することが、これらの病気を防いだり治療したりするための、新たな方法の開発の糸口になる可能性があるという。 抗凝固薬のワルファリンを治療で使う人は、一般的に納豆や青汁を食事でとらないように医師から指導されます。 記事の後半では、ビタミン K と血液凝固をめぐる半世紀にわたる「なぞ」についての研究成果を紹介します。 思いがけないことに、今回の発見は、ビタミン K にまつわる長年のなぞを解明する手がかりにもなった。 ビタミン K の「長年のなぞ」も解明 ビタミン K は、1930 年代に血液凝固に関わる物質として発見された。 「K」はドイツ語などで「凝固」を意味する「Koagulation」から付けられた。 ビタミン K の発見者には 43 年のノーベル医学生理学賞が贈られている。 食べ物などに、@ の状態で含まれるビタミン K は、「VKOR」と呼ばれる体内の酵素のはたらきで A の状態に変わり、この A のときにだけ、血液を固めることができる。 心臓に人工弁をつけた人などは、血の塊(血栓)ができるのを防ぐため、抗凝固薬を服用する。 なかでも、世界的に広く使われる抗凝固薬「ワルファリン」は、VKOR のはたらきを抑えることで、ビタミン K が @ から A になるのを防ぎ、血を固まりにくくしている。 @ の状態のビタミン K が多いと、薬が効きにくくなるため、ワルファリンを使っている人は、ビタミン K を多く含む納豆や青汁を食事でとることを避けるよう指導される。 一方、ワルファリンは適正な量のコントロールが難しく、服用量が多すぎると出血しやすくなる危険もある。 このような体内のワルファリン濃度が高い中毒状態でも、@ のビタミン K をたくさん投与すると解毒剤としてはたらいて、薬の作用が打ち消されることも知られていた。 なぜ、このようなことが起きるのか。 体内でビタミン K を @ か らA に変える酵素は VKOR 以外にもあって、その酵素のはたらきはワルファリンで抑えられないのではないか、というのが一つの仮説だ。 このような酵素の存在は 70 年代から指摘されていたが、まだ発見されておらず、詳しいことはよく分かっていなかった。 三島さんらは、細胞死の研究で見いだした FSP1 こそが、このもう一つの酵素の正体なのではないかと考えた。 マウスを使って実験すると、予想どおり、FSP1 にはワルファリンを大量に投与した状態でも、ビタミン K を @ から A に変えて、薬の作用を打ち消し、マウスが出血するのを防ぐはたらきがあることが確かめられた。 まだ知られていない役割あるかも … ただ、ここで新たな疑問もわく。 FSP1 が抗凝固作用を打ち消すのにもかかわらず、ワルファリンはなぜ、患者への有効性を維持できるのか。 三島さんによると、FSP1 はビタミン K を @ から A に変えるが、血液凝固のためには「不要なもの」になっていて、ほとんど使われていないと考えられるという。 そのため、ワルファリンをふつうに服用しているときには影響がなく、ビタミン K を大量に摂取するという特殊な条件のときにはたらくと考えられるという。 「不要なもの」がなぜ残されているのかは分からない。 血液凝固とは別に、この FSP1 や ビタミン K には、まだ知られていない役割があるのかもしれない。 その解明は今後の課題だという。 三島さんは「ビタミン K の研究でずっと空白になっていたことが、フェロトーシスの研究から偶発的に分かった。 新しいものを見つける体験に喜びを感じた」と話す。 解明の端緒となったフェロトーシスの研究は、さまざまな病気との関連で注目されている新しい分野だという。 一方で、詳しい仕組みや、生体内でどのような役割を担っているかなど分かっていないことも多い。 三島さんは、「今後、フェロトーシスの生理的な意義も明らかにしたい」と話した。 (野口憲太、asahi = 8-5-22) サル痘、東京都内で感染者を確認 日本国内では初めて 厚労省 天然痘に似た「サル痘」の感染者が東京都内で確認された。 国内での確認は初めて。 厚生労働省が明らかにした。 国立感染症研究所などによると、サル痘は、「サル痘ウイルス」に感染すると発症する。 国内では統計が取られ始めた 2003 年以降、患者は確認されていなかった。 ウイルスをもつ動物との接触で感染し、ヒトからヒトへの感染はまれとされるが、患者の体液や血液からも感染する。 体の発疹や発熱などの症状が出る。 治療法はないが、多くは自然に治る。 子どもや、合併症などによって重症化することがある。 これまで、アフリカ大陸の外での流行はなかったが、今年 5 月以降、欧米や中東などにも感染が広がっている。 世界各国での流行を受けて、日本政府も体制を整備している。 国はサル痘を、感染症法上の 4 類に指定し、医療機関に疑い例の全数報告を求めている。 天然痘のワクチンが、約 85% の発症予防効果があるとされる。 サル痘に使うための承認はまだ得ていないため、「特定臨床研究」として使う準備をしている。 研究代表の国立国際医療研究センターの計画では、1 歳以上で、感染した人と接触してから 14 日以内の濃厚接触者などが対象だ。 薬についても、同センターで天然痘の治療薬「テコビリマット」の特定臨床研究を始めた。 欧州では使われていて、大阪府、愛知県、沖縄県の医療機関も研究に加えた。 検査は当初、国立感染症研究所でしかできなかったが、7 月からは全国 85 カ所ある地方衛生研究所のうち、71 カ所でできるようになった。各都道府県に 1 カ所はある。 (神宮司実玲、asahi = 7-25-22) ◇ ◇ ◇ WHO、サル痘「性感染症か」 感染経路を調査 【ジュネーブ = 白石透冴】 世界保健機関 (WHO) は 15 日、天然痘に似た感染症「サル痘」が性感染症である可能性を調査していると記者会見で明らかにした。 イタリアとドイツの患者の精液からウイルスが見つかったとの報告があるためで、感染経路の特定を急ぐ。 ロイター通信が伝えた。 サル痘はこれまで濃厚接触による感染拡大が指摘されている。 WHO は 23 日に緊急委員会を開き対応を協議するほか、特定の天然痘ワクチンを医療従事者に接種させることも勧めている。 これまで欧州を中心に 1,300 人以上の患者が見つかっており、男性との性交渉があった男性を多く含むことが分かっている。 (nikkei = 6-16-22) ◇ ◇ ◇ サル痘、感染加速の恐れ WHO 欧州事務局が警告 世界保健機関 (WHO) 欧州地域事務局のハンス・クルーゲ事務局長は 20 日、欧州各国で感染が広まっている珍しいウイルス感染症「サル痘」について、今後数か月間で感染拡大が加速する恐れがあると警告した。 クルーゲ氏は、夏の始まりに伴い「大勢の人が集まる祭りやパーティーが開催され、感染が加速することを懸念している」と述べた。 サル痘は特徴的な発疹を引き起こすが、死に至ることはまれ。 これまではアフリカ中部・西部で確認されていたが、ここ数週間でポルトガルやスウェーデンなどの欧州諸国の他、米国、カナダ、オーストラリアでも感染者を確認。 クルーゲ氏はこの感染拡大を「異例」としている。 クルーゲ氏によると、最近確認された感染者のうち、サル痘が流行している地域への渡航歴があったのは 1 人のみ。 早期感染者の大半が、同性と性交渉を持った後に医療施設を受診した男性だった。 このことから、人から人への感染が「しばらく前から起きていた」可能性があるとクルーゲ氏は指摘している。 WHOは、確認された感染者の多くが同性愛者や両性愛者、あるいは男性と性関係を持つ男性だったことについて調査しているとしている。 20 日には、フランスとベルギー、ドイツでも初の感染者を確認。 イタリアでは 3 人、ポルトガルではこれまでに 23 人の感染が確認された。 スペイン保健省によると、同国は 7 人の感染を確認し、さらに 23 人について感染の有無を調べている。 一方、マドリード州の保健当局は 21 人の感染を確認したとしており、同州の感染者は集計に加算されていないものとみられる。 英保健当局は同日、イングランドでさらに 11 人の感染が確認され、感染者数は 20 人となったと発表した。 英国保健安全保障庁 (UKHSA) は、サル痘はこれまで性感染症として認知されていなかったものの、英国と欧州の感染者には同性愛者や両性愛者の男性が「顕著な割合」で含まれていたことから、両グループに該当する人々に対して症状に注意するよう促した。 サル痘ウイルスは、感染者の外傷や飛沫、寝具やタオルなどの共用物と接触することで感染。 症状には発熱、筋肉痛、リンパ節の腫れ、悪寒、倦怠感が含まれる他、手や顔には水疱瘡(みずぼうそう)に似た発疹が出る。 (AFP/時事 = 5-21-22) 正体不明の微生物ダークマター ATGC、29 兆塩基対を集めて解析 地球上に存在する微生物のうち 99% 以上は培養が困難で、その特徴は未知とされる。 宇宙に存在するのに目に見えない正体不明の暗黒物質(ダークマター)にちなんで「微生物ダークマター」と呼ばれている。 東京大学の研究グループが独自の解析手法で、謎めいた豊かさの一部に迫った。 地球上には 10 の 30 乗もの数の微生物がいるとされ、その多くは海にすむ。 東京大の大気海洋研究所に所属していた西村陽介・特任研究員(現・海洋研究開発機構)らは、「メタゲノム解析」のデータを、複数の公共データベースから集めて、再解析した。 ゲノムとは生物が持つ全遺伝情報で、A、T、C、G の四つの塩基が構成する DNA に刻まれている。 グループは、ヒト約 1 万人分に相当する約 29 兆塩基対ものゲノムデータを集めた。 通常のメタゲノム解析では、得られた DNA の集まりを装置が読めるように断片化し、断片に含まれる塩基の存在比率などから同じ生物由来かどうかを判断する。 ただ、似た塩基組成は同じ生物とみなされ、違う種が混入することもある。 チームは、こうした混入を除去するソフトウェアを数カ月の試行錯誤で開発。 解析では、8,466 種のゲノムを得て、このうち 4,516 種が新種と分かった。 種や科よりも大きな分類学上の集まりも、綱に相当するものが 11 個、目に相当するものは 44 個も見つけた。 ゲノム多様性は、先行研究から約 3 割も膨らんだ。 研究に役立ててもらうため、解析したデータのカタログを公開。 海洋微生物のゲノムカタログでは世界最大というが「微生物を知るにはまだまだ圧倒的に知識が足りない」と西村さん。 今回得たゲノム情報の詳しい分析も始めている。 特に光合成する海洋微生物に注目しており、この生態の理解が温暖化問題解明のヒントになると期待している。 「今や微生物研究はデータなしでは新しい発見は難しい。 ただ、すごいスピードで研究が進んでいるので、多くの微生物ダークマターの生態が分かる日が楽しみです。」 論文はウェブサイト (https://www.nature.com/articles/s41597-022-01392-5) で読める。 (玉木祥子、asahi = 7-16-22) 「抗生物質が足りなくなる」 中国に原料依存で危機感 輸入価格急騰
記事コピー (7-9-22) 日本人のゲノム 5 万人分の解読完了 創薬研究など期待、東北大の機構 東北大の「東北メディカル・メガバンク機構」が 6 月 30 日、日本の一般住民約 5 万人分のゲノム(DNA の全配列)の解析を完了したと発表した。 創薬研究などに活用できるという。 今後、10 万人分を目標にして解析を続ける。 機構は、医療情報とゲノムの情報を組み合わせたデータベースをつくることで、一人一人に最適化された医療の実現をめざしている。 これまでに、宮城、岩手の両県を中心に、同意を得た約 15 万人から血液や尿などの提供を受けた。 順次、DNA配列を読み進めるとともに、どんな病気にかかったかなどの情報も追跡して調べている。 今回、15 万人のうち 5 万人のゲノム解析が完了した。 機構と連携して出資した製薬企業 5 社は、DNA 配列の情報と、健康状態を追跡したデータをあわせて活用できる。 今後、ほかの企業や研究機関なども有料で利用できるようにするという。 また、この 5 万人分のうち、血縁者を除いた約 3 万 8 千人分のデータを使って、日本人の間に、どんな変異がどのくらいの頻度であるかを調べられるデータベースを一般公開した。 がん患者で見つかった変異がどれだけ珍しいのかなどを調べるときの「参照元」として使えるという。 東北大の山本雅之・機構長は会見で、「ゲノムには多くの多型(細かな配列の違い)があって、個人の体質や病気のなりやすさを規定している。 日本人のゲノム構造は、欧米人のものとはかなり違う。 日本人のゲノムを正確に決めることが必要」と話した。 「この成果を使って、将来、一人一人の病気のリスクを予測することが根付くのではないか」と期待を述べた。 (野口憲太、asahi = 7-3-22) ジェネリック医薬品、なお 2,500 品目で品薄 改善の見通し立たず 価格の安いジェネリック医薬品(後発薬)の品薄が長引いている。 業界団体の調査では現在も出荷が滞っているものは約 2,500 品目あり、後発薬全体の約 3 分の 1 にのぼる。不足は一部の先発薬にも及んでおり、影響は深刻になっている。 製薬会社は増産などに取り組むが解消の見通しは立っていない。 後発薬メーカー 37 社でつくる日本ジェネリック製薬協会によると、品切れや出荷停止、出荷量が減るなどの品目は 6 月 14 日時点で 2,517 あった。 協会長として 5 月に会見した高田製薬(さいたま市)の高田浩樹社長は「多くの品目で供給不安が続きご迷惑をおかけしています」と陳謝した。 昨年 12 月時点では後発薬を中心に約 3,100 品目が品薄だった。 厚生労働省は業界団体「日本製薬団体連合会」に増産などを呼びかける通知を出した。 それから半年たったが改善は思うように進んでいない。 薬の不足は多くの患者や医療現場にとって負担となっている。 飲み慣れた薬が手に入らず別のものに切り替えたことで、効果が十分に出なかったり、副作用が生じたりする可能性がある。 後発品から先発品に戻せば医療費が増えることも考えられる。 病院の担当者が薬の確保のため、何度も交渉する事例もある。 後発薬メーカーの不正、影響長引く 品薄のきっかけは後発薬メーカーで不正が相次いだことだ。 小林化工(福井県)の皮膚病薬に睡眠導入剤が混入し、健康被害が 2020 年に明らかになった。 21 年 3 月には業界最大手とされる日医工(富山市)が品質不正で富山県から業務停止命令を受けた。 その後も自治体の調査などで、ほかにも不正が次々に判明。 今年 3 月までに協会の会員企業 5 社が業務停止などの行政処分を受けた。 メーカー側が在庫があるのに供給を既存の取引先などに絞る「出荷調整」も業界全体で広がり、品薄に拍車をかけた。 事態を問題視した厚労省は昨年 12 月に続き今年 3 月にも、出荷調整をやめるようメーカー側に求めた。 国は医療費を抑えるため後発薬の利用を促してきた。 保険が適用される全医薬品の半分ほどで後発薬がつくられている。 後発薬が選べるケースでの使用割合は 79% に達している。 患者にとって身近になっているが、供給が安定するまでには時間がかかりそうだ。 東京都薬剤師会の永田泰造会長は「先発薬もすぐには増産できず品薄となっている。 後発薬の利用を促してきた政府主導で、薬全体の安定供給に向けて取り組む必要がある。」と話す。 (鷲田智憲、市野塊、asahi = 6-19-22)
小惑星探査機「はやぶさ 2」が持ち帰った砂から 20 種以上のアミノ酸 宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の探査機「はやぶさ 2」が地球に持ち帰った小惑星「リュウグウ」の砂から、アミノ酸が 20 種類以上見つかったことが関係者への取材でわかった。 アミノ酸はたんぱく質の材料。 生命のもととなる物質が宇宙由来である可能性を後押しする結果となりそうだ。 リュウグウの砂が入った、はやぶさ 2 のカプセルが豪州に帰還したのは 2020 年 12 月。 内部には約 5.4 グラムの砂や石が入っていた。 JAXA の研究チームは昨年 6 月、世界各国の研究機関に砂を配り、本格的な分析を始めると発表していた。 初期分析の段階で、すでに炭素や窒素といった有機物を構成する物質が含まれていることは分かっており、たんぱく質の材料になるアミノ酸があるかどうかが注目されていた。 ヒトの体内のたんぱく質を形作るアミノ酸は 20 種類。 関係者によるとそのうち、体内でつくることのできないイソロイシンやバリンなどを確認。 コラーゲンの材料になるグリシンのほか、うまみ成分として知られるグルタミン酸もあったという。 こうしたアミノ酸はもともと、46 億年前に誕生したばかりの地球にもたくさんあったという見方がある。 しかし、その後、地球はマグマに覆われた時期があり、いったん失われてしまった。 地球が冷えた後に飛来した隕石がアミノ酸を改めてもたらしたのではないかとする仮説があり、今回の結果はその仮説を補強する結果となりそうだ。 これまで、地上で見つかった隕石からもアミノ酸が検出されていた。 しかし、そうした隕石は地球の土壌や空気に触れているため、飛来後に地球のアミノ酸が混入した可能性を否定できなかった。 今回、はやぶさ 2 が、地球と火星の軌道付近を回るリュウグウから砂を持ち帰り、外気に触れない形で分析したことで、宇宙にも生命のもととなる材料があることが初めて確認されたと言える。 ただ、アミノ酸には「右手型」と「左手型」といった種類がある。 地球上の生物はほとんどが左手型のため、もしリュウグウのアミノ酸が同じ左手型であれば、私たちのふるさとがリュウグウのような小惑星だった可能性がさらに高まる。 生命の起源の解明が進むとみられる。 はやぶさ 2 は、世界で初めて月以外の天体に着陸して砂を持ち帰った初代「はやぶさ」の後継機。 初代が訪れた岩石質の小惑星「イトカワ」や月からはアミノ酸は見つかっていなかった。 米国版「はやぶさ」とも言われる米航空宇宙局 (NASA) の探査機「オシリス・レックス」は、来秋に地球に帰還する予定。 (小川詩織、asahi = 6-6-22) 原因不明の小児肝炎、日本でも 7 人の可能性報告 米国で 5 人死亡 国内外で報告が続く原因不明の子どもの肝炎について、米疾病対策センター (CDC) は 6 日、患者 109 人の調査を進めていると発表した。 このうち十数人が肝臓移植を受け、5 人は死亡したという。 日本でもこれまでに、該当する可能性のある患者 7 人が報告されている。 A - E 型の肝炎を引き起こすウイルスは確認されておらず、原因は分かっていない。 一方、肝炎を発症した 5 割以上の子どもから風邪などの症状を引き起こす「アデノウイルス」が検出された。 このうち「41 型」という種類が検出されたケースが複数報告された。 ただ、このウイルスは胃腸炎の原因になるが、健康な子どもで肝炎の原因となることは通常なく、関連性ははっきりしていない。 新型コロナウイルスとの関連もわかっていない。 CDC の感染症センターのジェイ・バトラー副所長は「予備的な分析では、新型コロナの流行前も含め、小児の肝炎や肝移植が大幅に増加しているわけではない」と指摘している。 世界保健機関 (WHO) によると、原因不明の子どもの肝炎を発症した可能性のある患者は、5 月 1 日までに 20 カ国から少なくとも 228 人確認されているという。 日本で報告されている 7 人で肝臓移植が必要になったり、亡くなったりしたケースは確認されていない。 (ワシントン = 合田禄、asahi = 5-7-22) ◇ ◇ ◇ 欧米を中心に拡大の小児 "原因不明" 肝炎 … 日本で初確認か 欧米を中心に拡大している原因不明の子どもの肝炎について、厚生労働省は、国内で初めてこの肝炎の可能性がある患者が報告されたと発表しました。 WHO = 世界保健機関によりますと、子どもの急性肝炎は、21 日時点で、イギリスやスペインなど 12 カ国で、少なくとも 169 例、確認されており、1 人が死亡しています。 厚労省は、国内で初めてこの肝炎の可能性がある患者 1 人が報告されたと発表しました。 患者は 16 歳以下で肝移植は行っていないということです。 国籍や性別、居住地などは明らかにしていません。 (テレ朝 = 4-25-22) |