関西で「中小アパレル業者の倒産」増加! 2 社の事例でみる "苦境の実態"

今年 1 月から 3 月までに自己破産手続きの準備に入り、事実上倒産しているアパレル・雑貨業者の数は足元で大幅に増加している。 なぜ、倒産が増加しているのか。 今年に入って倒産に追い込まれた老舗とスタートアップの 2 社の事例から、アパレル業界の厳しい現状を解説する。

中小アパレル業者の倒産が増加している二つの理由

繊維の街大阪など近畿 2 府 4 県の 2022 年の倒産集計を見てみると、アパレル・雑貨などを含む繊維業界は 93 件と直近 2 期で減少傾向にある。 この数字だけを見るとアパレル・雑貨業界の倒産は減少傾向にあるといえるのだが、足元では決してそうではない。 今年 1 月から 3 月までに自己破産手続きの準備に入り、事実上倒産しているアパレル・雑貨業者の数は足元で大幅に増加している。 企業の倒産記事を掲載している帝国ニュース関西版の 1 - 3 月の記事数を業界別に見ても、アパレル・雑貨業界が最も多い。 いま、中小アパレル業者の倒産が増えてきている背景には二つの理由が挙げられる。

一つは、コロナ禍で傷んだ財務が回復していないことにある。

3 年にわたるコロナ禍で一部の EC 業者を除いて、アパレル業界は苦境が続いた。 テレワークや在宅勤務、オンライン授業など外出機会の減少に伴う需要低迷に始まり、百貨店や大型商業施設などの休業や時短営業による販売機会の喪失、インバウンド需要も消失した。 これにより数多くのアパレル関連業者の業績は悪化。 大きな損失を計上し、財務を毀損する企業が続出していた。

さらに、中国のゼロコロナ政策やロシアのウクライナ侵攻などにより海外からの仕入れが困難となったほか、物流コストが急激に高騰したことも財務を悪化させる要因となっている。 この間、本業で稼げなくなり、足りなくなった運転資金を借入金で補ったことで計画にない債務を抱えてしまった企業は多い。

二つ目は、為替の影響だ。

2022 年夏頃からの急激な為替変動によりアパレル業界、特に自社ブランドを持つ製造小売業者や輸入業者は大きな打撃を受けた。 現在、アパレル企業ですべての製造工程を国内で行っているところはまれだ。 大半は原材料や製品を中国や東南アジアなどの海外からの輸入に依存しており、急激な円安で仕入れ価格は上昇し収益を圧迫する要因となっている。 一部では為替予約やクーポンスワップなどの金融商品で為替変動リスクを回避した企業もあるが、そもそも金融商品を使うことのできない中小零細企業もある。

さらに、長らく銀行に借入金の返済を猶予してもらっている、いわゆる「リスケ企業」では、L/C などの外為枠を増やすことは難しい。 外為取引は与信取引となるため、返済猶予を受けている企業に対しての追加融資は銀行の稟議が通らないからだ。 円安時にそれまでと同じ数量を仕入れようとすると外為枠を超過してしまうため、仕入れる数量を減らさざるを得なくなり、売り上げ減少と収益悪化を余儀なくされてしまう。 今年に入り、繊維業者が乱立する大阪では、老舗とスタートアップという全く異なる歴史を有する二つの企業が、倒産に追い込まれた。 倒産までの背景は大きく異なるものの、昨今のアパレル苦境を端的に表している事例と言える。

約 120 年の歴史を持つ老舗アパレル丸松の落日

丸松(株)は、1904 年 7 月に創業した歴史ある企業だ。 ニットシャツメーカーで男性向けの中高級品のポロシャツやアウターを取り扱っていた。 グループで一貫した生産体制を築き、その高い技術で繊維商社や大手アパレルメーカーから信頼を得て業容を拡大。 戦後、繊維の街として有名だった大阪でも存在感を発揮すると、高級品が飛ぶように売れたバブル期には大手アパレルメーカーからの受注を得て、約 160 億 4,300 万円の売り上げを計上するまでに成長した。

しかし、バブル崩壊後の個人消費の低迷、00 年代以降のファストファッションの台頭により売り上げはしぼみ続け、11 年の年売上高は約 18 億 400 万円と、ピークの 1 割程度まで落ち込んでしまう。 その間、度重なる貸し倒れ処理などにより赤字を散発。 工場をはじめとする所有不動産の売却や人員削減などのリストラを断行せざるを得ず、金融機関への返済猶予を要請。 ギリギリのところで資金繰りをつなぐ苦境の時期が長らく続いた。 そこにはかつての名門企業の面影はなかった。

工場を売り払い、ファブレスメーカーへと転身した丸松は、再起をかけ自社ブランドやライセンスブランドの取り扱いを開始。 新たな道を模索し走り出した直後に、コロナ禍に見舞われる。 当然、売り上げは上がらず、海外からの輸入も制限され、22 年の売上高は約 9 億 2,700 万円にまで落ち込み、大幅な欠損を計上していた。 さらに、同年には急激な円安が進行すると、輸入そのものに支障が生じた。 金融機関へ外為枠の増枠を求めたものの、金融債務の返済ができていない丸松に新たな外為枠を供与する取引銀行はなく、事業継続を断念。 今年 2 月 13 日、119 年の歴史に幕を閉じた。

SDGs 事業で注目されたスタートアップが破綻した理由

1 月末に事業を停止したホープインターナショナルワークス(大阪市西区、以下:ホープ社)は、コロナ禍前には数々のメディアに登場するなど、注目のスタートアップ企業だった。 ホープ社は、10 年 6 月、繊維商社に勤務経験のある代表の経験を生かしたファッションビジネスコンサルティング会社として設立。 その後、代表の人脈を駆使して中国の生産工場と協力関係を構築し、パンツ、シャツ、アウターなどのカジュアルウエアの卸業者に転換した。 デザインの企画・立案、生地・ボタンなどの選定、仕様の決定、納期・品質の管理、アフターフォローまで一貫で対応。 この柔軟な対応が大手商社や有名セレクトショップから評価され、OEM 受注を得て業容を拡大する。

さらに、16 年 8 月には、「Salon du reDESIGN Closet.net」を開設。 この「Salon du reDESIGN Closet.net」は顧客から預かった衣料品の修理と、着古した衣料品を再度デザインし、リメークすることを目的とした事業。 親世代の洋服に斬新なリメークを施し、子供世代が新たな形で着るなど、新たな価値観の創造を生み出すとともに、洋服の廃棄ロス削減をミッションに掲げ、SDGs を推進する事業として注目を浴びた。

店舗にはカフェも併設され、ファッションと飲食店の融合、さらには SDGs が合わさったことにより、テレビなど各種メディアで取り上げられた。 もともとの OEM 事業も好調で 18 年 5 月期には年売上高約 26 億 5,000 万円を計上。 その後も、「Salon du reDESIGN Closet.net」は東京進出も果たし、関東の百貨店にも出店するなど業容を拡大し、売り上げは 30 億円に迫る勢いだった。

順調に見えたホープ社であったが、20 年 5 月期には、従業員トラブルなどにより、減収を余儀なくされた。 そして、翌 21 年 5 月期には新型コロナウイルスの影響を受けた大手アパレル業者からの OEM 受注が急減。 人気を博していたリメーク事業も外出自粛の影響を受け、一部の店舗は閉鎖に追い込まれた。 メディアに取り上げられ、将来有望なスタートアップ企業と持てはやされてからわずか 2 年、売上高は約 7 億 8,000 万円まで落ち込み、営業損失で2 億 5,000 万円以上を計上してしまう。

取引銀行に借入金の返済猶予を要請するなど資金繰り改善に努めるとともに、基幹事業であった OEM から撤退し、薄利多売からの脱却を進め、その後はリメーク事業に注力していたものの、10 億円近い多額の金融債務が重荷となり返済の見通しが立たないまま、事業停止を余儀なくされた。

コロナ終息後も回復が期待できないアパレル業界

このような事例は、この 2 社にとどまらない。 そして、コロナ禍が脱却しつつある今でも売り上げが戻っていないアパレル業者が数多くある。 「あれほど期待していたリベンジ消費は思うように伸びていない。 アパレルなどのモノ消費よりも旅行やイベント、外食などの "コト消費" に使いたいというニーズが高いのではないか」とアパレル専門商社の与信管理担当者が語るように、コロナ禍が終われば元通りというわけにはいかないのが現状だ。

さらに、電気代高騰や食品値上げなどによる生活防衛意識の高まりにより、アパレルや雑貨に手が伸びないという消費者側の切実な状況もある。 「コロナが明ければ業績は回復する。」 コロナ以降の 3 年間、繰り返してきたアパレル企業経営者のこの言葉は、空虚なものになりつつある。 (白浜雄介・帝国データバンク情報部、Diamond = 4-10-23)


先端の縫製ロボットで、自動化の波に取り残されたアパレル業界に挑む中国「梭芯智能 (Bobbin)」

中国の縫製ロボットメーカー「梭芯智能 (Bobbin)」は最近、ベビー・キッズ服を中心に展開する大手アパレルブランド「PatPat」との提携を発表した。 同社が開発した初代縫製ロボットが広東省広州市にあるPatPatの工場で近く試験を実施するという。

アパレルは数兆元(数十 - 百数十兆円)規模の産業だが、衣料品の生産を自動化するロボットは一向にマーケットが形成されない。 金属・プラスチック加工や自動車製造にはロボット導入が当たり前になっているが、衣料品メーカーが取り扱うのは柔らかい布地だ。 引き伸ばしたり折りたたんだりできる布地を人の手と同じように柔軟に扱えるレベルのロボットはまだ誕生していない。 こうしたロボットの開発に挑戦するには多大な費用がかかるため、これに挑む企業も非常に少ない。 しかし、梭芯智能は一介のベンチャー企業として、最先端のロボット技術を引っさげて歴史あるアパレル産業に飛び込んだ。 需要に対する最適解を見出し、アパレル産業全体の生産性を上げることを目指していくという。

人と同様の作業が可能なロボット

現在のアパレル業界は労働力不足がますます深刻化している。 とくにアパレル産業で中国最大の集積地である広州市では、ここ数年で従業員の確保が極めて困難になっている。 中国国家統計局のデータによると、繊維・アパレル・ファッション産業の従事者は 2018 年末時点で 335 万 6,000 人だったが、22 年末には 232 万 5,000 人と 30% も減っている。 梭芯智能は 2021 年 6 月に設立され、同月にはエンジェルラウンドで真格基金 (ZhenFund) と松禾資本 (Green Pine Capital) から数千万元(数億 - 十数億円)を調達している。

同社では、ロボットが人と同様に動作するようにマニピュレーターなどのアクチュエーター(駆動装置)を独自に開発。 加えて、3D ビジョンや安全な力制御技術を活用し、ハード・ソフトの両面に取り組んで、縫製ロボットに本物同様の「手」や「眼」を持たせ、縫製工程で生じる布地の取り扱いをクリアした。

具体的には、同社のロボットは深層学習や 3D ビジョンの機能を搭載しているため、裁断された生地を正確な位置でつかむことができ、生地の形状の変化や動きの軌跡を予測し、色を認識する「眼」の機能を有している。 ソフトウェアに関しては、ロボットと生地の動力学モデルをベースに非線形最適化アルゴリズムを開発し、リアルタイムの軌道計画および精密制御を可能にした。 これにより、裁断した生地を分類する、セットする、平らにならす、裏返す、位置を揃えるなどの複雑な動作ができる。

既製服の生産を自動化するにあたり、生地の取り扱いは数ある難点の一つに過ぎない。 同じタイプの服を縫製するにしても素材やデザインの違いによって工程はまったく異なり、例えばひと口に T シャツといっても、襟ぐりが違えば使うミシンも違ってくる。

ファストファッションブランドにとって競争力の核心となるのはデザインの豊富さだ。 有名ブランドのサイトを開いてみれば T シャツだけでも数百ものデザインがある。 シンプルな T シャツ 1 枚なら縫製工程は 10 - 20 ほどだが、これらを機械で自動化するとなるとエンジニアが長時間を割いてプログラムを組むことになる。 数百ものデザインを自動縫製するとしたら、開発に要する作業量は得られる成果と比較して割に合わない。 梭芯智能はこうした状況に対応するため、技術ライブラリーのほか、生産ラインをスピーディーに配備できるソフトウェアアーキテクチャーを設計し、生産上のさまざまな需要に迅速に応えられるようにした。

このアーキテクチャーはブロック玩具の要領で使えるようになっている。 技術ライブラリーでは汎用可能な縫製技術をパッケージ化しており、一つ一つをすぐに取り出して使えるうえ、さまざまなデザインへ柔軟に適用できる。 T シャツの縫製は十数の工程を経るが、そのうちのいくつもに同類の技術が使われている。 例えば肩線と側線の縫製技術やすそやそでのかがり縫いなどが共通しており、こうした工程は技術パッケージとしてユニット化することで、ロボットにより高い汎用性を持たせられる。 生産ライン配備ソフトは生産プロセスをスケジューリングする。 上記の技術パッケージを呼び出すことで、縫製現場ではさまざまなデザインやサイズの製品の生産プロセスを迅速に組み立てられるのだ。

アパレル産業全体をバージョンアップ

過去数年、さまざまな外的要因によって、多くのブランドが生産拠点や発注先を労働力がより安価な東南アジアに移転している。 例えばユニクロやナイキ、アディダス、プーマの主要サプライヤー「申洲国際 (Shenzhou International)」は生産能力の 40% を東南アジアで賄っている。 しかし、ある投資家は「アパレルのサプライチェーンではコスト安による優位は長く続くものではない。 やはり最終的には自動化を進める必要がある」と述べる。

梭芯智能が 1 年近くかけて開発した初代縫製ロボットがまもなく実用化される。 同社によると、この縫製ロボットはサンプル機の段階でベーシックなデザインの子供服の縫製を完全自動化し、人の介入なしに完成品を縫い上げ、その品質も人が縫製したものと遜色ないという。 同社は、5 年後には自社の縫製ロボットが世界で 100 億枚の衣服を縫えるようになることを目指しているという。 (36Kr = 4-3-23)

〈編者注〉 日本では掛け声ばかりで、実際には実現しなかった「自動縫製」。 上記プロジェクトが中国で実現されることを願っています。 違った工程を、それぞれに対応するアプリで準備し、「技術ライブラリー」として別枠にするなど、実用性は高いように感じます。 ここでは言及されていませんが、工程から工程へのコンベアシステムはどうなっているのでしょうか?


時給 200 円で服を作らせていたケースも
高級百貨店などと取引もある、米カリフォルニア州「労働搾取工場」の実態

米国衣料品工場の実態

記事コピー (3-28-23)


JIS 衣料品サイズの規格改正 嗜好や購入の変化踏まえ

JIS (日本産業規格)は 3 月 20 日、衣料品のサイズに関する規格を改正した。 成人男女の小さいサイズや大きいサイズの追加、男女兼用サイズの新設などを実施した。 消費者ニーズを調査し、消費者の嗜好の多様化や購入形態の変化を踏まえた。 今回の改正により、「サイズ表示で消費者が衣料品を購入する際の選択肢が広がることと、自身の体にフィットした衣料品を選択できるようになることが見込まれる」とし、日本の衣料品市場の活性化を期待する。

主な改正点では、L4004 (成人男子用衣料のサイズ)に、小さいサイズ「SS」と大きいサイズ「3L〜5L」を追加した。 L4005 (成人女子用衣料のサイズ)には、SS と 4〜6L を追加したほか、体型区分はほぼ使われていないとして削除した。 また、L4004 と L4005 いずれにも「男女兼用」サイズを設け、基本身体寸法は、製造業者や販売業者が許容範囲とする値を表示できることとした。

L4006 (ファンデーション)は、ブラジャー類にバスト・アンダーバストの表示を設けた。 ガードルにはヒップ・ウエスト表示を設け、ウエストの値は製造業者、販売業者が許容範囲とする値を表示できることとした。 L4007 (靴下類)は、タイツおよびパンティーストッキング類の成人男性用に 3L を、成人女子用には SS と 3L を加えた。 (繊研新聞 = 3-22-23)


「制服届かない」、今年も懸念 作業効率化や休日返上で対応 円安、国内生産を圧迫

新学期を前に、中学生や高校生の制服の納入が始まった。 昨春は一部の地域で入学式までに制服が届かないケースが相次いだが、今年も同様なことが起きかねないという懸念が業界の一部に出ている。 コロナ禍や円安の影響に加え、制服の多様化が背景にある。

「今年はできることはやった。 それでも学校によっては、3 月末にならないと工場に制服の生地すら届かないところもある。」

衣料品販売「ムサシノ商店(東京都武蔵野市)」の田中秀篤社長は言う。 制服の販売・発送を担う同社は昨春、制服の納入が遅れ、都立学校を中心に約 100 着分を入学式までに届けることができなかった。 反省を生かし、昨夏以降は、発送に関わる社員や在庫を保管するスペースを増やした。 制服のタグの付け方や社内の動線を見直し、作業の効率化を図った。 だが昨年 10 月ごろ、取引のある複数の制服メーカーから、「生地の備蓄ができていない」、「納品がぎりぎりになるかもしれない」などと連絡が入り始めた。 同 12 月になり、神奈川県内の別の販売店に、複数の大手制服メーカーから、生地の入荷遅れなどを理由に「発注の締め切りを例年より数週間早める」などとする通知が届いたことも知った。

制服のメーカーや販売店によると、アパレル業界全体に円安が影響しているという。 海外工場に発注していた生地や服の縫製を国内に切り替える動きが進み、国内での制服の生産を圧迫している。 コロナ禍で帰国した技能実習生らも戻っておらず、人手不足が続く。 大手制服メーカー「菅公学生服(岡山市)」では、例年ならば 11 月末には届いていた生地が、今年は 2 月末まで届かなかったものもあった。 縫い始めの遅れをカバーするため、同社では昨年 9 月以降、残業や休日出勤で対応している。

制服では特に、標準的なサイズでなく、縫製前に採寸が必要になる「規格外」のサイズの場合、納期が遅れる傾向にあるという。 都内で販売店を営む男性は今回、「(規格外は)縫える工場がないから注文を受けないで」とメーカーから言われた。 男性は「その子はどこで制服を買えばいいのか。 割高になっても縫ってもらえる工場を自力で探し、仮にその分が赤字になっても作って届けるしかない。」とため息をつく。

都教育委員会は今年 1 月、複数の制服メーカーなどに独自にヒアリングを実施した。担当者は「ほぼ全社一致で生産状況は厳しいと回答した」と明かす。 都教委は 2 月中旬、全都立校に向け、入学式までに制服が届かない生徒がいた場合、▽ (高校生らは)中学の制服や私服での式への参加を認める、▽ 学校や同窓会、PTA などで保管している制服があれば貸し出す、▽ 集合写真は全員分の制服がそろってから撮影する - - などの対応をとるよう通知を出した。

デザイン多様化、一因

制服の遅れの一因に、デザインの多様化を指摘する声もある。 制服生地大手の日本毛織(ニッケ、大阪市中央区)の調査によると、今春入学予定の全国の中・高校生の制服は、748 校でモデルチェンジが予定されている。 昨春の 432 校を大幅に上回る。 販売店や制服メーカーによると、女子のスラックス導入や、性的少数者の生徒らへの配慮のため、制服をセーラー服や詰め襟からブレザーに変更する流れが進む。 デザインも多様化しているという。

モデルチェンジの初年度は、前年の在庫や、先輩や兄姉の「お下がり」がなく、縫う制服の量は増える。 デザインの多様化で、多くの種類の制服を少しずつ作ることになり、生産にも時間がかかるという。 今春の新入生から制服を変える都立高が取材に応じた。 この高校では、男子の詰め襟をブレザーに変え、女子のブレザーも色や形を一新した。 数年前から準備し、着心地やデザインで生徒の意見を反映した。

同校の教頭は近年について、「制服で学校を選ぶ生徒はいる。 学校も、機能面の改善だけでなく、生徒集めのためにモデルチェンジを進める流れはあるのでは」と話す。 昔ながらのセーラー服や詰め襟の学校より、新しいデザインの制服の学校に生徒が集まる傾向があると感じる。 この教頭は言う。 「学校は、モデルチェンジが制服生産に影響を与えることまでは考えていないと思う。」 (松田果穂、asahi = 3-22-23)

◇ ◇ ◇

制服採寸 膨らむ期待 諏訪地方の衣料品店

公立高校の後期選抜合格発表があった 17 日、各高校の制服を取り扱う諏訪地方の衣料品店は、念願の春をつかんだ生徒と保護者でにぎわった。 制服を試着してサイズ合わせや注文を行い、店内には合格の喜びが広がった。 諏訪地方 6 高校の制服を扱う岡谷市中央町のカネジョウには、高校で合格を確認したその足で多くの親子が訪れた。 男女別に設けた特設会場では、生徒たちがブレザーやセーラー服、詰め襟の学生服などに袖を通し、店員に肩幅や袖、裾の丈などを合わせてもらっていた。

下諏訪向陽高校に合格した茅野市永明中学校 3 年の生徒は「ブレザーを着るのは初めてで新鮮。 友達をたくさん作って、楽しい高校生活にしたい。」と胸を膨らませていた。 カネジョウの高校制服予約会は 23 日まで。 営業時間は午前 10 時 - 午後 5 時 30 分。 問い合わせは同店(電話 0266・23・5533)へ。 (長野日報 = 3-18-23)


「日本のほぼ中心」にモンベルが新拠点 高速開通で海外出荷にも意欲

アウトドア用品大手のモンベル(大阪市)は、福井県大野市七板に物流施設を新設した。 すでに石川県羽咋市にも生産・物流施設があり、北陸の 2 拠点からダウンジャケットやフリースといった衣類やキャンプ用品などを国内外に流通させる体制ができあがった。 9 日に竣工式を迎えた新施設は、大野市が 2021 年に分譲を始めた富田産業団地にあり、敷地面積は 4 万 3,500 平方メートル。 鉄骨造り 2 階建てで延べ床面積は約 2 万 7,300 平方メートル。 総投資額は約 50 億円。

同社は 15 年に北陸総合センターを羽咋市に完成させたが、事業拡大で手狭になってきたことに加えて、自然災害発生時などでも出荷できる BCP (事業継続計画)の一環で複数の物流拠点を持つべきだと判断した。 羽咋は、生産拠点を兼ねるのに対して、大野は物流拠点に特化。 ベトナムや中国など海外の協力工場から輸入したものを集約し、国内 125 の直販店や海外市場にも出荷していく計画だ。 運用開始は 3 月末を予定。 新規雇用を含めた従業員数は約 50 人で、今後、羽咋と物流部門では同規模の 100 人に増やしていく。

団地は、長野、岐阜、福井を結ぶ高規格道路「中部縦貫自動車道」の荒島インターチェンジ (IC) から約 1.6 キロの地点にある。 今月 19 日の大野 IC - 勝原 IC の開通で県内の計画区間の約 6 割が開通し、26 年春には県内の残る区間 25 キロも開通が見込まれている。 羽咋とは車で約 2 時間の距離にあり、連携して物流の効率化も図る考え。 辰野岳史社長は「北陸は日本(列島)のほぼ中心に位置し、物流拠点として利点がある。 中部縦貫道の開通もあり、今後も発展の可能性がある。 海外向けの出荷でも発展的なことを考えたい。」などと話している。 (長屋護、asahi = 3-14-23)


イトーヨーカ堂、衣料品事業から撤退 … 「プライドや雇用もありやめられない」最後まで迷い

セブン & アイ・ホールディングスは 9 日、傘下のイトーヨーカ堂が衣料品事業から撤退することを決めた。 幅広い商品を手がける総合スーパーの運営は行き詰まっており、食料品中心に事業を絞る。 売り上げが低迷する地方では閉店を加速させ、抜本改革に挑む。(鈴木英樹)

抜本改革

「改革を検証する中でグループの強みは食であると気づかされた。 食を中心にもう一度強化したい。」 電話記者会見で、セブン & アイの井阪隆一社長は構造改革の方針を説明した。 自社での衣料品の製造や企画をやめ、魅力的なテナントを誘致して集客力を強化する。 グループのセブン-イレブンとの相乗効果も期待する。 イトーヨーカ堂はこれまでも構造改革を繰り返してきた。 2015 年には不採算店舗を中心に約 40 店を閉鎖する方針を表明。 19 年にも約 30 店で閉鎖や食品スーパーとの連携を進める計画を示した。 それでも、直近は 2 期連続で最終利益が赤字だった。

9 日の決定により、すでに計画している 19 店の閉鎖に 14 店が加わる。 イトーヨーカ堂の山本哲也社長は「利益性、効率性のレベル感が低いことの反省から、一歩二歩踏み込んで抜本的な変革が必要だ。 背水の陣だという覚悟で取り組みたい。」と強調した。

専門店が席巻

イトーヨーカ堂はセブン & アイの祖業で、100 年を超える歴史がある。 食料品から衣料品、日用品まで何でもそろう総合スーパーとして、地域に根ざしてきた。 2000 年代以降は、ユニクロやニトリといった価格は安くても良質な商品を扱う専門店が席巻するようになり、苦戦を強いられた。 ネットスーパーを始めとするデジタル戦略でも出遅れた。 衣料品は開業当初から取り扱っており、改革案に「撤退」の文字を盛り込むかどうかは最後まで迷いもあった。 内部からは、「プライドや雇用もあって、衣料品はやめられない」との声も聞かれた。

だが、株主である一部のファンドから、収益力の高い国内外のコンビニエンスストア事業に注力することを迫られるなど、外堀は埋まっていた。 新たな構造改革が奏功するかは不透明だ。 外部からは「今回も結局は過去の改革と似た方向性だ。 二度あることは三度あるにならないか心配だ(アナリスト)」との声も漏れる。

そごう・西武雇用「受け皿を準備」井阪社長、売却で

セブン & アイ・ホールディングスの井阪隆一社長は 9 日、米ファンドへの売却手続きを進めている傘下の百貨店「そごう・西武」について、「従業員の雇用は継続を図る。 当社グループにおける受け皿の準備も進めている」と述べた。 そごう・西武の売却を巡っては、セブン & アイの株主が、雇用の守られない恐れがあるなどとして、差し止めを求めている。 井阪氏はそごう・西武に約 3,000 億円の借入金があることも明らかにした。 「これ以上の資金支援は非常に厳しい」と売却を決めた経緯を説明した。 (yomiuri = 3-10-23)


ミャンマー、中国系縫製 2 工場、3 月末にも操業停止

ミャンマー連帯労働組合 (STUM) によると、最大都市ヤンゴンのシュエピタ郡区にある縫製工場 2 カ所が、3 月末にも操業を停止する見通しだ。 両工場では、英「プライマーク」ブランドの衣料を製造している。 米系メディアのラジオ・フリー・アジア (RFA) が 1 日伝えた。 操業を停止するとみられるのは、シュエピタのワルタヤー工業地域で操業する中国系縫製企業 2 社の工場。 合わせて約 2,200 人が働いている。

連帯労組のミョミョエー会長によると、両社は既に従業員に補償金を支払ったが、工場閉鎖の理由は明らかにしていない。 従業員や国軍の統制下にある労働・移民・人口省は、閉鎖について事前に説明を受けていなかったという。 国軍は、STUM を含む労組 16 団体を違法組織に指定している。 (NNA = 3-6-23)


SHEIN、アメリカで「パクリ」訴訟が続発する事情  大半の訴訟で和解決着、早期解決を優先か

中国アパレルの新しい波

記事コピー (9-7-21 〜 2-26-23)


カンボジア、1 月貿易額 29% 減、主力の衣料品輸出が低迷

カンボジア関税消費税総局 (GDCE) によると、2023 年 1 月の貿易総額は前年同月比 29% 減の 34 億米ドル(約 4,533 億円)だった。 輸出入とも 2 桁減。 目立ったのは外貨獲得源の「衣料品、履物、旅行用品 (GFT)」の落ち込みで、マイナス幅は 3 割近くに上った。 クメール・タイムズ(電子版)が 14 日に伝えた。

貿易総額のうち、輸出は同 14% 減の 15 億米ドル、輸入は 37.5% 減の 19 億米ドル。 輸出では、最大の仕向け地である米国向けが 5 億 6,200 万米ドルで 23% の減少を記録した。 輸入では、中国からが 8 億 9,100 万米ドルで首位だった。 輸出の減少は、全体の半分以上を占める「衣料品、履物、旅行用品」が 28% 減の 7 億 8,200 万米ドルと低迷した影響が大きい。 品目別に見ると、衣料ではニット製が 33.4% 減の 3 億 5,000 万米ドル、ニット製以外が 16.5% 減の 2 億 500 万米ドル。 旅行用品と履物はそれぞれ 32.3% 減の 1 億 1,700 万米ドル、23.6% 減の 1 億 900 万米ドルだった。

業界関係者によれば、ロシアによるウクライナ侵攻や物価高を背景に、主力市場の欧米各国で「衣料品、履物、旅行用品」の需要が後退している。 需要回復は年央以降になる見通しだ。 (NNA = 2-16-23)


ルミネ新宿、衣料品を中心に売り上げ回復 ショップと連携した OMO 策など実る

ルミネ新宿はショップと連携して、OMO (オンラインとオフラインの融合)施策などを強化した成果で、衣料品を中心に売り上げを伸ばしている。 今期(23 年 3 月期)の全館売上高は昨年 12 月までで、前年同期比 24.4% 増、19 年同期比 14% 減、18 年同期比 13% 減とし、予算を上回った。 衣料品売り上げは昨年 4 - 12 月で「18 年度と 19 年度に比べて 90% を超えるまでに回復(草薙恵美子常務ルミネ新宿店長)」した。 今年 1 月は「セールが若干厳しかった」ものの、前年超え。 2 月 1 日から先行商品の受注会など春物ファッションの需要喚起策を本格化し、売り上げをさらに拡大する。

全館売上高は第 3 四半期(22 年 10 - 12 月)に本格的に回復し、19 年同期比で 4.6% 減、予算比で 5.5% 増となった。 昨年 10 月と 12 月は 19 年同月実績を上回った。 衣料品はレディス「アメリヴィンテージ」、「アニュアンス」、「ウィムガゼット」、「クラネ」、「ココディール」、「マルティニーク・ルコント」、レディス・メンズ「エディション」などが特に好調。 9 月 1 日にルミネ 1 の 1 階に期間限定で導入した「デサント」も高機能ダウンジャケット「水沢ダウン」が「非常に好調」で、第 3 四半期の同店全体の売り上げは約 6,000 万円となった。 靴やコスメ、美容関連のサービス業種も売り上げを伸ばしている。

新型コロナに伴う行動制限がなくなり、消費者の購買意欲が高まっていることに加え、政府の水際対策が緩和された昨年 10 月以降はインバウンド(訪日外国人)売り上げが大きく伸び、全館売上高に寄与している。 中国からの客がほとんどいなかった中で、昨年 12 月のインバウンド売上高は「過去最高だった 18 年同月実績を超えた。」

今期は施設全体の重点施策に OMO の推進を据えた。 客の来店前に SNS で情報発信し、実店舗に誘客したり、インスタライブを行い、「プラス・アルファの接客で客単価を上げる」施策をパターン化して徹底し、各ショップの成功事例を共有している。 ルミネ 1 に入る大人向けのブランドが、SNS の活用が得意なルミネ 2 のレディスブランドの事例を参考にして売り上げを伸ばすなど成果が上がっている。 オンラインや店頭で販売した商品をウェブでクレジットカード決済するシステムも好調で、昨年 11 月は月間売上高が過去最高額となった。

イベントも積極的に行い、成果を上げている。 冬の全館セール終了後の今年 1 月 10 日から、米コミック『ピーナッツ』との協業による大型企画をルミネエストと合同で開始、2 月 21 日まで実施する。 各ショップで「スヌーピー」などキャラクターをデザインに使用した協業商品を販売し好調だ。 2 月 1 日からは、昨年 7 - 8 月も成果を上げた新作ファッションの需要喚起策「イッツ・ニュー・ウィーク」を本格化する。 約 80 店が参加し、約 30 店が春夏物の先行受注会を実施する。 (有井学、繊研新聞 = 2-1-23)


アダストリアに見るサステナブルファッションの現在地と選ばれるアパレル企業の未来像

「サステナブルファッション」への取り組みの重要性が高まっている。 これまでの産業構造にメスを入れるような側面もあり、覚悟の求められるアクション。 そうした中で、業界を牽引し、持続可能なファッションに真摯に取り組むアダストリア(東京都/木村治社長)の事例から、その現在地と課題に迫った。

大量生産・大量消費・大量廃棄から循環型へ

大量生産、大量消費。 これまでのアパレル産業は、より多く製造し、より多く売り捌くことで収益を拡大し、発展を遂げてきた。 だが、市場規模が停滞する一方で、供給量は増大。 環境省が発表したデータによると、国内の衣服消費および利用状況は、1 人あたり年間約 18 枚購入するのに対し、手放す服は約 12 枚。 手持ちのうち、一年間で一度も着用されない服は一人当たり、25着もある。 明らかに供給過剰であり、消費者もすでに十分すぎる数の服を持っている。

それでも、新製品を供給し続けることは「ファッションだから」と許容されてきた感も否めない。 とはいえ、昨今は地球温暖化を共通言語に、世界が環境負荷の低減に真剣に取り組むトレンドにある。もはや、国内ファッション産業においても、いかに環境に優しい製品づくり、流通を実現するかが、社会の公器の役割として避けては通れない重要なテーマとなっている。

持続可能なファッションの現在地

「サステナブルファッション」は、まさにそれを表現する言葉だ。 地球が、人間が生活し続けられる場所であり続けるために、ファッション業界ができることはなにか、何をすべきなのか - -。 日本のファッション業界は、サステナブルファッションでは先進諸国において、大きく遅れをとっているのが現状だ。 国内で早くからサステナブルファッションに取り組んでいるアダストリアの経営企画室 サステナブル担当である藤本朱美氏は「日本はサステナブルファッションではあらゆる点で世界に遅れをとっている。 ようやく企業の社会的貢献というレベルから、社会課題の解決という段階へ進みつつあるのが現状」と説明する。

遅れをとる原因はいくつかある。 最大の要因は、原料調達に始まり、紡績、染色、裁断・縫製、輸送、販売という製造プロセス全体の統制の難しさだ。 例えばサステナブルファッションの実現には、環境負荷に優しい原料の調達が求められる。 そうなると紡績が難しくなる可能性がある。 染色にも影響は避けられない。 そうした関係各所の調整は、極めて困難だ。 欧米ではいち早く政府が規制をしたり、業界団体がルールや基準を設けて、そのルールに則ったものづくりが進んでいる。 日本はそうした動きからは取り残されているのが実情だ。

アダストリアの取り組み

そうした中、アダストリアは 2014 年から持続可能なファッションを実現するための具体的なアクションを開始。 2022 年には、統合報告書の中でアップデートしたサステナビリティ方針と目標を掲げている。 同報告書は、同社のサステナビリティの取り組みを余すことなく公開する決意表明書であり、重点課題に対する進捗状況をガラス張りにするものだ。 その中で、KPI (重要業績評価指標)に「2030 年までに全商品のうち半分以上をサステナブルな原料・加工へと切り替える」、「2050 年カーボンニュートラルの実現」を設定。 サプライチェーンも含め、温室効果ガス排出量の算定など、定量的な検証を強化したことを報告している。

他にも「グループ調達方針」を定めるなど、取引先との間で人権の尊重や環境配慮などの基準についても取り交わしを行なっている。 さらに、「衣料品在庫の焼却処分ゼロ」も目標に設定し、グループの流通網を最大限に活用し、ファッションロスの最小化に努めていることを報告している。 これらは、原料調達から販売まで、自社で一貫して対応する体制が整っている同社だからこそ可能な先進的取り組みといえる。

施策は労働環境の改革まで 3 つの取り組むべき重点テーマ

サステナビリティの推進に妥協なく取り組むアダストリアは、労働環境の面からも持続可能性を追求。 2025 年度までに女性の上級管理職比率を 30%、女性管理職比率を 45% 以上に引き上げることを目指すほか、商業施設の新静岡セノバと協働し、実験的に営業時間のフレックスタイム制度や店舗別休業日を導入するなど、店舗で働く従業員の働き方改革にも着手し、販売員の働きがいや魅力の向上にまで対策を講じている。

やるべきことは山積しているものの、同社は着々とサステナビリティにおける各重点課題の目標達成に向けステップを歩む。 そこに課題はないのか。 藤本氏は「会社としては、随時、報告書やホームページを通じて進捗をオープンにしながら、定めた目標の達成へ向かっていく。 ただ、CO2 の削減については、個社だけではどうしても限界がある。」と明かす。

業界共同による取り組みも

アダストリアも加盟する、2021 年に設立された連合組織「ジャパンサステナブルファッションアライアンス (JSFA)」の設計は、そうした課題を打開する行政も巻き込んだアクションだ。 大手を含む、ファッション・繊維企業が参画(会員企業 19 社、賛助会員 25 社)し、個社だけでは解決が難しい課題に対し、共同で向き合いながら解決策を探っている。 具体的には、統一の基準による単純焼却や埋め立ての可視化、回収、循環システムの試行、「カーボンニュートラル」に対する意義の理解醸成などだ。 個社だけでは実行や浸透が難しい取り組みを共同で行うことで、より社会全体に影響が広がるよう、消費者や行政にも積極的に働きかけていく。

サステナブルファッションの真のゴール

持続可能なファッションは、突き詰めれば地球に生きる人間の生活に無理なく、自然になじむファッションといえるだろう。 そうなれば、おしゃれの定義も変わってくる。 これまでは個性をわかりやすく表現するアイテムだったアパレルだが、これからは、製造の背景にあるこだわりやストーリまでを包含した製品であることがより評価される。 製造プロセスで、原料やそれを栽培する労働者にまで配慮する製品を着用していることも含めた姿勢が「かっこいい」。 事実、業界、そして消費者にとっても、そうした価値観が少しずつ、浸透し始めている。

アパレル産業に到来したパラダイムシフト。 そういっていい、サステナブルファッションという一大潮流。 そこに調和するための取り組みの数々は、突き詰めれば「選ばれる企業」への変態のために他ならない。 今後、海外への積極展開も見据える同社にとって、グローバルスタンダートへのキャッチアップは至上命題でもある。 実現へ向けた、数値目標や達成期限も明確に定めているが、真のゴールは、そこではないはずだ。 社会全体が「持続可能なファッションこそおしゃれ」、そう認識した、その時だろう。 (油浅健一、Diamond = 1-20-23)